JP2012046547A - 粘膜炎を処置するための増殖因子amp−18に由来するペプチドの使用 - Google Patents

粘膜炎を処置するための増殖因子amp−18に由来するペプチドの使用 Download PDF

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Abstract

【課題】粘膜炎を処置するための増殖因子AMP−18に由来するペプチドの使用を提供する。
【解決手段】AMP−18由来のペプチドの方法および組成物は、AMP−18由来のペプチド組成物が驚くべきことに哺乳動物の粘膜炎を軽減することを実証し得る。癌療法誘発性の粘膜炎を含む粘膜炎を処置するか、粘膜炎の発症もしくは持続時間を遅延する方法およびペプチド組成物が開示される。ヒトAMP−18タンパク質に由来するAMP77−97ペプチドは、癌療法誘発性の粘膜炎を軽減する。
【選択図】なし

Description

(背景)
Antrum Mucosal Protein(AMP)−18(gastrokine−1とも呼ばれる)は、胃噴門の粘膜上皮細胞で発現される18kDaのタンパク質である。胃細胞内において、このタンパク質は、内腔の細胞表面の直下でムチンとともに小胞内で見出される。AMP−18は、粘膜表面をコーティングする粘弾性のゲルの成分として、胃の内張りに分泌される。この天然のタンパク質とアミノ酸77−97から構成される21マーのペプチド(AMP77−97ペプチド)との両方は、胃腸の(GI)上皮細胞に対してマイトジェンおよび細胞遊走促進因子として作用する。また、AMP77−97ペプチドは、傷害後に特定のタンパク質(例えば、オクルディンおよびZO−1)の喪失を防止すること、およびTJタンパク質の集合を促進し、細菌の侵入、それらの毒素、および、腸管内腔に存在する他の潜在的に傷害性の分子から腸を保護し得る粘膜の障壁機能および構造を修復することによって、GI粘膜上皮細胞を一緒に保持するタイトジャンクション(TJ)(図1)にも作用する。
粘膜炎は、癌のための化学療法または放射線療法によって最も一般的に引き起こされる、口、咽頭または胃腸管の炎症性かつ潰瘍性の傷害である。この疾患は、化学療法または放射線が口の粘膜表面および胃腸管の他の部分を破壊したときに発症し、上皮層および根底にある結合組織の両方を侵す。重症な症例の場合、口腔粘膜炎は、極めて有痛性であり得、患者の摂食を妨害し、水和(hydration)のための入院、疼痛に対する麻薬および/または完全非経口栄養法を必要とする。粘膜炎に起因する疼痛は、処置を中断する主要な理由として癌患者によりしばしば挙げられる程、激しい。粘膜炎に罹患する患者は、あたかも、やけどするほどの熱湯を飲み、粗いサンドペーパーで口の内部を引っ掻き、次に舌にチーズのおろし金をかけたように感じ得る。また、粘膜炎は、生命を脅かし得る。なぜなら、口の潰瘍は、血流への細菌の侵入(癌のための処置によって既に免疫不全である患者において致命的であり得る状況)を許容し得る。
全体で、粘膜炎は、標準用量の化学療法を受ける患者のうち15〜40%を侵し、骨髄移植のための高用量の化学療法を受ける患者のうち76〜100%を侵す(図7)。また、粘膜炎は、頭頚部癌のための放射線療法を受容する患者の事実上全て、および胃腸管に沿って放射線を受容する患者を侵す。例えば、食道炎(すなわち、食道の粘膜炎)は、非小細胞肺癌を有する患者における化学放射線療法の主要な合併症(これは顕著な罹患率を産み出し、処置の中断をもたらす)である。米国において、一年で粘膜炎は、400,000人を超える患者に罹り、放射線処置および化学療法の処置に対する必要性が増大するにつれて、発生率が増加する。このことは、米国において、一年間に、8億ドルを超える市場の可能性を示す。
口腔粘膜炎の処置は、医療上の必要性が顕著に満たされていない。現行の処置ストラテジーは、主として対症的であり、局所麻酔薬および感染を防止するための抗生物質を含有し得る粘膜コーティング混合物を含む。これらの処置は、わずかな利益しか提供せず、治癒の加速もせず、粘膜炎の重症度も低下させない。粘膜炎に対して現在認可されている唯一の治療薬は、既知の分裂促進性タンパク質、ケラチノサイト増殖因子(KGF)である、KepivanceTMであり、これは、静脈内投与されなければならない。KepivanceTMは、粘膜炎の全集団のうちのほんの4%を構成する単一の適応症(すなわち、幹細胞移植患者におけるプレコンディショニングレジメン(pre−conditioning regimen)(化学療法および放射線)に起因する粘膜炎の処置)に対して認可されている。
(開示の要旨)
本開示および先行する出願は、初めて、AMP−18タンパク質由来のペプチド組成物が驚くべきことに哺乳動物において粘膜炎を低減することを実証することを可能にする。さらに、ペプチド組成物(投薬様式および投与様式を含む)は、AMP−18タンパク質由来のペプチドが粘膜炎の強度を低減するか、および/または粘膜炎の発症を遅延させることを実証することを可能にする。したがって、本出願および先行する出願の開示は、gastrokine(例えば、AMP−18)に由来する特異的なペプチドが、哺乳動物の粘膜炎を処置し、その強度を低減し、その発症を遅延させ、そしてその持続時間を最小限にするのに治療上有効であることを明示的に実証する。
AMP−18タンパク質およびそれに由来するペプチドは、マイトジェンおよび細胞遊走促進因子として作用する。AMP−18タンパク質は、精製タンパク質および組換えタンパク質を含む。AMP−18由来のペプチドは、ヒト、マウスおよびブタのAMP−18由来のペプチドを含む。AMP77−97ペプチドに加えて、他の適切なヒトAMP由来のペプチドとしては、
Figure 2012046547
が挙げられる。アミノ酸位置(例えば、77−97)とは、示されるようにヒトまたはマウスもしくはブタのAMP−18タンパク質に由来する成熟形態/プロセシングされた形態のアミノ酸位置をいう。
AMP77−97ペプチドの効果としては、分裂促進的および細胞遊走促進的な機能が挙げられる。AMP77−97ペプチドは、傷害後の修復および細胞増殖を促進する作用によって損傷した粘膜表面の治癒を刺激し、そして細胞間の新たなタイトジャンクションの形成を増強し、粘膜の障壁を修復する。AMP77−97ペプチドは、口腔粘膜炎を含む胃腸管の疾患および異常な状態(依然として顕著に医療上の必要性が満たされていない)の有用な処置を提供する。AMP77−97ペプチドは、粘膜炎(例えば、癌療法によって誘発される粘膜炎)を緩和するのに有効である。例えば、マウスAMP−18タンパク質に由来するAMP77−99ペプチドはまた、粘膜炎を処置するのに適切でもある。
AMP77−97ペプチドはTJタンパク質の減少を防止し、細胞間結合を破壊する酸化剤モノクロラミンでヒト結腸のCaco2(C2)細胞単層を処理した後に、上皮の完全性(epithelial integrity)が見られた(図2;C、D)。これらの細胞を低カルシウム培地(3μM)に1時間曝露して、TJを破壊し、続いて、AMP77−97ペプチド、上皮増殖因子(EGF)またはケラチノサイト増殖因子(KGF−1)(これらは、破壊されたTJの回復を促進し得る既知の上皮細胞のマイトジェンである)を含む培地中で回復させた。図3におけるこの結果は、AMP77−97ペプチドでの処理のみが細胞間のTJの迅速な回復を促進したことを示す。したがって、AMP77−97ペプチドは、これらの上皮細胞のTJに対して効果を示すが、EGFでもKGFでもその効果は見られない。分子レベルにおいて、AMP77−97ペプチドは、サイトゾルからTJドメインへの数種のタンパク質(プロテインキナーゼC−zeta、Par6、Cdc42、ECT2およびPar3)のトランスロケーションを増進することによってTJの形成を促進する。
チャイニーズハムスター肺(CHL)細胞にクローン化したヒトhERGチャネルを使用して高スループットアッセイ(IonWorksTMHT System、Essen Instruments、Ann Arbor、MI;MPICardlon、Mattawan、MI)で試験するように、hERGに関連するカリウム電流に対するAMP77−97ペプチドの可能性のある毒性効果を調べた。最大33μMの濃度まで電流に対して影響はなく、このペプチドが細胞毒(cell toxin)ではないことが示された。
