JP2012046560A - 熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐疲労性に優れ、疲労に伴う気体遮断性の低下が低減された熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、
(B)高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、および
(C)酸無水物変性ゴムおよびエポキシ変性ゴムから選ばれた変性ゴム、
を含んで成り、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、
(B)高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、および
(C)酸無水物変性ゴムおよびエポキシ変性ゴムから選ばれた変性ゴム、
を含んで成り、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、より詳細には、耐疲労性に優れ、疲労に伴う気体遮断性の低下が低減された熱可塑性樹脂組成物およびそれをインナーライナーに用いた空気入りタイヤに関する。
従来より、気体遮断性に優れることが知られているエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)に種々のポリマーを配合することにより得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、空気入りタイヤの内面に設けられる空気透過防止層(インナーライナー)を形成することが提案されており、例えば特許文献1には、空気入りタイヤの内圧保持性能の向上と軽量化を図るために、無水マレイン酸変性ポリマーおよびエポキシ変性ポリマーなどの変性ポリマーを分散させて得られた熱可塑性エラストマー組成物であって、相溶化剤としてエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)などの相溶化剤を含む熱可塑性エラストマー組成物を用いて、空気入りタイヤの空気透過防止層(インナーライナー)を形成することが提案されている。しかしながら、EPDMは一般的に他の材料との接着性が劣ることが知られており、EPDMを配合した熱可塑性エラストマー組成物は、繰り返しの屈曲変形等の応力変形に対する耐久性(耐疲労性)が低く、また、疲労に伴って気体遮断性が低下するという問題があった。
従って、本発明の目的は、耐疲労性に優れ、疲労に伴う気体遮断性の低下が低減された熱可塑性樹脂組成物およびそれをインナーライナーに用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)中に、高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(高分子量EPDM)と、酸無水物変性ゴムまたはエポキシ変性ゴムとを分散させることによって、EVOHの優れた気体遮断性を生かしつつ、繰り返しの屈曲変形等の応力変形に対する耐久性(耐疲労性)、特に耐屈曲疲労性に優れ、しかも、疲労に伴う気体遮断性の低下が低減された熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第1の実施態様において、
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、
(B)高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、および
(C)酸無水物変性ゴムおよびエポキシ変性ゴムから選ばれた変性ゴム、
を含んで成り、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、
(B)高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、および
(C)酸無水物変性ゴムおよびエポキシ変性ゴムから選ばれた変性ゴム、
を含んで成り、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
本発明は、第2の実施態様において、上記成分(A)、(B)および(C)に加えて、さらに(D)未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
本発明は、第3の実施態様において、上記第1または第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤを提供する。
本発明の第1の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物において、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)(A)は、分散相を構成する高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)に対して連続相(マトリックス相)を構成する。EVOH(A)は、公知の方法により調製でき、例えばエチレンと酢酸ビニルとを重合してエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を調製し、得られたEVAを加水分解することによって製造することができる。EVOHの市販されているものの例としては、例えば日本合成化学株式会社製のソアノールH4815B(エチレン単位含有量:48モル%)、ソアノールH4412B(エチレン単位含有量:44モル%)、ソアノールE3808B(エチレン単位含有量:38モル%)およびソアノールD2908(エチレン単位含有量:29モル%)、株式会社クラレ製のEVAL−G156B(エチレン単位含有量:48モル%)、EVAL−E171B(エチレン単位含有量:44モル%)、EVAL−H171B(エチレン単位含有量:38モル%)、EVAL−F171B(エチレン単位含有量:32モル%)およびEVAL−L171B(エチレン単位含有量:27モル%)が挙げられる。1種のEVOHを使用しても、2種以上のEVOHを併用してもよい。
