ところが、従来の電場応答性高分子の電極には、導電性フィラーとして、主に通常のカーボンブラックが用いられており、このようなカーボンブラックを主要な導電性フィラーとして用いた電極の場合、3次元のネットワーク構造である、いわゆるパーコレーション構造を形成し、導電性を向上させるため、その厚みは、ある程度の厚さが必要であった。
一方、導電性フィラーを用いた電極の場合、その厚さが厚くなるほど、導電性や放電特性などを均等にすることが難しく、電場応答性高分子を伸縮させ、形状を変化させることにより、導電性や放電特性の不均等性は、さらに顕著になるという課題があった。また、電極が厚くなることにより、膜の柔軟な変形の妨げになっていた。
この電極特性の不均等性は、電場の不均等性を生じる原因となり、結果的に素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で絶縁破壊を起こすことで電場応答性高分子の破損につながっていた。
また、シリコンやアクリルなどのエラストマーを用いた誘電性の膜は、一般に、膜の内外に膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥が存在しており、素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で、部分的な絶縁破壊が起きる。あるいは、膜の表面に埃が付着することにより電場の集中が発生し、部分的な絶縁破壊が起きる。そのような絶縁破壊により、エラストマーに大きな破損が発生し、電場応答性高分子の耐久性を低下させていた。
これらの原因で膜が破損することを防ぐため、特許文献3に開示したアクチュエータにおいては、素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で動作させていた。すなわち、このアクチュエータは、電場応答性高分子を用いて実用的レベルの振動量、すなわち、駆動力を得ることに成功した点で各方面から高い評価を受けているが、その一方で、絶縁耐電圧の低下は、印加可能なバイアス電圧の最大電圧を低下させ、その結果、駆動性能を低下させる原因となっていた。
また、電場応答性高分子の耐久性は、主材となるエラストマーの性質で大きく左右される。電場応答性高分子を用いたアクチュエータでは、シリコンやアクリルなどのエラストマーの膜を誘電膜として使用しており、膜の内外に存在する膜厚や架橋構造の不均等や繰り返し伸縮されることにより生じる機械的なダメージや物性的な劣化により、耐久性を向上させることが困難であった。
以上のように、電場応答性高分子を用いたアクチュエータにおいて、駆動性能を高めるためには、バイアス電圧を上げる必要があり、一方、バイアス電圧を上げると、絶縁破壊を起こし耐久性が低下するというように、駆動性能と耐久性にはトレードオフの関係があった。電場応答性高分子を用いたアクチュエータを実用化するためには、駆動性能と耐久性の両方を向上させることが嘱望されていた。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、駆動性能及び耐久性が改善されたアクチュエータ用電場応答性高分子を提供することにある。
本発明者らが鋭意研究を行った結果、(1)電場応答性高分子の導電性フィラーにカーボンナノチューブを含有させること、(2)それによる小さな欠陥が大きな欠陥に広がる前に自ら修復する機能(自己修復機能)を利用すること、(3)膜の機械的強度を高めること、(4)電極の端部近傍で発生する電場集中(エッジ効果)への対策を講ずること、という手法を組み合わせること、並びに、(5)前記(1)〜(4)の手法を組み合わせることにより得られた電場応答性高分子を高電圧でドライブすることが前記課題の解決に有効であるという全く新しい知見を得て、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
まず、本請求項1に係る発明は、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張するアクチュエータ用電場応答性高分子において、前記電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることによって、前記課題を解決するものである。
ここで、本発明におけるカーボンナノチューブとは、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)と多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)との双方を含んだ広義のカーボンナノチューブを意味している。また、本発明における導電性フィラーとは、形状にとらわれず、導電性を呈する添加物の全てを意味している。
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係るアクチュエータ用電場応答性高分子において、前記エラストマー膜と電極との間の少なくともエラストマー膜の端部近傍に補強膜が設けられていることによって、前記課題をさらに解決したものである。
また、本請求項3に係る発明は、請求項2に係るアクチュエータ用電場応答性高分子において、前記エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されていることによって、前記課題をさらに解決したものである。
