この発明に係る導電性ローラにおける一実施例の導電性ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成されたシリコーン弾性層3と、シリコーン弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備えて成る。図1に示される導電性ローラ1においては、軸体2の外周面に所望により接着剤層(プライマー層とも称する。)(図1において図示しない。)を介してシリコーン弾性層3が形成され、シリコーン弾性層3の外周面に所望により接着剤層(プライマー層とも称する。)(図1において図示しない。)を介してコート層4が形成されている。
この導電性ローラ1は、その表面すなわちコート層の表面における十点平均粗さRzが3〜12.0μmである。十点平均粗さRz(μm)が3μm未満であると、導電性ローラ1の表面が平坦になりすぎて現像剤搬送性が低下し、形成される画像の画像濃度が薄くなることがある。十点平均粗さRz(μm)が12.0μmを超えると、導電性ローラ1の表面が大きな起伏に富んで必要以上に現像剤を搬送し、形成される画像に濃度ムラが生じることがある。したがって、導電性ローラ1の十点平均粗さRzが前記範囲内にあると、導電性ローラ1の表面状態が現像剤に適応して導電性ローラ1が所望の現像剤搬送性を発揮する。現像剤搬送性により一層優れる点で、十点平均粗さRz(μm)は、5〜10μmであるのがより好ましく、7〜8μmであるのが特に好ましい。導電性ローラ1は、周方向及び軸線方向における十点平均粗さRz(μm)共に前記範囲にあるのが、周方向及び軸線方向における現像剤搬送性が均一になる点で、好ましい。前記十点平均粗さRz(μm)は、JIS B 0601―1984に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、導電性ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、導電性ローラ1の表面をその周方向又は軸線方向に沿って少なくとも3点の粗さを測定し、これらの算術平均値とする。
導電性ローラ1における十点平均粗さRz(μm)は、後述するコート層4に含有させる無機系充填剤等の粒子の含有量及び平均粒径、コート層4の厚さ等によって調整することができる。
この導電性ローラ1は、導電性を有している。導電性ローラ1が導電性を有していると、前記現像剤搬送性に加えて、現像剤を静電的に担持し搬送する特性を発揮するから、所望の画像濃度の画像を形成することができる。前記導電性としては、例えば、電気抵抗(温度20℃、相対湿度50%)が挙げられる。この電気抵抗(温度20℃、相対湿度50%)は1×104〜1×109Ωであるのが好ましい。前記電気抵抗は、例えば、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、導電性ローラ1のシリコーン弾性層3全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態(合計荷重1000g)にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読み取り、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定することができる。
導電性ローラ1は、現像剤を帯電させることができる。例えば、現像剤を帯電させる帯電量は約10〜60μC/gの帯電量又は約−60〜−10μC/gの帯電量であるのが好ましく、約15〜50μC/gの帯電量又は約−50〜−15μC/gの帯電量であるのがより一層好ましく、約35〜50μC/gの帯電量又は約−50〜−35μC/gの帯電量であるのが特に好ましい。導電性ローラ1が前記帯電量で現像剤を帯電させることができる場合には、例えば導電性ローラ1を現像ローラとして使用したときに、所望の帯電量に帯電された現像剤を像担持体に供給することができ、高品質な画像を形成することができる。ここで、現像剤の帯電量は、20℃、相対湿度50%の環境下において、導電性ローラ1を画像形成装置(沖データ株式会社製、商品名「MICROLINE 1032PS」、解像度1200dpi相当)に装着して、黒ベタ印字を5枚行った後、黒べた印字を強制的に停止させて、導電性ローラ1を画像形成装置から取り出し、導電性ローラ1の表面に付着した現像剤を、断面積0.25cm2の吸引口を有する吸引式小型帯電量測定装置、例えば、商品名「210HS q/M METER」(トレックジャパン株式会社製)によって、測定することができる。
この導電性ローラ1は、接触型画像形成装置に装着される場合には、弾性を有しているのが像担持体との大きく均一な接触幅を長期間にわたって確保することができる点で、好ましい。例えば、導電性ローラ1の硬度は30〜80のJIS A硬度を有しているのが好ましい。JIS A硬度はJIS K6253に準拠して測定することができる。なお、導電性ローラ1が非接触型画像形成装置に装着される場合には、弾性を有していてもいなくてもよい。
導電性ローラ1を構成する軸体2は、図1に示されるように、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。軸体2は、装着される画像形成装置に応じて、適宜の直径及び軸線方向の長さに調整される。例えば、軸体2の直径は4〜10mmであるのがよい。
導電性ローラ1を構成するシリコーン弾性層3は、弾性を有している。シリコーン弾性層3が弾性を有していると、接触型画像形成装置に装着された場合に像担持体との大きく均一な接触幅を長期間にわたって確保することができるし、非接触型画像形成装置に装着された場合に規制ブレードを十分に機能させることができる。
