JP2012057703A - 軸受用保持器および転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】グリース(潤滑剤)の封入を容易とし、かつ大幅な低トルク化を達成でき、また、必要最小限の油量で潤滑し、攪拌抵抗による発熱を抑えることができて高速回転に対応可能な軸受用保持器およびこのような軸受用保持器を用いた転がり軸受を提供する。
【解決手段】軸受用保持器は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケット1が形成された周壁2と、径方向端面に連設される一対の端部壁部3,4とを備えている。一方の端部壁部3とこの端部壁部3に連設される第1周壁半割体5とで第1分割体を形成する、他方の端部壁部4とこの端部壁部4に連設される第2周壁半割体6とで第2分割体を形成する。第1周壁半割体5と第2周壁半割体6との合わせ面11,21を軸方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面とする。合わせ面11,21同士を重ね合わせた状態で、第1分割体5と第2分割体6とが一体化される。
【選択図】図1
【解決手段】軸受用保持器は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケット1が形成された周壁2と、径方向端面に連設される一対の端部壁部3,4とを備えている。一方の端部壁部3とこの端部壁部3に連設される第1周壁半割体5とで第1分割体を形成する、他方の端部壁部4とこの端部壁部4に連設される第2周壁半割体6とで第2分割体を形成する。第1周壁半割体5と第2周壁半割体6との合わせ面11,21を軸方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面とする。合わせ面11,21同士を重ね合わせた状態で、第1分割体5と第2分割体6とが一体化される。
【選択図】図1
Description
本発明は、軸受用保持器およびこの軸受用保持器を用いた転がり軸受に関する。
従来には、2枚の環状体を組み合わせて、高速回転域においてもボールとの接触による摩耗粉や摩擦熱を生じにくくした合成樹脂製保持器が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。この場合、ポケットにグリース溜りとなる凹部を設けたものである。
ポケットにグリース溜りとなる凹部を設けることによって、グリースがボールとポケット面を潤滑して、高速回転域における摩耗粉や摩擦熱の発生を抑制することができるものである。
前記特許文献1および特許文献2のように、2個の同一形状部品からなる保持器である場合、この保持器にグリースを封入する際、転動体であるボールを狙ってグリースを塗布する必要がある。このため、塗布可能範囲が限られ、グリース塗布作業が行いにくく作業性に劣ることになる。しかも、グリースの安定した塗布もできなかった。
ところで、軸受トルクの中で、保持器−ボール間で発生するトルクは、ボールによる油(グリース等の潤滑剤)のせん断抵抗が多くの割合を占める。また、そのせん断抵抗の殆どがポケット内側とそのポケットに抱えられているボールとの間に形成された油膜をせん断する時に発生するものである。そのため、高速回転に対応する軸受においては、運転時の軸受内部の潤滑油量を抑える必要がある。
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、グリース(潤滑剤)の封入を容易とし、かつ大幅な低トルク化を達成でき、また、必要最小限の油量で潤滑し、攪拌抵抗による発熱を抑えることができて高速回転に対応可能な軸受用保持器およびこのような軸受用保持器を用いた転がり軸受を提供しようとするものである。
本発明の軸受用保持器は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケットが形成された周壁と、径方向端面に連設されて各ポケットの径方向開口部を塞ぐ一対の端部壁部とを備えた軸受用保持器であって、一方の端部壁部とこの端部壁部に連設される第1周壁半割体とで第1分割体を形成するとともに、他方の端部壁部とこの端部壁部に連設される第2周壁半割体とで第2分割体を形成し、第1周壁半割体と第2周壁半割体との合わせ面を軸方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面とし、合わせ面同士を重ね合わせた状態で、第1分割体と第2分割体とが一体化されるものである。
本発明の軸受用保持器によれば、第1分割体と第2分割体とを組み付ける場合、合わせ面同士を重ね合わせることになる。この際、第1分割体と第2分割体との相互の接近によって、各合わせ面を摺接させることになる。このため、第1分割体の合わせ面及び/又は第2分割体の合わせ面に潤滑剤(グリース)を塗布しておき、合わせ面を摺接させれば、グリースを掻き分けながら2つの分割体を組み合わせることができる。
各周壁半割体の先端部には係合爪部を設け、合わせ面同士を合わせた状態で、第1分割体の係合爪部が第2分割体の端部壁部に係合するとともに、第2分割体の係合爪部が第1分割体の端部壁部に係合するものが好ましい。
