以下に、図を用いて本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の一実施形態について具体的に説明する。なお、これら実施形態は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。
以下に図1〜図7を用いて本発明に係る現像装置を備えた電子写真方式の画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
(画像形成装置)
図1により本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の第1実施形態について説明する。図1に示す画像形成装置本体17内には画像形成手段となる画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdが並設され、各々異なった色のトナー画像が潜像、現像、転写のプロセスを経て記録シートなどの記録材18上に形成される。以下、記述の煩雑化を防ぐために、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの4つの画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを画像形成部Pで代表させて説明するものとし、関連する次の各プロセス手段についても同様とする。
画像形成部Pは、それぞれ専用の像担持体となる感光ドラム30a,30b,30c,30dを具備し、各感光ドラム30a〜30d上に各色のトナー画像が形成される。各感光ドラム30a〜30dに隣接して中間転写ベルトからなる中間転写体130が設置される。該感光ドラム30a〜30dに形成された各色のトナー画像が中間転写体130上に一次転写され、二次転写ローラ11が設けられた二次転写部で記録材18上に転写される。更に、トナー画像が転写された記録材18は、定着部9で加熱及び加圧することによりトナー画像を記録材18に定着した後、記録画像として装置外に排出される。
感光ドラム30a〜30dの外周には、それぞれドラム帯電器20a,20b,20c,20d、現像装置100a,100b,100c,100d、一次転写帯電器24a,24b,24c,24d及びクリーナ40a,40b,40c,40dが設けられる。画像形成装置本体17の上方部には更に光源装置13a,13b,13c,13d及びポリゴンミラーが設置されている。
光源装置13a〜13dから発せられたレーザー光をポリゴンミラーを回転して走査する。その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、回転多面鏡で等角度走査されたビームを結像面上で等速走査させる機能を有するfθレンズにより感光ドラム30a〜30dの母線上に集光して露光する。これにより、該感光ドラム30a〜30d上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。
現像装置100a〜100dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが図示しない供給装置により所定量充填されている。現像装置100a〜100dは、それぞれ感光ドラム30a〜30d上の静電潜像を現像して、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視像化する。
中間転写体130は、図1の矢印A方向に感光ドラム30の回転周速度と同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム30a上に形成担持されたイエロートナー画像は、感光ドラム30aと中間転写体130とのニップ部を通過する。その過程で、中間転写体130に印加される一次転写バイアス電圧により形成される電界と圧力により、中間転写体130の外周面に中間転写されていく。
11は二次転写ローラで、中間転写体130に対応して平行に軸受させて該中間転写体130の下面部に接触させて配設してある。二次転写ローラ11には、二次転写バイアス電源によって所望の二次転写バイアス電圧が印加されている。中間転写体130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材18への転写は、給送カセット10からレジストローラ12、図示しない転写前ガイドを通過する。そして中間転写体130と二次転写ローラ11との当接ニップ部に所定のタイミングで記録材18が給送される。同時に二次転写バイアス電圧がバイアス電源から印加される。この二次転写バイアス電圧により中間転写体130から記録材18へ合成カラートナー画像が転写される。
以下、同様にマゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像が順次、中間転写体130上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。
一次転写が終了した感光ドラム30a〜30dは、それぞれのクリーナ40a〜40dにより転写残トナーをクリーニングして除去され、引き続き次の静電潜像の形成に備えられる。尚、中間転写体130上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写体130の表面に不織布からなるクリーニングウエブ19を当接させて拭い取るようにしている。
トナー画像の転写を受けた記録材18は、二次転写ローラ11が設けられた二次転写部と定着部9との間に設けられた記録材搬送部を通り、定着部9に導入される。そして、熱と圧力を加えることでトナー画像が記録材18上に定着され、フルカラープリントとして排出トレイ63に排出される。
尚、本実施形態に係る画像形成装置の構成は一例であって、様々な方式が適用可能であり、基本的には上記した様に帯電、露光、現像、転写、定着の工程で画像が形成される。
(現像装置の概略構成)
次に、前述した画像形成装置に設置されている本実施形態に係る現像装置100について、4つの現像装置100a〜100dのうち一つの現像装置100aを例に図2を用いて説明する。尚、他の現像装置100b〜100dの構成に関しては、使用される現像剤のみが異なり現像装置100aの構成と同様であるので、その説明を省略する。
図2(a)は、本実施形態に係る現像装置100を示す断面図であり、現像装置100を背面から見た図である。図2(b)は上部から見た断面図である。現像装置100は、現像容器21を備える。現像容器21には、非磁性トナー(以下、単に「トナー」という)と、磁性キャリアと、を含有する二成分現像剤が収容されている。現像剤については詳しく後述する。
