〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態について、図1、図2及び図3を参照する。図1は、第1の実施の形態に係る電子機器のスライド機構の一例を示す図、図2は、ヒンジ部の開閉に連動してスライドする電子機器の機能構成例を示す図、図3は、電子機器のスライド状態の一例を示す図である。図1〜図3に示す構成は一例であって、これに限定されない。
この電子機器2は、本開示の電子機器の一例であって、第1の筐体4と第2の筐体6とがヒンジ部8を介して折り畳み可能に連結するとともに、筐体4、6の開閉により、第2の筐体6の一部をスライドさせる構成である。この電子機器2は、例えば、携帯電話機やPC等であって、各筐体4、6の表面側には、表示機能や操作入力機能等を備えており、その電子機器2を利用しない場合や、特定の機能のみを利用する等の場合に、筐体4、6同士を折り畳む構成としている。
ここで、第1の筐体4は、電子機器2の機能部を搭載する構成部の一例であって、例えば、電子機器の利用時において、利用者により保持され、又は机等に設置されて、電子機器2の固定側筐体を構成する。
第2の筐体6は、例えば、電子機器2の機能部を搭載する構成部の一例であって、例えば、固定保持された第1の筐体4に対し、利用時には、開閉操作が行われる可動側筐体を構成する。そして、第2の筐体6は、第1の筐体の対向面と近接する折り畳み状態である閉じ位置と、第1の筐体の対向面から離れた開き位置との間で、閉じ位置から開き位置に向けてヒンジ部8を中心として回転可能に設置されている。
第2の筐体6は、例えば、ヒンジ部8に接続するベース部10と、このベース部10に沿ってスライド移動するスライド部12とを備えている。そして、ベース部10とスライド部12は、例えば、それぞれの面積が最も大きい面同士を対向させて積層している。図1のBに示すように、筐体4、6を折り畳んだ閉状態において、スライド部12は、例えば、ベース部10に対して接触面積が最も大きくなる位置に配置される。この場合、例えば、ヒンジ部8側から見て、ベース部10の端部と、スライド部12の端部とが同位置で重なり合うようにスライド部12の長さ及びスライド量が設定されている。また、筐体4、6が開状態となると、図1のAに示すように、スライド部12がベース部10に沿ってスライドすることにより、例えば、ヒンジ部8側のベース部10の一部を突出させる。例えば、閉状態において、ベース部10の端部と、スライド部12の端部とが同位置で重なり合う長さに設定されている場合、スライド部12のスライド量がベース部10から突出した長さとなる。
また、ベース部10は、スライド部12に対して付勢する付勢部14やヒンジ部8に接続した制御部16等を備えればよい。
このような筐体4、6の開閉、又はヒンジ部8の開閉位置に応じて第2の筐体6のスライド動作を実現する構成を図2に示す。
ヒンジ部8は、第1の筐体4と第2の筐体6とを開閉可能に連結する手段の一例であって、例えば、このヒンジ部8を中心軸として第1の筐体4に対して、第2の筐体6を開き位置又は閉じ位置に回転移動させる。ヒンジ部8の内部側には、例えば、ヒンジ部8の開度に連動してスライド部12のスライド量を制御する制御部16の一部が接続されている。
ベース部10は、第2の筐体6の構成部品であって、スライド部12を保持するとともに、そのスライド方向にガイドする手段の一例である。このベース部10は、ヒンジ部8を介して移動可能に第1の筐体4と連結されている。また、ベース部10側には、例えば、付勢部14の一端側を設置して、スライド部12に対して付勢している。
スライド部12は、第2の筐体6の構成部品であって、制御部16によりベース部10に沿ってスライド移動する手段の一例である。このスライド部12のスライド移動は、例えば、ベース部10に設けられたスライド溝やスライド軌道に沿ってベース部10の正面と平行する方向へ移動する。
付勢部14は、ベース部10の正面と重なる面積が減少する第1の方向(図1のAの矢印a方向)にスライド部12を付勢する手段の一例であって、例えば、スライド部12をスライドさせるスライド機構部18(図2)を構成する。この付勢部14は、例えば、一端側をベース部10側に設置し、他端側をスライド部12側に設置した圧縮コイルばね等で構成すればよく、この圧縮コイルばねの張力又は復元力を利用して、スライド部12に対して付勢する。その他、付勢部14は、スライド部12に対して付勢する機能を備えるものであれば、例えば、ゴム材等の弾性部材を利用してもよい。
制御部16は、筐体4、6が閉じ位置にある場合に、付勢部14による付勢に抗して、ベース部10の正面と重なる面積が増加する第2の方向(図1のBの矢印b方向)へスライド部12を制御する手段の一例であって、スライド機構部18を構成する。この制御部16は、例えば、スライド量を制限するワイヤ等で構成しており、一端側をスライド部12に設置している。また、このワイヤの他端側は、例えば、ヒンジ部8内に設置されたワイヤの巻取り機構部に設置され、ヒンジ部8の開度に応じて巻取り処理を行う。
このようなスライド機構部18により、図3のAに示すように、閉じ状態として第1の筐体4と第2の筐体6との開度が0〔°〕の場合、スライド部12は、スライド移動せず、ベース部10の正面と重なる面積が最大となる位置に配置される。このとき、スライド機構部18は、付勢部14である例えば、圧縮コイルばねの張力に対し、制御部16の巻取り機構がワイヤを巻込むことで、スライド移動せず、第2の筐体6は、長さL1となっている。
また、利用者の開閉操作等により、例えば、図3のBに示すように、電子機器2の開度が45〔°〕となる場合、スライド部12は、その開度に応じて長手方向にスライド移動する。このとき、スライド機構部18の制御部16は、例えば、ワイヤをヒンジ部8の回転に応じた分だけスライド可能に制御する。そして、この制御とともに、付勢部14の付勢力により、スライド部12はスライド移動し、第2の筐体6は、長さL2となる。即ち、スライド部12のスライド移動により、ベース部10の一部(L2−L1)の長さが外部側に露出することになる。
更に、開操作により、筐体4、6間の開度を例えば、90〔°〕になるまでスライド部12をスライド移動させると、図3のCに示すように、第2の筐体6は、長さL3となる。このとき、露出するベース部10の長手方向の長さは、(L3−L1)となる。この実施の形態では、開度が90〔°〕となる状態でスライド動作の最大値となるように設定している。即ち、筐体4、6間の開度が90〔°〕以上となってもスライド部12をスライド移動させず、例えば、ベース部10の露出部分の長手方向の長さがL3以上にさせない構成である。この場合、電子機器2の制御部16は、例えば、最大値として設定した90〔°〕以上の開度に対して不感帯領域として設定され、ワイヤの長さを制限している。
