JP2012072413A - 有機ポリマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機ポリマー組成物に対して、強固な、化学結合による材料間の接着反応を促進し、化学結合を破壊する要因を排除し、且つ、経時変化における安定した物性維持と、摩擦抵抗時における無機質粒子の界面離脱を抑制し、さらに人体に好ましくない影響を及ぼす混合組成物の含有を減少させた有機ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】有機ポリマーと無機質充填剤に強固な化学結合が形成された有機ポリマー組成物であって、無機質充填剤の含有量の合計が、有機ポリマー100重量部に対して、20重量部以上300重量部以下であり、移行性老化防止剤の含有量が、有機ポリマー100重量部に対して、1重量部以下であり、カップリング剤の含有量が、有機ポリマー100重量部に対して、0.2重量部以上であることを特徴とする有機ポリマー組成物とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機ポリマーと無機質粒子、金属酸化物粒子との界面に強い影響を与え、材料間に強固なブリッジを形成させるカップリング剤(接着促進剤)が配合された有機ポリマー組成物に関する。
従来の有機ポリマー組成物では、有機ポリマーと、無機質充填剤中の無機質粒子(金属酸化物粒子を含む)とを化学結合させ、その材料間の界面の接着力を改善する目的で、カップリング剤を添加、または白色充填剤をカップリング剤で処理していた。一方、例えば、強化プラスチックや、ガラス繊維では、カップリング剤分子中の2個の反応基が、一つは無機質粒子と化学結合し、残りの一つは有機ポリマーと化学結合し、これによって、接着力の改質を行っていた。強化プラスチックや、複合材料製品においては、カップリング剤の化学結合による材料間のブリッジが強固に反応し、種々な物理的改質が行われ好結果をもたらしていた。
さらに、例えばゴムや樹脂の弾性マトリックスに対する白色充填剤の改質にも同様に、カップリング剤による処理が応用されていた。合成ゴムの経時劣化対策のため、カーボンが最強の補強剤として使用されていた。分子構造に二重結合を有する合成ゴムには、移行性薬品である老化防止剤がポリマーの重合工程において必ず含まれており、従来から不可欠な薬剤として使用されていた。分子構造に二重結合を有する合成ゴムだけでなく、分子構造に二重結合を有する有機ポリマーも同様であった。
有機ポリマーは、ラテックスまたはエマルジョン形態からポリマーを水と分離することによって得られる。有機ポリマーは脱水後乾燥固形化されるが、強制乾燥時の熱履歴とストック中の変質安全性のため、分子構造に2重結合鎖を有している有機ポリマーには老化防止剤が含有されているのである。
また、合成ゴムとカーボンを混合する場合、一般的にはドライブレンド方式が汎用的に用いられてきた。しかし、ウエット式マスターバッチ方式も採用され、カーボンを有機ポリマー内に高比率で混合分散させることを目的とし、飛散する粉塵を減少させ、人体、機械類を著しく汚染する要因を除去するためにウエット式マスターバッチが製造されていた。
ウエット式マスターバッチでは、ポリマーの重合完了後のエマルジョン状態で、カーボン粒子を添加することにより、容易にカーボン粒子の高充填が可能となり、且つ液中に撹拌させることによるカーボンの飛散を防止できる。この混合物を凝集、脱水した固形物(カーボン粒子を用いた組成物)は通称ウエット式マスターバッチと呼ばれ市場化されている。
JSR HANDBOOK P.437
例えば、加硫ゴム組成物が、高充填の無機質粒子を有している場合における動的破壊挙動では、両者材料界面での剛性差のズレが大きく、特に摩擦抵抗に供される製品類は、経時とともに白色充填剤の離脱、界面剥離が激しくなり、大幅な物理的強度の低下が見られ、さらに物性の劣化を起こす。
また、有機ポリマー組成物では、カップリング剤の2官能基以上の化学結合反応が理論的に可能であるにもかかわらず、理論的接着効果が得られていなかった。また、有機ポリマー組成物は経時と共に耐動的破壊挙動物性がかなり低下する。この問題を究明した結果、有機ポリマーに含まれる移行性薬品(非特許文献1参照)が、カップリング剤と無機質粒子との化学結合を破壊する作用を発現する阻害因子であることが判明した。本発明では、この阻害因子を排除して、強固な化学結合を形成する有機ポリマー組成物を得ようとするものである。
すなわち、有機ポリマー内部から表面に移行する移行性薬品が有機ポリマー内部にトンネル溝を形成し、トンネル溝が有機ポリマーの経時変化とともに無数に存在することになる。この現象では、老化防止剤が移行時に無機質粒子の表面に衝突し、無機質粒子とカップリング剤との界面(官能基)、無機質と有機ポリマーとの界面(官能基)を破壊しながら、外へ外へと向かう複雑な移行運動を続ける。そして、その通過痕跡は隙間となり、官能基の化学的結合を切断し、無機質粒子が個別に宙に浮いた状態となる。
更に、特に粘弾性体が動的挙動を受けると、官能基結合をある程度失っているので加重圧や摩擦作用により、無機質粒子は、完全に分離、脱落し、組成物の著しい物性低下を引き起こす。