また、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るアクチュエータ用電場応答性高分子において、前記電極間にバイアス電圧として高電圧が印加されていることによって、前記課題をさらに解決したものである。
ここで、「高電圧」とは、具体的に何V以上と定義されるものではなく、電極の導電性フィラーが主としてカーボンブラックからなりカーボンナノチューブを含有していない従来の電場応答性高分子に印加することができるバイアス電圧に比べて高い電圧であるということを意味している。
なお、本発明における電場応答性高分子とは、誘電エラストマーを主たる構成要素としてクーロン力によって機械的変形から起電力を得たり、逆に電位差を与えたりすることにより機械的な駆動力が得られるエレクトロアクティブポリマー(EAP)の総称を意味しており、例えば、米国のカリフォルニア州に本拠を構えるSRIインターナショナルで開発されたアクリル系樹脂やシリコン系樹脂などからなるゴム状の薄い高分子(誘電体)を伸び縮み可能な柔軟な電極で挟んだ構造をしたEPAM(イーパム:Electroactive Polymer Artificial Muscle)という商品名で提供されているものなどがある。
本請求項1に係るアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張するものであって、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることによって、導電性フィラー間の導電特性や放電特性が向上する。その結果、電極の厚さを、従来よりも薄くすることができ、電極の伸縮動作により生じる膜内の電場の不均等を減少させ、結果的に絶縁破壊を減少させ電場応答性高分子の耐久性を向上させることができるとともに、バイアス電圧の高電圧化を実現することができる。また、電極を薄くできることにより、膜の変形の妨げにならず、膜の柔軟な変形が実現できる。
また、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることによって、エラストマーの膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥により生じる絶縁破壊が引き起こす膜の欠陥を、大きな欠陥に波及する前に電気アークによって局所化された絶縁層を形成させる、いわゆる自己修復機能が発揮され、大きな破損につながる前に絶縁破壊が解消され、結果的に、電場応答性高分子の耐久性を向上させることができる。この自己修復機能と呼ばれる現象は、はじめに絶縁破壊された部分を中心に円形に広がり、アークにより絶縁部を形成するものであって、電場応答性高分子の基本的な欠陥、例えば、膜厚の不均等、架橋構造の不均等、膜に付着している埃などに起因する絶縁破壊が大きな欠陥に波及するのを効果的に抑制する。そのため、電場応答性高分子の絶縁耐電圧を高めるのに絶大な効果を奏する。
しかも、導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有している薄い電極は、透明にすることもできるので、透明なエラストマー膜と相俟って、アクチュエータ用電場応答性高分子全体を透明に形成できるので、透明なアクチュエータが実現でき、例えば、タッチパネル、人工目、バックミラーの水滴除去機構など、従来のアクチュエータでは難しかった様々な用途への応用が可能となる。
さらに、自己修復機能により絶縁耐電圧が上昇することによって、従来よりも高いバイアス電圧を電場応答性高分子に印加することができるとともにポリマーの膜厚を薄くできるので、両者が相俟って駆動性能の飛躍的な向上が実現できる。
すなわち、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pとバイアス電圧Vbとの間には、E:電極間の電場(V/m)、εr:ポリマーの相対誘電率(誘電定数)、ε0:自由空間の誘電率、t:ポリマーの厚さとすると、p=εrε0E2=εrε0(Vb/t)2という関係が成立するので、バイアス電圧Vbを上昇させるとともに、ポリマーの厚さtを薄くすることができることにより、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pは、バイアス電圧Vbの二乗及びポリマーの厚さtの逆数の二乗に比例して増大するので従来に比べてきわめて性能の良い駆動が可能になる。
また、絶縁耐電圧が上昇することにより、従来と同じバイアス電圧でドライブした場合、寿命が向上することにつながる。
また、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることにより、導電性、放電特性が向上し、電極を薄くすることができ、電場応答性高分子の軽量化などが実現できる。
次に、本請求項2に係るアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、請求項1に係る電場応答性高分子において、エラストマー膜と電極との間の少なくともエラストマー膜の端部近傍に補強膜が設けられていることにより、電場応答性高分子の機械的強度が増加するので、電場応答性高分子の耐久性が格段に向上する。その結果、低周波による連続運転が可能になり、例えば、医療用ベッドの床ずれ防止用バイブレータなど長時間連続運転する用途への応用が実現できる。
