JP2012085878A - 濃度定量装置及び濃度定量方法並びにプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】照射部304、受光部305、計測光強度取得部306、光路長分布記憶部302、光路長取得部307、時間分解波形記憶部303、無吸収時光強度取得部308、光強度取得部306が取得した光強度分布と光路長取得部307が取得した光路長分布モデルと無吸収時光強度取得部308が取得した無吸収時光強度モデルとに基づき任意の層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲を算出する積分区間算出部309、計測光強度取得部306が取得した光強度分布から任意の層以外の光強度を除外するように積分区間算出部309で得られた時間の範囲を変化させて任意の層における目的成分の光吸収係数を算出する光吸収係数算出部310、目的成分の光吸収係数に基づいて任意の層の目的成分濃度を算出する濃度算出部313を備えている。
【選択図】図9
Description
一方、高齢化社会の到来により、予防医学に対する要求の高まりを受けて、個人における代謝量管理の重要性が急速に増大している。中でも、血糖値測定は、食前や食後の血糖値を測定することで糖代謝の反応が分かることが知られており、糖尿病のごく初期段階での糖代謝の反応を評価することで、糖尿病の早期診断に基づく早期治療が可能になる。
また、血糖値を連続的に測定する方法としては、静脈に注射針を刺した状態で連続的に血糖値相応のグルコースの定量を行う機器が米国にて開発されており、現在臨床試験中である。しかし、静脈に注射針を刺したままにしているために、血糖値の測定中に針が抜ける危険性や感染症の危険性がある。
そこで、採血無しに頻繁に血糖値を測定することができ、しかも感染症の危険性が無い血糖値の測定装置の開発が求められている。さらには、簡単にかつ常時装着可能であり、小型化可能な血糖値の測定装置の開発が求められている。
この装置は、皮膚の赤外スペクトルを用いて生体成分濃度の定量をおこなう場合に、皮下脂肪の影響を受けて生体成分濃度の定量に誤差が生じることに対応したもので、より具体的には、皮膚に近赤外の連続光を照射し、その光吸収量からグルコースの濃度を算出する装置である。
この装置では、予めグルコース濃度と照射する近赤外光の波長と光の吸収量との関係を示す検量線を作成しておき、皮膚に近赤外の連続光を照射し、この皮膚からの戻り光をモノクロメーター等を用いてある波長域を走査し、その波長域の各波長に対する光の吸収量を求め、この各波長における光の吸収量と検量線とを比較することで、血液中のグルコース濃度、すなわち血糖値を算出している。
さらには、予備的に近赤外の受光部と発光部との間隔を650μmとして推定した「皮膚厚さ」を1.2mm以上、1.2mm未満のいずれかに判断し、受光部と発光部との間隔を650μm、300μmのいずれかに選択した後に検量式を選択している。
この皮膚主成分の吸収量には波長依存性があるので、通常、予め皮膚主成分の定量に影響を及ぼす変動要因を多変量解析で複数の割合で変化させた複数のスペクトラムを作製しておき、皮膚主成分における近赤外光の吸収量の測定結果のスペクトルを上記の複数のスペクトラムと比較し、これらのスペクトラムから一致するスペクトラムを選ぶことにより、皮膚主成分の各割合を推定する方法が採られている。
また、特許文献1の装置では、皮膚表面から皮下脂肪までの深さを「皮膚厚さ」として、皮下脂肪の特異吸収波長での吸光度から皮膚の性状を分類すること、例えば、皮膚表面から皮下脂肪までの深さを「皮膚厚さ」として代用することには、(1)皮膚の真皮と皮下組織の境界は、皮膚の表面からの深さとして均一では無いこと、(2)真皮には脂肪を分泌する汗腺があって脂肪分泌物を蓄えていること、(3)皮下脂肪の特異吸収波長での吸光度から皮膚の性状の分類を行う場合、真皮の細胞及び間質液には脂肪が含まれているので、真皮と皮下脂肪との区別が難しい、等の理由により問題点があった。
しかしながら、特許文献1の装置では、上記の理由等により、皮膚の赤外スペクトルを用いて生体成分濃度の定量を行う部位を特定することができず、したがって、真皮中で間質成分の一つとしてグルコースが存在している網状層(Stratum reticulare)を特定部位として、この特定部位を透過する光路での吸光度を選択的に測定することはできない。
すなわち、本発明の濃度定量装置は、複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置であって、前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射部と、前記短時間パルス光の照射により前記観測対象から後方散乱される光を受光する受光部と、前記受光部が受光した光の強度から光の強度分布を取得する光強度取得部と、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記光路長分布のモデルの所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長分布モデルを取得する光路長分布モデル取得部と、時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部と、前記時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得部と、前記光の強度分布と、前記光路長分布モデルと、前記光強度モデルとに基づいて、前記光の強度分布から前記任意の層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲を算出する積分区間算出部と、前記光の強度分布と、前記時間分解波形のモデルと、前記光路長分布モデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長分布を取得する光路長取得部と、前記光の強度分布から前記任意の層以外の層の光の強度を除外するように前記時間の範囲を変化させて前記任意の層における目的成分の光吸収係数を算出し取得する光吸収係数算出・取得部と、前記光吸収係数算出・取得部が取得した前記目的成分の光吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出部と、を備えてなることを特徴とする。
