《第1の実施形態》
以下、本発明の情報端末の第1の実施形態について図1〜図11に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態の情報端末としての携帯電話機100を示す平面図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1(a)における携帯電話機100の表示画面16の長手方向(縦方向)をY軸方向、短手方向(横方向)をX軸方向、表示画面16に直交する方向(厚さ方向)をZ軸方向として、説明するものとする。
この携帯電話機100は、図1(a)に示すような第1状態と、図1(b)に示すような第2状態と、図2に示すような第3状態との間で遷移可能(変形可能)である。
このうち、図1(a)の第1状態は、第1筺体11(図1(a)では不図示、図1(b)参照)と第2筺体12(表示画面16を有する筺体)とが重なった状態である。この第1状態は、携帯電話機100の全長(Y軸方向(縦方向)に関する全長)が最も短くなる。したがって、主に、携帯電話機100の持ち運びの際や、簡易な情報の閲覧(通話履歴やインターネット上の情報等の閲覧)の際などにおいて、この第1状態に設定される。
また、図1(b)の第2状態は、図1(a)の第1状態から第2筺体12が上方(+Y方向)にスライド移動して、携帯電話機100の全長が最大まで延びた状態である。この第2状態では、第1筺体11の第1の操作ボタン14が露出した状態となる。したがって、主に、通話や第1の操作ボタン14を用いた送信メールの作製などの操作を行う場合に、この第2状態に設定される。
また、図2の第3状態は、第1状態(図1(a))から第2筺体12が第1筺体11に対して90°回転した状態である。この場合、表示画面16が横長になるため、主に、テレビ(ワンセグ放送)の視聴、ビデオの視聴、インターネット上の情報や受信メールの閲覧などを行うときに、この第3状態に設定される。
以下、携帯電話機100の具体的な構成について説明する。
携帯電話機100は、図1(b)に示すように、第1の操作ボタン14が設けられた第1筺体11と、表示画面16及び第2の操作ボタン18が設けられた第2筺体12とを備えている。また、第1筺体11と第2筺体12との間には、図1(a)から第2筺体12を分離した状態を示す図3(a)に示すように、略正方形板状の中間部材13が設けられている。
第1筺体11は、図1(b)に示すように、扁平な略直方体形状を有しており、その表側の面(+Z側の面)には、テンキーや通話開始キー、通話終了キーなどを含む第1の操作ボタン14が設けられている。また、第1の操作ボタン14の−Y側近傍には、送話部22が設けられている。送話部22は、第1筺体11内部に設けられたマイクロフォンを含んでいる。また、図3(a)に示すように、第1筺体11の表側の面(+Z側面)の上端部(+Y側端部)近傍には、第1係合部としての突出部(ピン)20が設けられている。このピン20は、図1(a)、図1(b)の縦断面図である図5(a)、図5(b)に示すように、+Z方向に突出している。
中間部材13は、図3(a)に示すように、回転軸35を介して、第1筺体11に回転自在に取り付けられている。この中間部材13には、1/4円弧状のガイド孔としての貫通孔36が貫通形成されている。中間部材13が第1筺体11に回転自在に取り付けられた状態では、ピン20がこの貫通孔36を貫通した状態となる(図5(a)、図5(b)参照)。したがって、中間部材13は、図3(a)の状態から、図3(b)→図3(c)→図3(d)のように、回転軸35を中心として回転することができるが、ピン20が貫通孔36を貫通しているため、その回転角度がほぼ90°に規制されている。
また、中間部材13の4箇所の角部近傍には、Z軸回りに回転可能なローラ38が設けられている。このローラ38の側面は、円弧状に湾曲している(図4(b)参照)。なお、このローラ38の機能や作用等については後述する。
更に、中間部材13にはバネ接合ピン42が突設されている。このバネ接合ピン42には、図6(a)に示すように、ねじりコイルバネ44の一端部が固定されている。
図1(b)に戻り、第2筺体12は、第1筺体11と同様、扁平な略直方体形状を有しており、その+Z側面のほぼ中央部には、液晶パネルや有機ELディスプレイなどから成る表示画面16が設けられている。また、表示画面16の−Y側近傍には、方向キーやメニューキーなどを含む第2の操作ボタン18が設けられ、+Y側近傍には、受話部24が設けられている。受話部24は、第2筺体12内部に設けられたスピーカを含んでいる。
図4(a)は、第2筺体12を裏面(−Z側の面)側から見た状態を示す。この図4(a)に示すように、第2筺体12の裏面側には、一対のレール部26a、26bと、凹部28と、第2係合部としての係合溝30と、バネ接合ピン32とが設けられている。