次に、露出したベース部10について、図4を参照する。図4は、スライド移動により露出したベース部の構成例を示す図である。図4に示す構成は一例であって、これに限定されない。
筐体4、6の開状態で第2の筐体6のスライド部12をスライドさせることにより、図4のAに示すように、例えば、第2の筐体6のヒンジ部8側にベース部10の一部を露出させた露出部20が構成される。この露出部20は、例えば、スライド部12が第1の方向(矢印a方向)へ移動した場合に露出し、第2の方向(矢印b方向)へ移動した場合に、図4のBに示すように、スライド部12に覆われる。そして、この露出部20に位置するベース部10には、例えば、機能構成部22を搭載してもよい。この機能構成部22は、例えば、スライド部12が開状態となることにより機能する入力操作部や、その他、カメラ機能部、音声入出力部等を備えればよい。即ち、露出部20に位置するベース部10の一部を、例えば、第3の筐体として利用することができる。
なお、この実施の形態では、スライド移動するスライド部12を第2の筐体6側に備えた場合を示したが、これに限られず、例えば、電子機器2の開度に応じて、第1の筐体4側の一部をスライドさせるようにしてもよい。また、スライド部12のスライド方向は、電子機器2の長手方向の場合を示したが、例えば、横方向や斜め方向、又は回転方向にスライドさせてもよく、又はベース部10に対して回転方向に移動させてもよい。
斯かる構成によれば、ヒンジ部の開閉に連動して第2の筐体をスライドさせる構成により、電子機器の開状態では電子機器の筐体の機能部の配置スペースを拡大し、閉状態では電子機器の携帯性を維持できる。また、ヒンジ部の開閉に連動し、筐体同士の開閉操作を行うことでスライド動作が行われるので、スライド部の内部側に使用頻度の高い機能部等を備えた場合、電子機器の操作の利便性を高めることができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について、図5、図6、図7及び図8を参照する。図5は、第2の実施の形態に係る携帯電話機の閉状態の外観構成例を示す図、図6は、所定の開度まで開状態となった携帯電話機の外観構成例を示す図、図7は、最大開度まで開状態となった携帯電話機の外観構成例を示す図、図8は、表示側筐体部の構成例を示す分解図である。図5〜図8に示す構成は一例であって、これに限定されない。
この携帯電話機30は、本開示の電子機器の一例であって、図5に示すように、操作側筐体部32と表示側筐体部34とをヒンジ部36により開閉可能に接続している。そして、この表示側筐体部34の開度に応じて、スライド筐体部40を長手方向にスライドさせるスライド機構部を備えている。
操作側筐体部32は、第1の筐体4の一例であって、例えば、携帯電話機30のユーザにより保持される保持側筐体部である。この操作側筐体部32は、図6に示すように、表示側筐体部34に対向する面側に、決定キーやカーソルキー等の操作入力部42を備えている。
表示側筐体部34は、第2の筐体6の一例であって、操作側筐体部32との対向面側に例えば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成した表示部44を備えている。そして、この表示側筐体部34は、開度に応じて筐体の一部をスライドさせる構成であって、例えば、ベース筐体部38とスライド筐体部40とを接合している。
ベース筐体部38は、既述のベース部10の一例であって、ヒンジ部36に対して、表示側筐体部34を開閉可能に連結している。このベース筐体部38は、スライド筐体部40を所定の方向にスライドさせるガイドレール52(図8)を備えている。このガイドレール52は、スライド筐体部40を導くスライド溝の一例である。また、ベース筐体部38のヒンジ部36側には、図7に示すように、表示側筐体部34の開度に応じてスライド筐体部40がスライドすることで露出する露出部46を備える。この露出部46には、機能構成部22として、例えば、スライド筐体部40がスライドすることで機能する操作ボタン48を備えている。この操作ボタン48は、予め起動する機能を登録された所謂ショートカットキーの一例であって、例えば、携帯電話機30のメモリに記憶されている特定の電話番号に発信するためのワンタッチダイヤルボタンを構成している。
なお、この露出部48には、操作ボタン48に限られず、例えば、カメラ機能やスピーカ機能等を搭載してもよい。
スライド筐体部40は、既述のスライド部12の一例であって、ベース筐体部38上に設置され、ガイドレール52に沿って、例えば、携帯電話機30の長手方向にスライド可能に設置されている。
ヒンジ部36は、開閉連結手段の一例であって、操作側筐体部32と表示側筐体部34とをヒンジ部36を中心に回転方向に移動可能に接続して、携帯電話機30を開閉させる。このヒンジ部36の内部には、例えば、スライド筐体部40のスライド移動を制御するスライド機構部56を構成する巻取り機構部60(図8)やワイヤ62(図8)等を備えている。
そして、この携帯電話機30は、閉状態(図5)から表示側筐体部34に対して開操作を行うと、その開度に応じてスライド筐体部40が長手方向にスライドし(図6)、露出部46が形成される。そして、開操作を継続させ、所定の開度に達すると、露出部46から操作ボタン48が露出し、操作が可能となり、最大開度で表示側筐体部34が固定される(図7)。また、逆に、最大開度から表示側筐体部34に対して閉操作を行うことで、スライド筐体部40は、ベース筐体部38と重なる面積を増加させる方向にスライドし、露出部46を覆う。
表示側筐体部34は、図8に示すように、ヒンジ部36を介して操作側筐体部32に接続したベース筐体部38上にスライド筐体部40を積層させて構成している。ベース筐体部38は、携帯電話機30の開閉内部側であってスライド筐体部40と重ね合せる面に載置面50を備えている。この載置面50上には、例えば、側面部分にスライド筐体部40を所定方向にガイドする軌道手段としてガイドレール52を備えている。また、載置面50には、スライド筐体部40に対する付勢手段の一例である圧縮コイルばね54や、巻取り機構部60に接続したワイヤ62が配置される。
圧縮コイルばね54は、例えば、ばねに作用する復元力により、スライド筐体部40をベース筐体部38と重なる面積が減少する方向(第1の方向)として、例えば、携帯電話機30の長手方向に付勢する。そこで、圧縮コイルばね54の一端側を例えば、載置部50上に設置するとともに、他端側をスライド筐体部40の背面側に設置している。