そして、光吸収係数算出・取得部により、光の強度分布から任意の層以外の層の光の強度を除外するように時間の範囲を変化させて任意の層における目的成分の光吸収係数を算出し取得し、濃度算出部により、光吸収係数算出・取得部が取得した目的成分の光吸収係数に基づいて、任意の層における目的成分の濃度を算出する。
したがって、任意の層における目的成分の光吸収係数、すなわち目的成分の濃度をさらに精度良く測定することができる。
したがって、任意の層における目的成分の光吸収係数、すなわち目的成分の濃度をさらに精度良く測定することができる。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに精度良く測定することができる。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに精度良く測定することができる。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに精度良く測定することができる。
本発明では、濃度定量装置として血糖値測定装置を、観測対象として人の手のひらの皮膚を、目的成分としてグルコースを、それぞれ例に取り説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の血糖値測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
この血糖値測定装置100は、シミュレーション部101、光路長分布記憶部102、時間分解波形記憶部103、照射部104、受光部105、計測光強度取得部106、光路長取得部107、無吸収時光強度取得部(光強度モデル取得部)108、光吸収係数算出部109、濃度算出部110を備えている。
この血糖値測定装置100は、皮膚(観測対象)の真皮層(任意の層)に含まれるグルコース(目的成分)の濃度を測定する。
光路長分布記憶部102は、光吸収係数がゼロの皮膚モデルの光路長分布を記憶する。
時間分解波形記憶部103は、光吸収係数がゼロの皮膚モデルの時間分解波形を記憶する。
照射部104は、皮膚に対して短時間パルス光を照射する。この照射部104が照射する複数の短時間パルス光は、皮膚を構成する主成分の各々の成分の吸収スペクトル分布の直交性が高くなる波長の光、すなわち、皮膚を構成する主成分の各々の成分のうち、ある主成分における特定成分の吸収スペクトルの極大値が他の成分の吸収スペクトルの極大値と大きく異なる波長の光を含んでいる。
ここで、短時間パルス光とは、パルス幅の時間が照射部104から受光部105へ光が空気中を直接伝搬する時間よりも短いパルス光のことであり、例えば、パルス光の半値幅が0.1ps〜10ps、2つのパルス光の間の時間間隔が1ps〜100psのパルス光のことである。
また、光路長分布とは、光(光子)の移動経路の長さ(光路長)を当該光(光子)が受光部105に到達するまでの時間を基に分布関数として表したものである。
光路長取得部107は、光路長分布記憶部102からある時刻における光路長を取得する。
無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103からある時刻における光の吸収係数をゼロ(零)としたときの光強度モデルを取得する。
光吸収係数算出部109は、短時間パルス光を照射した皮膚の真皮層における光吸収係数を算出する。
濃度算出部110は、真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出する。
ここで、観測対象である人の皮膚組織の構造について説明する。
図2は、人の皮膚組織の断面を示す模式図であり、皮膚31は、表皮層32と、真皮層(任意の層)33と、皮下組織34の3層により構成されている。
表皮層32は、最も外側にある厚み0.2mm〜0.3mmの薄い層で、概ね水を60%程度、蛋白質、脂質及びグルコースを含有する層であり、角質層、顆粒層、有棘層、底層等を含む。
真皮層33は、表皮層32下に形成される厚み0.5mm〜2mmの層で、概ね水を60%程度、蛋白質、脂質及びグルコースを含有する層であり、この真皮層33内には神経、毛根、皮脂腺、汗腺、毛包、血管、リンパ管等が存在する。
皮下組織34は、真皮層33下に形成される厚み1〜3mmの層で、大部分が概ね脂質を90%以上含み、残部が水からなる皮下脂肪でできている。
血糖値測定装置100は、血糖値を測定する前に、予め皮膚モデルの各層における光路長分布と時間分解波形とを算出しておく必要がある。
まず、皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形の算出方法を説明する。
初めに、シミュレーション部101は、皮膚モデルを生成する。皮膚モデルの生成は、皮膚の各層の光散乱係数、光吸収係数及び厚みを決定することで行う。ここで、皮膚の部分を特定すれば、この特定された皮膚の部分における各層の散乱係数及び厚みは、個体による差が少ないので、予めサンプルを取ることなどによって決定するとよい。なお、表皮層32の厚みは略0.3mm、真皮層33の厚みは略1.2mm、皮下組織34の厚みは略3.0mmである。
また、ここで用いる皮膚モデルの光吸収係数はゼロとする。その理由は、この皮膚モデルを用いて光吸収量を算出するからである。
このモンテカルロ法によるシミュレーションは、例えば以下のように行われる。
また、シミュレーション部101は、光子が次に進む点までの方向θの計算を、式(5)により行う。
シミュレーション部101は、上記式(4)、式(5)の計算を単位時間毎に繰り返すことにより、照射部104から受光部105までの光子の移動経路を算出することができる。シミュレーション部101は、複数の光子について移動距離の算出を行う。例えば、シミュレーション部101は、108個の光子について移動距離を算出する。