一対のレール部26a,26bは、Y軸方向を長手方向とし、第2筺体12の裏面(−Z側の面)の−X側端部及び+X側端部に設けられている。これらレール部26a,26bは、図4(a)、及びレール部26と前述したローラ38とが組み合った状態を示す図4(b)を総合すると分かるように、断面円形のシャフト状の部材である。これらレール部26a,26bには、前述した中間部材13に設けられたローラ38の湾曲した側面が常時接触している。したがって、図6(a)、図6(b)に示すように、第2筺体12が第1筺体11(中間部材13)に対して摺動(スライド)すると、ローラ38がレール部26a,26bを一方向(以下、「スライド方向」と呼ぶ)に案内する。また、レール部26a,26bがシャフト状であり、かつローラ38の側面が円弧状に湾曲していることから、第2筺体12と第1筺体11とをZ軸方向に引き離すような力が作用しても、第2筺体12と中間部材13との間の分離はほとんど生じない。
なお、上記のようなレール部26a、26bとローラ38との組み合わせを採用する場合に限らず、例えば、図4(c)に示すように、断面U字状(コ字状)のレール部126と、これに係合する断面L字状の部材138との組み合わせなどを採用することもできる。すなわち、本実施形態では、第2筺体12をY軸方向に案内して、かつ第2筺体12と中間部材13との分離を抑制できる構造であれば、種々の構造を採用することが可能である。
凹部28は、図4(a)に示すように、第2筺体12の−Z側の面のほぼ全域にわたって形成されており、図5(a)、図5(b)に示すように、中間部材13の厚さ(Z方向に関する厚さ)とほぼ同一の深さを有している。この凹部28は、第2筺体12がY軸方向にスライド移動しても、第2筺体12と中間部材13とが接触しないようにするためのものである。
係合溝30は、図5(a)、図5(b)に示すように、凹部28から更に深く掘り下げ形成されている。この係合溝30は、図4(a)に示すように、Y軸方向に延びる第1溝部30aと、第1溝部30aの−Y側端部からX軸及びY軸に交差する方向に延びる第2溝部30bとを有している。このうち、第2溝部30bの一端部(第1溝部30aとは反対側の端部)は、かぎ状に折れ曲がった形状となっている。この第2溝部30bのかぎ状に折れ曲がった端部は、図4(a)に示すように、第2筺体12のY軸方向に関する全長の中点位置近傍に位置している。この係合溝30には、図5(a),図5(b)に示すように、第1筺体11から突設されたピン20の+Z側の端部が係合する。
バネ接合ピン32には、図6(a)等に示すように、ねじりコイルバネ44の他端部が、固定されている。
次に、上述のように構成される携帯電話機100が、第1、第2、第3状態の間で遷移する際の動作について、図6〜図10に基づいて説明する。なお、図6〜図9では、図示の便宜上、第1筺体11や中間部材13を破線にて示し、第2筺体12(レール部26a,26bや係合溝30(第1溝部30a、第2溝部30b))を実線にて示している。
(1)第1状態から第2状態へのスライド動作
ここでは、第1筺体11と第2筺体12とが重なった状態(第1状態)(図6(a))から、第2筺体12がスライドして、携帯電話機100のY軸方向の全長が最大となる状態(第2状態)(図7(b))になるまでの動作について説明する。
図6(a)の第1状態では、ピン20が、第1溝部30aの上端部(+Y側端部)に位置している。この場合、ねじりコイルバネ44の弾性力(ねじりコイルバネ44が、そのなす角を広げる方向に発生する力)により、バネ接合ピン32部分には、図6(a)に示す矢印方向の付勢力F1が付与されている。このため、携帯電話機100(第1筺体11、第2筺体12及び中間部材13)では、第1筺体11と第2筺体12に対して外部からY軸方向の力が加わらない限り、図6(a)の状態を維持し続ける。
次いで、図6(b)に示すように、ユーザが、第2筺体12に対して、ねじりコイルバネ44の付勢力F1に抗する力(白抜き矢印方向の力(fa))を付与すると、第2筺体12が+Y方向にスライド移動する。この図6(b)の状態では、ねじりコイルバネ44による、第2筺体12を+Y方向に移動させる力と、−Y方向に移動させる力とがほぼ釣り合っている。
そして、ユーザが、第2筺体12に力faを更に作用させて、図6(b)の位置よりも更に第2筺体12を+Y方向にスライドさせると、図7(a)に示すように、ねじりコイルバネ44の付勢力F2が、バネ接合ピン42付近に作用する。したがって、第2筺体12は、その後、図7(b)に示す位置(ピン20の先端部が第1溝部30aの下端部(−Y端部)に当接する位置)まで、自動的にスライド移動することになる。この図7(b)の状態でも、ねじりコイルバネ44の付勢力F2が、第2筺体12と中間部材13の間に働き続けるので、各筺体11、12に対して外部から力が加わらない限り、携帯電話機100は、図7(b)の状態を維持し続ける。
