JP2012056887A - オリーブ糖脂質を含有する抗炎症剤 - Google Patents

オリーブ糖脂質を含有する抗炎症剤 Download PDF

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博子 安部
Kenichi Nakayama
賢一 仲山
Yasuko Fujita
康子 藤田
Hiroyuki Shibazaki
博行 柴▲崎▼
Hideyuki Yasumoto
秀幸 安本
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Abstract

【課題】オリーブ由来の糖脂質を有効利用するために、オリーブから糖脂質を抽出し、その新規用途を提供すること。
【解決手段】オリーブ由来の糖脂質を有効成分として含有する抗炎症剤、、および該抗炎症剤を含む医薬品、飲食品、化粧品。
【選択図】なし

Description

本発明は、オリーブ由来の糖脂質を有効成分として含有する抗炎症剤、および該抗炎症剤を含む医薬品、飲食品、化粧品などの各種組成物に関する。
オリーブは、香川県、特に小豆島の特産品として知られている。オリーブの主な製品としてはオリーブオイルであるが、オリーブオイルを搾った残渣である採油滓は廃棄されており、未利用となっている。この未利用の採油滓には、果肉や種の油分や水分以外はすべて残っていることから、オリーブを構成する生体成分の多くが含まれたまま廃棄されてしまっているのが現状である。
一方、生体に含まれる糖脂質は、その構造にセラミド成分を含んでいることから、近年、機能性成分として着目されている。特に植物に含まれる糖脂質はその含量が比較的多いこと、また、食品加工した際の廃棄物に含まれることなどから、その産業上利用が試みられている。糖脂質の活性は幅広く、主に皮膚の保湿や免疫系への関与、さらには抗ガン作用の可能性も報告されている。例えば、本発明者らは、生物全般に広く分布する糖脂質であるラクトシルセラミドに抗炎症作用があることを見出している(特許文献1)。
上記のとおり、オリーブを構成する生体成分の多くは廃棄される採油滓に残されているが、細胞膜に埋め込まれた状態で存在している糖脂質もまたその成分の一つであるため、これを有効利用することが望まれるところである。これまで植物素材から糖脂質含有物を得る手段として、エタノール抽出液を冷凍処理する方法などが報告されている(特許文献2)。しかしながら、糖脂質の抽出は、その対象となる材料に含まれる成分や組成がそれぞれ異なるため、用いる溶媒の種類や条件によって必ずしもうまくいくわけではなく、糖脂質を高濃度に効率よく抽出するための手段は材料ごとに検討が必要である。特にオリーブの採油滓には種子などが含まれるため、これより糖脂質を抽出することが困難であり、そのための技術は確立されていなかった。
特開2008−69111号公報 特開2005−120321号公報
本発明の課題は、オリーブ由来の糖脂質を有効利用するために、オリーブから糖脂質を抽出し、その新規用途を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、これまで未利用で廃棄されていたオリーブ採油滓から有機溶媒などにより糖脂質を抽出・精製することに成功するとともに、このオリーブ由来の糖脂質には炎症性サイトカイン産生抑制作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) オリーブ由来の糖脂質を有効成分として含有する抗炎症剤。
(2) オリーブ由来の糖脂質が、オリーブ採油滓の抽出物、または該抽出物の粗精製物もしくは精製物に含まれるものである、(1)に記載の抗炎症剤。
(3)オリーブ由来の糖脂質が、オリーブ果実の抽出物に含まれるものである、(1)に記載の抗炎症剤。
(4) 抗炎症が、炎症性サイトカインの産生抑制及び/又は抗炎症性サイトカインの産生誘導によるものである、(1)に記載の抗炎症剤。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の抗炎症剤を含む飲食品。
(6) 飲食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、(5)に記載の飲食品。
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載の抗炎症剤を含む医薬品。
(8) (1)〜(4)のいずれかに記載の抗炎症剤を含む化粧品。
本発明の抗炎症剤は、炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症性サイトカインの産生を誘導するので、炎症性疾患の治療および予防に有効である。また、本発明の抗炎症剤の有効成分であるオリーブ糖脂質は、天然の食用植物を由来とするため副作用がなく安全性が高い。よって、本剤を含む医薬品や飲食品は安心して服用または摂取できる。
図1は、LPS刺激した培養細胞におけるオリーブ糖脂質の抗炎症効果を示す。 図2は、LPS刺激したマウスにおけるオリーブ糖脂質の抗炎症効果を示す。
以下に、本発明について詳細に述べる。
