JP2012068341A - トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スチレンアクリル樹脂粒子と非結晶性ポリエステル樹脂粒子の凝集速度を制御し、定着特性が安定したトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】トナーの製造方法は、少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有する。
少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
(1)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を作製する工程
(2)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体にスチレンアクリル樹脂を分散させたスチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する工程
(3)少なくとも、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液とを混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記スチレンアクリル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、トナーの製造方法に関する。
電子写真用トナーにおいては、結着樹脂としてポリエステル樹脂が低温定着の観点から有利であることは知られている。これは、モノマー選択により、ガラス転移点を十分高く設定したまま、溶融粘度を低下させる設計が可能なためである。ただし、比較的安価なスチレンアクリル系樹脂と比較し、樹脂の粉砕にエネルギーと時間を要する傾向があるため、工業的には小径化による画質向上が課題として残っている。
近年では、樹脂を粉砕することなく、水系媒体中で乳化されたポリエステル樹脂粒子と着色剤分散液を、凝集剤を用いてトナー粒子とする製造方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この製造方法では所望の粒子径に制御することが困難であった。そのため、スルホン化ポリエステル樹脂粒子に対して、凝集剤と凝集停止剤を用いて所望の粒子径に制御した後、凝集工程とは別に粒子の合一を図る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、ポリエステル樹脂と、比較的高分子量体を製造し易いスチレンアクリル樹脂とを併用する技術がある(例えば、特許文献3参照)。このときスチレンアクリル樹脂粒子にアクリル酸、メタクリル酸などの乖離性基を導入すると、表面の親水性が高く、分散安定性に優れているのに対し、ポリエステルの場合は、スチレンアクリル樹脂に比べて相対的に分散安定性が著しく低くなっている。
それゆえ、ポリエステル樹脂とスチレンアクリル樹脂は、同一凝集条件では、ポリエステル樹脂の凝集速度が著しく速いため、均一に分散することが困難であった。
また、結晶性ポリエステル、非結晶性ポリエステルいずれも同程度の分散安定性であるため、スチレンアクリル樹脂との凝集、すなわち製造安定性は不安定であった。具体的には、定着特性、特に光沢度のロット間のばらつきが多いという問題があった。
特開2004−287421号公報 特開2006−285251号公報 特開2010−055093号公報
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、スチレンアクリル樹脂粒子と非結晶性ポリエステル樹脂粒子の凝集速度を制御し、定着特性が安定したトナーの製造方法を提供することにある。
請求項1の発明によれば、少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とするトナーの製造方法が提供される。
少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
(1)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を作製する工程
(2)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体にスチレンアクリル樹脂を分散させたスチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する工程
(3)少なくとも、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液とを混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記スチレンアクリル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製する工程
請求項2の発明によれば、
前記(3)の工程において、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液、及びスルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子、前記スチレンアクリル樹脂粒子も及び前記結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法が提供される。
本発明によれば、スチレンアクリル樹脂粒子と非結晶性ポリエステル樹脂粒子の凝集速度を制御し、定着特性が安定したトナーを製造することができる。
以下、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーの製造方法は、下記(1)〜(3)の工程を備える。
具体的には、
(1)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を作製する工程
(2)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体にスチレンアクリル樹脂を分散させたスチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する工程
(3)少なくとも、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液とを混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記スチレンアクリル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製する工程
トナーの製造には、スルホン酸基を含む高分子、非結晶性ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、着色剤の他に、必要に応じて、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤、外添剤等が用いられる。以下、これらについて説明する。
<スルホン酸基を含む高分子>
本発明に用いるスルホン酸基を含む高分子は、水系媒体に溶解させるため水溶性であることが好ましい。本発明のスルホン酸基を含む高分子が、ポリエステル樹脂粒子、及びスチレンアクリル樹脂粒子の高分子分散剤として作用し、ポリエステル樹脂粒子及びスチレンアクリル樹脂粒子を水系媒体中で取り囲んだ状態となる。
本発明のスルホン酸基を含む高分子は、適度な粘性と強い極性を持つため、ポリエステル樹脂粒子、及びスチレンアクリル樹脂粒子は同じ分散安定性を発揮し、凝集スピードが一様になり、トナー粒子内でのポリエステル樹脂成分及びスチレンアクリル樹脂成分の均一分散が達成するものと推察される。
本発明のスルホン酸基を含む高分子は、20℃における水に対する溶解度が、1%以上であることが好ましい。
