以下に、本発明に係る導電性部材評価装置及び評価方法の一実施形態、並びに、この導電性部材評価装置において評価される導電性部材、及び、この導電性部材を備える画像形成装置、のそれぞれの構成例について、順に説明する。そのあと、本発明者らによる本発明の検証内容について説明する。
(導電性部材評価装置及び評価方法)
まず、本発明の完成に至った経緯について、図5〜図7を参照して説明する。
本発明者は、導電性部材としての帯電ローラの外周面の電気特性の局所的な差異を検出すべく、この外周面の局所的な一部と帯電ローラの芯金(即ち、軸心)との間に交流成分を含む評価電圧を印加したときに流れる電流値の交流成分の一周期における極値に着目して、(A)形成された画像に局所的な濃度ムラが生じてしまう良好でない帯電ローラ(以下、帯電ローラA)、及び、(B)形成された画像に局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ(以下、帯電ローラB)、を用意して、それぞれの帯電ローラについて、以下に示すように、上記極値の波形の確認を行った。
本発明者は、帯電ローラAの外周面の局所的な一部に、回転可能に軸支された円柱状の第1電極を当接して接続し、帯電ローラAの芯金に第2電極を接続し、そして、帯電ローラAを一方向に回転させ、第1電極を一方向と反対方向に同一線速度(即ち、表面の周方向移動速度)で回転させて、第1電極を帯電ローラの外周面の周方向に相対的に移動させながら、第1電極と第2電極との間に直流電圧に正弦波交流電圧を重畳した評価電圧を印加して、このときに流れる電流値(評価電流)を測定した。図5に、この測定した評価電流の波形を示す。
図5(a)に示す波形は、時間スケールが大きいため面状に示されているが、実際には、図5(b)の拡大図に示すように、交流波形となっている。そして、図5(a)から判るように、この評価電流の交流成分における極大値が、−0.1V付近でほぼ一定となり、極小値が、−1.0V〜−1.4V付近で変動している。評価電圧に負の直流成分を含む場合には、図5(a)に示すように、交流成分の極小値が大きく変動する。逆に、評価電圧に正の直流成分を含む場合には、交流成分の極大値が大きく変動する。この交流成分の1周期における極大値と極小値との差(即ち、振幅)が大きい箇所が、帯電ローラの外周面の一部と芯金との間の抵抗値(交流のためリアクタンス含む)が小さいことを示しており、差が小さい箇所が、抵抗値が大きいことを示している。そして、この波形のもととなる評価電流は、第1電極を帯電ローラの外周面の周方向に相対的に移動させながら測定したものであるので、この波形は、外周面における第1電極の当接部分の抵抗値などの電気特性に応じて変化し、つまり、この変化は、帯電ローラの外周面における周方向の電気特性の局所的な差異を示している。図5においては極大値がほぼ一定であるので、極小値のみ参照することとして、評価電流から極小値を取得した。図6に取得した極小値の波形を示す。
図6に示すように、極小値は、帯電ローラAの回転周期T1毎に、同様の波形を繰り返し、そして、この波形の変化と、この帯電ローラAを用いて形成した画像と、を比較したところ、この波形の変化が、画像における局所的な濃度ムラと一致することが判明した。
また、本発明者は、上記と同様にして、帯電ローラBについて、評価電流を測定して、この評価電流から極小値を取得した。図7に取得した極小値の波形を示す。図7に示すように、極小値は、上記と同様に、帯電ローラBの回転周期T1毎に、同様の波形を繰り返し、そして、この波形は、図6の波形と比較すると変動が非常に小さく、ほぼ一定の値となっており、帯電ローラBを用いて形成された局所的な濃度ムラのない画像状態と一致することが判明した。
これら結果から、評価電流の極値の波形は、帯電ローラの外周面の電気特性の局所的な差異に対応し、形成された画像の局所的な濃度ムラと相関性があることが明らかとなり、つまり、この極値に基づいて、帯電ローラを用いて形成された画像の局所的な濃度ムラについての良否の評価ができることを見出し、本発明の完成に至った。
以下に、本発明に係る導電性部材評価装置の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の導電性部材評価装置の構成図である。図2(a)は、図1の導電性部材評価装置が備える電極支持部(2つの円柱状部材で第1電極を構成)の側面図であり、図2(b)は、(a)の電極支持部の変形例の構成(1つの円柱状部材で第1電極を構成)を示す側面図である。図3は、図1の導電性部材評価装置の電気的接続関係を模式的に示す図である。図4は、図1の導電性部材評価装置が備える制御部が実行する評価処理の一例を示すフローチャートである。
導電性部材評価装置200は、導電性部材としての帯電ローラの評価に用いられ、特に、帯電ローラの構成や製造方法などを新たに開発した場合などに、当該帯電ローラにおいて形成した画像に局所的な濃度ムラが生じるか否かを予め評価するために用いられる。勿論、これに限定されるものではなく、帯電ローラの量産ラインにおける評価などで用いてもよい。
この導電性部材評価装置200で評価される帯電ローラ101は、芯金(即ち、軸心)としての導電性支持体106と、該導電性支持体106の上に設けられた円筒状の電気抵抗調整層104と、電気抵抗調整層104の外周面に重ねて設けられた表面層105と、を備えている。この帯電ローラ101は、導電性支持体106と電気抵抗調整層104とが互いに固定されており、導電性支持体106を中心に回転される。この帯電ローラ101の詳細については後述する。
導電性部材評価装置200は、図1に示すように、ベース201と、一対の支持部材202と、駆動部203と、第1電極211が設けられた電極支持部204と、第2電極221と、電源部205と、測定部206と、制御部207と、を備えている。
ベース201は、平板状に形成されて、工場のフロアやテーブル上等に設置される。ベース201の上面201aは、水平方向と平行に保たれる。ベース201の平面形状は、矩形状に形成されている。
一対の支持部材202は、ベース201の上面201aから互いに相対して垂直に立設された板状若しくは棒状の部材である。一対の支持部材202は、それら間に、帯電ローラ101を回転可能に軸支する。一対の支持部材202は、帯電ローラ101が容易に取り付け可能、取り外し可能にされている。帯電ローラ101には高電圧が印加されるので、ベース201及び一対の支持部材202における帯電ローラ101の近傍に位置する箇所は、電気的絶縁性を有する材料で構成されている。
駆動部203は、一対の支持部材202の一方に配設されており、周知のモータ203aと、互いに組み合わされた複数の歯車からなる駆動力伝達部203bと、を備えている。駆動部203は、モータ203aの回転を、駆動力伝達部203bの複数の歯車を介して、帯電ローラ101に伝達し、帯電ローラ101を一方向に回転させる。駆動部203は、後述の制御部207に接続されており、制御部207から送られる制御信号に基づき、帯電ローラ101の回転速度などの制御が行われる。
電極支持部204は、第1電極211と、支持部212と、を有している。第1電極211は、例えば、銅などの導電性金属等を用いて、図2(a)に示すように、互いに近接した2つの円柱状の電極211A、211Bで構成されている。本実施形態において、電極211A、211Bは、外径が10mm、厚み(軸方向長さ)が4mmに形成されている。または、第1電極211は、図2(b)に示すように、1つの円柱状の電極として形成されていてもよいが、互いに近接した複数の電極で構成した方が、帯電ローラ101の表面層105の外周面101a(以下、帯電ローラ101の外周面101aともいう)の状態の測定値への影響を低減できると考えられるので好ましい。また、第1電極211は、帯電ローラ101の外周面101aの軸方向の一部で、且つ、周方向の一部(即ち、外周面101aの局所的な一部)に当接されるように、円柱状、円筒状、又は、球状で、且つ、球状の場合を除いてその回転軸方向の長さが、帯電ローラ101の外周面101aの軸方向長さより短く形成されていればよい。勿論、球状で、且つ、その回転軸方向の長さが、帯電ローラ101の外周面101aの軸方向長さより短く形成されていてもよい。
支持部212は、一方の端部212aが直角に折り曲げられた略L字の棒状に形成されている。支持部212は、一方の端部212aが帯電ローラ101の上方に間隔をあけて配置されるようにして、ベース201の上面201aに立設されている。支持部212の一方の端部212aには、軸受213が設けられており、第1電極211を回転自在に軸支している。第1電極211は、この軸受213を介して後述の電源部205の一方の端子205aと接続される。また、支持部212の他方の端部212bは、ベース201の上面201aに、一対の支持部材202の相対方向(図2の矢印W)、即ち、帯電ローラ101の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。また、支持部212は、後述する制御部207に接続された図示しない第1電極移動用のアクチュエータに取り付けられており、このアクチュエータによって移動されて、帯電ローラ101の軸方向における位置が制御される。なお、支持部212は、手動で移動されるものであってもよい。