図3では、横軸を光子の照射からの経過時間とし、縦軸を光路長の対数表示としている。
シミュレーション部101は、受光部105に到達した光子の各々の移動経路を、移動経路が通過する層毎に分類する。そして、シミュレーション部101は、単位時間毎に到達した光子の移動経路の平均長を分類された層毎に算出することで、図3に示すような皮膚の各層の光路長分布を算出する。
図4は、シミュレーション部101が算出した時間分解波形を示す図である。図4では、横軸を光子の照射からの経過時間とし、縦軸を受光部8が検出した光子数としている。
上述したような処理により、シミュレーション部101は、複数の波長に対して、皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形を算出する。このとき、シミュレーション部101は、皮膚の主成分(水、たんぱく質、脂質、グルコース等)の吸収スペクトルの直交性高くなる波長の光、すなわち皮膚の主成分(水、たんぱく質、脂質、グルコース等)の各々の成分のうち、ある主成分における特定成分の吸収スペクトルの極大値が他の成分の吸収スペクトルの極大値と大きく異なる波長の光について、光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
図5によれば、グルコースの吸収係数は、波長が1600nmのときに極大となり、水の吸収係数は波長が1450nmのときに極大となることがわかる。
そのため、シミュレーション部101は、例えば1450nm、1600nmというように、皮膚を構成する主成分の各々の成分の吸収スペクトル分布の直交性が高くなる波長の光、すなわち、皮膚を構成する主成分の各々の成分のうち、ある主成分における特定成分の吸収スペクトルの極大値が他の成分の吸収スペクトルの極大値と大きく異なる波長の光について、光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
まず、ユーザー(被測定者)が血糖値測定装置100を手首等の皮膚に当て、測定開始スイッチ(図示せず)の押下等により血糖値測定装置100を動作させると、照射部104は、皮膚31に対して波長λ1の短時間パルス光を照射する(ステップS1)。
例えば、皮膚を構成する主成分のうち、ある主成分における特定成分の光吸収係数が他の成分の光吸収係数より大きくなる波長の光、すなわち、特定成分の光吸収係数の極小値が他の成分の光吸収係数の極小値と大きく異なる波長の光について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
このとき、受光部105は、照射開始からの単位時間毎(例えば、1ピコ秒毎)の受光強度を内部メモリー(図示せず)に記録しておく。
図6のフローチャートでは、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合について説明する。
すなわち、計測光強度取得部106は、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合には、3つの異なる時刻t1〜t3における受光強度I(t1)〜I(t3)を取得する。ここで、皮膚の層の数と同じ数だけ受光強度を取得する理由は、後述する処理において、皮膚の各層の吸収係数を連立方程式によって算出するためである。
また、計測光強度取得部106が受光強度I(t1)〜I(t3)を取得すると、無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103が記憶する波長λ1の時間分解波形から、時刻t1〜t3における検出光子数N(t1)〜N(t3)を取得する(ステップS5)。
本実施形態では、皮膚の主成分を水、たんぱく質、脂質、グルコースの4種類として血糖値の測定を行うため、光吸収係数算出部109は、4種類の波長λ1〜λ4に対して光吸収係数μ1〜μ3を算出したか否かを判定する。ここで、波長λ1〜λ4は、シミュレーション部101が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中から選択する。
他方、光吸収係数算出部109が、波長λ1〜λ4の光吸収係数μ1〜μ3を算出していると判定した場合(ステップS7:YES)、濃度算出部110は、式(7)に基づいて真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出する(ステップS8)。
つまり、式(7)のg4を算出することで、真皮層に含まれるグルコースのモル濃度を求めることができる。
本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
第2の実施形態における血糖値測定装置の構成は、第1の実施形態の血糖値測定装置100の構成と同一であり、計測光強度取得部106、光路長取得部107、無吸収時光強度取得部108、光吸収係数算出部109の動作が異なる。
まず、血糖値測定装置100を動作させると、照射部104は、皮膚に対して波長λ1の短時間パルス光を照射する(ステップS11)。ここで、波長λ1は、シミュレーション部101が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中の1つである。
受光部105が受光を完了すると、計測光強度取得部106は、内部メモリーに格納されている受光強度から、ある時刻から時間τの間の受光強度の時間分布を取得する(ステップS13)。
図7のフローチャートでは、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合について説明する。
すなわち、計測光強度取得部106は、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合には、ある時刻から時間τの間の皮膚の各層の光路長L1〜L3を取得する(ステップS14)。
