JP2012073178A - 視覚的に確認可能な被験物質の測定方法および測定用キット - Google Patents

視覚的に確認可能な被験物質の測定方法および測定用キット Download PDF

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Abstract

【課題】生体関連分子間の特異的親和性を利用する被験物質の測定方法において、煩雑な操作を要求せず被験物質を極めて短時間に正確に測定できる、迅速簡便かつ高精度な被験物質の測定方法、及び測定キットの提供。
【解決手段】視覚的に確認可能な被験物質の測定方法であって、同一部位で、1種類以上の被験物質及び対照物質を、前記被験物質及び対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示す結合性物質とそれぞれ接触させて複合体を形成させ、前記複合体の形成を複合体毎に互いに異なる色として視覚的に確認可能な発色シグナルとして検出し、前記発色シグナルを指標として被験物質を測定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、視覚的に確認可能な被験物質の測定方法および測定用キットに関する。
従来より、抗原抗体反応、レセプターリガンド反応、レクチン糖反応等の生体関連分子間の特異的親和性を利用した微量物質の測定方法が知られていた。これら生体関連分子間の親和性は、極めて特異的であり、かつその結合力が大きいため、試料中の特定の被験物質を高感度かつ高精度に測定できるとして、臨床診断分野ではもちろんのこと生物科学分野において広く利用されている。
一般に、生体関連分子間の特異的親和性を利用して被験物質を測定する際には、被験物質に対して特異的親和性を示す結合性物質を標識物質により標識し、これと被験物質を含む可能性のある被験試料とを接触反応させる。反応後、被験物質と複合体を形成した結合性物質の標識由来のシグナルを検出することにより、被験物質を測定するものである。標識物質としては、放射性同位体、蛍光物質、酵素等が使用され、各々の標識物質の種類に応じた呈色方法や検出方法が採用されている。しかしながら、標識物質からのシグナルの検出に特殊な機器を必要とする場合が多く、また、このような機器を必要としない場合であっても、検出するまでの時間が長い、煩雑な操作が要求される等の問題点があった。従って、簡便な操作を通して被験物質を極めて短時間に正確に測定できる迅速簡便かつ高精度な被験物質の測定方法が望まれていた。
かかる事情に鑑み、特に、抗原抗体反応を利用した免疫測定方法において、様々な試みがなされていた。例えば、被験試料中に含まれる複数の被験物質の存在比を同時に若しくは同一装置内で測定する技術が報告されている(特許文献1を参照)。詳細には、1回の操作での検出を可能とすべく、複数の各被験物質と個別に相互作用する結合性物質を、異なる色を呈する有色物質で標識する。続いて、これを、被験物質を含む可能性のある被験試料と接触反応させて、被験物質を捕捉する。これにより、標識化結合性物質と被験物質との相互作用により生じたシグナルが色調変化として検出され、その変化を指標として複数の被験物質の存在比を測定するものである。さらに、かかる技術により被験物質の定量が可能であることも記載され、定量に際しては、ニトロセルロースメンブラン上に標識物質を付した結合性物質を数箇所保持させて構築した複数の観察部位を有する装置を用い、何個目の部位にまでシグナルが観察されるのかを確認することにより行われている。
また、複数の被験物質を同時に定量する技術についての報告もある(特許文献2を参照)。具体的には、複数の被験物質の何れか1つとのみ結合する結合性物質を、夫々別の位置に固定し、被験物質を含む可能性のある試料と反応させ、続いて、全ての被験物質と結合でき、かつ、標識物質で標識した共通免疫反応性物質とさらに反応させる。反応後、各位置における免疫複合体に由来するシグナルを観察することにより、複数の被験物質を同時に定量することができるというものである。
さらに、標識物質として蛍光物質と有色物質を共存させたイムノクロマトグラフィーストリップが報告されている(特許文献3を参照)。かかる技術は、有色物質を共存させることにより、蛍光検出装置がない環境であっても目視での確認を可能とするとの利点を有する。さらに、有色物質は蛍光物質よりも安定であることから、蛍光物質の発する蛍光が退色した場合であっても有色物質は目視での確認が可能であり、測定結果の長期保存が可能となるとの利点も有する。
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、色調の変化により2つの被験物質の存在比を求めているが、色調の変化は官能試験であることから、個人の主観により結果が変動する可能性がある。また、定量測定技術についても言及されているが、検出部位を複数作成する必要があり、依然として煩雑な操作が要求されていた。特に、測定対象となる被験物質の量は未知であることから、結果の信頼性、特に定量値の信頼性は低いものであった。
また、複数の被験物質の同時定量を可能とする特許文献2に記載の技術についても、検出部位が被験物質毎に異なることから、ストリップの作製に煩雑な操作が依然として要求された。また、共通免疫反応性物質を同一の標識物質で標識していることから、被験物質の定量に際して夫々のシグナル強度を目視で判別することは困難であった。そのため、被験物質の定量には別途検出機器が必要であり、迅速簡便な測定方法とは言い難かった。
特許文献3に記載の技術は、蛍光物質と有色物質の双方で、被験物質を特異的に捕捉する結合性物質を標識し、それを各標識に応じた別個の検出方法により検出するものである。しかし、結合性物質を標識する際に、立体構造を乱すことなく被験物質に対する結合活性を保持した状態で標識できる結合性物質上の部位は限られている。してみると、結合性物質上の標識可能部位を2種類の標識物質で分け合うことから、1種類の標識物質で標識した場合と比較すると、結合性物質の単位量当たりにおける標識物質量が必然的に低減する。そのため、検出感度の低下を招き被験物質を正確に定量することは難しい。
さらに、生体関連分子間の特異的親和性を利用した測定方法は、広範な分野における種々な試料に対して利用されるがため要求される感度や精度は、測定試料、並びに測定目的によって相違するのが実情である。例えば、被験物質の存在量が未知の試料に対しては、その存在量を迅速かつ簡便に見当をつけることが要求される。一方で、正確な存在量を測定したい場合には、高い精度をもって測定することが必要とされる。しかしながら、従来においては、迅速簡便な測定と、高精度な測定という2つの要求を1の実験系で達成できる測定方法は存在しなかった。
