JP2012046594A - オレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法 - Google Patents

オレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法 Download PDF

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Masayoshi Saito
雅由 齋藤
Takashi Fujita
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Abstract

【課題】オレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能を、重合体を得ることなく簡便かつ低コストに測定可能な、新規な評価方法を提供する。
【解決手段】マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなるオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の性能評価方法であって、核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で、前記電子供与体の官能基を構成する炭素原子または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価することを特徴とするオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、遷移金属を含有するオレフィン類重合用固体触媒の触媒性能評価方法に関する。
近年、マグネシウム、遷移金属および電子供与体を必須成分として含む、固体状のチーグラー−ナッタ触媒が、オレフィン重合用の触媒として工業的に広く用いられるようになっており、得られるポリオレフィンの特性を向上させるために、現在もなお、重合活性や得られる重合体の立体規則性の程度など、触媒特性が発現するメカニズムの解明を中心とした研究開発が進められている。
ところで、上記触媒の重合特性等を評価するためには、得られた触媒を用いて実際にオレフィンモノマーを重合させる必要があることから、上記触媒開発は、試行錯誤的に行われているのが実状である。
このような状況下、触媒の化学的構造、すなわち触媒成分である遷移金属の存在状態を解析し、触媒特性と関連付けることによって、より優れた触媒を設計することが求められるようになっている。
例えば、X線回折法(以下、「XRD法」という)、赤外吸収分光法(以下、「IR法」と略称する)、ラマン分光法(以下、「Raman法」と略称する)等を用いた方法が検討されている。
しかしながら、XRD法は、結晶性の高い無機化合物を含む触媒に対しては有効な手法であるが、非晶質系の材料を含む触媒に対しては検出ピークが広幅化するために、解析や定量が非常に困難になってしまう。さらに、IR法とRaman法は分析感度という面では有効であるが、同じようなスペクトルが複数ある場合、それぞれのピークが重なり、解析することが困難になる。
例えば、特許文献1(米国特許第4,298,718号明細書)や特許文献2(米国特許第4,495,338号明細書)においては、塩化マグネシウムを担体に用いた触媒において、触媒活性に有効な活性型塩化マグネシウムをXRD法にて分析し、結晶型塩化マグネシウムのピークに比して、活性型塩化マグネシウムはハロピークを出現するとして、そのピークを規定している。しかしながら、現在汎用的に用いられているオレフィン類重合用触媒中の塩化マグネシウムは、ほとんどが非晶質であり、これをXRD法で分析した場合、何れの触媒においても上記特許文献1や特許文献2に記載されているようなハロピークを生じてしまう。
このように、オレフィン重合触媒として使用される、マグネシウム、チタンおよび電子供与体を必須成分として含む、固体状のチーグラー−ナッタ触媒は、その構造が十分に解析されておらず、触媒構造と触媒特性との関係が効果的に検討されているとは言い難い状況にあった。
米国特許第4,298,718号明細書 米国特許第4,495,338号明細書
このような状況下、本発明者等は、核磁気共鳴分光法に着目し、先に、核磁気共鳴装置を用いて触媒中のチタン核を高回転数でかつ高強磁場強度下で核磁気共鳴させ、得られた遷移金属同位体ピークの化学シフト値の大小により触媒活性を評価する方法を提案した(第57回高分子年次会)。
しかしながら、通常、核磁気共鳴装置を用いてチタン核を測定する場合、チタン核は四極子モーメントを有し(すなわち、核スピン量子数Iが1超であり)、核四極子相互作用を生じて得られる信号が幅広くなってしまうことから、上記方法においては、高回転数でかつ(例えば20テスラ以上の)強磁場条件下で核磁気共鳴させる必要がある。このような強磁場を生じる核磁気共鳴装置は、装置開発や装置の維持に(年間数十億円単位の)膨大な費用を要し、更には装置の設置スペースとして縦横ともに10m以上の床面積を確保する必要があるとともに、漏洩磁場が増大してしまうため、低コストで簡便な評価方法にはなり難い。
本発明は、オレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能を、重合体を得ることなく簡便かつ低コストに測定可能な、新規な評価方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討したところ、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒に対し、核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で上記電子供与体の官能基を構成する炭素原子または上記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価することにより、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒の触媒性能を簡便かつ低コストに評価し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなるオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の性能評価方法であって、
核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で、前記電子供与体の官能基を構成する炭素原子または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、
得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価する
ことを特徴とするオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法、
(2)前記炭素原子核が酸素原子と化学結合を形成してなる炭素原子の原子核である上記(1)に記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法、
(3)前記遷移金属がチタンである上記(1)または(2)に記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法、
(4)前記電子供与体が、ジカルボン酸エステル化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法、および
(5)評価対象となる触媒性能がオレフィン類の重合活性または得られる重合体の立体規則性の程度である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法、
を提供するものである。
なお、以下、適宜、オレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒を、単に「遷移金属含有固体触媒」と呼ぶものとする。
本発明によれば、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒に対し、核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で上記電子供与体を構成する炭素原子核を核磁気共鳴させ、得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価していることから、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒の性能を、重合体を得ることなく簡便かつ低コストに評価することができる。
緩和時間とオレフィンの重合活性との相関関係を示す図である。 緩和時間と得られる重合体のキシレン可溶分との相関関係を示す図である。 緩和時間と得られる重合体のキシレン可溶分との相関関係を示す図である。
本発明の遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法は、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒の性能評価方法であって、核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で、前記電子供与体の官能基を構成する炭素原子または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価することを特徴とするものである。
以下、本発明の方法における核磁気共鳴条件および評価方法について詳述した上で、測定対象となる遷移金属含有固体触媒について述べるものとする。
本発明の方法において使用し得る核磁気共鳴装置としては、磁場強度7テスラ以上の条件下で核磁気共鳴分光測定し得るものであれば特に制限されず、固体核磁気共鳴装置として市販されているもの等を挙げることができる。
本発明の方法において、触媒試料を充填するNMR試料管は、ガラス製、ジルコニア製、または窒化珪素製のものを好適に用いることができる。
また、NMR試料管は、直径が1.2mm〜6.0mmであることが好ましく、入手や操作の容易性等を考慮すると、直径4.0〜6.0mmであることがより好ましい。