支持部212は、第1電極211の回転軸が、一対の支持部材202に軸支された帯電ローラ101の回転軸(即ち、導電性支持体106)と平行になるように、且つ、第1電極211(即ち、電極211A、211B)の外周面が、帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部(即ち、電極211A、211Bとの2つの当接部分を含む一部分)と互いに当接するように、第1電極211を配置する。これにより、第1電極211は、帯電ローラ101の回転に伴い、帯電ローラ101と略同一線速度で逆方向に回転される(即ち、連れ回る)。つまり、第1電極211は、導電性支持体106を中心に回転される帯電ローラ101の外周面101aを周方向に相対的に移動するようにして当接されている。
なお、本実施形態では、第1電極211は、回転自在に軸支されており、帯電ローラ101の回転に伴って連れ回るように設けられていたが、これに限らず、例えば、電極支持部204にモータ等の回転駆動手段を設けて、この回転駆動手段によって、第1電極211を、帯電ローラ101と同一線速度で逆方向に回転させるようにしてもよい。
第2電極221は、回転する導電性支持体106と電気的接続が可能なように、例えば、周知のスリップリング、ブラシ電極、又は、金属片などで構成されており、一対の支持部材202の一方に配設されている。第2電極221は、この一方の支持部材202に回転可能に軸支された帯電ローラ101が備える導電性支持体106(即ち、軸心)に電気的に接続されるように設けられている。
電源部205は、図3に示すように、直流電圧源と正弦波交流電圧源とを備え、一対の端子205a、205b間に任意の周波数の電圧(即ち、評価電圧)を発生可能な周知の電源装置である。電源部205は、直流電圧(直流成分)に正弦波となる交流電圧(交流成分)を重畳して評価電圧を生成している。この評価電圧は、交流成分を少なくとも含む電圧であればよいが、交流成分とともに直流成分も含むことが望ましい。この交流電圧の周波数f(Hz)は、実機と対応させる必要があるため、帯電ローラ101の線速度V(mm/sec)に対して、周波数線速度比f/Vが7以上12以下となるように設定する。周波数線速度比がこの範囲であれば、線速度を下げて測定することも可能である。電源部205は、後述の制御部207に接続されており、制御部207から送られる制御信号に基づき、一対の端子205a、205b間に発生させる電圧及び周波数などの制御が行われる。
電源部205の一方の端子205aは、測定部206が備える電流計206bを介して、電極支持部204に設けられた第1電極211に接続されている。また、電源部205の他方の端子205bは、第2電極221に接続されている。
測定部206は、電圧計206aと電流計206bとを備える周知の計測器である。電圧計206aは、電源部205の一対の端子205a、205b間に接続され、電源部205が発生する電圧(評価電圧)を測定する。電流計206bは、電源部205の一方の端子205aと第1電極211との間に接続され、第1電極211と第2電極221との間、即ち、帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部と、導電性支持体106との間に流れる電流値(評価電流)を測定する。測定部206は、制御部207に接続されており、評価電圧及び評価電流に関する測定情報を制御部207に送信する。測定部206において、評価電圧及び評価電流を測定する際のサンプリングレートとしては、交流電圧の周波数より高くすることが必要であり、特に、評価電流に含まれる交流成分の一周期における極値(極大値及び/又は極小値)を取得できるサンプリングレートが必要である。
制御部207は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などの周知のコンピュータなどで構成されている。制御部207は、それが備える種々の外部インタフェース(USB、GPIB等)を介して、上述した駆動部203、電源部205、測定部206、第1電極移動用のアクチュエータ等のそれぞれと接続されており、それらとの間で制御信号や各種情報などの送受信を行う。
また、制御部207はハードディスクやメモリカード等の記憶手段を備えており、この記憶手段には、(1)帯電ローラ101の回転速度(線速度)に関する情報、(2)帯電ローラ101に印加する評価電圧(直流電圧値、交流電圧値、交流周波数)に関する情報、及び、(3)帯電ローラ101が1回転する期間における極値の最大値と最小値との差分値Dの判定に用いられる差分基準値Dt、などが予め記憶されている。この差分基準値Dtは、評価対象となる帯電ローラ101の構成や評価電圧の電圧値、周波数等に応じて適宜定められる。
制御部207は、ROMや記憶手段などに予め格納されたプログラムに基づき、導電性部材評価装置200における各種制御を司り、また、測定部206から受信した評価電流に関する測定情報を基に、帯電ローラ101が1回転する期間など所定の評価期間における評価電流の極値の最大値と最小値との差分値Dを算出して、この差分値Dと予め定められた差分基準値Dtとを比較した結果に基づいて帯電ローラ101を評価する。
制御部207によって行われる本発明に係る評価処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
最初に、評価対象となる帯電ローラ101を一対の支持部材202に取り付け、第1電極211を、帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部に当接させて接続し、第2電極221を、帯電ローラ101の導電性支持体106に接続したのち、導電性部材評価装置200の電源を投入する。制御部207は、電源が投入されると、所定の初期化処理を実行したのち、評価処理を開始する。
制御部207は、記憶手段から帯電ローラ101の回転速度(線速度)に関する情報を読み出して、この情報に基づき駆動部203に対して所定の制御信号を送信して、帯電ローラ101を所定の線速度(例えば、40mm/sec)で一方向に回転させる(S110)。これにより、帯電ローラ101の外周面101aに当接された第1電極211も、略同一線速度で逆方向に回転する。
そして、制御部207は、記憶手段から帯電ローラ101に印加する評価電圧に関する情報を読み出して、この情報に基づき電源部205に所定の制御信号を送信して、第1電極211と第2電極221との間に、即ち、帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部と導電性支持体106との間に所定の評価電圧を印加する(S120)。この評価電圧は、例えば、直流電圧(Vdc=−0.7kV)に交流電圧(ピーク間電圧Vpp=1.0kV、周波数f=300Hz)を重畳したものなどである。このときの周波数線速度比f/Vは、7.5となる。
そして、制御部207は、測定部206による評価電圧及び評価電流の測定を開始する。すると、測定部206は、評価電圧を順次測定し、これと同時に、帯電ローラ101の回転に伴い第1電極211の当接箇所が帯電ローラ101の周方向に移動されている状態において、第1電極211と第2電極221との間を流れる評価電流を順次測定する。そして、制御部207は、測定部206から評価電圧及び評価電流に関する測定情報を順次受信する(S130)。
そして、制御部207は、測定部206から受信した測定情報を解析して、評価電流に含まれる交流成分の一周期における極値を取得する(S140)。具体的には、評価電圧に負の直流成分が含まれている場合には極小値を取得し、正の直流成分が含まれている場合には極大値を取得し、直流成分が含まれていない場合には極小値及び極大値のいずれか一方を取得する。
そして、制御部207は、帯電ローラ101が1回転する期間における極値の最大値と最小値との差分値Dを算出する(S150)。
そして、制御部207は、上記差分値Dを複数回(例えば、2回)算出したのち、この算出した複数の差分値Dと記憶手段に記憶された差分基準値Dt(例えば、0.3mA)とを比較して、複数の差分値Dの全てが差分基準値Dt以下のとき、帯電ローラ101の電気抵抗調整層104の外周面における電気特性の局所的な差異が小さいものとして、局所的な濃度ムラのない良好な画像が得られる帯電ローラ101と判定し、複数の差分値Dのうち1つでも差分基準値Dtより大きいとき、上記電気特性の局所的な差異が大きいものとして、局所的な濃度ムラのある不良画像となる帯電ローラ101と判定して、これら判定結果を、制御部207が備えるディスプレイなどの表示装置に表示する(S160)。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述した評価処理においては、帯電ローラ101の外周面101aの軸方向の一部についてのみ、周方向全体にわたっての評価を行っているが、必要に応じて、電極支持部204を帯電ローラ101の軸方向に沿って移動させることにより、第1電極211を帯電ローラ101の外周面101aの軸方向の他の一部に当接させて、当該他の一部について上記評価処理を再度実行して、軸方向の複数の部分について評価を行ってもよい。より確実な評価のためには、帯電ローラの101の外周面101aにおける軸方向の全ての部分について、上記評価処理を行うことが望ましい。また、複数の差分値Dを算出して差分基準値Dtと比較しているが、1つの差分値Dだけ比較するようにしてもよい。但し、複数の差分値Dを用いたほうが精度を高めることができるので望ましい。