マウスに皮下投与された場合、AMP77−97ペプチドは腸においてTJタンパク質成分を増大させたが、腎組織においても肝組織においても増大させなかった。したがって、AMP77−97ペプチドは、細胞成長および移動を介して粘膜表面の修復を促進することに加えて、GI上皮細胞において既存のTJを保護し、それによって粘膜の障壁の機能および構造を保つ。AMP77−97ペプチドによる培養物中のC2細胞の処理は、経上皮(transepithelial)の電気抵抗(粘胃腸管の膜の完全性についてのマーカーである、障壁機能の尺度)を保つことも示されている。この効果は、p38 MAPキナーゼ/hsp27/アクチン経路(AMP77−97ペプチドによって活性化されるシグナル伝達経路)を介する結合部周辺(perijunctional)のアクチン分子の安定化によって達成された。
AMP−18タンパク質およびAMP−18タンパク質に由来するペプチドを含む薬学的組成物は、粘膜炎を処置するのに適切である。
薬学的組成物は、治療有効量のAMP−18由来のペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み、このペプチドは粘膜炎を処置するのに有効である。治療有効量は、体重1kgあたり約1〜100mgに相当する。
上記の薬学的組成物は、
Figure 2012046547
から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
上記の粘膜炎としては口腔粘膜炎が挙げられる。粘膜炎は、癌を処置するための治療(放射線療法、化学療法または化学療法および放射線療法の組み合わせを含む)によって誘発される。
上記の薬学的組成物は非経口投与され得る。投与の適切な様式としては、経口投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、経皮投与、腹腔内投与、経粘膜投与および経鼻投与が挙げられる。
粘膜炎の発症を軽減または遅延させるための方法は、以下の工程を包含する:
(a)治療有効量のAMP−18由来のペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を投与する工程;そして
(b)AMP−18由来のペプチドが、粘膜炎の発症を遅延させるか、あるいは粘膜炎の強度もしくは持続時間またはそれらの組み合わせを軽減することを決定する工程。
癌療法によって誘発される粘膜炎を緩和するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)ペプチドAMP77−97またはAMP−18タンパク質に由来するペプチドを取得する工程;そして
(b)このペプチドまたはタンパク質を、投与を必要とする被験体に投与する工程。胃粘膜への傷害を修復するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)ペプチドAMP77−97ペプチドまたはAMP−18タンパク質に由来するペプチドを取得する工程;そして
(b)このペプチドまたはタンパク質を、投与を必要とする被験体に投与する工程。
さらに、改変ペプチドは、以下の方法によって生成され得る:
(a)アミノ酸置換または欠失によって、未改変ペプチドのアミノ酸配列内の主要なプロテアーゼ部位を除去すること;そして/または
(b)この改変ペプチド、未改変ペプチド内のアミノ酸のアミノ酸アナログを導入すること。
薬学的組成物は、少なくとも1種の増殖刺激性ペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む。
哺乳動物の胃腸管内の上皮細胞の増殖を刺激するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)この上皮細胞とAMP−18タンパク質または上記の群のタンパク質に由来するペプチドの組成物とを接触させる工程;そして
(b)このタンパク質が細胞の増殖を刺激する活性に適切な環境条件を提供する工程。
哺乳動物の胃腸管への傷害後に、上皮細胞の移動を刺激するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)この上皮細胞と、上記のタンパク質に由来するペプチドを含む組成物とを接触させる工程;そして
(b)この上皮細胞の移動を可能にする環境条件を提供する工程。
哺乳動物の胃腸管における損傷を受けた上皮細胞およびそれらの間のタイトジャンクションについての細胞保護(cell protection)のための方法は、以下の工程を包含する:
(a)この損傷を受けた上皮細胞と、AMP−18群のタンパク質またはこのタンパク質に由来するペプチドを含む組成物とを接触させる工程;そして
(b)上皮細胞およびそれらのタイトジャンクションの修復を可能にする環境条件を提供する工程。この損傷を受けた細胞は潰瘍を形成し得る。
予防または軽減を必要とする被験体において、H.pyloriによって引き起こされる胃および十二指腸の感染、炎症および潰瘍形成の再発を、予防または低減するための方法は、以下の工程を包含する:
(a)ペプチドAMP77−97またはAMP−18タンパク質を取得する工程;そして
(b)このペプチドまたはタンパク質を、口および/または胃腸管の他の場所の粘膜炎;あるいは、炎症性腸疾患、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍、ならびにGI粘膜の障壁の構造および機能を破壊する他の疾患を有し、投与を必要とする被験体に投与する工程。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
治療有効量のAMP−18由来のペプチドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物であって、該ペプチドは粘膜炎を処置するのに有効である、組成物。
(項目2)
前記ペプチドが、
Figure 2012046547
から選択されるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
前記治療有効量が、約1〜100 mg/体重kgに相当する、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目4)
前記粘膜炎が口腔粘膜炎である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目5)
前記粘膜炎が、癌を処置するための治療によって誘発される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記癌治療が放射線療法である、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記癌治療が化学療法である、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記治療が放射線療法と化学療法との組み合わせである、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記薬学的組成物の投与が非経口的である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目10)
粘膜炎の発症を軽減または遅延させるための、項目1に記載の組成物の使用であって、
(a)治療有効量のAMP−18タンパク質に由来するペプチドと薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物を投与する工程;および
(b)該AMP−18タンパク質に由来するペプチドが粘膜炎の発症を遅延させるか、あるいは粘膜炎の強度もしくは持続時間またはそれらの組み合わせを軽減することを決定する工程、
を包含する、使用。
(項目11)
前記AMP−18タンパク質に由来するペプチドが、成熟AMP−18タンパク質のアミノ酸位置77〜97に対応するアミノ酸配列LDALVKEKKLQGKGPGGPPPKを含む、項目10に記載の使用。
(項目12)
非経口投与が、経口投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、経皮投与、腹腔内投与、経粘膜投与および経鼻投与から選択される、項目10に記載の使用。
(項目13)
前記粘膜炎が口腔粘膜炎である、項目10に記載の使用。