高分子量EPDM(B)は、典型的には約120000以上の数平均分子量、好ましくは150000以上の数平均分子量、より好ましくは、200000以上の数平均分子量を有する。上記の数平均分子量を有する高分子量EPDMの市販されているものの例としては、例えば三井化学(株)製の三井EPT 3070および三井EPT 3072EM(油展量40phr)が挙げられる。1種の高分子量EPDMを使用しても、2種以上のEPDMを併用してもよい。
酸無水物変性またはエポキシ変性ゴム(C)は、ゴム分子の側鎖および/または末端に酸無水物基またはエポキシ含有基を有するゴムである。変性ゴム(C)中に存在しうる酸無水物基の例としては、例えば無水マレイン酸基などのカルボン酸無水物基が挙げられ、エポキシ含有基の例としては、エポキシエチル基、グリシジル基、グリシジルエーテル基などが挙げられる。変性ゴム(C)は、公知の方法に従って調製でき、酸無水物基を有する変性ゴムは、たとえば、酸無水物とペルオキシドをゴムに反応させることにより製造することができる。市販の酸無水物変性ゴムの例としては、三井化学株式会社製の無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MP−7020)などがある。エポキシ基を有する変性ゴムは、たとえば、グリシジルメタクリレートをゴムに共重合させることにより製造することができる。市販のエポキシ変性ゴムの例としては、住友化学株式会社製のエポキシ変性エチレンアクリル酸メチル共重合体(エスプレン(登録商標)EMA2752)などがある。変性ゴム(C)の好ましい例としては、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体、エポキシ変性エチレンアクリル酸メチル共重合体が挙げられる。特に好ましい変性ゴム(C)は、酸無水物基でグラフト変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体であり、その市販品の例としては、前述の三井化学株式会社製の無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MH−7020)が挙げられる。上記変性ゴムのうちの1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。変性ゴム(C)は、高分子量EPDM(B)と変性ゴム(C)との質量比が、典型的には約10:90〜約90:10、好ましくは70:30〜30:70となる量で存在する。成分(B)と成分(C)との質量比が上記範囲外では、十分な耐久性と加工性を得ることができない。
本発明の第1の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物では、分散相を構成している高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)に対して、熱可塑性であるEVOH(A)が連続相(マトリックス相)を構成しているために、当該熱可塑性樹脂組成物は熱可塑性を示し、通常の熱可塑性樹脂と同様に成形加工することが可能である。高分子量EPDM(B)と変性ゴム(C)は、高分子量EPDM(B)と変性ゴム(C)との合計量がEVOH(A)100質量部に対して典型的には70〜180質量部、好ましくは90〜160質量部となる量でそれぞれ存在する。高分子量EPDM(B)と変性ゴム(C)の合計量が、EVOH(A)100質量部に対して70質量部未満であると、十分な耐久性を得ることができず、180質量部を超えると、高分子量EPDM(B)と変性ゴム(C)がEVOH(A)と共連続相を形成するか、あるいは、高分子量EPDM(B)および/または変性ゴム(C)が連続相を形成して、EVOH(A)が分散相を形成するため、十分な耐久性と加工性を得ることができない。EVOH(A)中に分散された高分子量EPDM(B)は、典型的には約10μm以下の平均粒径を有し、好ましくは約5μm以下の平均粒径を有する。高分子量EPDM(B)の平均粒径が上記範囲外である場合には、大幅な耐久性の悪化と通気度の悪化を招く。EVOH(A)中に分散された変性ゴム(C)は、典型的には約3μm以下の平均粒径を有し、好ましくは約0.1〜2μmの平均粒径を有する。変性ゴム(C)の平均粒径が上記範囲外である場合には、大幅な耐久性の悪化または通気度の悪化、もしくは、その両方を招く。
本発明の第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記第1の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物の必須成分(すなわち、上記成分(A)、(B)および(C))に加えて、(D)未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせを含む。本発明の第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物では、分散相を構成している高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)に対して、熱可塑性であるEVOH(A)および未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)が連続相(マトリックス相)を構成しているために、当該熱可塑性樹脂組成物は、上記第1の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物と同様に熱可塑性を示し、通常の熱可塑性樹脂と同様に成形加工することが可能である。
成分(D)の当該未変性ポリアミド樹脂の例としては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン666(N666)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体およびナイロン66/PPS共重合体が挙げられる。変性ポリアミド樹脂の例としては、これらの各種ナイロンのエポキシ変性物が挙げられる。耐久性と加工性、通気度の観点から、未変性ポリアミド樹脂の好ましい例としては、ナイロン6、ナイロン66およびナイロン666が挙げられ、変性ポリアミド樹脂の好ましい例としては、エポキシ変性されたナイロン6、ナイロン66およびナイロン666が挙げられる。成分(D)として、1種または2種以上の未変性ポリアミド樹脂を使用しても、1種または2種以上の変性ポリアミド樹脂を使用しても、あるいは、1種以上の未変性ポリアミドと1種以上の変性ポリアミド樹脂とを併用してもよい。