このように、係合爪部を設ければ、合わせ面同士を合わせた状態で、第1分割体の係合爪部が第2分割体の端部壁部に係合し、第2分割体の係合爪部が第1分割体の端部壁部に係合することになって、安定した組立て状態が維持できる。
各合わせ面には、相手側の係合爪部の係合部位へのガイドとなる溝を設けたものであってもよい。このように、ガイドとなる溝を設けることによって、係合爪部を係合部位に安定して嵌合させることができ、しかも、摺接時において係合爪部の損傷等を防止できる。
各合わせ面の摺接にて、合わせ面に塗布された潤滑剤は転動体及びこの転動体が転動する転走面へ掻き分けるように設定できる。また、第1分割体と第2分割体とが組み付けられて形成されるポケットが、転動体との接触面積を小とする矩形状孔となるようにできる。
端部壁部は、外径方向に突出する周方向外鍔部と、内径方向に突出する周方向内鍔部とを有するものであってもよい。周方向外鍔部及び周方向内鍔部を設けることによって、外部からの異物の侵入を防止する機能を発揮する。
ポケットの底面に、潤滑油の含油が可能な含油材を配置したものであってもよい。このような場合、この保持器が用いられている軸受が回転することによる温度上昇によって、含含油材に含油されている潤滑油がこの含油材から滲みだして、この軸受の潤滑を行うことができる。
ポケットの底面に凹部を設け、この凹部に前記含油材を嵌合させたものであってもよい。この際、凹部に含油材を圧入したり、この圧入に加えて接着剤等を介して接着したりするようにしてもよい。また、このような圧入や接着等せずに、凹部に含油材を嵌合させ、この嵌合状態で、転動体であるボールにて押えるようにしてもよい。含油材を射込み一体成形にてポケットの底面に配置するようにしてもよい。
前記含油材は軸受潤滑機能が可能な量の潤滑油を保持するのが好ましい。また、含油材に含油樹脂材を用いたり、含油焼結材を用いたりすることができる。
保持器材料として、ポリアミド樹脂を用いたり、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いたり、ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いたり、フェノール樹脂を用いたりできる。ポリアミド樹脂は、酸とアミンが反応してできるアミド結合(たんぱく質と同じ結合)を持つ高分子化合物である。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂の一種で、結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂である。エーテル結合とケトン結合を交互に配置した基本的な直鎖状構造を持つものがポリエーテルケトン(PEK)で、エーテル・エーテル・ケトンの順に結合を配置したものが、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)である。ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)は、熱可塑性の結晶性プラスチックであり、またスーパーエンジニアリングプラスチックという高耐熱樹脂の範疇に分類されている高性能樹脂である。フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つである。
本発明の転がり軸受は、前記軸受用保持器を用いたものである。転がり軸受として、プーリ用であっても、電磁クラッチ用であっても、トランスミッション用であっても、ファンクラッチ用であってもよい。
本発明の軸受用保持器では、第1分割体の合わせ面及び/又は第2分割体の合わせ面に潤滑剤(グリース)を塗布しておき、合わせ面を摺接させれば、グリースを掻き分けながら2つの分割体を組み合わせることができる。このため、グリースの封入作業の容易化を図ることができる。
係合爪部を設ければ、安定した組立て状態が維持でき、保持器として長期にわたって安定した機能を発揮することができる。
合わせ面にガイドとなる溝を設けたものでは、組立性(組み付け性)の向上を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。しかも、組み付け時における係合爪部の破損等を防止できる。
潤滑剤を転動体及びこの転動体が転動する転走面へ掻き分けるようしたものでは、潤滑性の向上を図ることができ、低トルク化を達成できる。
ポケットが矩形状孔であれば、転動体との接触面積が小となって、低トルク化を図ることができる。
周方向外鍔部及び周方向内鍔部を設けることによって、外部からの異物の侵入を防止する機能を発揮することができる。このため、この保持器を用いれば、別途シール部品を設けることなく、異物の侵入やグリースの漏れを防止できる。しかも、部品点数の減少を図ることが可能となって、組立作業性の向上を図ることができる。
ポケットの底面に、潤滑油の含油が可能な含油材を配置したものでは、潤滑油がこの含油材から滲みだして、この軸受の潤滑を行うことができ、低トルク化を達成できる。