スルホン酸基を含むモノマーとしては、下記、a,b,cいずれかの単独重合体、または共重合体であることが好ましい。
共重合してよいモノマーは、スチレン、アクリル酸エステルなどのビニル重合性モノマーが用いられる。好ましくはスチレンとアクリル酸エステル、又は、スチレンとメタクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
スルホン酸基を含むモノマーの共重合比は50%以上であることが好ましい。
a:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
b: スルホン酸メタクリレート(メタクリル酸3-スルホプロピル塩)
c:スルホン化スチレン
スルホン酸基を含む高分子の分子量は、ピーク分子量にして1,000〜110,000であることが好ましく、2,000〜12,000が特に好ましい。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の類似体としては、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジン)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸等を挙げることができる。この中で、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が分散安定性の面からより好ましい。
スルホン酸基を含む高分子を合成する際に使用される重合開始剤としては、上述のビニル系共重合体を生成する際に使用される開始剤の中から適宜選択される。好ましくは過酸化物開始剤が使用される。
また、スルホン酸基を含む高分子の合成方法としては、特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合 等、いずれの方法も使用可能であるが、低級アルコールを含む有機溶剤中で共重合させる溶液重合が好ましい。
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂を形成するモノマーとしては、公知の2価以上のアルコール成分と、公知の2価以上のカルボン酸成分とが用いられる。好ましくは、非結晶性ポリエステル樹脂を用い、結晶性ポリエステル樹脂を用いても良い。本発明に用いるポリエステル樹脂のガラス転移温度は40〜58℃の範囲であることが好ましい。
<非結晶性ポリエステル樹脂>
非結晶性ポリエステル樹脂を含有することにより、トナー粒子内での着色剤の分散性、トナーの耐フィルミング性の向上を実現する。なお、非結晶性ポリエステル樹脂とは、示差走査熱量測定法(DSC)において、吸熱量変化で吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂をいう。
本発明に係るトナーに使用可能な非結晶性ポリエステル樹脂は、非結晶性を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知のポリエステル樹脂を用いることができる。
例えば、非結晶性ポリエステル樹脂は、公知の多価カルボン酸と多価アルコールとを合成することにより得ることができる。市販の非結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよいし、適宜合成によって得られた非結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
非結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAのような2価アルコールが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、例えばグリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
非結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸が挙げられる。また、これらジカルボン酸の二塩基酸塩や酸無水物、低級アルキルエステルのような誘導体を用いてもよい。
なお、請求項1、(1)の工程における不飽和カルボン酸モノマーユニットとしては、架橋反応性の高さから、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸が好ましい。このうち特に好ましいのはフマル酸である。
3価以上のカルボン酸は、ポリエステル樹脂が前記(1)の工程で、溶剤可溶となる範囲で使用することができる。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸及びこれらの酸無水物や低級アルキルエステルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、非結晶性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分は、前述した脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分を含むことが好ましい。スルホン酸基を有するジカルボン酸は、顔料等の着色剤の分散性向上に寄与することから有効である。また、樹脂粒子を水性媒体中に乳化或いは懸濁分散させて樹脂粒子分散液を作製する際、ジカルボン酸成分がスルホン酸基を有することにより界面活性剤を使用せずに乳化或いは懸濁分散させることが可能である。
非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、THF(テトラヒドロフラン)可溶分にして、2000〜60000が好ましく、さらに低温定着性を向上させる観点から、3000〜20000であることが好ましい。ここで、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によって測定したものをいう。具体的な装置条件を下記に示す。濃度1mg/mlになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μL試料溶解液を注入する。GPCの測定条件の具体例を下記に示す。
GPCの装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgelG2000HXL(内径7.8mm×30cm)3連(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
試料の濃度:0.1%(v/w)
試料の注入量:100μl
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は必須とされないが、トナー中の結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂の質量比率(結晶性ポリエステル樹脂:非結晶性ポリエステル樹脂)は、定着特性獲得の観点より、2:98〜60:40であることが好ましく、5:95〜40:60であることがより好ましい。
上記非結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されず、酸成分とアルコール成分とを反応させる公知のポリエステル樹脂重合法により製造することができる。具体的には、直接重縮合、エステル交換法等、モノマーの種類に応じてその製造方法を使い分けて選択できる。また、酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分:アルコール成分)は、反応条件等によって異なるので一概にはいえないが、通常1:1である。
