しかしながら、上記特許文献1で提案されている技術では、累積損傷度から過剰間隙水圧比を算出する際とせん断剛性を算出する際に、それぞれ地盤が液状化に至る際に発生し得るサイクリック・モビリティを考慮していない単一の演算式を用いており、必ずしも高精度な地震応答解析を行うことができるとは言えない、という問題点があった。
すなわち、サイクリック・モビリティの状態下では、繰り返し荷重を作用させると履歴曲線を描きながら徐々にひずみ振幅が大きくなっていく。ここで、せん断応力とせん断ひずみの関係では、一例として図25に示すような履歴となる。
同図に示すように、当該履歴では、滑るようにせん断ひずみが大きく変化する領域と、せん断剛性が回復しながらせん断応力が増加していく領域があり、実現象では、液状化した地盤はサイクリック・モビリティによりせん断剛性が回復するため、液状化に至った時点においても当該せん断剛性が0(零)になることはない。
これに対し、上記特許文献1で提案されている技術において累積損傷度から過剰間隙水圧比を算出する際に用いている演算式では、累積損傷度が1.0となる場合は過剰間隙水圧比が1.0となるものとされており、更に、特許文献1で提案されている技術においてせん断剛性を算出する際に用いている演算式では、過剰間隙水圧比が1.0となる結果、せん断剛性Gが0(零)になるものとされており、サイクリック・モビリティが発生する際の実現象を十分に表すものとはなっていない。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、高精度な地震応答解析を行うことのできる地震応答解析装置、地震応答解析方法及び地震応答解析プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る地震応答解析装置は、基本構成として、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行う地震応答解析装置であって、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出し、前記サイクリック・モビリティに移行した後は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0未満となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出する導出手段を備えている。
この構成では、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性が用いられて地震応答解析が行われる。
ここで、この構成では、導出手段により、前記過剰間隙水圧比が、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出される。
このように、この構成によれば、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行うに際し、前記過剰間隙水圧比を、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出しているので、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる。
ところで、前述したように、実現象では、液状化した地盤はサイクリック・モビリティによりせん断剛性が回復するため、液状化に至った時点においても当該せん断剛性が0(零)になることはない。
そこで、前記導出手段は、前記サイクリック・モビリティに移行する前は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出し、前記サイクリック・モビリティに移行した後は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0未満となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出している。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
ところで、一例として図12に示すように、本発明者による検討の結果、上記特許文献1において累積損傷度から過剰間隙水圧比を算出する際に用いられている演算式による演算結果と、実際の試験結果とでは、地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前までは高精度で一致するが、サイクリック・モビリティに移行した後は精度が大幅に低下することが判明した。
そこで、前記導出手段は、前記サイクリック・モビリティに移行する前は、Dを累積損傷度とし、αを地盤特性に応じて予め定められた定数として、次の(1)式により過剰間隙水圧比ruを導出し、
前記サイクリック・モビリティに移行した後は、DCMをサイクリック・モビリティが開始するときの累積損傷度Dとし、ru(D=DCM)を累積損傷度Dが累積損傷度DCMと等しいときの過剰間隙水圧比ruとし、mを地盤特性に応じて予め定められた定数として、次の(2)式により過剰間隙水圧比ruを導出するものとしてもよい。
なお、(1)式は特許文献1でも適用されている従来既知の演算式である。また、(2)式は本発明の発明者による各種試験の結果得られた演算式である。
このように、サイクリック・モビリティに移行する前後で過剰間隙水圧比の演算式を切り換えることで、一例として図13に示すように、より忠実に実現象を再現することのできる過剰間隙水圧比を算出できることになる。