ワイヤ62は、スライド筐体部40のスライド量を制御する制御部16の一例であって、一端側をスライド筐体部40の背面側に設置するとともに、他端側をヒンジ部36の内部に備えている巻取り機構部60に設置している。ワイヤ62の端部には、例えば、スライド筐体部40に設置するためのフックを備えてもよい。
また、巻取り機構部60は、ワイヤ62の一端を固定して、その長さを制御することでスライド筐体部40のスライド量を制御する制御部16の一例であって、スライド機構部18を構成する。この巻取り機構部60は、ヒンジ部36の内部に収納されており、例えば、表示側筐体部34の開度に連動して回転することで、ワイヤ62の長さを調整する。
次に、表示側筐体部34のスライド量制御について、図9、図10、図11、図12、図13及び図14を参照する。図9は、巻取り機構部の構成例を示す図、図10は、開度が0°の場合におけるスライド機構部の状態例を示す図、図11は、開度が90°の場合におけるスライド機構部の状態例を示す図、図12は、最大開度におけるスライド機構部の状態例を示す図である。また、図13は、巻取り機構部によるワイヤの巻取り状態例を示す図、図14は、筐体開度とスライド量の関係の一例を示す図である。図9〜図14に示す構成は一例であって、これに限定されない。
巻取り機構部60は、ワイヤ62の巻取りによりスライド量を制御する手段の一例であって、例えば、ワイヤ62の一端を保持し、ヒンジ部36の回転に連動して、ヒンジ部36の中心に基づいて、大滑車部64の周囲を回転移動する回転体66を備えている。この巻取り機構部60は、例えば、大滑車部64を備えるとともに、巻取り機構部60からワイヤ62を離脱させる離脱部68、大滑車部64に沿ってワイヤ62を沿わせて導くガイド部70、72等を備える。
大滑車部64は、巻取り機構部60の本体部を構成しており、例えば、ヒンジ部36内に固定保持される。また、この大滑車部64は、例えば、図示しない同形のカバー部を備えており、大滑車部64の周囲に沿って回転体66を移動可能に構成している。そして、回転体66に固定されたワイヤ62は、カバー部と大滑車部64との対向部分に形成された溝部により、巻取り機構部60の内部に進入する。
回転体66は、例えば、ヒンジ部36の内部側に接触させ、表示側筐体部34の開閉動作に連動して大滑車部64の周囲を回転移動する構成である。そして、この回転体66は、ワイヤ62の一端を固定保持しており、表示側筐体部34の開度に応じて大滑車部64の周面に沿って移動し、ワイヤ62の固定位置を変動させることで、ワイヤ62の巻取りを行わせる。
回転体66の移動方向について、図9に示すように、例えば、表示側筐体部34が閉状態(0度)である場合には、回転体66は、図中のP1の位置に配置される。そして、表示側筐体部34の開度を増加させると、それに連動して回転体66は、位置P1からP2を通過し、終点部として、位置P5に移動する。位置P2は、例えば、表示側筐体部34の開度が90度となった場合の回転体66の位置を示している。また、位置P5は、例えば、表示側筐体部34が最大開度となる場合に回転体66が移動する位置を示している。この位置P5は、例えば、ガイド部72に接触する位置に設定してもよい。
ガイド部70、72は、回転体66に固定されたワイヤ62を導く手段の一例であって、例えば、側面部分を大滑車部64の周面に合せた半円状に形成している。ガイド部70は、例えば、回転体66が位置する位置P1側に円弧の一端を配置し、位置P2側に合せて円弧の他端を配置している。また、ガイド部72は、大滑車部64の位置P4側に円弧の一端を配置するとともに、位置P3側に他端を配置している。このような構成により、例えば、回転体66が位置P1にある場合、ワイヤ62は、大滑車部64の周面に沿って位置P2側に配置され、ガイド部70、72に導かれることにより、位置P2から位置P4側に大滑車部64内を通過して配置される。そして、位置P4から大滑車部64の周面に沿って位置P3側に配置される。
これらのガイド部70、72は、例えば、大滑車部64の内部において、対向する角度に設置している。これにより、各ガイド部70、72の周面を利用してワイヤ62を導くとともに、ガイド部70とガイド部72との間にワイヤ62を連通させて大滑車部64内に導く構成であり、この巻取り機構部60所謂二重滑車構造を利用している。そして、ワイヤ62の一端側を固定する回転体66が大滑車部64の周面を移動することにより、ワイヤ62も連動し、巻取り機構部60に配置されるワイヤ62の長さが変動する。
この場合、ガイド部70の一端側を位置P2に配置することで、回転体66が位置P2に移動するまでワイヤ62の長さを変動させることができる。そして、回転体66が位置P2から位置P5に移動する間は、ワイヤ62の長さは一定状態となる。即ち、ガイド部70、72の配置位置に応じて、ワイヤ62の変位量、即ち、スライド筐体部40のスライド量が決められている。この実施の形態では、表示側筐体部34の開度が例えば、90〔°〕のときに回転体66が位置P2に移動し、スライド筐体部40をスライドさせる。そして、この開度90〔°〕から表示側筐体部34の開度が最大開度として例えば、165〔°〕になるまで、スライドさせない不感帯領域として設定している。
なお、スライド筐体部40のスライド量やスライド動作の開始位置等は、例えば、ガイド部70、72の配置位置や形状を変更することで制御することができる。
また、離脱部68は、大滑車部64からワイヤ62を離間させる手段の一例であって、回転体66と対向する位置に設置され、回転体66とともに大滑車部64の外周を回転移動し、ワイヤ62を大滑車部66に沿って配置させる手段の一例である。そして、回転体66及び離脱部68が大滑車部64の外周を移動する構造により、巻取り構造部60に巻取られ、又は外部に排出されるワイヤ62の量が調整でき、スライド量を制御することができる。
次に、表示側筐体部34の各開度におけるスライド機構部56の状態について、図10〜図12を参照する。
筐体部32、34の閉状態即ち、開度が0〔°〕の場合、図10に示すように、ヒンジ部36の内部において、回転体66は、既述のように、位置P1(図9)に配置されており、巻取り機構部60によるワイヤ62の巻取り量が最大となっている。この場合、スライド筐体部40のスライド量は0であり、例えば、スライド筐体部40の内部では、圧縮コイルばね54の伸びが最大値となっている。この圧縮コイルばね54は、一端側を表示側筐体部34のベース筐体部38に固定部80により設置され、他端側をスライド筐体部40に固定部82により設置されている。そして、スライド量が0の場合、固定部80、82間の距離は最大値となるように設定されている。