本発明の方法において、核磁気共鳴分光測定時に使用するプローブ(NMRプローブ)は、炭素原子核の緩和時間を測定できるものであれば、特に制限されない。
本発明の方法において、核磁気共鳴分光測定時の磁場強度は、得られるピークの広幅化を抑制するために7テスラ以上とし、その上限は特に制限されない。市販の核磁気共鳴装置を用い、経済的かつ簡便に測定するという観点から、磁場強度は、7テスラ以上20テスラ未満であることが好ましく、7テスラ以上17テスラ以下であることがより好ましく、11テスラ以上14テスラ以下であることが特に好ましい。
本発明の方法において、核磁場共鳴分光測定時における回転速度(試料回転速度)は、6kHz以上であることが好ましく、10kHz以上であることがより好ましく、15kHz以上であることがさらに好ましい。
汎用されている直径4mmのNMR試料管を用いる場合、回転速度は10KHz以上であることが適当であり、15KHz以上であることがより適当である。
なお、本出願書類において、回転速度とは、触媒試料を充填する試料管(NMR試料管)の回転速度を意味する。
上記回転速度を上げることにより、回転速度由来の異方性信号であるスピニングサイドバンド(以下SSBとする)を消去できることから、回転速度はできる限り上げることが望ましい。
本発明において、上記NMR試料管は、外部静磁場方向に対して54.7°の軸を中心に回転させつつ核磁気共鳴させることが好ましい。
本発明において、核磁気共鳴は、サンプルを高速でスピンさせながらチューニングし、パルス幅、繰り返し時間およびパルスシーケンスなどを確認した後に、実施することが好ましい。
核磁気共鳴方法は、炭素原子核の緩和時間が測定できる方法であれば特に制限されず、例えば、CPMAS(交差分極マジックアングルスピニング)法、MQMAS(多量子マジックアングルスピニング)法、CRAMPS(多重パルス水素核高分解能)法等を挙げることができる。
本発明においては、上記方法により、後述する電子供与体の官能基を構成する炭素原子または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価する。
緩和時間とは、測定対象となる炭素原子が励起状態から基底状態(平衡状態)に戻るまでの時間である。
緩和時間には、縦緩和時間(T1、スピン−格子緩和時間)、回転系の縦緩和時間(T1ρ、回転系のスピン−格子緩和時間)および横緩和時間(T2、スピン−スピン緩和時間)があるが、本発明においては、縦緩和時間および回転系の縦緩和時間、すなわちT1およびT1ρを測定することが好ましい。
電子供与体の官能基を構成する炭素原子または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核としては、酸素原子と化学結合を形成してなる炭素原子の原子核、すなわち、カルボニル基等を構成する酸素原子と二重結合を形成してなる(C=O結合を形成してなる)炭素原子の原子核や、エーテル基等を構成する酸素原子と単結合を形成してなる(C−O結合を形成してなる)炭素原子の原子核のほか、窒素原子と化学結合を形成してなる炭素原子の原子核、すなわち、アミド基等を構成する窒素原子と二重結合を形成してなる(C=N結合を形成してなる)炭素原子の原子核、アミノ基等を構成する窒素原子と単結合を形成してなる(C−N結合を形成してなる)炭素原子の原子核等を挙げることができる。
後述するように、電子供与体としては、エステル類、エーテル類、アミド類、アミン類等が挙げられることから、各電子供与体を構成する官能基の種類に応じて、測定対象となる炭素原子核を選定すればよい。
電子供与体としては、一般に、モノエーテルやジエーテル等のエーテル類と、モノカルボン酸エステル、ジカルボン酸エステル類等のエステル類とが使用されていることから、多くの場合は、酸素原子と化学結合を形成してなる炭素原子の原子核、すなわち、酸素原子と単結合を形成してなる(C−O結合を形成してなる)炭素原子の原子核または、酸素原子と二重結合を形成してなる(C=O結合を形成してなる)炭素原子の原子核を測定対象とすることが適当である。
本発明において、炭素原子核としては、通常、13Cの原子核が選択される。
本発明において、13C原子核の緩和時間を測定する方法は特に限定されない。
例えば、インバージョンリカバリーの手法を用いてT1を求めるダブルパルス法、クロスポラリゼーションの手法を用いてT1ρを求めるスピンロック法、運動性が低い観測核のT1を求めるトーチャCP法等といった、様々な測定方法を挙げることができ、中でも運動性が低く、緩和時間が長い試料の測定に適していることから、トーチャCP法により測定することが好ましい。
なお、これらの手法については、D.A Torchia、Journal of Magnetic Resonance、Vol.30、613頁(1978); W.T.Dixon, J.Shaefer, M.D.Sefcik, E.O.Stejskal, and R.A.Mckey、Journal of Magnetic Resonance、Vol.49、341頁(1982);A.E. Bennett, C.M Rienstra, M. Auger, K.V. Lakshmi, and R.G. Griffin、Journal of Chemical Physics 、Vol.103、6951-6958頁(1995)などに詳しい記載がなされている。
本発明において測定される、炭素原子核の緩和時間は、通常、0.1〜1000秒である。
そして、本発明においては、上記炭素原子核の緩和時間の長短により、遷移金属含有固体触媒の触媒性能を評価する。
評価対象となる触媒性能としては、オレフィン類の重合活性、前記遷移金属含有固体触媒の存在下、オレフィン類を重合することにより得られる重合体の立体規則性の程度等を挙げることができる。
すなわち、評価対象となる触媒性能がオレフィン類の重合活性である場合、本発明者等の検討によれば、上記炭素原子核の緩和時間が長い場合には、オレフィン類の重合活性(触媒成分1gあたりのポリオレフィン生成量)が低くなり、緩和時間が短い場合には、オレフィン類の重合活性が高くなる。このため、評価対象となる遷移金属含有固体触媒と同種の原料、すなわち遷移金属化合物、マグネシウム化合物および電子供与体を、同じような方法で接触させて得られた、複数の遷移金属含有固体触媒について、予め同一の条件下で測定した緩和時間データを基に検量線等を作成しておくことにより、緩和時間の長短から、重合体を作製することなく触媒活性の程度を評価することが可能になる。
また、評価対象となる触媒性能が、得られる重合体の立体規則性の程度である場合、本発明者等の検討によれば、上記炭素原子核の緩和時間が長い場合には、得られる重合体において、立体規則性の程度を表わすキシレン可溶分が多くなり(立体規則性が低くなり)、緩和時間が短い場合には、キシレン可溶分が少なくなる(立体規則性が高くなる)。このため、評価対象となる遷移金属含有固体触媒と同種の遷移金属化合物、マグネシウム化合物および電子供与体を、同じような方法で接触させて得られた、複数の遷移金属含有固体触媒について、予め同一の条件下で測定した緩和時間データを基に検量線等を作成しておくことにより、緩和時間の長短から、重合体を作製することなく、得られる重合体の立体規則性の程度を評価することが可能になる。
なお、評価対象である遷移金属含有固体触媒と、検量線作成に用いる複数の遷移金属含有固体触媒は、同様の製造方法により作製されたものであることが好ましい。
検量線の作成方法としては、特に制限されず、最小二乗法等の回帰分析方法を挙げることができる。
このように、本発明においては、評価対象である遷移金属含有固体触媒に含まれる電子供与体の官能基を構成する炭素原子、または官能基に直接結合する炭素原子の原子核を測定対象とし、その緩和時間の長短を測定することにより、予め作成しておいた検量線をもとに、重合体を作製することなく触媒性能を評価することができる。
本発明者等は、遷移金属含有固体触媒に含まれる電子供与体の、官能基を構成する炭素原子または官能基に直接結合する炭素原子の原子核の緩和時間が、触媒性能と相関することを見出して本発明を完成するに至ったものであるが、これは、上記電子供与体の官能基が触媒担体と相互作用する部位であることから、その近傍に位置する炭素原子核の緩和時間が触媒の分子運動性と相関し、オレフィン類の重合活性や得られる重合体の立体特異性等の触媒活性を反映するためと考えられる。
本発明によれば、評価対象である遷移金属含有固体触媒について、実際に重合体を作製することなく触媒性能を評価することができ、また、高額な費用を要する大規模な核磁気共鳴装置を用いなくとも、触媒性能を評価し得るものであるため、遷移金属含有固体触媒の触媒性能を安価かつ簡便に評価することができる。
次に、本発明において測定対象となる遷移金属含有固体触媒について説明する。
本発明において、測定対象となる遷移金属含有固体触媒は、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含むものであり、上記電子供与体は、官能基を有するとともに、該官能基が炭素原子を構成原子として有するか、または該官能基に直接結合する炭素原子を有するものである。
本発明において、測定対象となる遷移金属含有固体触媒としては、上記炭素原子として、酸素原子と化学結合を形成してなる炭素原子、すなわち、酸素原子と二重結合もしくは単結合を形成してなる炭素原子か、あるいは、窒素原子と化学結合を形成してなる炭素原子、すなわち、窒素原子と二重結合もしくは単結合を形成してなる炭素原子から選ばれる一種以上を有する電子供与体を含んでなる固体状のものが好ましい。
また、上記成分以外に、さらに、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子、アルミニウム、ケイ素等を含むものも好ましい。さらに、本発明において、測定対象となる遷移金属含有固体触媒は、有機アルミニウム化合物などと接触させ予備活性化処理された固体状のもの(オレフィン重合触媒)や、予備的に重合された少量のオレフィン類を含んでなる固体状のもの(予備重合触媒)であってもよいが、経済的かつ簡便に触媒性能を評価するという観点からは、上記予備活性化処理や予備的な重合が行なわれる前の、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)が特に好ましい。