他方、光吸収係数算出部109が波長λ1〜λ4の光吸収係数μ1〜μ3を算出していると判定した場合(ステップS17:YES)、濃度算出部110は、上述した式(7)に基づいて真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出する(ステップS18)。
例えば、第1の実施形態及び第2の実施形態では、濃度定量方法を血糖値測定装置100に実装し、皮膚の真皮層に含まれるグルコースの濃度を測定する場合を説明したが、これに限られず、濃度定量方法を、複数の層から形成される観測対象の任意の層における目的成分の濃度を定量する他の装置に用いても良い。
さらに、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
図8は、本発明の第3の実施形態の血糖値測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態の血糖値測定装置200が、第1の実施形態の血糖値測定装置100と異なる点は、本実施形態の血糖値測定装置200が、照射部104と、受光部105と、コンピューターシステム201とを備え、コンピューターシステム201は、記憶部202と、制御部(CPU)203とを備え、記憶部202は、シミュレーション部101におけるシミュレーションの結果を記憶している光路長分布記憶部102及び時間分解波形記憶部103の機能を実行し、制御部(CPU)203は、計測光強度取得部106、光路長取得部107、無吸収時光強度取得部108、光吸収係数算出部109及び濃度算出部110の機能を実行する点である。
図9は、本発明の第4の実施形態の血糖値測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
この血糖値測定装置300は、手のひら等の皮膚(観測対象)を構成する複数層のうちの真皮層(任意の層)に含まれるグルコース(目的成分)の濃度を非侵襲にて定量する装置であり、シミュレーション部301と、光路長分布記憶部302と、時間分解波形記憶部303と、照射部304と、受光部305と、計測光強度取得部(光強度取得部)306と、光路長取得部(光路長分布モデル取得部)307と、無吸収時光強度取得部(光強度モデル取得部)308と、積分区間算出部309と、光吸収係数算出部310と、光吸収係数分布記憶部311と、光吸収係数取得部312と、濃度算出部313とを備えている。
光路長分布記憶部302は、皮膚に対して照射する短時間パルス光の、この皮膚を構成する各々の層における光路長分布のモデルを記憶する。ここでは、光吸収係数がゼロの皮膚モデルの光路長分布を記憶する。
ここで、短時間パルス光とは、パルス幅の時間が照射部304から受光部305へ光が空気中を直接伝搬する時間よりも短いパルス光のことであり、例えば、パルス光の半値幅が0.1ps〜10ps、2つのパルス光の間の時間間隔が1ps〜100psのパルス光のことである。
また、光路長分布とは、光(光子)の移動経路の長さ(光路長)を当該光(光子)が受光部305に到達するまでの時間を基に分布関数として表したものである。
なお、シミュレーション部301におけるシミュレーションの結果を、光路長分布記憶部302及び時間分解波形記憶部303に記憶させた構成とすれば、シミュレーション部301を別途設ける必要がなくなる。
受光部305は、短時間パルス光が皮膚によって後方散乱した光を受光する。この受光部305は、受光強度を記録する内部メモリー(図示せず)を備えている。なお、この内部メモリーは、受光部305に電気的に接続する外部メモリーに代えた構成としてもよい。
光路長取得部307は、光路長分布記憶部302から、光路長分布のモデルの所定の時刻における、皮膚の各々の層の光路長分布モデルを取得する。ここでは、光路長分布記憶部302からある時刻における皮膚の各々の層の光路長分布モデルを取得する。ここでいう光路長とは、照射部304から照射された短時間パルス光が皮膚内に侵入し、この皮膚内にて散乱されて受光部305により検出されるまでの光の路の長さのことであり、後述するように、照射部304と受光部305との距離を設定することにより、皮膚の各々の層の光路長が推定される。
積分区間算出部309は、計測光強度取得部306が取得した光の強度分布と、光路長取得部307が取得した光路長分布モデルと、無吸収時光強度取得部308が取得した無吸収時光強度モデルとに基づいて、光の強度分布から皮膚の各々の層のうち真皮層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。
例えば、(1)後方散乱した光を受光する受光部305の出力する光強度が計測光強度取得部306の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部301で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部303から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)皮膚表面に接する受光部305と照射部304との間隔、(4)シミュレーション部301に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を決定する。
具体的には、無吸収時光強度取得部308が取得した検出光子数(無吸収時光強度)N(t1)〜N(t3)を基に皮膚の各々の層からの光子到達時間をそれぞれ求め、これらの光子到達時間に真皮層以外の層からの光子到達時間がある場合、積分区間算出部309で得られた時間の範囲から真皮層以外の層からの光子到達時間を除いて真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する。
具体的には、無吸収時光強度取得部308が取得した検出光子数(無吸収時光強度)N(t1)〜N(t3)を基に皮膚の各々の層からの光子到達時間をそれぞれ求め、これらの光子到達時間に真皮層以外の層からの光子到達時間が無い場合、積分区間算出部309で得られた時間の範囲に基づき真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する。