さらに、本請求項3に係るアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、請求項2に係る電場応答性高分子において、エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されていることによって、電極の縁端部において電場集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果(edge effect)による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧を高くすることができ、結果として駆動性能及び耐久性が格段に向上する。ここで、電場応答性高分子の具体的なバイアス電圧は、膜の材質、膜厚などによって異なるが、例えば、バイアス電圧が4000VのEPAMと対比した場合、本発明によれば、バイアス電圧を2000V以上引き上げることが可能である。
また、本請求項4に係るアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る電場応答性高分子において、電極間にバイアス電圧として高電圧が印加されていることにより、前述の説明のとおり、従来に比べて性能の良い駆動が可能になる。したがって、例えば、義足のアクチュエータ、介護用ロボット、軽量ポンプ、産業用ロボットのアクチュエータなど高負荷・高荷重の用途への応用が実現できる。その他、モータや電磁石の原理を用いたアクチュエータ全てに置き換えが可能である。
本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子は、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張する電場応答性高分子において、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有しているものであって、駆動性能及び耐久性が改善されたものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
なお、電場応答性高分子を駆動する具体的な回路構成については、前述した特許文献3に詳述しているので、ここでは説明を割愛する。
本発明の実施例1を図1に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明の実施例1である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の実施例1の電場応答性高分子100は、図1に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜120の両面に、伸び縮み可能な電極140を接着している。さらに、この電極に導電性フィラーとして単層カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブ150を分散させている。
カーボンナノチューブ150を電極に分散させる方法としては、例えば、カーボンナノチューブと界面活性剤である例えばドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(SDS)との混合物に蒸留水を加え、30分以上超音波振動を加える方法などを採用することが出来る。膜の成膜には、例えば、クラス100(1立方フィートあたりの空気に、粒径0.5μm以上の塵埃の粒子個数が100以下)と呼ばれるようなロークラスのクリーンルーム中で行い、膜中あるいは膜表面に塵や埃が混入したり付着したりするのを防止するとともに、雰囲気温度の制御を行うことにより均質な膜を成膜する。
このような構成をとることにより、導電性フィラー間の導電特性及び放電特性が向上し、その結果、電極の厚さを従来より薄くすることができ、電極変形の違いにより生じる電場の不均等が減少し、結果的に絶縁破壊が減少し、電場応答性高分子の耐久性が向上する。
また、エラストマーの膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥により生じる絶縁破壊が引き起こす膜の欠損や、電極組成の不均等により生じる電場の集中が引き起こす電極の局所的絶縁破壊が大きな欠損につながる前に絶縁層を形成させる、いわゆる自己修復機能が発揮されることにより、大きな欠損につながる前に絶縁破壊が解消される。その結果、電場応答性高分子の耐久性が格段に向上する。
さらに、絶縁耐電圧が上昇することにより、電場応答性高分子へのバイアス電圧を上げることができる。
電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pとバイアス電圧Vbとの間には、E:電極間の電場(V/m)、εr:ポリマーの相対誘電率(誘電定数)、ε0:自由空間の誘電率、t:ポリマーの厚さとすると、p=εrε0E2=εrε0(Vb/t)2という関係が成立するので、バイアス電圧Vbを上昇させることができることにより、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pは、バイアス電圧Vbの二乗に比例して増大するので従来に比べてきわめて性能の良い駆動が可能になる。