なお、上述したステップS120は、請求項中の電圧印加手段、電圧印加工程に相当し、ステップS130は、請求項中の電流値測定手段、電流値測定工程に相当し、ステップS140は、請求項中の極値取得手段、極値取得工程に相当し、ステップS150、S160は、請求項中の評価手段、評価工程に相当する。
上述した導電性部材評価装置200を用いて、実際に帯電ローラ101の評価を行った。外径12.7mm、全長315mmの帯電ローラ101を複数本用意して、この帯電ローラ101を上記導電性部材評価装置200に取り付けた。そして、測定環境23℃、50%RHの大気中において、帯電ローラ101の線速度を40mm/secで回転させた。そして、第1電極211と第2電極221との間に直流電圧Vdc=−0.7kV、ピーク間電圧Vpp=1.0kV、周波数f=300Hzの電圧を印加して、帯電ローラ101が1回転する期間における第1電極211と第2電極221との間に流れる評価電流の極小値の最大値と最小値との差分値Dを求めた。そして、この差分値Dが、帯電ローラ101の外周面101aの全ての部分で0.3mA以下のもの(以下、帯電ローラA)と、差分値Dが0.3mAより大きいもの(以下、帯電ローラB)と、を選別した。そして、選別した帯電ローラを用いて所定濃度のベタ画像を形成した。すると、帯電ローラAでは、局所的な濃度ムラのない良好な画像が形成され、その一方で、帯電ローラBでは、局所的な濃度ムラのある良好でない画像が形成された。つまり、導電性部材評価装置200の評価結果と、形成された画像の局所的な濃度ムラについての画像評価結果とが一致した。
本実施形態によれば、円柱状の第1電極211を、導電性支持体106を中心に回転された帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部に当接させるとともに帯電ローラ101と同一線速度で逆方向に回転させるようにして、帯電ローラ101の外周面101aに接続し、第2電極221を、帯電ローラ101の導電性支持体106に接続して、これら電極間に交流成分を含む評価電圧を印加するとともに、これら電極間、即ち、回転に伴い周方向に移動する帯電ローラ101の外周面101aの当接部分と導電性支持体106との間に流れる電流値を測定する。そして、測定した電流値から交流成分の一周期における極値(極大値及び/又は極小値)を取得して、この極値に基づいて帯電ローラ101を評価する。
また、帯電ローラ101が1回転する期間における極値の最大値と最小値との差分値Dを算出して、この差分値Dと予め定められた差分基準値Dtとを比較した結果に基づいて、帯電ローラ101を評価する。
以上より、本発明によれば、回転に伴って周方向に移動する帯電ローラ101の外周面101aにおける第1電極211の当接部分と、導電性支持体106と、の間に流れる電流値を測定するので、この電流値に含まれる交流成分の一周期における極値(極大値及び/又は極小値)は、帯電ローラ101の外周面101aにおける第1電極211の当接部分の電気特性、つまり、帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部の電気特性を表し、そのため、外周面101aの局所的な一部について周方向に移動しながら連続して測定した電流値から前記極値を取得して用いることにより、帯電ローラ101の外周面101aにおける電気特性の局所的な差異を検出でき、局所的な濃度ムラについて帯電ローラ101の良否を評価することができる。
また、帯電ローラ101が1回転する期間における極値の最大値と最小値との差分値Dを算出して、この差分値Dと予め定められた差分基準値Dtとを比較した結果に基づいて、帯電ローラ101を評価するので、極値の最大値及び最小値は、一方が濃度の高い箇所に対応し且つ他方が濃度の低い箇所に対応しており、そのため、局所的な濃度ムラにおける濃度差によって帯電ローラ101を評価することができる。また、複雑な計算を必要としない簡易な処理で評価することができる。また、帯電ローラ101の周方向全体にわたる電気特性の局所的な差異を検出して評価することができる。
本実施形態においては、帯電ローラ101の評価に、評価電流の極小値及び極大値の一方を用いていたが、これに限定されるものではなく、例えば、極小値及び極大値の両方を用いて、いずれか一方の差分値Dが差分基準値Dtより大きいか否かを判定して、評価を行ってもよい。または、極小値及び極大値の両方を用いて交流成分の一周期における振幅(即ち、極大値と極小値の差)を求めて、この振幅を上述した極値と同様に用いて評価を行ってもよい。つまり、帯電ローラ101が1回転する期間における振幅の最大値と最小値との差分値を算出して、この差分値と予め定められた振幅の差分基準値とを比較して、この比較結果に基づいて、帯電ローラ101の評価を行うようにしてもよい。
また、本実施形態においては、評価電流の極値の最大値と最小値との差分値Dを予め定められた差分基準値Dtと比較して帯電ローラ101を評価していたが、これに限定されるものではない。例えば、評価電流の極値の標準偏差σを算出して、この標準偏差σと予め定められた偏差基準値とを比較した結果に基づいて、帯電ローラ101を評価するようにしてもよい。このようにすることで、極値のばらつき程度、即ち、画像の局所的な濃度のばらつき程度によって帯電ローラ101を評価することができる。
または、評価電流の極小値の単位時間当たりの変化量を算出して、この変化量と予め定められた変化量基準値とを比較した結果に基づいて、帯電ローラ101を評価するようにしてもよい。この極小値の単位時間当たりの変化量は、帯電ローラ101の外周面101aにおける電気特性の局所的な変化の傾きを示しており、この傾きが大きければ濃度変化が急激であり、傾きが小さければ濃度変化が緩やかであることを示すものである。そのため、この変化量を用いて評価を行うことで、形成画像の濃度ムラにおける濃度変化の程度によって帯電ローラ101を評価することができる。
また、本実施形態においては、所定の評価期間として帯電ローラ101が1回転する期間を用いて評価を行っていたが、これに限定されるものではなく、例えば、帯電ローラ101が複数回回転する期間における極値を用いて評価を行ってもよく、評価期間の長さは本発明の目的に反しない限り任意である。
(導電性部材)
図8は、本発明の導電性部材評価装置及び導電性部材評価方法で評価される導電性部材の一例である帯電部材と、像担持体の感光層領域及び、画像領域、非画像領域の位置関係を示す概略図である。以下では、帯電部材を近接帯電方式の帯電ローラとして使用する導電性部材について示すが、導電性部材としては、これに限定したものではない。
帯電部材101は(即ち、帯電ローラ101)、図8に示すように、例えばステンレス等の導電性金属を用いて中実の円柱棒状に形成された導電性支持体106と、該導電性支持体106上に形成された電気抵抗調整層104と、該電気抵抗調整層104の両端に配設された空隙保持部材103と、を備えている。更に、電気抵抗調整層104上にはトナー及び、トナー添加剤が付着しにくいように、表面に表面層105が形成されている。
帯電部材101は、像担持体61に微少間隙G(空隙)を持たせて対向して配設される。帯電部材101と像担持体61の間隙Gは、空隙保持部材103を帯電部材101の非画像形成領域に当接させて形成する。感光層領域に空隙保持部材103を当接させることにより、像担持体61の感光層の塗布厚がばらついても、空隙のばらつきを防止することができる。
帯電部材101の形状は、上述した導電性部材評価装置での評価のために、円柱状に形成されている。このように、帯電部材101は、像担持体61への最近接部から、像担持体61移動方向の上下流に漸次離間する曲面で形成されていると、像担持体61をより均一に帯電させることができる。像担持体61に対向する帯電部材101が、先鋭な部分があると、その部分の電位が高くなるために優先的に放電が開始され、像担持体61の均一な帯電が困難になる。従って、円柱状の形状で、曲面を有することで均一な像担持体61の帯電が可能になる。また、帯電部材101の放電している表面は強いストレスを受ける。放電が常に同じ面で発生するので、その劣化が促進され、さらに、削り落ちることがある。そのために、帯電部材101の全面を放電する面として使用できるのであれば、回転させることで、早期の劣化を防止することで、長期にわたって使用することができる。
帯電部材101と像担持体61との間隙Gは、空隙保持部材103により100μm以下、特に、5〜70μm程度の範囲にする。これにより、帯電装置100の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。間隙Gが、100μm以上では、像担持体61に到達するまでの距離も長くなることで、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなり、さらに、像担持体61までの放電空間が大きくなることで、像担持体61を所定の帯電をさせるためには放電による放電生成物が多量に必要となり、これが画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。また、この間隙Gが小さいと、像担持体61までの到達距離も短く、放電エネルギーも小さくても像担持体61を帯電させることができる。しかし、帯電部材101と像担持体61により形成される空間が狭くなり、空気の流が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物はこの空間内に滞留するために、間隙Gが大きい場合と同様に、画像形成後も放電空間に多量に残留し、像担持体61に付着して、像担持体61の経時劣化を促進する原因になる。従って、放電エネルギーを小さくして放電生成物の生成を少なくし、かつ、空気が滞留しない程度の空間を形成することが好ましい。そのために、間隙Gは、100μm以下であって、5〜70μmの範囲にすることが好ましい。これにより、ストリーマ放電の発生を防止し、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして、斑点状の画像斑・像流れを防止することができる。