このシリコーン弾性層3は、軸体2の外周面で後述するゴム組成物を硬化してなる。このシリコーン弾性層3は、導電性ローラ1が前記範囲のJIS A硬度となる硬度を有していればよく、10〜90のJIS A硬度を有しているのが好ましい。シリコーン弾性層3が10〜90のJIS A硬度を有していると、例えば、導電性ローラ1を画像形成装置に装着したときに、導電性ローラ1と像担持体等の被当接体との大きなニップ幅を確保することができる。特に、導電性ローラ1を現像剤担持体例えば現像ローラとして装着すると、導電性ローラ1と像担持体との大きなニップ幅を確保して、現像剤を効率的に帯電搬送し、現像効率を向上させることができる。シリコーン弾性層3のJIS A硬度はJIS K6253に準拠して測定することができる。
シリコーン弾性層3の厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、シリコーン弾性層3の厚さの上限は、シリコーン弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、シリコーン弾性層3の厚さを厚くしすぎると、シリコーン弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると、シリコーン弾性層3の厚さは30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。例えば、シリコーン弾性層3の厚さは3〜7mmであるのがよい。
シリコーン弾性層3は、導電性を有している。前記導電性としては、例えば、電気抵抗(温度20℃、相対湿度50%)が挙げられる。この電気抵抗(温度20℃、相対湿度50%)は1×102〜1×106Ωであるのが好ましい。シリコーン弾性層3の電気抵抗は、導電性ローラ1からコート層4を除去した状態で、導電性ローラ1の電気抵抗と基本的に同様にして測定できる。
シリコーン弾性層3は、シリコーンゴムを含有し、所望により充填剤、導電性付与剤及び各種添加剤等を含有している。シリコーンゴムとしては、通常のシリコーンゴムの他にシリコーン変性ゴム等が挙げられる。充填剤としては後述する無機系充填剤が挙げられる。導電性付与剤は液体であっても固体であってもよく、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて、導電性ローラ1としたときに所望の体積抵抗率となるように適宜の含有量で添加される。例えば、導電性付与剤の含有量はシリコーンゴム100質量部に対して2〜80質量部とすることができる。前記添加剤としてはゴム組成物等に含有される各種の添加剤が挙げられる。
導電性ローラ1を構成するコート層4は、図1及び図2に示されるように、シリコーン弾性層3の外周面で硬化された樹脂組成物で単層構造の層として形成されている。したがって、コート層4は、シームレスチューブで形成された表面層と異なり、シリコーン弾性層3を軸線方向に圧縮することがないから、薄く形成されてもその表面に応力集中によるシワ等の変形が発生することがなく、その外周面が長期間にわたって均一な状態を維持する。コート層4は、通常薄層に形成され、具体的には、2〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜30μmの層厚を有しているのがより好ましい。
コート層4は、樹脂、所望により導電性付与剤及び各種添加剤等を含有している。前記樹脂は、シリコーン樹脂以外の樹脂であればよく、例えば、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。このコート層4は、好ましくは導電性付与剤を含有し、導電性ローラ1の導電性と基本的に同様の導電性を有している。コート層4に含有される導電性付与剤は、シリコーン弾性層3で説明した前記導電性付与剤と基本的に同様であり、コート層4に含有される導電性付与剤とシリコーン弾性層3に含有される導電性付与剤と同種でも異種でもよい。コート層4に導電性付与剤を含有させる場合には、コート層4に均一に含有させるのが好ましく、導電性ローラ1においては、図2によく示されるように、内側領域4Aと外側領域4Bとに含有されている。前記導電性付与剤の含有量は、コート層4全体を形成する樹脂100質量部に対して2〜15質量部であるのが好ましく、5〜10質量部であるのが特に好ましい。また、各種添加剤としては樹脂組成物等に含有される各種の添加剤が挙げられる。
樹脂、所望により導電性付与剤及び各種添加剤等を含有するコート層4は、その内表面を含む内側領域4Aとその外周面を含む外側領域4Bとの少なくとも2つの領域を有し、これらの領域を機能分化させている。すなわち、図2に明確に示されるように、内側領域4Aは樹脂を含有し、無機系充填剤7が実質的に不存在であり、すなわち無機系充填剤7を実質的に無含有であり、シリコーン弾性層3中に存在するシリコーンオリゴマー等の滲出を阻止する。ここで、「無機系充填剤を実質的に無含有である」とは無機系充填剤が内側領域4Aに積極的に含有されていないことを意味し、不可避的に含有される場合を含まない。外側領域4Bは樹脂及び無機系充填剤7を含有し、すなわち、無機系充填剤7が偏在し、導電性ローラ1における前記範囲内の前記十点平均粗さを実現する。要するに、コート層4の内側領域4Aは、樹脂、所望により導電性付与剤及び各種添加剤等を含有し、コート層4の外側領域4Bは、樹脂、無機系充填剤、所望により導電性付与剤及び各種添加剤等を含有している。このように、コート層4の内側領域4Aはシリコーンオリゴマー等の低分子化合物の滲出を阻止して前記帯状画像不良の発生防止に大きく寄与し、外側領域4Bは十点平均粗さに影響して現像剤搬送性に大きく寄与する。したがって、導電性ローラ1においては、内側領域4Aと外側領域4Bとを有する単層構造であるにもかかわらず、前記帯状画像不良の発生防止と現像剤搬送性とを両立させることができる。