特開2004−132892号公報 特開2002−286716号公報 特開2010−14631号公報
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、生体関連分子間の特異的親和性を利用する被験物質の測定方法において、煩雑な操作を要求せず被験物質を極めて短時間に正確に測定できる、迅速簡便かつ高精度な被験物質の測定方法の提供を目的とする。また、本発明は、迅速簡便な測定と、高精度な測定という2つの要求を1の実験系で達成できる被験物質の測定方法の提供を目的とする。そして、かかる被験物質の測定方法を実施するための測定用キットの提供をも目的とする。本発明は、好ましくは、イムノクロマトグラフィー法、及び酵素免疫測定法(EIA)、なかでも酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に応用できる。
本発明者が鋭意検討を行った結果、1種類以上の被験物質及び一定量の対照物質を、前記被験物質及び対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示す結合性物質と接触させて複合体を形成させ、前記複合体の形成を視覚的に確認可能な発色シグナルとして取得したところ、対照物質と被験物質由来の発色シグナルが複合し、これを指標として試料中に含まれる被験物質を、迅速簡便に検出及び定量できることを見出した。同時に、対照物質との比較により被験物質を測定することから、厳密な時間管理を要せず、またサチュレーションするまで反応を続けなくとも被験物質の正確な定量を行え得ることを見出した。さらに、迅速簡便な測定と、高精度な測定という2つの要求を1の実験系で達成できることをも見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
上記目的を達成するため、下記の〈1〉〜〈7〉の構成からなる発明を提供する。
〈1〉視覚的に確認可能な被験物質の測定方法であって、同一部位で、1種類以上の被験物質及び対照物質を、前記被験物質及び対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示す結合性物質とそれぞれ接触させて複合体を形成させ、前記複合体の形成を複合体毎に互いに異なる色として視覚的に確認可能な発色シグナルとして検出し、前記発色シグナルを指標として被験物質を測定する方法。
〈2〉前記結合性物質が、前記特異的親和性を示す被験物質及び対照物質各々に対応して、互いに視覚的に異なる色として確認できる標識物質により各々標識されている。
上記〈1〉及び〈2〉の構成によれば、発色シグナルを指標として被験物質を視覚的に迅速かつ簡便に測定でき、測定に際して機器分析を介せずとも定量及び被験試料中に含まれる被験物質の存在比を確認できる。具体的には、被験物質が存在しない場合には対照物質に結合した標識由来の色相を呈する。一方、被験物質の濃度が増加に伴い、被験物質に結合した標識に由来する色相に近づく。そして、被験物質が大量に含まれる場合には被験物質に結合した標識に由来する色相を呈する。したがって、被験物質濃度変化に応じて色相が変化し、この変化により被験物質を、視覚的に迅速かつ簡便に測定できる。そして、同一検出部位で複数の被験物質を測定することが可能となるから、装置の簡略化を図ることができる。また、被験物質を、被験物質と対照物質由来の標識が複合した発色シグナルを指標として測定することから、反応時間に拘束されることなく確認することができる。つまり、1の標識物質由来の1種類の発色をもって被験物質を定量する従来法において必要とされた反応時間の厳密な時間管理を要せず、また、サチュレーションするまで反応を続ける必要もない。さらに、標識物質由来の発色を、色の濃淡ではなく、色相の変化により確認することから、判別が容易であり、かつ、個人の主観に影響され難いという利点もある。
〈3〉 前記標識物質が、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス、蛍光色素、蛍光コロイド粒子又はこれらの組み合わせから選択される。
上記〈3〉の構成によれば、これら視覚的に発色を確認できる標識物質の使用により、発色シグナルを指標として被験物質を視覚的に迅速かつ簡便に測定でき、定量及び被験試料中に含まれる被験物質の存在比を確認できる。また、特に、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス等の肉眼により確認できる有色物質を使用することにより、紫外線発生装置等の機器を要せずとも、前記被験物質又は対照物質と結合性物質間に形成された複合体を確認できる。これにより、更に迅速簡便な被験物質の検出を可能にする。そして、これらの有色物質は、時間が経過しても退色し難いという性質を有し、測定後のサンプルを長期にわたって保存並びに比較できるとの利点を有する。
〈4〉前記発色シグナルを、発色シグナルと一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本との比較すること、又は色相の比率に基づいて被験物質の量を算出する。
上記〈4〉の構成によれば、色見本との比較により、被験物質の測定において、より迅速簡便かつ正確な測定を可能にする。つまり、色見本という客観的な判断基準の提供により測定結果の信頼性をより向上させることができる。そして、予め被験物質に対する色見本を作成しておくことにより、測定毎に色見本を作成する手間を省くことができ、より迅速な測定が可能となる。
〈5〉視覚的に確認可能な被験物質の測定用キットであって、対照物質、及び、1種類以上の被験物質及び前記対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示し、かつ、前記特異的親和性を示す被験物質及び対照物質各々に対応して互いに視覚的に異なる色として確認可能な標識物質により各々標識されている結合性物質を含む、キット。
上記〈5〉の構成によれば、被験物質の測定に必要な試薬をキットとして構成することにより、簡便且つ迅速な被験物質の測定が可能となる。そして、かかるキットを用いて被験物質を測定すると、被験物質が存在しない場合には対照物質に結合した標識由来の色相を呈する。一方、被験物質の濃度が増加に伴い、被験物質に結合した標識に由来する色相に近づく。そして、被験物質が大量に含まれる場合には被験物質に結合した標識に由来する色相を呈する。したがって、被験物質濃度変化に応じて色相が変化し、この変化により被験物質を、視覚的に迅速かつ簡便に測定できる。また、被験物質を、被験物質と対照物質由来の標識が複合した発色シグナルを指標として測定することから、反応時間に拘束されることなく確認することができる。つまり、1の標識物質由来の1種類の発色をもって被験物質を定量する従来法において必要とされた反応時間や温室度、気圧などの実験条件管理を要せず、また、サチュレーションするまで反応を続ける必要もない。さらに、標識物質由来の発色を、色の濃淡ではなく、色相の変化により確認することから、判別が容易であり、また個人の主観に影響され難いとのいう利点もある。