次に、本発明の実施例2を図2に基づいて説明する。ここで、図2は、本発明の実施例2である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の実施例2の電場応答性高分子200は、図2に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜220の両面全面に、補強膜230としてネオプレーンゴムなどのエラストマーを薄くコーティングしている。この時、エラストマー膜220の端部近傍に位置する補強膜230の厚さを、エラストマー膜220の中央部に位置する補強膜230の厚さよりも肉厚に形成する。
このような構成にすることにより、電極の縁端部において電場の集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜220の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧をさらに高くすることができ、結果として駆動性能のより一層の向上を実現することができる。
さらに、本発明の実施例3を図3に基づいて説明する。ここで、図3は、本発明の実施例3である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の実施例3の電場応答性高分子300は、図3に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜320の両面の端部近傍に、端部ほど肉厚に形成された補強膜330をネオプレーンゴムなどのエラストマーを薄くコーティングすることにより形成している。
このような構成にすることにより、実施例2と同様、電極の縁端部において電場の集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜320の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧をさらに高くすることができ、結果として駆動性能のより一層の向上を実現することができる。この場合、エラストマー膜320自体の材質改良により、エラストマー膜320そのものの機械的強度を改善しており、実施例2のようにエラストマー膜320の両面全面に補強膜330をコーティングしなくても電場応答性高分子300の機械的強度を実現している。
次に、前述した本発明の電場応答性高分子をアクチュエータとして用いる時の代表的な使用形態について説明する。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第1使用形態:平面タイプ)
図4は、電場応答性高分子400を機械的エネルギーを伝達するための構造部460と構造部の固定部450との間に平面状に張架して使用する、いわゆる平面タイプの使用形態を示している。
このタイプは、2枚の電極440間に電圧を掛けることにより、構造部460と固定部450との距離を変化させる。なお、図4において、符号420および430で示した部材は、電場応答性高分子400の主材であるエラストマー膜と補強膜とを示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、デジカメのシャッターなどに適用することができる。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第2使用形態:ダイアフラムタイプ)
図5は、電場応答性高分子500を円周状の構造部の固定部550と中心に置かれた円形の構造部560との間に張架して使用する、いわゆるダイアフラムタイプの使用形態を示している。このタイプは、2枚の電極540間に電圧を掛けることにより、固定部550と構造部560との相対的な位置関係を変化させる。なお、図5において、符号520及び530で示した部材は、電場応答性高分子500の主材であるエラストマー膜と補強膜を示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、スピーカーやマッサージ機のバイブレータなどに利用することができる。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第3使用形態:ロールタイプ)
図6は、電場応答性高分子600を離間して配設された円柱状の構造部660と構造部の固定部650との間に円筒状に張架して使用する、いわゆるロールタイプの使用形態を示している。このタイプは、2枚の電極640間に電圧を掛けることにより固定部650と構造部660との距離を変化させる。また、2枚セットの電極を1組以上用いることにより、曲げることも可能である。なお、図6において、符号620及び630で示した部材は、電場応答性高分子600の主材であるエラストマー膜と補強膜を示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、義足のアクチュエータや産業用ロボットのアクチュエータなどに利用することができる。
電場応答性高分子は、折ったり、丸めたり、どのような形にもすることが可能なため、前述のように、多様な形状を有したアクチュエータを製作することが可能である。本発明の代表的応用例について図7および図8に、一般的な電気的アクチュエータ技術と対比させた時の利点とともに表にして示す。