本発明の抗炎症剤は、オリーブ由来の糖脂質を有効成分とする。
本発明における「抗炎症」とは炎症を引き起こす原因因子として関与する炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症性サイトカインの産生を誘導することをいう。ここで、炎症性サイトカインとしては、TNF-α、IFN-γ、IL-1、IL-6、IL-8、IL-12、IL-17、GM-CSF、RANTESなどが挙げられ、抗炎症性サイトカインとしては、IL-10、IL-4、TGF-βなどが挙げられる。
本発明の抗炎症剤の有効成分となるオリーブ由来の糖脂質(以下、オリーブ糖脂質という)はオリーブ採油滓から有機溶媒を用いて抽出することより得られる。また、オリーブ果実からも同様に得ることができる。本発明で抽出材料として使用するオリーブ採油滓は、オリーブからバージンオイルを採ったあとの残渣をいう。オリーブの品種については、例えば、ミッション、マンザニロ、ルッカ、ネバディロ・ブランコなどが挙げられるが、特に限定はない。本発明の抗炎症剤に使用する糖脂質は、オリーブ採油滓から抽出物から精製されたものが好ましいが、それに限定されず、当該抽出物やその粗精製物であってもよい。
本発明で抽出溶媒として使用する有機溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ジエチルエーテルが挙げられる。これらの中でも特に、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトンが好ましく、クロロホルム、メタノールがより好ましい。これらの有機溶媒は単独で又は2種類以上を組み合わせて抽出溶媒として使用できる。また、これらの有機溶媒で抽出する際には抽出効率を上げるために、例えば水、界面活性剤などの添加物を本発明の効果をそこなわない範囲で加えてもよい。
抽出に使用する有機溶媒量は、抽出原料として例えばオリーブ採油滓を用いる場合、オリーブ採油滓に対して通常2〜20倍量、好ましくは2〜10倍量である。抽出溶媒量がこの範囲を下回ると、抽出原料全体に抽出溶媒が行き渡らず、抽出効率が低下する可能性があり、抽出溶媒量がこの範囲を超えると、後に抽出溶媒除去を行う際の負担が増加する。
抽出温度は、抽出溶媒として使用する有機溶媒の沸点以下の温度であり、通常50〜80℃、好ましくは55〜65℃である。例えば、抽出溶媒としてクロロホルムとメタノールの混液を使用する場合の抽出温度は、通常10〜65℃、好ましくは20〜50℃である。抽出温度がこの範囲を下回ると抽出効率が低下し、この範囲を超えても抽出効率に影響はなく、エネルギーの損失となる。
抽出時間は、通常30分間〜24時間、好ましくは1〜10時間であり、抽出溶媒の種類、抽出温度等の条件によって適宜調節できる。抽出操作の回数は特に限定されるものではなく、1回であってもよいし、1回目の抽出後に再度新鮮な抽出溶媒を添加し、2回目以降の抽出操作を行なってもよい。また、同一の抽出溶媒を用いて複数回抽出操作を行ってもよい。
抽出方法は、当分野で通常用いられる方法であればよく、室温又は加熱下で、任意の装置を使用して行う。具体的には、抽出溶媒を満たした抽出処理槽に抽出原料を投入し、必要に応じて時々攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して残渣を除去し、抽出液を得る。また、オリーブ採油滓には、種等が含まれるため、破砕後に抽出することが好ましい。残渣の除去は、例えば、吸引濾過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、濾過遠心機等を使用して行う。
次に、得られた抽出液を濃縮して有機溶媒を除去(留去)する。濃縮方法は特に限定されず、例えばエバポレーターのような減圧濃縮装置を用いて加温する方法により行うことができる。
濃縮により得られた抽出物(抽出乾固物)はこのままでも使用できるが、不純物類を除去してより純度を向上させる必要のある場合は、常法により精製を行い、精製物とする。精製は、一般的には、水洗浄、クロロホルム洗浄、アセトン洗浄、ヘキサン洗浄、アルカリ性水溶液による洗浄、シリカゲルカラム、樹脂カラム、逆相カラム等を使用したカラムクロマトグラフィーによる精製、極性の異なる溶媒による分配、再結晶等によって行う。
本発明における具体的な精製方法の例を以下に説明する。
まず、上記の抽出物に、クロロホルム等の疎水性溶媒と水もしくはメタノール等の親水性溶媒とからなる混合液を加えて懸濁した後、静置するなどして2層に分離する。このような分液操作を数回繰り返し、回収した有機層(下層)を合わせ、風乾等により有機溶媒を除去することにより糖脂質の粗精製物を得ることができる。
また、上記粗精製物は、必要に応じてさらに分画することで精製してもよい。分画方法は公知技術に準ずればよく、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の方法で分画し、溶出する方法が挙げられる。好適には、シリカゲルカラムクロマトグラフィーが用いられ、粗精製物を固定相(シリカゲル)に流載後、クロロホルム等の疎水性溶媒とメタノール等の親水性溶媒、及びそれらの複数種の溶媒を適当な容量比で混合した溶出液によって溶出する。溶出の際には、溶出液の組成、溶出時間等を適宜調整する。目的とする糖脂質の溶媒に対する溶解度差やイオン結合力の差異によって、さらには必要に応じて同様の操作を数回繰り返すことによって目的とする糖脂質を分離精製することができる。