現像容器21の内部は、隔壁7によって現像室4と攪拌室5とに区画され、該攪拌室5の上方には現像装置100とは別体のトナー貯蔵室50が設けられ、該トナー貯蔵室50内には補給用トナー(非磁性トナー)が収容されている。尚、現像容器21の攪拌室5の上部にはトナー補給口8が設けられ、該トナー補給口8を経てトナー画像形成に消費されたトナーに見合った量の補給用トナーが攪拌室5内に落下補給される。ここで、この現像装置100における二成分現像方式について説明する。
現像容器21の感光ドラム30側の部位には開口部が形成され、現像剤担持体となる中空で円筒状の現像スリーブ1が該開口部から外部に突出するように構成されている。現像スリーブ1は現像容器21の開口部近傍に回転可能に組み込まれている。現像スリーブ1は感光ドラム30上(像坦持体上)に形成された静電潜像にトナー及び磁性キャリアを含む現像剤を用いて現像する現像手段として構成される。
尚、本実施形態においては、現像スリーブ1の直径は20(mm)のものを用いている。また、現像スリーブ1は、例えば、ステンレス(SUS305AC)のような、非磁性材から形成され、その内部には磁性発生手段となる磁石2が現像スリーブ1の内部に固定配置されている。
現像スリーブ1の内部に固定配置された磁石2は、感光ドラム30と現像スリーブ1との対向部である現像領域の近傍に配設される現像磁極である磁極S1を有する。更に、現像スリーブ1上に担持された現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材である規制ブレード3に対向した現像剤層厚規制磁極である磁極N1を有する。更に、現像剤を現像スリーブ1上に担持させながら搬送するための磁極N2,S2,N3を有する。
また、磁石2は、現像磁極である磁極S1が感光ドラム30に対してドラム回転方向に5°上流になるように現像スリーブ1内に配置されている。
磁極S1は、現像スリーブ1と感光ドラム30との間の現像部の近傍に磁界を形成させ、該磁界によって磁気ブラシを形成するようになっている。上記現像部において、現像スリーブ1の回転とともに、図2(b)に示す矢印B方向に運ばれてきた現像剤は感光ドラム30と接触し、該感光ドラム30上の静電潜像は現像されることとなる。このとき、本実施形態では、現像スリーブ1と感光ドラム30との近接位置である現像部において、現像スリーブ1と感光ドラム30とは互いに逆方向に移動するようになっている。
磁極S1で現像を終了した現像剤は、磁極N1及び磁極N2により形成された反発磁界によって現像スリーブ1上から剥ぎとられ、現像室4に落下することとなる。
尚、現像スリーブ1には現像バイアス電源により、現像バイアス電圧として、交流電圧に直流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。感光ドラム30上の静電潜像の暗部電位(非露光部電位)と明部電位(露光部電位)とは、上記振動バイアス電位の最大値と最小値との間に位置している。これによって現像部に、向きが交互に変化する交番電界が形成される。この交番電界中でトナーと磁性キャリアとが激しく振動され、トナーが現像スリーブ1及び磁性キャリアヘの静電的拘束を振り切って潜像電位に対応した量のトナーが感光ドラム30に付着する。
尚、本実施形態においては、感光ドラム30上の暗部電位を−600V、明部電位を−200Vとする。現像スリーブ1には、直流バイアス電圧として、−450Vの直流電圧が印加される。そして、交流バイアス電圧として、電圧Vpp=1.8kV、周波数F=2kHzの交流電圧が印加されている。周期的なパルス波を出したときの周期とパルス幅との比となるデューティ(Duty)比は現像飛翔側に35%である。そして、図3(a)に示すように、現像バイアス電圧である振動バイアス電圧は、最小値の電圧側に時間T1、最大値の方の電圧側に時間T2、交互にかけられるバイアス電圧とすれば、T1:T2は65:35となる。
(現像剤循環構成)
現像容器21内で現像スリーブ1に近い方の現像室4には、該現像スリーブ1と略平行に配置され、現像剤を攪拌搬送するスクリュー部材4aが設けられている。現像スリーブ1から遠い方の攪拌室5には、現像剤を攪拌搬送するスクリュー部材5a,5bが設けられている。スクリュー部材5aは第1のスクリュー部材として構成され、スクリュー部材5bは第2のスクリュー部材として構成される。そして、このスクリュー部材4a及びスクリュー部材5a,5bによって、現像剤が搬送及び攪拌され、現像容器21内を図2(b)に示す矢印B方向に循環する。スクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5bとの間には両端部で現像室4と攪拌室5とで連絡可能な開口部7a,7bを設けた隔壁7が設けられている。
次に現像装置100の構成について図2(b)を参照して説明する。図2(b)に示すように、スクリュー部材4aとスクリュー部材5b,5bとは現像容器21内に略平行に配置され、それらの間はスクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5bとの間を現像剤が行き来しないように隔壁7によって仕切られている。現像容器21の長手方向両端部には隔壁7がなく、現像剤がスクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5bとの間を行き来できるように開口部7a,7bが設けられている。スクリュー部材4aとスクリュー部材5a,5bとは図2(b)に示すように上から見ればそれぞれ左右反対方向に現像剤を循環搬送するようになっているため、現像容器21内には現像剤が途切れることなく回るような循環経路が形成される。
(スクリュー部材の構成及び駆動構成)
ここで、スクリュー部材の構成と駆動方法について説明する。
