JP2012060015A - 電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材、及び素子構造 - Google Patents

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【課題】酸化物反応層の寄生抵抗の低減を図り、動作特性の向上を図った電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材、及び素子構造を提供する。
【解決手段】TFT素子1は、a−Si膜5上に形成されたPドープna−Si膜6と、Pドープna−Si膜6上に形成された1nm以下のSi酸化膜7を有している。電極配線膜となるCu合金膜8が、Si酸化膜7上にスパッタリングにより形成されている。Cu合金膜8は、0.3〜2.0原子%のSn、In、Gaの金属のうち1種以上を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材、及び素子構造に関する。
液晶TFT(薄膜トランジスタ)を備えた液晶TFTパネルの大型化や動作速度の高速化などに伴い、TFTアレイ配線の低抵抗化が必要となり、Al配線よりも低抵抗なCu配線が採用されている。従来のTFT素子構造は、Cu配線膜とSi半導体層の界面に拡散バリア層となるMo又はTi膜を形成し、そのMo又はTi膜上にCu配線膜を形成している。これは、Cuが、後工程の絶縁膜形成時における200〜300℃の加熱温度でSi半導体層中に拡散し、TFT特性が得られなくなるためである。
一方、拡散バリア層となるMo又はTi膜は材料コストがかかり、液晶TFTパネルの製作コストが高騰するため、この拡散バリア層の代替となる合金、その形成プロセスが検討されている。しかしながら、Si半導体層の表面に合金を直接形成する方法では、十分な拡散バリア性が得られる合金と、その形成プロセスが見いだせず、Cu配線膜とSi半導体層の界面に酸化層や窒化層を形成する方法が検討され始めた。
その一例としては、酸素プラズマを照射するプラズマ酸化法、又は酸素ガス雰囲気下での加熱による熱酸化法により、Si半導体層の表面を酸化して酸素含有層を形成し、その酸素含有層上に純Cu又はCu合金の薄膜を形成するTFTの配線構造が提案されている(特許文献1参照。)。
一方、アモルファスシリコン(a−Si)膜を10Pa程度の酸素雰囲気及び室温の条件で1分間プラズマ処理した後、a−Si膜上にCu−Mn合金を成膜して、250℃で10分間熱処理すると、厚さ1〜3nmの酸化層が得られ、この酸化層は、拡散バリア性と良好な導通性を示すオーミックコンタクト性、密着性を兼ね備えることを確認したことが報告されている(非特許文献1参照。)。
特開2009−4518号公報 ウェブサイトTech-On!FPD International 2008.9.9 掲載
上記特許文献1及び非特許文献1においては、n型a−Si膜上にMo膜を直接形成し、そのMo膜上にCu又はAlの薄膜を形成する方法では問題とならなかった高抵抗な酸化物反応層の抵抗分(寄生抵抗)による影響が現れることについては言及されていない。
本発明の目的は、酸化物反応層の寄生抵抗の低減を図り、動作特性の向上を図った電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材、及び素子構造を提供することにある。
[1]本発明は、Cu合金膜は、0.3〜2.0原子%のSn、In、Gaの金属のうち1種以上を含有し、シリコン半導体素子の電極配線膜の形成に使用されることを特徴とする電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材にある。
[2]本発明は更に、アモルファスシリコン(a−Si)膜と、前記a−Si膜上に形成されたPドープn型アモルファスシリコン(Pドープna−Si)膜と、前記Pドープna−Si膜上に形成された1nm以下のSi酸化膜とを有し、上記[1]記載のCu合金膜が、前記Si酸化膜上にスパッタリングにより形成されてなることを特徴とする素子構造にある。
[3]上記[2]記載の素子構造としては、200〜300℃の熱処理により前記Si酸化膜中に前記Cu合金膜の成分を拡散し、複合酸化物を形成してなることが好適である。
[4]上記[2]又は[3]記載の素子構造としては、前記Cu合金膜上に純Cu膜を形成してなることが好適である。
本発明によると、Cu合金膜とna−Si膜の界面の酸化物反応層の寄生抵抗が低減され、動作特性が改善される。