ポケットの底面に凹部を設けたものでは、凹部に含油材を圧入したり、この圧入に加えて接着剤等を介して接着したりすることができ、安定して含油材を保持することができ、含油材からの潤滑油の滲みだしが可能となる。また、転動体であるボールにて押えるようにした場合、含油材の圧入や接着等必要とせず、組立作業性に優れる。また、含油材を射込み一体成形にてポケットの底面に配置するものでは、別途、含油材を凹部に嵌合させる等の作業を必要とせず、組立て作業の簡略化を図ることができる。
前記含油材は軸受潤滑機能が可能な量の潤滑油を保持するように設定すれば、安定した潤滑機能を発揮することができ、低トルク化に寄与する。特に、グリースの封入や外部からの潤滑油の供給をすることなく、必要最小限の油量で潤滑し、攪拌抵抗による発熱を抑えて、高速回転に対応可能な軸受が実現できる。
また、含油材としては、含油樹脂材や含油焼結材等の種々の材質を用いることができ、設計性に優れる。保持器の材料としても、ポリアミド樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができ、設計自由度が広がる。
転がり軸受として、プーリ用であっても、電磁クラッチ用であっても、トランスミッション用であっても、ファンクラッチ用であってもよい。すなわち、本発明に係る保持器を用いた転がり軸受としては、種々の用途のものに適用することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
図1は本発明に係る軸受用保持器を示し、この保持器は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケット1が形成された周壁2と、径方向端面に連設されて各ポケット1の径方向開口部を塞ぐ一対の端部壁部3、4とを備える。この場合の保持器は、第1分割体5と第2分割体6との2部材を組み合わせてなるものである。一方の端部壁部3とこの端部壁部3に連設される第1周壁半割体8とで第1分割体5を形成し、他方の端部壁部4とこの端部壁部4に連設される第2周壁半割体9とで第2分割体6を形成している。
各端部壁部3、4は、図1から図3に示すように、平板リング体からなり、この端部壁部3、4の内面に、第1・第2周壁半割体8、9を構成する突起部10、20が突設されている。突起部10、20は、側面視三角形状の本体部10a、20aと、この本体部10a,20aの端部壁部側から端部壁部3に沿って周方向に延びる副部10b、20bとを有する。
本体部10a、20aは、一方の側面に傾斜面からなる合わせ面11、21が形成され、他方の側面に軸方向端面12、22が形成されている。合わせ面11、21の基端側(端部壁部側)および先端側(反端部壁側)には、それぞれ軸方向端面13、14、23、24が連設されている。また、軸方向端面12、22と副部10b、20bとの間のコーナ部にはアール部15,25が形成されている。合わせ面11,21は、この保持器の軸方向に対して所定角度(例えば45度)で傾斜している。
本体部10a,20aの先端部には係合爪部16,26が設けられている。すなわち、本体部10a,20aの先端面に爪部本体16a,26aが突設され、この爪部本体16a,26aの軸方向端面12、22側に突出する係合突起16b、26bが形成されている。また、副部10b、20bの他の突起部10、20側に係合孔18、28が設けられている。
また、副部10b、20bの他の突起部10、20側に係合孔18、28が設けられている。係合孔18、28の内部には、相手側の係合爪部26、16の係合突起26b、16bが係合する段部18a、28aが設けられている。さらには、合わせ面11、21には、後述するように、係合爪部16,26がガイドされる溝(ガイド溝)19,29が設けられている。
次に前記のように構成された第1分割体5と第2分割体6との組み合わせ方法を説明する。まず、図4に示すように、第1分割体5に、転動体としてのボール30を、各突起部10の副部10b上に配置するとともに、傾斜面からなる合わせ面11に潤滑剤としてのグリースGを塗布する。
次に、図5に示すように、第2分割体6を第1分割体5に重ねる。この際、第2分割体6の係合爪部26を第1分割体5の合わせ面11の溝19の係合爪部側に嵌合させる。そして、第1分割体5を固定した場合、図6に示すように、第2分割体6を第1分割体5に対して軸方向に沿って接近させていく。これによって、第1分割体5の合わせ面11に対して第2分割体の合わせ面21が矢印のように摺接(摺動)する。
この合わせ面11、21の摺接によって、合わせ面11に塗布されたグリースGは、ボール30及びこのボールが転動する転走面へ掻き分けることになる。そして、第2分割体6の係合爪部26が第1分割体5の係合孔18に嵌入するとともに、第1分割体5の係合爪部16が第2分割体6の係合孔28に嵌入する。
このように、各係合爪部16、26が係合孔28、18に嵌入すれば、各係合爪部16、26の係合突起16b、26bが係合孔28、18の段部28a、18baに係合(係止)する。これによって、第1分割体5と第2分割体6とが一体連結される。