ここで、像担持体61上に現像後に残留するトナーは、像担持体61に対向して設けられるクリーニング装置64によりクリーニングされるが、完全に除去するのは困難であり、極わずかのトナーがクリーニング装置を通過し、帯電装置100へと搬送されてくる。このときに、トナーの粒径が間隙Gより大きいと、トナーは回転する像担持体61や帯電部材101により摺擦されて熱を帯び、帯電部材101に融着することがある。このトナーが融着した部分は、像担持体61に近くなるために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。従って、間隙Gは、画像形成装置1に用いられるトナーの最大粒径よりも大きいことが好ましい。
また、帯電部材101は、図5などに示すように、帯電装置100の図示しないハウジングの側板に設けられる軸受に嵌合され、軸受には従動しない摩擦係数の低い樹脂による軸受107に設ける圧縮バネ108により像担持体61表面方向に押圧されている。これにより、機械的振動、芯金の偏位があっても一定の間隙Gを形成することができる。押圧する荷重は、4〜25Nにする。好ましくは、6〜15Nにする。帯電部材101は、軸受107で固定されていても、回転するときの振動、帯電部材101の偏心、その表面の凹凸により間隙Gの大きさが変動し、間隙Gが適正な範囲からはずれる場合があり、このために、経時的には像担持体61の劣化を促進することになる。ここで、荷重とは、空隙保持部材103を通して像担持体61に加わるすべての荷重を意味する。これは、帯電部材101の両端に設けられる圧縮バネ108の力、帯電部材101とクリーニング部材102の自重等により調整できる。荷重が小さいと、帯電部材101の回転時による変動、駆動するギア等の衝撃力による跳ね上がりを抑えることができない。荷重が大きいと、帯電部材101と嵌合する軸受107との摩擦が大きくなり、経時的な摩耗量を大きくして変動を促進することになる。従って、荷重を4〜25N、好ましくは、6〜15Nの範囲にすることにより、間隙Gを適正な範囲にして、放電生成物の生成を少なくして像担持体61に堆積する量を少なくして像担持体61の寿命を延ばし、かつ、斑点状の異常画像・画像流を防止することができる。
空隙保持部材103は、その一部が電気抵抗調整層104と高低差を有している。空隙を形成する方法としては、電気抵抗調整層104と空隙保持部材103とを切削、研削等の除去加工により同時加工することにより形成することができる。空隙保持部材103と電気抵抗調整層104とを同時加工することにより、空隙を高精度に形成することが可能となる。
空隙保持部材103の電気抵抗調整層104と隣接する部分の高さを、電気抵抗調整層104の高さと同一、もしくは低く形成することで、空隙保持部材103と像担持体61との接触幅が低減され、帯電部材101と像担持体61との空隙を高精度にすることができる。このようにすることで、空隙保持部材103の電気抵抗調整層104側端部の外表面が像担持体61に当接することを防止することができ、この端部を介して隣接する電気抵抗調整層104が像担持体61に接触してリーク電流が発生してしまうことを防止することが可能となる。また、空隙保持部材103の電気抵抗調整層104側の端部を低く加工することによって、この部分を、除去加工を行う際の切削刃等の逃げ代(逃げ加工)とすることができる。なお、逃げ代(逃げ加工)の形状は、空隙保持部材103の端部の外表面が像担持体61に当接しないような形状であるならばどのような形状であっても良い。
更に、表面層105をコーティングする際のマスキングを電気抵抗調整層104と空隙保持部材103の境界で行うことは、ばらつきを考慮すると制御が難しく、段差を形成する際に、電気抵抗調整層104と同一もしくは、低く形成された空隙保持部材103まで表面層105を形成することで、電気抵抗調整層104上に確実に表面層105を形成することができる。
空隙保持部材103の必要な特性としては、像担持体61との空隙を環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成することであり、そのためには、吸湿性、耐摩耗性が小さい材料が望ましい。また、トナー及び、トナー添加剤が付着しにくいことや、像担持体61と当接し、摺動するために、像担持体61を摩耗させないということも重要であり、種々の条件に応じて、適宜選択されるものである。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)等があげられる。特に空隙保持部材103を確実に固定するためには、接着剤を塗布して接着することができる。また、空隙保持部材103は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で10^13Ωcm上であることが好ましい。絶縁性が必要である理由は、像担持体61とのリーク電流の発生を無くすためである。空隙保持部材103は、成型加工により成形されたものである。
電気抵抗調整層104は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物が特に好ましい。電気抵抗調整層104の体積固有抵抗は10^6〜10^9Ωcmであることが望ましい。10^9Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10^6Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、像担持体61全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
電気抵抗調整層104に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。
その熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリクスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、導電性顔料を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のバラツキが生じない。また高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高分子型イオン導電材が70〜30重量%とすることが好ましい。電気抵抗調整層はイオン導電による導電機構を得るために、分子中に少なくともポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含有する熱可塑性樹脂(A)と、過塩素酸塩及び含フッ素有機アニオン塩を含有する樹脂材料より構成される。イオン導電性が必要な理由は、一般的にカーボンブラックのような電子導電系の導電剤を用いた場合、電荷がカーボンブラックを通して像担持体へ放電するために、カーボンブラックの分散状態に起因した微小な放電ムラが生じやすく、高画質化の妨げとなる。特に高電圧印加時はこの現象が顕著となるからである。イオン導電材料としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩のような低分子量の塩があるが、通電のため、分極してブリードアウトしやすい。そこで高分子型イオン導電材料として、エーテル基を含む固体状のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーが用いられる。分子中にエーテル基を有することにより、エーテル結合に含まれる酸素原子等により塩が安定化され、高い導電性を得ることが可能となる。この構成ではマトリクスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化されるので、導電性顔料を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う導電性のバラツキが生じない。また高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。高分子型イオン導電材料としては、エーテル基を有する液状のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドのようなポリエーテルポリオール類も挙げられるが、液状の場合は熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができないため、固体状のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを用いることが必要となる。ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーは、一般に親水性、疎水性グレードに大別され、特性が大きく異なる。そのため、目的の特性を得るために、複数のグレードをブレンドすることも可能である。ただし、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含む熱可塑性樹脂材料のみでは、導電性部材として使用するための導電性を得ることができないため、電解質塩を併用することにより、導電性向上が達成できる。電解質塩としては、過塩素酸塩が最も一般的であり、その他に含フッ素有機アニオン塩や有機ホスホニウム塩等を使用することも可能である。