このように、この構成によれば、忠実に実現象を再現することのできる過剰間隙水圧比を算出できるので、この結果として、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
ところで、本発明の発明者による更なる検討の結果、(1)式では実現象を十分には表していない場合があることが判明した。
すなわち、一例として図14に示されるように、サイクリック・モビリティに移行する前の過剰間隙水圧比ruは、累積損傷度Dの初期部分(累積開始部分)において急激に増加するが、その中間部分では直線的に増加する場合が多い。これに対し、(1)式は当該直線部分を表現することができるものとなっていないため、実現象を十分に表すことができない場合があるのである。
そこで、本発明者の発明者は(1)式を次の(3)式のように改良し、この(3)式の妥当性について検討した。なお、(3)式におけるβ及びlは地盤特性に応じて予め定められる定数である。
(3)式における(1)式に対して新たに追加した部分((B+β)/(1+β)の部分)により、過剰間隙水圧比ruの急激な変化と平坦な状態の増加を考慮することができる。
(3)式のA部分は(1)式にも設けられている部分で、曲線の非対称性を表しており、定数αが大きくなるほど過剰間隙水圧比ruの初期に上昇する割合が増える。これに対し、(3)式のB部分は図15に示される形状を示す関数であり、累積損傷度Dが0(零)付近、又は1付近における累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係の勾配の変化を調節することができる部分である。具体的には、定数lを大きくするほど当該勾配が急激に変化する。また、B部分の重みを調節することにより、中央部分の平坦な部分(過剰間隙水圧比ruが直線的に増加する部分)の勾配の調節が可能となる。具体的には、当該平坦な部分の勾配は定数βが0(零)で水平となり、大きくなるに従って(1)式に近づくことになる。
ここで、本発明の発明者は、(3)式を用いた過剰間隙水圧比ruの履歴と、様々な試験によって得られた過剰間隙水圧比ruの履歴との間の変相線までの誤差の2乗和が最小になるように、各試験結果について定数α,β,lを求めた結果、定数βと定数lの変化は小さく、定数αが解析対象とする地盤の相対密度Drと関連していることを見出した。なお、ここで行った試験は、北海道石狩市及び神戸市ポートアイランドで凍結サンプリング法またはトリプルチューブサンプリング法により採取した土の試験体を地盤工学会が定める「JGS0541 土の繰り返し非排水三軸試験方法」および「JSG0543 土の変形特性を求めるための中空円筒供試体による繰り返しねじれせん断試験方法」に準じた非排水中空ねじれ試験方法により実施したものであり、以下、当該試験によって得られた結果(データ)を参照しつつ説明する。ここで、‘FS’で始まる表記に対応するデータは北海道石狩市で採取した試験体のものであり、‘P’で始まる表記に対応するデータは神戸市ポートアイランドで採取した試験体のものである。
まず、相対密度Drの異なる2つの事例の試験結果について、全ての定数を最適にしたとき(誤差を最小としたとき)の累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係例を図16に示すと共に、その定数を次の表1に示す。
ここで、曲線の形状を示す定数l及び定数βを平均的な値であるβ=2.0,l=5.0とし、定数αを変化させて試験結果との変相線までの誤差の2乗和が最小となるように、各試験結果について定数αを求めた。この場合の累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係を図17に示すと共に、その定数を次の表2に示す。
そして、この定数αと相対密度Drとの関係を調べた結果、図18に示すように強い相関関係が認められた。
この相関関係を3次式で誤差の2乗和が最小となるようにデータフィッティングを行った結果、次の(4)式が得られた。これにより、累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係は、相対密度Dr(%)を係数とする関数で表されることになる。
図19には、(4)式による定数αの算出結果と、試験によって得られた累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係から近似した定数αの値が示されている。同図に示されるように、(4)式により定数αを高精度に近似できることが分かる。
次に、(3)式の妥当性について検討した。
(3)式を用いた場合の異なる定数αによる累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係の一例を図20に示す。なお、ここで、定数αは、相対密度Dr=45.5%及び64.8%のときの値を(4)式により求めて適用した。この結果、比較的緩い砂に対しては処女載荷の影響が小さく、比較的密な砂では処女載荷の影響が大きくなり、累積損傷度Dが比較的小さいときに過剰間隙水圧比ruが大きく増加する曲線が得られた。
一方、本発明の発明者による更なる検討の結果、(2)式においても実現象を十分には表していない場合があることが判明したため、(2)式を次の(5)式のように改良し、この(5)式について検討を行った。
図21には、(3)式〜(5)式による、α=0.61(相対密度Dr=48%)であるときの累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係が示されている。なお、このときの累積損傷度DCMは0.22である。