この光吸収係数算出部310では、皮膚31における各層の光吸収係数を、下記の式(9)から算出する。
ここで、第1層は表皮層、第2層は真皮層、第3層は皮下組織を示し、μ1は表皮層の光吸収係数、μ2は真皮層の光吸収係数、μ3は皮下組織の光吸収係数を示す。
このように、計測光強度取得部306が取得した光の強度分布から真皮層以外の層からの光の強度を取り除くことができ、この真皮層のみの光の強度分布に基づき真皮層におけるグルコースの光吸収係数を精度良く算出することができる。
光吸収係数取得部312は、光吸収係数分布記憶部311から、皮膚の真皮層におけるグルコースの光吸収係数及び推定誤差率の分布を取得する。
この濃度算出部313では、皮膚の特定深さの層、すなわち真皮層におけるグルコースの濃度を、下記の式(10)から算出する。
ここで、第1層は表皮層、第2層は真皮層、第3層は皮下組織を示し、μ1は表皮層の光吸収係数、μ2は真皮層の光吸収係数、μ3は皮下組織の光吸収係数を示す。
この場合、照射部304と受光部305との入出射間距離Wと皮膚内に侵入する光Rの侵入深さ(バナナ形の中心軸の最低部と体表面(皮膚表面)との距離)との間には、一定の関係がある。そこで、照射部304と受光部305との入出射間距離Wを規定することにより、皮膚内に侵入する光Rの侵入深さも一義的に決定されることとなる。例えば、入出射間距離Wを10mmとすると、光Rの侵入深さは10mmとなり、入出射間距離Wを0.8mmとすると、光Rの侵入深さは0.8mmとなる。
次いで、光路長取得部307は、光路長分布記憶部302から、皮膚モデルにおける光路長分布の時刻tにおける皮膚の各層の光路長を取得し、無吸収時光強度取得部308は、時間分解波形記憶部303から、皮膚モデルにおける短時間パルス光の時間分解波形の時刻tにおける光の強度を取得する。
次いで、光吸収係数分布記憶部311は、光吸収係数算出部310において算出された真皮層におけるグルコースの光吸収係数及び推定誤差率の分布を記憶する。
次いで、光吸収係数取得部312は、光吸収係数分布記憶部311から、皮膚の真皮層におけるグルコースの光吸収係数及び推定誤差率の分布を取得する。
血糖値測定装置300は、血糖値を測定する前に、予め皮膚モデルの各層における光路長分布と時間分解波形とを算出しておく必要がある。
ここで、皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形の算出方法を説明する。
初めに、シミュレーション部301は、皮膚モデルを生成する。皮膚モデルの生成は、皮膚の各層の光散乱係数、光吸収係数及び厚みを決定することで行う。ここで、皮膚の部分を特定すれば、この特定された皮膚の部分における各層の散乱係数及び厚みは、個体による差が少ないので、予めサンプルを取ることなどによって決定するとよい。なお、表皮層32の厚みは略0.3mm、真皮層33の厚みは略1.2mm、皮下組織34の厚みは略3.0mmである。
また、ここで用いる皮膚モデルの光吸収係数はゼロとする。その理由は、この皮膚モデルを用いて光吸収量を算出するからである。
このモンテカルロ法によるシミュレーションは、例えば以下のように行われる。
また、シミュレーション部301は、光子が次に進む点までの方向θの計算を、式(12)により行う。
シミュレーション部301は、上記式(11)及び式(12)の計算を単位時間毎に繰り返すことにより、照射部304から受光部305までの光子の移動経路を算出することができる。シミュレーション部301は、複数の光子について移動距離の算出を行う。例えば、シミュレーション部301は、108個の光子について移動距離を算出する。
このように、シミュレーション部301は、異なる複数の皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形を算出する。このとき、シミュレーション部301は、皮膚の主成分(水、たんぱく質、脂質、グルコース等)の吸収スペクトルの差が大きい波長について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
まず、被測定者が血糖値測定装置300を、図2に示すような手首等の皮膚31に当て、測定開始スイッチ(図示せず)の押下等により血糖値測定装置300を動作させると、照射部304は、皮膚31に対して波長λkの短時間パルス光を照射する(ステップS21)。
この波長λkとしては、例えば、シミュレーション部301が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中の1つが好ましい。
例えば、皮膚31を構成する主成分のうち、ある主成分における特定成分の光吸収係数が他の成分の光吸収係数より大きくなる波長の光、すなわち、特定成分の光吸収係数の極小値が他の成分の光吸収係数の極小値と大きく異なる波長の光について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
このとき、受光部305は、照射開始からの単位時間毎(例えば、1ピコ秒毎の時刻t1〜tm)の受光強度を、内部メモリー(図示せず)に記録しておく。
ここでは、受光部305が受光した後方散乱光の光強度を基に皮膚の各々の層からの光子到達時間をそれぞれ求め、各層からの光子到達時間に基づき積分区間算出部309で得られた時間の範囲である積分区間を変化させて真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する(処理A;ステップS23)。
積分区間算出部309は、計測光強度取得部306が取得した光の強度分布と、光路長取得部307が取得した光路長分布モデルと、無吸収時光強度取得部308が取得した無吸収時光強度モデルとに基づいて、光の強度分布から皮膚の各々の層のうち真皮層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。