内側領域4Aは、コート層4の内表面を含む領域であり、コート層4の内表面から半径方向に外周面に向かって1〜20μmまでの厚さを有する領域であるのが好ましく、5μm以上の厚さを有する領域であるのが特に好ましい。例えば、内側領域4Aは前記内表面から半径方向に外周面に向かって10μmまでの厚さとすることができる。この内側領域4Aには、後述する無機系充填剤7が実質的に存在せず、仮に存在していたとしても、例えば、無機系充填剤7の含有量はコート層4を形成する樹脂100質量部に対して5質量部以下であるのが好ましい。内側領域4Aの厚さが前記範囲内であると、また、内側領域4Aに無機系充填剤7が実質的に存在していないと、シリコーンオリゴマー等の滲出を高度に防止することができる。また、この内側領域4Aが導電性付与剤等の粒子を含有する場合には、これらの粒子はその平均粒径が後述する無機系充填剤7よりも小さい微粒子であるのが好ましい。
外側領域4Bはコート層4の外周面を含む領域である。コート層4の外周面から半径方向に前記内表面に向かって1〜20μmまでの厚さを有する領域であるのが好ましく、20μmまでの厚さを有する領域であるのが好ましい。例えば、外側領域4Bは前記外周面から半径方向に前記内周面に向かって10μmまでの厚さとすることができる。なお、コート層4の外周面は、例えば、前記十点平均粗さRz(JIS B 0601―1984)における「中心平均線」とすることができる。この外側領域4Bには、無機系充填剤7が偏在しており、コート層4中に含有される全無機系充填剤7の大部分、例えば、90質量%以上の無機系充填剤7が存在している。外側領域4Bの厚さが前記範囲内であると、また、外側領域4Bに大部分の無機系充填剤7が存在していると、十分な量の無機系充填剤7を含有して導電性ローラ1の表面状態を適宜に調整できる。
内側領域4Aと外側領域4Bとは、同じ厚さを有しているのが好ましく、コート層4の総厚の半分の厚さを有する領域であるのが好ましく、例えば、コート層4の総厚が20μmである場合には内側領域4Aと外側領域4Bとはそれぞれ10μmの厚さを有する領域であるのが好ましい。
外側領域4Bに含有される無機系充填剤7は、無機充填剤とも称され、粉末状、粒子状等の固体形態をなしていればよく、例えば、無機粒子及び無機粉末等が挙げられる。無機粒子及び無機粉末としては、シリカ(煙霧質シリカ、コロイダルシリカ等を含む。)、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム等が挙げられる。無機系充填剤7は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
無機系充填剤7は、粒子、粉末等の固体形態を成していればその形状は特に限定されず、例えば、球状、楕円球状、板状等が挙げられる。無機系充填剤7は、5.0μm未満の平均粒径を有しており、1.0μm以上5.0μm未満の平均粒径を有しているのが好ましく、2.0〜4.0μmの平均粒径を有しているのが特に好ましい。無機系充填剤7の平均粒径が前記範囲内にあると、前記十点平均粗さRzを前記範囲内に調整できると共に導電性ローラ1の導電性を確保することができる。前記平均粒径は、走査型電子顕微鏡JSM-5200(日本電子データム株式会社製)を用いて倍率2000倍で観察した複数の無機系充填剤7の最大外径を測定し、測定された最大外径の算術平均値とする。
外側領域4Bに含有される無機系充填剤7は、コート層4の外側領域4Bを形成する樹脂100質量部に対して10質量部以上であるのが好ましく、16〜40質量部であるのがより好ましく、16〜30質量部であるのが特に好ましい。無機系充填剤7が前記含有量で外側領域4Bに含有されていると、導電性ローラ1の導電性を確保しつつ、前記範囲の前記十点平均粗さRzを導電性ローラ1に付与することができる。
内側領域4A及び外側領域4Bに含有する無機系充填剤7の含有量及び導電性付与剤の含有量は熱重量分析法(JIS K7120)によって求めることができる。具体的には、内側領域4A及び外側領域4Bから切り出した試験片(質量Iとする。)を700℃まで加熱した後に残留する無機系充填剤7と導電性付与剤との合計質量Tを測定し、試験片中の樹脂の質量Rとして試験片の加熱前の質量Iと合計質量Tとの差分(I−T)を算出する。次いで、この残留物を900℃まで加熱して残留する無機系充填剤7の質量Fを測定し、導電性付与剤の質量Cとして合計質量Tと質量Fとの差分(T−F)を算出する。このようにして得られた各質量から、樹脂の質量Rを100質量部としたときの値に無機系充填剤7の質量Fを換算して無機系充填剤7の含有量とし、樹脂の質量Rを100質量部としたときに値に導電性付与剤の質量Cを換算して導電性付与剤の含有量とする。
導電性ローラ1は、単層構造のコート層4を備えており、このコート層4は前記範囲の十点平均粗さRz(μm)を有し、その内側領域4Aに無機系充填剤7が実質的に無含有であり、外側領域4Bに無機系充填剤7が偏在しているから、この発明の目的をよく達成することができる。特に、高温高湿環境下、例えば、温度40〜60、相対湿度80〜98%の高温環境下に、比較的長期間、例えば7〜14日程度置かれても帯状画像不良の発生が高度に防止される。このような高温高湿環境下に置かれる状態として、例えば、夏季の出荷時又は停止時等が挙げられる。そして、高精密化された近年の画像形成装置においても前記効果を十分に発揮できる。その理由は、導電性ローラ1、特に現像装置から露出する部分が高温高湿環境に曝されると、シリコーン弾性層中に存在するシリコーンオリゴマー等の低分子化合物が滲出する傾向にあるが、前記コート層4によってシリコーンオリゴマー等の低分子化合物の滲出を防止できることにあるのではないかと、推測している。