また、例えば、加硫ゴムの補強剤がカーボンベースで老化防止剤が併用される混合組成物が、アルデヒド・ケトン・アミン反応生成物及びその誘導体、アミンとその誘導体、イミダゾール類、フェノール類、及びその誘導体を含み、例えばタイヤの摩耗は、空気中に飛散する発癌物質、内分泌撹乱物質として、風雨に流され、河川や海洋を汚染し、沼や土壌に蓄積して、人体に対する悪影響、環境汚染を招くリスクがある。
そこで本発明は、有機ポリマー組成物に対して、強固な、化学結合による材料間の接着反応を促進し、化学結合を破壊する要因を排除し、且つ、経時変化における安定した物性維持と、摩擦抵抗時における無機質粒子の界面離脱を抑制し、さらに人体に好ましくない影響を及ぼす混合組成物の含有を減少させた有機ポリマー組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による有機ポリマー組成物は、有機ポリマーと無機質充填剤に強固な化学結合が形成された有機ポリマー組成物であって;前記無機質充填剤の含有量の合計が、前記有機ポリマー100重量部に対して、20重量部以上300重量部以下であり;分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性老化防止剤の含有量が、前記有機ポリマー100重量部に対して、1重量部以下であり;カップリング剤の含有量が、前記有機ポリマー100重量部に対して、0.2重量部以上であることを特徴とする。
有機ポリマー、無機質充填剤、カップリング剤を前述のような配合比としたので、カップリング剤分子中の2個の反応基が、一方は無機質充填剤中の無機質分子と、他方は有機ポリマーと化学結合し、さらに有機ポリマーと無機質充填剤との強固な化学結合が形成され、有機ポリマー組成物の材料間の界面の接着力をより強固にすることができる。
さらに、移行性薬品の含有量を前述のように1重量部以下として、移行性薬品の含有量を抑えることにより、有機ポリマーと無機質充填剤、カップリング剤と無機充填剤の化学結合破壊要因を排除することができ、外力が作用したときの無機質充填剤の界面離脱、剥離を防止することができる。また、移行性薬品の使用による好ましくない混合組成物の発生を減少させることができ、有機ポリマー組成物の使用による、例えば飛散粉塵が減少し環境への負荷が低減される。
上記の有機ポリマー組成物において、前記無機質充填剤は、微粒子金属あるいは無機質顔料であり;無機質顔料は酸化チタン、弁柄、酸化アルミニウム、及び亜鉛華よりなる群から選ばれた金属酸化物のうち少なくとも一つを含む超微粒子金属酸化物である。
無機質充填剤中の無機質粒子を微粒子(粒子径がμm単位の粒子)金属としたので、外力が作用したときの結合界面の変化率が小さく、ポリマーと界面との表面剥離の影響を受けにくいため物理的強度及び物性変化を起こしにくい。また、無機質粒子を超微粒子(粒子径がnm単位の粒子)とし、移行性薬品の含有量を制限したため、移行性薬品の無機質粒子の表面との衝突が大幅に減少し、無機質粒子とカップリング剤との化学結合が移行性薬品によって破壊されることが大幅に減少し、外力が作用したときの無機質充填剤の界面離脱、剥離を防止することができる。また、nm単位の粒子径を有する金属酸化物粒子が有機ポリマーと化学反応を利用した接着結合を行っている場合は、無機質充填剤は粘弾性体組成物に対する補強剤として機能することができる。
上記の有機ポリマー組成物において、前記移行性薬品は、移行性老化防止剤、ワックス類、紫外線吸収剤、及び練り込み用帯電防止剤よりなる群から選ばれた薬剤である。
有機ポリマー組成物、特に粘弾性体組成物に、使用される移行性薬品の含有量を抑えることにより、結合破壊要因を排除し、無機質粒子、金属酸化物の粒子、白色充填剤の粒子を補強剤として用い、本来、補強機構を有するカップリング剤の接着作用(化学結合)を持続し、組成物の物理的性質を経時変化や動的挙動に対して、継続的に維持させようとするものである。
上記の有機ポリマー組成物において、前記移行性老化防止剤は、ナフチールアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、その他のアミン系、これらの混合品、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ピス、トリス、ポリフェノール系、及びチオピスフェノール系よりなる群から選ばれた薬剤である。
前述のものは、移行性老化防止剤として含まれているものである。さらに該防止剤の、有機ポリマーとの混合物、または無機質充填剤との混合物が、反応生成体及びその誘導体を生成する。該生成体、誘導体が環境に対して与える影響を、老化防止剤の混合重量を抑え、生成体または誘導体の発生量を減少させさせることによって減少させることができる。