第1分割体5と第2分割体6とを組み合わせることによって、本体部10a、20aの軸方向端面12、22と、アール部15,25と、副部10b、20bの表面とで、ポケット1が形成される。このため、このポケット1は、ボール30との接触面積を小とする矩形状孔となる。
また、第1・第2分割体5、6の各端部壁部3、4の外径端および内径端は、半割体8、9が重ね合わされてなる周壁2に対して外径側および内径側にそれぞれ突出している。このため、各端部壁部3、4は、外径方向に突出する周方向外鍔部35と、内径方向に突出する周方向内鍔部36とを有するものとなる。
ところで、前記実施形態では、第1分割体5を基準として、この第1分割体5側にグリースGを塗布して、第2分割体6を第1分割体5に重ね合わせるようにして組み付けるようした。逆に第2分割体6を基準として、第2分割体6側にグリースGを塗布して、第1分割体5を第2分割体6に重ね合わせるようにして組み付けるようしてもよい。また、いずれの場合でも、グリースGを両分割体5,6に塗布するようにしてもよい。
保持器材料として、ポリアミド樹脂を用いたり、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いたり、ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いたり、フェノール樹脂を用いたりできる。ポリアミド樹脂は、酸とアミンが反応してできるアミド結合(たんぱく質と同じ結合)を持つ高分子化合物である。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂の一種で、結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂である。エーテル結合とケトン結合を交互に配置した基本的な直鎖状構造を持つものがポリエーテルケトン(PEK)で、エーテル・エーテル・ケトンの順に結合を配置したものが、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)である。ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)は、熱可塑性の結晶性プラスチックであり、またスーパーエンジニアリングプラスチックという高耐熱樹脂の範疇に分類されている高性能樹脂である。フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つである。
本発明の軸受用保持器によれば、第1分割体5と第2分割体6とを組み付ける場合、合わせ面11、21同士を重ね合わせることになる。この際、第1分割体5と第2分割体6との相互の接近によって、各合わせ面11、21を摺接させることになる。このため、第1分割体5の合わせ面11及び/又は第2分割体6の合わせ面21に潤滑剤(グリース)を塗布しておき、合わせ面11、21を摺接させれば、グリースを掻き分けながら2つの分割体5、6を組み合わせることができる。
各周壁半割体8、9の先端部には係合爪部16、26を設け、合わせ面11、21同士を合わせた状態で、第1分割体5の係合爪部16が第2分割体6の端部壁部4に係合するとともに、第2分割体6の係合爪部26が第1分割体5の端部壁部3に係合することになる。
このため、係合爪部16、26を設ければ、合わせ面11,21同士を合わせた状態で、第1分割体5の係合爪部16が第2分割体6の端部壁部4に係合し、第2分割体6の係合爪部26が第1分割体5の端部壁部3に係合することになって、安定した組立て状態が維持できる。
各合わせ面11、21には、相手側の係合爪部26、16の係合部位へのガイドとなる溝19、29を設けている。このように、ガイドとなる溝19、29を設けることによって、係合爪部16、26を係合部位に安定して嵌合させることができ、しかも、摺接時において係合爪部16、26の損傷等を防止できる。
各合わせ面11、21の摺接にて、各合わせ面11、21に塗布された潤滑剤は転動体30及びこの転動体30が転動する転走面へ掻き分けるように設定できる。これによって、潤滑性の向上を図ることができ、低トルク化を達成できる。また、第1分割体5と第2分割体6とが組み付けられて形成されるポケット1が、転動体30との接触面積を小とする矩形状孔となるようにできる。これによって、低トルク化を図ることができる。
端部壁部3,4に周方向外鍔部35及び周方向内鍔部36を設けることによって、外部からの異物の侵入を防止する機能を発揮する。このため、この保持器を用いれば、別途シール部品を設けることなく、異物の侵入やグリースの漏れを防止できる。しかも、部品点数の減少を図ることが可能となって、組立作業性の向上を図ることができる。
潤滑グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブデン、ポリ-α-オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、一般に潤滑グリースの基油として使用されている油であれば特に限定することなく使用できる。
また、増ちょう剤としては、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または 2 種類以上組み合せて用いてもよい。
