本発明は、インバータを用いて駆動電動機の回転数を変化させ、圧縮機の容量を調整するスクリュー圧縮機の運転方法及びスクリュー圧縮機に関する。
従来のスクリュー圧縮機においては、特開平7−35079号公報に記載の様に、圧縮機はその吸入口に吸込み絞り弁を有しており、この吸込絞り弁をインバータの回転数信号に応じて開閉する電磁弁で開閉していた。
上記従来の技術においては、吸込み絞り弁を閉塞して低負荷時の容量制御していたので、次の点について十分には考慮されていなかった。
低負荷時に圧縮機の回転数を低下させた状態で吸込絞り弁を全閉しているが:
1.動力の低減が不十分である。
2.圧縮機の吐出圧力は仕様圧力のまま、吸込圧力が低下するため全負荷時に比較して給油量が増加する。低速回転時に給油量が増加すると運転動力、必要駆動トルクの増大を招き、低速回転域で駆動トルクが低下するインバータ駆動機では、インバータのトリップ等が生じる恐れがある。
3.圧縮機の吐出圧力が仕様圧力かそれより上昇した状態で圧縮機の仕事量が軽減されるため、相対的に上オイルクーラの能力が上昇して圧縮機への給油温度が低下する。これに伴い、圧縮機の吐出温度が低下し、オイルセパレータ内でのドレンの発生の可能性が高くなる。
ところで、低負荷時の動力を改善するために、(a)吸込絞り弁を全閉にしてオイルセパレータ内の圧力を開放する状態と、(b)吸込絞り弁を全開にする状態との、2つの状態(a),(b)を繰り返す方法も提案されている。しかし、この方法においては、(a),(b)の状態に移行するための圧力マージンが必要であり、そのため設定圧力より低下する恐れを生じる。そして、制御圧力が確保されている時でも吸込絞り弁や電磁弁の動作頻度が増加するので、これらの弁の耐久性を低下させる恐れがある。
本発明の目的は、圧縮機が一定回転数に保持する低負荷領域においても圧縮機を安定に制御できることである。
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、インバータを用いた電動機により駆動される変速運転が可能なスクリュー圧縮機の運転方法において、圧縮機の回転数を変化させて負荷の変化に対応する回転数制御運転と、この回転数制御運転で用いる下限回転数に圧縮機の回転数を設定するとともに、スクリュー圧縮機から吐出された圧縮空気を大気に放気して吐出圧力を減圧する無負荷運転とを備え、予め定められた所定負荷より低負荷時には、回転数制御運転の下限回転数に設定した負荷運転と無負荷運転とを繰り返すものである。
そしてこの特徴において、少なくとも無負荷運転が所定時間以上継続したとき、および低負荷時の運転における無負荷運転と負荷運転との時間比率が所定割合を越えたときのいずれか一方の運転になったときに、スクリュー圧縮機を停止する;負荷が減少して圧縮機の回転数が下限回転数となって吸込み絞り弁を閉塞し、さらに、圧縮機の吐出圧力を減圧して回転数制御運転から無負荷運転と負荷運転を繰り返す運転モードに切り替わる際に、制御の上限圧力P1を回転数制御運転の設定圧力P0に対し、P1>P0に設定する;圧縮機の圧力が低下して圧縮機が再起動したときに、負荷が減少しても所定時間(t1)圧縮機の運転を継続し、所定時間(t1)経過後は圧縮機を停止させることが望ましい。
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、軸受により回転可能に支持された雄雌一対のロータを有し、このロータを駆動する電動機と、この電動機を制御するインバータとを備えたスクリュー圧縮機において、電動機の回転数をインバータにより変化させてスクリュー圧縮機の容量を制御する回転数制御手段と、この回転数制御手段に設定された最低回転数でスクリュー圧縮機を駆動するとともに、スクリュー圧縮機から吐出された圧縮空気を大気に放気して吐出圧力を減圧する無負荷運転を行わせる容量制御手段とを備えたものである。
そしてこの特徴において、圧縮機を無負荷運転に切替えるときの吐出圧力の上限値をP1、圧縮機を前記最低回転数での吸込み絞り弁を開く運転である負荷運転に切替えるときの吐出圧力の下限値をP2、回転数制御運転の設定圧力をP0としたときに、前記容量制御手段は、P1>P0、P2>=P0にP1およびP2を設定する;回転数制御手段は、負荷の減少により圧縮機が自動停止する際に、前記設定圧力P0に対しP3>P0となるP3まで圧力を上昇させてから停止させる;回転数制御手段は、圧縮機を再起動させる圧力をP4とするとき、P4>=P0となるよう制御する;圧縮機の吐出圧力を検出する吐出圧力検出手段を圧縮機の吐出側に設けるとともに、回転数制御における設定圧力(P0)と、容量制御の上限圧力(P1)と下限圧力(P2)と、自動停止させる圧力(P3)と、自動停止後の再起動圧力(P4)とを記憶する記憶手段と、吐出圧検出手段により検出された検出圧力に基づいて回転数制御手段と容量制御手段の作動を切替える切替え手段と、記憶手段に記憶されたP0、P1、P2、P3、P4の値を変更可能にする入力手段とを設けた;回転数制御における設定圧力(P0)と、容量制御の上限圧力(P1)と下限圧力(P2)と、自動停止させる圧力(P3)と、自動停止後の再起動圧力(P4)とを記憶する記憶手段と、設定圧力(P0)に基づいて各設定圧力(P1,P2,P3,P4)を演算設定する圧力設定手段とを備える;吐出圧力を検出する吐出圧力検出手段を設け、この吐出圧力検出手段が検出した吐出圧力に基づいて回転数制御手段が回転数制御するとともに、この吐出圧力検出手段が検出した吐出圧力に基づいて、予め定めた負荷より低負荷で容量制御手段を作動させることが望ましい。