本発明の第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物において、成分(D)は、成分(A)と成分(D)との質量比が、典型的には約10:90〜約90:10、好ましくは70:30〜30:70となる量で存在する。成分(A)と成分(D)との質量比が上記範囲外である場合には、十分な耐久性と加工性を両立させることが困難である。成分(B)と成分(C)との合計量は、成分(A)と成分(D)との合計量100質量部に対して典型的には約70〜約180質量部、好ましくは90〜160質量部である。成分(B)と成分(C)との合計量が上記範囲外である場合には十分な耐久性と加工性を両立させることができない。成分(C)は、成分(B)と成分(C)との質量比が、典型的には約10:90〜約90:10、好ましくは30:70〜70:30となる量で存在する。成分(B)と成分(C)との質量比が上記範囲外である場合には、十分な耐久性と加工性を両立させることが困難である。
本発明の第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の添加剤、例えば相溶化剤、補強剤、老化防止剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、可塑剤、充填剤、着色剤、加工助剤などを従来の一般的な配合量で必要に応じて添加してもよい。
例えば、本発明の第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物において、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)が、それぞれ架橋剤(加硫剤)により架橋されている場合に、当該熱可塑性樹脂組成物の耐疲労性をよりいっそう向上させることができる。架橋剤(または加硫剤)の種類および配合量は、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)の種類および配合条件に応じて、当業者が適宜選択することができる。架橋剤の例としては、酸化亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、硫黄、有機過酸化物架橋剤、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンが挙げられる。架橋剤の合計量は、高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)の合計量100質量部に対して典型的には0.01〜10質量部である。
本発明の第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物はいずれも、上記必須成分および任意の添加剤を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、一軸混練押出機、二軸混練押出機等の熱可塑性樹脂組成物の調製に一般的に使用されている混練機を使用して溶融混練することによって調製できる。溶融混練は、その生産性の高さから二軸混練押出機を使用して行うことが好ましい。混練条件は、使用される必須成分および任意の添加剤のタイプおよび配合量などに応じるが、第1の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物を溶融混練により調製する場合の溶融混練温度の下限は、少なくともEVOH(A)の溶融温度以上であればよく、典型的には約180℃〜約280℃である。第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物を溶融混練により調製する場合の溶融混練温度の下限は、少なくとも、EVOH(A)の溶融温度以上、かつ、成分(D)の溶融温度以上であればよく、典型的には約180℃〜約280℃である。
本発明の第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記の必須成分[第1の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C);第2の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)、変性ゴム(C)および未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)]および任意の添加剤(架橋剤など)を、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)の架橋温度未満の温度で溶融混練するか、あるいは、架橋温度以上の温度で溶融混練しながら高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)を架橋(動的架橋)させることにより調製することができる。次いで溶融混練物を、例えば二軸混練押出機の吐出口に取り付けられたダイから通常の方法によりフィルム状、シート状またはチューブ状等の形状に押し出すか、あるいは、ストランド状に押し出し、樹脂用ペレタイザーで一旦ペレット化した後、得られたペレットを、インフレーション成形、カレンダー成形、押出成形などの通常の樹脂成形法により、用途に応じてフィルム状、シート状、チューブ状などの所望の形状に成形することができる。