本発明の典型的な実施の形態であるTFT素子の一例を模式的に示す図である。 Cu合金膜/酸化物反応層/na−Si膜の界面コンタクト抵抗を測定するためのサンプル品の一例を示す図である。 実施例及び比較例における電極間距離と界面コンタクト抵抗の関係を示すグラフの模式図である。 拡散バリア性を評価するために用いられるサンプル品の一例を模式的に示す図である。 本発明の典型的な実施例のSIMS分析結果を示すグラフの模式図である。 TFT素子の動作特性を測定する評価方法の一例を模式的に示す図である。 本発明の典型的な実施例のVG−Id特性を示すグラフである。 TFT素子の閾値電圧の求め方を示すグラフの模式図である。
本発明に係る実施の形態にあっては、Mo又はTi等の高コストな拡散バリア層に代えて、Si半導体層の表面に酸素プラズマを照射することで得られる酸化膜を拡散バリア層とし、その拡散バリア層上に形成したCu合金膜が所定の素子プロセス温度で酸化膜中に拡散し、良好なコンタクト性と密着性とを有する電子デバイス配線用Cu合金ターゲット材、及び素子構造が提供される。このCu合金ターゲット材は、例えば液晶TFTパネル等の電子デバイスであるTFT素子の電極配線を形成するために効果的に使用される。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
(TFT素子の構成)
図1において、全体を示す符号1は、TFT素子の一例を模式的に示している。このTFT素子1は、ガラス基板2上に、ゲート電極(Cr膜)3、ゲート絶縁膜(SiN膜)4、及びアモルファスシリコン(a−Si)膜(a−Si半導体層)5を順に積層し、そのa−Si膜5上にPドープn型アモルファスシリコン(na−Si)膜(コンタクト層)6を形成し、そのna−Si膜6のn層表面に酸素プラズマを照射することで、Si酸化膜(SiOx)7を形成する。
このSi酸化膜7上にCu合金膜8をフォトリソグラフィ、スパッタリング、及びエッチングにより形成し、所定の素子プロセス温度で加熱することにより、Si酸化膜7は、Cu合金膜8との新たな酸化物反応層(複合酸化物)を形成する。この酸化物反応層がCu合金膜8とna−Si膜6との界面において導通性を有する拡散バリア層となる。このSi酸化膜7の形成には、酸素プラズマ処理、オゾンや水分などの酸素を含む雰囲気中での加熱処理などの方法を用いることができる。
TFT素子1としては更に、Cu合金膜8上に純Cu膜9を形成することが好適である。このCu合金膜8の抵抗率は、純Cu膜9よりも数倍から1桁程度高いが、Cu配線構造を純Cu/Cu合金の積層膜とすることにより、配線抵抗を下げることができる。
このソース電極10、及びドレイン電極11の上に保護膜12を形成することで、作製したTFT素子1がパッケージングされている。このTFT素子1は、na−Si6/Si酸化膜7/Cu合金膜8/純Cu膜9構造のソース電極10、及びドレイン電極11が並列に形成されている。酸化物反応層がチャネル領域をなしており、ゲート電極3に印加されるゲート電圧VGでソース電極10とドレイン電極11との間に流れるドレイン電流Idが制御されることによってオンオフ動作する。
a−Si膜6のn層表面に形成されたSi酸化膜7の膜厚としては、Cu合金膜8とna−Si層6との良好な導通性を得るためには薄いことが有利であり、1nm以下に設定することが特に望ましい。Si酸化膜7の熱処理としては、素子プロセス温度を200〜300℃の範囲に設定することが特に望ましい。この熱処理を行うことで、Si酸化膜7中にCu合金膜8のCu合金成分が拡散し、酸化物反応層を形成することができる。この酸化物反応層により、na−Si層6、Si酸化膜7、及びCu合金膜8に対して良好なコンタクト性と密着性とが得られる。
このCu合金膜8の材料としては、Sn、In、Gaの金属から選択される少なくとも1種以上を含有するCu合金からなることが好適である。このSn、In、Gaの金属を適宜組み合わせて添加すれば、ソース電極10とドレイン電極11の配線膜の形成に使用されるスパッタリングターゲット材(以下、「TG材」という。)の製造プロセスにおいて、鋳造性や圧延加工性の改善を図ることができるようになり、結晶組織の制御を行うことができる。それに加えて、酸化物反応層の抵抗が低く、Si酸化膜7中へのCu合金成分の拡散バリア性を満足することができる。
このSn、In、Gaの添加量としては、0.3原子%以上2.0原子%以下の範囲が好適である。0.3原子%以上の添加により、良好な拡散バリア効果が現れる。Sn、In、Gaの添加濃度が高いほど、拡散バリア効果は向上する。一方、2.0原子%を超えると、拡散バリア効果は飽和し、Cu合金の鋳造や圧延加工が困難となるので好ましくない。