上記目的を達成するために、参考例5に係る発明による有機ポリマー組成物の製造方法は、有機ポリマー100重量部に対して、無機質充填剤の含有量の合計が20重量部以上300重量部以下となるように配合する工程と;分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性薬品を含有量が1重量部以下なるように放出する工程と;前記有機ポリマーと前記無機質充填剤との配合組成物を成形する工程と;形成した前記配合組成物に、一種以上のカップリング剤を前記無機質充填剤100重量部に対して0.2重量部以上を添加する工程とを備えることを恃微とする。ここで、前記無機質充填剤は、酸化チタン、弁柄、酸化アルミニウム、及び亜鉛華よりなる群から選ばれた金属酸化物のうち少なくとも一つを含む超微粒子金属酸化物である。
参考例6に係る発明による有機ポリマー組成物の製造方法は、有機ポリマーに含まれる、分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性老化防止剤を、ポリマーのせん断破壊及び発熱の時間を調整することにより外部に放出させる素練り工程と;前記素練り工程の後に無機質充填剤及びカップリング剤を添加し、前記有機ポリマー及び前記無機質充填剤の材質間に官能基を結合させる工程とを備える;ことを特徴とする。ここで、前記無機質充填剤は、酸化チタン、弁柄、酸化アルミニウム、及び亜鉛華よりなる群から選ばれた金属酸化物のうち少なくとも一つを含む超微粒子金属酸化物である。
素練り工程後に該防止剤を充填するので該防止剤が有機ポリマー内を移行することを抑制し、有機ポリマーと無機質充填剤との化学結合、カップリング剤と無機質充填剤との化学結合が破壊されるのを大幅に抑制することができる。
参考例7に係る発明による有機ポリマー組成物の製造方法は、参考例6に記載の有機ポリマー組成物の製造方法において、前記官能基の結合の後、分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性薬品を前記有機ポリマー100重量部に対して1重量部以下添加する工程を備えることを特徴とする。
有機ポリマー、無機質粒子、カップリング剤の3者間の結合は、無機質粒子に含有する水分とカップリング剤の官能基との化学結合がつかさどるものであり、この3者間の反応の阻害因子である移行性薬品物質の添加前に、即ち前記反応阻害物が介在しない雰囲気で、混合分散を完了することにより、阻害因子の影響を最小限にすることができる。
参考例8に係る発明によるウエット式マスターバッチの製造方法は、有機ポリマーと無機質充填剤に強固な化学結合が形成された有機ポリマー組成物を製造するための重合工程中に、分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性薬品を未含有の有機ポリマーに対して、ラテックスまたはエマルジョンの状態において無機質充填剤およびカップリング剤を添加し;混合分散させ、水分を取り除き、乾燥し、固形物とすることを特徴とする。
参考例8に係る発明のウエット式マスターバッチは、無機質充填剤がベースフィラーであり、カップリング剤と有機ポリマー及び無機質充填剤間の3者の結合は、例えば水を媒体とし撹拌中に分散が効率的に行われるので、ドライ方式と比べ無機質充填剤の分散を著しく容易に行うことができる。
このウエット式ブレンドは、例えば水中の撹拌であり、よって熱履歴を全く受けない利点を有し、有機ポリマー100重量部に対して100から300重量部の高比率の混合が、容易に可能となる。
このマスターバッチの高充填無機質の比率は、エマルジョン状態時における有機ポリマーの添加により、実用上任意に調整でき、高充填無機質の有機ポリマー中の低比率化が可能であり、実施の形態に示した配合内容に準拠した物性及び特性が再現され、ドライ方式ブレンドに比べ安定した物性値が得られる。
参考例9に係る発明によるウエット式マスターバッチの製造方法は、参考例8に記載のウエット式マスターバッチの製造方法において、前記無機質充填剤及び;含珪酸及び含珪酸塩のシリカ、塩基性炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、及びカーボンブラックよりなる群から選ばれた補強剤のうち少なくとも一つを超微粒子の状態で添加することを特徴とする。
参考例9に係る発明では、参考例9に記載する補強剤類は、ドライブレンド及びウエットブレンド法のいずれに使用してもよいが、含珪酸及び含珪酸塩のシリカ、塩基性マグネシウム、珪酸アルミニウムは、カップリング剤と効果的に反応するものであり、かつ、カーボンの汚れなど、分散性及び物性安定性にかかる再現性は、ウエット法が数段優れている。また高価なカップリング剤の節減にもつながる。
移行性薬品を1重両部以下にしたので、有機ポリマーとカップリング剤と無機質充填剤、カップリング剤と無機質充填剤の化学結合を破壊する要因が減少する。よって、これらの化学結合を強固にし、これを時間が経過しても維持することができ無機質充填剤の界面離脱、剥離を防止することができ、物理特性を改質し、経時的に維持することができる。
また、移行性薬品と有機ポリマー、無機質充填剤等との反応生成体等が、有機ポリマー組成物に含まれる量が減少し、環境に飛散する量も減少するので、環境に与える負荷を軽減させることができる。
