片開きボトルは、片手持ちして片開き蓋を開くとそのまま直飲みできるように形成されており、不用意な蓋開きを防止するために片開き蓋を閉じ位置にロックし、片手持ちしている手の指でロックを解除して片開き蓋を開けられるようにしている。
このような片開きボトルとしては、従来、ボトル本体の片開き蓋側の端部に揺動自在に設けられて片開き蓋に係合するロック爪を先端に有するロック部材と、このロック部材と同一の揺動軸に揺動自在に取り付けられた基材と、この基材の表面側に取り付けられて上下方向にスライド可能な操作部との3部材で構成されたロック機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
上記操作部は裏面に係止突起を有し、上記基材は上下方向に延在して貫通するスリットを有し、また、上記ボトル本体の内部には、操作部がスライド範囲の上端に位置するときに係止突起に係止される被係止部が設けられている。操作部がスライド範囲の上端に位置してロック位置にあるとき、操作部がボトル本体側に押圧されても、係止突起が被係止部に係止して、操作部のボトル本体側への移動が規制される。これにより、基部及びロック部材の揺動が規制され、ロック爪と片開き蓋との係合が保たれて、片開き蓋のロックが保持される。一方、操作部が下方にスライド操作されてスライド範囲の下端のロック解除操作位置にあるとき、操作部がボトル本体側に押圧されるに伴い、操作部の係止突起が被係止部に阻止されることなくボトル本体側に移動する。これにより、基部及びロック部材が揺動してロック爪と片開き蓋との係合が解除され、片開き蓋のロックが解除される。その結果、片開き蓋の開閉軸に設けられたバネによって片開き蓋が開き方向に付勢され、片開き蓋が開放されるようになっている。
このように、特許文献1の片開きボトルは、操作部が下方にスライド操作されてロック状態が解除され、引き続いて、操作部がボトル本体側に押圧されることにより、片開き蓋が開放する。操作部は、操作容易のためロック位置において十分に外方に突出しているが、ロック解除操作位置におけるのと同様な突出状態になっている。
また、他のロック機構を備えた従来の片開きボトルとしては、片開き蓋の回動端外面に設けられた係合片と、ボトル本体の口栓部材の外面に設けられ、中間部が軸部材で軸支されて口栓部材の内外方向に揺動可能に取り付けられたシーソー式のロックボタンと、口栓部材の外周壁にスライド可能に設けられたストッパとで構成されたロック機構を備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
上記ロックボタンは、片開き蓋の係合片が係合可能な係合溝が上端に形成されており、このロックボタンの内側面には、係合溝を片開き蓋の係止片と係合する方向に付勢するスプリングが配置されている。上記ストッパは上端にストッパ片を有し、このストッパがスライド範囲の上端であるロック位置にあるときに、ストッパ片がロックボタンの下端の裏面と口栓部材の外周壁との間に挿入されて、ロックボタンのロック解除方向への動きが規制される。一方、ストッパが下方にスライド操作され、スライド範囲の下端であるロック解除操作位置に達すると、ストッパ片がロックボタンの下端の裏面と口栓部材の外周壁との間から退去する。この後、ロックボタンの下部の表面を押圧することにより、ロックボタンが回動して上端が片開き蓋から遠ざかり、ロックボタンの係合溝と片開き蓋の係合片との係合が解除されて片開き蓋が開放可能となる。
このように、特許文献2の片開きボトルは、ストッパ片が片開き蓋から遠ざかる方向にスライド操作されてロック状態が解除され、引き続いて、ストッパ片とは別体のロックボタンが押圧されることにより、片開き蓋が開放する。
しかしながら、特許文献1の片開きボトルは、操作部がロック解除操作位置にあるとき、この片開きボトルが転倒したり他のものに接触したりすると、外方に突出した操作部がボトル本体側に駆動されて、操作者の意図によらず片開き蓋が開放し、ボトル本体内の飲料の漏出を招くという問題がある。
また、片開き蓋のロックを解除する際、操作部をスライド操作してスライド範囲の下端に達したとき、このスライド操作の際に働いてしまう押圧力によって操作部が押圧されて、操作者の意図によらず片開き蓋が開放するという問題がある。詳しくは、操作部は、基部及びロック部材の揺動軸から遠ざかる方向にスライド操作され、揺動アーム長が長い位置でスライド操作が終了するので、このスライド操作の終了時の操作力により、操作者の意図によらず操作部が押圧駆動されて片開き蓋が開放してしまう。
また、このロック機構は3つの部材で構成されて部品点数が多いので、片開きボトルの製造コストの上昇を招く虞がある。