導電性ローラ1は、前記特性を有しているから、画像形成装置用の導電性ローラ、例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等として好適に用いられる。
次に、この発明に係る導電性ローラの製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)を説明する。この発明に係る製造方法は、軸体の外周面に形成されたシリコーン弾性層の外周面に溶剤を含有する内側領域形成用樹脂組成物を塗布する工程と、この内側領域形成用樹脂組成物の表面に外側領域形成用樹脂組成物を塗布する工程と、内側領域形成用樹脂組成物及び外側領域形成用樹脂組成物を加熱して硬化する工程とを含有している。
この発明に係る製造方法を、導電性ローラ1を例にして、説明する。まず、定法に従って前記材料から軸体2を作製し、所望により、その外周面にプライマー等が塗布される。次いで、軸体2の外周面にシリコーンゴム組成物を公知の成形方法によって加熱硬化して、シリコーン弾性層3を形成する。成形方法としては、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されない。このシリコーンゴム組成物を硬化させる際の加熱温度はシリコーンゴム組成物に応じて適宜に選択される。このようにして形成された導電性弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。所望により、導電性弾性層3の外周面にプライマー等が塗布される。
前記シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、所望により充填剤と、所望により導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。シリコーンゴムは前記した通りであり、これらのシリコーンゴムは液状タイプであってもミラブルタイプであってもよく、シリコーン弾性層3の成形方法、シリコーン弾性層3に要求される特性等に応じて適宜選択することができる。シリコーンゴム組成物に含有される充填剤及び導電性付与剤は前記充填剤及び前記導電性付与剤と基本的に同様である。添加剤は、通常、ゴム組成物等に含有される各種の添加剤を含有してもよく、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
シリコーンゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、前記シリコーンゴム、所望により充填剤、導電性付与剤及び各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
前記シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。シリコーンゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により粘度を調整することもできる。
好ましく使用されるシリコーンゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料すなわち導電性付与剤を含有する。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
RnSiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
この付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分以上5時間以下、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫することもできる。
次いで、このようにして軸体2の外周面に形成されたシリコーン弾性層3の外周面に、溶剤を含有する内側領域形成用樹脂組成物を塗布する工程を実施する。前記内側領域形成用樹脂組成物の塗布は、例えば、塗布法、ディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等の公知の塗布方法又は塗工方法によって、行われる。
前記内側領域形成用樹脂組成物は、樹脂成分及び溶剤、所望により導電性付与剤及び各種添加剤等を含有し、無機系充填剤を実質的に無含有である。ここで、「無機系充填剤を実質的に無含有である」とは無機系充填剤をこの内側領域形成用樹脂組成物の成分として積極的に添加し含有させないことを意味し、不可避的に含有される場合を含まない。樹脂成分は、硬化して樹脂を形成する成分であればよく、樹脂調製成分とも称される。前記樹脂成分は、シリコーン樹脂以外の樹脂を形成する樹脂成分であればよいが、ウレタン樹脂を形成するポリウレタン調製成分であるのが好ましい。なお、導電性付与剤及び各種添加剤は、例えば、前記導電性付与剤及び前記添加剤と基本的に同様である。
ポリウレタン調製成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるポリウレタンも包含される。したがって、ポリウレタン調製成分は、例えば、ポリウレタン、ポリオールとポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートとの混合物、及び、ポリオールとポリイソシアネート又はブロックポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよいが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが、コート層4の耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点で、好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添MDI、等が挙げられる。