(項目14)
前記粘膜炎が、癌を処置するための治療によって誘発される、項目10に記載の使用。
(項目15)
前記癌治療が放射線療法である、項目14に記載の使用。
(項目16)
前記癌治療が化学療法である、項目14に記載の使用。
(項目17)
前記治療放射線療法と化学療法との組み合わせである、項目14に記載の使用。
本明細書で使用される用語「因子(agent)」とは、核酸、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣物(peptidomimetic)、それらのアナログ、小分子、インヒビター、および、タンパク質−タンパク質相互作用もしくは細胞プロセス(cellular process)に影響を及ぼし得る任意の化学分子、有機分子もしくは生体有機分子が挙げられる。
用語「AMP−18由来のペプチド」とは、ペプチド、AMP−18の対応する領域と比較して、アミノ酸置換もしくはアミノ酸アナログもしくはアミノ酸欠失を有する改変ペプチド配列、ならびにAMP−18タンパク質の特定の領域に対応するペプチド模倣物を意味する。このAMP−18由来のペプチドは、約5〜50アミノ酸長または約5〜20アミノ酸長または約5〜10アミノ酸長の範囲に及び得る。このAMP−18由来のペプチドはまた、口および胃腸管の粘膜上皮細胞へのペプチドの送達を増強するために、その新油性に影響を与えるように改変され得る。このペプチドは、合成され得るか(「合成ペプチド」)、または組換え技術によっても生成され得る(「組換えペプチド」)。これらのペプチドはまた、細胞成長および移動を促進し、タイトジャンクションタンパク質の形成および集合を増強し、そして細胞保護を媒介する効能に顕著に影響を与えることなく、そのインビボ安定性を増大させるように操作され得る。
「ペプチド誘導体」は、AMP−18タンパク質の一領域またはAMP−18タンパク質ホモログのアミノ酸配列を有するが、さらに1つ以上のそのアミノ酸側鎖、α−炭素原子、末端アミノ基、もしくは末端カルボン酸基に少なくとも1つの化学改変を有する分子を意味するために使用される。化学改変としては、化学部分を付加すること、新規の結合を作り出すこと、および化学部分を除去することが挙げられる。アミノ酸側鎖での改変としては、リジンのアシル化、ε−アミノ基、アルギニン、ヒスチジンまたはリジンのN−アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンもしくはアスパラギン脱アミドが挙げられる。末端アミノの改変としては、脱アミノ(des−amino)、N−低級アルキル、N−ジ低級アルキル、およびN−アシル改変が挙げられる。末端カルボキシ基の改変としては、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル改変が挙げられる。低級アルキルは、C1〜C4アルキルである。さらに、1つ以上の側鎖(すなわち、末端基)は、通常の技量を有するタンパク質化学者に既知の保護基で保護され得る。アミノ酸のα−炭素は、モノメチル化され得るか、またはジメチル化され得る。
図1は、タイトジャンクションおよびその関連するタンパク質の概略図である。 図2は、コントロール条件下かつ酸化剤による傷害後の、C2細胞における、共焦点顕微鏡法によって視覚化されたオクルディンに対するAMP77−97ペプチドの効果を示す。コントロールの細胞単層におけるオクルディンの免疫反応性(パネルA)は、細胞間結合の輪郭を描く均一な帯を形成し、これは、細胞質においてより強かった。細胞をAMP77−97ペプチドに18時間曝露した場合(パネルB)、オクルディンは、コントロール細胞と比較して、TJにおいて比較的より豊富であり、細胞質においてより少ないようであった。酸化剤モノクロラミン(0.3mM)に30分間曝露した後(パネルC)、細胞間結合におけるオクルディン強度は低下し、一部の部位において不連続であった;時折、これはほとんど見えなかった(矢印)。酸化剤の前に、AMP77−97ペプチドで事前に処理された細胞(パネルD)においては、細胞間結合におけるオクルディンの免疫反応性は、未処理の損傷した細胞よりも強かった。 図3は、低カルシウム培地への曝露による破壊の後、AMP77−97ペプチドが、ヒト結腸の上皮細胞の新規なタイトジャンクションの形成を促進するが、上皮増殖因子(EGF)もケラチノサイト増殖因子(KGF)も、形成を促進しないことを示す。タイトジャンクションタンパク質ZO−1の局在を、C2細胞のコンフルエントな単層において、間接的な免疫蛍光レーザー走査共焦点顕微鏡法によってモニタリングした。コントロール培地(カルシウム=1.8mM)における培養物は、イントタクトなタイトジャンクションを示す。タイトジャンクションを破壊するために、細胞を、低カルシウム培地(3μM)に切り替え1時間おいた。次に、既知の分裂促進的な濃度の増殖因子を、この培地に添加し、そして2時間後に、タイトジャンクションの形成に対するその効果を共焦点顕微鏡法によって評価した。ビヒクル、AMPペプチド(8μg/ml)、KGF−1(100ng/ml)、およびEGF(100ng/ml)を比較した。矢印は、TJが破壊された細胞の持続的な分離およびビヒクル、KGF−1、またはEGFに曝露された培養物におけるZO−1の明らかな喪失を示す。対照的に、AMPペプチドは、ZO−1の回復およびインタクトなタイトジャンクションの形成を促進した。 図4は、マウスにおける、放射線に誘発された舌の損傷に対するAMP77−97ペプチドの効果を示す。口腔粘膜炎についてのBDF−1マウスモデルの舌の照射の5日前および照射から10日後に、AMP77−97ペプチド(25mg/kg、s.c.)を投与した。顕微鏡写真を、照射から10日後に調製した。ビヒクル(生理食塩水)で処置した、コントロールの照射されたマウス由来の組織は、正常なマウスの舌と比較して、両方の区画において実質的な上皮組織および結合組織の細胞の喪失を示す。対照的に、AMP77−97ペプチドで処置した動物由来の組織は、肥厚した過角化性の上皮表面および概してインタクトな結合組織区画を示す。 図5は、ハムスターの頬袋内の粘膜炎についてのスコア付けシステムを示す。 図6は、3以上の粘膜炎スコアを有する動物の日(animal day)数に対するAMP77−97ペプチドの効果を示す。臨床的に有意な粘膜炎のレベルを、照射後に頬粘膜上に開放性の潰瘍(open ulcer)を有する症状(3以上のスコア)によって定義した。ハムスターが増大したスコアを示した日の総数を合計し、スコア付けした日の総数のパーセンテージとして表現した。*印は、AMP−18ペプチド(40mg/kg)による処置が、カイ二乗検定を使用してビヒクル(PBS)と比較して統計的に有意に低い(P<0.001)粘膜炎スコアをもたらしたことを示す。 図7は、癌療法の間の粘膜炎の原因を示す。CRC=結腸直腸癌;NHL=非ホジキンリンパ腫;NSCLC=非小細胞肺癌。
(開示の詳細な説明)
驚くべきことに、AMP−18タンパク質由来のペプチド組成物は、哺乳動物の粘膜炎を軽減する。本開示および先行する出願は、初めて、gastrokine(例えば、AMP−18)に由来する特定のペプチドが、哺乳動物の粘膜炎を処置し、その強度を低減させ、その発症を遅延させ、そしてその持続時間を最小限にするのに治療上有効であることを実証することができるデータを提供する。さらに、ペプチド組成物(投薬様式および投与様式を含む)は、AMP−18タンパク質由来のペプチドが、粘膜炎の強度を軽減するか、および/または粘膜炎の発症を遅延させることを実証し得る。
AMP77−97ペプチドは、細胞培養物においてマイトジェンおよび細胞遊走促進因子として作用し、粘膜上皮細胞の間のタイトジャンクションへの傷害から保護するようである(図1)。AMP77−97ペプチドは口腔粘膜炎における治療剤である。マウスおよびハムスターの口腔上皮への放射線誘発性の傷害の2つの異なるモデルにおいて、AMP77−97ペプチドの投与は、舌および頬の粘膜上の潰瘍性病変の持続時間および程度を軽減し、それによって、回復を顕著に加速した。