スクリュー部材4a及びスクリュー部材5a,5bは、それぞれ連続した螺旋状のスクリュー羽根4a2,5a2,5b2を有する。そして、スクリュー部材5a,5bは、図5に示すように、スクリュー軸5a1,5b1方向におけるスクリュー羽根5a2,5b2の離間ピッチが互いに異なるように設定されている。本実施形態では、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチが、スクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチよりも大きくなるように設定される。スクリュー部材5aは現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)で且つトナー補給口8側(トナー補給口側)に設けられる。スクリュー部材5bはスクリュー部材5aよりも現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に設けられる。本実施形態では、スクリュー部材4a及びスクリュー部材5bのそれぞれのスクリュー軸5a1,5b1の両端部は、現像容器21を貫通して回転自在に軸支されている。スクリュー部材5aは、スクリュー部材5bと同軸上に配置され、該スクリュー部材5bはスクリュー部材5aよりもそのスクリュー軸5a1,5b1方向における長さが短い構成になっている。
スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1は、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1に対して回転自在に外装される筒状部材で構成される。そして、その一端が現像容器21を貫通し、両端に取り付けられた図示しないベアリング部材を介してスクリュー部材5bのスクリュー軸5b1に対して回転自在に支持されている。本実施形態では、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の外径は、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の外径よりも大きくなるように設定されている。尚、他の構成として、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の外径と、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の外径とを同径で構成しても良い。そして、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1と、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1とが同軸上で互いに回転自在に連結する構成でも良い。すなわち、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の外径は、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の外径以上に設定される。なお、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1上に設けられた螺旋状のスクリュー羽根5b2は、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1と重ならない部分に配置されている。このように、スクリュー部材5a,5bは互いに形状が異なるように構成されている。
現像容器21から突出したスクリュー部材4aのスクリュー軸4a1の両端部にはギア41,42がそれぞれ固着されている。現像容器21から突出したスクリュー部材5a,5bのそれぞれのスクリュー軸5a1,5b1の一端部には、ギア51,52がそれぞれ固着されている。スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1のギア41が設けられた端部には、回転駆動源となるモータ23の回転駆動軸が連結されている。モータ23が回転駆動すると、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1及びギア41,42が一体的に回転する。そして、ギア42に噛合するギア52を介してスクリュー部材5aのスクリュー軸5a1が回転し、ギア41に噛合するギア51を介してスクリュー部材5bのスクリュー軸5b1がそれぞれ回転する。ギア42とギア52とのギア比と、ギア41とギア51とのギア比を適宜設定する。これにより、1つのモータ23を回転駆動源として、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の回転速度と、スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の回転速度とを同じ回転速度にしたり、異なる回転速度にすることが容易にできる。
本実施形態では、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に固定されたギア42は、該ギア42に噛合するギア52を介してスクリュー部材5aのスクリュー軸5a1に回転駆動力を伝達する。スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1に固着されたギア52とギア42とのギア比を調整して、スクリュー部材4aとスクリュー部材5aとの回転速度が同速度になるように設定されている。また、スクリュー部材4aのスクリュー軸4a1に固着されたギア41は、該ギア41に噛合するギア51を介してスクリュー部材5bのスクリュー軸5b1に回転駆動力を伝達する。スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1に固着されたギア51とギア41とのギア比を調整して、スクリュー部材4a及びスクリュー部材5aの回転速度よりもスクリュー部材5bの回転速度が速くなるように設定されている。これにより、スクリュー軸5b1の周方向に回転する現像剤の回転速度は、スクリュー軸5a1の周方向に回転する現像剤の回転速度よりも大きくなるように設定される。
本実施形態においては、スクリュー部材5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への攪拌搬送距離をそれぞれLa、Lbとする。また、スクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数をそれぞれRa、Rbとする。また、スクリュー部材5a,5bによる現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への搬送速度をVa、Vbとする。このとき、以下の数1式で示される関係となるように設定した。
[数1]
Va=La×Ra
Vb=Lb×Rb
La>Lb
Ra<Rb
なお、以下には、現像容器21の攪拌室5側に設けられるスクリュー部材5a,5bの構成についての説明を主に行うが、現像室4側に設けられるスクリュー部材4aについても同様に構成することが出来る。
(トナー濃度検知及びトナー補給の概略構成)