過塩素酸塩としては、一般的に用いられているものであれば、使用することは可能であるが、導電性を考慮すると、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれた塩であることが望ましい。その中でも、特に過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムが好ましい。
含フッ素有機アニオン塩としては、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が望ましい。上記陰イオンを備えた塩は、フルオロ基(−F)およびスルホニル基(−SO2−)による強い電子吸引効果によって電荷が非局在化するため、陰イオンが安定なポリマー組成物中で高い解離度を示し、高いイオン導電性を実現できる。中でも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩およびフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩等は抵抗値の低下を容易に達成可能であり、望ましい。特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムの導電度の高いリチウム塩が好ましい。
過塩素酸塩、含フッ素有機アニオン塩は、高分子型イオン導電材料に添加して混練することにより、所定の割合に配合することが可能であり、それぞれ1種以上の電解質塩をブレンドして添加することもできる。また、過塩素酸塩を含有する高分子型イオン導電材料としては、例えばチバスペシャルティケミカルズ製の「IRGASTAT P18」として、含フッ素有機アニオン塩を含有する高分子型イオン導電材料として、例えば三光化学工業(株)の「サンコノール」シリーズとして入手することが可能である。塩の配合量としては、高分子型イオン導電材料中に0.01〜20重量%の割合で配合されていることが望ましい。配合量が0.01重量%よりも低い場合は、導電性が不足してしまい、20重量%よりも高い場合は、樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となる。抵抗調整層の体積固有抵抗は10^6〜10^9Ωcmであることが望ましい。10^9Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足してしまい、10^6Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、像担持体61全体への電圧集中によるリークが生じてしまう。
また、上述したような導電性部材は、部品の高精度化を達成するためは、切削、研削のような、機械加工が必要となる。ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーは柔らかく、機械加工しにくいという課題がある。そこで、必要に応じて、これらの樹脂より硬度が高い、他の熱可塑性樹脂(B)とブレンドすることが可能である。硬度が高くなることにより、機械加工性が向上する。高硬度の熱可塑性樹脂(B)は特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック等であれば、成形加工が容易であり好ましい。配合量については、電気抵抗調整層の導電性を損なわない範囲であれば、目的の機械加工性に応じて設定することが可能である。
電気抵抗調整層104の導電性を向上させる際には、導電樹脂材料、電解質塩の選定と共に、分散状態の制御も重要となる。電解質塩の分散状態が粗い場合には、低温低湿環境で分散状態に起因した不均一な放電が発生しやすく、画像不良となってしまう。そのため、分散状態の緻密化を目的として、相溶化剤を添加することが望ましい。そのような相溶化剤としては、前述のポリアミドエラストマー、ポリオレフィンブロックポリマーを含有する熱可塑性樹脂(A)に親和性を有するグラフトコポリマー(C)が挙げられる。具体的には、主鎖にポリカーボネート樹脂を、側鎖にアクリロニトリル-スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体を有するグラフトコポリマーを用いる。このグラフトコポリマーは、側鎖に含まれるアクリロニトリル−スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が、アクリロニトリル成分及びスチレン成分と反応基であるグリシジルメタクリレート成分から成る。反応基のグリシジルメタクリレートは成分を溶融混練する際の加熱により、エポキシ基が(A)のエステル基やアミノ基と反応し、(A)と強固に化学的結合をするので、このグラフトコポリマーを添加することで、電解質塩の分散状態を均一かつ緻密化する。それにより、電解質塩の分散不良に伴う不均一な放電の発生を防止することができる。グラフトコポリマーの量は(A)に対して1〜15重量%に設定することで分散状態を緻密化させることができる。
また、熱可塑性樹脂(A)を高硬度の熱可塑性樹脂(B)とブレンドした場合にも、このグラフトコポリマーが相溶化剤として機能を果たす。主鎖のポリカーボネート樹脂は有極性基、ジオキシ基の鎖をもつ分子構造のため、分子間引力が非常に強い。このため、力学的強度・クリープ特性などに優れ、特に衝撃強度は他プラスチックと比較してずばぬけて優れている。また比較的低吸水であるため、吸水変動に伴う体積変動が少ない。これらの特性により、グラフトコポリマーの主鎖としてポリカーボネート樹脂を使用した系では、使用時の機械的・電気的ストレス・経時や環境での体積変動によるクラックが生じ難い。
更に、側鎖のアクリロニトリル成分及びスチレン成分は、(B)との相溶性が良好である。そのため、(C)のグラフトコポリマーは、(A)(B)間の親和性が低い場合でも、相溶化剤として機能し、(A)(B)の分散状態を均一かつ緻密化する。それにより、(A)(B)の分散不良に伴うウェルド部の導電ムラや、使用時の電気的・機械的ストレスや経時・環境での体積変動により抵抗調整層のウェルド部分に発生するクラックを抑制することができる。その結果、主鎖の効果と合わせて強度的に優れた混練系の樹脂組成物を形成することができる。
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。抵抗調整層としての導電性支持体上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体に上記半導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
導電性支持体106上に電気抵抗調整層104のみを形成して帯電部材101を構成すると、電気抵抗調整層104にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層104に表面層105を形成することで、防止することができる。
表面層105の抵抗値は、電気抵抗調整層104のそれよりも大きくなるように形成され、それによって像担持体61欠陥部への電圧集中、過剰な放電(リーク)を回避することができる。ただし、表面層105の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層105と電気抵抗調整層104との抵抗値の差は、3オーダー以下にすることが好ましい。
表面層105を形成する材料としては、製膜性が良好であるという点で熱可塑性樹脂組成物が好適である。特に、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また、樹脂材料は電気的に絶縁性であるため樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の抵抗を調整する。また表面層の抵抗調整層上への形成は、上記表面層構成材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行なう。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
表面層105の材料は、1液性、2液性どちらも使用可能であるが、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることが出来る。2液性塗料の場合、塗膜を加熱することにより、樹脂を架橋・硬化させる方法が一般的である。しかしながら、抵抗調整層は熱可塑性樹脂のため、高い温度で加熱することができない。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることことが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂でトナーの非粘着性が高い樹脂であることを確認し、特に、分子中にアクリル骨格を有するアクリルシリコーン樹脂が良好である。