例えば、異なる複数の皮膚モデルとして、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合には、3つの異なる時刻t1〜t3における受光強度I(t1)〜I(t3)を取得する。ここで、皮膚の層の数と同じ数だけ受光強度を取得する理由は、後述する処理において、皮膚の各層の吸収係数を連立方程式によって算出するためである。
また、計測光強度取得部306が、受光強度I(t1)〜I(t3)を取得すると、無吸収時光強度取得部308は、時間分解波形記憶部303が記憶する波長λ1の時間分解波形から、短時間パルス光の時間分解波形の異なる複数の皮膚モデルの所定の時刻における光強度、例えば、時刻t1〜t3における検出光子数(無吸収時光強度)N(t1)〜N(t3)を取得する(ステップS34)。
一方、これらの光子到達時間に真皮層以外の層からの光子到達時間が無かった場合、積分区間算出部309で得られた時間の範囲(時間幅)である積分区間を新たに積分区間として設定し、この新たに設定した積分区間を基に真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する。
本実施形態では、皮膚の主成分を水、たんぱく質、脂質、グルコースの4種類として血糖値の測定を行うので、光吸収係数算出部310は、4種類の波長λ1〜λ4に対して光吸収係数μ1〜μ3を算出したか否かを判定する。ここで、波長λ1〜λ4は、シミュレーション部301が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中から選出する。
一方、光吸収係数算出部310が新たに設定した積分区間での真皮層の光吸収係数μ1〜μ3を算出したと判断した場合(ステップS37:YES)、真皮層の光吸収係数分布から光吸収係数を取得する(ステップ38)。
ここで、光吸収係数取得部312が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の光吸収係数を算出していないと判断した場合(ステップS24:NO)、短時間パルス光の照射(ステップS21)に戻り、まだ算出していない皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の光吸収係数を算出し、再度、光吸収係数の算出の可否の判断(ステップS24)を行う。
濃度算出部313は、真皮層におけるグルコースの濃度を、下記の式(14)に基づいて算出する。
つまり、式(14)のg4を算出することで、真皮層に含まれるグルコースのモル濃度を求めることができる。式(14)によりグルコースのモル濃度を求めることができる理由は、第1の実施形態と全く同様である。
ここで、コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリー等が挙げられる。
また、このコンピュータープログラムを通信回線によりコンピューターに配信し、この配信を受けたコンピューターが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
さらに、上述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
図12及び図13は、本発明の第5の実施形態の血糖値測定装置(濃度定量装置)が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。
本実施形態の血糖値測定装置は、第4の実施形態の血糖値測定装置300と同一の構成であり、光路長取得部307、無吸収時光強度取得部308、計測光強度取得部306、光吸収係数算出部310の動作が異なる。
まず、被測定者が血糖値測定装置300を動作させると、照射部304は、皮膚31に対して波長λkの短時間パルス光を照射する(ステップS41)。
この波長λkとしては、例えば、シミュレーション部301が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中の1つが好ましい。
このとき、受光部305は、照射開始からの単位時間毎(例えば、1ピコ秒毎)の受光強度を、内部メモリー(図示せず)に記録しておく。
ここでは、受光部305が受光した後方散乱光の光強度を基に皮膚の各々の層からの光子到達時間をそれぞれ求め、各層からの光子到達時間に基づき積分区間算出部309で得られた時間の範囲である積分区間を変化させて真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する(処理B;ステップS43)。
積分区間算出部309は、計測光強度取得部306が取得した光の強度分布と、光路長取得部307が取得した光路長分布モデルと、無吸収時光強度取得部308が取得した無吸収時光強度モデルとに基づいて、光の強度分布から皮膚の各々の層のうち真皮層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。より具体的には、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を算出する(ステップS51)。
また、計測光強度取得部306が、時間τの間の受光強度を取得すると、無吸収時光強度取得部308は、時間分解波形記憶部303が記憶する波長λkの時間分解波形から、ある時刻から時間τの間の検出光子数(無吸収時光強度)を取得する(ステップS54)。
一方、これらの光子到達時間に真皮層以外の層からの光子到達時間が無かった場合、積分区間算出部309で得られた時間の範囲(時間幅)である積分区間を新たに積分区間として設定し、この新たに設定した積分区間を基に真皮層におけるグルコースの光吸収係数を算出する。
本実施形態では、皮膚の主成分を水、たんぱく質、脂質、グルコースの4種類として血糖値の測定を行うので、光吸収係数算出部310は、4種類の波長λ1〜λ4に対して光吸収係数μ1〜μ3を算出したか否かを判定する。ここで、波長λ1〜λ4は、シミュレーション部301が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中から選出する。