また、ワイヤ62の一端側は、スライド筐体部40の固定部84に設置されている。このような構成において、スライド筐体部40は、既述の第1の方向に向けて、圧縮コイルばね54の復元力を受ける。また、巻取り機構部60は、この復元力に対向し、スライド筐体部40がベース筐体部38の正面と重なる面積が増加する方向(第2の方向)に向けて、ワイヤ62の長さを維持させている。
また、筐体部32、34の開度が90〔°〕の場合、図11に示すように、ヒンジ部36内において、回転体66が位置P2(図9)側に移動するとともに、離脱部68が位置P4(図9)側に移動する。この状態において、巻取り機構部60は、スライド制御を行うためのワイヤ62を全量開放している。この状態において、スライド筐体部40のスライド量が最大となり、圧縮コイルばね54は、そのスライド量に応じて第1の方向に縮んでいる。そして、表示側筐体部34には、ヒンジ部36側に露出部46が形成され、内部に配置した操作ボタン48が操作可能な状態となっている。
更に、表示側筐体部34が最大開度として、例えば、165〔°〕まで開かれると、図12に示すように、ヒンジ部36内において、回転体66はP5(図9)側に接近するとともに、離脱部68がP1(図9)側に接近する。既述のように、開度が例えば、90〔°〕から最大開度までの間はスライド筐体部40をスライドさせない不感帯領域に設定しているので、巻取り機構部60から開放されるワイヤ62の長さや圧縮コイルばね54の伸縮量は変化させない。
上記のように、表示側筐体部34の開閉操作に応じて、巻取り機構部60がワイヤ62を巻取る状態の一例を図13に示す。
表示側筐体部34が閉状態である場合、図13のAに示すように、ワイヤ62は、例えば、位置P1に配置された回転体66から位置P2に向けて半径rの円弧85の周面に沿って配置される。この円弧85は、例えば、大滑車部64の外周面に対応しており、回転体66が移動する軌跡を示している。そして、位置P2において、ワイヤ62は、円弧85の内部に配置される。ワイヤ62は、例えば、対向させて配置したガイド86、87の側面に沿って、位置P2から対向側の位置P4まで円弧85内に配置され、再び位置P4で円弧85の周面上に配置される。また、ワイヤ62は、位置P4から位置P3に向けて円弧85に沿って配置され、位置P3の離脱部68において、例えば、円弧85の接線方向に向けて配置される。
ここで、ガイド86、87は、ワイヤ62をガイドする手段の一例であって、既述のガイド部70、72で構成されればよい。このガイド86、87は、例えば、半径rの扇形状に構成されており、所定の角度で構成されている。また、ガイド86、87は、円弧85内において、例えば、180度対向させた位置に配置させており、円弧85内に配置されたワイヤ62を各ガイド86、87において、半径である長さr毎に直線状にガイドすることができる。このような構成において、例えば、ガイド86、87が合同関係にある場合であって、180度対向させている場合には、図13に示すように、ワイヤ62は円弧85内で直線状に配置することができる。
この場合、巻取り機構部60内に配置されたワイヤ62の長さは、円弧85の半径r及び、ガイド86、87の一端と回転体66又は離脱部68の位置との成す角θ1 、θ2 を利用し、例えば、以下の式(1) を利用して決定することができる。
r(θ1 +θ2 )+2r ・・・(1)
この式(1) では、例えば、回転体66の位置P1から位置P2までの円周長と、位置P4から離脱部68の位置P3までの円周長を各角変数θ1 、θ2 を利用して算出するとともに、円弧85内に配置されるワイヤ62の長さを求めている。ここで、式(1) は、例えば、角変数θ1 、θ2 を弧度法によりラジアン(radian)で表す値を用いた場合を示している。
次に、表示側筐体部34の開操作の中間状態として、開度が例えば、90〔°〕の場合、図13のBに示すように、回転体66が位置P2に移動するとともに、離脱部68が位置P4に移動している。この携帯電話機30では、既述のように、開度が90〔°〕になるまでスライド制御を行うように設定しており、この開度において、スライド量が最大となる。即ち、巻取り機構部60は、スライド量を制御するワイヤ62の余長量が0である。この開度における巻取り機構部60内のワイヤ62の長さは、円弧85内に配置された2rとなる。即ち、既述の式(1) において、ワイヤ62のスライド量は、r(θ1 +θ2 )となる。
また、携帯電話機30が開状態となる場合として、図13のCに示すように、開度が例えば、165〔°〕となる場合、既述のように、スライド量が変化しない不感帯領域が設定されているので、巻取り機構部60内のワイヤ62の長さは、2rとなる。
上記の筐体部32、34の開度とスライド量の関係は、例えば、図14に示すように、開度が0〔°〕であるA状態から開度90〔°〕であるB状態までが一定の量でスライド量を制御している。この図14の縦軸は、ワイヤ62が巻取り機構部60から送り出されるスライド量の割合を示しており、スライド量が最大となる場合を1として設定している。そして、開度90〔°〕(B状態)に達すると、スライド量が最大となり、それ以上の開度では、不感帯領域として、スライド量は変化せず、最大開度(C状態)に達する。
従って、各ガイド86、87の角度θ1 、θ2 の大きさに応じて、円弧85上に配置されるワイヤ62の長さが決定され、スライド量が制御できるとともに、不感帯領域の幅、即ち、不感帯となる開度を設定することができる。
斯かる構成によれば、表示側筐体部の開度に応じて、巻取り機構部によりワイヤの巻取り量が制御でき、このワイヤの長さに応じて、スライド筐体部のスライド量を制御することができる。これにより、携帯電話機の開状態では表示側筐体部の機能部の配置スペースを拡大して操作ボタン等を配置させることができ、閉状態では電子機器の携帯性を維持できる。また、ヒンジ部の回転に連動し、筐体部同士の開閉操作を行うことにより、スライド動作が行われるので、スライド筐体部の内部側に使用頻度の高い機能部等を備えた場合、電子機器の操作の利便性が高められる。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について、図15、図16、図17及び図18を参照する。図15は、第3の実施の形態に係る携帯電話機のスライド動作と機能構成部とを連動させる構成例を示す図、図16は、操作側筐体部にスライド部を備える携帯電話機の外観構成例を示す図である。また、図17は、スライド動作と機能構成部とを連動させる他の構成例を示す図、図18は、開閉検知によるスイッチの連動機能構成例を示す図である。図15〜図18に示す構成は一例であって、これに限定されない。