帯電部材101は電気特性が重要であるため、表面層105を導電性にする必要がある。導電性の形成方法は、樹脂材料中に導電剤を分散することにより可能である。導電性としては、特に制約を受けるものではなく、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。また、導電性付与材として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等の有機イオン性導電性物質がある。
(画像形成装置)
図9は、本発明の導電性部材評価装置及び導電性部材評価方法で評価される導電性部材である帯電部材を備えた帯電装置及びプロセスカートリッジを用いる画像形成装置の構成を示す概略図である。図10は、図9の画像形成装置の画像形成部の構成を示す概略図である。図11は、帯電装置及び、プロセスカートリッジの構成を示す概略図である。プロセスカートリッジとは、少なくとも、像担持体61と帯電装置100、クリーニング装置64を含むものであり、図11に示すように、現像装置63が含まれる場合もある。プロセスカートリッジは、それ自体が一体で画像形成装置に着脱自由なものである。
この画像形成装置1は、表面に感光層を有するドラム状であってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応する分の個数分の像担持体61と、各像担持体61をほぼ一様に帯電する帯電装置100と、帯電された像担持体61にレーザ光で露光して静電潜像を形成する露光装置70と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像剤を収容し、像担持体61上の静電潜像に対応するトナー像を形成する現像装置63と、像担持体61上のトナー像を転写する1次転写装置62と、像担持体61上のトナー像が転写されるベルト状の中間転写体50と、中間転写体50のトナー像を転写する2次転写装置51と、中間転写体50のトナー像が転写される記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置80と、さらに、像担持体61上に転写後残留するトナーを除去するクリーニング装置64とを備える。記録媒体は、記録媒体を収納する給紙装置21、22のひとつから、1枚ずつ搬送経路を搬送ローラでレジストローラ23まで搬送され、ここで、像担持体61上のトナー像と同期を計って転写位置に搬送される。
図9に示すように、画像形成装置1における露光装置70は、帯電装置100により帯電された像担持体61に光を照射して、光導電性を有する像担持体61上に静電潜像を形成する。光Lは、蛍光灯、ハロゲンランプ等のランプ、LED、LD等の半導体素子によるレーザ光線等であっても良い。ここでは、図示しない画像処理部からの信号により像担持体61の回転速度に同期して照射される場合は、LDの素子を用いる。
現像装置63は、現像剤担持体を有し、現像装置63内に貯蔵されたトナーを供給ローラで攪拌部に搬送されて、キャリアを含む現像剤と混合・攪拌され、像担持体61に対向する現像領域に搬送される。このときに、正又は負極性に帯電されたトナーは、像担持体61の静電潜像に転移して現像される。現像剤は、磁性又は非磁性の一成分現像剤又はこれらを併せて使用するものであっても良いし、湿式の現像液を用いるものであっても良い。
1次転写装置62は、像担持体61上の現像されたトナー像を中間転写体50の裏側からトナーの極性と反対の極性の電場を形成して、中間転写体50に転写する。1次転写装置62は、コロトロン、スコロトロンのコロナ転写器、転写ローラ、転写ブラシのいずれの転写装置であっても良い。その後、給紙装置22から搬送されてくる記録媒体と同期させて、再度2次転写装置51による転写で記録媒体上にトナー像を転写する。ここで、最初の転写が中間転写体50ではなく、記録媒体に直接転写する方式であっても良い。
定着装置80は、記録媒体上のトナー像を、加熱及び又は加圧して記録媒体上にトナー像を固定して定着させる。ここでは、1対の加圧・定着ローラの間を通過させ、このときに熱・圧力をかけて、トナーの結着樹脂を溶融しながら定着させる。定着装置80は、ローラ状ではなく、ベルト状であっても良いし、ハロゲンランプ等で熱照射により定着させるものであっても良い。像担持体61のクリーニング装置64は、転写されずに像担持体61上に残留したトナーをクリーニングして除去し、次の画像形成を可能にする。クリーニング装置64は、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等のいずれの方式であっても良い。
以下、画像形成装置1の動作について説明する。読み取り部30は、原稿搬送部36の原稿台上に原稿をセットするか、又、原稿搬送部36を開いてコンタクトガラス31上に原稿をセットし、原稿搬送部36を閉じて原稿を押さえる。そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿搬送部36に原稿をセットしたときは原稿をコンタクトガラス31上へと搬送して後、他方コンタクトガラス31上に原稿をセットしたときは直ちに、第1読み取り走行体及び第2読み取り走行体32、33を走行する。そして、第1読み取り走行体32で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2読み取り走行体33に向け、第2読み取り走行体33のミラーで反射して結像レンズ34を通して読取りセンサであるCCD35に入れ、画像情報を読み取る。読み取った画像情報をこの制御部に送る。制御部は、読み取り部30から受け取った画像情報に基づき、画像形成部60の露光装置70内に配設された図示しないLD又はLED等を制御して像担持体61に向けて、書き込みのレーザ光Lを照射させる。この照射により、像担持体61の表面には静電潜像が形成される。
給紙部20は、多段に備える給紙カセット21から給紙ローラにより記録媒体を繰り出し、繰り出した記録媒体を分離ローラで分離して給紙路に送り出し、画像形成部60の給紙路に記録媒体を搬送ローラで搬送する。この給紙部20以外に、手差し給紙も可能となっており、手差しのための手差しトレイ、手差しトレイ上の記録媒体を手差し給紙路に向けて一枚ずつ分離する分離ローラも装置側面に備えている。レジストローラ23は、それぞれ給紙カセット21に載置されている記録媒体を1枚だけ排出させ、中間転写体50と2次転写装置51との間に位置する2次転写部に送る。画像形成部60では、読み取り部30から画像情報を受け取ると、上述のようなレーザ書き込みや、現像プロセスを実施させて像担持体61上に潜像を形成させる。
現像装置63内の現像剤は、図示しない磁極により汲み上げて保持され、現像剤担持体上に磁気ブラシを形成する。さらに、現像剤担持体に印加する現像バイアス電圧により像担持体61に転移して、その像担持体61上の静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。現像バイアス電圧は、交流電圧と直流電圧を重畳させている。次に、トナー像に応じたサイズの記録媒体を給紙させるべく、給紙部20の給紙ローラのうちの1つを作動させる。また、これに伴なって、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成ユニットでその像担持体61を回転して像担持体61上にそれぞれ、ブラック・イエロー・マゼンタ・シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成トナー像を形成する。
一方、給紙部20の給紙ローラの1つを選択回転し、給紙カセット21の1つから記録媒体を繰り出し、分離ローラで1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラで画像形成装置1の画像形成部60内の給紙路に導き、この記録媒体をレジストローラ23に突き当てて止める。そして、中間転写体50上の合成トナー像にタイミングを合わせてレジストローラ23を回転し、中間転写体50と2次転写装置51との当接部である2次転写部に記録媒体を送り込み、この2次転写部に形成されている2次転写バイアスや当接圧力などの影響によってトナー像を2次転写して記録媒体上にトナー像を記録する。ここで、2次転写バイアスは、直流であることが好ましい。画像転写後の記録媒体は、2次転写装置の搬送ベルトで定着装置80へと送り込み、定着装置80で加圧ローラによる加圧力と熱の付与によりトナー像を定着させた後、排出ローラ41で排紙トレイ40上に排出する。
ここで、導電性部材が帯電部材として用いられる場合について、帯電装置100で詳細に説明する。
帯電装置100は、像担持体61に対向し、微少間隙Gを設けて配設される帯電部材101と、帯電部材を清掃するクリーニング部材102と、帯電部材101に電圧を印加する不図示の電源と、帯電部材101を像担持体に61に加圧して接触させる不図示の加圧スプリングとを少なくとも備える。または、帯電部材101は、両端をギア又は軸受で回転可能に支持されていても良い。