潤滑グリース用の公知の添加剤としては、例えば極圧剤、アミン系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合せて添加できる。
ところで、前記保持器において、図2に示すように、ポケット1の底面に、潤滑油の含油が可能な含油材40を配置するようにしてもよい。すなわち、ポケット1の底面に凹部41を設け、この凹部41に含油材40を嵌入(圧入)するようにできる。この場合、この圧入に加えて、接着剤を使用して含油材40と保持器とを接着一体化してもよい。なお、図例では、1つのポケット1にのみ2つの含油材40を配置したものとなっているが、実際には、各ポケット1に2つの含油材40を配置したものである。
潤滑油としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、ポリブテン、ポリαオレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、潤滑油として汎用されているものであれば使用できる。この際、組立てる際に塗布するグリースGとの相性、保持器の材質、含油材40の材質等を考慮して選択する必要がある。
含油材40は、軸受潤滑機能が可能な量の潤滑油を保持するこができるものであって、含油樹脂材(含油樹脂成形体)や含油焼結材等で構成できる。ここで、軸受潤滑機能が可能な量とは、この含油材40に含油されている潤滑油にて、この保持器が用いられている軸受に必要とする量である。このため、組立時に塗布するグリース量を少なくしたり、又はグリースGを省略したりすることができる。
ポケット1の底面に、潤滑油の含油が可能な含油材40を配置したものでは、潤滑油がこの含油材40から滲みだして、この軸受の潤滑を行うことができ、低トルク化を達成できる。特に、グリースの封入や外部からの潤滑油の供給をすることなく、必要最小限の油量で潤滑し、攪拌抵抗による発熱を抑えて、高速回転に対応可能な軸受が実現できる。
ポケット1の底面に凹部41を設けたものでは、凹部41に含油材を圧入したり、この圧入に加えて接着剤等を介して接着したりすることができ、安定して含油材40を保持することができ、含油材40からの潤滑油の滲みだしが可能となる。
また、含油材40を射込み一体成形にてポケット1の底面に配置するようにできる。このように構成すれば、別途、含油材40を凹部41に嵌合させる等の作業を必要せず、組立て作業の簡略化を図ることができる。
また、このような圧入や接着等せずに、凹部41に含油材40を嵌合させ、この嵌合状態で、転動体であるボール30にて押えるようにしてもよい。含油材40を射込み一体成形にてポケット1の底面に配置するようにしてもよい。このように、転動体であるボール30にて押えるようにした場合、含油材40の圧入や接着等必要とせず、組立作業性に優れる。
転動体であるボール30にて押えるようにした場合、含油材40の圧入や接着等必要とせず、組立作業性に優れる。また、含油材40を射込み一体成形にてポケットの底面に配置するものでは、別途、含油材40を凹部41に嵌合させる等の作業を必要とせず、組立て作業の簡略化を図ることができる。
次に、図8は本発明に係る転がり軸受100をアイドラプーリに設けた断面図を示す。このアイドラプーリ71では、軸70の外周に同密封型転がり軸受100を嵌合し、この転がり軸受100によりアイドラプーリ71を回転自在に支持している。
図9は、本発明に係る転がり軸受を電装補機であるオルタネータ72に設けた断面図を示す。このオルタネータ72では、オルタネータ用軸受として用いられる密封型転がり軸受100に、シャフト73が挿入され、突き出たシャフト73の端部にプーリ74が取付けられている。プーリ74には,図示しない伝動ベルトが掛けられる係合溝75が設けられている。
図10は自動車のトランスミッションのギア構成部の一例の概略図を示す。同図はマニュアルトランスミッションの例である。入力シャフト76が、上記実施形態のシール付き軸受100を介してハウジング75Aに回転自在に支持されている。出力シャフト77の一端は転がり軸受78を介して入力シャフト76の端部内径面に、また他端が軸受100を介してハウジング75Bにそれぞれ回転自在に支持されている。入力シャフト76のギア79、および出力シャフト77のギア80,81に噛み合うギア82,83,84、85を有するカウンターシャフト86は、出力シャフト77と平行に配置され、両端がハウジング75A,75Bに回転自在に支持されている。
図11はファンクラッチ装置を示し、このファンクラッチ装置は、冷却用ファン90の内周縁と結合するケース91内に、シリコーンオイル等の粘性流体が充填されたオイル室92とドライブディスク93が組込まれた撹拌室94とが設けられ、両室92、94間に設けられた仕切板95にポート96が形成され、そのポート96を開閉するスプリング97の端部を上記仕切板95に固定している。ドライブディスク93の中心部93aは、ケース91の背面を貫通するドライブ軸98の一端と結合する。ドライブ軸98の他端は、エンジンと駆動結合する。中心部93aとケース91との間には、転がり軸受100を配置し、ケース91とドライブディスク93との間の相対回転を許容する。ドライブディスク93およびドライブ軸98はトルクを入力する入力側の回転部材に相当する。