この携帯電話機30は、本開示の電子機器の一例であって、表示側筐体部34を構成するスライド筐体部40がベース筐体部38上をスライドし、表示側筐体部34のヒンジ部36側に露出部46を露出させる。この露出部46内には、機能構成部として、例えば、操作ボタン48を備えている。この操作ボタン48は、例えば、スライド筐体部40のスライド動作に連動して機能させる構成である。そこで、ベース筐体部38とスライド筐体部40とが重なる部分には、スライド筐体部40の開閉検知手段を備えている。
この開閉検知手段として、例えば、ベース筐体部38上には、MRセンサ90を備えており、また、スライド筐体部40の背面側には、例えば、磁石92を備えている。そして、スライド筐体部40が閉状態としてスライド量が0で、露出部46が形成されない状態では、磁石92とMRセンサ90とを接近させる。また、スライド筐体部40が開状態となると、磁石92とMRセンサ90とを離間させる。この開閉検知手段は、例えば、MRセンサ92に対する磁石90の接近又は離間により生じる磁界の変化等により開閉を検出する。このMRセンサ92は、例えば、磁気抵抗素子(MR素子)等で構成すればよい。
なお、開閉検知手段は、磁気変化を利用したものに限られず、例えば、接触センサ等を利用してもよい。その他、このスライド筐体部40のスライド動作は、上記のように、表示側筐体部34の開度に応じて行えばよく、その説明を省略する。
次に、スライド機構を備えた携帯電話機30は、例えば、図16に示すように構成してもよい。
この携帯電話機100は、本開示の電子機器の一例であって、例えば、操作側筐体部の一部をスライドさせてもよい。そこで、この携帯電話機100は、操作側筐体部102と表示側筐体部104とをヒンジ部106で開閉可能に接続している。
この操作側筐体部102は、本開示の第2の筐体の一例であって、例えば、スライド筐体部108がベース筐体部110上に積層しており、既述のように、携帯電話機100の開閉操作に連動して、スライドさせればよい。そして、図16のAに示すように、携帯電話機100が開状態となれば、スライド筐体部108をスライドさせて、露出部112が形成され、ベース筐体部110の一部が露出される。このベース筐体部110には、機能構成部として、例えば、ワンタッチダイヤルボタン等の操作ボタン114を配置すればよい。また、図16のBに示すように、携帯電話機100が閉状態となると、スライド筐体部108をベース筐体部110に重なるようにスライドさせ、露出部112を無くし、操作ボタン114を覆う。
尚、操作側筐体部102と表示側筐体部104との開閉に連動してスライド筐体部108のスライド制御を行う構成は、上記実施の形態と同様に構成すればよい。スライド機構部は、例えば、制御部であるワイヤ62の巻取り機構部60をヒンジ部106内に備えるとともに、付勢部である、図示しない圧縮コイルばねを操作側筐体部102の内部に備えればよく、その説明を省略する。
そして、操作側筐体部102側をスライドさせる携帯電話機100は、例えば、図17に示すように、スライド筐体部108の開閉検知手段として、MRセンサ90及び磁石92を備えればよい。
開閉検知に応じた機能構成部の機能を連動させる構成として、例えば、図18のAに示すように、磁石92がMRセンサ90から離れている場合、即ち、スライド筐体部40、108がスライド状態である場合には、MRセンサ90が開状態を検知する。そして、その検知出力を例えば、携帯電話機30、100の制御部に備えたスイッチ部116に送信することで、操作ボタン48を操作可能にする。その他、例えば、操作ボタン48や、操作入力部42に内蔵したキーイルミを発光させたりしてもよい。
また、図18のBに示すように、スライド筐体部40、108が閉状態となる場合には、磁石92がスライドし、MRセンサ90に接近することで、MRセンサ90は、閉状態に移行したことを検知する。そして、この検出出力をスイッチ部116側に通知することで、機能構成部の連動解除として、例えば、操作ボタン48に対する入力操作の無効化やキーイルミの発光停止等を行う。
次に、携帯電話機の制御構成例について、図19を参照する。図19は携帯電話機のハードウェア構成例を示す図である。図19に示す構成は一例であって、これに限定されない。
プロセッサ120は、記憶部122に記憶されているOS(Operating System)や、その他の制御プログラム等を演算し実行するための演算手段の一例であって、携帯電話機30、100の制御部の構成部品として機能する。このプロセッサ120は、例えば、CPU(Central Processing Unit )で構成すればよい。そして、制御プログラムの演算実行により、スライド筐体部40のスライド動作、即ち既述の開閉検知に応じて、機能構成部の機能を連動させるように制御指示を出力する。
記憶部122は、情報や制御プログラム等の記憶手段又は記録手段の一例であって、携帯電話機30、100の動作等を制御するOSや、その他の制御プログラム等や、機器情報等を記録している。記憶部122は、例えば、プログラム記憶部1222、データ記憶部1224等で構成されている。
プログラム記憶部1222は、携帯電話機30、100の動作制御を行うOSやその他の制御プログラム等を記憶する手段の一例であって、例えば、ROM(Read Only Memory)で構成される。このプログラム記憶部1222は、例えば、スライド筐体部40の開閉状態に応じて、操作ボタン48に通電させるプログラムやキーイルミの発光制御プログラム等を記憶している。
データ記憶部1224は、機器情報等を記録する手段の一例であって、例えば、ROMやフラッシュメモリ等で構成されている。
なお、プログラム記憶部1222やデータ記憶部1224は、例えば、電気的に内容を書き換えることができるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory )等で構成されてもよい。
また、動作制御プログラム等は、プログラム記憶部1222やデータ記憶部1224等に記憶されたものに限られない。例えば、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク光磁気ディスク等のコンピュータで読出し可能な記録媒体に記憶されているものを利用してもよい。さらに、ネットワーク上にあるサーバやデータベース等からプログラム等を読み込んで利用してもよい。
RAM124は、上記の制御プログラム等を実行させるためのワークエリアを構成している。