また、図22には、各種試験結果と、(3)式及び(5)式を適用した場合の累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係を示すグラフが示されている。なお、ここでは、定数αを対応する試験結果より(4)式により算出して適用した。
これらのグラフに示されるように、(3)式〜(5)式によって実現象を高精度に再現することができる。
以上の検討に基づいて、前記導出手段は、前記サイクリック・モビリティに移行する前は、過剰間隙水圧比が0から所定値に至るまでの第1期間と、当該第1期間の終了時より所定期間経過したときからサイクリック・モビリティが開始するときに至るまでの第2期間と、を除く中間期間の間、累積損傷度が増加するに従って過剰間隙水圧比が直線的に増加するように算出されると共に前記中間期間の長さを変更することのできる演算式により過剰間隙水圧比を導出するものとしてもよい。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、前記導出手段は、前記サイクリック・モビリティに移行する前は、Dを累積損傷度とし、α,β,lを地盤特性に応じて予め定められた定数として、上記(3)式により過剰間隙水圧比ruを導出し、前記サイクリック・モビリティに移行した後は、DCMをサイクリック・モビリティが開始するときの累積損傷度Dとし、ru(D=DCM)を累積損傷度Dが累積損傷度DCMと等しいときの過剰間隙水圧比ruとし、mを地盤特性に応じて予め定められた定数として、上記(5)式により過剰間隙水圧比ruを導出するものとしてもよい。これによっても、忠実に実現象を再現することのできる過剰間隙水圧比を算出できるので、この結果として、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
更に、前述したように、前記定数αを、解析対象とする地盤の相対密度に基づいて決定するものとしてもよい。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、前記定数αを、前記相対密度をDrとして上記(4)式により導出するものとしてもよい。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
ところで、一例として図25を参照して説明したように、サイクリック・モビリティの状態下では、せん断応力とせん断ひずみの関係の履歴において、滑るようにせん断ひずみが大きく変化する領域と、せん断剛性が回復しながらせん断応力が増加していく領域があるが、更に、同図に示されるように、繰り返し載荷を行う度に滑る領域γCMが広がり、せん断剛性の回復速度も遅くなり、せん断ひずみの振幅が次第に大きくなる現象を示す。
そこで、上記目的を達成するために、請求項1記載の地震応答解析装置は、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行う地震応答解析装置であって、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が小さくなり、サイクリック・モビリティに移行した後はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が大きくなるように予め定められた関数によりせん断剛性を導出する導出手段、を備えている。
これにより、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記導出手段が、σm’を平均有効応力とし、σm0’を初期平均有効応力とし、nを地盤特性に応じて予め定められた定数とし、G0を拘束圧にもひずみにも依存しないせん断剛性とし、G0 *をひずみの変化に対する初期せん断剛性とし、ruを過剰間隙水圧比とし、γeqを半波の最大せん断ひずみから求められる等価せん断ひずみとし、f(γeq)及びg(γeq)をひずみ依存特性を示す関数とし、次の(6)式を基準式として、
前記サイクリック・モビリティに移行する前は、γrを最大せん断応力を初期せん断剛性G0 *で除算することにより得られる参照ひずみとし、関数f(γeq)及び関数g(γeq)を次の(7)式に示される関数としてせん断剛性Gを導出し、
前記サイクリック・モビリティに移行した後は、bを動的非排水変形試験等の繰り返し載荷試験によって求められた係数とし、γCMを変相線と交差した時刻におけるひずみとし、GCMを変相線と交差する時刻の剛性比で、かつ過剰間隙水圧比ruに依存する剛性比とし、関数f(γeq)及び関数g(γeq)を次の(8)式に示される関数としてせん断剛性Gを導出するものとしてもよい。
なお、(7)式の関数が適用された(6)式は特許文献1でも適用されている従来既知の演算式である。また、(8)式の関数が適用された(6)式は本発明の発明者による各種試験の結果得られた演算式である。
これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
ところで、本発明の発明者による更なる検討の結果、解析対象とする地盤の変相線と交差する時刻の平均有効応力と初期有効応力との比である有効効力比、及び過剰間隙水圧比に基づいて上記剛性比GCMを高精度に導出できることが判明した。