非結晶性ポリエステル樹脂を製造する際、重合温度は180〜230℃とすることが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、重合時に発生する水やアルコールを反応系より除去しながら反応させることが好ましい。また、モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は高沸点溶剤を溶解補助剤として添加することによりこのようなモノマーを溶解させることができる。なお、重合反応を行う際、溶解補助溶剤を留去しながら反応を行うことが好ましい。また、共重合反応を行う際に相溶性の悪いモノマーが存在する場合、相溶性の悪いモノマーと当該モノマーと反応させる酸又はアルコールとを先に反応させておいてから、主成分とともに重合させることが好ましい。
また、非結晶性ポリエステル樹脂を製造する際に触媒を添加して重合反応を行うことが好ましい。使用可能な触媒としては、例えばスズ化合物、ジルコニウム化合物、ゲルマニウム化合物が挙げられる。具体的には、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミンが挙げられる。また、重合温度を低下させて製造することにより発生する炭酸ガス排出量を削減する観点から、希土類金属、ドデシルベンゼンスルホン酸のようなルイス酸を使用することもできる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
結晶性ポリエステル樹脂は定着助剤として機能する。
結晶性ポリエステル樹脂とは示差走査熱量測定法(DSC)において明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂をいう。結晶性ポリエステル樹脂の含有により低温定着性を実現させることができる。
結晶性ポリエステル樹脂としては、上記のように吸熱ピークを有するポリエステル樹脂であれば特に限定されるものではない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂主鎖に対して他の成分を共重合させた構造のポリマーが存在する場合、このポリマーよりなる樹脂が吸熱ピークを示すのであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、種々のジカルボン酸が挙げられ、その中でも離型剤を被覆又は内包し、さらにマトリクスとなる非結晶性ポリエステル樹脂からの離脱を防止するという観点から、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。
本発明で使用される結晶性ポリエステル樹脂を形成する脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸が挙げられる。また、これら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。上記脂肪族ジカルボン酸の中でも、低温定着の観点から、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸が好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸に芳香族ジカルボン酸を添加して結晶性ポリステルを作成することも可能である。使用可能な芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸の添加量は20構成モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは10構成モル%以下、さらに好ましいのは5構成モル%以下である。芳香族ジカルボン酸の添加量を20構成モル%以下にすることにより、作成時に乳化が確実に行えるとともに、ポリエステル樹脂の結晶性を確保でき、結晶性ポリエステル樹脂特有の画像光沢性を得るうえで好ましいものである。また、融点降下による画像保存性低下の懸念もなくなるので好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分を構成するアルコール化合物としては脂肪族ジオールが好ましく、その中でも主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22の範囲にある直鎖型の脂肪族ジオールがより好ましい。さらに、入手容易性や確実な低温定着性の発現、高い光沢性を有する画像の獲得という観点からすれば、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜14の範囲にある直鎖型の脂肪族ジオールが特に好ましい。また、分岐型の脂肪族ジオールを用いることもできるが、ポリエステル樹脂の結晶性を確保する上で直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにすることが好ましい。直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにすることで、結晶性を確保でき、融点降下による画像保存性低下の問題もなく、さらには耐トナーブロッキング性や低温定着性の安定化にも効果的である。
脂肪族ジオールの主鎖を構成する炭素原子の数を2〜22の範囲にすることにより、芳香族ジカルボン酸を併用しても低温定着を阻害するような融点のポリエステル樹脂が形成されることはなく、低温定着時に十分に溶融させることができる。また、高い光沢性を有するトナー画像を形成することができる。トナー画像はトナーを用いて形成された画像である。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。なお、ここに挙げた中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分は、脂肪族ジオール成分の含有量を80構成モル%以上とすることが好ましく、90構成モル%以上とすることがより好ましい。アルコール成分には、必要に応じて脂肪族ジオール以外の他のジオール成分を含有させてもよい。脂肪族ジオール成分の含有量を80構成モル%以上とすることにより、ポリエステル樹脂の結晶性や形成されるトナー画像の高光沢性、さらには低温定着性を実現するうえで有効である。
本発明で使用される結晶性ポリエステル樹脂は、その融点が60℃〜98℃の範囲であることが好ましく、70℃〜92℃の範囲であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点を60℃〜98℃とすることにより、ポリエステル樹脂の融点に起因するフィルミング発生や定着処理されたトナー画像の保存性低下といった問題は生じない。また、融点が高すぎることによる画像荒れや光沢低下の問題も生じない。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量としては、耐フィルミング性を確保する観点から、10000〜20000が好ましく、さらに好ましくは15000〜19000である。ここで、重量平均分子量は、前述の非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量と同様に、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)によって測定したものをいう。
結晶性ポリエステル樹脂のトナー全体における含有量は、1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1〜40質量%であることにより、所望の低温定着性が得られ、また着色剤の分散性が阻害されることもない。また、結晶性ポリエステル樹脂に起因するトナー破砕が発生せず、フィルミングの発生もない。
<スチレンアクリル樹脂>
スチレンアクリル樹脂粒子はスチレン及び下記(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーをラジカル重合反応させることで得られる。
《重合性モノマー》