GI上皮に対する保護効果および治癒効果のため、AMP77−97ペプチドは、広範な種類の胃腸管の疾患(例えば、食道炎、消化性潰瘍および炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)(IBD))を処置するのに有用である。IBDにおいて、炎症反応は、障壁機能(例えば、栄養素、水および電解質の方向性の輸送(vectorial transport))を損ない、細菌毒素および炎症促進性分子が腸管内腔から腸粘膜下へ通過することを可能にし、かなりの罹患率および死亡率(米国において約百万人の患者人口)を引き起こす。これらの後者の疾患に対する現行の治療としては、ステロイド剤および、疾患の未知の免疫上の原因を標的にする他の抗炎症剤が挙げられる。腸上皮の修復を目的とする治療は現在利用可能ではない。したがって、AMP77−97ペプチドは、傷害を予防するかまたは複数の型のGI傷害からの回復を加速するための治療になる可能性を有する。なぜなら、AMP77−97ペプチドが、デキストラン硫酸ナトリウムによって急性大腸炎を誘発されたマウスにおいて糞中の血液の出現を遅延させ、そして体重減少を軽減することによって裏付けられるからである。
図2は、コントロール条件下かつ酸化剤による傷害後の、C2細胞における、共焦点顕微鏡法によって視覚化されたオクルディンに対するAMP77−97ペプチドの効果を示す。コントロールの細胞単層におけるオクルディンの免疫反応性(パネルA)は、細胞間結合の輪郭を描く均一な帯を形成し、これは、細胞質においてより強かった。細胞をAMP77−97ペプチドに18時間曝露した場合(パネルB)、オクルディンは、コントロール細胞と比較して、TJにおいて比較的より豊富であり、細胞質においてより少ないようであった。酸化剤モノクロラミン(0.3mM)に30分間曝露した後(パネルC)、細胞間結合におけるオクルディン強度は低下し、一部の部位において不連続であった;時折、これはほとんど見えなかった(矢印)。酸化剤の前に、AMP77−97ペプチドで事前に処理された細胞(パネルD)においては、細胞間結合におけるオクルディンの免疫反応性は、未処理の損傷した細胞よりも強かった。この観察は、AMP77−97ペプチドが、ヒト結腸の上皮細胞における酸化剤による傷害から、タイトジャンクションタンパク質オクルディンを保護することができることを実証する。同様な結果はまた、タイトジャンクションタンパク質ZO−1に関して得られた。
例えば、
Figure 2012046547
のような他のAMP−18由来のペプチドも、その分裂促進的および細胞遊走促進的な作用に基づいて、粘膜炎の処置に使用するために適切である。これらのペプチドの効果は、本明細書に開示されるマウス生体モデルを使用して試験され得る。
AMP−18ペプチドの誘導体またはアナログが本明細書に記載の改変された核酸またはアミノ酸を含む場合、AMP−18ペプチドの誘導体およびアナログは、全長であっても、全長でなくてもよい。本発明の核酸またはタンパク質の誘導体またはアナログとしては、種々の実施形態において、同一のサイズの核酸配列もしくはアミノ酸配列にわたってか、または整列させた配列(この整列は、当該分野において公知のコンピュータホモロジープログラムによってなされる)と比較した場合、少なくとも約70%、80%または95%の同一性(好ましくは、80〜95%の同一性)でか、あるいは、それをコードする核酸がストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、もしくは低いストリンジェント条件の下で、上記のタンパク質をコードする配列の相補鎖にハイブリダイズすることができる、本発明の核酸またはタンパク質に実質的に相同な領域を含む分子が挙げられる。例えば、Ausubelら、(1993)を参照のこと。
本明細書に開示されるペプチドおよび他の組成物は、任意の適切な手段を介して投与され得る。例えば、このペプチド組成物は、生理食塩水または任意の適切な緩衝液に希釈され得、直接静脈内にか、皮下にか、局所にか、および/または腹腔内に投与され得る。
本明細書に開示される組成物の投与は、通常の技量を有する医師によって実施されることが公知の任意の経路を介し得る。末梢の非経口投与および局所投与が適切である。AMP−18由来のペプチドの投薬量は、このペプチドの効能、このペプチドのインビボでの安定性、投与様式、体重、患者の年齢および、当業者によって一般的に考慮される他の要因に依存する。例えば、AMP−18由来のペプチド薬物の投薬量は、約0.1〜10.0mg/kg体重、または約10〜20mg/kg体重、または約0.5〜50mg/kg体重、または約10.0〜70.0mg/kg体重の範囲に及び得る。非経口投与は、医療文献において、無菌のシリンジによる身体への投薬形態の注射として一般的に理解される。末梢の非経口経路としては、投与の静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、および腹腔内経路が挙げられる。本明細書に開示される組成物の投与について静脈内経路、筋肉内経路および皮下経路が適切である。非経口投与のために、本明細書に開示されるペプチドは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または、ヒト被験体投与についてのFDAの基準に合致する、任意の適切な発熱物質を含まない薬学的等級の緩衝液と合わせられ得る。本明細書で使用される「薬学的に受容可能なキャリア」としては、所望される特定の投薬形態に適切な、任意および全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤(aid)、界面活性剤、等張剤(isotonic agent)、増粘剤または乳化剤、ならびに保存剤などが挙げられる。Remington(2000)は、薬学的組成物を処方するのに使用される種々のキャリアおよびそれらを調製するための公知の技術を開示する。本明細書に記載される組成物の溶液または懸濁物はまた、無菌の希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);キレート化剤(例えば、EDTA);緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩);および張度(tonicity)を調整するための因子(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)も含み得る。組成物の非経口調製物は、当該分野の標準的な実施にしたがって、ガラス製またはプラスティック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量のバイアルに入れられ得る。本明細書に開示される組成物は、再構成の前に、バイアル中の凍結乾燥した無菌の粉末として保存され得、再構成されていない生成物は、−20℃で保存され得る。
(実施例1. 粘膜炎のマウスモデルにおけるAMP77−97ペプチドの効果)
口腔粘膜炎の処置におけるAMP77−97ペプチドの可能性を評価するために、マウスおよびハムスターを使用することができるか否かを決定するために、これらの動物の口粘膜表面の上皮の肥厚を誘発するAMP77−97ペプチドの能力を研究した。研究1において、雌のBDF−1マウス(n=8)およびシリアンゴールデンハムスター(n=8)に、5日間、生理食塩水、5mg/kgまたは25mg/kgのマウスAMP77−97ペプチドの皮下注射を毎日与えた。組織学的研究の結果によって、AMP77− 97ペプチドで処置したBDF−1マウスの舌の背側の表面上で、上皮の肥厚化が顕著であり、多くの動物において、肥厚化は、過角化(hyperkeratosis)を伴っていたことを明らかにした。また、用量(5mg/kgを受容する動物よりも25mg/kgを受容する動物においてより優勢/顕著)および投薬の期間(2日間で見られるある程度の効果が存在したが、連続する5日間の後ではより容易に見られた)の増大にともなって、肥厚化および過角化の両方が増大するようであった。この効果は、舌の腹側の表面よりも背側の表面においてより容易に観察された。食道における角質化の程度の増大は、AMP77−97ペプチドの用量の増加、および用量の回数の増加によって増加したことも観察された。AMP77−97ペプチドの効果はまた、ハムスターの舌においても明らかであったが、それほどは顕著ではなく、過角化よりも肥厚化がより一般的に観察された。この研究の間の体重の増加および死亡率の欠如の分析に基づくと、マウスにおいてもハムスターにおいても、AMP77−97ペプチドによる処置に伴ういかなる毒性の証拠も存在しなかった。まとめると、AMP77−97ペプチドによる処置は、BDF−1マウスおよびシリアンゴールデンハムスターの両方において、口腔上皮の肥厚を引き起こし、このことは、両方の動物モデルにおいて、口腔粘膜炎の処置に有効であり得ることを示唆した。
