JP2012084633A - 貴金属ペーストを用いた半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

貴金属ペーストを用いた半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、接合後に部材汚染を生じることなく接合可能となる半導体デバイスの製造法であって、接合部材に対し均一に塗布可能としつつ、簡便なプロセスで接合可能となる技術を提供する。
【解決手段】本発明は、基板と半導体素子とを接合部材として接合する半導体デバイスの製造方法において、(a)一方の接合部材に、所定の純度及び粒径の貴金属粉と、所定の沸点の有機溶剤とからなり、チクソトロピー指数(TI)値が6.0以上である貴金属ペーストを塗布する工程、及び(b)前記貴金属ペーストを介して前記一方の接合部材と他方の接合部材とを配置し、少なくとも焼結体を80〜350℃に加熱しながら一方向又は双方向から加圧して接合する工程、を含む方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、貴金属ペーストを用いて基板と半導体素子とを接合する半導体デバイスの製造方法に関する。
貴金属を用いて基板と半導体素子とを接合する半導体デバイスの製造方法としては、ろう材を用いる方法が知られている。ろう材としては、フラックスレスのろう材であるAuSn系ろう材が一般に用いられており、ろう材を介して接合する一対の部材を配置した後、ろう材が溶融する融点以上(約300℃以上)の温度に加熱してろう材を融着させる方法が一般的である。しかしながら、このように接合部材を高温に加熱する方法では、接合後に加わる熱応力により、半導体素子等の部材において電気的特性の変動という問題を生じる場合があった。
このような理由から、できるだけ低温の加熱で部材を接合することが望まれていた。特許文献1には、貴金属粉を銀粉として、銀粉とエポキシ樹脂とを含む銀ペーストを用いる方法が記載されており、かかる銀ペーストを用いた場合、100〜200℃という比較的低温で接合可能となっている。
また、本発明者等は、接合材料として、ろう材に替えて、所定の純度及び粒径を有する金粉と、有機溶剤とを含む金ペーストを用いる製造方法を提案している(特許文献2)。この文献では、半導体素子を接合する際、金ペーストを接合部材に塗布し、乾燥・焼結させた後、他方の部材を配置して、加熱及び加圧して両部材を接合する方法を採用しており、従来のろう材を用いた接合に比べ比較的低温での接合が可能となる。
特開2004−359830号公報 特開2007−324523号公報
しかしながら、特許文献1のように樹脂を含む貴金属ペーストを用いた接合方法であると、接合時の加熱では樹脂が完全に分解せず、接合後の部材に残る場合があった。このため、半導体チップ等の部材では、残存した樹脂が汚染原因となり、半導体性能等に影響することがあった。
一方、特許文献2の接合方法では、樹脂を含まない貴金属ペーストを用いることで、上記汚染の問題は解決できる一方、樹脂を含まない場合、接合部材にペーストを塗布した後、貴金属粒子の凝集が比較的進行しやすい傾向や、塗布したペーストから有機溶剤がしみ出てしまう場合があった。また、特許文献2の接合方法では、塗布後の貴金属ペーストの成形性、ハンドリング性を向上するために乾燥工程を要する等、比較的多くの工程を要するものであった。
そこで本発明では、接合後に部材汚染を生じることなく接合可能となる半導体デバイスの製造方法であって、接合部材に対し均一に塗布可能としつつ、簡便なプロセスで接合可能となる技術の提供を目的とする。
上記課題を解決する本発明は、基板と半導体素子とを接合部材として接合する半導体デバイスの製造方法において、下記工程を含むことを特徴とする方法である。
(a)一方の接合部材に、純度99.9質量%以上、平均粒径0.1〜0.5μmである貴金属粉と、沸点200〜350℃である有機溶剤とからなり、回転粘度計による23℃におけるシェアレート40/sの粘度に対する4/sの粘度の測定値から算出されるチクソトロピー指数(TI)値が6.0以上である貴金属ペーストを塗布する工程。
(b)前記貴金属ペーストを介して前記一方の接合部材と他方の接合部材とを配置し、少なくとも焼結体を80〜350℃に加熱しながら一方向又は双方向から加圧して接合する工程。