重合性モノマーとしては、例えばメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ラウリル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ジエチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタアクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などを用いることができる。また、モノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、重合性モノマーとして、ビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を用いてもよい。これにより、架橋構造のラジカル重合体を得ることもできる。
上記のうち、重合性モノマーとしては、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸が好ましく用いられる。スチレン、およびブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートは、疎水性モノマーであり、これらの組み合わせにより帯電性、トナーのガラス転移点を調整しやすい利点がある。また、メタクリル酸、アクリル酸は、親水性モノマーとして、ポリエステル樹脂とを含む樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させ、前記樹脂粒子の凝集径(
凝集粒子の大きさ)を制御しやすいという利点がある。
<着色剤>
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料等の公知の着色剤を任意に用いることができる。
黒の着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックの他、マグネタイト、フェライト等の磁性粉を用いることができる。
カラーの着色剤としては、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177
、同178、同222、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15;3、同60、同76等の顔料が挙げられる。また、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82,同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95等の染料を挙げることができる。また、これらを混合してもよい。
<外添剤>
外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子、チタン酸塩粒子、或いは炭素数20〜50の脂肪酸金属塩を添加することが耐フィルミング性の観点から好ましい。
<離型剤>
本発明で使用される離型剤は特に限定されるものではなく、公知の離型剤を使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、合成エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、或いはこれらの変性物が挙げられる。
上記離型剤の中でも、融点が70℃〜95℃の合成エステルワックスはフィルミング防止の観点から特に好ましく用いられる。上記合成エステルワックスの例としては、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベエニルが挙げられる。また、ベヘン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、クエン酸トリベへニルのような合成エステルワックスと、融点が75〜100℃のパラフィンワックスを併用することにより、トナー画像の光沢性向上と耐フィルミング性向上とを両立することができる。
パラフィンワックスの中でも、融点が75〜100℃のワックスを使用すると、低速領域から高速領域のいかなるプロセススピードでも、高温領域でのオフセット性を向上できる。加えて、クリーニングブレードをクリーニング手段とする画像形成装置では良好なブレードクリーニング性能を発現することができる。
これら離型剤のトナー中の含有量は5〜20質量%が好ましく、7〜13質量%がより好ましい。5質量%未満の場合は高温領域でオフセットが発生することがあり、20質量%を超える場合はトナー内部に離型剤が取り込まれにくくなる傾向がある。
<トナーの製造方法>
以下、本発明の製造方法について、具体例を挙げて説明する。
(1)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体を形成し、非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を作製する工程
まず、スルホン酸基を含む高分子を溶解させる。次いで、前記結晶性ポリエステル樹脂を酢酸エチル等の溶剤に溶解した溶液と必要に応じてイオン水等を前記水系媒体に添加し、分散機を用いて乳化分散させることにより、上記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液を作製する。その後、脱溶剤処理をすることが好ましい。もしくは溶剤を用いずに120℃以上の温度下で分散させてもよい。
非結晶性ポリエステル樹脂粒子は、体積基準のメディアン径として、50〜400nmであることが好ましい。生産設備に余裕があれば、非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液を作製する際に、非結晶性ポリエステル樹脂(溶液)にあらかじめ、離型剤、着色剤、荷電制御剤などのトナー内部添加剤を含有、分散させておいてもよい。

ここで、水系媒体とは、スルホン酸基を含む高分子などの分散剤を含む水をいうが、アルコールやケトン類など有機溶剤を50%未満、水に溶解されていてもよい。
(2)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体にスチレンアクリル樹脂を分散させたスチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する工程
イオン交換水等にスルホン酸基を含む高分子を混合し、重合開始剤を添加して溶解させた後、スチレンアクリル重合性モノマー混合溶液を滴下してラジカル重合反応させることにより、上記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する。
重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が製造安定性の観点から特に好ましい。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素と、アスコルビン酸、エリソルビン酸、第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤などの水溶性ラジカル重合開始剤が本発明の効果を得るために好ましく用いられる。
(3)少なくとも、(1)の工程で得られた前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、(2)の工程で得られた前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液とを混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記スチレンアクリル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製する工程