本発明の評価対象となる遷移金属含有固体触媒は、マグネシウムを含む。
本発明の測定対象となる遷移金属含有固体触媒において、マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有さないマグネシウム化合物から選ばれる一種以上を挙げることができる。
ここで、還元性を有するマグネシウム化合物としては、例えば、Mg−C結合あるいはMg−H結合を有するマグネシウム化合物を挙げることができ、具体的には、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロライド、プロピルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、アミルマグネシウムクロライド、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、オクチルブチルマグネシウム等を挙げることができる。これらのマグネシウム化合物は、単独で用いることもできるし、有機アルミニウム化合物と錯化合物を形成したものを用いてもよい。また、これらのマグネシウム化合物は、液体状であっても固体状であってもよい。
還元性を有さないマグネシウム化合物の具体例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム、弗化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド、フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウム等のアリールオキシマグネシウムハライド、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジイソプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジ(n−オクトキシ)マグネシウム、ジ(2−エチルヘキソキシ)マグネシウム、メトキシエトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、エトキシブトキシマグネシウム、等のジアルコキシマグネシウム、ジフェノキシマグネシウム、ジ(メチルフェノキシ)マグネシウム等のジアリールオキシマグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のカルボン酸マグネシウム等を挙げることができる。
中でも塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジイソプロポキシマグネシウム、メトキシエトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ステアリン酸マグネシウムが好ましく、塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウムがより好ましい。
上記還元性を有さないマグネシウム化合物は、上述した還元性を有するマグネシウム化合物、あるいは触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。例えば、グリニヤール試薬のような有機マグネシウム化合物とハロゲン化チタン、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化アルコールや塩酸等と接触させて得られたものであってもよい。
なお、マグネシウム化合物は上記の還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有さないマグネシウム化合物の他に、上記のマグネシウム化合物と他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよいし、さらに上記の化合物を2種以上組み合わせた混合物であってもよい。
本発明の測定対象となる遷移金属含有固体触媒において、遷移金属としては、第一遷移元素(3d遷移元素)、第二遷移元素(4d遷移元素)、第三遷移元素(4f遷移元素)および第四遷移金属元素の中で、核スピン量子数Iが1/2であるか、または1超である原子核を有するものから選ばれる1種以上を挙げることができ、具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどから選ばれる一種以上を挙げることができ、特に好ましくはチタンを挙げることができる。
また、遷移金属源となる遷移金属化合物としては、上記遷移金属のハロゲン化物やアルコキシド化合物等を挙げることができる。
このような遷移金属化合物としては、例えば、一般式(I)
Ti(OR4−j (I)
(Rは炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、Xはハロゲン原子、jは0〜4の整数であり、jが2以上の場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよく、またXが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよい。)で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。
一般式(I)で表わされるチタン化合物において、Rは、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であって、炭素数が1〜10の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、具体的には、CH基、C基等を挙げることができる。
また、一般式(I)で表わされるチタン化合物において、Xはハロゲン原子を意味し、Xとしては、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子等を挙げることができる。
一般式(I)で表わされるチタン化合物において、jは0〜4の整数であり、0〜3の整数であることが好ましい。
一般式(I)で表わされるチタン化合物として、具体的には、TiCl、TiBr、TiI等のテトラハロゲン化チタン、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OCH)Br、Ti(OC)Br等のトリハロゲン化アルコキシチタン、Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(OCHBr、Ti(OCBr等のジハロゲン化ジアルコキシチタン、Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(OCHBr、Ti(OCBr等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OCH(OC等のテトラアルコキシチタン、等を挙げることができる。
これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく、特に四塩化チタン(TiCl)等のテトラハロゲン化チタンが好ましく用いられる。これら一般式(I)で表わされるチタン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。さらに、これら一般式(I)で表わされるチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物で希釈された状態で用いてもよい。
本発明において、遷移金属含有固体触媒を構成する電子供与体としては、炭素原子に直接結合した酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物を挙げることができ、C=O結合、C−O結合、C=N結合およびC−N結合から選ばれる一種以上の結合を有する有機化合物であることが好ましく、C=O結合およびC−O結合から選ばれる一種以上の結合を有する有機化合物であることがより好ましい。
本発明において、遷移金属含有固体触媒を構成する電子供与体としては、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられる。
例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等を挙げることができ、フェノール類としてはフェノール、クレゾール等のフェノール類を挙げることができる。
また、エーテル類としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル、アミルエーテル等のモノエーテル類や、
ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2,2−ジ−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,3−ジシクロヘキシル−1,4−ジエトキシブタン、2,3−ジイソプロピル−1,4−ジエトキシブタン、2,4−ジフェニル−1,5−ジメトキシペンタン、2,5−ジフェニル−1,5−ジメトキシへキサン、2,4−ジイソプロピル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソブチル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソアミル−1,5−ジメトキシペンタン、2−メチル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン等のジエーテル類を挙げることができる。
また、エステル類としては、モノカルボン酸エステル化合物やジカルボン酸エステル化合物を挙げることができる。
モノカルボン酸エステル化合物としては、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等の低分子カルボン酸エステルや、
安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル等の安息香酸エステルや、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、等のp−トルイル酸エステルや、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のアニス酸エステル等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸エステル化合物としては、ジカルボン酸ジエステル、脂環式ジカルボン酸エステルおよび、芳香族ジカルボン酸エステル等を挙げることができる。