ポリイソシアネートとして、これらのポリイソシアネートの他に、ブロック剤でイソシアネート基がブロックされたブロックポリイソシアネートが好適に使用される。ブロックポリイソシアネートは、常温での安定性が高く、加熱によってブロック剤が遊離してイソシアネート基が再生するため、取り扱いが容易である等の利点を有する。特に、湿度の高い夏場でも安定して反応し、さらには、アミノ基等の反応性の高い活性基を有する試薬とも併用することができるという利点を有する。前記ブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム類、メチルエチルケトオキシム類、3,5−ジメチルピラゾール類、アルコール類及びフェノール類等が挙げられる。また、ブロック剤として、イソシアネート類も挙げられ、この場合には、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートダイマー(ポリウレトジオン)となる。ブロック剤は、前記のいずれをも用いることができるが、溶剤との相溶性に優れる点で、ε−カプロラクタム類及びメチルエチルケトオキシム類が好適である。
ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブッロクポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが、得られるポリウレタンにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物においては、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
前記プレポリマー及び前記ポリウレタンは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー及びポリウレタンであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマー及びポリウレタンは、所望により前記助剤等の存在下、ワンショット法又はプレポリマー法等によって、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して、得られる。
前記ポリウレタン調製成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。すなわち、前記ポリウレタン調製成分は、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールと、ポリイソシアネートとの混合物を含有するのが特に好ましい。
前記溶剤は、樹脂組成物に通常用いられる各種の溶剤を用いることができるが、前記樹脂成分が硬化する硬化温度未満の温度で揮発する特性を有している溶剤、例えば、揮発性溶剤、又は、前記硬化温度未満の沸点を有する溶剤等を好適に用いることができる。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン、メチルメチルケトン等のケトン等が挙げられる。溶剤の含有量は、内側領域形成用樹脂組成物が塗布できる程度に希釈される量であればよく、例えば、固形分濃度が10〜50質量%となるように、設定されるのがよい。
前記内側領域形成用樹脂組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等の混合機等を用いて各成分が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混合して、得られる。この内側領域形成用樹脂組成物はシリコーン弾性層3の外周面に容易に形成することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。内側領域形成用樹脂組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。
この発明に係る製造方法においては、次いで、シリコーン弾性層3の外周面に塗布された内側領域形成用樹脂組成物の表面に外側領域形成用樹脂組成物を塗布する工程を実施する。このとき、内側領域形成用樹脂組成物に含有される溶剤が除去されていない状態、すなわち、塗布状態にある内側領域形成用樹脂組成物に外側領域形成用樹脂組成物を重ねて塗布する。このように塗布状態にある内側領域形成用樹脂組成物に重ねて塗布された外側領域形成用樹脂組成物、特に外側領域形成用樹脂組成物に含有される無機系充填剤は、塗布状態にある内側領域形成用樹脂組成物に混入しにくくなっている。前記外側領域形成用樹脂組成物の塗布は、例えば、塗布法、ディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等の公知の塗布方法又は塗工方法によって、行われる。
前記外側領域形成用樹脂組成物は、充填剤を含有していること以外は前記内側領域形成用樹脂組成物と基本的に同様であり、樹脂成分及び無機系充填剤、所望により導電性付与剤、溶剤及び各種添加剤等を含有している。この外側領域形成用樹脂組成物は、特に主成分となる樹脂成分が内側領域形成用樹脂組成物の樹脂成分と架橋する樹脂成分であるのが好ましく、その組成、特に樹脂成分が同種であるのが好ましい。
この発明に係る製造方法においては、次いで、内側領域形成用樹脂組成物及び外側領域形成用樹脂組成物を加熱して硬化する工程を実施する。すなわち、内側領域形成用樹脂組成物の硬化と、外側領域形成用樹脂組成物の溶剤除去及び硬化とを同時に行う。このときの加熱温度は溶剤が揮発する温度及び前記樹脂成分が硬化する硬化温度以上の温度に設定され、加熱時間は樹脂成分が硬化するのに十分な時間に設定される。例えば、加熱温度は120〜180℃、特に150〜160℃、加熱時間は20〜80分間、特に30〜40分間に設定されることができる。