前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液以外に、必要に応じて着色剤粒子分散液を混合する。なお、結晶性ポリエステル樹脂についても、(1)の工程と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液を作製し、この結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液を一緒に混合することが好ましい。
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散させることによって得る。着色剤用水系媒体においては、スルホン酸基を含む高分子は必須でなく、公知のアニオン活性剤を用いることができる。
着色剤粒子分散液を作製する工程では、分散機は特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた攪拌装置クレアミックス(エムテクニック社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、キャビトロン、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等を用いることができる。
着色剤微粒子分散液の作製工程において調製される分散液中の着色剤粒子は、その体積基準のメディアン径が10〜300nmであることが好ましく、より好ましくは100〜200nm、さらに好ましくは100〜150nmである。例えば、上述の機械的エネルギーの大きさを調整することにより、体積基準のメディアン径を上記範囲内に制御することができる。
凝集剤としては、例えばアルミニウム金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これら塩類のアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。また、これら塩類のアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。このうち、特に好ましいのはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムである。前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。凝集剤としては、アルコール、テトラヒドロフラン、ケトンなどの水溶性のある有機溶剤を用いることも可能である。非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製時に、非結晶性ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させる工程を経る場合は、非結晶性ポリエステル樹脂粒子に5〜20%程度の有機溶剤を残存させておけば、凝集剤の添加量をごく微量にするか、省くことができるが、トナー粒子として所望の粒径まで凝集した後に脱溶剤する工程が必要になる。
なお、トナー粒子の好ましい粒径、すなわち体積基準のメディアン径D50は、画質とハンドリングを両立する観点から、4.0〜9.0μmであることが好ましい。
トナー粒子体積基準のメディアン径D50は、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作成する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャ−径を100μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径とする。
離型剤を添加する場合、この工程において上記水性媒体中に離型剤粒子の分散液(ワックスエマルジョン)を添加し、樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を塩析、凝集させればよい。或いは、前述のように上記(1)又は(2)の工程において離型剤粒子の分散
液を添加し、樹脂粒子と離型剤粒子の分散液を調製しておき、(4)の工程において凝集させてもよい。
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、洗浄処理によって当該トナー粒子から界面活性剤等の不要物を除去する工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
必要に応じて、疎水性シリカ、金属酸化物粒子などの外添剤と(5)の工程で得られたトナー粒子と乾式混合する。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.スルホン酸基を含む高分子の調製
(1−1)スルホン酸基を含む高分子1の調製
メタノール 300g
トルエン 100g
スチレン 470g
2−エチルヘキシルアクリレート 78g
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 42g
ラウロイルパーオキサイド 6g
上記原料をフラスコに仕込み、攪拌装置、温度制御装置、窒素導入装置を装着して、窒素雰囲気下70℃で溶液重合させ、10時間保持して重合反応を終了させた。得られた重合物を減圧乾燥・粗粉砕して、ピーク分子量は11800のスルホン酸基を含む高分子1を得た。
(1−2)スルホン酸基を含む高分子2の調製
上記(1−1)の調製において、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸42gを用いたところを、メタクリル酸3−スルホプロピルナトリウム36gとした以外は同様にして、スルホン酸基を含む高分子2を得た。スルホン酸基を含む高分子2のピーク分子量は10100であった。
(1−3)スルホン酸基を含む高分子3の調製
上記(1−1)の調製において、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸42gを用いたところを、パラニニルベンゼンスルホン酸ナトリウム34gとした以外は同様にして、スルホン酸基を含む高分子A3を得た。スルホン酸基を含む高分子3のピーク分子量は8100であった。
2.各種分散液の調製
トナーの作製に用いる非結晶性ポリエステル樹脂、着色剤、離型剤、シェル用樹脂の各分散液を調製した。
下記調製において、体積基準のメディアン径は、MICROTRAC UPA 150(HONEYWELL社製)により下記測定条件で測定した。
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重:1.05(球状粒子換算)
溶媒屈折率:1.33
溶媒粘度:30℃にて0.797、20℃にて1.002
ゼロ点調整:測定セルにイオン交換水を入れて調整
(2−1)非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1(非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液)の調製
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、下記多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを仕込んだ。
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸 19.7質量部
イソフタル酸 1.6質量部
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物 76質量部
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物 24質量部