スクリュー部材5aの後方の壁面となる現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)には、トナー濃度センサ6が設けられている。トナー濃度センサ6としては、本実施形態では、トナーと磁性キヤリアとの混合比として見掛けの透磁率変化を検知するインダクタンス検知方式を採用したものを使用した。トナー濃度センサ6のセンサ面に対して現像剤が滞留すると、現像剤のトナー濃度を正確に検出できなくなる。このため、トナー濃度センサ6のセンサ面に現像剤が滞留しないように、該トナー濃度センサ6は、そのセンサ面がスクリュー部材5aの近傍で現像剤面に対して垂直になるように配置されている。尚、ここで、トナー濃度とは、トナーと磁性キャリアとの混合比であり、T/D比と称されるものである。
このように、攪拌室5において、トナー濃度センサ6をスクリュー部材5aの現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)に設けているのは、画像形成にトナーが使用されてトナー濃度が下がった現像剤に対して直ちにトナー濃度を検出するためである。
現像室4のスクリュー部材4a側に存在して画像形成に用いられた現像剤は前述した循環経路によりスクリュー部材5a側に送られ、トナー濃度センサ6によりトナー濃度が検出される。その検出結果に基づいてトナー濃度センサ6の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に設けられたトナー補給口8を通じてトナー貯蔵室50a,50b,50c,50dから適正量のトナーが補給される。これによって現像剤のトナー濃度が常に一定に保たれる。
(現像剤搬送速度バランス)
次に、現像剤を順調に攪拌及び搬送でき、さらに良好な画像形成を行うためには、次の点に留意しなければならない。
第1に、図2(b)において、スクリュー部材5aとスクリュー部材5bとの現像剤搬送速度のバランスを一定に保つ必要がある。なぜならば、スクリュー部材5aとスクリュー部材5bの現像剤搬送速度差が大きくなりすぎると、スクリュー部材5aとスクリュー部材5bの連結部分において、現像剤の循環性が大きく損なわれ、現像剤詰まりや現像剤溢れの原因になってしまうためである。
例えば、スクリュー部材5aの現像剤搬送速度が速く、スクリュー部材5bの現像剤搬送速度が遅い場合は、スクリュー部材5bにおいて現像剤の滞りが発生し、その結果、現像剤の循環搬送バランスが取れなくなってしまう。特許文献1のように、攪拌室5の現像剤搬送方向下流側でフィン部材を立てて攪拌性を上げる構成においては、上記問題が発生しないような構成を用いて設計していた。しかし、画像形成プロセススピードが高速化する場合においては、攪拌室5の現像剤搬送方向上流側と下流側とで現像剤搬送速度差が大きくなりすぎ、現像剤の循環搬送バランスがとりづらくなってしまう。現像剤の循環搬送バランスを取るために、スクリュー羽根の離間ピッチを大きくしたり、フィン部材の数を減らしたりすると、現像剤の攪拌性能が落ちて、十分な攪拌搬送機能を満たさなくなってしまう。
上記は、スクリュー部材5aと、スクリュー部材5bとの連結部分を例に挙げて説明したが、現像剤の循環搬送バランスは、現像装置100内全域において同様の攪拌搬送機能が求められる。従って、スクリュー部材5a,5b全域、該スクリュー部材5a,5bと、スクリュー部材4aとの現像剤受け渡し部、スクリュー部材4a全域において、現像剤の循環搬送が崩れないような現像剤搬送速度バランスが非常に重要になってくる。
(現像剤面高さ)
第2に、図2(a)において、スクリュー部材4aが設けられた現像室4、及びスクリュー部材5a,5bが設けられた攪拌室5における現像剤面高さを所定の高さに維持する必要がある。
現像室4において、この現像剤面の高さが低過ぎると、スクリュー部材4aにより搬送される現像剤量が全体量として少なくなり過ぎる。この場合、現像スリーブ1に供給される現像剤が規制ブレード3の規制部にて滞留する量が減少し、この部分でのスクリュー部材4aからの現像剤の供給ムラを招き易くなる。その結果、スクリュー羽根4a2の離間ピッチで画像に濃度ムラができる所謂スクリューピッチムラが生じる。
逆に現像剤面が高過ぎて現像スリーブ1の現像剤が引き剥がされる部分を完全に現像剤が覆ってしまった場合、剥がされた現像剤が覆われた現像剤により押さえ付けられて現像スリーブ1上に戻ってしまう。その場合にスクリュー部材4aのスクリュー羽根4a2の近傍部で現像剤の引き剥がしが比較的良好に行なわれるのに対して、それ以外の部分が引き剥がされないでいるためにベタ画像印字時のスクリューピッチムラの発生を招いてしまう。従って、現像剤面高さは現像スリーブ1の現像剤が引き剥がされる部分の反発極間を完全に覆うことなく、規制ブレード3の規制部を十分に覆うような高さとするのが望ましい。
また、攪拌室5においては、スクリュー部材5a,5b側は補給された新しいトナーと現像容器21内の現像剤の攪拌混合という目的があるが、この現像剤面の高さが高すぎる場合、スクリュー部材5a,5bよりも高い位置にある現像剤は攪拌され難い。特に、トナー補給を行うときに、現像剤面がスクリュー部材5aよりも高い位置にある場合、現像剤中の磁性キャリアよりも比重の小さいトナーは現像剤面に浮いたままになってしまうことがある。こうなると、補給されたトナーは攪拌室5内にある現像剤とはなかなか混ざらず、殆ど未帯電のトナーがそのまま現像スリーブ1側に供給されてしまい、画像かぶりや濃度不良等の問題が発生する。
一方、スクリュー部材5a,5bでの現像剤面の高さが低すぎると、補給されたトナーが回転しているスクリュー部材5a,5bに直接接触する量が多くなる。この場合、トナーの飛散が多くなり、トナーが直接、現像室4側に飛散してしまい、画像かぶりが発生し易いという問題になる。或いは攪拌室5の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)に飛散してしまう。これにより、現像剤がスクリュー部材5a,5bのスクリュー軸5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長が短か過ぎて攪拌不良となり、同じく画像かぶりの原因になってしまう。
即ち、攪拌室5側においては、トナー補給口8から補給された新しいトナーを効率良く現像剤中に取り込み、その後で効率良く攪拌、混合、微分散する構成が重要になる。
(攪拌搬送経路長とトナー帯電付与性)