このように構成した本発明においては、例えば、圧縮機の定格吐出空気量の100%から30%の範囲で電動機をインバータを用いて制御し、圧縮機の回転数を変化させて容量制御する。空気の使用量が30%以下に低下したときには、圧縮機の回転数を30%負荷時の回転数(下限回転数)に固定する負荷運転と、圧縮機の吐出圧力を減圧する無負荷運転を繰り返す制御を行なうので、消費動力が著しく低減される。
また、例えば無負荷運転が10分間続いた場合に圧縮機を自動停止する。または例えば10%以下の負荷領域では圧縮機を自動停止するように設定する。
また、負荷が減少し、例えば空気の使用量が30%以下に低下したときに圧縮機の回転数を設定値(下限回転数)に保持し、さらに空気の使用量が減少したときにも下限周波数での運転を継続する。そして、回転数制御領域での設定圧力をP0としたとき、P1>P0となる圧力P1に圧縮機の吐出圧力が到達すれば、圧縮機の吐出圧力を減圧して無負荷運転に入るようにしている。また、圧縮機に自動停止機能があるときにも、上記方法を実施する。
さらに、無負荷運転から負荷運転に復帰させる圧力P2(下限圧力)を、上記設定圧力P0以上の圧力にする。そして、空気使用量が圧縮機の定格吐出空気量の100%から30%の場合には回転数を制御し、設定圧力P0付近で一定圧力となるように運転する。一方、空気使用量が30%以下の場合には、P1>P2>=P0となるP1とP2の圧力間で、空気使用量に応じて無負荷運転と下限回転数での負荷運転を繰り返す。
空気使用量がさらに減少して、圧縮機が自動停止する条件が整ったときには、下限回転数における負荷運転の期間を設け、前述した設定圧力P0に対しP3>P0となるP3まで圧力が上昇してから圧縮機を停止させる。空気の消費が始まって圧力がP4>=P0となるP4まで低下すると、圧縮機を再起動させる。
なお、圧力センサーを用いて、前記P1、P2、P3、P4等の圧力を検出するとともに、各設定圧力を記憶装置に記憶させてもよい。各設定圧力P1−P4は、圧力P0が設定されると自動的に演算装置により演算され、設定されるものであってもよい。また、設定値を手動で変更する入力手段を備えていてもよい。これにより、各設定圧力を適正に設定できるとともに設定値の変更が容易になる。
本発明によれば、回転数制御領域での目標設定圧力をあらゆる負荷領域において維持できるため、圧縮機を最低限必要な圧力で運転できるという上記したインバータによる回転数制御の省電力効果を最大限に発揮できる。
本発明の一実施例に係るスクリュー圧縮機装置の模式図である。
消費動力の特性を示すグラフである。
空気使用量と圧力の変化の一例を示すグラフである。
運転制御の一例のフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、いくつかの実施例について図面を用いて説明する。
図1に、本発明の実施例に係るスクリュー圧縮機装置の模式図を示す。吸込フィルター1から吸込まれた空気は吸込絞り弁2を経た後スクリュー圧縮機のロータ3間で圧縮され、吐出口4から吐出される。圧縮により発生した圧縮熱を冷却するため、および潤滑とシールのために、スクリュー圧縮機12のロータ3部に潤滑油が注入される。吐出口4から潤滑油とともに吐出された圧縮空気は、オイルセパレータタンク5内に流入し、オイルセパレータエレメント6で潤滑油と分離され、吐出配管7から逆止弁8、調圧弁9を順次通って、アフタークーラ10に流入し、このアフタークーラ10において冷却された後、図示しない外部装置へ吐出される。
一方、潤滑油はオイルセパレータタンク5内で圧縮空気と分離され、オイルセパレータタンク5の底部からオイルクーラ11へと導かれる。オイルクーラ11で冷却された潤滑油と、オイルクーラを経由しない無冷却の潤滑油とが温調弁13内で混合され、スクリュー圧縮機12を潤滑する。オイルクーラ11及びアフタークーラ10は、冷却ファン14の冷却風で冷却される。
スクリュー圧縮機のロータ3軸と電動機16軸とは回転をベルト15により連結される。電動機16は、インバータ17により可変速運転が可能になっている。逆止弁8の下流側には圧力センサー18が設けられ、スクリュー圧縮機12から吐出される圧力を検出している。この圧力センサー18の出力信号は、入出力部19へ入力される。制御装置部20aは、記憶手段とPID機能を有している。そして、記憶された設定圧力と圧力センサー18が検出した圧力とを比較し、検出圧力が目標圧力P0となるような周波数をインバータ17に与え、電動機16の回転数を変化させる。この記憶手段および制御装置部20aに記憶されている各種の圧力設定値は、目標圧力P0を設定するだけで自動的に適正な値に設定される。また、制御装置部20aに接続された設定入力手段および表示部20bを用いて、設定値を変更することが可能な構成となっている。さらに、設定入力手段および表示部20bには表示手段(LEDや液晶素子等)が併設されており、圧力の設定値や運転周波数を表示する。
スクリュー圧縮機12の上流側に設けられる吸込絞り弁2の弁板2aは、ピストン2bが電磁弁21側から圧力を受けると閉方向に動作する。つまり、電磁弁21が開となると、オイルセパレータ5内の高圧力が吸込絞り弁2へと導かれ、このピストン2bへ圧力が付加される。さらに、オイルセパレータ5内の空気の一部は、電磁弁21が開となると同時に放気配管22を経由して吸込絞り弁2の吸込側へと放気される。このとき、オリフィス23で流量が調整される。配管22の代わりに、直接大気へ放気する構成にしても良い。なお、電磁弁21は、記憶手段および制御装置部20aにおいて自動または手動で設定された設定圧力と、この記憶手段および制御装置部20aに入力される入出力部19からの圧力信号とを比較した結果に基づいて開閉される。