また、発光制御部126は、携帯電話機30、100に搭載した発光機能部に対する発光指示を出力する手段の一例であって、例えば、操作入力部42や操作ボタン48の内部側に設置したLED(Light Emitting Diode)等の発光制御を行う。
電源制御部128は、携帯電話機30、100の各機能部に対する電源供給制御手段の一例であって、例えば、スライド筐体部40が開位置に移動したことを検知した場合に、操作ボタン48に対して通電制御を行う。
斯かる構成によれば、スライド筐体部40のスライドにより操作ボタン48等が露出されたことを検知した場合にのみ操作ボタン48等に対する通電制御を行い、操作可能な状態で機能させるので、省エネ化を図ることができる。
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について、図20、図21及び図22を参照する。図20は、第4の実施の形態に係る携帯電話機の外観構成例を示す図、図21は、スライド機構部の構成例及び開閉状態の一例を示す図、図22は、開閉検知手段による機能構成部の連動状態の一例を示す図である。図20〜図22に示す構成は一例であって、これに限定されない。
この携帯電話機130は、本開示の電子機器の一例であって、操作側筐体部132と表示側筐体部134とをヒンジ部136により開閉可能に接続している。そして、この表示側筐体部134の内部には、携帯電話機130の開閉に連動して、例えば、表示側筐体部134の側面側から突出させるスライド筐体部140を収納している。
この表示側筐体部134は、既述の第2の筐体の一例であって、例えば、折り畳み状態において、操作入力部42側に配置されるフロントケース137と、携帯電話機130の外部側に配置されるリアケース138とを重ねて接合している。そして、表示側筐体部134の側面側には、スライド筐体部140を収納するための収納窓部139が形成されている。この収納窓部139は、例えば、フロントケース137とリアケース138の接合部分を中心に形成されればよい。
表示側筐体部134の内部には、図21に示すように、1又は複数本のスライドヒンジ144が例えば、一端側をリアケース138に対して設置され、他端側をスライド筐体部140内に接触させ、又は内部に貫通させて設置されている。このスライドヒンジ144は、例えば、スライド筐体部140を保持するとともに、スライド方向にガイドするガイド溝、又はガイドレールの一例であって、例えば、スライド筐体部140の両端側に合せて設置されている。このスライド筐体部140には、例えば、図示しない背面側にスライドヒンジ144を沿わせる凹凸部を形成してもよく、又は内部にスライドヒンジ144を収納する収納部を備えてもよい。そして、スライド筐体部140は、スライドヒンジ144に沿ってスライドし、表示側筐体部134から突出させ、又は収納される。
また、この表示側筐体部134の内部には、スライド筐体部140に対する付勢部として、例えば、ばね149を備えている。このばね149は、スライド筐体部140のスライド機構部18を構成しており、例えば、一端側をリアケース部138に設置し、他端側をスライド筐体部140に設置している。そして、このばね149は、スライド筐体部140が表示側筐体部134から突出する方向に向けて復元力により付勢している。さらに、スライド筐体部140には、スライド量を制御する制御部16として、ワイヤ62を備えている。このワイヤ62は、スライド機構部18を構成しており、その長さを調整することで、スライド筐体部140のスライド量を制御する。このワイヤ62は、一端側をヒンジ部136内に設置した巻取り機構部60に固定させている。また、リアケース部138には、ワイヤ62を巻取り機構部60からスライド筐体部140側に向けて導くためのローラ145を備えている。
このような構成において、携帯電話機130に対して開操作を行うと、図21のAに示すように、例えば、ヒンジ部136の回転に連動して巻取り機構部60からワイヤ62が開放される。これにより、ばね149の復元力によりスライド筐体部140が表示側筐体部134から突出する。このワイヤ62の開放量がスライド筐体部140のスライド量に相当する。
また、携帯電話機130が閉状態となると、図21のBに示すように、巻取り機構部60によってワイヤ62が巻取られ、スライド筐体部140は表示側筐体部134内に引き込まれるとともに、ばね149が圧縮状態となり、スライド制御が行われる。
このスライド筐体部140に搭載した機能構成部142は、表示側筐体部134からの突出状態、もしくは携帯電話機130の開閉動作に連動して通電させてもよい。そこで、図22に示すように、開閉検知手段として例えば、リアケース138にMRセンサ90を設置するとともに、スライド筐体部140上に磁石92を設置する。これにより、既述のように、スライド筐体部140の突出状態又は収納状態に連動して、機能構成部142側に対する通電制御が行われる。この機能構成部142は、例えば、入力デバイスとして、ワンタッチダイヤルボタンやタッチパネル、カメラ機能、音声出力機能等を備えている。そして、この通電制御により、表示側筐体部134から突出した状態において、機能構成部142が利用可能にすることができる。
なお、上記のように、表示側筐体部134内部に収納したスライド筐体部140を側面側から突出させる構成に限られず、例えば、表示側筐体部134の先端側から長手方向に突出させてもよい。また、このスライド筐体部140を操作側筐体部132の内部に収納させてもよい。さらに、付勢部としてばね149の復元力を利用しているが、これに限られず、スライド筐体部140に対して付勢力を付与する手段として、例えば、ゴム材等の弾性材料を利用してもよい。
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について、図23、図24及び図25を参照する。図23は、第5の実施の形態に係る携帯電話機の構成例を示す図、図24は、表示側筐体部の構成例を示す図、図25は、ストッパ機構部の構成例を示す図である。図23〜図25に示す構成は一例であって、これに限定されない。
この携帯電話機150は、本開示の電子機器の一例であって、操作側筐体部152と表示側筐体部154とをヒンジ部156により開閉可能に接続している。そして、既述のように、筐体部間の開閉に連動して、スライド筐体部160をスライドさせ、ベース筐体部158の一部を露出させるため、付勢部として例えば、ばね166がスライド方向(例えば、第1の方向)に付勢している(図23のA)。これにより露出部162が形成され、内部の機能構成部164が機能する。また、この携帯電話機150は、ばね166の張力又は復元力に対抗する構成として、例えば、ストッパ機構部168、170を備えている。