研究2において、口腔上皮の肥厚に対するAMP77−97ペプチドの効果を、マウスの5つの異なる系統で比較した。この結果は、BDF−1マウス(n=4)が、舌の腹側および背側の両方の表面上に、最も顕著かつ広範に見られる肥厚化の増大を呈したことを示した。しかしながら、AMP77−97ペプチドによる処置はまた、評価した以下のマウス系統の各々において口腔上皮の肥厚を引き起こした:C3H/OuJ、C3H/HeN、C57B1/6およびBalb c。再度、過角化を、BDF−1マウスの食道において観察し、C3H/HeNマウスにおいても見られた。
体重の増加および死亡率の欠如の分析に基づくと、5つのマウス系統のいずれにおいても、AMP77−97ペプチドの処置に伴ういかなる毒性の証拠も存在しなかった。
研究3において、鼻部への30Gyの放射線の単回線量を施すことによって、粘膜炎をBDF−1マウス(n=40)に誘発させた。舌の上皮組織区画および結合組織区画についての放射線誘発性の傷害のこの設定において、AMP77−97ペプチドの効果を評価するために、マウスAMP77−97ペプチド(25mg/kg)を、照射前後に(−5日目〜10日目;0日目に照射)一日一回皮下投与した。舌の組織学的分析によって、生理食塩水で処置されたコントロール(図4、「結合組織」の細胞性に留意すること)と比べて、AMP77−97ペプチドの投与が、上皮細胞層(図4、「上皮」の下のスライドにおける暗色の層)および結合組織の両方において、粘膜炎の徴候を軽減させたことが明らかになった。この評価は、粘膜炎の傷害がピークである10日目に実行した。結合組織に対するこの効果は、AMP77−97ペプチドが放射線によって損傷を受けた複数の細胞型および組織型に対して有益な効果を有することを支持した。AMP77−97ペプチドの処置に伴ういかなる毒性の証拠も存在しなかった。
(実施例2.粘膜炎のハムスターモデルにおけるAMP77−97ペプチドの効果)
AMP77−97ペプチドを、頬袋(cheek pouch)の粘膜表面を損傷させる放射線を使用するハムスター粘膜炎モデルにおいて試験した。研究4において、雄のシリアンゴールデンハムスター(n=32)に、裏返した左頬の頬袋の粘膜表面に向けた40Gyの急性放射線量を与えた。このことは、12日目〜28日目に観察される臨床的に有意な粘膜炎のうち、14〜16日後にピークの傷害をもたらす。AMP77−97ペプチド(0〜40mg/kg)を、一日一回皮下注射によって投与した。この投与は、照射の5日前(−5日目)から開始し、15日目まで継続したが、照射日(0日目)には行わなかった。このモデルでのスコア付けは、臨床的に使用される世界保健機関(WHO)のスコア付けシステムと同様な、損傷についての客観的評価を使用する。6日目から一日おきに、袋の写真を撮り、これを、図5に示す判断基準を使用して評価した。これらの写真を、実験プロトコルに関して知らされていない(blinded)観察者がスコア付けした。簡潔にいうと、1〜2のスコアは、軽度の段階の疾患(紅斑、血管拡張、粘膜の表層面(superficial aspect)のびらん)を表し、一方、3〜5のスコアは、中程度〜重度の粘膜炎(袋の4分の1〜ほとんど全ての累積的な大きさの潰瘍)を示す。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS;ビヒクル)を与えたコントロール群において、粘膜炎のピークのレベルは、16日目に見られ、このとき、平均スコアは、3.1(重度の紅斑および血管拡張; 袋の4分の1に等しい、1つ以上の潰瘍の累積的な大きさ)に達した。AMP77−97ペプチド(40mg/kg)を受容する群において、粘膜炎のピークは、18日目まで発生せず、このとき、平均スコアは2.6まで低下した。その後、AMP77−97ペプチド処置されたハムスターはコントロール群よりも迅速に回復し、26日目までに1.1のスコアに達した。さらなる分析によって、ビヒクル処置された動物と比較して、ペプチド処置された動物が、3以上の粘膜炎スコア(粘膜潰瘍形成)の日数に有意な低減(P<0.001)を示すことが明らかにされ、それによって、保護効果についての強力な証拠を提供した。コントロール群において、ビヒクル(PBS)で処置されたハムスターは、評価した動物の日数(animal day)のうち32.1%において、3以上のスコアを有したが、AMP77−97ペプチドで処置した群は、この群の動物の日数においてわずか14.1%が3以上のスコアであったように有意に低減された(P<0.001)(図6)。AMP77−97ペプチドで処置した動物はまた、14日目(P=0.022)、20日目(P=0.042)および26日目(P=0.032)において、粘膜炎スコアに統計的に有意な低減を示した。この粘膜炎のモデルにおいて、2日間以上の統計学的に有意な改善は、AMP77−97ペプチドによる処置が、口腔粘膜炎の経過の間に、改善された結果をもたらしたことを示す、臨床的に有意義な利益とみなされる。
研究5を実行した場合に、同様な結果を得た。−5日目〜−1日目および1日目〜15日目に、40mg/kgのAMP77−97ペプチドで処置したハムスターは、3以上の粘膜炎スコアの日数に統計的に有意な低減(P=0.018)を示し、26日目(P=0.036)および28日目(P=0.020)において有意な低減を示した。
効能の別の試験(研究6)において、AMP77−97ペプチドを、ハムスターの頬袋(n=32)に局所投与した。PBS中の0.5mg/kg、5mg/kgまたは50mg/kg用量のAMP77−97ペプチドを、照射前−5日目〜−1日目および照射後1日目〜15日目に、一日三回袋においた。表1に示される結果は、局所投与された場合に、AMP77−97ペプチドが、この粘膜炎モデルにおいて粘膜炎を有意に減少させ得、この効果もまた用量依存的であることを示す。ハムスターの頬袋および粘膜炎のマウスモデルを使用する各研究において、体重減少または死亡率によって測定される、毒性についての徴候は存在しなかった。
Figure 2012046547
(実施例3.治療効果)
本明細書に開示されるデータは、AMP−18/AMPペプチドに関する複数の治療上の標的を指摘する。これらは、以下によるIBDの処置を含む:(a)AMP77−97ペプチドの細胞保護効果によって、この偶発性の疾患についての急性の悪化の頻度および強度を予防または低下させること、そして(b)疾患の攻撃が生じた後に、大腸粘膜上皮の回復を加速すること(すなわち、細胞培養物および大腸炎のマウスモデルにおいて観察された分裂促進的および細胞遊走促進的(創傷治癒)効果から推測される利益)。AMP77−97ペプチドの細胞保護効果、分裂促進効果および細胞遊走促進効果はまた、化学療法および/または放射線療法の間にしばしば発生する、胃腸管の癌療法によって誘発される粘膜炎において、治療上の役割をもたらす。粘膜炎はこの設定において発生する、なぜなら、この治療プロトコルは、増殖する癌細胞を破壊するように設計されるが、これは、口、咽頭またはGIの粘膜を、それらの全長に沿った任意の地点で裏打ちする迅速に増殖する細胞をも傷付け得るからである。この保護的な粘膜上皮の傷害および/または破壊は、腸由来の敗血症および死の危険に患者をさらす生命を脅かす感染症をもたらし得る。マウスおよび細胞培養物において、腸由来の敗血症(細胞保護)、胃炎および胃潰瘍(細胞保護、有糸分裂誘発、回復)、ならびにヒトにおけるH.pyloriによる感染(この生物の増殖阻害)の処置での、AMP77−97ペプチドの治療上の利益を示唆する証拠を得た。本明細書に開示される培養物における、腎上皮細胞(MDCK株)に対するAMP77−97ペプチドの分裂促進効果および細胞保護効果はまた、急性腎不全を有する患者における、このペプチドについての治療上の役割も見込まれる。まとめると、AMP77−97ペプチドおよび組換えヒトAMP−18(rhAMP−18)の細胞保護効果、分裂促進効果および細胞遊走促進効果は、上皮の障壁機能および構造の破壊を予防および/または制限する複数の治療ストラテジーを提供し、腸および腎臓の粘膜傷害後の再生も加速させる。