このように構成したスクリュー圧縮機装置の作用について、以下に述べる。インバータを用いた電動機により油冷式スクリュー圧縮機を駆動すれば、使用空気量の減少に伴い圧縮機12の回転数を低下させることが可能になり、他の容量制御方式に比べて、大きな動力低減効果が得られる。このことは従来よく知られているが、吐出空気量の全領域で回転数制御を行うと、次のようなデメリットを招来する。
すなわち、低回転数または小空気量域で、吸込み絞り弁等を使用した容量制御を併用することが必要であり、さらに、
(1)低回転数になると、電動機16と一体的に設けられた冷却ファン16aの回転数も同時に低下し、電動機を冷却できず、電動機コイル温度が所定温度範囲を越える、
(2)圧縮機12への給油をオイルセパレータ5とスクリュー圧縮機12の内部の差圧を利用して行うため、低回転数になってスクリュー圧縮機の吐出し空気量が大幅に減少しても給油量は減少せず、スクリュー圧縮機内部で油の液圧縮が発生し過負荷状態となる、という不具合を生じる。
これらの不具合を回避するには、電動機を冷却するために専用モータで駆動されたファンを設ける、低回転数域での給油量を調整するための弁を設ける、等種々の方法が考えられるが、構造が複雑となり現実的でない。
そこで、特開平7−35079号公報に記載のものにおいては、小空気量域では、回転数制御による容量制御を行わず、設定された下限回転数になると同時に吸込み絞り弁2を閉じて無負荷運転状態としていた。しかしこの方式は従来方式に比較して省エネ効果は期待できるが、未だ不十分であった。そこで、本発明では、図1に示したように機器を構成してスクリュー圧縮機の容量を制御している。その詳細フローを図4に示す。
仕様吐出空気量に対して約30%から100%の空気量の運転範囲では、インバータにより電動機16の駆動周波数を変え、回転数制御する。一方、吐出空気量が仕様吐出空気量の30%以下の運転範囲になると、圧力センサー18で検出した圧縮機の吐出圧力が記憶手段および制御出力部に記憶された設定圧力P1に到達している場合には、回転数制御における設定下限回転数にスクリュー圧縮機の回転数を保持する。そして、電磁弁21を開き、吸込み絞り弁2を閉塞する。また、圧縮機3の吐出圧力を減圧して無負荷運転の容量制御に切り換える。これにより、圧縮機12の吐出口4における圧力が低下し、従来技術に対して、大幅に消費動力を低減することが可能になる。
この場合の吐出空気量比に対する消費動力の比を図2に示す。図2中A線は従来方式による消費動力特性、B線は本発明の一実施例による消費動力特性である。吐出空気量比が0%近傍では、従来に比して消費動力が半分程度にまで低減している。
吐出圧力を低減したので、圧縮機ロータ3部への給油量も減少させることができ、潤滑油が液圧縮されたときに発生するトルクの異常な増大を起こす恐れがない。また、スクリュー圧縮機を低負荷で運転すると給油温度が低下してオイルセパレータ5内にドレンが発生しやすくなるが、無負荷運転時にはオイルセパレータ5内の圧力も低下するため、ドレンの発生の可能性が少なくなる。
さらに、圧縮機の回転数をこの設定下限回転数に保持し、吸込み絞り弁2を閉塞状態にして運転した結果、圧縮機3の吐出圧力が低下する無負荷運転の時間と、設定下限回転数に圧縮機の回転数を保持し、吸込み絞り弁2を開いて運転する負荷運転の時間とを記憶手段および制御出力部に内蔵されたタイマー手段で判定する。前者の割合が例えば10%以下の負荷、あるいは例えば、前者の運転時間が連続して3分間を超えた場合、圧縮機を停止させる。さらに、停止中にも圧力センサー18で圧力を監視し続け、記憶手段および制御装置部に記憶された設定圧力P4まで圧力が低下した時には圧縮機を再起動させる。このように圧縮機の運転を制御すれば、消費動力特性は図2中にC線で示したようになり、さら空気消費量が少ない運転領域での動力の低減が可能になる。
なお上記実施例では、消費空気量が減少し、圧縮機の回転数が設定下限回転数となったとき、回転数制御領域での目標設定圧力P0と無負荷運転(以降、回転数を一定にして吸込み絞り弁2を閉塞すると同時に、圧縮機3の吐出圧力を減圧する運転状態を無負荷運転と称する。)を開始する上限圧力P1が同じであり、空気使用量が制御方式の切り換え点に一致する場合に電磁弁21において不安定なON−OFF指令が発生し、吸込み絞り弁2のハンチングをおこす可能性がある。
一般的な一定速型の電動機駆動スクリュー圧縮機においては、吸込み絞り弁のみを閉塞する容量制御を行わない場合には、圧縮機の仕様圧力P0*と無負荷運転に入る設定上限圧力P1*とを同じ圧力に設定している。なぜなら仕様圧力における全負荷運転状態のときに、電動機が許容最大出力となるように設計するからである。つまり、無負荷運転の開始の設定上限圧力P1*を仕様圧力P0*より高くすると電動機が過負荷状態になるし、他方、無負荷運転の開始の設定上限圧力P1*を仕様圧力P0*より低くすると、仕様圧力に到達しないうちに無負荷運転に入るという不具合が生じるためである。