本発明の第1の実施の形態の有機ポリマー組成物(老化防止剤含まず)の配合を示す表である。 比較例に係る発明の第2の実施の形態の有機ポリマー組成物(老化防止剤含む)の配合を示す表である。 第1及び第2の実施の形態の有機ポリマー組成物に対して行われた熱老化試験前後の物性を示す表である。 比較例に係る発明の第3の実施の形態の有機ポリマー組成物(老化防止剤含む)の配合を示す表である。 本発明の第4の実施の形態の有機ポリマー組成物(老化防止剤含まず)の配合を示す表である。 第3及び第4の実施の形態の有機ポリマー組成物に対して行われた熱老化試験前後の物性を示す表である。 第1及び第2の実施の形態の有機ポリマー組成物に対して行われた摩擦抵抗試験機の構成を示す模式図である。 摩擦抵抗試験の結果を示すグラフである。 第3及び第4の実施の形態の有機ポリマー組成物に対して行われた滑り抵抗試験の内容を示す模式図である。 第1の例の有機ポリマー組成物(NBR)の配合を示す表である。 含有する各汚染性老化防止剤と、各老化防止剤を含んだ有機ポリマー組成物(NBR)の熱老化試験前後の物性を示す表である。 第2の例の有機ポリマー組成物(NBR)の配合を示す表である。 含有する各非汚染性老化防止剤と、各老化防止剤を含んだ有機ポリマー組成物(NBR)の熱老化試験前後の物性を示す表である。 第3の例の有機ポリマー組成物(BR/天然ゴムブレンド)の配合を示す表である。 含有する各非汚染性老化防止剤と、各老化防止剤を含んだ有機ポリマー組成物(BR/天然ゴムブレンド)の熱老化試験前後の物性を示す表である。
図1に、本発明の第1の実施の形態の有機ポリマー組成物の原材料及びその配合を表として示す。この有機ポリマー組成物は、無機物質を添加しているが、老化防止剤は含まれていない。なお、以下老化防止剤が含まれているときに、これを略称で示した場合、略称は日本ゴム協会標準規格によるSRIS略号を使用する。
図2に、比較例に係る第2の実施の形態の有機ポリマー組成物の原材料及びその配合を表として示す。この有機ポリマー組成物は、第1の実施の形態の有機ポリマー組成物に老化防止剤(DBMP)をさらに加えたものである。
第1及び第2の実施の形態では、有機ポリマーとして天然ゴム(ペールクレープ)、ニッポールBR−1220(ポリブタジエン)、ニッポールSBR−1502(スチレン−ブタジエン共重合体)を同じ重量部だけ配合している。
図3に、図1及び図2に示した有機ポリマー組成物の初期物性と熱老化試験後の物性を測定しその結果を、老化前(初期物性)と老化後(熱老化試験後の物性)に分けて表として示す。物性として、引張強度(kg/cm)、伸び(%)、硬さ(JIS K−6301 加硫ごむ物理試験法)を測定した。初期物性は150℃の温度において9分40秒成形後測定し、さらに70℃の雰囲気内で96時間の熱老化試験を行った後に同様の物性を測定した。同表中において、老化防止剤名が「含まず」と記載してあるのは第1の実施の形態、DBMPと記載してあるのは第2の実施の形態を示す。
図4に、比較例に係る発明の第3の実施の形態の有機ポリマー組成物の原材料及びその配合を表示する。この有機ポリマー組成には、無機物質、カーボンを添加し、老化防止剤が含まれている。
図5に、本発明の第4の実施の形態の有機ポリマー組成物の原材料及びその配合を表示する。この有機ポリマー組成には、第3の実施の形態と同様、無機物質、カーボンが添加され、老化防止剤が含まれていない。
第3及び第4の実施の形態では、有機ポリマーとして天然ゴム(ペールクレープ)、ニッポールBR−1220(ポリブタジエン)、ニッポールSBR−1502(スチレン−ブタジエン共重合体)を同じ配合で用いている。
図6に、図4及び図5に示した有機ポリマーの初期物性と熱老化試験後の物性を測定しその結果を、老化前(初期物性)と老化後(熱老化試験後の物性)として表示する。物性として、引張強度(kg/cm)、伸び(%)、硬さ(JIS)を測定した。初期物性は145℃の温度において30分成形後測定し、さらに70℃の雰囲気内で96時間の熱老化試験を行った後に同様の物性を測定した。図6の表において、老化防止剤名がIPPDと記載してあるのは第3の実施の形態、「含まず」と記載してあるのは第4の実施の形態を示す。
図3の表に示すように、第1の実施の形態の有機ポリマー組成物のように老化防止剤を含まない配合とした場合は、老化後の引張強度が向上しており、第2の実施の形態の有機ポリマー組成物のようにDBMPを含んでいる場合は、老化後の引張強度が著しく低下している。この物性低下は老化防止剤を含んでいることに起因するものであり、老化防止剤を含んでいない場合はカップリング剤の分子間における官能基による結合が阻害されず、むしろ、経時と共に結合が促進され、より強固にブリッジが行われることを示している。
図6に表示するように、第3及び第4の実施の形態では、カーボンを配合しているので、老化防止剤を含んでいる、いないにかかわらず、老化後の物理特性は老化前の値をほぼ維持している。
図7に模式的に示す摩擦抵抗試験機1を用いて、有機ポリマー組成物の摩擦抵抗を試験を行い、摩擦抵抗の値及びその繰り返しによる変化を測定し、その結果を図8のグラフに表した。