以上のように、本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、(1)電極に導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有させた薄い電極と、(2)それによる自己修復機能と、(3)膜の機械的強度を高める補強膜と、(4)電極の端部近傍で発生する電場集中(エッジ効果)に対する対策とを組み合わせること、並びに、(5)得られた電場応答性高分子を高電圧でドライブすることの相乗効果により、膜自身の厚さを薄くすることができ、膜の絶縁耐電圧が向上し、それに伴うバイアス電圧の上昇により駆動性能が向上し、また、絶縁耐電圧の向上は、従来と同じバイアス電圧で駆動させたときの耐久性向上につながり、さらには、膜の機械的強度も上げられるなど、駆動性能と耐久性の両方を向上させることができ、各々の要素技術からは予見しがたい絶大な効果が奏される。
ところが、従来の電場応答性高分子の電極には、導電性フィラーとして、主に通常のカーボンブラックが用いられており、このようなカーボンブラックを主要な導電性フィラーとして用いた電極の場合、3次元のネットワーク構造である、いわゆるパーコレーション構造を形成し、導電性を向上させるため、その厚みは、ある程度の厚さが必要であった。
一方、導電性フィラーを用いた電極の場合、その厚さが厚くなるほど、導電性や放電特性などを均等にすることが難しく、電場応答性高分子を伸縮させ、形状を変化させることにより、導電性や放電特性の不均等性は、さらに顕著になるという課題があった。また、電極が厚くなることにより、膜の柔軟な変形の妨げになっていた。
この電極特性の不均等性は、電場の不均等性を生じる原因となり、結果的に素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で絶縁破壊を起こすことで電場応答性高分子の破損につながっていた。
また、シリコンやアクリルなどのエラストマーを用いた誘電性の膜は、一般に、膜の内外に膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥が存在しており、素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で、部分的な絶縁破壊が起きる。あるいは、膜の表面に埃が付着することにより電場の集中が発生し、部分的な絶縁破壊が起きる。そのような絶縁破壊により、エラストマーに大きな破損が発生し、電場応答性高分子の耐久性を低下させていた。
これらの原因で膜が破損することを防ぐため、特許文献3に開示したアクチュエータにおいては、素材の持つ絶縁耐電圧より低い電圧で動作させていた。すなわち、このアクチュエータは、電場応答性高分子を用いて実用的レベルの振動量、すなわち、駆動力を得ることに成功した点で各方面から高い評価を受けているが、その一方で、絶縁耐電圧の低下は、印加可能なバイアス電圧の最大電圧を低下させ、その結果、駆動性能を低下させる原因となっていた。
また、電場応答性高分子の耐久性は、主材となるエラストマーの性質で大きく左右される。電場応答性高分子を用いたアクチュエータでは、シリコンやアクリルなどのエラストマーの膜を誘電膜として使用しており、膜の内外に存在する膜厚や架橋構造の不均等や繰り返し伸縮されることにより生じる機械的なダメージや物性的な劣化により、耐久性を向上させることが困難であった。
以上のように、電場応答性高分子を用いたアクチュエータにおいて、駆動性能を高めるためには、バイアス電圧を上げる必要があり、一方、バイアス電圧を上げると、絶縁破壊を起こし耐久性が低下するというように、駆動性能と耐久性にはトレードオフの関係があった。電場応答性高分子を用いたアクチュエータを実用化するためには、駆動性能と耐久性の両方を向上させることが嘱望されていた。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、駆動性能及び耐久性が改善されたアクチュエータ用電場応答性高分子を提供することにある。
本発明者らが鋭意研究を行った結果、(1)電場応答性高分子の導電性フィラーにカーボンナノチューブを含有させること、(2)それによる小さな欠陥が大きな欠陥に広がる前に自ら修復する機能(自己修復機能)を利用すること、(3)膜の機械的強度を高めること、(4)電極の端部近傍で発生する電場集中(エッジ効果)への対策を講ずること、という手法を組み合わせること、並びに、(5)前記(1)〜(4)の手法を組み合わせることにより得られた電場応答性高分子を高電圧でドライブすることが前記課題の解決に有効であるという全く新しい知見を得て、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
まず、本請求項1に係る発明は、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張するアクチュエータ用電場応答性高分子において、前記電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有しており、前記エラストマー膜と電極との間のエラストマー膜の端部近傍にのみ補強膜が設けられており、前記エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されているとともに、エラストマー膜の中央部では、エラストマー膜と電極が接触しており、かつ、前記電極間にバイアス電圧として高電圧が印加されていることによって、前記課題を解決するものである。
ここで、本発明におけるカーボンナノチューブとは、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)と多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)との双方を含んだ広義のカーボンナノチューブを意味している。また、本発明における導電性フィラーとは、形状にとらわれず、導電性を呈する添加物の全てを意味している。