ジカルボン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル等のマレイン酸ジエステルや、コハク酸ジエチル、コハク酸ジ−n−プロピル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジイソブチル、コハク酸エチル−n−ブチル、等のコハク酸ジエステルや、
マロン酸ジメチル、ジメチルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジ−n−ブチル、ジ−n−プロピルマロン酸ジエチル、ジイソプロピルマロン酸ジエチル、ジ−n−ブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジ−sec−ブチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸エチルブチル、メチルイソブチルマロン酸ジメチル、メチルネオペンチルマロン酸ジエチル、等のマロン酸ジエステルや、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジイソプロピル、グルタル酸ジ−n−ブチル、グルタル酸ジイソブチル、等のグルタル酸ジエステルや、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸ジエステル、等が挙げられる。
また、脂環式ジカルボン酸エステルとしては、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、シクロへキサン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、シクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、等の飽和脂環式ジカルボン酸ジエステルや、3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロへキセン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、(1−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−オクチル、)4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、5−シクロオクテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1−シクロオクテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、等の不飽和脂環式ジカルボン酸エステルや、3−メチルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロへキサン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、3,6−ジメチルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジフェニルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−エチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチル−6−n−プロピルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−ヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−6−ペンチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、5−メチルシクロペンタン−1,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,4−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジメチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジシクロヘキシルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−5−ペンチルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−5−n−プロピルシクロペンタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルシクロヘプタン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,7−ジメチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,7−ジヘキシルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−7−ペンチルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−7−n−プロピルシクロヘプタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロオクタン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロデカン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ビニルシクロへキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジシクロヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸ジイソブチル、テトラシクロデカン−2,3−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、3,6−ジエチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−オクチル等のアルキル置換飽和脂環式ジカルボン酸ジエステルや、3−メチル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチル−4−シクロへキセン−1,3−ジカルボン酸ジブチル、4−メチル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチル−4−シクロへキセン−1,3−ジカルボン酸ジブチル、3,4−ジメチル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジヘキシル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−6−ペンチル−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチル−3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチル−3−シクロペンテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、3,4−ジメチル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジメチル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジヘキシル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−ヘキシル−5−ペンチル−3−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチル−4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチル−4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル、4−メチル−4−シクロヘプテン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチル−4−シクロヘプテン−1,3−ジカルボン酸ジエチル等のアルキル置換不飽和脂環式ジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジエステルや、置換フタル酸ジエステル等が挙げられる。
また、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等を挙げることができ、酸ハライド類としては、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等を挙げることができ、アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができる。
また、アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等を挙げることができ、アミド類としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げることができ、ニトリル類としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等を挙げることができ、イソシアネート類としては、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等を挙げることができ、
Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、後述する一般式(V)で表わされる化合物を挙げることができる。