本発明では、貴金属ペーストを接合部材に塗布した後、貴金属ペーストを介して一対の接合部材を配置して加熱及び加圧することで接合できる。すなわち、適度なTI値(チクソトロピー性)の貴金属ペーストを用いるため、接合部材に塗布したペーストの成形性が良好となる。このため、従来の接合方法において必要とされていた乾燥工程を省略することができ、製造工程の簡略化を実現できる。また、接合部材を接合する際の加圧についても、低圧で高い接合強度を実現できる。以下、本発明の半導体デバイスの製造方法について詳細に説明する。
本発明の方法で接合可能な半導体デバイスとしては、LEDや、整流ダイオード、パワートランジスタ等のいわゆるパワーデバイス等がある。これら半導体デバイスは、シリコンウェーハ等の各種基板と半導体素子とを接合部材として接合して製造される。
これらの接合部材に貴金属ペーストを塗布する方法としては、スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ペーストを滴下後にヘラ等で広げる方法、または接合対象物をそのままマウントする方法等、接合部の大きさに対応させて種々の方法を用いることができる。
本発明によれば、貴金属ペーストを塗布した後、乾燥工程等を行うことなく、塗布したペースト上に半導体素子等の接合対象物をマウントし(載せ)、加熱及び加圧して、接合部材を接合できる。この加熱処理により、ペースト中の有機溶剤の蒸発、及び貴金属粉の焼結が進行する。本発明によれば、この際にボイド等を生じることなく蒸発及び焼結が均一に進行し、緻密化した接合部を形成できる。加熱温度は、80〜350℃とするのが好ましい。80℃未満では接合が不十分になる場合があり、350℃を越えると冷却時の熱歪の影響が大きくなる。
また、本発明の製造方法では、上記した接合工程において、従来よりも低圧条件で接合可能となる。具体的には、1つの焼結体当り1MPa以下の加圧条件であっても、充分な強度となるよう接合できる。これに対し、従来の貴金属ペーストを用いた接合方法では、十分な接合強度とするために、1つの焼結体当り数十MPa程度での加圧を行う必要があった。従来法では、貴金属ペースト塗布後に真空乾燥等を行っており、この乾燥工程でペースト表面に凹凸が生じてしまっていたため、本発明よりも高い加圧条件が必要であったものと考えられる。
また、本発明では、ペースト塗布後接合前((a)工程と(b)工程の間)に、任意の焼結工程を行ってもよい。プロセスの簡易化を重視する場合には、乾燥工程のみならず焼結工程も省略することができるが、一方、焼結工程を行った場合には、貴金属粒子同士、及び接合部材の接合面(ペースト塗布面)と貴金属粒子との間に、互いに点接触した近接状態を形成した焼結体とすることができる。このため、焼結後の接合工程において、加熱及び加圧により各粒子間の接触部に塑性変形を生じさせると共に、変形界面で貴金属原子間の結合を生じさせて、緻密な接合を実現できる。
接合前((a)工程と(b)工程の間)に焼結工程を行う場合には、焼結温度を80〜350℃とするのが好ましい。80℃未満では上記のような点接触が生じにくい。一方、350℃を超えると、焼結が過度に進行し、金属粉末間のネッキングが進行して強固に結合してしまい、その後に加圧しても緻密な接合部にならないことに加え、加圧の際に歪が残留し易くなるからである。焼結温度は、300℃以下で行われることがより好ましい。本発明は、そもそも接合部材を保護する観点から300℃以下での接合を目指すものだからである。尚、焼結の際の加熱時間は、5〜120分とするのが好ましい。短時間では焼結炉の温度が安定せず十分な焼結ができず、あまりに長時間とすると生産性が損なわれるからである。また、この焼結は、圧力の負荷のない状態で行なうのが好ましい。焼結温度は、前記した好適範囲内であれば、焼結開始時から終了時まで同じ温度としても、焼結開始後に昇温又は降温しても良い。
次に、以上の本発明で使用する貴金属ペーストについて詳細に説明する。本発明では、純度99.9質量%以上、平均粒径0.1〜0.5μmの貴金属粉と、沸点200〜350℃の有機溶剤とからなり、回転粘度計による23℃におけるシェアレート40/sの粘度に対する4/sの粘度の測定値から算出されるチクソトロピー指数(TI)値が、6.0以上である貴金属ペーストを用いる。かかる貴金属ペーストは、接合部材の汚染原因となりうる各種樹脂を含むことなく、接合部材に対し均一に塗布可能となる。部材に塗布した後も、貴金属粒子の分散性を均一に維持でき、接合時の加熱の際にも、有機溶剤の不均一な蒸発や貴金属粉の不均一な焼結等によるボイドの発生を抑制できる。