ここで、「高電圧」とは、具体的に何V以上と定義されるものではなく、電極の導電性フィラーが主としてカーボンブラックからなりカーボンナノチューブを含有していない従来の電場応答性高分子に印加することができるバイアス電圧に比べて高い電圧であるということを意味している。
なお、本発明における電場応答性高分子とは、誘電エラストマーを主たる構成要素としてクーロン力によって機械的変形から起電力を得たり、逆に電位差を与えたりすることにより機械的な駆動力が得られるエレクトロアクティブポリマー(EAP)の総称を意味しており、例えば、米国のカリフォルニア州に本拠を構えるSRIインターナショナルで開発されたアクリル系樹脂やシリコン系樹脂などからなるゴム状の薄い高分子(誘電体)を伸び縮み可能な柔軟な電極で挟んだ構造をしたEPAM(イーパム:Electroactive Polymer Artificial Muscle)という商品名で提供されているものなどがある。
本請求項1に係るアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張するものであって、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有しており、エラストマー膜と電極との間のエラストマー膜の端部近傍にのみ補強膜が設けられており、エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されているとともに、エラストマー膜の中央部では、エラストマー膜と電極が接触しており、かつ、電極間にバイアス電圧として高電圧が印加されていることによって、導電性フィラー間の導電特性や放電特性が向上する。その結果、電極の厚さを、従来よりも薄くすることができ、電極の伸縮動作により生じる膜内の電場の不均等を減少させ、結果的に絶縁破壊を減少させ電場応答性高分子の耐久性を向上させることができるとともに、バイアス電圧の高電圧化を実現することができる。また、電極を薄くできることにより、膜の変形の妨げにならず、膜の柔軟な変形が実現できる。
また、エラストマー膜と電極との間のエラストマー膜の端部近傍のみに補強膜が設けられていることにより、電場応答性高分子の機械的強度が増加するので、電場応答性高分子の耐久性が格段に向上する。その結果、低周波による連続運転が可能になり、例えば、医療用ベッドの床ずれ防止用バイブレータなど長時間連続運転する用途への応用が実現できる。
エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されていることによって、電極の縁端部において電場集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果(edge effect)による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧を高くすることができ、結果として駆動性能及び耐久性が格段に向上する。ここで、電場応答性高分子の具体的なバイアス電圧は、膜の材質、膜厚などによって異なるが、例えば、バイアス電圧が4000VのEPAMと対比した場合、本発明によれば、バイアス電圧を2000V以上引き上げることが可能である。
さらに、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることによって、エラストマーの膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥により生じる絶縁破壊が引き起こす膜の欠陥を、大きな欠陥に波及する前に電気アークによって局所化された絶縁層を形成させる、いわゆる自己修復機能が発揮され、大きな破損につながる前に絶縁破壊が解消され、結果的に、電場応答性高分子の耐久性を向上させることができる。この自己修復機能と呼ばれる現象は、はじめに絶縁破壊された部分を中心に円形に広がり、アークにより絶縁部を形成するものであって、電場応答性高分子の基本的な欠陥、例えば、膜厚の不均等、架橋構造の不均等、膜に付着している埃などに起因する絶縁破壊が大きな欠陥に波及するのを効果的に抑制する。そのため、電場応答性高分子の絶縁耐電圧を高めるのに絶大な効果を奏する。
しかも、導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有している薄い電極は、透明にすることもできるので、透明なエラストマー膜と相俟って、アクチュエータ用電場応答性高分子全体を透明に形成できるので、透明なアクチュエータが実現でき、例えば、タッチパネル、人工目、バックミラーの水滴除去機構など、従来のアクチュエータでは難しかった様々な用途への応用が可能となる。
また、自己修復機能により絶縁耐電圧が上昇することによって、従来よりも高いバイアス電圧を電場応答性高分子に印加することができるとともにポリマーの膜厚を薄くできるので、両者が相俟って駆動性能の飛躍的な向上が実現できる。
すなわち、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pとバイアス電圧Vbとの間には、E:電極間の電場(V/m)、εr:ポリマーの相対誘電率(誘電定数)、ε0:自由空間の誘電率、t:ポリマーの厚さとすると、p=εrε0E2=εrε0(Vb/t)2という関係が成立するので、バイアス電圧Vbを上昇させるとともに、ポリマーの厚さtを薄くすることができることにより、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pは、バイアス電圧Vbの二乗及びポリマーの厚さtの逆数の二乗に比例して増大するので従来に比べてきわめて性能の良い駆動が可能になる。