すなわち、変相線と交差する時刻の剛性はG0 *・GCMで表されるが、一例として図23に示されるように、G0 *・GCM/G0と、変相線と交差する時刻の平均有効応力σmp’と初期平均有効応力σm0’の比には明確な相関が見られる。すなわち、せん断剛性G0からの低下率は平均有効応力σmp’の低下率のみの関数となる。これを演算式で近似すると当該演算式は次の(9)式により表すことができる。
なお、x及びx’は地盤特性に応じて予め定められた定数で剛性比全体の大きさを表すものとし、y及びy’は地盤特性に応じて予め定められた定数で曲線の曲がり具合を表すものとし、zは地盤特性に応じて予め定められた定数で有効応力比Rσが零であるときの剛性比を表すものとする。図23に示される実際の地盤では、x=6.5、y=0.16、z=−6.7、x’=0.25、y’=0.16とすることができる。
以上に基づいて、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記剛性比GCMを、解析対象とする地盤の有効応力比及び過剰間隙水圧比に基づいて決定するものとしてもよい。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記剛性比GCMを、前記有効応力比をRσとして上記(9)式により導出するものとしてもよい。これにより、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行う地震応答解析方法であって、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が小さくなり、サイクリック・モビリティに移行した後はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が大きくなるように予め定められた関数によりせん断剛性を導出するものである。
従って、請求項5記載の地震応答解析方法によれば、請求項1記載の発明と同様に作用するので、請求項1記載の発明と同様に、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる。
一方、上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行う地震応答解析プログラムであって、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が小さくなり、サイクリック・モビリティに移行した後はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が大きくなるように予め定められた関数によりせん断剛性を導出する導出ステップをコンピュータに実行させるものである。
従って、請求項6記載の地震応答解析プログラムによれば、コンピュータに対して請求項7記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる。
本発明によれば、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行うに際し、前記せん断剛性を、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出しているので、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる、という効果が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1には、本実施の形態に係る地震応答解析装置10が示されている。地震応答解析装置10は、操作部12、記憶部14、演算部16、及び表示部18を含んで構成されている。
操作部12は、オペレータが表示部18に表示されたメニューに従って所望の解析モデルについての地震応答解析を演算部16に実行させるための指示や必要なパラメータを指定するためのものである。記憶部14は、演算部16において用いられる様々な解析モデルのパラメータや、(1)式、(2)式、(6)式〜(8)式等の地震応答解析に必要な各種演算式が記憶されている。また、記憶部14には、演算部16による地震応答解析の解析結果が格納される。
演算部16は、操作部12からの指示に従って記憶部14から必要なデータを読み出して地震応答解析を行うと共に、出力結果を記憶部14へ記憶し、かつ表示部18へ出力する。
演算部16では、地震応答解析をおおよそ次のようにして行う。すなわち、せん断応力の時刻歴から累積損傷度を求め、累積損傷度から過剰間隙水圧を求め、これによって得られる有効応力から液状化による剛性低下率を得る。そして、せん断応力及びせん断ひずみの振幅の半波毎に、その半波内の最大せん断ひずみによる剛性低下率をそれぞれ求め、これらから、等価なせん断剛性を求め、この剛性(割線剛性)を用いて時刻歴応答解析、すなわち地震応答解析を行う。
なお、地震応答解析は、次式で示される運動方程式を時間積分することにより行う。
ここで、本実施の形態では、時間積分にはNewmark−β法を用い、時間積分に用いる剛性には割線剛性を用いている。
次に、本実施の形態の作用として、演算部16で実行される制御ルーチンについて図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、当該制御ルーチンでは、上述したような時刻歴応答解析(地震応答解析)が従来既知の技術(一例として、本出願人らによる特許文献1で提案されている技術)を利用して行われるが、ここでは、錯綜を回避するために、当該制御ルーチンにおける本発明に特に関係する部分のみについて説明する。