(実施例4.細胞培養物におけるAMP77−97ペプチドの分裂促進効果および細胞遊走促進効果は、胃粘膜の傷害における治療上の役割を支持する)
AMP−18の合成は、ヒトおよび他の哺乳動物の胃噴門における内腔の粘膜の内張り上皮細胞に限定される。細胞の内部において、このタンパク質は、分泌顆粒内のムチンと共に局在し、頂端の原形質膜を覆う粘液中に分泌されるようである。E.coliで調製された組換えヒトAMP−18は、この成熟タンパク質の中心に由来する増殖促進性の合成ペプチドよりも一桁低い濃度で、その分裂促進効果を発揮する。ペプチド77−97(現在までに同定された、最も強力な分裂促進性AMP由来のペプチド)は、アミノ酸配列特異的であり、細胞型特異的であるようである。なぜなら、線維芽細胞の増殖もHeLa細胞の増殖も刺激しないからである。特異的なAMP77−97ペプチドによる有糸分裂誘発は細胞表面レセプターによって媒介されるようである。なぜなら、活性なマイトジェンではない特定のペプチドは、濃度依存的な様式で、ペプチド58−99および洞の細胞抽出物の増殖刺激効果を競合的に阻害することができるからである。AMP−18およびそれに由来するペプチドは、胃および腸の上皮細胞に対する多様な効果を示し、これらの細胞を胃粘膜の傷害後の修復において重要な役割を果たさせるようである。これらは、有糸分裂誘発、回復、障壁機能の成熟、および酸化剤後の細胞保護、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、およびDSS媒介性の傷害を含む。これらの生理学的効果の一部は、他の胃のペプチド媒介因子(例えば、シロツメクサペプチドまたはα−デフェンシン、cryptdin 3(>100μM)の濃度と比較して、rhAMP−18(<50nM)について比較的低い濃度で起き得る。免疫反応性AMP−18は、インドメタシンの経管栄養後にマウス胃噴門細胞によって、そしてフォルスコリンへ曝露した初代培養物中のイヌの洞の細胞によって明らかに放出され、このことは、このタンパク質が制御に供されることを示唆している。AMP−18は、生理学的および病理学的プロセス(例えば、NSAID薬物、他の薬学的因子およびアルコールに続く胃炎、潰瘍疾患、ならびにH.pylori感染および炎症の結果において生じ得る、インビボでの胃粘膜上皮の創傷治癒)において一定の役割を果たすようである。
(材料および方法)
AMP−18の局在:AMP−18に対する抗血清は、マウスの胃噴門領域の切片と強力に反応するが、胃底部、十二指腸または腸由来の組織とは反応せず、免疫ブロットの結果を確証する、優れた組織化学的なプローブであることが分かった。この免疫前血清は、より高濃度でおいてさえ、無視できる反応しか示さない。AMP−18タンパク質は、胃内腔を内張りする粘膜上皮細胞において濃縮されるようであるが、組織のより深部の細胞での、そして上部の陰窩領域に沿ったより少ないシグナルは、細胞が内腔層に向かって移動するにつれ、このタンパク質を発現し始め得ることを示唆する。より高倍率の組織化学的な調製物は、このレベルの解像度で、全般的な細胞質の染色しか示さない;電子顕微鏡法(EM)で見られる一部の内腔表面の細胞の、顆粒で充填された領域について光学顕微鏡法の相当するものであり得る、強力な染色の数個のパッチが存在する。したがって、洞粘膜におけるAMP−18の局在は、粘膜層の深部にある、ガストリンを合成する細胞とはきわめて異なる。
上皮細胞培養物に対する増殖因子の活性:AMP−18についての機能は、それが、幽門洞およびおそらく胃の他の場所における機能的な粘膜上皮の維持に少なくとも部分的に寄与する増殖因子ということである。最初、胃の上皮細胞株は直ぐに利用可能ではなかったが、腎臓の上皮細胞系(Karthaら、1992;Aithalら、1994;Lieskeら、1994)が使用された。分画した洞の粘膜細胞の抽出物を、これらの実験に使用した。ブタの幽門洞またはマウス幽門洞のいずれかから剥ぎ取った粘膜細胞を溶解させたときに、分画に続いて、プローブとして免疫ブロットを使用して、AMP−18抗原を、スクロース密度勾配による35S画分で回収した。このような高速での上清の画分は、細胞増殖についての研究のための出発材料として役立った。予期しないことに、これらの抽出物は、コンフルエントなサル腎上皮細胞(BSC−1細胞)において50%の増大を刺激したが、HeLa細胞にもWI−38線維芽細胞にも何の影響も与えなかった。BSC−1細胞の刺激は、至適濃度でアッセイした多様なポリペプチドマイトジェン(EGF、IGF−I、aFGF、bFGFおよびバソプレッシンが挙げられる)によって観察された刺激と少なくとも同程度有効であった。酸不溶性物質への[H]チミジン取り込みの測定によってDNA合成を評価した場合に、洞抽出物による同程度の増殖阻害が観察された。洞抽出物の生物学的活性は、65℃、5分間の加熱および、10kDaのMカットオフを有するメンブレン(大半のオリゴペプチドを除去し得る)を使用する透析を耐えた;この処理は、60〜70%のポリペプチド物質を取り除くが、免疫ブロットによってアッセイされるAMP−18を取って置く。より重要なことに、シグナルペプチド配列を含むヒト組換えプレAMP−18(pre AMP−18)(E.coliで発現させた)に対する2種の異なる抗血清のうちのいずれかを培養培地に添加した場合に、マウスまたはブタの洞抽出物によるBSC−1細胞の分裂促進性刺激は阻害された。免疫前血清(1:100〜1:800)は、細胞増殖に何の影響も与えず、洞抽出物の分裂促進効果も変化させなかった。これらの観察は、胃粘膜細胞のAMP−18が、このタンパク質を通常発現しない腎臓の上皮細胞に対して、強力なマイトジェンとして作用することを示唆する。
部分的に分画された洞抽出物中の増殖促進活性がAMP−18タンパク質によって媒介されるというさらなる証拠を得るために、マウス抽出物のアリコートをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した(天然タンパク質のN末端配列を決定するために以前に使用された方法)。このゲルを2mmのスライスに切断し、各々のスライスを、1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水中の3%アセトニトリルで抽出した。抽出物の上清を、分裂促進活性に関してアッセイした。この結果は、16〜19kDaの範囲のタンパク質を含む1つのスライスが増殖促進活性を保持したことを示した。明らかに、この増殖応答は、免疫によってブロックされたが、免疫前血清によってはブロックされなかった。このタンパク質の比較的低い沈降速度とともに考慮すると、これらの知見は、AMP−18が上皮細胞のマイトジェンであり、モノマーまたはおそらくホモタイプな(homotypic)ダイマーとして作用するという結論を支持する、さらなる証拠を提供する。このタンパク質の構造が、SDSゲル電気泳動の変性条件の後に、天然のコンフォメーションを容易に再獲得することができるようなものであることも含意する。
洞の増殖因子の活性と他のサイトカインとの相互作用を評価するために、その活性を試験し、上皮細胞培養物におけるEGFに付加的であるか否かを決定した。未処理のマウス洞抽出物(10μg/ml)、または加熱し、透析したブタ抽出物(10μg/ml)に添加したEGF(50ng/ml)は、有糸分裂誘発の付加的な刺激を示した(静止状態のレベルを超える細胞数に最大74%の増加(これまでBSC−1細胞アッセイで使用したあらゆる因子の中で、最大の刺激))。この観察は、AMP−18およびEGFが、異なる細胞表面レセプターに作用することによって、増殖を開始することを示唆する。AMP−18の増殖因子活性が、上皮の維持または回復において、他のオートクリン因子およびパラクリン因子と通常協働し得ることも含意する。EGFによる結果から鑑みて、AMP−18は、上皮細胞層の頂端の表面(すなわち、胃内腔表面)で分泌され、おそらくそこに作用するが、他の因子(一例として、EGFが役立ち得る)は基底面から作用する可能性がある。