このストッパ機構部168は、例えば、ベース筐体部158の表面部に設置されており、ストッパ機構部170は、スライド筐体部160のベース筐体部158と対向する面部に設置されている。そして、ストッパ機構部168、170は、図23のBに示すように、携帯電話機150の筐体部152、154が閉状態の場合に対向して接近する位置に配置され、ストッパ機構部168とストッパ機構部170とが係止されて、ばね166の付勢力に対抗して、スライド動作を制限している。
そこで、この携帯電話機150の表示側筐体部154は、図24に示すように、例えば、表示部44を備えたスライド筐体部160がばね166やガイドレール172を設置したベース筐体部158上に載置される。このスライド筐体部160の内面側には、ストッパ機構部170がベース筐体部158側に設置したストッパ機構部168の位置に合せて設置されている。ストッパ機構部168は、例えば、ガイドレール172上に配置されている。これらストッパ機構部168、170は、閉状態において、ばね166の付勢力に対抗し、スライド筐体部160を所定位置に維持させるための制御手段の一例である。
ストッパ機構部168、170は、図25に示すように、例えば、側面部分の一部に係止爪174、176を備えており、係止爪174、176同士を係止させることで、所定方向へのスライドを制限する構成である。また、ストッパ機構部168は、例えば、ベース筐体部158上に固定するとともに、微量の回転移動を可能にするための固定軸部178を備えている。例えば、図25のAに矢印で示すように、スライド筐体部160のスライド動作に伴い、ストッパ機構部170がスライド移動した場合、ストッパ機構部168を回転移動させて係止爪176を変位させる。そして、ストッパ機構部168の係止爪176に対して、ストッパ機構部170の係止爪174を通過させる。また、図25のBに示すように、ロック状態では、ストッパ機構部168の変位を解除することで、係止爪174、176同士を係止させる。
ストッパ機構部168は、例えば、携帯電話機150の開閉状態に連動して変位するようにしてもよく、又は変位動作を行うための図示しない操作スイッチを携帯電話機150に設置してもよい。
また、ストッパ機構部168、170は、携帯電話機域150の閉状態においてロックさせる場合(図23)を示したが、これに限られない。例えば、スライド機構部160が移動した位置にもストッパ機構部を設置し、スライド位置を設定するようにしてもよい。
なお、上記以外の携帯電話機150の構成は、既述の構成を利用すればよく、詳細な説明を省略する。
斯かる構成によれば、携帯電話機の開閉状態に連動して、付勢部とストッパ機構部とによりスライド機構部のスライド動作を行うことが可能となる。
〔第1、第2、第3、第4及び第5の実施の形態の利点、特徴事項及び他の実施の形態〕
(1) 上記の電子機器2として携帯電話機30は、例えば、操作側筐体部32と表示側筐体部34とを重ねた構造であって、表示部側筐体部34に備えたスライド筐体部40をスライドさせて、筐体部内部に配置した操作ボタン48を露出させる構成である。
(2) 上記の電子機器2として携帯電話機30は、筐体部32、34同士を折り畳み可能に接続したヒンジ部36を設置し、折り畳みを開くときにスライド筐体部40が自動でスライドして操作ボタン48を露出させる構成である。
(3) 本開示の電子機器としての携帯電話機30は、表示部44を備えるスライド筐体部40と、操作ボタン48を備えるベース筐体部38とを重ねて構成し、携帯電話機30が閉状態では、重なっているため装置全長を延長させない。また、開状態では、自動的にスライド筐体部40をスライドさせて、操作ボタン48を露出させる。これにより、露出部内に配置した操作ボタン48の使用を可能にする。
(4) 従来のように、表示側筐体部の表示部の下部側に操作ボタンを配置する場合、表示部を大型化するには、電子機器の全長を延長させて大型化するか、又は、操作ボタンを小型化する必要があった。これに対し、本開示の電子機器によれば、操作ボタンの利用時にのみ装置の全長を延長するので、携帯性やハンドリングのし易さを阻害することがない。また、操作ボタンの配置スペースが確保されるので、操作ボタンを小型化することがなく、操作性を阻害することがない。
(5) 本開示の構成によれば、表示部の大型化やワンタッチダイヤルボタン等の操作ボタンの大型化を可能とし、操作性を向上させることができる。そして、表示部を大型化すれば、例えば、表示させる文字や映像を大きくしても、その内容の視認性を向上させることができる。また、操作ボタンを大型化すれば、例えば、操作性を重視したさせた形状等を採ることが可能となる。
(6) 上記実施の形態における巻取り機構部60によるスライド量の制御は、例えば、以下に示す値に設定することができる。例えば、携帯電話機30の開度を90〔°〕以上の開き角度を不感帯とする場合、位置P1又は位置P3とガイド部86、87(図13)のなす角θ1 =θ2 =π/2〔rad 〕に設定する。そして、上記の式(1) において、スライド量に寄与するワイヤ62の長さは、πrで示される。そこで、例えば、10〔mm〕のスライド量を設定する場合、半径は、
πr=10〔mm〕
=10/π≒3.2〔mm〕
となり、巻取り機構部60の直径は、例えば、6.4〔mm〕とすることができる。
(7) 上記実施の形態では、ベース部に対するスライド部のスライド方向について、第1の方向として、例えば、電子機器2の長手方向の場合を例示したが、これに限られない。例えば、第1の筐体と第2の筐体の開閉に連動して、スライド部がベース部に対して横方向にスライドするように構成してもよい。又は、スライド部をベース部に対して回転方向にスライドさせてもよい。この場合、例えば、スライド部又はベース部の平面部について、一辺の長さが直行方向の辺の長さに対して十分に長い長方形であれば、回転移動した場合、ベース部とスライド部とが重ならない露出部が形成される。そこで、この露出部に対して、入力部や表示部等の機能構成部を配置することが可能となる。斯かる構成によれば、電子機器の開状態において、機能構成部の配置スペースを拡大し、閉状態では電子機器の携帯性を維持できる。
(8) 上記実施の形態では、電子機器2の一例として、例えば、操作入力部42がテンキー(10キー)やカーソルキー等を備えた携帯電話機30、100等を示したが、これに限られない。例えば、図26に示すように、所謂QWERTYキー等の多数の操作キーを備える電子機器200を利用してもよい。このような電子機器200として、例えば、携帯型のPC(Personal Computer) やスマートフォン、PDA等を利用することができる。