また、絶縁耐電圧が上昇することにより、従来と同じバイアス電圧でドライブした場合、寿命が向上することにつながる。
また、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有していることにより、導電性、放電特性が向上し、電極を薄くすることができ、電場応答性高分子の軽量化などが実現できる。
さらに、前述の説明のとおり、電極間にバイアス電圧として高電圧が印加されていることによって、従来に比べて性能の良い駆動が可能になる。したがって、例えば、義足のアクチュエータ、介護用ロボット、軽量ポンプ、産業用ロボットのアクチュエータなど高負荷・高荷重の用途への応用が実現できる。その他、モータや電磁石の原理を用いたアクチュエータ全てに置き換えが可能である。
本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子は、2つの柔軟な電極によって挟まれたエラストマー膜から構成され電圧の印加により伸張するアクチュエータ用電場応答性高分子において、電極が導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有しており、エラストマー膜と電極との間のエラストマー膜の端部近傍にのみ補強膜が設けられており、エラストマー膜の端部近傍に位置する補強膜の厚さがエラストマー膜の端部に近づくほど肉厚に形成されているとともに、エラストマー膜の中央部では、エラストマー膜と電極が接触しているものであって、駆動性能及び耐久性が改善されたものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
なお、電場応答性高分子を駆動する具体的な回路構成については、前述した特許文献3に詳述しているので、ここでは説明を割愛する。
[参考例1]
本発明の参考例1を図1に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明の参考例1である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の参考例1の電場応答性高分子100は、図1に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜120の両面に、伸び縮み可能な電極140を接着している。さらに、この電極に導電性フィラーとして単層カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブ150を分散させている。
カーボンナノチューブ150を電極に分散させる方法としては、例えば、カーボンナノチューブと界面活性剤である例えばドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(SDS)との混合物に蒸留水を加え、30分以上超音波振動を加える方法などを採用することが出来る。膜の成膜には、例えば、クラス100(1立方フィートあたりの空気に、粒径0.5μm以上の塵埃の粒子個数が100以下)と呼ばれるようなロークラスのクリーンルーム中で行い、膜中あるいは膜表面に塵や埃が混入したり付着したりするのを防止するとともに、雰囲気温度の制御を行うことにより均質な膜を成膜する。
このような構成をとることにより、導電性フィラー間の導電特性及び放電特性が向上し、その結果、電極の厚さを従来より薄くすることができ、電極変形の違いにより生じる電場の不均等が減少し、結果的に絶縁破壊が減少し、電場応答性高分子の耐久性が向上する。
また、エラストマーの膜厚や架橋構造の不均等などの欠陥により生じる絶縁破壊が引き起こす膜の欠損や、電極組成の不均等により生じる電場の集中が引き起こす電極の局所的絶縁破壊が大きな欠損につながる前に絶縁層を形成させる、いわゆる自己修復機能が発揮されることにより、大きな欠損につながる前に絶縁破壊が解消される。その結果、電場応答性高分子の耐久性が格段に向上する。
さらに、絶縁耐電圧が上昇することにより、電場応答性高分子へのバイアス電圧を上げることができる。
電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pとバイアス電圧Vbとの間には、E:電極間の電場(V/m)、εr:ポリマーの相対誘電率(誘電定数)、ε0:自由空間の誘電率、t:ポリマーの厚さとすると、p=εrε0E2=εrε0(Vb/t)2という関係が成立するので、バイアス電圧Vbを上昇させることができることにより、電場応答性高分子を動作させるために生じる圧力pは、バイアス電圧Vbの二乗に比例して増大するので従来に比べてきわめて性能の良い駆動が可能になる。
[参考例2]
次に、本発明の参考例2を図2に基づいて説明する。ここで、図2は、本発明の参考例2である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の参考例2の電場応答性高分子200は、図2に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜220の両面全面に、補強膜230としてネオプレーンゴムなどのエラストマーを薄くコーティングしている。この時、エラストマー膜220の端部近傍に位置する補強膜230の厚さを、エラストマー膜220の中央部に位置する補強膜230の厚さよりも肉厚に形成する。