摩擦抵抗試験機1は、鉛直に配置された回転軸8を有し、モータ7によって駆動される回転板11(鉄製、厚さ30mm、直径800mm)の上表面11Aの真上にテストピース3(第1及び第2の実施の形態の有機ポリマー組成物であるゴム試料、厚み10mm、長さ30mm、幅15mm)、テストピース3を保持する保持板9が配置され、保持板9はガイド棒5によってその鉛直上下方向の動きがガイドされる。保持板9の上面には分銅2が取り付けられ、分銅2はストッパ4を介して保持台10に釣り下げられ、回転板11の回転数が160rpmとなると、テストピース3は自動的に、回転する回転板11の上表面11Aに落下し、落下と同時にモータ7への電源の供給が停止するように構成されている。
テストピース3が回転板11の上表面11Aに落下したとき、テストピース3の中心部における回転速度が1m/sとなるように配置されている。分銅2によるテストピース3の回転板11への加圧力は15kg/cmとなるように分銅の重さが決められている。さらに、回転板11の上表面11Aの上部には不図示の径5mmのノズルが配置され、このノズルへ2kg/cmの圧力で水道水が供給され、水道水を回転板11の上表面11A上に散布できるように構成されている。
回転板11上にテストピース3が落下すると、水平方向のテストピース3の動きはガイド棒5によって規制されているので、回転板11はテストピース3の摩擦抵抗により回転速度を下げ、やがて停止する。テストピース3の落下後、この回転板11が停止するまでの時間は回転軸8に取付られた、ストップウォッチカウント計6によって測定される。
図8のグラフに摩擦抵抗試験の結果を示す。縦軸がテストピース3が落下してから回転板が停止するまでの時間、横軸は繰り返しのテストサイクル数を表す。カーブIは、テストピース3が、第1の実施の形態の有機ポリマー組成物、カーブIIは、第2の実施の形態の有機ポリマー組成物の場合を表す。カーブIでは1から30サイクルは湿潤(注水)、31サイクルから40サイクルまでは水止(注水止め)、41サイクルから70サイクルまでは湿潤、71サイクルから80サイクルは水止、81サイクルから120サイクルは湿潤である条件下で行われた。カーブIIでは、1サイクルから10サイクルまでは水止、11サイクルから20サイクルまでは湿潤、31サイクル以降は水止される条件下で行われた。
第1の実施の形態の有機ポリマー組成物は、亜鉛華及びチタン、シリカ、白色充填剤のゴム表面からの離脱、分離は認められず、摩擦抵抗も止水時、注水時とも一定の値を示し、繰り返しのサイクルにおいても摩擦抵抗はほぼ同じ値を示した。
一方、老化防止剤を含む第2の実施の形態の有機ポリマー組成物は、無機質充填剤の離脱、分離が激しく、繰り返しのサイクル毎に、回転板上を白く乳濁汚染して、テストピース3ゴム表面の摩擦部に多数のクレーター状の凹凸が発生し、同時に摩擦抵抗もサイクル数が増加するにしたがって著しく低下した。
次に図9に模式的に示す、滑り抵抗試験機21(静摩擦抵抗試験機)を使用して、第3及び第4の実施の形態の有機ポリマー組成物の滑り抵抗試験を行った。
滑り抵抗試験機21は、水平面に対して25度の角度で傾いた径斜面にガラス鏡面27を備えた鉄製の滑り台座22を有し、ガラス鏡面27上に重さ1.5kgの分銅23を載せたテストピース24が置かれている。テストピース24には滑車25を介して、鉛直下方向にぶら下る分銅26が、接続されている。分銅26の重さを順に増加させテストピース24がガラス鏡面27上をまさにせり上がるときの分銅26の重さを測定する。
ガラス鏡面27の上部からガラス鏡面27上に水道水が供給され、水道水の供給中はテストピース24が水濡れ面上に載置されるようになっている。分銅23によりテストピース24にかかる力をf、fのガラス鏡面方向の分力をf、テストピースが受けるガラス鏡面からの反力をf、テストピース24がまさにせり上がらんとするときの摩擦抵抗力をf、テストピース24にかかる分銅26による力をfとすると、以下の式が成立する。ガラス鏡面27の水平面となす角度をθ、ガラス鏡面27とテストピース24間の静止摩擦係数をμとする。
=f・sinθf=f・cosθf=μ・f=μ・f・cosθf=f+f=f・sinθ+μ・f・cosθ
ここで、テストピース24がまさにせり上がったときの、分銅26の重さは、第3の実施の形態の場合は、乾燥面(水道水がガラス鏡面27上に供給されない場合)で3.5kg、水濡れ面で2.9kg、第4の実施の形態の場合は、乾燥面で3.8kg、水濡れ面で3.6kgであった。このときの、静止摩擦係数μを求めると、第3の実施の形態の場合は、乾燥面のとき2.11、水濡れ面のとき1.67、第4の実施の形態の場合は、乾燥面のとき2.33、水濡れ面のとき2.18であった。
第3及び第4の実施の形態の有機ポリマー組成物では、前述のように静摩擦抵抗値が高く、改質されていることがわかる。
有機ポリマー組成物は、常温度では、粘弾性〔固さ〕10(dyne/cm)(1.02×10(kg/cm))を中心とした数値を示し、反対に無機質、金属類は温度に関係なく、1010(dyne/cm)(1.02×10(kg/cm))を中心とした範囲を示す。この大幅な「固さ」の違いが、粘弾性体の摩擦、屈曲、圧縮等の加重変形時に、結合界面の変化率が大きく、ポリマーと界面と表面剥離を起こしやすい。また、有機ポリマーに配合される無機質、金属酸化物等の充填剤は粒子径をμm単位と大きくすると、物理的補強機構を有しない。