〈6〉前記標識物質が、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス、蛍光色素、蛍光コロイド粒子、又はこれらの組み合わせから選択される。
上記〈6〉の構成によれば、これら視覚的に発色を確認できる標識物質の使用により、発色シグナルを指標として被験物質を視覚的に迅速かつ簡便に測定でき、定量及び被験試料中に含まれる被験物質の存在比の確認を可能にするキットを提供できる。また、特に、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス等の肉眼により確認できる有色物質により標識され他結合性物質を使用することにより、紫外線発生装置等の機器を要せずとも、前記被験物質又は対照物質と結合性物質間に形成された複合体を確認できることから、更に迅速簡便な被験物質の検出を可能にするキットを提供できる。そして、これらの有色物質は、時間が経過しても退色し難いという性質を有することから、かかるキットを使用して測定したサンプルは、測定後長期にわたって保存並びに比較できるとの利点を有する。
〈7〉発色シグナルと、一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本を含む。
上記〈7〉の構成によれば、キットに色見本を組み込むことにより、色見本との比較により、キットを利用した被験物質の測定において、より迅速簡便かつ正確な測定を可能にする。つまり、色見本という客観的な判断基準の提供により測定結果の信頼性をより向上させることができる。そして、予め作成された被験物質に対する色見本の存在により、測定毎に色見本を作成する手間を省くことができ、より迅速な測定が可能となる。
本発明の視覚的に確認可能な被験物質の測定方法の一例(二色定量法)における測定原理を、模式的に説明する図である。 本発明の視覚的に確認可能な被験物質の測定方法の一例(二色定量法)における測定原理を、機器分析を介して説明するグラフである。 被験物質と対照物質を、夫々異なる色を呈する標識物質で着色し、標識物質由来の2色の相互作用による色の変化に基づいて、被験物質を測定した実施例1で採用した方法とその結果を模式的に説明する図である。 1種類の被験物質と対照物質を、夫々異なる色を呈する標識物質で着色し、標識物質由来の2色の相互作用による色の変化に基づいて、被験物質を測定した実施例2の結果を示す図である。 1種類の被験物質と対照物質を、夫々異なる色を呈する標識物質で着色し、標識物質由来の2色の相互作用による色の変化に基づいて、被験物質の濃度により3原色の色変化を測定した実施例2の結果を示すグラフ。 実施例2の結果を、サンプル毎に3原色の時間の変化を示すグラフ。
以下、本発明について詳細に説明する。しかし、本発明は以下の説明に限定されることなく適宜変更することができる。
〔視覚的に確認可能な被験物質の測定方法〕
本発明は、視覚的に確認可能な被験物質の測定方法を提供し、具体的には、同一部位で、1種類以上の被験物質及び対照物質を、前記被験物質及び対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示す結合性物質とそれぞれ接触させて複合体を形成させ、前記複合体の形成を視覚的に確認可能な発色シグナルとして取得し、前記発色シグナルを指標として被験物質を検出、及び定量するものである。
ここで、本発明の被験物質の測定方法に適用される被験試料は、測定対象となる被験物質を含み得る試料であれば特に制限はない。例えば、動物由来の血液、血漿、血清、脳脊髄液、羊水、乳、汗、尿、唾液、喀痰、糞便、組織、細胞培養物等の生体由来試料、植物の根、茎、葉、花、果実等の植物由来試料、土壌、地下水、河川水、湖沼水等の環境試料、肉、卵、加工食品等の食品等が例示される。また、これらの試料は必要に応じて分離、抽出、精製等の前処理が施されていてもよい。
本発明の被験物質の測定方法は、抗原抗体反応、レセプターリガンド反応、レクチン糖(糖鎖、複合糖質等)反応、酵素基質反応、核酸ハイブリダイゼーション反応等の任意の生物的な特異的親和性反応を利用するものである。特には、抗原抗体反応が好ましい。ここで、生物的な特異的親和性反応とは、生体関連分子間に存在する特異的識別能を利用する反応であり、2以上の物質が非共有結合により可逆的かつ選択的に結合する反応を意味するものとする。ここで、抗原抗体反応は、抗体が抗原の抗原決定基を特異的に認識し結合する反応であり、抗体が抗原決定基に相補的な構造を持つために惹起される反応である。そして、レセプターリガンド反応としては、ホルモン、神経伝達物質、各種薬物、リンホカイン、サイトカイン、リンパ球抗原等の機能性タンパク質と、これらに個別に特異的に結合するレセプターとの反応が例示される。
そして、本発明の被験物質の測定方法において測定対象となる被験物質は、当該被験物質に対する特異的親和性を有する結合性物質が存在するものであれば特に制限はない。したがって、被験物質としては、抗原抗体反応を惹起できる抗原又は抗体、レセプターリガンド反応を惹起しえるレセプター又はリガンド、レクチン糖反応を惹起しえるレクチン又は糖、酵素基質反応を惹起しえる酵素又は基質等、特異的親和性を有する結合性物質が存在するものである限り、何れの物質も被験物質とすることができる。そして、天然物、遺伝子工学的技術及び化学合成技術等による合成物の別を問わない。例えば、抗原抗体反応を惹起する抗原と為り得る各種タンパク質、糖、脂質、糖タンパク質、その他の有機物等が挙げられ、逆に、抗体を被験物質とすることもできる。ここで、本明細書における抗原には、抗原性は有しているが免疫原性を有していない低分子化合物であるハプテン等も好ましく例示される。ハプテンとしてはPCB類、ダイオキシン類等が例示される。また、適当なキャリアタンパク質との結合物であってもよく、共有結合等の化学的に結合したものの他、単に物理的吸着により結合したものであってもよい。また、適当なスペーサーを介して結合してもよい。このようなキャリアタンパク質としては、牛血清アルブミン、ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン、オボアルブミン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、グロブリン、カゼイン等が例示される。つまり、免疫測定法で分子量の大きな高分子に対して多く利用されている1つの被験物質である抗原に2つの抗体で挟み込むサンドイッチ型や、分子量の小さな被験物質に類似、または同一の構造をもつコンジュゲートと被験物質とを混在させて1つの抗体で補足させる競合型でも使用できる。