組換えタンパク質の発現。E.coli.組換え構築物は、全長cDNA配列(これは、PT/CEBPベクター内にあり、標準的なベクターポリリンカーへの簡単な挿入を可能にする便利な制限酵素部位によって伸長される)の適切な領域に相補的な合成オリゴヌクレオチドを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって、一般的に操作される。細菌系でのAMPのオープンリーディングフレーム(ORF)の発現を使用する最初の実験において、発現ベクターPT/CEBPを使用した。このベクターは、ニッケル(Ni2+)−NTA樹脂(Qiagen)上での発現タンパク質の精製を容易にすることを意図する、N末端のHis6タグ(Jeonら、1994)を含んだ。宿主BL21(DE3)pLySにおけるこのベクター内の全長ヒトcDNAの発現は、変性条件下の電気泳動後に、ウサギにおける免疫原として使用し、特異的な高力価の抗体(このタンパク質の天然の構造および機能の分析のためには有用ではない)を取得するために適切である、不溶性タンパク質の良好な収量を与えた。この不溶性は、発現タンパク質における非天然N末端(疎水性のシグナルペプチドの上流にHis6タグを有する)の存在に起因する可能性が高い。疎水性のシグナルペプチド配列を含まないORFを発現するベクターを操作することもまた有用である。これらは、N末端またはC末端のHisタグを含む細菌発現ベクターおよびそれらを含まない細菌発現ベクターを使用して構築される。20アミノ酸のシグナルペプチドを欠き、His6タグを含むヒトAMP−18配列もまた細菌で発現させた。
Pichia pastoris。単純な真核生物のうち、出芽酵母P.pastorisは、機能的な組換えタンパク質の産生および分泌のための発現系として有用である(Romanosら、1992;Creggら、1993)。この系において、外来タンパク質の分泌は、それ自身のシグナルペプチドまたは適合性の高い酵母接合型αシグナルのいずれかを利用し得る。この生物は、AMP−18タンパク質を、正確にプロセシングおよび分泌し、そして少なくとも部分的に改変する。外来遺伝子の構成的かつ制御された発現のためのベクターをPichiaにおいて開発する(Searsら、1998)。ポリリンカークローン化部位に加えて、これらのベクターは、高発現の構成的なグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)プロモーターまたはメタノール制御性アルコールオキシダーゼプロモーター(AOX1)のいずれかを含む。後者は、通常の培養条件においてわずかな産物しか生成しないが、メタノールの存在下に試験されると、細胞のタンパク質のうち30%にも達するベクターの最大の発現を与える、極めて厳密なプロモーターである。哺乳動物および昆虫の代替物よりも優れている、酵母Pichiaが有する利点は、これがタンパク質を含まない培地において連続的に増殖され、それによって、発現タンパク質の精製を単純化し、そして血清または宿主の動物細胞に由来する無関係の生物活性をなくすことである。pIB4構築物(メタノール含有培地によって誘導可能)は、完全なヒトプレAMP−18cDNA配列を含む。
バキュロウイルス/昆虫細胞。代替的かつ、しばしば首尾よい、非哺乳動物の真核生物発現系は、昆虫細胞培養系において組換えバキュロウイルス(例えば、Autographa californica)を使用するものである。Pichiaと同様に、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)およびHis6タグ(Pharmingen)の両方を含む、便利なベクターの大きなレパートリーがこの系において利用可能である。Spodoptera frugiperda(Sf)細胞へのトランスフェクションが実行される。これらの細胞は、分泌されたタンパク質の精製に好ましいタンパク質を含まない培地にゆっくりと適合させることができる。内在性シグナルペプチドがこれらの細胞内で機能しない場合、クローン化部位の上流にウイルスgp67分泌シグナルを含むベクターを使用して、外来タンパク質の分泌を強いることもできる。組換えタンパク質は、総タンパク質のうちの0.1〜50%の範囲のレベルで発現され得る。ある程度のタンパク質改変が、酵母と比べて、この昆虫細胞系においてより好ましくあり得るが、これは、依然として哺乳動物系を再現し得ない。昆虫発現系は、Pichiaよりも幾分面倒であるが、哺乳動物細胞における発現を完全に代用するものではないようである。20アミノ酸のシグナルペプチドを欠き、His6タグを含むヒトAMP−18配列を、バキュロウイルスで発現させた。
哺乳動物細胞。他の真核生物において再現されない、免疫ブロット分析によって検出不能な改変が、哺乳動物細胞において生じ得る。原核生物系および単純な真核生物系ほどには便利ではないが、現在、哺乳動物細胞は、外来タンパク質の一過性発現および連続発現の両方のために頻繁に使用される。これらの系を使用して、数種の増殖因子が、かなりの量で発現および分泌されている。
プラスミドpcDNA3/ヒト腎臓293系:pcDNA3は、強力かつ構成的なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびSV40ポリAシグナル(Invitrogen)が隣接するポリリンカークローン化部位を含む。実験室では、60〜90%の一過性トランスフェクションレベルが達成できることを経験している。この目的のために、ヒトプレAMP cDNAクローンのPCR増幅を、開始コドンおよび天然のリボソーム結合部位(Kozak配列)ならびにpcDNA3への正しい配向性のための適切な制限酵素リンカーを含むオリゴヌクレオチドを使用して実行する。好ましい構築物は、強力な抗生物質ブラストサイジンSおよび耐性遺伝子を含むベクターを使用して、一過性アッセイにおいて同定された。安定な哺乳動物トランスフェクト体(transfectant)細胞株は、「1週間未満で」(Invitrogen)樹立することができる。利用可能なベクターはまた、構成的なCMVプロモーター、ポリリンカークローン化部位、選択的V5エピトープ/His6タグおよびSV40ポリ(A)シグナル(PcDNA6/V5−His)を含む。
変更(改変)形態のAMP−18の発現および分析:「野生型」AMP−18の産生のために効率的な発現系を考慮して、欠失または置換のいずれかを含む、一連の変異体タンパク質が生成され得、機能性ドメインの分析を可能にする。両親媒性のヘリックス、保存されたシステイン(C)残基および塩基性アミノ酸の対(doublet)(切断部位であり得る)は、魅力的な標的である。酵素アッセイほどには単純ではないが、有糸分裂誘発アッセイは、慣例的かつ反復可能であり、「変異体」を構築することと同時にこれらを特徴付けることを可能にする。ドミナントネガティブ(または、ポジティブ)「変異体」は、機能の単なる喪失を示す変異と同程度に有意である。なぜなら、これらは、可能性のある細胞レセプターを含む他の因子との相互作用を含意するからである。
発現されたgastrokineタンパク質および天然gastrokineタンパク質の生化学的および免疫親和性分画:一部のAMP−18の発現形態の場合に、この組換えタンパク質は、可溶性タンパク質の迅速な精製を可能にするペプチドタグを含む。このタンパク質の正常な機能を大幅に妨害しない場合、これらのタグの存在はまた、他の関連する高分子との相互作用の分析を可能にする。His6タグは、組換えタンパク質をNi−NTA樹脂ビーズ(Janknechtら、1991;Qiagen製のNi−NTA樹脂)に結合させることによって精製を可能にする。このタグ付きタンパク質は、大半の抗原−抗体複合体よりも大きな親和性で結合され、そして徹底的に洗浄され得、その後、このNi2+−ヒスチジンキレート化複合体が過剰なイミダゾールによって破壊され、精製タンパク質を放出する。GSTタグ付き組換えタンパク質は、グルタチオン−アガロース上で精製され、洗浄され、次に還元型グルタチオンによって溶出される(SmithおよびJohnson、1988)。全ての提案された発現系と同様に、各タンパク質調製物は、その増殖因子活性について最も初期の可能な段階で試験され得る。