そこで、この電子機器200は、操作側筐体部202と表示部44を備えた表示側筐体部204とがヒンジ部206により開閉可能に接続されている。この操作側筐体部202は、例えば、隠れキー212を備えたベース筐体部208と、操作入力部42を備えたスライド筐体部210とで構成されている。
そして、このスライド筐体部210は、操作側筐体部202と表示側筐体部204との開閉状態に応じて、図26のAに示すように、矢印Y方向にスライドさせることで、スライド筐体部210により覆われていた隠れキー212を露出させる。また、図26のBに示すように、筐体部202、204同士が閉状態の場合には、スライド筐体部210がベース筐体部208に重なることで、隠れキー212を露出させず、機能させない構成である。
この隠れキー212は、例えば、使用頻度が低いファンクションキー、コマンドキー、ショートカットキー等を割当てることができる。
なお、筐体部同士の開閉状態に連動して、スライド筐体部210をスライドさせる構成は、上記実施の形態に示す構成を利用すればよい。例えば、既述のように、ベース筐体部208の内部にスライド筐体部210を第1の方向として、スライドさせる方向に付勢する付勢部を備えればよい。また、ヒンジ部206内部には、開閉状態に応じてスライド筐体部210に固定させたワイヤ等の巻取り量を制御する制御部として巻取り機構部を備えればよい。
また、この電子機器200においても、ベース筐体部208の内部に備える機能構成部は、隠れキー212に限られず、例えば、カメラ機能部や音声入出力部、又は表示部等であってもよい。
斯かる構成によれば、例えば、複数の入力キーを備えるQWERTYキーにおいて、キーの配置空間を拡大させることができ、電子機器200の大型化を防止できるとともに、キーの大型化による操作性を向上させることができる。
(9) 上記実施の形態では、折り畳み式の電子機器において、スライド部のスライド動作により露出したベース部側に機能構成部を搭載する場合を示したが、これに限られない。例えば、図27に示すように、電子機器220の開状態において、スライド部230の背面側に機能構成部22を設置してもよい。
この電子機器220は、筐体部222、224が閉状態の場合には、スライド部230がベース部228の全部を覆っており、開状態となると、スライド部230が例えば、長手方向にスライドする。これにより、電子機器220の内側には、既述のように、露出部231が形成される。また、同時に、スライド部230の背面側には、例えば、ベース部228の上部側に、スライド部230のスライド量に応じて露出部232が形成される。そこで、この露出部232に機能構成部22を設置することができる。この場合、この機能構成部22として、例えば、発光機能部や音声入出力部、カメラ機能部等を搭載してもよい。
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
(付記1) ヒンジ部を介して第1の筐体と折り畳み可能に連結され、前記第1の筐体の対向面と近接する折り畳み状態である閉じ位置と、前記第1の筐体の対向面から離れた開き位置との間で、前記閉じ位置から前記ヒンジ部を中心として回転可能な第2の筐体を有する電子機器であって、
前記第2の筐体は、
前記ヒンジ部を介して移動可能に前記第1の筐体と連結されたベース部と、
前記ベース部に設けられたスライド溝に沿って移動可能なスライド部と、
前記ベース部の正面と重なる面積が減少する第1方向へ前記スライド部を付勢する付勢部と、
前記第2の筐体が前記閉じ位置にある場合に、前記付勢部による付勢に抗して、前記ベース部の正面と重なる面積が増加する第2方向へ前記スライド部を位置させるように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、電子機器。
(付記2) 前記ベース部は、
前記スライド部が第1方向へ移動した場合に露出し、前記第2方向へ移動した場合に前記スライド部に覆われる位置に、入力部を配置したことを特徴とする、付記1に記載の電子機器。
(付記3) 前記付勢部は、一端側を前記ベース部に設置し、他端側を前記スライド部に設置した圧縮コイルばねを有し、
前記制御部は、一端側を前記スライド部に設置したワイヤと、前記ワイヤの他端側を外周面に設置し前記ヒンジ部の回転に連動して回転する回転体とを有し、
前記回転体は、前記開き位置から前記閉じ位置へ移動する際の前記ヒンジ部の回転に連動して回転することにより前記ワイヤを巻き取る、
ことを特徴とする、付記1又は2に記載の電子機器。
(付記4) 前記回転体は、前記第2の筐体が前記開き位置から前記閉じ位置の方向への前記ヒンジ部を中心とした移動において前記ワイヤの巻き取りを抑制する所定範囲の不感帯を有することを特徴とする、付記3に記載の電子機器。
(付記5) 前記ベース部に対する前記スライド部の移動位置に基づいて開閉状態を検知する開閉検知手段と、
該開閉検知手段による開検知に基づいて、前記入力部に対する通電状態を制御する電気制御部と、
を備えることを特徴とする、付記2に記載の電子機器。
(付記6) 前記制御部は、前記回転体を周囲に回転移動させて、前記ワイヤを周囲に配置させるとともに内部側に貫通させて巻込む滑車部と、
該滑車部内部に配置され、前記ワイヤを内部に導く角度が設定されたガイド部と、
前記回転体の回転動作に連動して前記滑車部の周囲を回転させ、前記滑車部から前記ワイヤを離脱させる離脱部と、
を備えることを特徴とする、付記3に記載の電子機器。
(付記7) 前記制御部は、前記第2の筐体が前記閉じ位置にある場合に、前記ベース部と前記スライド部とを係止させるストッパ機構部を備えることを特徴とする、付記1又は2に記載の電子機器。
(付記8) 前記所定範囲の不感帯は、前記ヒンジ部を中心とした前記第1の筐体と前記第2の筐体との角度が少なくとも165度から90度の範囲であることを特徴とする、付記4に記載の電子機器。
(付記9) 第1の筐体と、
第2の筐体と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを開閉可能に接合するヒンジ部と、
を備え、
前記第2の筐体は、前記第1の筐体と接続するベース部と、
該ベース部に積層し又は内蔵され、前記ベース部に沿ってスライドさせるスライド部と、
前記第1の筐体との開閉状態に応じて、前記スライド部のスライド量を決め、前記スライド部又は前記ベース部の一部又は全部を露出させるスライド機構部と、
を備えることを特徴とする、電子機器。
以上説明したように、本開示の電子機器の好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。