ここで、「TI(チクソトロピー指数)値」について説明する。貴金属等のペーストでは、測定時にペーストに対して与えるせん断速度が大きくなるに従って、粘度が低下する傾向にある。このような背景の下、TI値は、せん断速度が異なる2種の回転速度により測定した粘度の値を用いて、両者の粘度の比として算出される。このためTI値は、回転速度に対する粘度変化を示す値となり、すなわち、チクソトロピー性の高さを表す指標となる。
本発明の貴金属ペーストは、TI値6.0以上であり、チクソトロピー性が適度に高い。このため、本発明の塗布工程において貴金属ペーストの成形性を維持することができ、また、接合の際も貴金属の焼結を均一に進行させて、接合部を緻密な状態にすることができる。このため、本発明は、特に貴金属ペーストの塗布面積の大きいダイボンド接合に好適となる。貴金属ペーストのTI値は、6.0未満であると、貴金属ペーストを接合部材に塗布する際に溶剤がしみ出る(ブリードアウト)場合がある。また、TI値の上限としては、20以下であることが好ましい。20を超えると、貴金属ペースト塗布前の混錬時に取り扱い困難な傾向となる。
また、TI値を算出する前提となるシェアレート4/sの粘度については、100〜1000Pa・sであることが好ましい。100Pa・s未満であると、貴金属粉が沈降して溶剤と分離しやすい傾向があり、1000Pa・sを超えると、ハンドリング性が低下しやすい。
上記貴金属ペーストを構成する有機溶剤は、沸点200〜350℃(大気圧下)のものとする。有機溶剤の沸点が200℃未満であると、接合時に有機溶剤の蒸発速度が速く、貴金属粒子の凝集制御が困難となる他、場合によっては、常温でも有機溶剤が蒸発してしまうため塗布工程における取り扱いが難しくなる。一方、有機溶剤の沸点が350℃を超えると、接合後の部材に有機溶剤が残る場合がある。有機溶剤は、かかる沸点の範囲内であれば、1種又は2種以上のものを含むことができる。ここで、本発明の有機溶剤について、「沸点200〜350℃」とあるのは、2種以上の有機溶剤が含まれる場合においては、含有する全ての種類の有機溶剤が、それぞれ沸点200〜350℃の範囲内にあることを意味する。
具体的に利用可能な有機溶剤としては、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコール類、モノテルペンアルコール類が挙げられ、分岐鎖状飽和脂肪族2価アルコールとしては、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールあるいはそれらの誘導体などが用いられ、モノテルペンアルコールとしてはシトロネロール、ゲラニオール、ネロール、メントール、テルピオール、カルベオール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、β−フェンチルアルコール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、あるいはそれらの誘導体などが用いられる。
溶剤の沸点を考慮すると、炭素数は5〜20であることが好ましい。特に、1種の有機溶媒のみからなる場合、炭素数が5〜20の飽和脂肪族2価アルコールを用いることが好ましく、2,4−ジエチル-1,5-ペンタンジオール(製品名 日香MARS;日本香料薬品(株)、以下、MARSと記載する。)が、特に好適である。2種の有機溶媒からなる場合、炭素数が5〜20の単環式モノテルペンアルコールと2環式モノテルペンアルコールを混合して用いることが好ましく、イソボルニルシクロヘキサノール(製品名 テルソルブMTPH;日本テルペン化学(株)、以下、MTPHと記載する。)とα−テルピネオールとを質量比で1/1〜3/1の割合で混合したものが、特に好適である。
次に、貴金属ペーストを構成する貴金属粉としては、金粉又は銀粉、あるいはその混合粉が好適である。電気的、熱的伝導性の面を考慮すると、特に金粉のみを用いることが好適である。