一方、本発明においては、インバータによる回転数制御領域の下限回転数で無負荷運転を開始しているので、一定速電動機駆動の圧縮機の制限がなく、回転数制御領域での目標設定圧力P0、(即ち一定速電動機駆動の圧縮機の場合の仕様圧力)に対して無負荷運転の開始圧力P1を高く設定しても、電動機の過負荷等の問題はなんら発生しない。そこで本発明においては、P1>P0となるようにP1を設定する。例えばP0が0.69Mpaの場合には、P1を0.79Mpaとする。このように設定することにより、回転数制御領域と下限回転数での一定速制御との間に時間遅れを持たせることができ、前述したハンチングが発生する恐れがない。
なお、設定圧力によっては、圧縮機に適合する制御条件を外れ、不都合を生じる恐れがある。そこで、目標設定圧力P0を入力すると自動的に適正値を演算し、P1〜P4を決定する方法を用いる。このP1〜P4の決定方法の一例を以下に示す。今、圧力P0がP0=0.69MPaであったとする。この状態で低負荷になったら、最高圧力を0.098MPa上昇させて、P1=P0+0.098=0.79MPaという演算を行わせる。ここで、安全弁の吹き出し圧力は0.93MPaであるから、制御上限圧力はこの吹き出し圧力以下という条件を満足している。次に、停止可能な圧力P2の条件は、P2>=P1である。つまり、P1=P2まではロード運転し、P1=P2になったらアンロード運転に切り替えるから、このアンロード運転への切り替わり時からP0に圧力が降下するまでの時間を計算し、この時間が所定時間以上であれば停止させ、所定時間以内であればロード運転となるように制御装置を作動させる。ロード運転へ復帰させる圧力P3は、P3=<P0である。また、運転停止後に再起動させるための圧力P4は、P4=P0−0.098MPa=0.59MPaとする。
このように各圧力P0〜P4を設定した場合、P0=0.83MPa以上になると、P1=(P0+0.098)>0.93MPaとなり、安全弁の吹き出し圧力を超えてしまう。そこで、P1=P0+(0.07/P0)MPaで表されるような各仕様に適合した経験式を圧縮機の制御装置が有する記憶手段に記憶させておく。つまり、各圧縮機の圧力設定にあわせて、仕様に応じた式を演算式を記憶させることにより、P0の入力のみで、各設定圧力を自動的に決定できる。なお、この実施例では各設定圧力間の関係を演算式で与えたが、離散的な値を補間して用いても良い。また、この関係式を記憶手段に記憶させているが、フロッピー(登録商標)ディスクのような外部記憶手段に記憶させたものを用いてもよい。
ところで、従来、一定速電動機を用いた場合には、吸込み絞り弁や電磁弁の開閉動作に起因する圧力差の発生が避けられなかった。たとえば最低限必要な圧力が0.59Mpaであっても、0.69Mpaと0.59Mpaの間で負荷運転と、無負荷運転を繰り返していた。一方、インバータを用いた回転数制御方式では、PID制御により圧力を一定にして回転数を変化させることが可能になり、最低限必要な圧力0.59Mpaを回転数制御領域での目標設定圧力P0とすることで無駄に高い圧力まで昇圧する必要がなく、省電力効果が得られる。しかし回転数を制御しない低負荷領域での無負荷運転中に、例えば0.59Mpaと0.49Mpaの間に圧力を制御し、圧力が0.59Mpa以下に低下するとこの効果も半減する。すなわち、圧力が0.59Mpa以下に低下すると支障のある場合には結局P0を低下させることができない。
そこで、無負荷運転に入った後に圧縮空気が消費されて吐出圧力が低下するのを、圧力センサー18で検出する。また、負荷運転に復帰するときの圧力(下限圧力)P2を、回転数制御領域での目標設定圧力P0と同じか、それ以上の圧力とする。これにより回転数制御領域から空気使用量がさらに減少したときにも、常に回転数制御領域での目標設定圧力より高い圧力で運転が可能になる。また、制御圧力を上昇させても、低負荷領域であるから運転動力の増加は非常に小さくて済む。
次に本発明の変形例を示す。この変形例は、負荷が減少した場合の制御についてである。負荷が減少した場合には、上記したタイマー機能により、自動停止と自動再起動が行われる。このとき、圧縮機の自動停止条件が整ったら一旦強制的に負荷運転を行い、圧縮機の吐出圧力を一旦回転数制御領域での目標設定圧力P0に対しP3>P0となるP3まで圧力を上昇させ、次いで圧縮機を停止させる。また、圧縮機を再起動させる圧力P4を回転数制御領域での目標設定圧力P0に対しP4>=P0に設定する。これにより、一定回転数に保持する低負荷領域においても圧縮機を安定に制御できる。すなわち本変形例によれば、回転数制御領域での目標設定圧力をあらゆる負荷領域において維持できるため、圧縮機を最低限必要な圧力で運転できるという上記したインバータによる回転数制御の省電力効果を最大限に発揮できる。
なお上記実施例においては、制御圧力の設定値は記憶手段20aに格納されており、表示及び入力手段20bを用いて必要なときに表示できる。また、これらの設定値は制御圧力P0を入力すると自動的に演算され、決定されるようになっているが、表示及び入力手段20bを用いても容易に行える。例えば、圧力により最高圧力を制限する例では、上述の5個の制御圧力P0、P1、P2、P3、P4を、
P1=P3=P0+(0.07/P0)Mpa
P2=P4=P0
の式を用いて設定し、予め記憶手段に格納し、通常はP0だけを変化させる。この場合、運転圧力を簡単に変更できる。