上記電子供与体のうち、安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル、またはマロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル、コハク酸ジエステル等のジカルボン酸ジエステル化合物、フタル酸ジエステル、置換フタル酸ジエステル、等の芳香族ジカルボン酸ジエステル化合物や、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等が、好ましく用いられる。
フタル酸ジエステルの具体例としては、下記一般式(II);
(C)(COOR)(COOR) (II)
(式中、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基を示し、RとRは同一であっても異なってもよい。)
で表されるものを挙げることができ、より具体的には、
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルへキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルへキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチル(ウンデシル)、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルへキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)から選ばれる1種以上を挙げることができる。
また、置換フタル酸ジエステルの具体例としては、下記一般式(III)で表されるものを挙げることができる。
(C4−i)(COOR)(COOR) (III)
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基を示し、RとRは同一であっても異なってもよく、iは1または2の整数である。)
上記一般式(III)で表わされる置換フタル酸ジエステルにおいて、Rが炭素数1〜8のアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルへキシル基であり、Rがハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
は好ましくはメチル基、臭素原子または塩素原子であり、より好ましくはメチル基または臭素原子である。
また、iは1または2の整数であり、iが2のとき、2つのRは同一であっても異なってもよい。
iが1の場合、Rが上記一般式(III)で表わされる置換フタル酸ジエステルの3位、4位、5位または6位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましく、iが2の場合、Rは4位および5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
上記一般式(III)で表わされる置換フタル酸ジエステルにおいて、RおよびRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、またはイソオクチル基、2,2−ジメチルへキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基が好ましく、エチル基、n−ブチル基、ネオペンチル基が特に好ましい。
上記一般式(III)で表される置換フタル酸ジエステルとしては、例えば、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−エチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルから選ばれる1種以上が挙げられる。
上記のエステル類を2種以上組み合わせて用いる場合、使用する各エステルのアルキル基の炭素数をそれぞれ合計したときに、最も大きなアルキル基の炭素数と最も小さなアルキル基の炭素数の差が4以上になるようにエステル類を組み合わせることが望ましい。
本発明において測定対象となる遷移金属含有固体触媒は、上述したように、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる固体状のものであり、上記成分以外に、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子、アルミニウム、ケイ素等を含んでもよい。
また、本発明において測定対象となる、マグネシウム、遷移金属及び、C=O結合、C−O結合、C=N結合およびC−N結合から選ばれる一種以上の結合を有する電子供与体を含んでなる、遷移金属含有固体触媒としては、例えば、上記成分のみを含んでなる固体触媒成分や、シリカ、塩化マグネシウム、マグネシウムジアルコキシド等を担体とし、これにジルコニウム、チタンなどの遷移金属と、電子供与体とを担持した固体触媒成分や、または上記担体に上記遷移金属化合物と電子供与体からなる錯体を担持した固体触媒成分や、さらにアルミニウム化合物および必要に応じてケイ素化合物等を担持した固体状のオレフィン重合触媒や、あるいは、これら固体状の遷移金属含有固体触媒を担体として予備的に少量のオレフィン類を担持した、固体状の予備重合触媒を挙げることができる。
本発明の方法で測定対象となる上記のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒は、公知の方法で調製することができる。
本発明の方法で測定対象となる遷移金属含有固体触媒が、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含み、アルミニウム化合物やオレフィン類を含まない固体触媒成分である場合、例えば、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体を公知の方法で接触させることにより調製することができ、上記接触は、ケイ素、リン、アルミニウム等の他の反応試剤や不活性有機溶媒、界面活性剤の共存下に行ってもよい。
また、本発明の方法で測定対象となる遷移金属含有固体触媒が、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含むとともに、さらにアルミニウム化合物を含んでなるオレフィン重合触媒である場合、例えば上記マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体よりなる遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を、有機アルミニウム化合物と公知の方法で接触させ、予備活性化することによって調製することができる。
さらに、本発明の方法で測定対象となる遷移金属含有固体触媒が、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含むとともに、さらに予備的に重合された少量のオレフィン類を含んでなる予備重合触媒である場合、例えば、上記方法で得られたオレフィン重合触媒を、少量のオレフィン類と公知の方法で接触させることにより調製することができる。
本発明において測定対象となる、遷移金属含有固体触媒を作製する方法として、具体的には、以下の(1)〜(6)の方法を挙げることができる。
なお、以下の方法においては、遷移金属化合物としてチタン化合物を用い、電子供与体としてC=O結合、C−O結合、C=N結合およびC−N結合から選ばれる一種以上の結合を有する電子供与体を使用することを前提として記載しているが、他の遷移金属化合物や電子供与体についても同様に使用することができる。
(1)還元性を有しない固体マグネシウム化合物、電子供与体およびチタン化合物を共粉砕する方法。より詳細には、以下の(1−1)〜(1−3)の方法が挙げられる。
(1−1)マグネシウムハロゲン化物と、チタニウムアルコキシド類との共粉砕組成物に、電子供与体を加えて共粉砕した後、得られた固体組成物をチタンハロゲン化物と液相中または気相中で接触させ、次いで不活性有機溶剤で洗浄し、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を得る方法。
(1−2)ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム等の飽和または不飽和脂肪酸マグネシウム化合物と、電子供与体とを、ボールミル等を用いて共粉砕して得られる固体組成物を、チタンハロゲン化物と接触させてチタンを担持させ、不活性有機溶剤で洗浄することにより、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を得る方法。
(1−3)マグネシウムハロゲン化物に、チタン化合物と電子供与体からなる固体状の錯体を加えて共粉砕した後、得られた固体組成物をチタンハロゲン化物と液相中または気相中で接触させ、次いで不活性有機溶剤で洗浄し、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を得る方法。
(2)アルコール等の付加物を有するハロゲン化マグネシウム化合物、電子供与体およびチタン化合物を不活性炭化水素溶媒共存下、接触させる方法。より詳細には、以下の(2−1)〜(2−3)の方法が挙げられる。
(2−1)塩化マグネシウムをテトラアルコキシチタンに溶解させ、ポリシロキサンを接触させ、固体成分を得た後、該固体成分に四塩化チタンを反応させ、次いでフタル酸ジエステルなどの電子供与体を接触反応させ、再度四塩化チタンを反応させて、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。
(2−2)無水塩化マグネシウムおよびアルコールを反応させ、均一溶液とした後、この溶液に無水フタル酸を接触させる。次いでこの溶液に、四塩化チタンおよびフタル酸ジエステルなどの電子供与体を接触反応させ固体成分を得、該固体成分にさらに四塩化チタンを接触させ、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。
(2−3)無水塩化マグネシウムおよびアルコールを反応させ、均一溶液とした後、この溶液をスプレードライまたは貧溶媒を用いた析出により固体成分を得る。次いでこの固体成分に、四塩化チタンおよびフタル酸ジエステルなどの電子供与体を接触反応させ、固体成分を得、該固体成分にさらに四塩化チタンを接触させ、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。