上記の必須成分[第1の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C);第2の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)、変性ゴム(C)および未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)]および任意の添加剤(架橋剤など)を、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)の架橋温度未満の温度で溶融混練することにより本発明の熱可塑性樹脂組成物を得た後、当該熱可塑性樹脂組成物を所望の形状に成形し、得られた成形物を架橋温度以上の温度に加熱して高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)を架橋させることができる。この場合の架橋温度は典型的には約180〜約280℃であり、架橋時間は典型的には約1秒間〜約10分間である。
本発明の第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物は動的架橋法を用いて調製する場合の動的架橋温度は、典型的には約180〜約250℃であり、動的架橋時間(滞留時間)は、第1および第2の実施態様に係る熱可塑性樹脂組成物のいずれの場合でも、典型的には約2分間〜約10分間である。動的架橋に先だって、必要に応じて、必須成分および任意の添加剤のうちの2種以上を予め混練してもよい。例えば、架橋剤は、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C)を動的架橋させるまでの任意の時点で上記必須成分[第1の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)および変性ゴム(C);第2の実施態様の熱可塑性樹脂組成物の場合には、EVOH(A)、高分子量EPDM(B)、変性ゴム(C)および未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)]のうちの1種以上または2種以上の予備混合物に添加することができる。上記必須成分および任意添加剤の混練および動的架橋は、同一装置内で連続して行われても、2つ以上の装置を使用して混練および動的架橋を別々に行ってもよい。動的架橋に先だって行われる混練は、使用される必須成分および架橋剤のタイプおよび配合量などに応じるが、バンバリーミキサー、ニーダーまたは二軸混練押出機を使用して、典型的には約180〜約250℃の温度で約2分間〜約10分間行われる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分(A)または成分(A)および(D)に由来する高い気体遮断性を有することに加えて、優れた耐疲労性を示し、しかも、疲労に伴う気体遮断性の低下が低減されたものであるため、フィルム状に成形した後、空気入りタイヤのインナーライナーとしてまたはインナーライナーの構成要素として好適に使用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤの製造方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を所定の幅と厚さを有するフィルムに成形し、それをタイヤ成型用ドラム上に円筒状に貼り着け、その上にカーカス層、ベルト層、トレッド層等のタイヤ部材を順次貼り重ね、タイヤ成型用ドラムからグリーンタイヤを取り外す。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加硫することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムをインナーライナーに用いた所望の空気入りタイヤを製造することができる。
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
比較例1〜8および実施例1〜4
比較例1〜8および実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物の調製には、スクリュー根元部に設けられた第1の原料供給口と、第1の原料供給口よりも押出方向下流側に順に設けられた第1の混練ゾーン、動的架橋ゾーンおよび第2の混練ゾーンと、第1の混練ゾーンと動的架橋ゾーンの間に設けられた第2の原料供給口と、吐出口とを有する二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)を使用した。表1に示す量(質量部)で、架橋系成分(硫黄、加硫促進剤、ステアリン酸、架橋剤1および2、酸化亜鉛、ステアリン酸並びに酸化亜鉛)以外の成分を第1の原料供給口からシリンダー内に導入し、温度220℃および滞留時間2分〜8分間に設定された混練ゾーンに搬送し、第2の原料供給口より架橋系成分(硫黄、加硫促進剤、ステアリン酸、架橋剤1および2、酸化亜鉛、ステアリン酸並びに酸化亜鉛)をシリンダー内に導入し、温度220℃および滞留時間2分〜8分間に設定された動的架橋ゾーンで溶融混練することにより変性ゴムおよびEPDMまたは高分子量EPDMを動的架橋させた後、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押し出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
比較例1〜8および実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物の調製には、スクリュー根元部に設けられた第1の原料供給口と、第1の原料供給口よりも押出方向下流側に順に設けられた第1の混練ゾーン、動的架橋ゾーンおよび第2の混練ゾーンと、第1の混練ゾーンと動的架橋ゾーンの間に設けられた第2の原料供給口と、吐出口とを有する二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)を使用した。表1に示す量(質量部)で、架橋系成分(硫黄、加硫促進剤、ステアリン酸、架橋剤1および2、酸化亜鉛、ステアリン酸並びに酸化亜鉛)以外の成分を第1の原料供給口からシリンダー内に導入し、温度220℃および滞留時間2分〜8分間に設定された混練ゾーンに搬送し、第2の原料供給口より架橋系成分(硫黄、加硫促進剤、ステアリン酸、架橋剤1および2、酸化亜鉛、ステアリン酸並びに酸化亜鉛)をシリンダー内に導入し、温度220℃および滞留時間2分〜8分間に設定された動的架橋ゾーンで溶融混練することにより変性ゴムおよびEPDMまたは高分子量EPDMを動的架橋させた後、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押し出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