なお、手動で各設定圧力を決めることが出来ることは言うまでもない。例えば、P1=P2=P3=P0+X,P4=P0−Yとして、X,Yの値を表示装置に表示される時々刻々の値を見ながら、制御盤面上に設けた入力スイッチ等を用いて入力する。ここで、0.001>XまたはY>0.098である。
また、自動再起動後からカウントを開始するタイマーを記憶手段及び制御装置部20aに設け、負荷が減少しても所定時間t1の間圧縮機を停止させず、この時間t1経過後もなお圧縮機の負荷条件が前記自動停止条件を満足している時に圧縮機を自動停止させる。これにより、圧縮機が頻繁に運転、停止を繰り返すことに起因する、油温が十分に上昇する前に圧縮機が停止してオイルセパレータ5内にドレンが発生することを防止できる。
上述したスクリュー圧縮機の制御法を用いたときの空気使用量と圧力の変化の例を図3に、またスクリュー圧縮機の運転制御のフローの一例を図4に示す。
本発明では、インバータを使用した回転数制御と、容量制御を組み合わせるスクリュー圧縮機及びその運転方法において、容量制御運転中に吸込み絞り弁のみを閉塞して容量制御する従来方法の運転領域が全くないこれにより、動力の低減とドレンの発生を低減できる。
以上述べたように、本実施例によれば、制御設定圧力を入力することで、低負荷時の容量制御において、圧力設定が容易になり、圧力条件による機械の不都合がない。また、入力値を変更及び確認できる機能を備えているので、常に圧縮機の運転状態を把握でき、圧縮機運転における信頼性を向上できる。
2……吸込絞り弁、5……オイルセパレータ、6……オイルセパレータエレメント、8……逆止弁、9……調圧弁、16……電動機、17……インバータ、18……圧力センサー、19……入出力部、20a……記憶手段及び制御装置部、20b……表示及び設定入力手段部、21……電磁弁。
本発明は、インバータを用いて駆動電動機の回転数を変化させ、圧縮機の容量を調整するスクリュー圧縮機に関する。
従来のスクリュー圧縮機においては、特開平7−35079号公報に記載の様に、圧縮機はその吸入口に吸込み絞り弁を有しており、この吸込絞り弁をインバータの回転数信号に応じて開閉する電磁弁で開閉していた。
上記従来の技術においては、吸込み絞り弁を閉塞して低負荷時の容量制御していたので、次の点について十分には考慮されていなかった。
低負荷時に圧縮機の回転数を低下させた状態で吸込絞り弁を全閉しているが:
1.動力の低減が不十分である。
2.圧縮機の吐出圧力は仕様圧力のまま、吸込圧力が低下するため全負荷時に比較して給油量が増加する。低速回転時に給油量が増加すると運転動力、必要駆動トルクの増大を招き、低速回転域で駆動トルクが低下するインバータ駆動機では、インバータのトリップ等が生じる恐れがある。
3.圧縮機の吐出圧力が仕様圧力かそれより上昇した状態で圧縮機の仕事量が軽減されるため、相対的に上オイルクーラの能力が上昇して圧縮機への給油温度が低下する。これに伴い、圧縮機の吐出温度が低下し、オイルセパレータ内でのドレンの発生の可能性が高くなる。
ところで、低負荷時の動力を改善するために、(a)吸込絞り弁を全閉にしてオイルセパレータ内の圧力を開放する状態と、(b)吸込絞り弁を全開にする状態との、2つの状態(a),(b)を繰り返す方法も提案されている。しかし、この方法においては、(a),(b)の状態に移行するための圧力マージンが必要であり、そのため設定圧力より低下する恐れを生じる。そして、制御圧力が確保されている時でも吸込絞り弁や電磁弁の動作頻度が増加するので、これらの弁の耐久性を低下させる恐れがある。
本発明の目的は、圧縮機が一定回転数に保持する低負荷領域においても圧縮機を安定に制御できることである。
上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、軸受により回転可能に支持された雄 雌一対のロータと、該ロータを駆動する電動機と、該電動機を制御するインバータと、前 記ロータの回転により吐出される圧縮空気の圧力を検出する圧力センサーと、圧縮空気の 制御目標である設定圧力P0が入力される入力手段と、前記圧力センサーで検出される圧 力が前記設定圧力P0となるように前記電動機の回転数を前記インバータにより変化させ 、負荷が減少した場合に前記電動機を自動停止させる制御手段とを備えたものである。
上記目的を達成するための本発明の第2の特徴は、軸受により回転可能に支持された雄 雌一対のロータと、該ロータを駆動する電動機と、該電動機を制御するインバータと、前 記ロータの回転により吐出される圧縮空気の圧力を検出する圧力センサーと、圧縮空気の 制御目標である設定圧力P0が入力される入力手段と、P3>P0の関係を満たすように 自動演算される自動停止圧力P3を、前記入力手段で入力された前記設定圧力P0ととも に記憶する記憶手段と、前記圧力センサーで検出される圧力が前記設定圧力P0となるよ うに前記電動機の回転数を前記インバータにより変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、負荷が減少した場合に、前記圧力センサーでの検出圧力が前記自動停 止圧力P3に到達すると前記電動機を自動停止させるものである。