このような構成にすることにより、電極の縁端部において電場の集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜220の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧をさらに高くすることができ、結果として駆動性能のより一層の向上を実現することができる。
さらに、本発明の実施例を図3に基づいて説明する。ここで、図3は、本発明の実施例である電場応答性高分子の断面図である。
本発明の実施例の電場応答性高分子300は、図3に示すように、シリコンやアクリルなどのエラストマー膜320の両面の端部近傍に、端部ほど肉厚に形成された補強膜330をネオプレーンゴムなどのエラストマーを薄くコーティングすることにより形成している。
このような構成にすることにより、参考例2と同様、電極の縁端部において電場の集中が起こり、絶縁破壊が起きやすいと言う、いわゆるエッジ効果による放電現象を効果的に防止し、エラストマー膜320の破損を防止することができるとともに、バイアス電圧をさらに高くすることができ、結果として駆動性能のより一層の向上を実現することができる。この場合、エラストマー膜320自体の材質改良により、エラストマー膜320そのものの機械的強度を改善しており、参考例2のようにエラストマー膜320の両面全面に補強膜330をコーティングしなくても電場応答性高分子300の機械的強度を実現している。
次に、前述した本発明の電場応答性高分子をアクチュエータとして用いる時の代表的な使用形態について説明する。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第1使用形態:平面タイプ)
図4は、電場応答性高分子400を機械的エネルギーを伝達するための構造部460と構造部の固定部450との間に平面状に張架して使用する、いわゆる平面タイプの使用形態を示している。
このタイプは、2枚の電極440間に電圧を掛けることにより、構造部460と固定部450との距離を変化させる。なお、図4において、符号420および430で示した部材は、電場応答性高分子400の主材であるエラストマー膜と補強膜とを示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、デジカメのシャッターなどに適用することができる。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第2使用形態:ダイアフラムタイプ)
図5は、電場応答性高分子500を円周状の構造部の固定部550と中心に置かれた円形の構造部560との間に張架して使用する、いわゆるダイアフラムタイプの使用形態を示している。このタイプは、2枚の電極540間に電圧を掛けることにより、固定部550と構造部560との相対的な位置関係を変化させる。なお、図5において、符号520及び530で示した部材は、電場応答性高分子500の主材であるエラストマー膜と補強膜を示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、スピーカーやマッサージ機のバイブレータなどに利用することができる。
(本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子の第3使用形態:ロールタイプ)
図6は、電場応答性高分子600を離間して配設された円柱状の構造部660と構造部の固定部650との間に円筒状に張架して使用する、いわゆるロールタイプの使用形態を示している。このタイプは、2枚の電極640間に電圧を掛けることにより固定部650と構造部660との距離を変化させる。また、2枚セットの電極を1組以上用いることにより、曲げることも可能である。なお、図6において、符号620及び630で示した部材は、電場応答性高分子600の主材であるエラストマー膜と補強膜を示している。このタイプのアクチュエータは、例えば、義足のアクチュエータや産業用ロボットのアクチュエータなどに利用することができる。
電場応答性高分子は、折ったり、丸めたり、どのような形にもすることが可能なため、前述のように、多様な形状を有したアクチュエータを製作することが可能である。本発明の代表的応用例について図7および図8に、一般的な電気的アクチュエータ技術と対比させた時の利点とともに表にして示す。
以上のように、本発明のアクチュエータ用電場応答性高分子によれば、(1)電極に導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含有させた薄い電極と、(2)それによる自己修復機能と、(3)膜の機械的強度を高める補強膜と、(4)電極の端部近傍で発生する電場集中(エッジ効果)に対する対策とを組み合わせること、並びに、(5)得られた電場応答性高分子を高電圧でドライブすることの相乗効果により、膜自身の厚さを薄くすることができ、膜の絶縁耐電圧が向上し、それに伴うバイアス電圧の上昇により駆動性能が向上し、また、絶縁耐電圧の向上は、従来と同じバイアス電圧で駆動させたときの耐久性向上につながり、さらには、膜の機械的強度も上げられるなど、駆動性能と耐久性の両方を向上させることができ、各々の要素技術からは予見しがたい絶大な効果が奏される。