このようにして、内側領域形成用樹脂組成物及び外側領域形成用樹脂組成物をほぼ同時に硬化させると、内側領域形成用樹脂組成物には無機系充填剤7が実施的に含有されていないから硬化した内側領域4Aには無機系充填剤7が実質的に無含有となり、外側領域形成用樹脂組成物には無機系充填剤7が含有されているから硬化した外側領域5Aには無機系充填剤7が含有され、かつ、内側領域形成用樹脂組成物と外側領域形成用樹脂組成物とが一体的に硬化して単層構造のコート層4を形成することができ、このコート層4において、外側領域形成用樹脂組成物に含有される無機系充填剤7の平均粒径及び含有量によって、コート層4の十点平均粗さRz(μm)を前記範囲に調整することができる。
このように内側領域形成用樹脂組成物及び外側領域形成用樹脂組成物をほぼ同時に硬化させると、内側領域形成用樹脂組成物の樹脂成分と外側領域形成用樹脂組成物の樹脂成分とが互いに架橋硬化して、内側領域4Aと外側領域4Bとの密着力が高くなる。
さらに、このように各層が直接形成されていると、例えば接着剤層等の他の層が存在しないから、導電性ローラ1の特性、例えば、電気的特性の安定性が高くなる。
このようにして形成されたコート層4は、シリコーン弾性層3の外周面上で硬化されているから、シームレスチューブで形成された表面層と異なり、シリコーン弾性層3をその軸線方向に圧縮することがない。したがって、コート層4は、薄く形成されてもその表面に応力集中によるシワ等の変形が発生することがなく、その外周面は長期間にわたって均一な状態を維持することができる。
この発明に係る製造方法においては、所望により、コート層4に、研磨処理、表面粗さ処理例えばブラスト処理等を施して、表面状態を調整することもできる。
この発明に係る現像装置は、この発明に係る導電性ローラを備え、例えば、図3に示される画像形成装置に装備されている。この発明に係る現像装置の一実施例である現像装置を、画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例と共に説明する。
この画像形成装置10は、図3に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像手段20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。
前記現像装置20Bは、この発明に係る現像装置の一例であり、図3に示されるように、この発明に係る導電性ローラと現像剤22Bとを備えている。したがって、この画像形成装置10において、導電性ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして装着されている。現像装置20Bは、具体的には、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23Bである現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えて成る。現像装置20Bにおいて、現像剤量調節手段24Bは、図3に示されるように、現像剤担持体23Bの外周面に接触又は圧接している。すなわち、前記現像装置20Bは所謂「接触式現像装置」である。前記現像ユニットC、M及びYは現像ユニットBと基本的に同様に構成されている。
画像形成装置10において、前記現像装置20Bの現像剤担持体23Bは、その表面が像担持体11Bの表面に接触又は圧接するように配置されている。前記現像装置20C、20M及び20Yも、前記現像装置20Bと同様に、その表面が現像剤担持体23C、23M及び23Yが像担持体11C、11M及び11Yの表面に接触又は圧接するように配置されている。すなわち、この画像形成装置10は所謂「接触式画像形成装置」である。
前記定着手段30は、現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。転写搬送ベルト6は複数の支持ローラ42に巻回されている。
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yはそれぞれ、摩擦により帯電可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
このタンデム型画像形成装置10において、現像剤担持体23としてこの発明に係る導電性ローラを用いると、この導電性ローラは高温高湿環境下でたとえハーフトーン画像を形成しても前記帯状画像不良の発生を防止することができるから、この発明に係る導電性ローラを備えた現像手段20及びタンデム型画像形成装置10は高温高湿環境下にあっても帯状画像不良の発生を抑え、画像全体として所望の画像濃度を有する高品質の画像を形成することができる。
前記画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。なお、画像形成装置10においてはいずれも、この発明に係る導電性ローラを現像剤担持体23の一例である現像ローラとして用いた例を参照して説明したが、画像形成装置に配設され、かつ、現像剤又は記録体等と接触しうるローラ、例えば、帯電ローラ及び転写ローラ等として、この発明に係る導電性ローラを用いても、高温高湿環境下にあっても帯状画像不良の発生を抑え、画像全体として所望の画像濃度を有する高品質の画像を形成することができる。
この発明に係る導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置はいずれも前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