上記目的を達成するための本発明の第3の特徴は、軸受により回転可能に支持された雄 雌一対のロータと、該ロータを駆動する電動機と、該電動機を制御するインバータと、前 記ロータの回転により吐出される圧縮空気の圧力を検出する圧力センサーと、圧縮空気の 制御目標である設定圧力P0、及び、負荷が減少した場合に前記電動機を自動停止させる 自動停止圧力P3が、P3>P0の関係を満たすように入力される入力手段と、前記入力 手段で入力された設定圧力及び自動停止圧力を記憶する記憶手段と、前記圧力センサーで 検出される圧力が前記設定圧力P0となるように前記電動機の回転数を前記インバータに より変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、負荷が減少した場合に、前記圧力センサーでの検出圧力が前記自動停 止圧力P3に到達すると前記電動機を自動停止させるものである。
そして上記の特徴において、前記記憶手段は、前記設定圧力P0、前記自動停止圧力P 3、とともに、自動停止後の圧縮機の再起動圧力P4を記憶することが望ましい。また、 前記再起動圧力P4は前記設定圧力P0以上の圧力として前記記憶手段に記憶されること が望ましい。
本発明によれば、圧縮機が一定回転数に保持する低負荷領域においても圧縮機を安定に 制御できる。
本発明の一実施例に係るスクリュー圧縮機装置の模式図である。
消費動力の特性を示すグラフである。
空気使用量と圧力の変化の一例を示すグラフである。
運転制御の一例のフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、いくつかの実施例について図面を用いて説明する。
図1に、本発明の実施例に係るスクリュー圧縮機装置の模式図を示す。吸込フィルター1から吸込まれた空気は吸込絞り弁2を経た後スクリュー圧縮機のロータ3間で圧縮され、吐出口4から吐出される。圧縮により発生した圧縮熱を冷却するため、および潤滑とシールのために、スクリュー圧縮機12のロータ3部に潤滑油が注入される。吐出口4から潤滑油とともに吐出された圧縮空気は、オイルセパレータタンク5内に流入し、オイルセパレータエレメント6で潤滑油と分離され、吐出配管7から逆止弁8、調圧弁9を順次通って、アフタークーラ10に流入し、このアフタークーラ10において冷却された後、図示しない外部装置へ吐出される。
一方、潤滑油はオイルセパレータタンク5内で圧縮空気と分離され、オイルセパレータタンク5の底部からオイルクーラ11へと導かれる。オイルクーラ11で冷却された潤滑油と、オイルクーラを経由しない無冷却の潤滑油とが温調弁13内で混合され、スクリュー圧縮機12を潤滑する。オイルクーラ11及びアフタークーラ10は、冷却ファン14の冷却風で冷却される。
スクリュー圧縮機のロータ3軸と電動機16軸とは回転をベルト15により連結される。電動機16は、インバータ17により可変速運転が可能になっている。逆止弁8の下流側には圧力センサー18が設けられ、スクリュー圧縮機12から吐出される圧力を検出している。この圧力センサー18の出力信号は、入出力部19へ入力される。制御装置部20aは、記憶手段とPID機能を有している。そして、記憶された設定圧力と圧力センサー18が検出した圧力とを比較し、検出圧力が目標圧力P0となるような周波数をインバータ17に与え、電動機16の回転数を変化させる。この記憶手段および制御装置部20aに記憶されている各種の圧力設定値は、目標圧力P0を設定するだけで自動的に適正な値に設定される。また、制御装置部20aに接続された設定入力手段および表示部20bを用いて、設定値を変更することが可能な構成となっている。さらに、設定入力手段および表示部20bには表示手段(LEDや液晶素子等)が併設されており、圧力の設定値や運転周波数を表示する。
スクリュー圧縮機12の上流側に設けられる吸込絞り弁2の弁板2aは、ピストン2bが電磁弁21側から圧力を受けると閉方向に動作する。つまり、電磁弁21が開となると、オイルセパレータ5内の高圧力が吸込絞り弁2へと導かれ、このピストン2bへ圧力が付加される。さらに、オイルセパレータ5内の空気の一部は、電磁弁21が開となると同時に放気配管22を経由して吸込絞り弁2の吸込側へと放気される。このとき、オリフィス23で流量が調整される。配管22の代わりに、直接大気へ放気する構成にしても良い。なお、電磁弁21は、記憶手段および制御装置部20aにおいて自動または手動で設定された設定圧力と、この記憶手段および制御装置部20aに入力される入出力部19からの圧力信号とを比較した結果に基づいて開閉される。
このように構成したスクリュー圧縮機装置の作用について、以下に述べる。インバータを用いた電動機により油冷式スクリュー圧縮機を駆動すれば、使用空気量の減少に伴い圧縮機12の回転数を低下させることが可能になり、他の容量制御方式に比べて、大きな動力低減効果が得られる。このことは従来よく知られているが、吐出空気量の全領域で回転数制御を行うと、次のようなデメリットを招来する。
すなわち、低回転数または小空気量域で、吸込み絞り弁等を使用した容量制御を併用することが必要であり、さらに、
(1)低回転数になると、電動機16と一体的に設けられた冷却ファン16aの回転数も同時に低下し、電動機を冷却できず、電動機コイル温度が所定温度範囲を越える、
(2)圧縮機12への給油をオイルセパレータ5とスクリュー圧縮機12の内部の差圧を利用して行うため、低回転数になってスクリュー圧縮機の吐出し空気量が大幅に減少しても給油量は減少せず、スクリュー圧縮機内部で油の液圧縮が発生し過負荷状態となる、という不具合を生じる。
これらの不具合を回避するには、電動機を冷却するために専用モータで駆動されたファンを設ける、低回転数域での給油量を調整するための弁を設ける、等種々の方法が考えられるが、構造が複雑となり現実的でない。