上記のようにしてオリーブ採油滓から抽出・精製されたオリーブ糖脂質は、セラミドに糖が結合したスフィンゴ糖脂質であるが、主には糖部分がグルコースであるグルコシルセラミドである。
オリーブ糖脂質の分析は、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラグラフィー(HPLC)、各種クロマトグラフィー−マススペクトロメトリーなどの公知の方法により行うことができる。スフィンゴ糖脂質、中でもグルコシルセラミドが市販されているのでこれを標準とし、シリカゲル薄層プレートを用いてクロロホルム−メタノール系など適当な溶媒系を用いて展開させ、オルシノール硫酸やアンスロン試薬などで発色させることにより糖脂質の存在を容易に判定できる。
上記のようにして得られたオリーブ糖脂質は、炎症性サイトカイン産生を抑制し、抗炎症性サイトカイン産生を誘導する作用を有する。しかも、当該オリーブ糖脂質は、天然の食用植物由来であって非常に安全性が高い。したがって、上記のオリーブ糖脂質は、抗炎症剤として使用できる。
また、本発明の抗炎症剤は、適当な添加物とともに飲食品、医薬品、化粧品などの組成物に配合することができる。
本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。さらに、本発明の飲食品をヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、ペットフード、飼料を含む意味で用いることができる。
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
飲食品の種類としては、具体的には、食パン、菓子パン等のパン類;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;しょうゆ、ソース、酢、みりん等の調味料;清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品におけるオリーブ糖脂質の配合量は、その抗炎症作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性およびコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
本発明の飲食品は、例えば、炎症性サイトカインが関与することが知られている自己免疫疾患やアレルギー疾患を発症した患者や、正常人であっても、それらの疾患の予防または改善を目的として日常的に摂取することができる。
また、本発明の抗炎症剤を医薬品として提供する場合は、オリーブ糖脂質に、医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した基材や担体、ならびに添加物(例えば、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、色素、香料等)を用いて、公知の種々の方法にて各種製剤形態に調製すればよい。
経口投与用製剤には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤など用いることができる。
非経口投与用製剤には、蒸留水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ミョウバン水、植物油等の溶剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤などを用いることができる。
当該医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤などの経口剤、注射剤、点滴剤、座剤、軟膏剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などの非経口剤などを挙げることができる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
本発明の抗炎症剤は、有効成分であるオリーブ糖脂質が炎症性サイトカインの産生を抑制する作用を有するので、皮膚、粘膜の炎症の治療及び/又は予防のための、あるいは炎症性サイトカインの産生亢進に起因する疾患の治療及び/又は予防のための医薬として有効である。
本発明において、「皮膚、粘膜の炎症」とは、病原性細菌、免疫反応、又は外傷等に起因する皮膚、粘膜の炎症をいい、具体的には、ブドウ球菌、アクネ桿菌、口腔内有害細菌(たとえばう蝕菌や歯周病菌)などの病原性細菌による炎症、創傷や火傷等による炎症、アトピー性皮膚炎や花粉症による狭範囲の炎症、臓器移植時の拒絶反応による広範囲の炎症などが挙げられるがこれらに限定はされない。