図12は電磁クラッチを示し、この電磁クラッチは、上記プーリ101と、通電によって電磁力を発生する電磁石102と、回転自在な出力側回転部材103とを備え、電磁石102で発生した電磁力でプーリ101の入力側回転部材104と出力側回転部材103とを吸着させて入力側回転部材104の回転を出力側回転部材103に伝えるものである。電磁石102は、ハウジング105に固定されており、プーリ101の入力側回転部材104の裏面に設けられた円周溝106内に遊嵌している。プーリ101は、入力側回転部材104と転がり軸受100とで構成される。入力側回転部材104は、外周に駆動用ベルト107を巻き掛けするベルト溝108を設けたリング状の部材である。出力側回転部材103は、リング状のクラッチ板110を板ばね等のばね部材111によってコンプレッサ駆動軸112に取り付けたものである。
このように、図1等に示すような本発明にかかる保持器を用いた転がり軸受として、プーリ用であっても、電磁クラッチ用であっても、トランスミッション用であっても、ファンクラッチ用であってもよい。すなわち、本発明に係る保持器を用いた転がり軸受としては、種々の用途のものに適用することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、合わせ面11,21の傾斜角度としては、軸心に対して約45度程度が好ましいが、組立て時の摺接長さを比較的長くとることができて、この摺接によって、潤滑剤が転動体(ボール30)及び転走面に掻き分けることができる範囲で種々変更可能である。ポケット数として前記実施形態では7個であったが、その増減は任意である。また、シール性を考慮すれば、周方向外鍔部35及び周方向内鍔部36を有するものが好ましいが、このような鍔部を有さないものであってもよい。含有材40を配置する場合、前記実施形態では1つのポケット毎に2つであったが、ポケット毎に3個以上配置するものであっても、ポケット毎に1個の含有材40を配置するものであってもよい。また、全ポケット1に含有材40を配置するものではなく、任意のポケット1に含有材40を配置するものであってもよい。
1 ポケット
2 周壁
3,4 端部壁部
5,6 分割体
8 周壁半割体
9 周壁半割体
11、21 合わせ面
16、26 係合爪部
19、29 溝
35 周方向外鍔部
36 周方向内鍔部
40 含油材
41 凹部
2 周壁
3,4 端部壁部
5,6 分割体
8 周壁半割体
9 周壁半割体
11、21 合わせ面
16、26 係合爪部
19、29 溝
35 周方向外鍔部
36 周方向内鍔部
40 含油材
41 凹部
Claims (21)
- 周方向に沿って所定ピッチで複数のポケットが形成された周壁と、径方向端面に連設される一対の端部壁部とを備えた軸受用保持器であって、
一方の端部壁部とこの端部壁部に連設される第1周壁半割体とで第1分割体を形成するとともに、他方の端部壁部とこの端部壁部に連設される第2周壁半割体とで第2分割体を形成し、第1周壁半割体と第2周壁半割体との合わせ面を軸方向に対して所定角度で傾斜する傾斜面とし、合わせ面同士を重ね合わせた状態で、第1分割体と第2分割体とが一体化されることを特徴とする軸受用保持器。 - 各周壁半割体の先端部には係合爪部を設け、合わせ面同士を合わせた状態で、第1分割体の係合爪部が第2分割体の端部壁部に係合するとともに、第2分割体の係合爪部が第1分割体の端部壁部に係合することを特徴とする請求項1に記載の軸受用保持器。
- 第1分割体と第2分割体との相互の接近によって、各合わせ面が摺接して各合わせ面が重ね合わせた状態となるとともに、各合わせ面には、相手側の係合爪部の係合部位へのガイドとなる溝を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸受用保持器。
- 各合わせ面の摺接にて、合わせ面に塗布された潤滑剤は転動体及びこの転動体が転動する転走面へ掻き分けることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 第1分割体と第2分割体とが組み付けられて形成されるポケットが、転動体との接触面積を小とする矩形状孔となることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 端部壁部は、外径方向に突出する周方向外鍔部と、内径方向に突出する周方向内鍔部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- ポケットの底面に、潤滑油の含油が可能な含油材を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- ポケットの底面に凹部を設け、この凹部に前記含油材を嵌合させたことを特徴とする請求項7に記載の軸受用保持器。
- 前記含油材を射込み一体成形にてポケットの底面に配置することを特徴とする請求項7に記載の軸受用保持器。