図10、図11に基づいて説明すると、像担持体61の表面は画像形成領域が非接触で配置された帯電部材101により一様に帯電され、画像(潜像)形成後に現像によって可視化され、トナー像が記録媒体に転写される。記録媒体に転写されずに像担持体61上に残ったトナーは、補助クリーニング部材64dによって回収される。その後、像担持体61の表面へのトナー及び、トナー構成材料の付着を防止するために、固体潤滑剤64aを塗布部材64bで像担持体61上に一様に塗布し滑剤層を形成する。その後、クリーニング部材64cで、補助クリーニング部材64dで回収しきれなかったトナーを回収し排トナー回収部へ搬送する。補助クリーニング部材64dは、ローラ形状、ブラシ形状があり、固体潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン等、像担持体上の摩擦係数を低減して、非粘着性を付与できるものであれば良い。クリーニング部材はシリコーン、ウレタン等のゴムによるブレード、ポリエステル等の繊維によるファーブラシ等が挙げられる。
帯電装置100は、帯電部材101の汚染を除去するためのクリーニング部材102を備える。クリーニング部材102の形状は、ローラ状、パッド形状でもよいが、本発明ではローラ形状とした。クリーニング部材102は、帯電装置100の図示しないハウジングに設けられる軸受に嵌合され、回転可能に軸支される。このクリーニング部材102は、帯電部材101に当接して、外周面をクリーニングする。帯電部材101の表面にトナー、紙粉、部材の破損物等の異物が付着すると、電界が異物部分に集中するために優先的に放電が生ずる異常放電を起こす。逆に、電気的絶縁性の異物が広い範囲に付着すると、その部分では放電が生じないために、像担持体61に帯電斑が生ずる。このために、帯電装置100には帯電部材101の表面をクリーニングするクリーニング部材102を設けることが好ましい。クリーニング部材102としては、ポリエステル等の繊維によるブラシ、メラミン樹脂等の多孔質(スポンジ)のようなものを用いることができる。クリーニング部材は、帯電部材に連れ回り、線速差を持って回転、離間して間欠等の形式で回転させても良い。
本構成例においては、補助クリーニング部材64dはブラシローラ、滑剤はステアリン酸亜鉛をブロック状に形成し、塗布部材であるブラシローラに、バネ等の加圧部材で加圧することにより、塗布ローラで固体潤滑剤ブロックから削り取った固体潤滑剤を像担持体へ塗布するような構成である。クリーニング部材64cはウレタンブレードを用いカウンター方式とした。また、帯電部材のクリーニング部材102は、メラミン樹脂のスポンジローラを用いて、帯電部材101と連れ回りで回転させる方式とすることにより、帯電部材101の表面の汚れを良好にクリーニングできる。
また、帯電装置100は、帯電部材101に電圧を印加する電源を備える。電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧が好ましい。帯電部材101の層構成が不均一な部分がある場合には、直流電圧のみを印加すると像担持体61の表面電位が不均一になることがある。重畳した電圧では、帯電部材101表面が等電位となり、放電が安定して像担持体61を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を像担持体61の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電部材101に直流のみを印加した場合に像担持体61が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、像担持体61から帯電部材101への逆放電が生じ、そのならし効果で像担持体61をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は像担持体の周速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
(本発明の検証)
本発明者らは、画像形成装置を用いて画像形成したときに局所的な濃度ムラが生じる良好でない帯電ローラ101(以下、帯電ローラXという)と、局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ101(以下、帯電ローラYという)と、を作製して、これら帯電ローラX、帯電ローラYに対して以下の各実施例、各比較例に示す評価方法による評価を行った。そして、その評価結果と、実際に形成した画像の評価結果とを比較して、上述した本発明によって導電性部材の評価が正しく行えるかを検証した。
検証には、以下の構成の帯電ローラを使用した。
(帯電ローラX)
ステンレスからなる導電性支持体(外径8mm)に、以下のA、B、Cを220℃で溶融混練した樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10^8Ωcm)を、射出成形により被覆して電気抵抗調整層(全長300mm)を形成した。
A:IRGASTAT P18(チバスペシャルティケミカルズ製)60重量部
(以上、ポリアミドエラストマー、Aは過塩素酸塩類含有)
B:ABS樹脂(デンカABS GR−3000、電気化学工業製)40重量部
A、Bの混合物100重量部に対して、
C:ポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体
(モディパーC L440−G、日本油脂製)4.5重量部
(グラフトコポリマー)
次いで、切削加工によって、電気抵抗調整層の外径を12.7mmに同時仕上げを行なった。
次いで、電気抵抗調整層の表面に、アクリル変性シリコーン樹脂(ムキコート3000VH、川上塗料社製)とイオン導電剤(PEL20A、日本カーリット社製)、イソシアネート樹脂(T4硬化剤、川上塗料社製)の混合物からなる塗料を酢酸ブチル、トルエン、MEKからなる希釈溶剤で希釈後、スプレー塗装により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、帯電ローラXを得た。
(帯電ローラY)
帯電ローラXで用いた上記A、B、Cを溶融混練した樹脂組成物を押出成形してチューブ状の成形品(内径9.8mm)を作製し、そして、当該成形品にステンレスからなる導電性支持体(外径10mm)を圧入して電気抵抗調整層を形成した。
次いで、帯電ローラXと同様に、切削加工によって、電気抵抗調整層の外径を12.7mmに同時仕上げを行なった。
次いで、帯電ローラXと同様に、電気抵抗調整層の表面に、アクリル変性シリコーン樹脂(ムキコート3000VH、川上塗料社製)とイオン導電剤(PEL20A、日本カーリット社製)、イソシアネート樹脂(T4硬化剤、川上塗料社製)の混合物からなる塗料を酢酸ブチル、トルエン、MEKからなる希釈溶剤で希釈後、スプレー塗装により膜厚約10μmの表面層を形成し、焼成工程を経て、帯電ローラYを得た。
(実施例1)
測定環境23℃、50%RHの大気中において、画像形成に用いていない通電前(即ち、初期状態)の帯電ローラX、帯電ローラYを帯電ローラ101として、図1に示す導電性部材評価装置200に取り付けた。そして、帯電ローラ101の外周面101aに第1電極211(電極211A、211B:外径10mm、厚さ4mm)を当接させて接続し、帯電ローラ101の導電性支持体106に第2電極221と接続し、帯電ローラ101及び第1電極211をそれぞれ線速度40mm/secで互いに反対方向に回転させた。そして、この状態で、電源部205(10/10B、トレック・ジャパン製)から第1電極211と第2電極221との間に直流電圧Vdc=−0.7kV、ピーク間電圧(交流電圧)Vpp=1.0kV、周波数f=300Hzの電圧(即ち、評価電圧)を印加した。そして、電源部205のモニタリング端子に測定部206(USB型データ収集システムNR−2000、キーエンス製)を接続して10kHzのサンプリングレートで電源部205が出力する電圧値と電流値(即ち、評価電圧と評価電流)の測定(サンプリング)を行った。そして、制御部207において、測定部206で測定した評価電圧と評価電流に関するデータ(情報)を取り込み、この評価電流に含まれる交流成分の極小値を取得した。そして、帯電ローラ101が1回転する期間(回転周期T1)における極小値の最大値と最小値の差分値Dを算出した。そして、第1電極211を帯電ローラ101の軸方向に移動して、この差分値Dの算出を、帯電ローラ101の外周面101aにおける軸方向の全ての部分(即ち、外周面101aの全体)について行い、差分値Dと予め定められた差分基準値Dtとを比較して、全ての差分値Dが差分基準値Dt以下のとき、局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ101と判定し、1つでも差分値Dが差分基準値Dtより大きいとき、局所的な濃度ムラが生じる良好でない帯電ローラ101と判定するものとして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(実施例2)
ピーク間電圧をVpp=1.5kVとした以外は、上記実施例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(実施例3)
ピーク間電圧をVpp=2.2kVとした以外は、上記実施例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(実施例4)
直流電圧をVdc=0.7kVとし、評価電流に含まれる交流成分の極大値を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(実施例5)
図9に示した画像形成装置を改造した加速試験装置を用いて、23℃、50%RHの環境で、通紙無し状態での通電空回し試験を120時間(150,000枚の複写に相当)実施したあと(即ち、通電後)の帯電ローラX、帯電ローラYに対して、実施例1と同様の測定を行った。