まず、図2のステップ100では、予め指定されたパラメータを用いて従来既知の技術(一例として、特許文献1に記載された技術)を用いて半波内(せん断応力が前回ゼロ線を横切ってから今回ゼロ線を横切るまでの間)の最大せん断応力τmax及び最大せん断ひずみγmaxを算出する。なお、ここで処理対象としている半波を、以下では、「処理対象半波」という。
次のステップ102では、予め記憶部14に記憶された液状化強度曲線と、上記ステップ100において算出された最大せん断応力τmaxを用いて、当該最大せん断応力τmaxにより液状化に至る載荷繰り返し回数Nifを導出し、導出した載荷繰り返し回数Nifから処理対象半波における累積損傷度の増分ΔDを導出する。なお、半波における累積損傷度の増分ΔDは、次の(11)式で示される。
ΔD=1/(2Nif ) (11)
そして、ステップ102では、導出した増分ΔDを、それまでに得られている累積損傷度Dに加算することにより、処理対象半波における累積損傷度Dを算出する。なお、上記液状化強度曲線は、地盤調査における動的非排水変形試験等の繰り返し載荷試験により得られたものを用いることができる。
次のステップ104では、サイクリック・モビリティに移行したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ106に移行する。なお、サイクリック・モビリティに移行したか否かの判定は、応力経路が一旦変相線を越えたか否かを判定することにより行うことができる。
ステップ106では、上記ステップ102において算出された累積損傷度Dを、予め記憶部14に記憶されている(1)式に代入することにより、過剰間隙水圧比ruを算出する。なお、本実施の形態では、(1)式における定数αとして‘0.7’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ108では、予め試験によって得られて記憶部14に記憶されている過剰間隙水圧比ruと初期せん断剛性G0 *との関係を示すテーブル(以下、「剛性低下テーブル」という。)を参照して、上記ステップ106において算出された過剰間隙水圧比ruに対応する初期せん断剛性G0 *を取得する。
次のステップ110では、上記ステップ100において導出された最大せん断ひずみγmaxから求められる等価せん断ひずみγeq(γeq=c・γmax,ここでcは経験値として得られた係数)と、上記ステップ100において導出された最大せん断応力τmaxを初期せん断剛性G0 *で除算することにより得られる参照ひずみγrとを、予め記憶部14に記憶されている(7)式に示される関数f(γeq)に代入することにより、関数f(γeq)の値を導出し、その後にステップ118に移行する。
一方、上記ステップ104において肯定判定となった場合、すなわち、サイクリック・モビリティに移行した場合はステップ112に移行する。
ステップ112では、上記ステップ102において算出された累積損傷度Dと、サイクリック・モビリティが開始するときの累積損傷度DCMと、累積損傷度Dが累積損傷度DCMと等しいときの過剰間隙水圧比ru(D=DCM)を、予め記憶部14に記憶されている(2)式に代入することにより、過剰間隙水圧比ruを算出する。なお、本実施の形態では、(2)式における定数mとして‘3’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ114では、上記剛性低下テーブルを参照して、上記ステップ112において算出された過剰間隙水圧比ruに対応する初期せん断剛性G0 *を取得する。このように、本実施の形態では、本ステップ114及び上記ステップ108において初期せん断剛性G0 *をテーブル変換にて求めるが、これに限らず、せん断剛性G0及び過剰間隙水圧比ruを用いた演算式によって求める形態とすることもできる。
次のステップ116では、上記ステップ100において導出された最大せん断ひずみγmaxから求められる等価せん断ひずみγeqと、予め動的非排水変形試験等の繰り返し載荷試験によって求められ、記憶部14に記憶されている係数bと、変相線と交差した時刻におけるひずみγCMと、変相線と交差する時刻の剛性比で、かつ過剰間隙水圧比ruに依存する剛性比GCMを、予め記憶部14に記憶されている(8)式に示される関数f(γeq),関数g(γeq)に代入することにより、関数f(γeq)及び関数g(γeq)の値を導出し、その後にステップ118に移行する。なお、本実施の形態では、(8)式における係数bとして‘0.7’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
ステップ118では、上記ステップ108又は上記ステップ114の処理によって得られた初期せん断剛性G0 *と、上記ステップ110又は上記ステップ116の処理によって得られた関数f(γeq)及び関数g(γeq)の値(ステップ110の処理では、関数g(γeq)の値は0(零))とを、予め記憶部14に記憶されている(6)式に代入することにより、せん断剛性Gを算出する。なお、本実施の形態では、(6)式における定数nとして‘0.5’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ120では、以上の処理によって導出されたせん断剛性Gを始めとする各種物理量を記憶部14の所定領域に記憶する。
そして、次のステップ122にて、地震時間全体について以上の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ100に戻り、肯定判定となった時点で、本制御ルーチンを終了する。