上記の比較例1〜8および実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物の特性を下記の試験法により評価した。
(1)耐疲労性
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、押出温度C1/C2/C3/C4/ダイ=200/210/230/235/235℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度0.7m/分の押出条件で、平均厚み1mmのシートに成形した。次いでJIS 3号ダンベル形の試験片を切り出し、−20℃で伸張率40%および毎分400回の条件のもとで繰り返し伸張変形を与えた。各比較例および実施例について5つのサンプルで破断回数の測定を行い、それらのサンプルで求められた破断回数の平均値を算出し、平均破断回数とした。平均破断回数が100万回以上であるものを合格、100万回未満であるものを不合格とした。
(2)通気度の変化率
(a)通気度測定用フィルムの作成
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、400mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、押出温度Cl/C2/C3/C4/ダイ=200/210/230/235/235℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/分の押出条件で、平均厚み0.15mmのフィルムに成形した。次に、このフィルムから長さ20cmおよび幅20cmの試験片を作製し、150℃で3時間以上乾燥し、通気度測定用フィルムを得た。
(b)疲労試験片の作成
下記表1に示す配合において、加硫剤以外の原料を1.7リットルのバンバリーミキサーにて、設定温度70℃にて5分間混練してマスターバッチを得た後、8インチロールで加硫剤を混練し、0.5mm厚のシートに成形し、上記「(a)通気度測定用フィルムの作成」において作成したフィルムと積層し、180℃で10分間加硫させ疲労試験片を作成した。
(c)疲労試験前後の通気度測定
上記「(b)疲労試験片の作成」により得られた積層体を、長さ11cmおよび幅11cmの試験片を作製し、JIS K7126−1「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(差圧法)」に準じて、試験気体として空気を用い、試験温度30℃で、熱可塑性樹脂組成物フィルムの通気度(疲労前)を測定した。通気度(疲労前)を測定した後、試験片を、室温で伸張率20%および毎分400回の条件のもとで100万回繰り返し伸張させることにより疲労させた。疲労後の試験片について、通気度(疲労前)の試験法と同様に通気度を測定し、疲労後の通気度を疲労前の通気度に対する百分率(%)で表した。
試験結果を下記表2に示す。
(1)耐疲労性
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、押出温度C1/C2/C3/C4/ダイ=200/210/230/235/235℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度0.7m/分の押出条件で、平均厚み1mmのシートに成形した。次いでJIS 3号ダンベル形の試験片を切り出し、−20℃で伸張率40%および毎分400回の条件のもとで繰り返し伸張変形を与えた。各比較例および実施例について5つのサンプルで破断回数の測定を行い、それらのサンプルで求められた破断回数の平均値を算出し、平均破断回数とした。平均破断回数が100万回以上であるものを合格、100万回未満であるものを不合格とした。
(2)通気度の変化率
(a)通気度測定用フィルムの作成
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、400mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、押出温度Cl/C2/C3/C4/ダイ=200/210/230/235/235℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/分の押出条件で、平均厚み0.15mmのフィルムに成形した。次に、このフィルムから長さ20cmおよび幅20cmの試験片を作製し、150℃で3時間以上乾燥し、通気度測定用フィルムを得た。
(b)疲労試験片の作成
下記表1に示す配合において、加硫剤以外の原料を1.7リットルのバンバリーミキサーにて、設定温度70℃にて5分間混練してマスターバッチを得た後、8インチロールで加硫剤を混練し、0.5mm厚のシートに成形し、上記「(a)通気度測定用フィルムの作成」において作成したフィルムと積層し、180℃で10分間加硫させ疲労試験片を作成した。
(c)疲労試験前後の通気度測定
上記「(b)疲労試験片の作成」により得られた積層体を、長さ11cmおよび幅11cmの試験片を作製し、JIS K7126−1「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(差圧法)」に準じて、試験気体として空気を用い、試験温度30℃で、熱可塑性樹脂組成物フィルムの通気度(疲労前)を測定した。通気度(疲労前)を測定した後、試験片を、室温で伸張率20%および毎分400回の条件のもとで100万回繰り返し伸張させることにより疲労させた。疲労後の試験片について、通気度(疲労前)の試験法と同様に通気度を測定し、疲労後の通気度を疲労前の通気度に対する百分率(%)で表した。
試験結果を下記表2に示す。
表2脚注:
(1)エチレン-ビニルアルコール共重合体(日本合成化学株式会社製のソアノール(登録商標)H4412B)
(2)100質量部のナイロン666(宇部興産株式会社製UBEナイロン5033B)を2質量部のp−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルで変性することにより得られた変性ナイロン