そこで、特開平7−35079号公報に記載のものにおいては、小空気量域では、回転数制御による容量制御を行わず、設定された下限回転数になると同時に吸込み絞り弁2を閉じて無負荷運転状態としていた。しかしこの方式は従来方式に比較して省エネ効果は期待できるが、未だ不十分であった。そこで、本発明では、図1に示したように機器を構成してスクリュー圧縮機の容量を制御している。その詳細フローを図4に示す。
仕様吐出空気量に対して約30%から100%の空気量の運転範囲では、インバータにより電動機16の駆動周波数を変え、回転数制御する。一方、吐出空気量が仕様吐出空気量の30%以下の運転範囲になると、圧力センサー18で検出した圧縮機の吐出圧力が記憶手段および制御出力部に記憶された設定圧力P1に到達している場合には、回転数制御における設定下限回転数にスクリュー圧縮機の回転数を保持する。そして、電磁弁21を開き、吸込み絞り弁2を閉塞する。また、圧縮機3の吐出圧力を減圧して無負荷運転の容量制御に切り換える。これにより、圧縮機12の吐出口4における圧力が低下し、従来技術に対して、大幅に消費動力を低減することが可能になる。
この場合の吐出空気量比に対する消費動力の比を図2に示す。図2中A線は従来方式による消費動力特性、B線は本発明の一実施例による消費動力特性である。吐出空気量比が0%近傍では、従来に比して消費動力が半分程度にまで低減している。
吐出圧力を低減したので、圧縮機ロータ3部への給油量も減少させることができ、潤滑油が液圧縮されたときに発生するトルクの異常な増大を起こす恐れがない。また、スクリュー圧縮機を低負荷で運転すると給油温度が低下してオイルセパレータ5内にドレンが発生しやすくなるが、無負荷運転時にはオイルセパレータ5内の圧力も低下するため、ドレンの発生の可能性が少なくなる。
さらに、圧縮機の回転数をこの設定下限回転数に保持し、吸込み絞り弁2を閉塞状態にして運転した結果、圧縮機3の吐出圧力が低下する無負荷運転の時間と、設定下限回転数に圧縮機の回転数を保持し、吸込み絞り弁2を開いて運転する負荷運転の時間とを記憶手段および制御出力部に内蔵されたタイマー手段で判定する。前者の割合が例えば10%以下の負荷、あるいは例えば、前者の運転時間が連続して3分間を超えた場合、圧縮機を停止させる。さらに、停止中にも圧力センサー18で圧力を監視し続け、記憶手段および制御装置部に記憶された設定圧力P4まで圧力が低下した時には圧縮機を再起動させる。このように圧縮機の運転を制御すれば、消費動力特性は図2中にC線で示したようになり、さら空気消費量が少ない運転領域での動力の低減が可能になる。
なお上記実施例では、消費空気量が減少し、圧縮機の回転数が設定下限回転数となったとき、回転数制御領域での目標設定圧力P0と無負荷運転(以降、回転数を一定にして吸込み絞り弁2を閉塞すると同時に、圧縮機3の吐出圧力を減圧する運転状態を無負荷運転と称する。)を開始する上限圧力P1が同じであり、空気使用量が制御方式の切り換え点に一致する場合に電磁弁21において不安定なON−OFF指令が発生し、吸込み絞り弁2のハンチングをおこす可能性がある。
一般的な一定速型の電動機駆動スクリュー圧縮機においては、吸込み絞り弁のみを閉塞する容量制御を行わない場合には、圧縮機の仕様圧力P0*と無負荷運転に入る設定上限圧力P1*とを同じ圧力に設定している。なぜなら仕様圧力における全負荷運転状態のときに、電動機が許容最大出力となるように設計するからである。つまり、無負荷運転の開始の設定上限圧力P1*を仕様圧力P0*より高くすると電動機が過負荷状態になるし、他方、無負荷運転の開始の設定上限圧力P1*を仕様圧力P0*より低くすると、仕様圧力に到達しないうちに無負荷運転に入るという不具合が生じるためである。
一方、本発明においては、インバータによる回転数制御領域の下限回転数で無負荷運転を開始しているので、一定速電動機駆動の圧縮機の制限がなく、回転数制御領域での目標設定圧力P0、(即ち一定速電動機駆動の圧縮機の場合の仕様圧力)に対して無負荷運転の開始圧力P1を高く設定しても、電動機の過負荷等の問題はなんら発生しない。そこで本発明においては、P1>P0となるようにP1を設定する。例えばP0が0.69Mpaの場合には、P1を0.79Mpaとする。このように設定することにより、回転数制御領域と下限回転数での一定速制御との間に時間遅れを持たせることができ、前述したハンチングが発生する恐れがない。
なお、設定圧力によっては、圧縮機に適合する制御条件を外れ、不都合を生じる恐れがある。そこで、目標設定圧力P0を入力すると自動的に適正値を演算し、P1〜P4を決定する方法を用いる。このP1〜P4の決定方法の一例を以下に示す。今、圧力P0がP0=0.69MPaであったとする。この状態で低負荷になったら、最高圧力を0.098MPa上昇させて、P1=P0+0.098=0.79MPaという演算を行わせる。ここで、安全弁の吹き出し圧力は0.93MPaであるから、制御上限圧力はこの吹き出し圧力以下という条件を満足している。次に、停止可能な圧力P2の条件は、P2>=P1である。つまり、P1=P2まではロード運転し、P1=P2になったらアンロード運転に切り替えるから、このアンロード運転への切り替わり時からP0に圧力が降下するまでの時間を計算し、この時間が所定時間以上であれば停止させ、所定時間以内であればロード運転となるように制御装置を作動させる。ロード運転へ復帰させる圧力P3は、P3=<P0である。また、運転停止後に再起動させるための圧力P4は、P4=P0−0.098MPa=0.59MPaとする。