(実施の形態の効果)
上記実施の形態によると、次の効果が得られる。
(1)従来の液晶TFTパネル用のTFTアレイ配線で使用されているMo拡散バリア層やTi拡散バリア層の形成を排除して、Si半導体層の表面の酸化処理により電極配線膜を形成することで、液晶TFTパネルの製造コストが大幅に低減される。
(2)TFTアレイ配線としては、従来のAl配線よりも低抵抗なCu配線を使用することで得られ、液晶TFTパネルの大型化、動作速度の高速化や高画質化のための設計コストの低減が可能となる。
(3)電極配線膜のパターニング処理工程において、Cu−Mo合金よりもエッチングコストを低減することができる。
(4)液晶TFTパネル以外にも、太陽電池などのSi半導体層を用いたSiデバイスの配線材料にも適用できる。
以下に、本発明の更に具体的な実施の形態として、実施例を挙げて、図1〜図8、及び表1〜表4を参照しながら、TG材及び素子構造について詳細に説明する。なお、この実施例にあっては、TG材及び素子構造の典型的な一例を挙げており、本発明は、これらの実施例に限定されるものではないことは勿論である。
(Cu合金からなるTG材の試作)
Cu、Sn、In、又はGaを配合し、溶解・鋳造→熱間圧延→冷間圧延→熱処理→切削加工の一連の工程により、実験装置であるスパッタリング装置に使用可能なΦ100mm×5mmの円盤状のTG材を試作した。
下記の表1に、実施例1〜9として、初期の目的とする組成範囲を満たすCu−Sn、Cu−In、又はCu−GaのCu合金からなるTG材の組成を、比較例1〜6としては、組成範囲から外れたCu−Sn、Cu−In、Cu−GaのCu合金からなるTG材の組成をそれぞれ示す。なお、比較例7及び8は、Cu−Mn合金からなるTG材を、比較例9は、MoからなるTG材をそれぞれ示す。
(Cu合金/酸化物反応層/na−Siの界面コンタクト抵抗)
図2に、TMLサンプル品の一例を示す。実施例1〜9のTG材、及び比較例1〜9のTG材を用いて、Cu合金膜とna−Si膜の界面コンタクト抵抗を測定するためのTMLサンプル品を試作し、界面コンタクト抵抗の比較を行った。
図2に示すCu合金膜8を形成するにあたっては、先ず、na−Si膜6/a−Si膜5/SiN膜4/ガラス基板2の積層膜を形成した後、na−Si膜6のn層表面に酸素プラズマを照射し、約1nm程度のSi酸化膜7を形成した。次に、このSi酸化膜7上に、下記表1に示す実施例1〜9のTG材を用いてスパッタリング成膜し、Cu合金膜8を形成した。
次に、Cu合金膜上に、図2に示すような、5、10、15、及び20μmの間隔をもって一対のCu合金膜8/Si酸化膜7を形成するようにフォトレジストパターンを形成した。先ず、ウェットエッチングによりCu合金膜8をパターニング加工し、その後、ドライエッチングでSi酸化膜7をパターニング加工し、図2の形状を形成した。これを、TFT素子プロセス温度領域の300℃で、真空中において30分間熱処理を行い、Si酸化膜7を酸化物反応層とした。
次に、比較例として、下記表1に示す比較例1〜8のTG材を用いて、上記実施例1〜9と同様にスパッタリング成膜し、Cu合金膜を得た。そして、下記表1に示す比較例9のTG材を用いて、Si酸化膜を形成することなく、na−Si膜6上にMo膜を直接成膜した。
図2に示す一対のCu合金膜電極間ごとに抵抗測定を行い、Cu合金膜電極間の距離と抵抗値との関係を調べた。測定抵抗値は、メタル膜/酸化物反応層の界面から酸化物反応層/na−Si膜の界面までの抵抗分と、電極間のna−Siの抵抗の和である。ここで、メタル膜の抵抗は十分に小さいので無視した。
図3に、代表例として、実施例2のTG材を用いた電極配線層、比較例7のTG材を用いた電極配線層、及び比較例9のTG材を用いた電極配線層における界面コンタクト抵抗の評価結果をそれぞれ示す。電極配線層間の距離の増加分に対する抵抗値の増加は、na−Siの抵抗増加分であり、図3の横軸の電極間の距離を0に外挿したときの抵抗値がメタル膜/酸化物反応層の界面から酸化物反応層/na−Si膜の界面までの抵抗分と考えられる。この実施の形態では、メタル膜/酸化物反応層の界面から酸化物反応層/n+a−Si膜の界面までの抵抗分を界面コンタクト抵抗という。