(3)ジアルコキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム、電子供与体およびチタン化合物を不活性炭化水素溶媒共存下、接触させる方法。具体的には、以下の(3−1)〜(3−3)の方法が挙げられる。
(3−1)ジエトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウムを芳香族または脂肪族炭化水素あるいはハロゲン化炭化水素溶媒中に懸濁させ、四塩化チタンまたは四塩化ケイ素を接触させ、昇温し、次いで、フタル酸ジエステルなどの電子供与体を接触反応させ固体成分を得る。該固体成分を芳香族または脂肪族炭化水素で洗浄した後、芳香族または脂肪族炭化水素の存在下、再度四塩化チタンを接触させ、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。さらに、得られた該固体触媒成分を炭化水素溶媒の存在下または不存在下、加熱処理して固体触媒成分を得る方法。
(3−2)ジエトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウムおよびフタル酸ジエステルなどの電子供与体をアルキルベンゼン中に懸濁させ、その懸濁液を四塩化チタン中に添加し、反応させ、固体成分を得る。該固体成分をアルキルベンゼンで洗浄した後、アルキルベンゼンの存在下、再度四塩化チタンを接触させ、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。
(3−3)ジエトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム、ケイ素化合物および、必要に応じ塩化カルシウムを共粉砕し、該粉砕固体物を芳香族炭化水素に懸濁させ、四塩化チタンおよび芳香族ジカルボン酸のジエステルなどの電子供与体と接触反応させ、さらに四塩化チタンを接触させることにより遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を調製する方法。
(4)還元性を有するマグネシウム化合物、電子供与体およびチタン化合物を接触させて、固体触媒を析出させる方法。より詳細には、以下の(4−1)の方法が挙げられる。
(4−1)ジブチルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物と、有機アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒の存在下、アルコールと接触させ、均一溶液とする。この溶液にケイ素化合物を接触させ、固体成分を得る。次いで、この固体成分に、芳香族炭化水素溶媒の存在下、四塩化チタンおよびカルボン酸エステルなどの電子供与体を接触反応させ、さらに四塩化チタンを接触させ、遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を得る方法。
(5)上記(1)〜(4)の方法により得られた遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を、有機アルミニウムおよび、必要に応じて外部電子供与体と接触させ、オレフィン重合用遷移金属含有固体触媒(オレフィン重合触媒)を得る方法。より詳細には、以下の(5−1)〜(5−2)の方法が挙げられる。
(5−1)上記マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体からなる遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)と、後述する一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物とを、公知の方法で接触させる方法。
(5−2)上記マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体からなる遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)と、後述する一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物および必要に応じ後述する有機ケイ素化合物などの外部電子供与体とを、公知の方法で接触させる方法。
(6)上記(1)〜(4)の方法によって得られた遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)、または上記(5)の方法によって得られたオレフィン重合用遷移金属含有固体触媒(オレフィン重合触媒)を、少量のオレフィンと予備的に接触させ、オレフィン重合用遷移金属含有固体触媒(予備重合触媒)を得る方法。より詳細には、以下の(6−1)〜(6−2)の方法が挙げられる。
(6−1)(5)の方法により得られたオレフィン重合用遷移金属含有固体触媒(オレフィン重合触媒)に、上記遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)1g当たりの生成重合体量が特定の範囲になるよう、1種あるいは2種以上のオレフィンを予備的に重合させる方法。
(6−2)上記(1)〜(4)の方法により得られた遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)を、有機アルミニウムおよび二つ以上の二重結合を有するシラン化合物で表面処理した後、オレフィンモノマーまたはジエン化合物を接触させて予備的な重合を行い、上記触媒の周囲をマクロモノマーによりカプセル化する方法。
本発明の測定方法における評価対象は、上記の方法で作製された遷移金属含有固体触媒であり、上記(1)〜(6)の方法により作製された遷移金属含有固体触媒のいずれも評価対象とすることができる。中でも(1)〜(4)の方法により作製される遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)が評価対象として好ましく、(1)または(3)の方法により作製される遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)が、評価対象として特に好ましく用いられる。
本発明において測定対象となるオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒において、マグネシウム、遷移金属および電子供与体の含有量は特に限定されないが、遷移金属含有固体触媒において、マグネシウムの含有量は10〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。また、遷移金属含有固体触媒において、遷移金属の含有量は、1.0〜8.0質量%であることが好ましく、1.0〜6.0質量%であることがより好ましく、1.0〜4.0質量%であることがさらに好ましい。また、遷移金属含有固体触媒において、電子供与体の含有量が0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、2〜20質量%であることがさらに好ましい。
なお、遷移金属含有固体触媒がハロゲン原子を含む場合、ハロゲン原子の含有量は、20〜85質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることがさらに好ましく、45〜75質量%であることが特に好ましい。
本発明において測定対象となる遷移金属含有固体触媒(固体触媒成分)は、その存在下にオレフィン類の重合を行なう際、立体規則性の高いオレフィン重合体を得るために、一般式(IV);
AlQ3−p (IV)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Qは水素原子あるいはハロゲン原子であって、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物および必要に応じ外部電子供与体の存在下に反応を行うことが好ましい。
一般式(IV)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子または臭素原子が好ましく、pは2又は3が好ましく、3が特に好ましい。
このような有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上が好ましく、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムから選ばれる一種以上がより好ましい。
また、重合時に用いる外部電子供与体としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物を用いることができ、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、アミノシラン化合物等が挙げられ、特に安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類が好ましく、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、アミノシラン化合物も好ましく用いられる。
Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、一般式(V)
Si(OR4−q (V)
(式中、Rは炭素数1〜12であるアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基のいずれかであって、Rが複数存在する場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基またはアラルキル基のいずれかであって、Rが複数存在する場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、qは0〜3の整数である。)で表される化合物を挙げることができる。