このように各圧力P0〜P4を設定した場合、P0=0.83MPa以上になると、P1=(P0+0.098)>0.93MPaとなり、安全弁の吹き出し圧力を超えてしまう。そこで、P1=P0+(0.07/P0)MPaで表されるような各仕様に適合した経験式を圧縮機の制御装置が有する記憶手段に記憶させておく。つまり、各圧縮機の圧力設定にあわせて、仕様に応じた式を演算式を記憶させることにより、P0の入力のみで、各設定圧力を自動的に決定できる。なお、この実施例では各設定圧力間の関係を演算式で与えたが、離散的な値を補間して用いても良い。また、この関係式を記憶手段に記憶させているが、フロッピー(登録商標)ディスクのような外部記憶手段に記憶させたものを用いてもよい。
ところで、従来、一定速電動機を用いた場合には、吸込み絞り弁や電磁弁の開閉動作に起因する圧力差の発生が避けられなかった。たとえば最低限必要な圧力が0.59Mpaであっても、0.69Mpaと0.59Mpaの間で負荷運転と、無負荷運転を繰り返していた。一方、インバータを用いた回転数制御方式では、PID制御により圧力を一定にして回転数を変化させることが可能になり、最低限必要な圧力0.59Mpaを回転数制御領域での目標設定圧力P0とすることで無駄に高い圧力まで昇圧する必要がなく、省電力効果が得られる。しかし回転数を制御しない低負荷領域での無負荷運転中に、例えば0.59Mpaと0.49Mpaの間に圧力を制御し、圧力が0.59Mpa以下に低下するとこの効果も半減する。すなわち、圧力が0.59Mpa以下に低下すると支障のある場合には結局P0を低下させることができない。
そこで、無負荷運転に入った後に圧縮空気が消費されて吐出圧力が低下するのを、圧力センサー18で検出する。また、負荷運転に復帰するときの圧力(下限圧力)P2を、回転数制御領域での目標設定圧力P0と同じか、それ以上の圧力とする。これにより回転数制御領域から空気使用量がさらに減少したときにも、常に回転数制御領域での目標設定圧力より高い圧力で運転が可能になる。また、制御圧力を上昇させても、低負荷領域であるから運転動力の増加は非常に小さくて済む。
次に本発明の変形例を示す。この変形例は、負荷が減少した場合の制御についてである。負荷が減少した場合には、上記したタイマー機能により、自動停止と自動再起動が行われる。このとき、圧縮機の自動停止条件が整ったら一旦強制的に負荷運転を行い、圧縮機の吐出圧力を一旦回転数制御領域での目標設定圧力P0に対しP3>P0となるP3まで圧力を上昇させ、次いで圧縮機を停止させる。また、圧縮機を再起動させる圧力P4を回転数制御領域での目標設定圧力P0に対しP4>=P0に設定する。これにより、一定回転数に保持する低負荷領域においても圧縮機を安定に制御できる。すなわち本変形例によれば、回転数制御領域での目標設定圧力をあらゆる負荷領域において維持できるため、圧縮機を最低限必要な圧力で運転できるという上記したインバータによる回転数制御の省電力効果を最大限に発揮できる。
なお上記実施例においては、制御圧力の設定値は記憶手段20aに格納されており、表示及び入力手段20bを用いて必要なときに表示できる。また、これらの設定値は制御圧力P0を入力すると自動的に演算され、決定されるようになっているが、表示及び入力手段20bを用いても容易に行える。例えば、圧力により最高圧力を制限する例では、上述の5個の制御圧力P0、P1、P2、P3、P4を、
P1=P3=P0+(0.07/P0)Mpa
P2=P4=P0
の式を用いて設定し、予め記憶手段に格納し、通常はP0だけを変化させる。この場合、運転圧力を簡単に変更できる。
なお、手動で各設定圧力を決めることが出来ることは言うまでもない。例えば、P1=P2=P3=P0+X,P4=P0−Yとして、X,Yの値を表示装置に表示される時々刻々の値を見ながら、制御盤面上に設けた入力スイッチ等を用いて入力する。ここで、0.001>XまたはY>0.098である。
また、自動再起動後からカウントを開始するタイマーを記憶手段及び制御装置部20aに設け、負荷が減少しても所定時間t1の間圧縮機を停止させず、この時間t1経過後もなお圧縮機の負荷条件が前記自動停止条件を満足している時に圧縮機を自動停止させる。これにより、圧縮機が頻繁に運転、停止を繰り返すことに起因する、油温が十分に上昇する前に圧縮機が停止してオイルセパレータ5内にドレンが発生することを防止できる。
上述したスクリュー圧縮機の制御法を用いたときの空気使用量と圧力の変化の例を図3に、またスクリュー圧縮機の運転制御のフローの一例を図4に示す。
本発明では、インバータを使用した回転数制御と、容量制御を組み合わせるスクリュー圧縮機及びその運転方法において、容量制御運転中に吸込み絞り弁のみを閉塞して容量制御する従来方法の運転領域が全くないこれにより、動力の低減とドレンの発生を低減できる。
以上述べたように、本実施例によれば、制御設定圧力を入力することで、低負荷時の容量制御において、圧力設定が容易になり、圧力条件による機械の不都合がない。また、入力値を変更及び確認できる機能を備えているので、常に圧縮機の運転状態を把握でき、圧縮機運転における信頼性を向上できる。
2……吸込絞り弁、5……オイルセパレータ、6……オイルセパレータエレメント、8……逆止弁、9……調圧弁、16……電動機、17……インバータ、18……圧力センサー、19……入出力部、20a……記憶手段及び制御装置部、20b……表示及び設定入力手段部、21……電磁弁。