なかでも、本発明は、ホルモンの検出に好適に利用でき、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン等の性腺刺激ホルモン、テストステロン等の男性ホルモン、エストロゲン、プロゲストロン等の女性ホルモン、甲状腺ホルモン等を含むタンパク質ホルモン及びペプチドホルモン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド等のステロイド骨格を有するステロイドホルモン等、何れもが好適に例示される。ホルモンは、非常に微量でその作用を発揮するようにできているため、体内濃度は極めて低い。そのたため、物質として他の生体内成分と単離、精製することは困難であることが知られている。しかしながら、ホルモンを定量することは、特定の疾病等の診断において、非常に重要な意味をもつため、本発明の被験物質の測定方法の利用価値は高い。
結合性物質としては、測定対象の被験物質に対する特異的親和性を有する物質であれば、特に制限はない。例えば、被験物質が抗原である場合には、当該抗原に特異的に結合する抗体が結合性物質と為り得、また、被験物質がリガンドである場合には、当該リガンドに特異的に結合するレセプターが結合性物質と為り得る。その逆の組み合わせも好適に例示される。そして、これらは天然物、遺伝子工学的技術及び化学合成技術等による人工合成物の別を問わない。また、公知の被験物質に対する特異的親和性を有する物質を人為的に操作して得られたその断片であっても、被験物質に対する特異的親和性を保持している限り好適に利用できる。
例えば、結合性物質が抗体である場合、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れをも好適に利用可能である。これらは市販品を利用できると共に、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット等の哺乳動物に抗原となり得る前記被験物質を免疫することによって得られたポリクローナル抗体をも好適に使用できる。さらに、前記被験物質に対する抗体産生細胞とミエローマ細胞を細胞融合して得られたハイブリドーマ細胞を培養して得られたモノクローナル抗体をも好適に利用できる。そして、免疫に際しては、必要に応じて適当なアジュバンドと併用することができる。また、パパイン、ペプシン等のタンパク分解酵素での処理で得られる、Fabフラグメント、F(ab´)フラグメント、Fdフラグメント等の抗原結合能を保持する抗体断片が例示される。また遺伝子組換え等の公知の遺伝子工学的技術、及び化学合成技術等に基づいて調製された抗体をも含む。また、結合性物質がレセプターである場合には、細胞膜上に存在する膜レセプター、細胞内に存在する核内レセプターの別を問わない。さらに、レセプターの部分精製物でもよく、また融合タンパク質の形態であってもよい。
対照物質は、当該対照物質に対する特異的親和性を有する結合性物質が存在するものであれば特に制限はないが、被験物質とは特異的親和性において競合しない物質であり、また、特異的親和性能の種類が同一であることが好ましい。したがって、被験物質の測定において抗原抗体反応を利用する場合には、対照物質も抗原抗体反応により捕捉される物質であり、かつ、かかる対照物質を捕捉する抗体が、被験物質に対して交差反応を示さないものであることが望ましい。
本発明の被験物質の測定方法においては、被験物質及び当該被験物質に対して特異的親和性を示す結合性物質の少なくとも一方は、視覚的に確認できる有色の標識物質により標識される。同様に、対照物質及び当該対照物質に対して特異的親和性を示す結合性物質の少なくとも一方は、視覚的に確認できる有色の標識物質により標識される。特に好ましくは、結合性物質が標識される。なお、被験物質毎、及び対照物質を互いに異なる色として視覚的に確認可能な発色シグナルとして検出できるように、互いに異なる色を呈する標識物質を選択する。ここで、標識物質により標識された結合性物質としては、結合性物質に直接標識物質を付された形態以外に、被験物質と反応する結合性物質を直接は標識せず、この結合性物質を特異的に認識し結合する物質に標識物質を付し、間接的に結合性物質を標識する形態も含むものとする。また、被験物質と結合性物質との複合体を特異的に確認する物質、例えば抗原抗体反応を利用する場合には抗原抗体複合体に対する補体等、に標識物質を付す形態、更には、補体を特異的に確認する物質に標識を付す形態をも含むものとする。
標識物質は、視覚的に着色を確認できる有色物質であり、かつ対象となる特異的親和性反応において必要とされる安定性と機能性を保持できる限りは、当該分野で公知の何れの標識物質を使用できる。特には、肉眼で着色を確認できるものが好ましい。なぜなら、紫外線発生装置等の特別な標識検出のための機器を要せずとも、前記被験物質又は対照物質と結合性物質間に形成された複合体を確認でき、これにより迅速簡便な被験物質の測定を実現することができるからである。標識物質としては、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス、及び酵素標識等が例示されるが、時間が経過しても退色し難い金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックスが、標識の安定性の観点から特に好ましく、これらを標識物質として選択することにより、長期にわたって測定後のサンプルを保存並びに比較することが可能となる。金属コロイド粒子として、金、白金、銅、銀、パラジウムコロイドの他、それらを混合した粒子等を使用することができ、特には、金コロイド粒子は適当な粒径において赤色を呈する点で好ましい。非金属コロイド粒子として、セレニウムコロイド等を例示することができる。金属コロイド及び非金属コロイド粒子は、常法により調製することができ、このとき、粒径は所望の色調を呈するよう調節される。また、市販品を利用することもできる。着色ラテックスは、ポリスチレン等の高分子重合体の粒子が赤や青色を呈する着色剤により着色したものである。