これに対して、nm単位の無機質粒子は、結合界面の変化率が小さく、ポリマーと界面と表面剥離の影響を受けにくいため、物理的強度及び物性の変化を起こしにくい。よって、nm単位の粒子径を有する無機質、金属酸化物を有機ポリマーと化学反応を利用した接着結合を行い、粘弾性体組成物に対する補強剤として機能させることができる。
このことは、移行性薬品は動的挙動及び熱履歴において、有機ポリマー内部より、表面に移行する性状を特徴としており、混合作業工程における有機ポリマーに対する機械的せん断力の作用、発熱により、移行性薬品の大部分が外部に飛散され、且つ、加硫成形時の高温熱履歴で成形物表面に露出される。よって、内部に蓄積させる必要重量部数に、外部に飛散放出される重量部数を加算して移行性薬品を含ませるとよいとの概念から、この手法が講じられる。
無機質のnm単位の粒子を補強剤として有機ポリマーに使用すると、特に、湿潤時における摩擦抵抗に起因する物理的特性が大幅に改良され、これによって摩擦対象物の汚染、損傷摩擦抵抗値の低下等の問題が解決する。
本発明の有機ポリマー組成物の製造方法では、有機ポリマーの混合作業時の熱履歴を応用して、予め有機ポリマーに含有する老化防止剤を、素練り作業工程での高分子のせん断破壊、発熱の時間を調整することにより、完全に外部に放出させることができる。
カップリング剤及び無機質薬品類は、素練り工程の後に添加することにより、老化防止剤の影響を排除し、有機ポリマーと無機質の材科間に官能基を結合させることができる。
非移行性(微汚染性)の老化防止剤及びワックス類、紫外線吸収剤、練り込み用帯電防止剤を1重量部以下添加し、この添加を材料間の官能基の結合終了後に行うことができる。また、無機質充填剤が低配合部数(20重量部至50重量部配合)配合される有機ポリマー組成物の場合は、有機ポリマーの占める部分が大きく、無機質の粗粒子に移行性薬品が衝突する確率が減少し、材料間の結合破壊が回避され、移行性薬品は容易にポリマー分子間を移行し通過できる。よって、これら微移行性薬品の少量の添加は、低粘弾性体(粘弾性が10[dyne/cm]以下の数値を示す)の組成物配合の場合に限り有用である。
低粘弾性体組成物は、外部の動的挙動に相関してマトリックス内部で、動的応答作用を呈する。この内部の分子変形ネルギーの蓄積作用に伴って移行性薬品は、軟化または流動化して、分子の隙間及び動的に破壊された分子間をくぐり抜け、表面に移行する。一方表面に移行した移行性薬品は、外気により冷やされて薄い膜層を形成し、紫外線、オゾン、熱による影響によって起こされる破壊を防ぐ役割をも果たす。動的挙動に耐えない硬質組成物の場合は、有機ポリマーの分子に二重結合を有しないもの及び二重結合が少量なポリマーを選択すればよく、外部の影響の排除が目的であり、動的挙動を必要としないマトリックス内部に移行性薬品の添加は不要である。
第3の実施の形態の老化防止剤を含んだ有機ポリマー組成物の場合は、カーボンを配合しているので物理特性は老化前の特性を維持している。第4の実施の形態である、老化防止剤を含まない配合とした有機ポリマー組成物の場合では、シリカ(ニプシールVN−3)、亜鉛華、チタンを添加し、補強剤であるカーボンを減量したため初期物性は、nm単位の粒子と較べ若干劣るが、白色充填剤とカップリング剤との接着結合の反応が、経時と共に進行を続けて、有機ポリマーと無機質粗粒子との架橋がより強固になり、硬度の経時による変化率も少ない。
このことは、カーボン以外の無機質超微粒子、超微粒子金属酸化物を使用し、老化防止剤を含まない場合は、老化防止剤を含む場合に較べ、カップリング剤、無機質、超微粒子金属酸化物を組み合わせて配合すれば、摩擦抵抗、物理的強度を向上し、且つ、水濡れ時に対する摩擦抵抗値を改質するに極めて有用であることを意味する。したがって、有機ポリマーに対して老化防止剤の含有は必要不可欠とした従来の概念を、本発明は覆すものである。
ガラスの鏡面上においての静摩擦抵抗も、剛性を持つ、亜鉛華、チタンの金属酸化物のnm単位の粒子が、滑り抵抗値を大幅に改良した。このように、時間が経過しても物性を維持し、物性の時間的低下を防ぐには、従来のカーボンを添加した有機ポリマー組成物の場合と同様に、老化防止剤を含む有機ポリマー組成物においても、または、補強性に欠点があった白色充填剤を添加した有機ポリマー組成物においても、カップリング剤との反応を持続させればよく、これによって初期の物理的強度を高めるという問題、物理特性を時間的に維持するという問題を解決することができる。
本発明のように移行性薬品等の老化防止剤を含まないようにし、または、含有量を減量することによって、カップリング反応を必須条件とした無機質充填剤が有機ポリマー組成物の物性を低下させることなく、物性を持続することが可能となり、カーボン以外の無機充填剤の持つ様々な特有の性状を、有機ポリマー組成物に再現することが可能となった。
次に、本発明に用いることができるシランカップリング剤に関して、化学構造と反応機構を説明する。シランカップリング剤の一般式は、YRSiXで表すことができる。Xは、珪素原子に結合している加水分解性の基を表し、塩素、アルコキシ基、アセトキシ基が一般に用いられている。無機質充填剤、シリカ系補強材に含まれる水分により、加水分解を受け、これらの基または原子は、シラノール及びHXを生成する。