(比較例1)
測定環境23℃、50%RHの大気中において、図14のように、静止状態の帯電ローラ101の外周面101aに軸方向に沿って複数の棒状の導電性ゴム電極を接触させ、これら複数の電極と、導電性支持体106に接続された電極との間に直流電圧を印加した状態で抵抗測定を行なった。帯電ローラ101には、デジタル超高抵抗/微少電流計(R8340A、アドバンテスト製)から0.1kVの直流電圧を印加して、15秒後の値からローラ抵抗値を算出した。そして、この抵抗値を、予め定められた抵抗基準値と比較して、抵抗値が抵抗基準値以下のとき、局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ101と判定し、抵抗値が抵抗基準値より大きいとき、局所的な濃度ムラが生じる良好でない帯電ローラ101と判定するものとして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(比較例2)
0.7kVの直流電圧を印加した以外は、上記比較例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(比較例3)
直流電圧Vdc=−0.7kV、ピーク間電圧Vpp=2.2kV、周波数f=300Hzの電圧を印加した以外は、上記比較例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(比較例4)
直流電圧をVdc=0.7kV、ピーク間電圧をVpp=0V、周波数をf=0Hzとした(つまり、直流電圧Vdcのみ印加)以外は、上記実施例1と同様にして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(比較例5)
測定環境23℃、50%RHの大気中において、画像形成に用いていない通電前の帯電ローラX、帯電ローラYを帯電ローラ101として用いて、この帯電ローラ101を外径40mm、全長320mmの感光体と平行に配置して互いに当接させ、それぞれを線速度282mm/secで互いに逆方向に回転させた。そして、この状態で、高圧電源(10/10B、トレック・ジャパン製)から帯電ローラ101に直流電圧Vdc=−0.7kV、ピーク間電圧Vpp=2.2kV、周波数f=2.2kHzの電圧(即ち、評価電圧)を印加した。そして、高圧電源のモニタリング端子にUSB型データ収集システム(NR−2000、キーエンス製)を接続して200kHzのサンプリングレートで高圧電源が出力する電圧値と電流値(即ち、評価電圧と評価電流)の測定(サンプリング)を行った。そして、PC(パソコン)において、USB型データ収集システムで測定した評価電圧と評価電流に関するデータ(情報)を取り込み、評価電流における帯電ローラ101が1回転する期間における電流波形面積を算出した。そして、この電流波形面積を、予め定められた面積基準値と比較して、電流波形面積が面積基準値以上のとき、局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ101と判定し、電流波形面積が面積基準値より小さいとき、局所的な濃度ムラが生じる良好でない帯電ローラ101と判定するものとして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
(比較例6)
測定環境23℃、50%RHの大気中において、画像形成に用いていない通電前の帯電ローラX、帯電ローラYを帯電ローラ101として用いて、この帯電ローラ101を外径40mm、全長320mmの感光体と平行に配置して互いに当接させ、それぞれを線速度282mm/secで互いに逆方向に回転させた。そして、この状態で、高圧電源(10/10B、トレック・ジャパン製)から帯電ローラ101に直流電圧Vdc=−0.7kV、ピーク間電圧Vpp=2.2kV、周波数f=2.2kHzの電圧(即ち、評価電圧)を印加した。そして、高圧電源のモニタリング端子にUSB型データ収集システム(NR−2000、キーエンス製)を接続して200kHzのサンプリングレートで高圧電源が出力する電圧値と電流値(即ち、評価電圧と評価電流)の測定(サンプリング)を行った。そして、PC(パソコン)において、USB型データ収集システムで測定した評価電圧と評価電流に関するデータ(情報)を取り込み、評価電圧の直流電圧Vdc及び評価電流の0Aをそれぞれの中心値としたときの、評価電圧と評価電流との立ち上がり位相差α1及び立ち下がり位相差α2を算出し、そして、立ち上がり位相差α1と立ち下がり位相差α2との差(即ち、測定値)を求めた。そして、この差を、予め定められた基準値と比較して、この差が基準値以下のとき、局所的な濃度ムラが生じない良好な帯電ローラ101と判定し、この差が基準値より大きいとき、局所的な濃度ムラが生じる良好でない帯電ローラ101と判定するものとして、上記帯電ローラX、帯電ローラYの評価を行った。
また、上述した各実施例、各比較例における評価とは別に、帯電ローラX、帯電ローラYを上述した画像形成装置に組み込んで所定濃度のベタ画像を形成し、このベタ画像を目視によって評価した。そして、帯電ローラXについては、局所的な濃度ムラのない良好画像が形成され、帯電ローラYについては、局所的な濃度ムラのある不良画像が形成された、という評価結果を得た。
そして、上述した各実施例、各比較例における帯電ローラX、帯電ローラYの評価結果と、これら帯電ローラX、帯電ローラYを用いて実際に形成した画像評価結果と、を比較して、以下の判定基準に基づいて、各実施例、各比較例の判定を行った。
画像評価との対応の判定基準
○ : 帯電ローラの評価結果と、画像評価結果と、が一致した。
× : 帯電ローラの評価結果と、画像評価結果と、が不一致だった。
総合評価の判定基準
○ : 局所的な濃度ムラについて帯電ローラの良否を正しく評価できる。
× : 局所的な濃度ムラについて帯電ローラの良否を正しく評価できない。
上記各実施例、各比較例の評価構成等をそれぞれ比較した表を表1、2に示し、上記各実施例、各比較例における判定結果を表3に示す。
上記各表に示された判定結果により、以下の事項が明らかとなった。静止状態の帯電ローラに電極を当てて抵抗値を測定する従来の評価方法(比較例1、2、3)では、印加する電圧が、直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧のいずれかに関わらず、帯電ローラX、帯電ローラYの良否を正しく評価することができなかった。特に、比較例1では、帯電ローラYについて電極を当てる位置を変えても、抵抗値の差異(即ち、電気特性の局所的な差異)は検出できなかった。検出できなかった原因の一つとして、一方の電極を帯電ローラの外周面の局所的な一部に当接させていないことが考えられる。また、比較例2、3では、静止状態の帯電ローラに高電圧を印加したため、局所的にリーク電流が発生してしまい、放電破壊により測定不可能であった。
比較例4では、実施例1と同様に、第1電極211を帯電ローラ101の外周面101aの局所的な一部に当接させて、直流電圧を印加するとともに、当接部分が外周面の周方向に沿って移動するようにして電流値を測定するものであったが、帯電ローラXと帯電ローラYとで、測定した評価電流の波形に顕著な差異が生じなかった。これについては、実際の帯電処理では帯電ローラ101に交流成分を含む電圧が印加されるので、電気特性として交流に対して抵抗となるリアクタンスについても考慮する必要があると考えられるが、比較例4のように直流電圧を印加した場合には、リアクタンスについて確認することができず、そのため、直流電圧のみ印加する評価方法では、帯電ローラX、帯電ローラYの良否を正しく評価することができないと考えられる。
比較例5、6では、帯電ローラの軸方向の全体にわたる放電によって該帯電ローラと感光体との間を流れる電流値に基づいて評価を行うものであるので、帯電ローラの外周面の局所的な一部についてのみ放電させることができず、帯電ローラの外周面の軸方向全体についての評価になってしまった。そのため、帯電ローラXと帯電ローラYとで、測定した電流波形面積及び評価電圧と評価電流との位相差に、顕著な差異が生じず、帯電ローラX、帯電ローラYの良否を正しく評価することができなかった。
一方、実施例1〜5では、各実施例における評価結果と、画像に基づく評価結果とが正確に一致した。参考として、図12、図13に、実施例1において、帯電ローラXと帯電ローラYとについて取得した極小値の波形を示す。図12に示すように、帯電ローラXについては、外周面の全体で極小値の変動が小さく、良好な電気特性を示す波形が得られたが、帯電ローラYについては、外周面の部分によって極小値が大きく変動してしまい、不良な電気特性を示す波形が得られた。また、実施例2〜4によって、評価電圧にふくまれる直流成分の電圧値(Vdc)を正負反転(−0.7V又は0.7V)させても、又は、交流成分の振幅(Vpp)を変化(1.0kV〜2.2kV)させても、評価結果には影響がないことが判った。また、実施例5によって、初期状態の帯電ローラ及び通電後の帯電ローラのいずれにおいても、正確に評価できることが判った。
上記検証からも、本発明に係る導電性部材評価装置及び導電性部材評価方法によれば、導電性部材としての帯電ローラ101の評価を正確に行うことができることが明らかとなった。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。