(3)無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム(三井化学(株)製のタフマーMH7020)
(4)三井化学(株)製の三井EPT 3070(油展量0phr)
(5)三井化学(株)製の三井EPT 3072EM(油展量40phr)
(6)昭和シェル石油(株)製のYSオイル
(7)鶴見化学工業(株)製金華印微粉硫黄150メッシュ
(8)大内新興化学(株)製のノクセラーTOTN
(9)日本油脂(株)製のビーズステアリン酸
(10)小西化学工業株式会社製3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)
(11)日星産業株式会社製タナック(登録商標)
(12)正同化学(株)製の亜鉛華3号
(1)エチレン-ビニルアルコール共重合体(日本合成化学株式会社製のソアノール(登録商標)H4412B)
(2)100質量部のナイロン666(宇部興産株式会社製UBEナイロン5033B)を2質量部のp−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルで変性することにより得られた変性ナイロン
(3)無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム(三井化学(株)製のタフマーMH7020)
(4)三井化学(株)製の三井EPT 3070(油展量0phr)
(5)三井化学(株)製の三井EPT 3072EM(油展量40phr)
(6)昭和シェル石油(株)製のYSオイル
(7)鶴見化学工業(株)製金華印微粉硫黄150メッシュ
(8)大内新興化学(株)製のノクセラーTOTN
(9)日本油脂(株)製のビーズステアリン酸
(10)小西化学工業株式会社製3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン)
(11)日星産業株式会社製タナック(登録商標)
(12)正同化学(株)製の亜鉛華3号
表2の試験結果から、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、耐疲労性に優れ、しかも、疲労に伴う気体遮断性の低下が少ないことが判る。
Claims (12)
- (A)エチレン−ビニルアルコール共重合体、
(B)高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、および
(C)酸無水物変性ゴムおよびエポキシ変性ゴムから選ばれた変性ゴム、
を含んで成り、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)が200000以上の数平均分子量を有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)と変性ゴム(C)との質量比が10:90〜90:10である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 変性ゴム(C)がエチレン−α−オレフィン共重合体およびそれらの誘導体の酸無水物変性物およびエポキシ変性物、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの誘導体の酸無水物変性物およびエポキシ変性物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)と変性ゴム(C)との合計量が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)100質量部に対して90〜180質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、(D)未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 未変性ポリアミド樹脂がナイロン6、ナイロン66またはナイロン666であり、変性ポリアミド樹脂がエポキシ変性されたナイロン6、ナイロン66またはナイロン666である、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)との質量比が10:90〜90:10であり、高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)と変性ゴム(C)との合計量が、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と未変性ポリアミド樹脂または変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)との合計量100質量部に対して90〜180質量部である、請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が、それぞれ架橋剤により架橋されたものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)が、それぞれ架橋剤の存在下で、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と溶融混練することにより、あるいはエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)および未変性ポリアミド樹脂もしくは変性ポリアミド樹脂またはそれらの組み合わせ(D)と溶融混練することにより動的架橋されたものである、請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 架橋剤の合計量が、高分子量エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(B)および変性ゴム(C)の合計量100質量部に対して0.01〜10質量部である、請求項9または10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤ。
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