[実施例]
図3及び図4には、本制御ルーチンにより導出した、サイクリック・モビリティに移行する前後における累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係を示すグラフが、試験により得られたものと共に示されている。なお、同図における一点鎖線が(1)式により算出されたものであり、破線が(2)式により算出されたものであり、実線が試験により得られたものである。
同図に示すように、本制御ルーチンにより導出された累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係は、地震発生時から地震終了時に至るまで試験結果とよく対応しており、本制御ルーチンによって高精度に過剰間隙水圧比ruを導出することができることが分かる。
次に、(6)式〜(8)式を用いたときの実地盤における計算例を以下に示す。
ここで、当該計算には、ポートアイランド地盤を用いた。その材料定数を表3、図5(せん断剛性Gとせん断ひずみγとの関係を示すG−γ曲線及び減衰hとせん断ひずみγとの関係を示すh−γ曲線)、及び図6(液状化強度曲線)に示す。なお、表3におけるVSはせん断波速度を、ργは単位体積重量を、各々表す。また、図5におけるγ50はせん断剛性が半分になるせん断ひずみを、hmaxは減衰係数hの最大値を、各々表す。
また、入力加速度は、図7に示した、兵庫県南部地震(1995年)においてポートアイランド地盤G.L.−83.8mで観測された加速度波形の強軸方向の波を用いた。
計算結果による地表面加速度時刻歴を観測波と比較したものを図8に示す。また、G.L.−4.8m〜−7.4mの過剰間隙水圧比時刻歴を図9に示す。
図9に示されるように、サイクリック・モビリティを考慮しない場合の過剰間隙水圧比は5.8秒付近で0.8から0.99に一気に上昇しているのに対し、サイクリック・モビリティを考慮した場合は5.8秒以降でも若干緩やかな上昇となる。このため、図8に示されるように、地表面加速度時刻歴も一気に低下することなく徐々に低下し、9秒までの応答が観測波とよく対応した結果となっている。
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行うに際し、前記過剰間隙水圧比及び前記せん断剛性の双方を、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出しているので、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる。
また、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出し、サイクリック・モビリティに移行した後は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0未満となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前は(1)式により過剰間隙水圧比を導出し、サイクリック・モビリティに移行した後は(2)式により過剰間隙水圧比を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
また、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が小さくなり、サイクリック・モビリティに移行した後はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が大きくなるように予め定められた関数によりせん断剛性を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、本実施の形態では、(6)式〜(8)式によりせん断剛性Gを導出するものとしているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
[第2の実施の形態]
本第2の実施の形態では、(1)式及び(2)式に代えて(3)式及び(5)式を適用して過剰間隙水圧比ruを導出する場合の形態例について説明する。なお、本第2の実施の形態に係る地震応答解析装置10のハードウェアの構成は、図1に示される上記第1の実施の形態に係るものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本第2の実施の形態に係る地震応答解析装置10では、記憶部14に、演算部16において用いられる様々な解析モデルのパラメータや、(3)式〜(9)式等の地震応答解析に必要な各種演算式が記憶されている。
次に、本第2の実施の形態の作用として、本第2の実施の形態に係る地震応答解析装置10の演算部16で実行される制御ルーチンについて図10に示すフローチャートを参照して説明する。なお、当該制御ルーチンでは、上記第1の実施の形態で説明した時刻歴応答解析(地震応答解析)が従来既知の技術(一例として、本出願人らによる特許文献1で提案されている技術)を利用して行われるが、ここでは、錯綜を回避するために、当該制御ルーチンにおける本発明に特に関係する部分のみについて説明する。
まず、図10のステップ200では、予め指定されたパラメータを用いて従来既知の技術(一例として、特許文献1に記載された技術)を用いて半波内(せん断応力が前回ゼロ線を横切ってから今回ゼロ線を横切るまでの間)の最大せん断応力τmax及び最大せん断ひずみγmaxを算出する。なお、ここで処理対象としている半波を、以下では、「処理対象半波」という。