貴金属粉の純度として99.9質量%以上の高純度を要求するのは、純度が低いと、Au粒子の焼結挙動が不安定になり接合強度の安定性が低下したり、接合後の接合部材が硬くなり熱衝撃等によってクラックが入りやすくなるからである。また、貴金属粉の平均粒径は、0.1〜0.5μmとする。0.5μmを超えると、ペースト中での分散状態の維持が困難となり、貴金属粉が沈降しやすくなる。また、接合時の加熱により貴金属粉を焼結する際も、好ましい近接状態を発現させ難くなる。一方、0.1μm未満では、貴金属粉の凝集を生じる場合がある。
貴金属ペースト中における貴金属粉の体積含有率(貴金属粉の体積/貴金属ペースト全体の体積)は、26〜66体積%(v/v)であることが好ましい。このような体積含有率であると、TI値が6.0以上の貴金属ペーストとなりやすい。また、接合後の焼結体も緻密な状態となりやすく、密着性の高い接合を実現できる。金属粉の含有率は、26体積%未満であると、密着性向上の効果が得られにくく、ペーストも混錬しにくくなる。一方、金属粉の含有率が66体積%を超えると、貴金属粉の凝集を生じる場合がある。貴金属の含有量は、35〜55体積%(v/v)であると、より好ましい。
また、貴金属ペーストは、0.05〜1質量%の界面活性剤を更に含むものとしてもよい。界面活性剤を含むと、貴金属ペースト中に貴金属粉が均一に拡散した状態を維持しやすくなる。界面活性剤は0.05質量%未満であると貴金属粉の凝集抑制効果が低く、1質量%を超えると接合後の部材に界面活性剤が残ることがある。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤が好ましく、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルアンモニウム塩、オクタデセニルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩系、オクタデシルアミン塩、ステアリルアミン塩、N−アルキルアルキレンジアミン塩などのアルキルアミン塩系、ヘキサデシルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩などのピリジニウム塩系が使用される。その中でも、アルキル(C8−C18)アミン酢酸塩(製品名:アーマックC)、N−アルキル(C14−C18)トリメチレンジアミンオレイン酸塩(製品名:デュオミンTDO)が、特に好適である。尚、ポリマー系界面活性剤は、分解に高温を要するため、本発明には好適でない。
以上説明したように、本発明は、各種接合部材へ均一にペーストを塗布可能としつつ、接合時の加熱に際して均一に焼結を進行可能な技術となる。また、接合後の部材汚染等を生じることなく、簡便なプロセスにより、強度の高い接合を行うことができる。
接合部の外観X線透視観察及び断面電子顕微鏡(SEM)による断面観察結果。 接合強度の試験方法を示す図。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
[実施例1]
湿式還元法により製造した純度99.99質量%の金粉(平均粒径:0.3μm)を95質量%と、有機溶剤としてイソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)を3.75質量%と、α−テルピネオールを1.25質量%とを混合して金ペーストを調整した。この金ペースト中における金粉の体積含有率は49.6体積%であった。使用した有機溶剤及び得られた金ペーストについて、以下の物性測定を行った。
物性測定
有機溶剤及び金ペーストの粘度は、円錐型回転粘度計(HAAKE社製、Rheostress RS75、コーンプレート:チタン製 35mm、φ1°、ギャップ0.050mmにて測定)にて、測定温度23℃、シェアレート0/sで30秒間保持した後、シェアレート4/s、20/s、40/sの順でそれぞれ30秒間保持して連続的に測定した。有機溶剤の沸点は、TG−DTA(熱重量/示差熱同時分析:Rigaku製TG8101D)により、大気下10℃/minの昇温レートで測定した。また、チクソトロピー指数(TI)値は、前記シェアレート4/s及び40/sの粘度測定値から下記式にて算出した。また、実施例1の金ペーストについて、TG−DTA(熱重量/示差熱同時分析)を行った。
TI=(シェアレート4/sの粘度)÷(シェアレート40/sの粘度)