着色ラテックスは、常法により調製することができ、着色剤と共にモノマーを重合したもの、また重合体を着色剤で着色したものの別は問わず、また、市販品を利用することもでき、粒径も適宜選択される。酵素標識としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ等を例示することができる。そして、酵素標識を使用する場合、当該酵素に対する基質及び必要に応じて発色試薬を作用させ、その反応により生じる発色を検出する。例えば、ペルオキシダーゼの場合、過酸化水素と2、2´−アジノビス(3−エチルベンゾ. チアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)と反応することにより肉眼で確認できる青色を呈し、アルカリフォスファターゼの場合、ブロモクロロインドリルリン酸(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)と反応することにより肉眼で確認できる青紫色を呈する。
また、視覚的に着色を確認できる有色物質としては、紫外線のような励起光を照射されることにより発光する蛍光色素及び蛍光コロイド粒子に代表される蛍光物質のような物質も含まれる。蛍光物質としては、緑色系のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、シアニン3(Cy3)およびシアニン5(Cy5)等のシアニン色素、赤色系のテトラメチルローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRICA)、テキサスレッド等が例示される。更に、ジゴキシゲニンやビオチン等をも好適に利用できる。量子ドットと呼ばれるカドミウム-セレン等からなる粒子状の金属、非金属コロイドも蛍光波長による識別が容易で好適に利用できる。しかし、これらに限定するものではなく、また標識化は既知の手法により行うことができる。
被験物質と対照物質を確認するための標識物質は、異なる色相を呈する標識物質を選択する。ここで、色相とは、赤、黄、緑、青といった色の様相の相違を意味し、色の濃淡とは区別される。例えば、1種類の被験物質を測定する場合には、被験物質と対照物質とを赤と青、青と緑、黄と青等に別の色相の組み合わせにより、2色で測定を行う。また、複数の被験物質を一の反応系で測定する場合には、被験物質毎に、また対照物質とは異なる色相を呈する標識物質を選択する。したがって、2種類の被験物質を測定する場合には、赤青緑、赤黄青等の3色の組み合わせで、また3種類の被験物質を測定する場合には、赤青黄緑等の4色の組み合わせの標識物質を使用する。このように、色相の異なる標識物質を使用することにより、複数の被験物質の同時測定が可能となる。標識物質の色の選択においては、赤、青、緑の三原色から選択することが色の識別性の観点から特に好ましい。
被験物質及び対応する結合性物質の反応、及び、対照物質及びそれに対応する結合性物質の反応は、両者を液相においたまま行うことができるが、被験物質及び対応する結合性物質の何れか一方、及び、対照物質及びそれに対応する結合性物質の何れか一方を、必要に応じて不溶性支持体に固定化することができる。不溶性支持体としては、例えば、ガラス、シリカゲル、ベンナイト等の無機物質、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子物質、アガロース、デキストラン、ポリサッカライド等の不溶性多糖が好ましく使用できる。また、これらの支持体は、球状、棒状、微粒子等の形状、あるいは試験管、マイクロプレート、ニトロセルロース等のメンブラン等の形態で使用することができる。またイムノクロマトグラフィーストリップの形態に構築してもよい。
不溶性支持体への固定化は、公知の方法に従って行うことができる。物理的吸着法、化学結合法が例示される。物理的吸着法は、結合性物質又は競合物質と不溶性支持体とを、水、生理食塩水、各種緩衝液等の水溶性溶媒中で接触させることにより行うことができる。化学的結合法としては、ジアゾ法、酸アジド法、イソシアナート法、ブロムシアン法等による共有結合の形成による固定化が例示される。また、官能基を2以上有する架橋試薬を用いて固定化する方法も利用できる。架橋試薬としては、結合性物質と結合可能な官能基を同一分子内に2以上有する多官能性試薬が例示される。このような官能基としては、スクシンイミド基、スルホン化スクシンイミド基、マレイミド基等が例示される。そして、このような官能基を2以上有する多官能性試薬としては公知のいずれの物質をも使用できる。また、抗体、ビオチン−ストレプトアビジン等を利用して固定化することもできる。固定化に際しては、非特異的結合の抑制のため、必要に応じてブロッキング等の処理を行うことができる。
本発明の被験物質の測定方法における操作手順及び反応条件等は、通常の免疫測定方法等の生体関連分子間の生物学的な特異的親和性を利用する測定方法に準じて行うことができ、被験物質の種類に応じて適宜選択することができる。このとき、結合性物質、対照物質の添加量は、被験物質に応じて当業者が適宜設定することができる。一形態として、被験試料中の被験物質を、所定量の結合性物質と接触させる。接触は、上記した通り、双方を液相形態で行う場合のほか、被験物質又は結合性物質を不溶性支持体に固定化した形態で行うことができる。固定化する場合には、サンドイッチ法、競合法や、それらを組み合わせた様式で測定するように構成してもよい。例えば、サンドイッチ法は、被験物質に対する2種類の抗体を利用する。具体的には、適当な不溶性支持体上に固定化した一次抗体、被験物質、一次抗体とは異なる抗原決定基を認識する標識二次抗体の三者の結合を利用して、試料中の被験物質を測定するものである。
反応後、被験物質と結合性物質、及び、対照物質と結合性物質間の特異的親和性結合による複合体の形成を視覚的に確認可能な発色シグナルとして取得し、前記発色シグナルを指標として試料中に含まれる被験物質を測定する。このとき、前記複合体の形成を、前記複合体毎に互いに異なる色として視覚的に確認可能な発色シグナルとして検出する。そして、発色シグナルは、好ましくは目視により確認する。特に好ましくは肉眼による確認であり、これにより機器分析を介さずとも被験物質の検出、存在比及び定量が可能となり、より簡便迅速な測定が実現する。しかしながら、必要に応じて蛍光観察のための蛍光顕微鏡等の機器を使用してもよい。本発明の被験物質の測定方法においては、被験物質の種類毎に、また対照物質とも異なる色相を呈する標識物質で標識されることから、測定エリアの色を目視で確認することにより、被験物質の濃度を迅速かつ簡便に把握することができる。つまり、形成される複合体が被験物質の種類及び対照物質毎に互いに異なる色相として認識される色を発する。複合体を形成する特異的親和性反応は、単一の測定エリア内などの同一部位で行われることから各シグナルが複合する。そして、この複合した発色シグナルを確認し、これを指標として被験物質を測定する。具体的には、被験物質が存在しない場合には対照物質由来の標識の色相を呈するが、被験物質の濃度が増加に伴い、被験物質に由来する標識の色相に近づく。したがって、被験物質濃度変化に応じて形成された複合体からのシグナルの混合により色相が変化し、この変化により被験物質を測定できる。