なお、図6(a)〜図7(a)の状態では、ピン20の先端部が第1溝部30aに係合しているため、ピン20に対する第2筺体12のY軸方向以外の移動が拘束されている。このため、第2筺体12とレール部26a,26b等を介して接続されている中間部材13についても、図6(a)〜図7(a)の間は、反時計回りに回転することができないようになっている。
(2)第2状態から第3状態への回転・スライド動作
ここでは、携帯電話機100のY軸方向に関する全長が最大になった状態(第2状態)(図7(b))から、第2筺体12が反時計回り(左回り)に回転して、全体的に概略T字状になる(第3状態)(図9(b))までの動作について説明する。
まず、図7(b)の状態から、ユーザが、図8(a)に白抜き矢印で示す方向の力fbを付与すると、中間部材13及び第2筺体12は、矢印D1方向(反時計回り(左回り))の回転(回転軸35を中心とした傾倒)を開始する。この場合、図8(a)に示すように、ピン20は、1/4円弧状の貫通孔36に沿った相対移動を行う。また、ピン20の先端部は、図8(a)に示すように、係合溝30の第2溝部30bに沿った相対移動も行う。この場合、ピン20の先端部が第2溝部30bに沿って相対移動することにより、第2筺体12は、中間部材13に対して、矢印D2方向(スライド方向)にスライド移動するようになっている。
また、ユーザが、図8(a)の状態から、更に、第2筺体12に対して矢印fb方向の力を付与すると、図8(b)や図9(a)に示すように、中間部材13及び第2筺体12が、矢印D1方向に更に回転する。また、第2筺体12は、中間部材13に対して、矢印D2方向(スライド方向)に更にスライド移動する。
このようにして、図9(b)に示すように、中間部材13が90°回転すると、ピン20は、貫通孔36の端部(図7(a)の状態で、回転軸35の+X側に位置していた端部)に当接する。これにより、中間部材13の第1筺体11に対するそれ以上の回転が規制される。また、図9(b)の状態では、ピン20の先端部が、係合溝30の第2溝部30bのかぎ状に折れ曲がった端部に位置する。この場合、図4(a)に示すように、第2溝部30bのかぎ状に折れ曲がった端部が、第2筺体12の長手方向の中点位置近傍に位置しているので、ピン20の先端が、図9(b)の位置に位置することで、携帯電話機100が全体としてT字状の形状をなすようになる。
なお、上記図8(a)〜図9(b)に至るまでの間は、ねじりコイルバネ44の弾性力により、中間部材13には、時計回り(右回り)の力が常時付勢されている。したがって、ユーザは、当該弾性力に抗する力を、第2筺体12に付与する必要がある。
ここで、中間部材13の回転軸35の外周には、図10(a)に示すように、所定間隔(90°間隔)で、2つの凹部35a,35bが形成されている。また、回転軸35には、突起部材46が−X方向から常時当接している。この突起部材46には、圧縮コイルバネ48の弾性力が−X方向から常時付与されている。この場合、例えば、携帯電話機100が第1状態及び第2状態にあるときに、凹部35aに突起部材46が嵌合し(図10(a)参照)、携帯電話機100が第3状態にあるときに、凹部35bに突起部材46が嵌合する(図10(c)参照)。
すなわち、例えば、携帯電話機100が第2状態にある状態から、図8(a)〜図9(b)に示すように、ユーザが中間部材13及び第2筺体12を回転させると、図10(b)に示すように突起部材46が凹部35aから外れる。そして、図9(b)のように、回転軸35が90°回転してT字状の形状をなす(第3状態)と、突起部材46は、図10(c)に示すように、回転軸35の凹部35bに嵌合する。したがって、この突起部材46の凹部35bへの嵌合により、ユーザは、携帯電話機100が第3状態になったことを、クリック感にて指先で感じ取ることができる。このように、本実施形態では、突起部材46と圧縮コイルバネ48により、凹部35bと係合して中間部材13の回転を抑制するクリック機構が構成されている。
なお、携帯電話機100を第3状態から第2状態に遷移させる場合には、ユーザは、図9(b)の状態から前述した力fbとは逆向きの力を第2筺体12に加えれば良い。これにより、携帯電話機100を、図9(b)→図9(a)→図8(b)→図8(a)→図7(b)という順に、遷移(変形)させることができる。この場合、回転軸35と突起部材46との位置関係は、図10(c)→図10(b)→図10(a)の順に変化するので、図10(a)のように突起部材46が凹部35bへ嵌合することにより、ユーザは、第3状態から第2状態に遷移したことを、クリック感にて感じ取ることができる。