図3から明らかなように、実施例2であるCu−1.21原子%SnのTG材の場合は、電極間距離=0に外挿した界面コンタクト抵抗が0.74MΩであり、比較例7であるCu−2.12原子%MnのTG材の場合は、電極間距離=0に外挿した界面コンタクト抵抗が5.43MΩであり、比較例9であるMoのTG材の場合は、電極間距離=0に外挿した界面コンタクト抵抗が0.89MΩであった。比較例7は、比較例9よりも界面コンタクト抵抗が6倍程度高い値であり、実施例2は、比較例9よりも2割程度低い値であった。
実施例2のCu−Sn合金TG材は、比較例7のCu−Mn合金TG材よりも抵抗の低い酸化物反応層を形成すると考えられ、比較例9のMoTG材よりもna−Siとの界面での接触抵抗の低い接合層を形成しているということが考えられる。
下記の表2に、実施例1〜9のTG材を用いた電極配線層、及び比較例1〜9のTG材を用いた電極配線層のそれぞれの界面コンタクト抵抗をまとめて示す。表2から明らかなように、実施例1〜9は、比較例1〜9よりも界面コンタクト抵抗が低いということが分かる。
(拡散バリア性評価)
SIMS分析(2次イオン質量分析)により、Cu合金膜8とna−Si膜6の界面の原子分布の分析を行い、拡散バリア性の有無の確認を行った。
図1のTFT素子構造と同一の積層膜を形成し、TFT素子プロセス温度領域の300℃で、真空中において30分間熱処理し、図4に示すサンプル品を得た。このサンプル品について、Cu合金膜8/酸化物反応層/na−Si膜6/a−Si膜5の原子分布をSIMSにより分析した。図5に、代表例として、実施例2におけるTG材を用いたTFT素子の分析結果を示す。図5から明らかなように、na−Si/a−Si/SiN層へのメタル原子の拡散は見られず、高い密度であり、良好な拡散バリア性が得られることが分かる。
下記の表3に、上記実施例1〜9のTG材を用いたTFT素子、及び比較例1〜9のTG材を用いたTFT素子におけるSIMS分析による拡散バリア性の分析結果をまとめて示す。実施例1〜9のものは、良好な拡散バリア性が得られたが、比較例1〜8、及び比較例9のものは、na−Si膜にCu原子の拡散が見られた。
(TFT動作特性の測定方法)
図1に示すTFT素子を試作し、TFT素子の動作特性として飽和移動度を測定した。図6に、TFT素子の動作特性を測定するための測定方法の一例を示す。図7に、代表例として、実施例2のTG材を用いたTFT素子のVG−Id特性の測定結果を示す。
実施例1〜9のTG材を用いたTFT素子は、na−Si膜6の膜厚を約30nmとし、Si酸化膜7の膜厚を約1nmとした。このSi酸化膜7上にCu合金膜8をスパッタリングにより50nm成膜し、更にCu合金膜8上に純Cu膜9を300nm成膜した。得られた積層膜にフォトリソグラフィでレジストパターンを形成し、ウェットエッチングによりCu合金膜8の電極膜にパターニング加工した。次に、ドライエッチングによりna−Si膜6をa−Si膜5まで多少削り込むようにオーバーエッチングし、ドライエッチングでna−Si膜6をa−Si膜5まで多少削り込むようにオーバーエッチングし、チャネルを形成した。この後、レジスト膜を除去し、保護膜を成膜し、TFT素子を完成させた。ソース電極10−ドレイン電極11間のチャネル長は10μmとし、チャネル幅は100μmとした。なお、図示を省略したが、ソース電極10、ドレイン電極11から測定プローブを接触させる電極パッドを引き出してある。
比較例1〜8のTG材を用いたTFT素子は、上記実施例1〜9と同様に試作した。なお、比較例9のTG材を用いたTFT素子は、Si酸化膜を形成せずに、na−Si膜6上にMo膜を30nm成膜し、そのMo膜上に純Cuを300nm形成した。これらのTFT素子は、素子プロセス温度を想定した300℃で、真空中において30分間熱処理した。
(TFT動作特性の測定)
図6に示す測定方法によると、ドレイン電極11にドレイン電圧VDSを印加するための電源13によりソース電極10とドレイン電極11との間に電圧を印加し(ソース側が高電位)、電源14によりゲート電極3にゲート電圧VGを掃引印加する。ゲート電極3に正のゲート電圧VGが印加すると、ゲート絶縁膜(SiN膜)4とa−Si膜5の界面に電流の担い手であるキャリアが発生する。
ある電圧(閾値電圧Vth)以上になると、電流の通り道となるチャネルが形成される。チャネルが形成されると、ソース電極10−ドレイン電極11間にドレイン電流Idが流れ、ドレイン電極11から流れ出たドレイン電流Idの値を電流計15で計測する。なお、符号16は、ソース電極10に流れ込む電流値を計測する電流計であり、符号17は、ゲート電極3に流れ込む電流値を計測する電流計である。
(TFT動作特性の評価)