このとき、発色シグナルと一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本を予め作成しておき、これと測定により得られた発色シグナルとを比較することにより、被験物質の量を迅速簡便かつ正確に測定することができる。つまり、色見本という客観的な判断基準の提供により測定結果の信頼性をより向上させることができる。そして、予め作成された被験物質に対する色見本の存在により、測定毎に色見本を作成する手間を省くことができ、より迅速な測定が可能となる。
そして、二以上の被験物質を測定する場合には、被験物質の数に対照物質を含めた数の色の標識が複合した色の変化で、2色の場合と同様にして測定を行うことができる。そして、本発明の被験物質の測定方法によれば、被験物質の数が増加しても、同一検出部位で測定することが可能であることから、装置の簡略化を図ることができる。
従来において、被験物質を定量する場合には、一の標識物質由来の一の色の発色をもって測定していたが、標識物質からの発色は、時間により発色強度が増大するため、厳密な時間管理、温室度、気圧などの実験条件管理を行うか、サチュレーションするまで反応を続けるか、測定の度に濃度既知の被験物質を測定して検量線を作成する必要があった。しかしながら、本発明は、被験物質を、被験物質と対照物質由来の標識が複合した発色シグナルを指標として測定することから、反応時間に拘束されることなく確認することができるという利点がある。また、色の濃淡ではなく、色相の変化により確認することから、判別が容易であり、また個人の主観に影響され難いとの利点もある。
また、より正確な被験物質量を測定する場合には、機器分析を併用することができる。したがって、本発明の被験物質の測定方法は、一次スクリーニングのようなラフスクリーニングを目視で行うことができ、必要な場合には、それに続いて精密測定を行うことができる。したがって、本発明の被験物質の測定方法は、一の実験系における一の操作で、一次スクリーニングから適宜必要に応じて精密測定まで行うことができ、測定の効率化を図ることができるとの利点もある。また、機器分析を行う場合には、発色シグナルの強度と、一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した検量線を予め作成しておくことで測定毎に検量線を作成する手間を省くことができ、より迅速な測定が可能となる。つまり、検量線と、被験物質を測定して得られたシグナル強度とを比較することにより、被験物質の量を迅速簡便かつ正確に測定することができる。
以下に、具体的な本発明の被験物質の測定方法の一例を示す。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ここでは、抗原抗体反応を利用して、一種類の被験物質Aの定量を行う場合の手順を図1に示す。この場合には、対照物質と被験物質は2色の発色シグナルとして確認できる所謂二色定量法として構成される。まず、被験物質Aを捕捉するための抗体として一次抗体と二次抗体の2種類を準備し、二次抗体を青色標識する。青色標識としては、例えば、青色ラテックス粒子等を利用することができる。そして、対照物質、及び、当該対照物質を捕捉するための抗体を調製し、対照物質を黄色標識する。黄色標識としては、黄色ラテックス粒子等を利用することができる。まず、被験物質に対する一次抗体と対照物質に対する抗体を測定エリア内に固定化したイムノクロマトグラフィーストリップを作製する。続いて、被験物質Aを含有している可能性のある被験試料に、黄色標識対照物質B及び被験物質Aに対する青色標識二次抗体を混合し、この混合液を上記で作製したストリップ上に接触させ、適当な温度と時間反応させる。反応後、遊離の成分を分離し、色の変化を目視により確認する。被験物質Aと対照物質Bが異なる色で標識されることから、測定エリアの色を目視で観察することにより、被験物質Aの濃度を迅速に把握することができる。つまり、被験物質Aが存在しない場合には、対照物質B由来の黄色標識のみに由来する黄色を呈する。被験物質Aが存在する場合には、対照物質Bに由来する黄色と被験物質に由来する青色が複合し緑色を呈する。被験物質Aの存在量が少ない場合には、両方発色するが被験物質Aに由来する青色が弱く、対照物質Bに由来する黄色が主となり黄緑色を呈する。反対に、被験物質Aの存在量が多い場合には、被験物質Aに由来する青色が強く、対照物質Bに由来する黄色を抑え、青色に近い色を呈する。このように、被験物質量の増加に伴い、測定エリアの色相が黄色〜青色へ、黄緑色及び緑色を経て連続的に変化することから、測定エリアの色相を確認することにより被験物質の濃度を確認することができる。そして、発色シグナルと一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本を予め作製しておき、これと被験物質の測定により得られた発色シグナルとを比較することにより、被験物質の量を簡便かつ迅速に測定することができる。
次に、上記二色定量法における被験物質及び対照物質由来の標識物質の発色強度につき、機器分析を通じて解析した一例を図2に示す。パネルAは、被験試料中に被験物質Aがほとんど存在しない場合、パネルBは、被験試料中に被験物質Aが対照物質と同量程度含まれる場合、パネルCは、被験試料中に被験物質Aが多量に含まれる場合の発色強度と時間の関係を示すグラフである。測定エリアは、パネルAが黄色、パネルBが緑色、パネルCが黄緑色を呈している。標識物質からの発色は、時間により発色強度が増大し、一定時間経過後にサチュレーションに達するため、従来のようにおいては、一の標識物質由来の一の色の発色をもって被験物質を測定する場合には、反応時間や温湿度等の厳密な反応環境管理を行うか、サチュレーションするまで反応を続けるか、測定の度に濃度既知の被験物質を測定して検量線を作成する必要があった。しかしながら、本発明は、被験物質を、被験物質と対照物質由来の標識が複合した発色シグナルを指標として測定するものであり、図2のグラフで示されるようにどの時点においても、被験物質由来のシグナルと対照物質由来のシグナル比は同じである。したがって、どの時点でも被験物質由来のシグナルと対照物質由来のシグナルが複合して呈する色相は変化しないこととなり、反応時間に拘束されることなく、被験物質を測定することができるという利点がある。また、色の濃淡ではなく、色相の変化により確認することから、判別が容易であり、また個人の主観に影響され難いとの利点もある。