また、携帯電話機100を第2状態から第1状態に遷移させる場合には、ユーザは、図7(b)の状態から前述した力faとは逆向きの力を第2筺体12に加えれば良い。これにより、図7(b)→図7(a)→図6(b)→図6(a)という順に、携帯電話機100を遷移(変形)させることができる。
図11は、本実施形態の携帯電話機100におけるアプリケーションの自動起動に関する制御系を示すブロック図である。
この図11に示すように、本実施形態のアプリケーションの自動起動に関する制御系は、主制御装置120と、第1状態検出センサ101、第2状態検出センサ102、第3状態検出センサ103と、アプリケーション選択手段110と、表示画面16とを備えている。
第1状態検出センサ101は、携帯電話機100が、第1状態にあることを検出するセンサである。このセンサ101としては、例えば、第1筺体11と第2筺体12のいずれか一方に設けられたホールセンサやリードスイッチと、いずれか他方に設けられた永久磁石の組み合わせを採用することができる。これら永久磁石とホールセンサ(リードスイッチ)は、携帯電話機100が第1状態になったときに対向する位置関係で、配置しておけば良い。
その他のセンサ(第2状態検出センサ102、第3状態検出センサ103)も、上記第1状態検出センサと同様に構成することができる。なお、3つのセンサのうちの少なくとも2つにおいて、永久磁石を共通とすることとしても良い。すなわち、例えば、第1、第2状態検出センサ101、102において永久磁石を共通にする場合には、第1状態のときに第1状態検出センサ101(ホールセンサ等)と永久磁石が対向し、第2状態のときに第2状態検出センサ102(ホールセンサ等)と永久磁石が対向する位置関係で各センサと永久磁石を配置するようにすれば良い。
アプリケーション選択手段110は、第1〜第3状態検出センサ(101〜103)の検出結果に基づいて、アプリケーションを選択する。なお、各状態で起動するアプリケーションについては、携帯電話機100の出荷時に、各状態において頻繁に使用される(使用される蓋然性の高い)と考えられるアプリケーションを予め設定しておいても良いし、ユーザが設定(又は適宜変更)するようにしても良い。
本実施形態では、例えば、ユーザが携帯電話機100を第1状態から第2状態に変更したことを、第2状態検出センサ102が検出すると、主制御装置120は、その検出結果を、アプリケーション選択手段110に出力する。また、アプリケーション選択手段110では、当該検出結果(第2状態であることを示す結果)に基づいて、第2状態と予め関連付けられているアプリケーション(例えば、メニュー画面)に関する情報を主制御装置120に出力する。そして、主制御装置120では、当該アプリケーションに関する情報に基づいて、アプリケーション(例えばメニュー画面)を、表示画面16上に表示する。
また、同様に、例えば、ユーザが携帯電話機100を第2状態から第3状態に変更したことを、第3状態検出センサ102が検出すると、主制御装置120は、その検出結果を、アプリケーション選択手段110に出力する。アプリケーション選択手段110では、当該検出結果(第3状態であることを示す結果)に基づいて、第3状態と予め関連付けられているアプリケーション(例えば、テレビ(ワンセグ放送)視聴アプリケーション)に関する情報を主制御装置120に出力する。そして、主制御装置120では、当該アプリケーションに関する情報に基づいて、テレビ(ワンセグ放送)視聴アプリケーションを、表示画面16上に表示する。
また、ユーザが携帯電話機100を第1状態に変更したときにも、同様の処理を行い、例えば、携帯電話機100をスリープモード(節電モード)に設定する。
このような制御を実行することにより、ユーザが携帯電話機100を変形させると同時に、使用する蓋然性の高いアプリケーションを自動的に起動することができるので、ユーザの使い勝手を向上することが可能となる。
以上、詳細に説明したように、本第1の実施形態によると、第1筺体11の表側の面(+Z側の面)の一部から突出したピン20が、円弧状の貫通孔36内を相対移動し、かつ、中間部材13が第1筺体11に対して回転している間に、ピン20の+Z側の端部が係合溝30(第2溝部30b)に沿って相対移動することにより、第2筺体12が中間部材13に対してスライド方向に案内される。したがって、ユーザは、中間部材13及び第2筺体12に対して回転力を付与するのみで、中間部材13(及び第2筺体12)を第1筺体11に対して回転させることができ、かつ、第2筺体12を中間部材13に対してスライド方向に移動させることができる。このように、一方向の力(回転方向の力)を付与するのみで、第1筺体11に対する第2筺体12の回転動作とスライド動作を実現することができるので、従来のように、第1状態又は第2状態から、第3状態とするまでに、2段階の作業を行わなければならなかった場合と比べて、その遷移(変形)における操作性を良好にすることが可能である。