特に、組織から天然タンパク質を単離する場合に、従来の分画手順を使用して、所望の純度を達成する。ブタの洞粘膜が、最初の遠心分離および熱処理プロトコル、続くサイズ排除カラム(BioGel P60が適切である)を使用する後者のための好ましい出発点であり、18kDaタンパク質が抽出物中でモノマーとして存在する可能性が最も高いという証拠を示す。HiTrapプロテインAによって精製された抗AMP抗体をCNBr活性化セファロース4B(Pharmacia)に架橋させることによって生成された免疫親和性マトリクスに、溶出剤をロードする。このマトリクスへリンカーを伸長させること(過去に有用であることが示されている(Aithalら、1994))、または、この抗体を固定化したプロテインAに架橋させることのいずれかによる免疫親和性マトリクスのさらなる改変は、助けになり得る。活性タンパク質はSDSゲル溶出によって回収することができるので、活性タンパク質はまた抗原−抗体複合体からも回収することができる。さらなる分画を、C8逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムによって達成することができる。最終工程は、N末端配列決定による正体の確認を含む、SDSゲル溶出技術の使用である。全てのこれらの工程において、免疫検出可能な(immunodetectable)AMP−18および増殖因子活性が共に分画されるはずである。
AMP−18関連の合成ペプチド:AMP−18は1つまたは複数の生物活性ペプチド類への前駆物質となりうる。合成ペプチドは、タンパク質の機能を探究するための都合のよい道筋を提供し、ペプチドはその機能面の模倣をし得るか、または拮抗し得る。ペプチドがタンパク質の活性を再現ないし抑止する場合、インタクトなタンパク質の機能ドメインの正体を提示するとともに、タグの付いた特異的なプローブを合成してタンパク質細胞の相互作用を探究する可能性を提供する。
そのペプチド類にD−アミノ酸が(正順または逆順で)含有可能であることは、生物学的機能を保持しながらも分解に対してペプチド類を安定化し得る。さらに、活性ペプチド類を合成する能力により、細胞受容体の性質、組織分布および数の研究を容易するタグを可能にする。こうしたタグにはペプチド配列に付加されたHis−6 ビオチンやヨウ化チロシン残基が含まれる(いくつかの生物活性ペプチド類ではC末端に天然に存在するチロシンを有する)。
ラクタム架橋により螺旋形態で固定され得る合成ペプチド(Houstonら、1996)は生物活性を促進し、ラクタム形成に適切な酸性および塩基性アミノ酸残基の組が少なくとも1つ、AMP−18の潜在的なヘリックス領域に既に存在する。
AMP−18および関連ペプチドと細胞との相互作用:細胞成長の評価:形質転換されていないサル腎臓上皮細胞株BSC−1と、他の上皮細胞株とを使用して成長への影響を評価した。全般的には、成長用に最小限の子牛血清(または胎児血清)で補充した成長培地においてプラスチックディッシュに密集するまで細胞が成長するよう、各株に関して条件を選択した(Lieskeら、1997)。BSC−1細胞は1%の子牛血清で、60mmディッシュあたり、10に密集した。成長分析の開始において、密集培養物の培地を、吸引し、最小血清を含む新鮮培地で置き換え、細胞生存率(BSC−1では0.01%)を維持した。AMP−18調製物が培地に加えられ、4日後にその細胞単層をすすぎ、トリプシンで剥がし、血球計算板を使用して細胞をカウントした。DNA合成を引き起こすAMP−18の能力の決定はH−チミジンの取り込みにより測定した(Toback、1980)。DNA合成分析を確実にするため、平坦にならした細胞のオートラジオグラムをカウントした(KarthaおよびToback、1985)。
タンパク質AMP−18は、洞粘膜において発現され、そして隣接する粘膜体(corpus mucosa)においてより少ない程度発現される。しかしながら、洞抽出物および活性な合成ペプチドの両方は、大半の単純な上皮細胞株の増殖を刺激する。AMP−18またはそのペプチドに対する天然の標的であり得る細胞とは別に、使用した主要な判断基準は、増殖制御(特に、細胞密度の制限)の判断基準であった。ヒト癌患者に由来する多くの癌化した胃の系統は、種々の供給源から利用可能であるが、これらのうちの大半は、増殖制御を示さない。例えば、Dr.Duane Smoot(Howard University College of Medicine)からの胃AGS腺癌細胞亜株(subline)は、接触阻害の程度がより大きく、AMP−18およびそれに由来するペプチドに良好に応答した。これらの細胞は、自然にはAMP−18を合成しない。非癌化ラットIEC腸上皮細胞(Dr.Mark Musch、Dept.Medicine、University of Chicagoによって提供された)に同様な応答が観察された;後者は、培養物において優れた上皮細胞の特徴を示す(Quaroniら、1979;Digassら、1998)。
粘膜炎の処置を評価するための生体モデル:モデル系に対するAMP−18由来のペプチドの効果を、Alvarezら(2003)に記載されるように実行した。この方法および実験の設計は、本明細書に要約される。
急性の放射線誘発性粘膜炎。40Gyの放射線の単回線量を施すことによって、ハムスターに口腔粘膜炎を誘発させた。0日目に、麻酔下(ケタミン[160mg/kg]およびキシラジン[8mg/kg]の腹腔内注射)、左の頬袋を裏返し、固定し、照射した。この間、動物の残りの部分を鉛の覆いで遮蔽した。3mm Alフィルター系(filtration system)により硬化させた(hardened)約21cmの焦点距離での160kV電位(18.75−ma)源を使用して、放射線を発生させた。電離放射線を、1.32Gy/分の速度で、左の頬袋に標的化した。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のAMP由来のペプチドを、毎日皮下注射によって0〜80mg/kgで投与した。この投与を、照射の5日前(−5日目)から開始、15日後(+15日目)まで続けた。コントロール群は、−5日目〜+15日目にビヒクル(PBS)を投薬した、照射された動物からなった。照射を施した日には、AMP77−97ペプチドもビヒクルも与えなかった。上記の投薬スケジュールを使用して、種々の量のAMPペプチドを放射線の投与の前後に投与し、ハムスターの頬袋でのこの粘膜炎の急性放射線誘発モデルにおけるAMP−18由来のペプチドのための最適な投薬スケジュールを規定した。
粘膜炎の評価:粘膜炎の進行を、両方のモデルに関して毎日モニタリングした。照射後6日目から開始して一日おきに、吸入麻酔を使用して動物を麻酔し、左の頬袋を裏返し、写真を撮った。この研究の臨床段階の結論において、フィルムを現像し、得られた写真を無作為に番号付けした。次に、2人の観察者により盲検方式でこれらをスコア付けした。0〜5のスコア付けシステムを使用して、以下の数字のスコアを頬の病変に適用した:0、正常な粘膜;1、紅斑および血管拡張;2、重度の紅斑および血管拡張、粘膜の斑(stippling)が減少している粘膜が離れた、裸になった領域の表層面のびらんを伴う;3、重度の紅斑、血管拡張、一つ以上の場所における潰瘍の形成。袋の粘膜の25%を含む、潰瘍の累積的な大きさ。偽膜形成が明らかである;4、重度の紅斑および血管拡張。袋の粘膜の約半分を含む、潰瘍の累積的な大きさ。粘膜の柔軟性の喪失;5、びまん性かつ広範な潰瘍形成。柔軟性の喪失。袋は、部分的にしか口から引き出すことができない;図5を参照のこと。報告したスコアは、2人の盲検観察者(blinded observer)による観察の平均を表す。このモデルにおいて、3のスコアは、臨床的に有意なNational Cancer InstituteまたはWHOのスコア3に一致する。各観察日(平均±SE)において処置群あたりのスコアを使用して、口腔粘膜炎(OM)の重症度を計算した。重症度スコアを使用して、結果は、3以上のスコアを有する日数の%としても表される。
ヒトAMP−18配列
ヒトAMP−18のアミノ酸配列
Figure 2012046547
アミノ酸77−97(LDALVKEKKLQGKGPGGPPPK)を、二重の下線で強調する。アミノ酸位置は、成熟タンパク質に対応する。最初の20アミノ酸はシグナルペプチドに対応し、一本の下線で示す。
ヒトAMP−18配列のcDNA配列(コード配列は44〜601)を以下に示す。
Figure 2012046547
(引用した文献)
以下の文献は、本明細書に開示される材料および方法に関連するか、または記載する程度について参考として援用される。
Figure 2012046547
Figure 2012046547

Claims (1)

  1. 明細書中に記載の発明。
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