次に、現像剤がスクリュー部材4a,5a,5bのスクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長と、トナー帯電付与性について説明する。図3(b)は現像剤の攪拌搬送経路長とトナーの飛散量との関係を示す。図3(c)は現像剤の攪拌搬送経路長と画像かぶりとの関係を定性的に示す。ここで、現像剤の攪拌搬送経路長とは、スクリュー部材4a,5a,5bによって、現像剤が攪拌及び混合されながら移動する移動距離のことである。
図3(b),(c)に示すように、現像剤の攪拌搬送経路長が短かければ短いほど、トナー飛散量が多く、画像かぶりも多くなる。つまり、現像剤の攪拌搬送経路長が長いということは、現像剤の搬送能力が低く、攪拌能力が高いということになる。これは、現像剤の攪拌搬送経路長が長い場合は、スクリュー部材4a,5a,5bの単位回転数当たりに現像剤が進行方向(図2(b)の矢印B方向)に進む見掛け上の搬送速度Vが遅くなる。また逆に、スクリュー部材4a,5a,5bによって攪拌される機会、回数が増える。前述したようにトナー補給口8の近辺でトナーが飛散する。そして、攪拌室5の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)から攪拌及び混合が始まったトナーに関しては、現像剤の攪拌搬送経路長が短くなる。そして、トナーの飛散量が多くなり、画像かぶりが多くなることが分かる。
ここで、図4を用いて、トナーの帯電付与性について説明する。図4(a)は図2に示す構成の現像装置100に収容されたトナー粒子分布に対するトナー帯電量分布を表す。図4(a)の縦軸はトナー粒子分布数で、横軸は帯電量で右側がプラス、左側がマイナスである。図2(b)に示すように、現像容器21の隔壁7の一端部に設けられた開口部7aでスクリュー部材5bからスクリュー部材4aへ現像剤を受け渡す部分を測定ポイントCとする。本実施形態の場合、現像剤の攪拌搬送経路長が長く、攪拌及び混合が十分に行われているために、図4(a)に示すように、帯電量が0近傍のトナーが非常に少ないことが分かる。本実施形態のトナーは負極性であるので0よりもマイナス側に帯電したトナーであることが好ましい。帯電量が0近傍のトナーが非常に少ないことから、トナーの飛散量が極めて少なく、画像かぶりが生じることが少ない。
一方、図4(b)は現像剤の搬送経路長が短く、攪拌及び混合が十分に行われなかった場合のトナー帯電量分布を示す。この場合、帯電不良により帯電量が0近傍にあるトナー量が増えていることが分かる。即ち帯電が不十分なトナーが多いということになる。つまり、帯電付与が十分できていないために、トナーの飛散量が多く、画像かぶりが生じる。
本実施形態では、上述したように、(1)画像形成プロセススピードを高速化しても現像剤の循環搬送バランスが崩れないように、現像剤搬送速度バランスを適正化する。(2)現像剤面高さを適正化し、攪拌及び混合性能を上げる。(3)現像剤の十分な攪拌搬送経路長を確保し、トナー帯電付与性能を上げる。これらの3点を解決した。なお、以下には、攪拌室5側のスクリュー部材5a,5bの構成についての説明を主に行うが、現像室4側のスクリュー部材4aも同様の構成を用いることが出来る。
本実施形態では、図5に示すように、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチを16(mm)、スクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチを8(mm)とした。また、このときのスクリュー羽根5a2,5b2の外径は、スクリュー部材5a,5bともに20(mm)とし、スクリュー軸5a1,5b1の外径は、スクリュー部材5aが10(mm)、スクリュー部材5bが8(mm)とした。また、攪拌室5におけるスクリュー部材5a,5b全体の長さは、合計で340(mm)とし、そのうちのスクリュー部材5aの長さが170(mm)、スクリュー部材5bの長さが170(mm)とした。スクリュー部材5a,5bの長さについては、スクリュー部材5a側のトナー補給口8の位置がトナーの取り込み性を重視した構成である必要がある。また、トナー補給口8の現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)にスクリュー部材5bを設けた構成であることが重要である。また、大きくは、スクリュー部材5bにおける現像剤の攪拌混合能力の向上により、十分なトナー帯電付与性が得られることが重要であり、本実施形態においては、少なくともスクリュー部材5bの長さが80(mm)〜100(mm)程度必要になる。ただし、現像装置100の構成や現像剤量によって、スクリュー部材4a,5a,5bの必要な長さは変わり、前述した数値に限定されるものではない。
このとき、スクリュー部材5a,5bのスクリュー軸5a1,5b1の外径は、スクリュー軸5a1の外径がスクリュー軸5b1の外径よりも大きい。或いは、両スクリュー軸5a1,5b1の外径が同径であることが望ましい。現像剤は現像剤搬送方向上流側から下流側に向かって(図2(b)の左側から右側に向かって)搬送される。スクリュー部材5bのスクリュー軸5b1の外径の方が、スクリュー部材5aのスクリュー軸5a1の外径よりも大きい場合、スクリュー部材5a,5bの連結部分で現像剤による圧縮が起こり、トナーの凝集が発生し易くなる。
ここで、現像剤の攪拌搬送能力とは、スクリュー部材4a,5a,5bが単位回転する間に現像剤が進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離Lをいう。そして、スクリュー部材4a,5a,5bが単位回転する間に現像剤が進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される距離が短いほど、現像剤は攪拌混合されるため攪拌能力が高くなる。これは、スクリュー部材4a,5a,5bのスクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向にせん断しつつ回転されて攪拌混合されるためである。