また、本第1の実施形態によると、第1筺体11と中間部材13との間には、スライド方向の一側及び他側に付勢力を付与するねじりコイルバネ44が設けられているので、第1筺体11のスライド動作のアシストや、携帯電話機100の各状態の維持を実現することが可能である。また、本実施形態のように、1本のねじりコイルバネ44を用いるのみで、第2筺体12の位置や姿勢に応じた様々な方向の付勢力を付与することができるので、部品点数を低減することも可能である。
また、本第1の実施形態によると、係合溝30が、第1溝部30aと第1溝部の一部に連通した第2溝部30bと、を有しており、携帯電話機100が第1状態と第2状態との間で遷移する間は、ピン20の先端部が第1溝部30a内を相対移動し、携帯電話機100が第3状態に遷移する間は、ピン20の先端部が第2溝部30b内を相対移動する。したがって、ピン20と係合溝30という簡単な構造により、携帯電話機100の複雑な変形を実現することが可能である。
また、本実施形態では、第3状態において第1筺体11と第2筺体12とがT字状となることから、第3状態における携帯電話機100の重心バランスが良好となる。これにより、携帯電話機100の操作性を向上することが可能である。
また、本実施形態では、回転軸35に凹部35a,35bが設けられ、携帯電話機100が第3状態になったときに、凹部35bと係合して中間部材13の回転を抑制するクリック機構(突起部材46及び圧縮コイルバネ48)を備えているので、ユーザは、第2状態から第3状態になったときに、突起部材46が凹部35bに係合することによるクリック感を、指先で感じ取ることができる。これにより、ユーザは携帯電話機100が第3状態になったことを指先の感覚で確認することが可能である。
なお、上記実施形態では、第1筺体11が一体型である場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図12(a)に示すように、第1筺体11を、2つの部分筺体11a、11bで構成し、各部分筺体11a,11bをヒンジ50で連結することとしても良い。このようにすることで、携帯電話機100が第3状態に設定された後に、第1筺体11を図12(b)に示すように、ヒンジ50にて折り曲げることにより、ユーザは、携帯電話機100を机上等に載置して、楽な姿勢でテレビ(ワンセグ放送)やビデオ等を視聴することができる。この場合、テレビ視聴のための専用台などを用意する必要がないので、この点からも使い勝手が向上する。なお、ヒンジ50としては、第1筺体11の折り曲げ角度を無段階で調整することが可能な構造を採用しても良いし、複数段階で調整することが可能な構造を採用しても良い。
この図12(a)、図12(b)の構成では、携帯電話機100が第1状態や第2状態にある場合には、ヒンジ50が第1筺体11の−Z側に隠れた状態となる。したがって、第1及び第2状態では、ヒンジ50において第1筺体11が折れ曲がることはないので、ヒンジ50を設けることによる、持ち運びや通話等への影響はない。
また、図12(b)の状態を検知することが可能なセンサ(前述した第1〜第3状態検出センサ101〜103と同様のセンサ)を別途設けておき、主制御装置120が、当該センサの検出結果に応じて、何らかのアプリケーション(例えばテレビ視聴用のアプリケーションなど)を起動するようにしても良い。これにより、携帯電話機100の操作性をより向上することができる。
なお、上述したように、第3状態においてのみ第1筺体11が折り曲げ可能になる場合に限らず、例えば、図13に示すように、第2状態においても第1筺体11が折り曲げ可能となるように、ヒンジ50を図12(a)よりもやや下側に設けることとしても良い。これにより、携帯電話機100を第2状態にして通話をする際にも、携帯電話機100の形状を調整する(送話部22と受話部24との位置関係を調整する)ことが可能となり、携帯電話機の操作性をより向上することができる。
なお、上記第1の実施形態では、携帯電話機100を第1状態から第2状態に遷移させるときに、第2の筺体12に力Faを作用させる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ねじりコイルバネ44に代えて、第2筺体12を+Y方向に常時付勢する付勢手段と、携帯電話機100を第1状態で維持するストッパとを備える構成を採用しても良い。この場合、ユーザがストッパを解除することで、付勢手段の付勢力により第2筺体12を+Y方向に自動的にスライド移動させることが可能となる。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る携帯電話機100’について、図14及び図15に基づいて詳細に説明する。ここで、本第2の実施形態の携帯電話機100’は、前述した第1の実施形態の携帯電話機100と比較して、係合溝の形状や貫通孔の形状が異なるとともに、変形動作が追加されている点が異なっている。したがって、以下においては、これらの点を中心に説明し、その他の部分についての説明は省略するものとする。