以上の結果、実施例1の金ペーストのシェアレート4/sの粘度は256Pa・sであった。また、TG−DTAより、実施例1の金ペーストでは、70℃で有機溶剤の蒸発が始まり、190℃で有機成分が完全に消失したことが確認できた。
[実施例2〜4、比較例1〜6]
実施例1と同じ金粉を用いて、有機溶剤として表1に示すものを用いて金ペーストを作成した。比較例6では有機溶剤としてビスアルケニルスクシンイミド(King Industries社製、商品名:KX1223C)を使用した。各実施例及び比較例について、有機溶剤の粘度及び沸点と、金ペーストの粘度及びTI値の結果を、実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
以上の物性測定の結果より、実施例1〜4の貴金属ペーストは、TI値6.0以上であることが示された。これに対し、比較例1、2、4、6では、TI値が6.0未満であった。また、比較例3、5では、金粉と有機溶剤とを混合しても、貴金属粉がすぐに沈降して溶剤と分離してしまうか、あるいはハンドリング困難なものとなり、いずれもペースト化することができなかった。
[金粉の平均粒径]
以上の実施例及び比較例の他、金粉として、平均粒径0.7μm及び0.05μmのものを用いて、実施例1と同様に金ペーストを作成した。その結果、金粉の平均粒径が0.7μmの場合、ペースト中で金粉の分散が維持できずに沈降が生じ、0.05μmの場合、ペースト中に部分的な凝集が確認された。
[銀ペースト]
また、金粉の代わりに銀粉(86重量%;37体積%)を用いて、実施例1と同様に銀ペーストを作成し、物性測定を行った。その結果、得られた銀ペーストは、シェアレート4/sの粘度が176Pa・s、シェアレート40/sの粘度が19Pa・sであり、TI値9.3となった。
基板に対する塗布試験
次に、上記実施例1〜4及び比較例1、2、4の金ペーストを、100mmの半導体基板(Si)中央に、面積25mmとなるように塗布し、基板への塗布性能を評価した。尚、基板には、表面にTi(50nm)、Au(200nm)を予めスパッタリングで製膜したものを用いた。
上記の結果、実施例1〜4の金ペーストは、適度なぬれ性があり基板に塗布しやすく、塗布後の金ペーストも十分な成形性を維持していた。一方、比較例2の金ペーストは、塗布した金ペーストから溶剤がしみ出る傾向となり、塗布後のペーストに変形の生じるものがあった。
接合試験
上記によりペーストを塗布した後、乾燥及び焼結を行わずに、以下の接合試験を行った。接合試験は、塗布後のペースト上に、面積4mmのSiチップ(Ti(20nm)、Au(200nm)を予め製膜した)を載置し、加熱及び加圧して接合した。接合時の加圧は、1つのチップ当り20N(5MPa)とし、加熱は工具からの伝熱により230℃となるようにし、加熱及び加圧時間は10分間とした。
上記により接合した接合部について、外観X線透視像(ユニハイトシステム社製)による組織観察を行い、下記式に基づき接合率を算出した。接合率の結果を表2に示す。また、実施例1及び比較例1のX線透過画像及び、実施例1の断面SEM観察結果を図1に示す。X線透視像では、接合部において、ボイドが発生し空隙が生じた部分は白色、接合部が密着している部分は灰色(黒色)として観察される。
接合率={密着していた部分(X線透過画像における灰色部分)の面積}÷{接合部全体(X線透過画像における灰色部分と白い部分の合計)の面積}
実施例1では、図1の外観X線透視像より、接合部にはボイド発生による空隙に由来する白色部分がほとんど観察されず、断面SEM像においても、金属粉末が点接触に近い状態で近接していた。また、表2の接合率も90%以上であった。以上より、実施例1では、接合時の加熱による金粉の焼結が均一に進行したことを確認できた。よって、実施例1のように、基板に塗布した後の乾燥及び焼結を省略した製造方法としても、良好な接合を実現できることが示された。
実施例2〜4では、表2より接合率は90%以上であり、実施例1と同様に、ボイドの発生はほとんど観察されず、焼結が均一に進行したことを確認できた。また、銀ペーストを用いた場合も、外観X線透視像より、ボイドの発生はほとんど観察されず、銀粉の焼結が均一に進行したことを確認できた。