一方、光吸収係数算出部310が新たに設定した積分区間での真皮層の光吸収係数μ1〜μ3を算出したと判断した場合(ステップS57:YES)、真皮層の光吸収係数分布から光吸収係数を取得する(ステップ58)。
ここで、光吸収係数取得部312が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の光吸収係数を算出していないと判断した場合(ステップS44:NO)、短時間パルス光の照射(ステップS41)に戻り、まだ算出していない皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の光吸収係数を算出し、再度、光吸収係数の算出の可否の判断(ステップS44)を行う。
図14は、本発明の第6の実施形態の血糖値測定装置(濃度定量装置)の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態の血糖値測定装置400が、第4の実施形態の血糖値測定装置300と異なる点は、時間分解波形記憶部303と積分区間算出部309との間に、無吸収時光強度取得部308と並行に吸収時光強度取得部(光強度モデル取得部)401を設けた点である。
ここでは、吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部303から、短時間パルス光の時間分解波形のモデルの所定の時刻における吸収時光強度、すなわち、ある時刻における吸収時の光強度を取得する。
この場合、積分区間算出部309は、(1)後方散乱した光を受光する受光部305の出力する光強度が計測光強度取得部306の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部301で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部303から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)シミュレーション部301で得られる吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部303から取得した吸収時光強度の時間特性、(4)皮膚表面に接する受光部305と照射部304との間隔、(5)シミュレーション部301に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間を算出する。より具体的には、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を算出する。
例えば、上記の各実施形態では、濃度定量装置として血糖値測定装置を、観測対象として人の手のひらの皮膚を、目的成分としてグルコースを、パルス光として短時間パルス光を、それぞれ取ることで、皮膚の真皮層に含まれるグルコースの濃度を測定する場合について説明したが、これに限らず、濃度定量方法を、複数の光散乱媒質の層から形成される観測対象の任意の層における目的成分の濃度を定量する他の装置に用いてもよく、特定波長の短時間パルス光を、特定波長の連続光に替えてもよい。
例えば、携帯型の皮膚主成分の濃度測定装置に適用した場合、皮膚疾患の検査や診断や治療に有効利用することが可能である。
Claims (11)
- 複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置であって、
前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射部と、
前記短時間パルス光の照射により前記観測対象から後方散乱される光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した光の強度から光の強度分布を取得する光強度取得部と、
前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、
前記光路長分布のモデルの所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長分布モデルを取得する光路長分布モデル取得部と、
時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部と、
前記時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得部と、
前記光の強度分布と、前記光路長分布モデルと、前記光強度モデルとに基づいて、前記光の強度分布から前記任意の層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲を算出する積分区間算出部と、
前記光の強度分布と、前記時間分解波形のモデルと、前記光路長分布モデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長分布を取得する光路長取得部と、
前記光の強度分布から前記任意の層以外の層の光の強度を除外するように前記時間の範囲を変化させて前記任意の層における目的成分の光吸収係数を算出し取得する光吸収係数算出・取得部と、
前記光吸収係数算出・取得部が取得した前記目的成分の光吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出部と、
を備えてなることを特徴とする濃度定量装置。 - 前記光吸収係数算出・取得部は、
前記光の強度分布に前記任意の層以外の層の光の強度があるか否かを判断し、前記任意の層以外の層の光の強度がある場合、この任意の層以外の層の光の強度に対応する時間の範囲を除外するように前記時間の範囲を変化させて前記複数の層の各々の層の光吸収係数を算出する光吸収係数算出部と、
前記光吸収係数算出部が算出した前記複数の層の各々の層の光吸収係数に基づき前記任意の層における目的成分の光吸収係数を取得する光吸収係数取得部と、
を備えてなることを特徴とする請求項1記載の濃度定量装置。 - 前記光強度モデル取得部は、