図14(a)、図14(b)は、本実施形態の携帯電話機100’の、第1状態及び第2状態を示す図である。これら図14(a)、図14(b)に示すように、本第2の実施形態は、第2筺体12の−Z側の面に形成された係合溝30が、第1溝部30a及び第2溝部30bとともに、第3溝部30cを有している点に特徴を有している。また、本第2の実施形態は、中間部材13に形成された貫通孔36が、1/2円弧状の形状を有している点にも特徴を有している。
本第2の実施形態では、上記のような構成を採用していることにより、第1実施形態と同様に、第1状態(図14(a)の状態)と第2状態(図14(b)の状態)との間で遷移することができるとともに、図15(a)に示すように、反時計回りに回転して、全体としてT字状の状態(第3状態)に遷移することができる。また、本第2の実施形態では、第2状態から、図15(b)に示すように、第2筺体12及び中間部材13を時計回りに回転して、全体としてT字状の状態(第3状態)に遷移させることもできる。
この場合、第2筺体12及び中間部材13が時計回りに回転している間は、図15(b)に示すように、ピン20の先端部(+Z側の端部)が、第3溝部30cに沿って移動するようになっている。これにより、回転中は、第2筺体12が中間部材13に対して矢印D3方向にスライドするので、最終的には、第1の実施形態と同様、携帯電話機100が全体としてT字状の形状を有するようになる。
このように、本実施形態の携帯電話機100’では、第2筺体及び中間部材13が、反時計回り又は時計回りのいずれかに回転して、第3状態に遷移することが可能である。したがって、本第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を発揮することができるとともに、携帯電話機100’が、2通りの方法で第3状態に遷移することができるので、ユーザのニーズに応じた広範な応用が可能となる。例えば、第2筺体12及び中間部材13が反時計回りに回転して第3状態になったことを検出するセンサ(図11の第3状態検出センサ103)とは別に、第2筺体12及び中間部材13が時計回りに回転して第3状態になったことを検出するセンサを設け、これらを用いて、アプリケーション自動起動の制御を行うことも可能である。これにより、ユーザが第2筺体12を回転する方向に応じて、別々のアプリケーションを起動するように設定することもできるため、携帯電話機の使い勝手をより一層向上することが可能である。
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態に係る携帯電話機100”について、図16及び図17に基づいて詳細に説明する。ここで、本第3の実施形態の携帯電話機100”は、前述した第2の実施形態の携帯電話機100’と比較して、係合溝の形状が異なるとともに、変形動作が更に追加されている点が異なっている。したがって、以下においては、これらの点を中心に説明し、その他の部分についての説明を省略するものとする。
本第3の実施形態の携帯電話機100”では、図16と図14の第2の実施形態とを比較すると分かるように、係合溝30が、第1溝部30a、第2溝部30b及び第3溝部30cに加えて、第1溝部30aの+Y側端部に連通形成された第4溝部30dと第5溝部30eを有している。
この図16の携帯電話機100”によると、図17に示すように、第1、2実施形態で説明した第1状態に対応するA状態、第2状態に対応するB状態、第3状態に対応するE状態、F状態とともに、全体としてL字状の形状をなすC状態と、D状態に遷移(変形)することが可能である。
ここで、A状態からC状態に遷移する場合には、A状態の携帯電話機100”の第2筺体12及び中間部材13を時計回りに回転して、ピン20の先端部(+Z側の端部)が係合溝30の第5溝部30eに対して相対移動するようにする。また、A状態からD状態に遷移する場合には、A状態の携帯電話機100”の第2筺体12及び中間部材13を反時計回りに回転して、ピン20の先端部(+Z側の端部)が係合溝30の第4溝部30dに対して相対移動するようにする。
なお、A状態とB状態との間の遷移、B状態とE状態との間の遷移,B状態とF状態との間の遷移については、上記第2の実施形態と同様であるので、その説明は省略するものとする。