例えば、導電性ローラ1は、いずれも、外径が軸線方向の一方の端部から他方の端部にかけて略同一とされる所謂ストレート形状とされているが、この発明において、導電性ローラは筒状をなしていればその形状は特に限定されず、例えば、軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも小さな所謂逆クラウン形状とされてもよく、また、その軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも大きな所謂クラウン形状とされてもよい。
また、この発明に係る導電性ローラは、シリコーン弾性層とコート層との間に他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、シリコーン弾性層とコート層とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る導電性ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置10に用いられる現像剤22は一成分非磁性現像剤とされているが、この発明において、現像剤は、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。
前記画像形成装置10は、像担持体11と現像装置20の現像担持体23とが当接又は圧接するように配置される所謂「接触式画像形成装置」であるが、この発明において、画像形成装置は、現像剤担持体の表面が像担持体の表面に接触しないように間隙を有して配置される所謂「非接触式画像形成装置」であってもよい。
前記画像形成装置10における現像装置20は、現像剤規制部材24と現像剤担持体23とが当接又は圧接するように配置される所謂「接触式現像装置」であるが、この発明において、現像装置は、現像剤規制部材が現像剤担持体の外周面に接触しないように間隙を有して配置される所謂「非接触式現像装置」であってもよい。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径7.5mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cm3である珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1質量部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に成形した。この成形体を研磨して外径20mmのシリコーン弾性層3を形成した。シリコーン弾性層3のJIS A硬度を前記方法に従って測定したところ40であり、その電気抵抗を前記方法に従って測定したところ1.0×105Ωであった。
次いで、下記組成の内側領域形成用樹脂組成物を常法に従って調製した。
・ポリイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、商品名:コロネート−LJ)10質量部
・ポリオール(ポリエステルポリオール、商品名「ニッポランNIPPOLLAN 139」、日本ポリウレタン株式会社製)30質量部(モル比(NCO/OH=1.05)
・導電性付与剤(商品名「EC600JD」、ライオン株式会社製、平均粒径34nm)3質量部(前記ポリイソシアネートと前記ポリオールとの合計質量を100質量部としたときの含有量は7.5質量部)
・溶剤(酢酸ブチル、三協化学株式会社製)50質量部
また、前記内側領域形成用樹脂組成物に下記煙霧質シリカ系充填剤を添加して外側領域形成用樹脂組成物を常法に従って調製した。
・煙霧質シリカ系充填剤(商品名「AEROSIL 200」、日本エアロジル株式会社製、平均粒径2.0μm)8質量部(この外側領域形成用樹脂組成物におけるポリイソシアネートとポリオールとの合計質量を100質量部としたときの含有量は20質量部)
軸体2の外周面に形成されたシリコーン弾性層3の外周面に、前記内側領域形成用樹脂組成物をスプレーコーティング法によって、硬化後の層厚が10μmとなるように一回で塗布し、この内側領域形成用樹脂組成物の外周面に、前記外側領域形成用樹脂組成物をスプレーコーティング法によって、硬化後の層厚が10μmとなるように一回で塗布した。次いで、塗布した内側領域形成用樹脂組成物及び外側領域形成用樹脂組成物を軸体2及びシリコーン弾性層3と共に、150℃で30分間加熱して、硬化させた。このようにして導電性ローラを製造した。
製造された導電性ローラのコート層は、前記内側領域形成用樹脂組成物のウレタン調製成分と前記外側領域形成用樹脂組成物のウレタン調製成分とが互いに架橋し、内側領域4A及び外側領域4Bでの粒子分布差は見られるが、その界面を確認できず、総厚が20μmの単層構造であった。実施例1の導電性ローラにおいてコート層4における外側領域4Bを外表面から厚さ10μmまでと仮定した(第1表において外側領域4B及び内側領域4Aの厚さはこの仮定厚さを記載した。)。導電性ローラ1の軸線に垂直な断面におけるコート層4の断面を確認したところ、無機系充填剤7はその全体が外側領域4Bに偏在しており、内側領域4Aには存在していなかった。コート層4における無機系充填剤7の含有量はコート層4全体を形成する樹脂100質量部に対して10質量部であった。
(実施例2及び3)
前記外側領域形成用樹脂組成物における無機系充填剤7の平均粒径を2.0μmから3.0μm又は4.0μmに変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして各導電性ローラを製造した。導電性ローラの軸線に垂直な断面におけるコート層それぞれの断面を確認したところ、いずれも、内側領域4Aと外側領域4Bとの界面を確認できず、総厚が20μmの単層構造であった。実施例2及び3の両導電性ローラにおいてコート層4における外側領域4Bを外表面から厚さ10μmまでと仮定した。両導電性ローラにおいて、無機系充填剤7はその全体が外側領域4Bに偏在しており、内側領域4Aには存在していなかった。