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン等のフェニルアルコキシシランや、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランや、フェニルアルキルアルコキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン等のシクロアルキルアルコキシシランや、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のシクロアルキルアルキルアルコキシシランや、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランの他、一般式(R1011N)SiR12 4−n(式中、R10とR11は水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基、およびそれらの誘導体であり、R10とR11は同一でも異なってもよく、R10とR11が互いに結合して環を形成してもよい。R12は炭素数1〜20の直鎖または分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびそれらの誘導体を示し、R12が複数ある場合、複数のR12は同一でも異なってもよい。nは1〜3の整数である。)で表されるアミノシラン化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
有機ケイ素化合物のうち、好適なものとしては、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジビニルジメチルシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
また、有機ケイ素化合物のうち、より好適なものとしては、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明で評価対象となるオレフィン重合用遷移金属含有固体触媒は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等のオレフィン類の重合触媒として好適であり、上記オレフィン類のモノマーの他、ダイマー、トライマー、テトラマー等のオリゴマー等の重合触媒として好適である。この場合、オレフィン類の重合反応は単独重合反応であっても共重合反応であってもよい。
本発明によれば、重合体を作製することなく、触媒性能を評価することができ、また、高額な費用を要する大規模な核磁気共鳴装置を用いなくとも、触媒性能を評価し得るものであるため、オレフィン重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能を安価かつ簡便に評価することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものではない。
<検量線の作製>
(1)遷移金属含有固体触媒(C−1)の調製
(i)遷移金属化合物と電子供与体の錯体(X)の調製
攪拌機と滴下ロートを具備した内容積1リットルの三つ口フラスコ内を窒素で十分に置換し、次いでn−ヘプタン200mlと、電子供与体としてフタル酸ジ−n−ブチル0.5molを添加し、40℃に保温しながら攪拌した。
次いで、滴下ロートに四塩化チタン0.5molを窒素雰囲気下で採取し、これを攪拌下、40℃に保温しながら1時間かけてフラスコ内に滴下後、40℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで遊離チタンが無くなるまで洗浄し、最後に真空ポンプで乾燥させて、遷移金属化合物と電子供与体の錯体(X)からなる粉末物を作製した。
(ii)粉砕処理
十分に窒素ガスで置換された、内容積1Lのステンレス製ポット(ドラム径140mm×長さ100mm)に、直径25mmのステンレスボールを、ボール/ポット体積比=0.8になるように複数個入れた。
次いで無水塩化マグネシウム30gと、上記(i)で作製した遷移金属と電子供与体の錯体(X)10gとを添加後、上記ステンレス製ポットを振動ボールミル(川崎重工業(株)製、SM−0.6型)にセットし、25℃の室内において、20時間の粉砕を行った。その後、遊離のTi成分がなくなるまでn−ヘプタンで十分に洗浄、乾燥することにより、目的とするオレフィン重合用遷移金属含有固体触媒である、遷移金属含有固体触媒(C−1)を得た。
(2)遷移金属含有固体触媒(C−2)〜遷移金属含有固体触媒(C−4)の調製
上記(1)(ii)における、無水塩化マグネシウム30gと、遷移金属と電子供与体の錯体(X)10gとの粉砕時間を、それぞれ5時間、0.5時間および0時間とした以外は、遷移金属含有固体触媒(C−1)の調製方法と同様にして、遷移金属含有固体触媒(C−2)(粉砕時間5時間)、遷移金属含有固体触媒(C−3)(粉砕時間0.5時間)、遷移金属含有固体触媒(C−4)(粉砕時間0時間)を得た。
(3)核磁気共鳴装置による緩和時間測定
上記(1)および(2)で作製した遷移金属含有固体触媒(C−1)〜(C−4)において、電子供与体であるフタル酸ジ−n−ブチルの官能基はカルボキシル基であることから、フタル酸ジ−n−ブチルのC=O結合を構成する炭素原子を対象として、その13C原子核の緩和時間を測定した。
固体核磁気共鳴装置として11.7テスラの磁場を有する日本電子(JEOL)社製ECA−500を用い、13Cを測定核種として、上記炭素原子核の緩和時間を以下の条件で測定した。結果を表1に示す。
(測定条件)
試料管 :直径4mm
プローブ :4mmMASプローブ
MAS回転数:15KHz
測定モード :トーチャCP法
外部標準試料:ヘキサメチルベンゼン(メチル基ピーク:17.4ppm)
なお、ヘキサメチルベンゼンに由来する信号は、テトラメチルシランに由来する信号検出位置(ケミカルシフト値)を0ppmとした場合、17.4ppmに検出されることから、上記核磁気共鳴スペクトルにおいては、ヘキサメチルベンゼンに由来する信号検出位置(ケミカルシフト値)を17.4ppmに補正した上で、各信号の検出位置(ケミカルシフト値)を規定した。
(4)オレフィン類の重合活性測定
上記(1)および(2)で作製した、遷移金属含有固体触媒(C−1)〜(C−4)のオレフィン類に対する重合活性を、以下の方法により評価した。
十分に窒素置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、n−ヘプタン20ml、トリエチルアルミニウム1.32mmol、上記(1)で作製した遷移金属含有固体触媒をTi含有量として0.00264mmol、外部電子供与体としてシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.132mmol添加しオレフィン重合用触媒を形成させ、液体プロピレン1.4リットル、水素2.0リットルを装入後に昇温し、70℃で1時間プロピレンモノマーの重合反応を行い、重合物(ポリプロピレン)を得た。
使用した遷移金属含有固体触媒1g当たりの重合物(ポリプロピレン)の収量(g)を重合活性(g−pp/g−触媒)として求めた。結果を表1に示す。
(5)重合体の立体規則性の評価
上記(4)で得られた重合物(ポリプロピレン)の立体規則性を評価するために、以下の方法によりキシレン可溶分(XS)を測定した。上記(4)で得られた重合物4.0gと200mlのp−キシレンとを、還流装置と攪拌機を具備した500mlフラスコに装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、p-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、攪拌下に2時間還流させて重合物を完全に溶解させた後、23℃で1時間保持し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。
上記溶解成分の溶液を一定量採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その重量を重合物(ポリプロピレン)に対する相対値(重量%)で求めた。結果を表1に示す。
Figure 2012046594
また、表1の結果に基づいて、各C=O緩和時間(秒)に対する重合活性(g−pp/g−触媒)をプロットしたものを図1として示すとともに、C=O緩和時間(秒)に対するキシレン可溶分(重量%)をプロットしたものを図2として示す。
図1より、オレフィン類の重合活性(g−pp/g−触媒)は、C=O緩和時間が短い場合には高く、C=O緩和時間が長い場合には低くなっていることが分かる。
また、図2より、重合物キシレン可溶分(重量%)は、C=O緩和時間が短い程少なく、C=O緩和時間が長い程多くなっていることから、立体規則性は、C=O緩和時間が短い程高く、C=O緩和時間が長い程低くなっていることが分かる。
図1および図2より、予め検量線を作成し、C13固体核磁気共鳴分光法により遷移金属含有固体触媒のC=O緩和時間を測定することにより、実際にオレフィン類の重合処理を行なわずとも、触媒の重合活性および得られる重合物の立体規則性の程度を評価することができる。
そこで、表1の結果に基づいて、C=O緩和時間に対する遷移金属含有固体触媒の重合活性の関係式を最小二乗法により求め、得られた関係式(α)(線形近似の決定係数R値=0.91)を遷移金属含有固体触媒の重合活性を評価する検量線とするとともに、C=O緩和時間に対する重合体のキシレン可溶分の関係式を最小二乗法により求め、得られた関係式(β)(線形近似の決定係数R値=0.95)をキシレン可溶分(立体規則性)を評価する検量線とした。
関係式(α);
[重合活性(g−pp/g−触媒)]=
−164.92×[C=O緩和時間(秒)]+12071 (α)
関係式(β);
[重合体のキシレン可溶分 (重量%)]=
0.0296×[C=O緩和時間(秒)]+4.6723 (β)
(実施例1)<未知遷移金属含有固体触媒の評価>
(1)核磁気共鳴装置による未知遷移金属含有固体触媒の緩和時間測定
無水塩化マグネシウムを、遷移金属含有固体触媒(C−1)の合成に用いたものと同一種の遷移金属化合物と電子供与体とからなる錯体(X)と共粉砕処理することにより得られた、未知の遷移金属含有固体触媒(C−5)において、上述した方法と同様の方法で、電子供与体であるフタル酸ジ−n−ブチルのカルボニル基(C=O基)を構成する炭素原子を対象として、その原子核の緩和時間を測定したところ、緩和時間は48秒であった。