〔視覚的に確認可能な被験物質の測定用キット〕
本発明は、上記視覚的に確認可能な被験物質の測定方法を実施するための試薬を備えた、被験物質の測定用キットを提供する。このように被験物質の測定に必要な試薬をキットして構成することにより、簡便且つ迅速な被験物質の測定が可能となる。試薬としては、例えば、被験物質に対して特異的親和性を示す結合性物質、及び、対照物質、前記対照物質に対して特異的親和性を示す結合性物質を含んで構成され、ここで、前記結合性物質が、特異的親和性を示す被験物質及び対照物質に応じて視覚的に異なる色であると確認可能な標識物質により夫々標識されているものである。被験物質が2以上である場合には、被験物質毎に個別に特異的親和性を示す結合性物質が含んで構成される。
さらに本発明の被験物質の測定用キットは、好ましくは、発色シグナルと、一定量の対照物質に対する被験物質の量との関係を表した色見本を含んで構成される。キットに色見本を組み込むことにより、色見本との比較により、キットを利用した被験物質の測定において、より迅速簡便かつ正確な測定を可能にする。つまり、色見本という客観的な判断基準の提供により測定結果の信頼性をより向上させることができる。そして、予め作成された被験物質に対する色見本の存在により、測定毎に色見本を作成する手間を省くことができ、より迅速な測定が可能となる。
[実施例1]
被験物質と対照物質を、夫々異なる色を呈する標識物質で着色し、標識物質由来の2色の相互作用による色の変化に基づいて、被験物質を測定した(目視によるサンドイッチ二色定量法)。
〔方法〕
本実施例においては、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(以下「hCG」と略する。)を被験物質とし、テストステロンを対照物質として用いた。そして、hCGは固定化抗hCG抗体と標識抗黄体形成ホルモン(LH)抗体でのサンドイッチ方式で、テストステロンは標識抗テストステロン抗体と、夫々免疫複合体を形成するように実験系を構築した。実験系の手順と原理を、図3に模式的に示すともに、以下で説明する。
1.イムノクロマトグラフィーストリップの作製
0.5mMの抗ヒトhCG抗体(メディックスバイオケミカ)溶液と1mg/mlのテストステロン−BSAコンジュゲートを、夫々ニトロセルロースメンブラン(ミリポア)上の所定の同一位置に塗布し、乾燥固定化した。このメンブランを硬質ビニール板に接着した。続いて、メンブラン上にグラスウール(ミリポア)を重なりができるように接着し、更にメンブラン上に吸水マットを重なるように接着した。このようにして形成したメンブランシートを5mm幅に切断してイムノクロマトグラフィーストリップを作製し、これをハウジングに固定した。
2.標識化抗体の調製
抗ヒトLH抗体(メディクスバイオケミカ)に青色ラテックス(ポリサイエンス)を吸着結合させて青色ラテックス標識抗ヒトLH抗体を調製した。そして、抗テストステロン抗体(アクリス)に金コロイド粒子(BBI)を吸着結合させて金コロイド標識抗テストステロン抗体を調製した。
3.測定
試料として、リコンビナントhCG(ロート製薬)をPBST緩衝液で希釈し100、10、1、0pg/mlに調製したhCG溶液を調製した。そして、各濃度のhCG溶液、青色ラテックス標識抗ヒトLH抗体溶液と金コロイド標識抗テストステロン抗体溶液を混合した。続いて、各混合液100μlを、上記で作製したイムノクロマトグラフィーストリップ上に滴下し、浸透により着色ラテックスと金コロイド粒子の凝集が目視できるまで反応(10分)を行った。反応終了後、目視にて色の変化を測定した。
〔結果〕
結果を表1に示す。
hCGが存在しない場合には、対照物質に結合した抗テストステロン抗体の赤色標識のみに由来する赤色を呈した。hCGが存在する場合には、hCGに結合した抗ヒトLH抗体に由来する青色と抗テストステロン抗体に由来する赤色が複合し紫色を呈した。ただし、複合色の紫は、hCGの存在量により青−赤のグラデーションを呈した。具体的には、hCGの存在量が少ない場合には、抗ヒトLH抗体に由来する青色が弱く、抗テストステロン抗体に由来する赤色が主となり、少し紫色が混じった赤色を呈した。反対に、hCGの存在量が多い場合には、抗ヒトLH抗体に由来する青色が強く、抗テストステロン抗体に由来する赤色を抑えて少し紫色が混じった青色を呈し、非常に多い場合には青色を呈した。これにより、ストリップ上の色の変化をもって、hCGを定量できることが判明した。
[実施例2]
1種類の被験物質と対照物質を、夫々異なる色を呈する標識物質で着色し、標識物質由来の3色の相互作用による色の変化に基づいて、被験物質を測定した(機器分析による競合二色定量法)。
〔方法〕
本実施例においては、テストステロンを被験物質とし、ビオチンを対照物質として用いた。
そして、テストステロンは固定化テストステロン−BSAコンジュゲートと標識抗テストスレロン抗体での競合免疫方式で、ビオチンは標識抗ビオチン抗体と固定化ビオチン−BSAコンジュゲート、夫々免疫複合体を形成するように実験系を構築した。
1.イムノクロマトグラフィーストリップの作製
1mg/mlのテストステロン−BSAコンジュゲートと1mg/mlのビオチン−BSAコンジュゲートの混合溶液を、ニトロセルロースメンブラン(ミリポア)上の所定の同一位置に塗布し、乾燥固定化した。このメンブランを硬質ビニール板に接着した。続いて、メンブラン上にグラスウール(ミリポア)を重なりができるように接着し、更にメンブラン上に吸水マットを重なるように接着した。このようにして形成したメンブランシートを5mm幅に切断してイムノクロマトグラフィーストリップを作製し、これをハウジングに固定した。
2.標識化抗体の調製
抗テストステロン抗体(アクリス)に赤色ラテックス(ポリサイエンス)を吸着結合させて青色ラテックス標識抗テストステロン抗体を調製した。そして、抗ビオチン抗体に赤色ラテックス(ポリサイエンス)を吸着結合させて赤色ラテックス標識抗ビオチン抗体を調製した。
3.測定