以上説明したように、本第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を発揮することができるのは勿論、係合溝30(第1溝部30a)の+Y側端部に第4、第5溝部30d,30eを更に設けたことにより、全体形状をL字状にすることも可能である。これにより、ユーザの嗜好にあわせて、携帯電話機を種々の形状に変形させることができる。また、携帯電話機の形状(状態)に対応するアプリケーションを、それぞれ別々に設定しておくなどすることで、ユーザのニーズに応じた広範な応用が可能となる。
なお、A状態からC状態、A状態からD状態に遷移する間の、第2筺体12及び中間部材13の回転をよりスムーズにするために、第4、第5溝部30d,30eの形状を、中間部材13に形成された貫通孔36の形状と同一にしても良い。
なお、係合溝30は、図16に示す形状に限られるものではなく、図16の第2、第3溝部30b,30cの少なくとも一つ、及び第4、第5溝部30d,30eの少なくとも一つを適宜選択しても良い。例えば、図18(a)に示すように、係合溝30が、第1溝部30a、第2溝部30b、第3溝部30c、及び第4溝部30dから構成されていても良いし、図18(b)に示すように、係合溝30が、第1溝部30a、第2溝部30b、及び第4溝部30dから構成されていても良い。図18(b)の場合、中間部材13に形成される貫通孔36の形状を、第1の実施形態と同様、1/4円弧状とすることができる。また、図18(c)に示すように、係合溝30が、第1溝部30a、第3溝部30c、及び第4溝部30dから構成されていても良いし、図18(d)に示すように、係合溝30が、第1溝部30a、第2溝部30b、第4溝部30d、及び第5溝部30eから構成されていても良い。このように、係合溝30としては、ユーザのニーズや設計上の制約(構造上の制約)を考慮して、その構成を種々選択することが可能である。
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態に係る携帯電話機200について、図19及び図20に基づいて詳細に説明する。ここで、本第4の実施形態の携帯電話機200は、前述した第3の実施形態の携帯電話機100”とは、係合溝、貫通孔及びピンの配置が異なっているとともに、携帯電話機の変形動作が変更されている点に特徴を有している。したがって、以下においては、これらの点を中心に説明し、その他の部分についての説明を省略するものとする。
図19には、携帯電話機200の概略図が示されている。この図19の携帯電話機200は、第3の実施形態の携帯電話機100”(図16)と比較すると分かるように、第2筺体12に形成された係合溝30の位置が、第3の実施形態よりも、下方(−Y方向)にずれた位置となっている。また、本実施形態では、中間部材13における貫通孔36の位置が、回転軸35の下側(−Y側)に変更され、かつ、貫通孔36が第3実施形態の貫通孔36に対して上下対称な形状(U字状)を有している。更に、係合溝30と貫通孔36の位置が変更されたのに併せて、ピン20の位置が、回転軸35の下側に変更されている。
以上のように構成される本第4の実施形態の携帯電話機200では、第1、第2の実施形態における第1状態に対応するI状態と、第2状態に対応するII状態と、第3状態に対応するIII状態及びIV状態と、前述した第3実施形態のC,D状態に対応する、全体としてL字状のV状態、VI状態との間で遷移(変形)することが可能である。
このうち、I状態からII状態への遷移は、ピン20が、係合溝30の第1溝部30aに沿って相対移動することにより実行される。また、I状態からIII状態への遷移は、ピン20が、係合溝30の第4溝部30dに沿って相対移動するとともに、貫通孔36に沿って相対移動することにより、実行される。また、I状態からIV状態への遷移は、ピン20が、係合溝30の第5溝部30eに沿って相対移動するとともに、貫通孔36に沿って相対移動することにより、実行される。
更に、II状態からV状態への遷移は、ピン20が、係合溝30の第2溝部30bに沿って相対移動するとともに、貫通孔36に沿って相対移動することにより実行され、II状態からVI状態への遷移は、ピン20が、係合溝30の第3溝部30cに沿って相対移動するとともに、貫通孔36に沿って相対移動することにより実行される。
以上説明したように、本第4の実施形態では、上述した第3の実施形態の遷移動作(変形動作)とは多少異なるものの、変形後の最終的な形態は同一である。したがって、本第4の実施形態においても、上記第3の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