ソース電極10−ドレイン電極11間に一定のドレイン電圧VDSを印加し、ゲート電極3にゲート電圧VGを掃引印加すると、閾値電圧Vth以上の電圧で、a−Si膜5にはnチャネルが形成され、ソース電極10からドレイン電極11へとドレイン電流Idが流れる。ゲート電極3のパターニングを省略した簡易構造であるが、ドレイン電流Idの一部は、SiN絶縁膜4を通り、ゲート電極3にリーク電流が流れる。そのため、ある程度大きな一定のドレイン電圧VDSを印加してリーク電流分の誤差が小さい領域で測定した。
図7に示したVG−Id特性の測定結果と、下記(1)式、及び下記(2)式を用いることで、飽和移動度μを求めて評価することができる。閾値電圧Vthは、VG−Id特性を
Figure 2012060015
にプロットし直して、図8に示すように、ドレイン電流Idをゲート電圧VGの関数として取得する。得られた
Figure 2012060015
曲線に接線を引いて閾値電圧Vthを求めた。
一定のドレイン電圧VDSを印加した場合の飽和領域では、下記の(1)式が成立する。この(1)式から導かれる下記(2)式で飽和移動度μを求めた。(2)式で飽和移動度μを求める際には、VG−Id特性を
Figure 2012060015
にプロットし直し、直線部分の傾きから求めた。ここで、Wは電極幅、Lはチャネル長、Cは単位面積当たりのゲート絶縁膜容量である。
Figure 2012060015
下記の表4に、TFT動作特性の結果をまとめて示す。飽和移動度μとは、Si半導体中のキャリアの動き易さを示し、液晶を駆動させる透明電極への充放電の速度に関係する。飽和移動度μが大きいほど、拘束動作が可能となる。実施例1〜9のCu合金膜の電極配線構造を有するTFT素子は、比較例9の純Cu/Mo膜の電極配線構造を有するTFT素子よりも、飽和移動度μは高く、Mo拡散バリア構造より優れたTFT動作特性が得られた。飽和移動度μが向上した理由としては、Cu合金/酸化物反応層/na−Siの界面コンタクト抵抗を低減することができたためであると考えられる。
この実施例によるTFT素子では、Si酸化膜を形成することなく、na−Si膜上にMo膜を直接形成し、そのMo膜上に形成するCu又はAlの電極配線構造では問題とならなかった高抵抗な酸化物反応層の寄生抵抗による影響を受けなかった。Si酸化膜とCu−Mn、Cu−Mg、Cu−NiなどのCu合金膜を用いた電極配線構造や純Cu/Mo膜の電極配線構造よりも、Cu合金膜とna−Si膜の界面の酸化物反応層の寄生抵抗が低減され、TFT動作特性が改善された。
以上の説明からも明らかなように、本発明の電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材、及び素子構造を上記実施の形態、実施例、及び実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施の形態、実施例、及び図示例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
Figure 2012060015
Figure 2012060015
Figure 2012060015
Figure 2012060015
1 TFT素子
2 ガラス基板
3 ゲート電極(Cr膜)
4 ゲート絶縁膜(SiN膜)
5 a−Si膜
6 na−Si膜
7 Si酸化膜
8 Cu合金膜
9 純Cu膜
10 ソース電極
11 ドレイン電極
12 保護膜
13,14 電源
15〜17 電流計
Id ドレイン電流
VDS ドレイン電圧
VG ゲート電圧
Vth 閾値電圧

Claims (4)

  1. Cu合金膜は、0.3〜2.0原子%のSn、In、Gaの金属のうち1種以上を含有し、シリコン半導体素子の電極配線膜の形成に使用されることを特徴とする電子デバイス配線用Cu合金スパッタリングターゲット材。
  2. アモルファスシリコン(a−Si)膜と、
    前記a−Si膜上に形成されたPドープn型アモルファスシリコン(Pドープna−Si)膜と、
    前記Pドープna−Si膜上に形成された1nm以下のSi酸化膜とを有し、
    上記請求項1記載のCu合金膜が、前記Si酸化膜上にスパッタリングにより形成されてなることを特徴とする素子構造。
  3. 200〜300℃の熱処理により前記Si酸化膜中に前記Cu合金膜の成分を拡散し、複合酸化物を形成してなることを特徴とする請求項2記載の素子構造。
  4. 前記Cu合金膜上に純Cu膜を形成してなることを特徴とする請求項2又は3記載の素子構造。
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