次のステップ202では、予め記憶部14に記憶された液状化強度曲線と、上記ステップ200において算出された最大せん断応力τmaxを用いて、当該最大せん断応力τmaxにより液状化に至る載荷繰り返し回数Nifを導出し、導出した載荷繰り返し回数Nifから処理対象半波における累積損傷度の増分ΔDを導出する。なお、半波における累積損傷度の増分ΔDは、上記(11)式で示される。
そして、ステップ202では、導出した増分ΔDを、それまでに得られている累積損傷度Dに加算することにより、処理対象半波における累積損傷度Dを算出する。なお、上記液状化強度曲線は、地盤調査における動的非排水変形試験等の繰り返し載荷試験により得られたものを用いることができる。
次のステップ204では、サイクリック・モビリティに移行したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ206に移行する。なお、サイクリック・モビリティに移行したか否かの判定は、応力経路が一旦変相線を越えたか否かを判定することにより行うことができる。
ステップ206では、上記ステップ202において算出された累積損傷度Dを、予め記憶部14に記憶されている(3)式に代入することにより、過剰間隙水圧比ruを算出する。なお、本実施の形態では、(3)式における定数αとして、予め試験によって得られて記憶部14に記憶されている相対密度Drを(4)式に代入することにより算出されたものを適用しているが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。また、本実施の形態では、(3)式における定数β及び定数lとして、β=2.0,l=5.0を経験値として適用しているが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ208では、予め試験によって(9)式に基づき作成し、記憶部14に記憶されている過剰間隙水圧比ruと初期せん断剛性G0 *との関係を示すテーブル(以下、「剛性低下テーブル」という。)を参照して、上記ステップ206において算出された過剰間隙水圧比ruに対応する初期せん断剛性G0 *を取得する。
次のステップ210では、上記ステップ200において導出された最大せん断ひずみγmaxから求められる等価せん断ひずみγeq(γeq=c・γmax,ここでcは経験値として得られた係数)と、上記ステップ200において導出された最大せん断応力τmaxを初期せん断剛性G0 *で除算することにより得られる参照ひずみγrとを、予め記憶部14に記憶されている(7)式に示される関数f(γeq)に代入することにより、関数f(γeq)の値を導出し、その後にステップ218に移行する。
一方、上記ステップ204において肯定判定となった場合、すなわち、サイクリック・モビリティに移行した場合はステップ212に移行する。
ステップ212では、上記ステップ202において算出された累積損傷度Dと、サイクリック・モビリティが開始するときの累積損傷度DCMと、累積損傷度Dが累積損傷度DCMと等しいときの過剰間隙水圧比ru(D=DCM)を、予め記憶部14に記憶されている(5)式に代入することにより、過剰間隙水圧比ruを算出する。なお、本実施の形態では、(5)式における定数mとして‘3’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ214では、上記剛性低下テーブルを参照して、上記ステップ212において算出された過剰間隙水圧比ruに対応する初期せん断剛性G0 *を取得する。このように、本実施の形態では、本ステップ214及び上記ステップ208において初期せん断剛性G0 *をテーブル変換にて求めるが、これに限らず、せん断剛性G0及び過剰間隙水圧比ruを用いた(9)式に基づく演算式によって求める形態とすることもできる。
次のステップ216では、上記ステップ200において導出された最大せん断ひずみγmaxから求められる等価せん断ひずみγeqと、予め動的非排水変形試験等の繰り返し載荷試験によって求められ、記憶部14に記憶されている係数bと、変相線と交差した時刻におけるひずみγCMと、変相線と交差する時刻の剛性比で、かつ過剰間隙水圧比ruに依存する剛性比GCMを、予め記憶部14に記憶されている(8)式に示される関数f(γeq),関数g(γeq)に代入することにより、関数f(γeq)及び関数g(γeq)の値を導出し、その後にステップ218に移行する。なお、本実施の形態では、(8)式における係数bとして‘0.7’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。また、本実施の形態では、剛性比GCMを、予め試験によって得られて記憶部14に記憶されている有効応力比Rσと上記ステップ212の処理によって算出した過剰間隙水圧比ruを(9)式に代入することにより算出されたものを適用しているが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
ステップ218では、上記ステップ208又は上記ステップ214の処理によって得られた初期せん断剛性G0 *と、上記ステップ210又は上記ステップ216の処理によって得られた関数f(γeq)及び関数g(γeq)の値(ステップ210の処理では、関数g(γeq)の値は0(零))とを、予め記憶部14に記憶されている(6)式に代入することにより、せん断剛性Gを算出する。なお、本実施の形態では、(6)式における定数nとして‘0.5’を経験値として適用するが、これに限定されず、解析対象とする地盤の特性に応じて適宜設定するようにしてもよい。