このように、現像装置100において、スクリュー部材4a,5a,5bによる現像剤の攪拌搬送は、現像剤が進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される力からなる。更には、スクリュー部材4a,5a,5bのスクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向(縦方向)へせん断しつつ回転される力からなる。スクリュー部材4a,5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離Lが短い。このことは、スクリュー部材4a,5a,5bによってスクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向(縦方向)へせん断される機会、回数が増えるということである。これは、攪拌能力が高いということになる。スクリュー部材4a,5a,5bによる現像剤の攪拌能力を上げるためには、例えばスクリュー羽根4a2,5a2,5b2の離間ピッチを小さく設定する。そして、現像剤がスクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向に移動する距離を長くする。これによって、スクリュー部材4a,5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離Lを短くする。また、スクリュー部材4a,5a,5bのスクリュー軸4a1,5a1,5b1に図8に示して後述するフィン部材16を設ける。そして、該スクリュー軸4a1,5a1,5b1を中心とした周方向(縦方向)へのせん断力を増やして現像剤の攪拌を促進させる。そして、スクリュー部材4a,5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離Lを短くする。
本実施形態においては、現像剤の攪拌能力を向上する。このために、スクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチを、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチよりも小さくなるように設定した。これにより、スクリュー部材5aの攪拌搬送距離Laは、スクリュー部材5bの攪拌搬送距離Lbよりも大きくなるように設定される。攪拌搬送距離Laは、スクリュー部材5aの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される距離である。攪拌搬送距離Lbはスクリュー部材5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される距離である。また、スクリュー部材5bでは現像剤がスクリュー軸5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長を長くすることが出来、現像剤の攪拌及び混合能力を向上することが出来る。なお、スクリュー部材4a,5a,5bの構成は一例であり、これに限定されるものではない。
本実施形態においては、図2及び図5に示して前述したようなスクリュー部材4a,5a,5bの構成になっているが、ここで、それぞれのスクリュー部材4a,5a,5bにおける現像剤の攪拌搬送能力について検証する。ここで、現像剤の攪拌搬送能力は、スクリュー部材4a,5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離Lである。本実施形態における検証では、本来の現像剤とは異なる色のトナーをトナー補給口8から補給して、その色のトナーが単位時間後に現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送された距離を測定した。今回の検証では、スクリュー部材4a,5a,5bの単位時間当たりの回転数を4(rps)(revolution per second;毎秒回転数)とし、1秒後の現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への攪拌搬送距離Lを測定した。スクリュー部材5aによる1秒後の現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への攪拌搬送距離Laは、平均的に60(mm)程度であった。スクリュー部材5bによる1秒後の現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への攪拌搬送距離Lbは、平均的に30(mm)程度であった。なお、攪拌搬送距離Lの測定値は、バラツキを含めて5回測定した値の平均値とした。従って、各スクリュー部材5a,5bによる現像剤の攪拌搬送能力となるスクリュー部材5a,5bの単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)に搬送される攪拌搬送距離La,Lbは、La≒60(mm)、Lb≒30(mm)である。
次に、スクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数(rps)をそれぞれRa,Rbとする。スクリュー部材5a,5bは互いに現像剤が該スクリュー軸5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長が異なるように設定されている。このため、それぞれのスクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数Ra,Rbを調整し、現像剤の循環搬送バランスを適正化した。ここでは、スクリュー部材5a,5bにより現像剤搬送方向となる現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)へ攪拌搬送されるそれぞれの現像剤の見かけ上の搬送速度Va,Vbが、スクリュー部材5a,5bの両者で同一となる。このように、スクリュー部材5a,5bのそれぞれの単位時間当たりの回転数Ra,Rbを、Ra=8.0(rps)、Rb=16.0(rps)に設定した。
上記設定において、現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbを測定する。現像装置100の現像剤面高さによって若干の違いがあるものの、スクリュー部材5a、スクリュー部材5bともに、現像剤の進行方向(図2(b)の矢印B方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbが平均的に約120(mm/sec)程度という結果を得た。これは、図5に示したように、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチを16(mm)とした。更に、スクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raを8.0(rps)とした。更に、スクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチを8(mm)とした。更に、スクリュー部材5bの単位時間当たりの回転数Rbを16.0(rps)に設定した。その場合に計算により求めた速度128(mm/sec)(=16(mm)×8.0(rps)=8(mm)×16.0(rps))とほぼ同等か若干小さい。粉体からなる現像剤の搬送であることを考慮すると妥当な数値であると考えられる。