なお、上記第4の実施形態でも、図18(a)〜図18(d)のように、係合溝30を構成する溝部を、ユーザのニーズや設計上の制約等を考慮して、適宜選択することが可能である。
なお、上記第1〜第4の実施形態の携帯電話機は、その構成上、防水処理の点でも有効である。なお、防水処理とは、第1筺体11内に設けられる電子部品(不図示)と、第2筺体12内に設けられる電子部品(不図示)とをケーブルにて連結する場合に、そのケーブルと各筺体11,12とを接続する部分から水が浸入しないようにするための処理である。ここで、上述した各実施形態の携帯電話機では、第1筺体11に中間部材13を回転自在に保持させるための回転軸35が設けられている。したがって、上記各実施形態では、図21に示すように、ケーブル70を回転軸35内を通して、かつケーブル70の各筺体11、12内への導入部分(接続部分)に、封止パッキン72を設けるのみで、防水処理を行うことが可能である。この場合、ケーブル70のうち、回転軸35内に位置する部分(図21の符号「70a」の部分)については、ねじれ形状やコイル巻き形状とすることで、第2筺体12の回転(90°回転)動作に対応することができる。また、図21に符号70bで示す部分については、無限軌道における履帯形状とすることで、第2筺体12のスライド動作に対応することができる。
更に、上記第1〜第4の実施形態の携帯電話機では、図22に示すように、回転軸35に回転モータ76を設けることとしても良い。この場合、例えば、携帯電話機の一部(例えば、第1筺体11の側壁部分)にスイッチ112(図22では不図示、図23参照)を設けておき、当該スイッチ112により、回転モータ76のオン・オフが切り替えられるようにしても良い。この場合、図23に示す主制御装置120が、ユーザによりスイッチ112がオンされたことを検知した段階で、回転モータ76に所定時間だけ(中間部材13が90°だけ回転する時間だけ)電流を供給すればよい。このようにすることで、中間部材13及び第2筺体12に対してユーザが回転方向の力を直接付与しなくても、中間部材13及び第2筺体12を自動的に回転することが可能である。
なお、主制御装置120は、第1状態検出センサ101〜第3状態検出センサ103などのセンサにより、携帯電話機がどの状態にあるか(第1の実施形態では、第1〜第3状態のどの状態にあるか)を検知し、その状態も考慮して、回転モータの制御をすることとしても良い。具体的には、主制御装置120は、中間部材13と第2筺体12が回転可能な状態(第1の実施形態では、第2状態)にあり、かつ、スイッチ112がオンされたときにのみ、回転モータ76に電流を供給するような制御を行う。これにより、回転モータ76には、中間部材13と第2筺体12とが回転可能なときにのみ電流が供給されるので、無駄な電流を消費しないことで節電が可能であり、かつ回転モータ76の無理な動作や熱の発生を抑制することも可能である。
なお、上記第1〜第4の実施形態では、第1筺体11側にピン20が設けられ、第2筺体12側に係合溝30が設けられた場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1筺体11側に係合溝が設けられ、第2筺体12側にピンが設けられても良い。また、ピンと係合溝の組み合わせに限らず、第1筺体11と第2筺体12の相対移動軌道を拘束することが可能な第1係合部と第2係合部の組み合わせで、両係合部のいずれかが貫通孔36を貫通することができる構成であれば、種々の構成を採用することが可能である。
なお、上記第1〜第4の実施形態では、本発明における付勢手段が、第2筺体12(バネ接合ピン32)と中間部材13(バネ接合ピン42)との間に設けたねじりコイルバネ44である場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、第2筺体12と中間部材13のスライド方向の少なくとも一側から他側に向けて付勢力を付与することが可能なものであれば、他の付勢手段を用いることも可能である。具体的には、引っ張りコイルバネやその他のバネは勿論、ゴムなどの弾性を有する部材を用いることも可能である。
なお、上記各実施形態では、第2筺体12に第2の操作ボタン18が設けられている場合を例示したが、これに限られるものではなく、第2の操作ボタン18は、第1筺体11側に設けられていても良い。また、第1の操作ボタン14が、第2の操作ボタン18の機能を含んでいる場合には、第2の操作ボタン18を設けなくても良い。
なお、上記各実施形態では、本発明の情報端末が、携帯電話機に適用された場合について説明したが、これに限られるものではなく、PHSやPDAは勿論、その他の情報端末にも適用することが可能である。
上述した各実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。