仕込んだモノマーを1時間かけて190℃まで上げ、反応系が均一に攪拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)(多価カルボン酸モノマーの全量に対し、0.003質量%)を投入した。
さらに、生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで昇温した。240℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続し、重合を行わせて非結晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
得られた非結晶性ポリエステル樹脂A1の分子量をHLC−8 120GPC(東ソー社製、スチレン標準物質により換算)により測定したところ、重量平均分子量21000、数平均分子量2800であった。また、示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製、昇温速度3℃/分)により熱特性を測定した結果、ガラス転移温度Tgは52℃であった。
ここで、脱イオン水1500質量部に本発明の「スルホン酸基を含む高分子1」45質量部を溶解し水系媒体を形成した。
別途、攪拌動力を与えるアンカー翼の備えられた反応容器にメチルエチルケトン180質量部、2−プロパノール60質量部を添加、窒素ガスを送気し、系内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、系内オイルバス装置により60℃に加熱しながら非結晶性ポリエステル樹脂A1291質量部をゆっくりと添加し、攪拌しながら溶解させた。
次いで、定量ポンプを用い、攪拌しながら非結晶性ポリエステル樹脂A1の溶液に、上述の水系媒体を添加し、乳化系内が乳白色を呈し、かつ攪拌粘度が低下した時点を乳化終了、すなわち「スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体中に、非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた」非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液とした。
次いで、攪拌翼、還流装置、及び真空ポンプによる減圧装置の備えられた反応槽へ非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液を移し、反応槽内壁温度を58℃、反応槽内圧8kPa[abs]の減圧下で攪拌し溶媒を留去した。非結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液が650質量部に達した際、これを終点とし、反応槽内圧を常圧にして、攪拌しながら常温まで冷却した。得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1中に分散するポリエステル樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、316nmであった。
(2−2)非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A2(非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液)の調製
上記非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1の調製において用いた多価カルボン酸モノマーを下記のように変更し、「スルホン酸基を含む高分子1」を用いたところを「スルホン酸基を含む高分子2」とした以外は同様の手順により、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A2を調製した。
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸 32.0質量部
フマル酸 2.7質量部
重縮合により得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは55℃であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A2中のポリエステル樹脂粒子の体積基準のメディアン径は248nmであった。
(2−3)非結晶性ポリエステル樹脂分散液A3(非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液)の調製
上記非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1の調製において、「スルホン酸基を含む高分子1」を用いたところを「スルホン酸基を含む高分子3」とした以外は同様の手順により、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A3を調製した。
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A3中のポリエステル樹脂粒子の体積基準のメディアン径は165nmであった。
(2−4)比較用非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A4(非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液)の調製
上記非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1の調製において、「スルホン酸基を含む高分子1」を用いたところをドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は同様の手順により、比較用非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A4を調製した。
比較用非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A4中のポリエステル樹脂粒子の体積基準のメディアン径は288nmであった。
3.スチレンアクリル樹脂粒子分散液B1(スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液)の調製
イオン交換水1250質量部に本発明の「スルホン酸基を含む高分子1」37.5質量部を混合し、この混合液に重合開始剤を添加した。重合開始剤は、過硫酸カリウム10.3質量部をイオン交換水210質量部に溶解させた溶液である。
次に、80℃温度条件下で、下記重合性モノマー混合液1を2時間かけて添加した。
(重合性モノマー混合液1)
スチレン 265.8質量部
n−ブチルアクリレート 140.9質量部
メタクリル酸 28.3質量部
n−オクチルメルカプタン 8.2質量部
滴下終了後、2時間にわたって加熱攪拌し、ラジカル重合反応させた。ラジカル重合終了後、28℃に冷却して、体積基準のメディアン径が122nmのスチレンアクリル樹脂分散液B1を得た。スチレンアクリル樹脂粒子分散液B1中のスチレンアクリル樹脂粒子の数平均分子量は9600であった。
4.結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1(結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液)の調製
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液A1の調製において、非結晶性ポリエステル樹脂A1を291質量部用いたところを、1,10−デカンジオールとセバシン酸からなる、結晶性ポリエステル樹脂C1を用いた以外は同様にして、結晶性ポリエステル樹脂分散液C1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂分散液C1中の乳化樹脂粒子の体積基準のメディアン径は、207nmであった。