また、本実施形態では、現像室4に設けられるスクリュー部材4aのスクリュー羽根4a2の外径は、攪拌室5の現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)に設けられるスクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の外径と同径とした。また、スクリュー軸4a1の外径もスクリュー軸5a1の外径と同径とした。また、スクリュー部材4aの単位時間当たりの回転数Rもスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Rと同じ回転数に設定した。
以上のような設定を行い、実際に現像剤の循環搬送バランスを確認したところ、現像剤の滞留、現像剤溢れや現像剤詰まりを発生することなく、現像剤の循環搬送がバランスよく取れていることが確認できた。
また、トナー補給口8から補給した新しいトナーについての取り込み性能、攪拌及び混合性能、トナー帯電付与性能の確認を行った。その結果、攪拌室5の現像剤搬送方向上流側(図2(b)の左側)でトナー補給口8の近傍におけるスクリュー部材5a側では、トナーの十分な取り込み性能を確保できた。さらに、現像剤搬送方向下流側(図2(b)の右側)のスクリュー部材5b側では、トナーの十分な攪拌及び混合性能を確保できることが確認できた。
また、トナー補給時におけるトナー飛散は低く抑えられており、未帯電トナーの現像剤搬送方向下流側への移動も低く抑えられていることが確認できた。また、図2(b)に示すスクリュー部材5bからスクリュー部材4aへ現像剤を受け渡す隔壁7の一端部に設けられた開口部7aの部分を測定ポイントCとしたときのトナーの帯電付与性能についても、トナーへの帯電付与が十分に行われていることが確認できた。以上は、図4(a)に示すように、現像剤を受け渡す測定ポイントCにおいてトナーの帯電量分布を測定し、帯電量0のトナー粒子分布数のピークが低くなっていることから確認できる。
比較例1として、図6(a)に示すように、スクリュー部材5a,5bが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されない従来のスクリュー部材の構成とした。そして、現像剤搬送方向上流側(図6(a)の左側)のスクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチを16(mm)とした。更に、現像剤搬送方向下流側(図6(a)の右側)のスクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチを8(mm)とした。その場合における現像剤の循環搬送バランスの確認を行った。
まず、図6(a)に示す比較例1のスクリュー部材5a,5bによる単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図6(a)の左から右方向)に搬送される攪拌搬送距離La,Lbの測定結果は、La≒60(mm)、Lb≒30(mm)であった。
ここで、比較例1においては、スクリュー部材5a,5bは現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されていないため、同軸上で且つ同一の単位時間当たりの回転数Rで回転する。このスクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数Rを4(rps)から16(rps)まで変化させた。そのときのスクリュー部材5aとスクリュー部材5bとの現像剤の進行方向(図6(a)の左から右方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbの差と、そのときの現像剤の循環搬送バランスを確認した結果を以下の表1に示す。尚、以下の表1において、「○」は現像剤の循環搬送バランスが良好である状態、「△」は現像剤が一部滞りながら循環している状態、「×」は現像剤の循環が取れない状態である。
上記表1に示したように、図6(a)に示す比較例1のように、攪拌室5内に設けられるスクリュー部材5a,5bが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されない従来のスクリュー部材の構成とした。そして、画像形成プロセススピードの高速化を行っていった際に、スクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数Rが増加するに伴って、現像剤の循環搬送バランスが崩れてくる状態になった。そして、現像剤の滞留、現像剤溢れや現像剤詰まりが発生し易い状態になってしまう。
実際には、前述した本実施形態と同様に現像剤の進行方向(図6(a)の左から右方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbが128(mm/sec)となる値を得るようにする。そのためには、図6(a)に示す比較例1の構成において、スクリュー部材5bに関しては、上記表1に示すように、単位時間当たりの回転数が8(rps)〜12(rps)の間で調整する。この場合、上記表1に示すように、現像剤の循環搬送バランスが取りづらい状態、もしくは現像剤の循環搬送バランスが取れない状態になってしまう。
一方、比較例2として、図6(b)に示すように、スクリュー部材5a,5bが同軸上で現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されない従来のスクリュー部材の構成とした。そして、スクリュー部材5a,5bともに、スクリュー羽根5a2,5b2の離間ピッチを12(mm)とした場合における現像剤の搬送速度バランス、攪拌混合性能、トナー帯電付与性能についての確認を行った。
まず、図6(b)に示す比較例2のスクリュー部材5a,5bによる単位回転数当たりの現像剤の進行方向(図6(b)の左から右方向)に搬送される攪拌搬送距離La,Lbの測定結果は、La≒Lb≒45(mm)であった。