(2)オレフィン類の重合活性および得られる重合体の立体規則性の評価
上記(1)で得られた緩和時間を基に、関係式(α)および関係式(β)により、重合活性(g−pp/g−触媒)とキシレン可溶分(重量%)の検量線値を求めた。結果を表1に示す。
また、上記未知の遷移金属含有固体触媒(C−5)において、上述した方法と同様の方法により、オレフィン類の重合活性(g−pp/g−触媒)とキシレン可溶分(重量%)の実測値を求めた。結果を表1に示す。
表1の結果から、未知の遷移金属含有固体触媒(C−5)においては、緩和時間を測定し、検量線として使用した関係式(α)から求められる重合活性値が、実測した重合活性値と相関しているとともに、緩和時間を測定し、検量線として使用した関係式(β)から求められるキシレン可溶分の値が、実測したキシレン可溶分と相関していることから、本発明の方法によれば、固体核磁気共鳴装置を用いて、重合体を得ることなく簡便かつ低コストに、遷移金属含有固体触媒について、実際にオレフィン重合を行なった際の重合活性およびキシレン可溶分を評価できることが分かる。
<検量線の作製>
(1)遷移金属含有固体触媒(C−6)の調製
攪拌機を具備し、内部を窒素で十分に置換した内容積0.5リットルの三つ口フラスコに、ジエトキシマグネシウム20gと、トルエン140mlとを装入し、次いで電子供与体としてフタル酸ジエステルを0.5ml添加した後、さらに四塩化チタン60mlを添加して昇温し、105℃に保温しながら2時間攪拌することにより反応させて、懸濁液を得た。上記懸濁液を30分静止後に上澄みを除去し、新たに100℃に保たれたトルエン200mlを添加して攪拌を行い、静止後に上澄みを除去する操作を、合計3回繰り返した。次いで、トルエン80ml、四塩化チタン20mlをフラスコに添加して昇温し、100℃で15分間反応させた後、該懸濁液を30分静止後に上澄みを除去し、この操作を3回繰り返した。その後、遊離のチタン成分がなくなるまでn−ヘプタンで十分に洗浄、乾燥することにより、目的とする遷移金属含有固体触媒(C−6)を得た。
(2)遷移金属含有固体触媒(C−7)〜遷移金属含有固体触媒(C−9)の調製
遷移金属含有固体触媒の調製に用いる電子供与体の量を、それぞれ、2.4ml、3.6ml、および4.2mlに変更した以外は、遷移金属含有固体触媒(C−6)の調製方法と同様にして、遷移金属含有固体触媒(C−7)、遷移金属含有固体触媒(C−8)、遷移金属含有固体触媒(C−9)を得た。
(3)核磁気共鳴装置による緩和時間測定
上記(1)および(2)で作製した遷移金属含有固体触媒(C−6)〜(C−9)において、電子供与体であるフタル酸ジ−n−ブチルの官能基はカルボキシル基であることから、上記遷移金属含有固体触媒(C−6)〜(C−9)を測定試料とし、フタル酸ジ−n−ブチルのC=O結合を構成する炭素原子を対象として、その13C原子核の緩和時間を測定した。
固体核磁気共鳴装置として9.4テスラの磁場を有する日本電子(JEOL)社製 ECA−400を用い、13Cを測定核種とする緩和時間を以下の条件で測定した。結果を表2に示す。
(測定条件)
試料管 :直径4mm
プローブ :4mmMASプローブ
MAS回転数:15KHz
測定モード :トーチャCP法
外部標準試料:ヘキサメチルベンゼン(メチル基ピーク:17.4ppm)
なお、ヘキサメチルベンゼンに由来する信号は、テトラメチルシランに由来する信号検出位置(ケミカルシフト値)を0ppmとした場合、17.4ppmに検出されることから、上記核磁気共鳴スペクトルにおいては、ヘキサメチルベンゼンに由来する信号検出位置(ケミカルシフト値)を17.4ppmに補正した上で、各信号の検出位置(ケミカルシフト値)を規定した。
(4)オレフィン類重合体の立体規則性評価
上記(1)および(2)で作製した、遷移金属含有固体触媒(C−6)〜(C−9)のオレフィン類重合物(ポリプロピレン)の立体規則性を評価するため、以下の方法により重合反応を行い、得られた重合物の立体規則性評価を行なった。
十分に窒素置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、n−ヘプタン20ml、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、上記(1)で作製した遷移金属含有固体触媒をTi含有量として0.00264ミリモル、外部電子供与体としてシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.132ミリモルを添加しオレフィン重合用触媒を形成させ、液体プロピレン1.4リットル、水素2.0リットルを装入後に昇温し、70℃で1時間プロピレンモノマーの重合反応を行い、重合物(ポリプロピレン)を得た。
上記(4)で得られた重合物4.0gと200mlのp−キシレンとを、還流装置と攪拌機を具備した500mlフラスコに装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、p-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、攪拌下に2時間還流させて重合物を完全に溶解させた後、23℃で1時間保持し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。
上記溶解成分の溶液を一定量採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その重量を重合物(ポリプロピレン)に対する相対値(重量%)で求めた。結果を表2に示す。
Figure 2012046594
また、表2の結果に基づいて、各C=O緩和時間(秒)に対するキシレン可溶分(重量%)をプロットしたものを図3として示す。
表2および図3より、重合物のキシレン可溶分(重量%)は、C=O緩和時間が短い程少なく、C=O緩和時間が長い程多くなっていることから、重合物の立体規則性は、C=O緩和時間が短い程高く、C=O緩和時間が長い程低くなっていることが分かる。
また、図3より、予め検量線を作成し、C13固体核磁気共鳴分光法により遷移金属含有固体触媒のC=O緩和時間を測定することにより、実際にオレフィン類の重合処理を行なわずとも、遷移金属含有固体触媒の重合により得られる重合物の立体規則性の程度を評価し得ることが分かる。
そこで、表2の結果に基づいて、C=O緩和時間に対する重合体のキシレン可溶分の関係式を最小二乗法により求め、得られた関係式(γ)(線形近似の決定係数R値=0.95)を、キシレン可溶分(立体規則性)を評価する検量線とした。
関係式(γ);[重合体のキシレン可溶分 (重量%)]=
0.0320×[C=O緩和時間(秒)]+0.3501 (γ)
(実施例2〜実施例3)<未知遷移金属含有固体触媒の評価>
(1)核磁気共鳴装置による緩和時間測定
実施例2においては、遷移金属含有固体触媒(C−6)の調製方法と同様にして調製され、電子供与体の含有量が未知である遷移金属含有固体触媒(C−10)を測定試料とし、また、実施例3においても、遷移金属含有固体触媒(C−6)の調製方法と同様にして調製され、電子供与体の含有量が未知である遷移金属含有固体触媒(C−11)を測定試料として、上述した方法と同様の方法により、電子供与体であるフタル酸ジエステルのカルボニル基(C=O基)を構成する炭素原子を対象とし、その原子核の緩和時間を測定した。結果を表2に示す。
(2)得られるオレフィン類重合体の立体規則性の評価
上記(1)で得られた緩和時間を基に、関係式(γ)により、遷移金属含有固体触媒(C−10)および(C−11)より得られるオレフィン重合体の、キシレン可溶分(重量%)の検量線値を求めた。結果を表2に示す。
また、上記未知の遷移金属含有固体触媒(C−10)および(C−11)において、上述した方法と同様の方法により、キシレン可溶分(重量%)の実測値を求めた。結果を表2に示す。
表2の結果から、未知の遷移金属含有固体触媒(C−10)および(C−11)においては、測定した緩和時間をもとに検量線として使用した関係式(γ)から求められるキシレン可溶分の値が、実測したキシレン可溶分と相関していることから、本発明の方法によれば、固体核磁気共鳴装置を用いて、遷移金属含有固体触媒について、重合体を得ることなく簡便かつ低コストに、実際にオレフィン重合を行なった際の重合体の立体規則性を評価できることが分かる。
本発明によれば、マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなる遷移金属含有固体触媒の性能を、実際にオレフィン類の重合処理を行なわず、簡便かつ低コストに評価することができる。

Claims (5)

  1. マグネシウム、遷移金属及び電子供与体を含んでなるオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の性能評価方法であって、
    核磁気共鳴装置を用い、磁場強度7テスラ以上の条件下で、前記電子供与体の官能基を構成する炭素原子、または前記電子供与体の官能基に直接結合する炭素原子の原子核を核磁気共鳴させ、
    得られる緩和時間の長短により触媒性能を評価する
    ことを特徴とするオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法。
  2. 前記炭素原子核が酸素原子と化学結合を形成してなる炭素原子の原子核である請求項1に記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法。
  3. 前記遷移金属がチタンである請求項1または請求項2に記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法。
  4. 前記電子供与体が、ジカルボン酸エステル化合物である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法。
  5. 評価対象となる触媒性能が、オレフィン類の重合活性または得られる重合体の立体規則性の程度である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のオレフィン類重合用遷移金属含有固体触媒の触媒性能評価方法。
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