また、「炎症性サイトカイン産生亢進に起因する疾患」としては、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、敗血症ないし菌血症、関節炎、ブドウ膜炎、角膜炎、SIRS(全身性炎症反応症候群)等の炎症性疾患;気管支喘息発作、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹等のアレルギー疾患;慢性関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、甲状腺炎、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎、全身性エリテマトーデス、ベーチェット病、バセドー病等の自己免疫疾患等が挙げられるがこれらに限定はされない。本発明の医薬品は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。
本発明の抗炎症剤の投与方法としては、経口的又は非経口的方法のいずれでもよい。例えば、塗布剤・軟膏剤等であれば、皮膚炎の患部に直接塗布したり、また噴霧剤等であれば、鼻腔内、口腔内、気管内に噴射することにより投与できる。あるいは、点眼剤として眼に適用することもできる。
本発明の医薬品の有効成分は、天然物由来であるため、非常に安全性が高く副作用がないため、前述の疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して広い範囲の投与量で経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度法などに応じて適宜決定することができる。例えば、成人に経口投与する場合には、オリーブ糖脂質量に換算して、500mg/kg体重〜10g/kg体重の範囲で1日1回から数回に分けて投与される。
また、本発明の抗炎症剤は、医薬のみならず、抗炎症効果を付与することを目的とする化粧品や医薬部外品等の組成物にも配合できる。例えば化粧品や医薬部外品としては、化粧水、乳液、一般クリーム、美容液、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、洗顔料、ファンデーション、おしろい、浴用剤、シャンプー、リンス、トリートメント剤、染毛料、育毛剤、ボディローション、ボディシャンプー、練歯磨剤、口内洗浄液、含嗽剤などを挙げることができる。
上記化粧品は、植物油等の油脂類、ラノリンやミツロウ等のロウ類、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール類、エステル類、種々の界面活性剤、色素、香料、ビタミン類、植物・動物抽出成分、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等、通常の化粧品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)オリーブからの糖脂質の抽出
オリーブの採油滓の乾燥物100gにアセトン300mlを加え室温で1時間攪拌し、ブフナー漏斗(No.2の濾紙を使用)を用いて吸引濾過を行った。残渣に再度アセトン100mlのを加え同様の操作を繰り返した。濾過した後の残渣を風乾したものに、クロロホルム:メタノール(2:1)の混合液を300ml加え、30分攪拌した後、一晩放置し抽出を行った。抽出後、ブフナー漏斗(No.2濾紙を使用)を用いて吸引濾過を行った後、濾過した残渣に再度クロロホルム:メタノール(2:1)の混合液を300ml加え、室温で1時間攪拌して抽出を行った。抽出後、ブフナー漏斗(No.2濾紙を使用)を用いて吸引濾過を行い、このときの濾液と、先に抽出した濾液とを合わせ、ナス型フラスコに移し、減圧濃縮を行った。3.8gの濃縮物に対し、クロロホルム:メタノール(2:1)、水、0.4N KOH/メタノールを加え、37℃で2時間処理をした。処理後、濃塩酸を用いてpHを7.0にし、クロロホルムで糖脂質を抽出した後、減圧濃縮して溶媒を除いた。
乾燥した抽出物はシリカゲル60を用いたカラムクロマトグラフィーで以下の手順にて分画を行った。乾燥抽出物をクロロホルム5 mlに溶解し、50gのシリカゲル60を充填したカラムにアプライし、クロロホルム300mlで洗った。その後、クロロホルム:アセトン(1:1) 300mlで更に洗浄し、最後にアセトン300mlで糖脂質を溶出させた。その後、クロロホルム:メタノール(9:1) 300mlでも溶出を行い、アセトン溶出画分を中心にTLCで確認を行い、糖脂質が含まれているフラクションはアセトン溶出画分と合わせ、減圧し溶媒を除いた。
得られた糖脂質画分は、更にシリカゲル60を用いたカラムクロマトグラフィーで糖脂質の単離を行った。3gのシリカゲル60をクロロホルムで膨潤させ、ガラスカラムに詰め、クロロホルム0.2mlに溶かした糖脂質画分をアプライし、24mlのクロロホルムで洗った。その後クロロホルム:95%メタノール(89:11)で0.5mlずつのフラクションで分画を行い、TLCを用いて糖脂質のみが含まれている画分のみを選び集め、オリーブの糖脂質画分とした。最終的に6mgの糖脂質を得た。
(実施例2)培養細胞を用いたオリーブ糖脂質の免疫制御能の確認