前記時間分解波形記憶部から前記短時間パルス光の光強度モデルのうち無吸収時の光強度モデルを得る無吸収時光強度取得部と、前記短時間パルス光の光強度モデルのうち吸収時の光強度モデルを得る吸収時光強度取得部と、
を備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の濃度定量装置。 - 前記光強度取得部は、前記時間の範囲内の前記観測対象の層の数n以上となる複数の時刻t1〜tmにおける光強度を取得し、
前記光吸収係数算出部は、
自然対数を示すln(・)、前記受光部が前記時間の範囲内の時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記時間の範囲内の時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの前記時間の範囲内の時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、第i層の光吸収係数を示すμiを用いて、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の濃度定量装置。 - 前記光強度取得部が光強度を取得する複数の時刻は、前記複数の層の各々の層の光路長分布のピーク時間を含むことを特徴とする請求項4記載の濃度定量装置。
- 前記光強度取得部は、前記時間の範囲内の所定の時刻から少なくとも所定の時間τの間の光強度を取得し、
前記光吸収係数算出部は、
自然対数を示すln(・)、前記受光部が前記時間の範囲内の時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記時間の範囲内の時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの前記時間の範囲内の時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、前記観測対象の層の数を示すn、第i層の光吸収係数を示すμiを用いて、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の濃度定量装置。 - 前記照射部は、複数の波長1〜qの光を照射し、
前記光吸収係数算出部は、前記任意の層における光吸収係数を前記照射部が照射した複数の波長毎に算出し、
前記濃度算出部は、
前記任意の層である第a層における波長iの光吸収係数を示すμa(i)、前記観測対象を形成する第j成分のモル濃度を示すgj、第j成分の波長iに対する光吸収係数を示すεj(i)、前記観測対象を形成する主成分の個数を示すp、照射部が照射する波長の種類数を示すqを用いて、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の濃度定量装置。 - 前記照射部が照射する複数の光は、前記目的成分の光吸収係数が大きくなる波長の光を含むことを特徴とする請求項7記載の濃度定量装置。
- 前記照射部が照射する複数の光は、前記観測対象を構成する主成分の各々の成分の吸収スペクトル分布の直交性が高くなる波長の光を含むことを特徴とする請求項7記載の濃度定量装置。
- 複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置を用いた濃度定量方法であって、
照射部により、前記観測対象に短時間パルス光を照射し、
受光部により、前記短時間パルス光の照射により前記観測対象から後方散乱される光を受光し、
光強度取得部により、前記受光部が受光した光の強度から光の強度分布を取得し、
光路長取得部により、前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長分布を取得し、
光強度モデル取得部により、前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得し、
積分区間算出部により、前記光の強度分布と、前記光路長分布モデルと、前記光強度モデルとに基づいて、前記光の強度分布から前記任意の層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲を算出し、
光吸収係数算出・取得部により、前記光の強度分布から前記任意の層以外の層の光の強度を除外するように前記時間の範囲を変化させて前記任意の層における目的成分の光吸収係数を算出し取得し、
濃度算出部により、前記光吸収係数算出・取得部が取得した前記目的成分の光吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する、
ことを特徴とする濃度定量方法。 - 複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置のコンピューターに、
前記観測対象に前記短時間パルス光を照射する照射手順、
前記短時間パルス光の照射により前記観測対象から後方散乱される光を受光する受光手順、
前記受光部が受光した光の強度から光の強度分布を取得する光強度取得手順、
前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における前記複数の層の各々の層の光路長分布を取得する光路長取得手順、
前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得手順、
前記光の強度分布と、前記光路長分布モデルと、前記光強度モデルとに基づいて、前記光の強度分布から前記任意の層の光強度分布に対応する領域の時間の範囲を算出する積分区間算出手順、
前記光の強度分布から前記任意の層以外の層の光の強度を除外するように前記時間の範囲を変化させて前記任意の層における目的成分の光吸収係数を算出し取得する光吸収係数算出・取得手順、
前記光吸収係数算出・取得部が取得した前記目的成分の光吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出手順、
を実行させることを特徴とするプログラム。
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