一方、比較例1では、表2より接合率が90%未満であり、図1の外観X線透視像では、ボイド発生による空隙に由来する白色部分が多数観察された。このため、比較例1では、有機成分由来のアウト(放出)ガスにより、多数のボイドが発生し、接合時における金粉の焼結が均一に進行しなかったものと考えられる。
比較例2、4では、表2より接合率90%未満となり、ボイド発生による空隙に由来する白色部分が多数観察された。また、比較例6では、外観X線透視像より、ボイド発生の空隙に由来する白色部分が、多数観察された。
接合強度試験
次に、以上で行った接合に関して、図2に従い接合強度試験を行った。接合強度は、半導体基板10上に焼結体20を介して接合された
半導体チップ(耐熱性Siチップ)30に対し、横方向から一定速度でブレードをチップに当接、進行させ、破断(チップの剥離)が生じたときの応力の平均値(単位:N)を測定した。この測定値と破断後の接合部面積とから、単位面積あたりの接合強度の平均値(単位:MPa)を算出した。結果を表3に示す。
表3より、実施例1〜4では、接合部が電子部品の接合等に十分な接合強度(20MPa以上)となったことを確認できた。比較例1でも、表3の接合強度については各実施例と同程度であったものの、以上説明したように、接合率が低く(表2)、多数のボイド発生が観察された(図1)ため、電子部品の接合に好適なものではなかった。
[接合温度の検討]
次に、塗布後のペーストに半導体チップ(耐熱性Siチップ)を接合する際の接合温度を変化させた場合について、接合部の接合強度を測定した。接合温度を表4に示す温度とした以外は、実施例1と同様の方法で部材を接合し、接合率及び接合強度の試験方法も実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
以上の結果、実施例1、5、6のように接合温度80〜350℃とした場合、接合部は電子部品の接合等に十分な接合強度となった。これに対し、比較例7のように、接合温度80℃未満とした場合は、充分な接合強度の接合部を実現できなかった。また、接合部材として耐熱性Siチップを用いた今回の測定によれば、比較例8のように、350℃を超える接合温度とした場合にも、電子部品の接合に好適な強度の接合部となったが、耐熱性のない接合部材を接合する場合には、変形や破損などを生じ、充分な接合強度とすることが困難になると考えられる。また、そもそも、比較例8のように350℃を超える高温とした場合は、電子部品の電気的特性に影響を及ぼすと考えられる。
本発明の製造方法によれば、各種の接合部材を低温で接合でき、熱応力の影響が懸念される半導体素子等の接合に有用である。

Claims (5)

  1. 基板と半導体素子とを接合部材として接合する半導体デバイスの製造方法において、下記工程を含むことを特徴とする方法。
    (a)一方の接合部材に、純度99.9質量%以上、平均粒径0.1〜0.5μmである貴金属粉と、沸点200〜350℃である有機溶剤とからなり、回転粘度計による23℃におけるシェアレート40/sの粘度に対する4/sの粘度の測定値から算出されるチクソトロピー指数(TI)値が6.0以上である貴金属ペーストを塗布する工程。
    (b)前記貴金属ペーストを介して前記一方の接合部材と他方の接合部材とを配置し、少なくとも80〜350℃に加熱しながら一方向又は双方向から加圧して接合する工程。
  2. (b)において接合した接合部は、X線透視像において接合部全体の面積に対する接合部のうち密着していた部分の面積の割合より算出される接合率が90%以上となる請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
  3. 貴金属ペーストの貴金属粉が、金粉又は銀粉のいずれか一種以上からなる請求項1又は2に記載の半導体デバイスの製造方法。
  4. 貴金属ペースト中の貴金属の体積含有率が26〜66体積%(v/v)である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体デバイスの製造方法。
  5. 貴金属ペーストが0.05〜1質量%の界面活性剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイスの製造方法。
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