(比較例1)
実施例1と基本的に同様して軸体2の外周面にシリコーン弾性層3を形成した。このシリコーン弾性層3の外周面に前記外側領域形成用樹脂組成物をスプレーコーティング法によって硬化後の層厚が20μmとなるように一回で塗布し、前記外側領域形成用樹脂組成物を150℃で30分間加熱して硬化させた。このようにして導電性ローラを製造した。比較例1の導電性ローラにおいてコート層における外側領域を外表面から厚さ10μmまでと仮定した。この導電性ローラのコート層はその全体に無機系充填剤7を含有する単層構造であった。
(比較例2及び3)
前記外側領域形成用樹脂組成物における無機系充填剤7の平均粒径を2.0μmから5.0μm又は8.0μmに変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして各導電性ローラを製造した。この導電性ローラの軸線に垂直な断面におけるコート層それぞれの断面を確認したところ、いずれも、内側領域と外側領域との界面を確認できず、総厚が20μmの単層構造であった。比較例2及び3の両導電性ローラにおいてコート層における外側領域を外表面から厚さ10μmまでと仮定した。両導電性ローラにおいて、無機系充填剤7はその全体が外側領域に偏在しており、内側領域には存在していなかった。
(比較例4)
前記外側領域形成用樹脂組成物における無機系充填剤7をウレタン樹脂粒子(商品名「MM−129TW」、根上株式会社製、平均粒径2.0μm)に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして導電性ローラを製造した。比較例4の導電性ローラにおいてコート層における外側領域を外表面から厚さ10μmまでと仮定した。この導電性ローラの軸線に垂直な断面におけるコート層の断面を確認したところ、内側領域と外側領域との界面を確認できず、総厚が20μmの単層構造であり、ウレタン樹脂粒子は外側領域に偏在しており、内側領域には存在していなかった。コート層におけるウレタン樹脂粒子の含有量はコート層全体を形成する樹脂100質量部に対して10質量部であった。
このようにして製造した各導電性ローラにおける周方向の十点平均粗さRz、軸線方向の十点平均粗さRz、電気抵抗、帯電量、JIS A硬度を前記方法に従って測定した結果を第1表に示す。なお、前記熱重量分析法によって測定された無機系充填剤7の含有量及び導電性付与剤の含有量は各組成物中の含有量とほぼ一致していた。
(現像剤搬送性評価)
製造した各導電性ローラの現像剤搬送性を次のようにして現像剤付着量で評価した。すなわち、電子写真式プリンター(沖データ株式会社製、商品名:「MICROLINE 1032PS」、解像度1200dpi相当)の現像ローラとして製造した各導電性ローラを装着し、この電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で黒ベタ印字を5枚行った後、黒ベタ印字を強制的に停止させて、導電性ローラを画像形成装置から取り出し、取り出した導電性ローラの表面に付着した現像剤を、断面積0.25cm2の吸引口を有する吸引式小型帯電量測定装置:商品名「210HS q/M METER」(トレックジャパン株式会社製)で吸引し、吸引回収した現像剤の質量を測定し、単位面積当りの質量に換算することによって、各導電性ローラの現像剤付着量を測定した。測定した付着量が0.8mg/cm2以上1.1mg/cm2以下であった場合を「○」、0.6mg/cm2以上0.8mg/cm2未満又は1.1mg/cm2を超え1.3mg/cm2以下あった場合を「△」、0.6mg/cm2未満又は1.3mg/cm2を超えた場合を「×」とした。その結果を第1表に示す。
(帯状画像不良評価)
製造した各導電性ローラを接触型の画像形成装置(商品名「MICROLINE 1032PS」、沖データ株式会社製)に現像ローラとして装着し、温度49℃、相対湿度80%の高温高湿環境下に7日間静置した。その後、この高温高湿環境を維持したままA4用紙(JIS)にハーフトーン画像を印刷した。印刷されたハーフトーン画像において、現像ローラが1回転することで形成される画像領域(「現像周期」とも称される。)内の印字濃度を測定し、測定された印字濃度のうち最大画像濃度と最小画像濃度との印字濃度差を求めた。この印字濃度差が0.02未満であると、帯状画像不良がなく画像全体として所望の画像濃度を有するので評価を「○」とし、印字濃度差が0.02以上であると、ほとんどの場合に帯状画像不良を確認できるので評価を「×」とした。前記画像領域においてA4用紙の短辺方向に延在する高濃度部分が「帯状画像不良(バンディング不良)」である。なお、帯状画像不良評価において、現像剤及び現像剤量調節手段はこの画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤量調節手段を用いた。
(耐久画像評価)
製造した各導電性ローラを接触型の画像形成装置(商品名「MICROLINE 1032PS」、沖データ株式会社製)に現像ローラとして装着し、温度23℃、相対湿度55%の環境下にて、A4用紙(JIS)に印字濃度2%でハーフトーン画像を10,000枚印刷した。印刷されたハーフトーン画像において、1枚目と10,000目の印字濃度差を測定した。この印字濃度差が0.1以下の場合を「○」とし、0.1を超え0.2以下の場合を「△」とし、0.2以上の場合を「×」とした。第1表に示されるように、外側領域が無機系充填剤7を含有する導電性ローラは、無機系充填剤7がコート層から脱落しにくく、帯状画像不良の発生防止と現像剤搬送性とを長期間にわたって両立できるのに対して、比較例4の導電性ローラはハーフトーン画像の印刷中にウレタン樹脂粒子がコート層表面から脱落することで「×」評価になったのではないかと推測している。