ここで、比較例2においては、スクリュー部材5a,5bは現像剤搬送方向上流側と下流側とで分割されていないため、同軸上で且つ同一の単位時間当たりの回転数Rで回転する。このスクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数Rを調整して、前述した本実施形態と同様に現像剤の進行方向(図6(b)の左から右方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbが128(mm/sec)となる値を得るようにした。そのために、スクリュー部材5a,5bの単位時間当たりの回転数Ra=Rb=10.7(rps)(=搬送速度128(mm/sec)/離間ピッチ12(mm))とした。上記設定において、現像剤の進行方向(図6(b)の左から右方向)への見かけ上の搬送速度Va,Vbを測定すると、平均的に約120(mm/sec)程度であった。
以上のような設定を行い、実際に現像剤の循環搬送バランスを確認したところ、現像剤の滞留、現像剤溢れや現像剤詰まりを発生することなく、現像剤の循環搬送バランスがよく取れていることが確認できた。
ところが、トナー補給口8から補給したトナーについての取り込み性能を確認する。トナー補給口8の近辺のスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raに関して考える。前述の本実施形態のスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Ra=8.0(rps)から、比較例2のスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Ra=10.7(rps)に上がった。このために、図6(b)に示す比較例2では、スクリュー部材5aに直接接触するトナーのトナー飛散量が多い。図4(b)に示すように帯電付与性能についても、図6(b)に示す比較例2では、前述の本実施形態と比較して、帯電量が0近傍にあるトナー量が増え、帯電不良のトナーが増えていることが分かる。
本実施形態のトナーは負極性であるので帯電量が0よりもマイナス側にトナー粒子が分布することが好ましい。帯電量が0近傍のトナーは飛散、画像かぶりが生じ易くなる。これは次のように説明することができる。
トナーの補給に関して、トナー補給口8は、現像剤搬送方向(図2(b)の左右方向)に所定の幅を持って開口している。このため、該トナー補給口8から攪拌室5に補給されたトナーは一箇所に集中して補給されるわけではない。現像剤搬送方向(図2(b)の左右方向)に所定の幅を持って分布して広がった状態で攪拌室5に補給される。一方、図6(b)に示す比較例2のように、スクリュー羽根5a2,5b2の離間ピッチを現像剤搬送方向(図6(b)の左右方向)で一定になるように設定した。この場合、図7(a)に示すように、現像剤の攪拌及び混合性能、或いはトナー帯電付与性能は、現像剤搬送方向上流側から下流側に向けて一様に上昇していく。これは現像剤がスクリュー部材5a,5bのスクリュー軸5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長が長くなるほど攪拌及び混合性能、或いはトナー帯電性能が向上するからである。従って、トナー補給口8から補給されたトナーが現像剤搬送方向(図2(b)の左右方向)に所定の幅を持って分布して広がった状態で攪拌室5に補給される。そうすると、現像剤搬送方向上流側に落下したトナーと、それよりも下流側に落下したトナーでは、スクリュー部材5a,5bのスクリュー軸5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長に差ができる。このため、現像室4まで運ばれたトナーが現像される位置での帯電性が大きく異なることになる。さらに、図6(b)に示して前述した比較例2のように、トナー補給口8の近辺のスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raが大きい(回転速度が速い)場合には、トナーが現像剤搬送方向下流側に飛散し易くなる。そして、帯電性に関してより顕著な差となって表れる。
一方、図2(b)及び図5に示して前述した本実施形態のように、トナー補給口8の近辺では、トナーの取り込みを重視して、スクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raを上げない。さらに該スクリュー部材5aよりも現像剤搬送方向下流側に同軸上に設けたスクリュー部材5bのスクリュー羽根5b2の離間ピッチを、スクリュー部材5aのスクリュー羽根5a2の離間ピッチよりも小さくなるように設定した。同時にスクリュー部材5bの単位時間当たりの回転数Rbを、スクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raよりも大きくなるように設定した。この構成の場合、図7(b)に示すように、現像剤の攪拌及び混合性能、或いはトナー帯電付与性能は、現像剤搬送方向上流側のスクリュー部材5aが設けられた部位では徐々に上昇する。現像剤搬送方向下流側のスクリュー部材5bが設けられた部位では急激に上昇するような特性を示す。
本実施形態の構成では、トナー補給口8からトナーが現像剤搬送方向(図2(b)の左右方向)に所定の幅を持って分布して広がった状態で攪拌室5に補給される。そうであっても、その分布の広がりによる攪拌及び混合性能、或いはトナー帯電性能のバラツキは低く抑えられる。さらに、トナー補給口8の近辺ではスクリュー部材5aの単位時間当たりの回転数Raを小さく(回転速度を遅く)しているので、トナー補給時にトナーが現像剤搬送方向(図2(b)の左右方向)へ広がって分布することも抑えられる。これにより、トナー帯電性能は図4(a)に示すように、帯電量が0近傍にあるトナー量が極めて少なく良好な状態を保つことができる。
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、(1)画像形成プロセススピードを高速化しても現像剤の循環搬送バランスが崩れないように、現像剤搬送速度バランスを適正化することが出来る。(2)現像装置100内の現像剤面高さを適正化し、攪拌及び混合性能を向上することが出来る。(3)現像剤がスクリュー部材5a,5bのスクリュー軸5a1,5b1を中心とした周方向にせん断されつつ回転して移動する距離である攪拌搬送経路長を十分確保し、トナー帯電付与性能を向上することが出来る。これにより、画像形成プロセススピードの高速化に伴い、現像剤の循環搬送速度が速くなった場合においても、現像剤の循環搬送バランスの低下による現像剤溢れや現像剤詰まり、或いはトナー飛散や画像かぶりを発生させることがない。さらには、トナーの帯電量のバラツキを抑え、安定的に現像剤の攪拌搬送能力を向上することが可能になる。