次のステップ220では、以上の処理によって導出されたせん断剛性Gを始めとする各種物理量を記憶部14の所定領域に記憶する。
そして、次のステップ222にて、地震時間全体について以上の処理が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ200に戻り、肯定判定となった時点で、本制御ルーチンを終了する。
[実施例]
図11には、本制御ルーチンにより導出した、サイクリック・モビリティに移行する前後における累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係を示すグラフが、試験により得られたものと共に示されている。なお、同図における一点鎖線が(3)式により算出されたものであり、破線が(5)式により算出されたものであり、実線が試験により得られたものである。また、同図では、上記第1の実施の形態において示した図3と同一条件のものが示されている。
同図に示すように、本制御ルーチンにより導出された累積損傷度Dと過剰間隙水圧比ruとの関係は、図3に示されるものに比較して、地震発生時から地震終了時に至るまで、より試験結果と対応しており、本制御ルーチンによって高精度に過剰間隙水圧比ruを導出することができることが分かる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行うに際し、前記過剰間隙水圧比及び前記せん断剛性の双方を、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出しているので、サイクリック・モビリティに移行する前後で同一の規則で導出する場合に比較して、高精度な地震応答解析を行うことができる。
また、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出し、サイクリック・モビリティに移行した後は前記地盤が液状化したときに過剰間隙水圧比が1.0未満となる関数を用いて過剰間隙水圧比を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前は、過剰間隙水圧比が0から所定値に至るまでの第1期間と、当該第1期間の終了時より所定期間経過したときからサイクリック・モビリティが開始するときに至るまでの第2期間と、を除く中間期間の間、累積損傷度が増加するに従って過剰間隙水圧比が直線的に増加するように算出されると共に前記中間期間の長さを変更することのできる演算式により過剰間隙水圧比を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
ここで、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前は(3)式により過剰間隙水圧比を導出し、サイクリック・モビリティに移行した後は(5)式により過剰間隙水圧比を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
更に、本実施の形態では、定数αを相対密度に基づいて導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができ、特に、本実施の形態では、定数αを(4)式により導出しているので、更に高精度に地震応答解析を行うことができる。
また、本実施の形態では、サイクリック・モビリティに移行する前はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が小さくなり、サイクリック・モビリティに移行した後はせん断ひずみが大きくなるほど算出値が大きくなるように予め定められた関数によりせん断剛性を導出しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
特に、本実施の形態では、(6)式〜(9)式によりせん断剛性Gを導出するものとしているので、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
更に、本実施の形態では、剛性比GCMを、解析対象とする地盤のせん断応力比及び過剰間隙水圧比に基づいて決定しているので、より高精度に地震応答解析を行うことができ、特に、(9)式により剛性比GCMを導出しているので、更に高精度に地震応答解析を行うことができる。
なお、本実施の形態では、少なくとも解析対象とする地盤の過剰間隙水圧比及びせん断剛性を用いて地震応答解析を行うに際し、前記過剰間隙水圧比及び前記せん断剛性の双方を、前記地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、過剰間隙水圧比及びせん断剛性の何れか一方を、地盤が液状化に至る際のサイクリック・モビリティに移行する前後で異なる規則で導出する形態とすることもできる。この場合も、本実施の形態よりは精度が落ちるものの、従来に比較して、より高精度に地震応答解析を行うことができる。
その他、本実施の形態で説明した地震応答解析装置10の構成(図1参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施の形態に係る地震応答解析装置10で適用していた表示部18は必ずしも必要ではなく、削除することも可能である。
更に、本実施の形態で示した制御ルーチンの処理の流れ(図2,図10参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。