よって、YRSiX+3HO→YRSi(OH)+3HXの反応となり、即ち、カップリング剤分子の一SiXの反応生成物が無機質相に対する接着結合をもたらし、一方のYは各種の有機官能基部分を表し、有機ポリマーと接着し、若しくは反応する。チタネートカップリング剤の一般式は下記のように表すことができる。
Figure 2012072413
(1)ROは、チタン原子に結合しているモノアルコシキー単分子であり、親油基に親水基を付加機能させるために、モノアルコキシタイプのイソプロポキシ基、キレート00番タイプのオキシ酢酸の残基を有するもの、キレート200番タイプのエチレングリコールの残基を有するもの、コーディネートタイプのテトラアルキルチタネートに亜燐酸エステルを付加させたもの、及びジオクチルピロホスフェートが一般的には用いられている。
このようにして、モノアルコキシタイプでは、油溶性の環境でしか使用できなかったものを親水性に変え、無機質充填剤、シリカ系補強材に含まれる水分と、有効に上記化学式中の(2)のエステル交換反応を利用して、接着結合を行うことができる。
上記化学式中の(3)、(4)、(5)は、長鎖であり、(6)は、官能基を1、2、3官能を有している。また、(3)のカルボキシル、ホスフェート、ヒロホスフェート、ホスホワイトスルホニル基が一般に用いられ、シランカップリング剤が珪素だけに反応するのに対して、種々の無機質充填剤に対して広く有効である。従来の有機ポリマーに対して、(A)無機質充填剤の高充填化、(B)無機質充填配合物の低粘度化、(C)配合物の加工性向上、(D)分散性向上等の性能付与に効果がある。
本発明は、老化防止剤を構成する有機誘導体薬品類が、チタネートカップリング剤の官能基と反応を起こすことが排除されるため、更に物理的強度の向上に寄与するものである。即ち、ナフチールアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、その他のアミン系、これらの混合品、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ピス、トリス、ポリフェノール系、及びチオピスフェノール系の移行性薬品類が、本来親油基に属するものであり、これらを含むことによる親水基反応の阻害影響を取り除くことができるため、無機質充填剤と強固な接着結合が促進されるのである。
尚、アルミニウム系カップリング剤も同様、無機物の表面に化学的に結合するものである。よって、物理的強度の向上には、本発明では、前述のチタネートカップリング剤と同様の作用を呈するものである。
移行性薬品移行性としての老化防止剤、ワックス類、紫外線吸収剤、及び練り込み用帯電防止剤には、発癌性物質、環境汚染物質、内分泌撹乱物質、毒性物質に属する化学薬品類と指摘されているものが含まれている。
これら化学物質を含まないようにすることができる本発明のウエット式マスターバッチは、前記環境汚染リスクを排除した環境低負荷型の新組成物となり、タイヤをはじめとする環境汚染対策型ゴム製品とする分野に貢献する新素材として位置づけることができる。
本発明のウエット式マスターバッチの製造方法は、カーボン以外の無機質充填剤と有機ポリマーの混合をラテックスまたはエマルジョンの粒子形態で行うブレンド方法であり、粒子相互を実用上任意の比率で混合し、水中で攪拌分散させることを特徴とする。この水中でコロイド形態を有する、天然ゴムラッテクス、乳化重合製造法によって得られた合成ゴムラテックス、乳化重合法以外の人造ゴムラッテクスと呼ばれるディスパーション(dispersion)があり、これら有機ポリマーのラテックス、エマルジョンには、前述の老化防止剤及び移行性薬品類は未含有の状態にあり、また、これらの含有を必要としない本ウエット式マスターバッチの製造法は、前述のドライブレンド法の老化防止剤の熱履歴による放出工程(素練り工程)を必要とせず、化学結合の阻害要因と人体有害物質のリスクが完全に排除された製品を最初から提供することができる。
移行性薬品の含有が必要であると考えられていた有機ポリマーは、分子構造に2重結合鎖を有しているものである(この鎖を利用して加硫構造を構成する。)。これらに含有されていた理由は、2重結合鎖の部分は、原子、分子間のミクロ的隙間であり、この隙間を介して移行性薬品による劣化現象が進行する。本発明は、粒子と分子構造の結合を可能としたものであり、従来は粒子間の界面は結合されておらず、フィラーの増量と共に潜在的隙間部が多くなる訳で、動的挙動によって隙間部が増大する。よって、補強剤は細かい粒子ほどよく、最も細かく人為的に作ることができるカーボンが最大の補強概念であったことに起因する。
合成ゴムと無機質充填剤に強固な化学結合が形成された合成ゴム組成物であって;前記無機質充填剤の含有量の合計が、前記合成ゴム100重量部に対して、20重量部以上300重量部以下であり;カップリング剤の含有量が、前記合成ゴム100重量部に対して、0.2重量部以上であり、合成ゴムの表面が大気に直接露出される構成されたことを特徴とする;合成ゴム組成物としてもよい。合成ゴム組成物には、車両用タイヤ、運搬機用タイヤなどがある。