- 前記含油材は軸受潤滑機能が可能な量の潤滑油を保持することを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 前記含油材に含油樹脂材を用いることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 前記含油材に含油焼結材を用いることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 保持器材料として、ポリアミド樹脂を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 保持器材料として、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 保持器材料として、ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 保持器材料として、フェノール樹脂を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の軸受用保持器。
- 前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の軸受用保持器を用いたことを特徴とする転がり軸受。
- プーリ用の転がり軸受であって、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の軸受用保持器を用いたことを特徴とする転がり軸受。
- 電磁クラッチ用の転がり軸受であって、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の軸受用保持器を用いたことを特徴とする転がり軸受。
- トランスミッション用の転がり軸受であって、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の軸受用保持器を用いたことを特徴とする転がり軸受。
- ファンクラッチ用の転がり軸受であって、前記請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の軸受用保持器を用いたことを特徴とする転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010200998A JP2012057703A (ja) | 2010-09-08 | 2010-09-08 | 軸受用保持器および転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2010200998A JP2012057703A (ja) | 2010-09-08 | 2010-09-08 | 軸受用保持器および転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012057703A true JP2012057703A (ja) | 2012-03-22 |
Family
ID=46055048
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010200998A Pending JP2012057703A (ja) | 2010-09-08 | 2010-09-08 | 軸受用保持器および転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2012057703A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20140064649A1 (en) * | 2011-05-13 | 2014-03-06 | Shohei Fukama | Retainer for ball bearing, and ball bearing |
WO2014090237A1 (de) * | 2012-12-11 | 2014-06-19 | Schaeffler Technologies AG & Co. KG | Zweiteiliger kugellagerkäfig mit mehreren halteschalen bildenden zungen, die aus zwei ringförmigen körpern nach innen gerichtet herausragen und freiräume für schmiermittel bilden und ein kugellager mit einem solchen lagerkäfig |
CN113090677A (zh) * | 2021-04-15 | 2021-07-09 | 浙江康普瑞汽车零部件有限公司 | 一种球笼加工方法 |
CN113091554A (zh) * | 2021-04-15 | 2021-07-09 | 浙江康普瑞汽车零部件有限公司 | 一种三销轴检测机构 |
-
2010
- 2010-09-08 JP JP2010200998A patent/JP2012057703A/ja active Pending
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