96穴平底プレートに各ウェルあたり1x105個のマクロファージ様細胞株RAW264.7を播種し、200μlのRPMI1640 10% FBS、Antibiotic Antimycotic Solution (1×)(SIGMA)中で37℃にて2時間以上前培養した。培地上清100μlを除いた後、大腸菌由来LPS(100ng)と糖脂質抽出物(10μgもしくは100μg)/100μl/ウェルを新たに加え、37℃、24時間培養した。LPS 100ngのみ、LPS 100ng+糖脂質10μg、LPS 100ng+糖脂質 100μg、糖脂質 10μg、糖脂質 100μgの5試験区を設けた。それぞれ上清を100μlずつ回収し、TNF-αの濃度をマウスTNF-α ELISA KIT (バイオソース)を用いて測定した。それぞれのTNF-αの量はLPSのみでは3690±8.4pg/mL、10μgのオリーブ糖脂質を加えたものが2011±15.5pg/mL、100μgのオリーブ糖脂質を加えたものが1370±9.6pg/mLであった(図1)。これらの結果は、それぞれに対して3ウェルずつ測定した結果の平均値を使用している。炎症性サイトカインであるTNF-αの産生量がオリーブ糖脂質を添加することによって低下したことから、オリーブ糖脂質の抽出液はLPSによって引き起こされる炎症反応を抑制する作用があることが明らかとなった。また、オリーブ糖脂質抽出物そのものには、TNF-αの産生誘導能はなかった。
(実施例3)マウスを用いたオリーブ糖脂質の免疫制御能の確認
マウスはBALB/cの雄、6週齢(日本クレア)を用いた。1試験区につき5匹を使用し、LPS 10μgのみ、LPS 10μg+糖脂質0.5mg、 LPS 10μg+糖脂質1mg、糖脂質 1mgのみ、溶媒であるPBSのみの5試験区を設け、それぞれの混合液をマウス腹腔内に投与した。投与後、0時間、1時間、3時間、6時間、12時間に採血し、血清を分離した。血清中のサイトカイン(TNF-α、IL-12、IFN-γ、IL-10)は、マウス TNF-α ELISA KIT (バイオソース)、マウスIL-12 ELISAkit、マウスIFN-γELISA kit(エンドジェン社)、マウスIL-10 Quantikine (R&Dシステムズ社)を用いて測定した。この結果、LPS10μgのみを投与した試験区(コントロール)では投与後1時間のTNF-αおよびIL-10、投与後3時間のIL-12、投与後6時間のIFN-γの値は、それぞれ644±121 pg/mL、201± 35.2 pg/mL、82.6±24.1 pg/mL、823±139 pg/mLであったのに対し、LPS 10μg+糖脂質0.5mgもしくはLPS 10μg+糖脂質1mgを投与したものは、投与後1時間のTNF-αは548±80.3pg/mLおよび440±83.1pg/mL、IL-10は275±90.5 pg/mLおよび291±52.7 pg/mL、投与後3時間のIL-12は74.1±15.6pg/mLおよび52.7±7.60pg/mL、投与6時間後のIFN-γは603±176pg/mLおよび599±112pg/mLであった(図2)。すなわち、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-12、IFN-γの産生量は糖脂質との同時投与により抑えられ、炎症抑制性のサイトカインであるIL-10の産生量は糖脂質との同時投与によって誘導された。
以上の結果から、オリーブ糖脂質は、動物生体内においても抗炎症作用を持つことが明らかとなった。なお、オリーブ糖脂質のみ、およびPBSのみの投与によってはサイトカインに誘導は観察されなかった。
本発明は、抗炎症・抗アレルギー・免疫賦活化を目的とした機能性食品やサプリメントなどの飲食品、医薬品、化粧品の製造分野において利用できる。

Claims (8)

  1. オリーブ由来の糖脂質を有効成分として含有する抗炎症剤。
  2. オリーブ由来の糖脂質が、オリーブ採油滓の抽出物、または該抽出物の粗精製物もしくは精製物に含まれるものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  3. オリーブ由来の糖脂質が、オリーブ果実の抽出物に含まれるものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  4. 抗炎症が、炎症性サイトカインの産生抑制及び/又は抗炎症性サイトカインの産生誘導によるものである、請求項1に記載の抗炎症剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の抗炎症剤を含む飲食品。
  6. 飲食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、請求項5に記載の飲食品。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の抗炎症剤を含む医薬品。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の抗炎症剤を含む化粧品。
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