次に、図10、図12、図14に示す原料を配合して成形された有機ポリマーを用いて、無機質を超微粒子とした場合の効果、白色補強剤シリカと比較的微細なチタンを含有させた場合の効果、白色充填剤の粒子径を粗くした場合の効果に付いて述べる。なお、図10、図12、図14までに示す有機ポリマーについて、カップリング剤を含有していない。しかし、これらの部分的効果に関してはカップリング剤を含有した場合と傾向が同じである。
図10に、超微粒子の無機質、カーボン、各種老化防止剤を含んだ第1の例の有機ポリマー組成物(NBR)の原材料及びその配合を表示する。さらに、図11に、汚染性老化防止剤を各種用いて(老化防止剤を含まない場合も含む)有機ポリマー組成物の初期物性と熱老化試験後の物性を測定しその結果を、初期値と変化率として表示する。本有機ポリマー組成物は、有機ポリマーとしてアクリロニトリルとブタジエンゴムの共重合体を用いている。物性として、引張強度(kg/cm)、伸び(%)、硬さ(JIS)を測定した。初期物性は155℃の温度において30分成形後測定し、さらに100℃の雰囲気内で96時間の熱老化試験を行った後に同様の物性を測定した。
図12に、白色補強剤シリカと比較的微細なチタンとを組み合わせ、老化防止剤を含んだ場合の、第2の例の有機ポリマー組成物(NBR)の原材料及びその配合を表示する。さらに、図13に、非汚染性老化防止剤を各種用いて(老化防止剤を含まない場合も含む)有機材ポリマー組成物(NBR)の初期物性と熱老化試験後の物性を測定しその結果を、初期値と変化率として表示する。図10の表に示したと同様に、有機ポリマーとしてアクリロニトリルとブタジエンゴムの共重合体を用いた。初期物性は155℃の温度において45分成形後測定し、さらに100℃の雰囲気内で96時間の熱老化試験を行った後に同様の物性を測定した。
図14に、粒子径の粗い白色充填剤と老化防止剤を含んだ第3の例の有機ポリマー組成物(BR/天然ゴムブレンド)の原材料及びその配合を表示する。さらに、図15(BR/天然ゴムブレンド)に、非汚染性老化防止剤を各種用いて(老化防止剤を含まない場合も含む)有機ポリマー組成物の初期物性と熱老化試験後の物性を測定しその結果を、初期値と変化率として表示する。有機ポリマーとして天然ゴム(ペールクレープ)とポリブタジエンを用いた。初期物性は140℃の温度において40分成形後測定し、さらに100℃の雰囲気内で72時間の熱老化試験を行った後に同様の物性を測定した。
図10の有機ポリマー組成物では、無機質のnm単位の超微粒子を補強剤として有機ポリマーに使用しているので、移行性薬品である老化防止剤は、表面積の極微細な粒子に衝突等せず、よって移行が阻害されることなく、有機ポリマーの隙間をくぐり抜け、表面層へ移行が円滑に行われる。また、この有機ポリマー組成物にはカーボンが配合されている。よって、粘弾性体は、移行性薬品等を含んでいても、移行性薬品等を含まない場合と比較して、初期物理特性そのものの値の熱老化試験前後における変動が小さいことがわかる。
図12の白色補強剤シリカと比較的微細なチタンと老化防止剤を含む組み合わせの場合は、カーボンを含む図10の有機ポリマー組成物に較べ、熱老化試験前後において物理特性が若干変化し、物理特性を維持するという性質は若干劣る。しかし、物理特性の変化そのものの値は比較的小さいという効果が認められる。
図14の有機ポリマー組成物では、白色充填剤の粒子径が粗いブレンドとしたため、粒子径のバラツキが大きく、老化防止剤を増量した場合には、物理強度の初期値の低下が著しい。しかし、老化防止剤を含まない配合物として初期値の低下を抑えるより、初期物性を犠牲にしても老化防止剤を含むようにし、長期の物性維持を優先した粘弾性体組成物が、実際に使用されていた。すなわち、従来例の有機ポリマーの場合においては、老化防止剤は製造工程である程度の量を含んでおり、配合薬品の混合作業工程においても更に老化防止剤の添加が行われていた。
1 摩擦抵抗試験機
2 分銅
3 テストピース
4 ストッパ
5 ガイド棒
6 ストップウォッチカウント計
7 モータ
8 回転軸
9 保持板
10 保持台
11 回転板
11A 上表面
21 滑り抵抗試験機
22 滑り台座
23 分銅
24 テストピース
25 滑車
26 分銅
27 ガラス鏡面

Claims (1)

  1. 酸化チタン、弁柄、酸化アルミニウム、及び亜鉛華よりなる群から選ばれた金属酸化物のうち少なくとも一つを含む粒子径がnm単位の金属酸化物と、有機ポリマーとに強固な化学結合が形成された有機ポリマー組成物であって、
    前記金属酸化物の含有量の合計が、前記有機ポリマー100重量部に対して、20重量部以上300重量部以下であり、
    分子変形エネルギーの蓄積作用に伴って軟化または流動化して分子の隙間および動的に破壊された分子間をくぐり抜け表面に移行する性状を有する移行性老化防止剤の含有量が、前記有機ポリマー100重量部に対して、1重量部以下であり、
    カップリング剤の含有量が、前記有機ポリマー100重量部に対して、0.2重量部以上である
    ことを特徴とする有機ポリマー組成物。
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