5.シアン着色剤分散液の調製
C.I.ピグメントブルー15:3 50質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5質量部
脱イオン水 195質量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径150nm、固形分量20重量%のシアン着色剤分散液を得た。
6.離型剤分散液の調製
パラフィンワックス(融点91℃) 50質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5質量部
脱イオン水 195質量部
以上を60℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径170nm固形分量20重量%のワックス分散液を得た。
7.トナー粒子の製造
(7−1)トナー粒子1の製造
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1) 500質量部
スチレンアクリル樹脂粒子分散液(B1) 510質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(C1) 200質量部
シアン着色剤分散液 100質量部
離型剤分散液 150質量部
脱イオン水 790質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。次いで、これに硫酸アルミニウム0.98質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら47℃まで加熱し、47℃で60分保温した。
その後、0.5Mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら90℃まで加熱し、3時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、脱イオン水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液を施した。これをさらに40℃の脱イオン水5000質量部に再分散し、300rpmで15分攪拌・洗浄した。これをさらに5回繰り返し、濾液のpHが7.01、電気伝導度9.8μS/cm、表面張力が71.1Nmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで、真空乾燥を40℃で12時間継続し、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1の体積平均粒径を測定したところ、体積基準のメディアン径D50は6.3μmであった。
(7−2)トナー粒子2の製造
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2) 500質量部
スチレンアクリル樹脂粒子分散液(B1) 510質量部
シアン着色剤分散液 100質量部
離型剤分散液 150質量部
脱イオン水 440質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中において、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散し、以降の操作はトナー粒子1の製造と同様にしてトナー粒子2を製造した。得られたトナー粒子2の体積平均粒径を測定したところ体積基準のメディアン径D50は5.7μmであった。
(7−3)トナー粒子3の製造
トナー粒子2の製造において、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)500質量部用いたところを、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A3)500質量部とした以外は同様にして、トナー粒子3を得た。
(7−4)比較用トナー粒子4の製造
トナー粒子1の製造において、非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)500質量部用いたところを、比較用非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A4)500質量部とした以外は同様にして、比較用トナー粒子4を得た。
8.光沢度評価
トナー粒子1〜4について、それぞれ10ロットの試作を行い、下記の要領で光沢度のばらつきを測定した。10ロット中の最大値と最小値の差が6以下であれば合格とする。
<光沢度評価法>
画像形成装置として、市販の複合機「bishub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、この複合機にトナー1〜4の各ロットをそれぞれ投入し、熱ローラ定着方式による定着装置の加熱部材の表面温度を150℃として、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、「POD128gグロスコート(128g/m)」(王子製紙社製)上に、転写紙上のトナー量0.5mg/cmに設定したベタ画像を形成した。
なお、光沢度は、光沢時計「Gloss Meter」(村上色彩工学研究所製)を用い、屈折率1.567のガラス表面を基準として入射角75°で測定した。
評価結果を下記表1に示した。光沢度の平均値は10ロットの光沢度測定値の算術平均値とした。
Figure 2012068341

なお、表1には、実施例1〜3、比較例の各トナーを構成する樹脂の種類等も示している。
表1の結果より、トナー1〜3(実施例1〜3)は、トナー4(比較例)に比べて光沢度のばらつきが安定していることが認められる。

Claims (2)

  1. 少なくとも下記(1)〜(3)の工程を有することを特徴とするトナーの製造方法。
    (1)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に非結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を作製する工程
    (2)スルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体にスチレンアクリル樹脂を分散させたスチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液を作製する工程
    (3)少なくとも、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液と、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液とを混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子と前記スチレンアクリル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製する工程
  2. 前記(3)の工程において、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液、前記スチレンアクリル樹脂粒子の水系分散液、及びスルホン酸基を含む高分子を溶解した水系媒体に結晶性ポリエステル樹脂粒子を分散させた水系分散液を混合し、前記非結晶性ポリエステル樹脂粒子、前記スチレンアクリル樹脂粒子、及び前記結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集させ、トナー粒子を作製することを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
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