試料として、テストステロン(シグマ)をPBST緩衝液で希釈し50、20、17.5、15、10、0pg/mlに調製したテストステロン溶液を調製した。そして、各濃度のテストステロン溶液、赤色ラテックス標識抗テストステロン抗体溶液と青色コロイド標識抗ビオチン抗体溶液を混合した。続いて、各混合液100μlを、上記で作製したイムノクロマトグラフィーストリップ上に滴下し、浸透により着色ラテックスの凝集が目視できるまで反応(10分)を行った。反応終了後、目視にて色の変化を測定した。テストステロン50、20、17.5、15、10、0pg/mlにしたテストステロン溶液を調製し、夫々をサンプル番号I〜VIと称する。
〔結果〕
結果を図4及び表2に示す。なお、図4中、レーン1〜6は、夫々サンプル番号I〜VIの結果を示す。競合免疫測定法のため、サンプル番号Iは試料中のテストステロン濃度が高いので赤色ラテックス標識抗テストステロン抗体は試料中のテストステロンと複合体を作り、ニトロセルロース上のテストステロン−BSAと結合せず、発色しなかった。青色コロイド標識抗ビオチン抗体はニトロセルロース上のビオチン−BSAコンジュゲートと結合するため発色した。結果として、サンプル番号Iでは青色の色相を示した。サンプル番号VIでは試料中のテストステロン濃度が0pg/mlのため赤色ラテックス標識抗テストステロン抗体はニトロセルロース上のテストステロン−BSAと結合し、強く発色した。同時に青色コロイド標識抗ビオチン抗体もニトロセルロース上のビオチン−BSAコンジュゲートと結合するため発色した。結果として、サンプル番号VIでは青色と赤色の合わさった濃い赤紫色の色相を示した。サンプル番号II〜Vについては試料中のテストステロン濃度と反比例の関係で赤色ラテックス標識抗テストステロン抗体が発色し、同時に青色コロイド標識抗ビオチン抗体は同じ強さで発色するため青色から徐々に赤色が加わった赤紫色へと変化していった。
図4と表2の結果からも、色の変化をもって、hCGを測定できることが判明した。
サンプル番号I〜VIを機器分析、具体的にはデジタルカメラ(株式会社ニコン製ニコンD70)により撮影し画像解析ソフト(アドビシステムズ社製アドビフォトショップ)により解析した結果を図5乃至図6に示す。なお、図中、「R」は赤色標識、「G」は緑色標識、「B」は青色標識を示す。図5は反応時間10分での機器分析にかけたときの赤色、青色、緑色の比率と試料中のテストステロン濃度の関係を示す図である。表3に図5で得られた赤色の強度比とテストステロン濃度から算出した検量線を示す。検量線式は競合免疫反応の基本式であるシグモイド曲線に最小二乗法で近似して作成した。検量線式を以下に示す。
〔数1〕
シグモイド曲線(sigmoidal)y=d+((a−d)/(1+(x/c))^b)
なお、上記数1の式中、xは試料中の被験物質濃度、yはシグナル強度比、上記表3中、IC50は50%阻害濃度を示す。(JIS K 0641に準拠)
図5より、テストステロン量の増加に伴い、赤色標識の比率が減少していることが確認でき、競合反応の場合であっても色の変化をもって、定量できることが判明した。また、精密分析を要する場合にはRGBの比率をもって被験物質量を定量できることも判明した。
図6のパネルAはサンプル番号I、パネルBはサンプル番号II、パネルCはサンプル番号III、パネルDはサンプル番号IV、パネルEはサンプル番号V、パネルFはサンプル番号VIの各測定時間における、赤緑青の3原色の比率を百分率で示したものであり、標識の色毎に追跡したグラフである。これらの結果より、RGBの比率がほぼ一定となるのは5〜60分後の間であり、この範囲での測定が最も安定性が高く、かつ正確な測定結果を導けることが判明した。しかしながら、他の地点における測定はやや安定性を欠くものの、上記範囲での比率を大きく逸脱するものではないことから、測定時間の厳密な管理を要しないことが本実験からも証明された。
また、表3で得られた各色の比率から得られた検量線を用いれば測定時間に関わらず濃度の算出をおこなうことができることが分かった。つまり厳密な時間管理、温室度、気圧などの実験条件管理、サチュレーションするまで反応を続ける、測定の度に濃度既知の被験物質を測定して検量線を作成するなどのことを要せず、測定環境に依存せずに色相から濃度測定ができることが本実験からも証明された。
本発明は、視覚的に確認可能な被験物質の測定方法に関し、生体関連分子間の生物的な特異的親和性反応を惹起し得る被験物質の測定が要求される全ての分野で利用可能であり、特に、医療、食品、環境分野等、種々の産業分野において利用可能である。

Claims (7)

  1. 視覚的に確認可能な被験物質の測定方法であって、
    同一部位で、1種類以上の被験物質及び対照物質を、前記被験物質及び対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示す結合性物質とそれぞれ接触させて複合体を形成させ、前記複合体の形成を複合体毎に互いに異なる色として視覚的に確認可能な発色シグナルとして検出し、前記発色シグナルを指標として被験物質を測定する方法。
  2. 前記結合性物質が、前記特異的親和性を示す被験物質及び対照物質各々に対応して、互いに視覚的に異なる色として確認できる標識物質により各々標識されている請求項1に記載の方法。
  3. 前記標識物質が、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス、蛍光色素、蛍光コロイド粒子、又はこれらの組み合わせから選択される請求項2に記載の方法。
  4. 前記発色シグナルを、発色シグナルと一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本と比較すること、又は色相の比率に基づいて被験物質の量を算出する請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 視覚的に確認可能な被験物質の測定用キットであって、
    対照物質、及び、
    1種類以上の被験物質及び前記対照物質各々に対して個別に特異的親和性を示し、かつ、前記特異的親和性を示す被験物質及び対照物質各々に対応して互いに視覚的に異なる色として確認可能な標識物質により各々標識されている結合性物質を含む、キット。
  6. 前記標識物質が、金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子、着色ラテックス、蛍光色素、蛍光コロイド粒子、又はこれらの組み合わせから選択される請求項5に記載のキット。
  7. 前記標識物質からの発色シグナルと、一定量の対照物質に対する既知量の被験物質との関係を表した色見本を含む請求項5又は6に記載のキット。
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