一方、特許文献2の片開きボトルは、2つの部材で構成されて部品点数が少ないものの、ストッパをロックボタンから遠ざかる方向にスライドさせてロック解除操作位置にした後、ロックボタンを押圧して片開き蓋を開放するので、ストッパとロックボタンとの互いに異なる部材を断続して操作する必要があり、操作性が悪いとう問題がある。
本発明は、少ない部品点数により、しかも、操作性を悪化することのない操作性の良好な片開きボトルを提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、本発明の片開きボトルは、ボトル本体と、ボトル本体の上端部片側を中心に開閉する片開き蓋と、片開き蓋を閉じ位置にロックし、かつロックを解除できるようにしたロック機構とを備えた片開きボトルであって、上記ロック機構は、片開き蓋を閉じ位置にロックするロック部材と、ロック部材のロック状態を保持するロック位置とロック部材のロック状態を解除操作するロック解除操作位置との間で操作されるロック解除部材とを有し、上記ロック解除部材は、ロック位置とロック解除位置との移動方向で見た端部に外方へ突出する操作部を有したことを特徴としている。
上記構成によれば、片開き蓋のロックを解除する際、ロック解除部材がロック位置とロック解除位置との移動方向で見た端部にて外方へ突出するだけの操作部の操作により、ロック位置からロック解除操作位置に移動操作され、このロック解除部材が設けられたロック部材がロック解除部材の応動によって駆動操作される。これにより、片開き蓋のロックが解除されて開放が可能となる。このように、ロック解除部材の移動操作に連続してロック部材の駆動操作を行って、片開き蓋を開放することができるので、操作性が良好な片開きボトルが得られる。
また、ロック解除部材がロック解除操作位置にある状態で転倒したり他のものに接触しても、ロック解除部材は、ロック位置における突出量よりもロック解除操作位置における突出量の方が小さくすることで、ロック解除部材がロック部材と共に駆動されることを防止できる。したがって、操作者の意図によらず片開き蓋が開放する不都合を防止できる。なお、操作者による片開き蓋のロック解除操作は、ロック解除の意図を持ってロック解除部材に操作力を集中させるように行われることから、ロック解除部材の外方への突出量が小さくても特に不便になることは無い。
また、ロック解除部材とロック部材との2つの部材でロック機構を構成できるので、片開きボトルの部品点数を少なくできて製造コストの削減を図ることができる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック解除部材は外方に突出する操作部を有し、このロック解除部材の操作部が、ロック位置における外方への突出量よりも、ロック解除操作位置における外方への突出量の方が小さい。
上記実施形態によれば、ロック解除部材がロック解除操作位置にあるとき、片開きボトルが転倒したり他のものに接触して操作部が押圧されても、片開き蓋の開放を防止できて、操作者の意図しない誤開放を防止できる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック解除部材を囲む保護部材を備え、上記ロック解除部材は、ロック位置における保護部材の表面からの突出量よりも、ロック解除操作位置における保護部材の表面からの突出量の方が小さい。
上記実施形態によれば、ロック解除部材がロック解除操作位置にある状態で転倒したり他のものに接触しても、ロック解除部材がロック部材と共に駆動される不都合を防止できて、操作者が意図しない片開き蓋の開放を防止できる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック解除部材は、ロック位置におけるロック部材の表面からの突出量よりも、ロック解除操作位置におけるロック部材の表面からの突出量の方が小さい。
上記実施形態によれば、ロック解除部材がロック解除操作位置にある状態で転倒したり他のものに接触しても、ロック解除部材がロック部材と共に駆動される不都合を防止できて、操作者が意図しない片開き蓋の開放を防止できる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック解除部材のロック位置は、片開き蓋から遠い位置であり、上記ロック解除部材のロック解除操作位置は、片開き蓋に近い位置である。
上記実施形態によれば、片開き蓋のロックを解除する際、ロック解除部材がロック位置からロック解除操作位置に移動操作されるに伴って、ロック解除部材が片開き蓋に近づく。したがって、ロック部材の揺動に伴って片開き蓋が開放する場合、ロック部材の揺動アーム長が短くなる方向にロック解除部材を駆動してロック解除を行うことになる。したがって、ロック解除の際にロック部材の揺動アーム長が長くなる方向にロック解除部材を駆動する従来と比較して、ロック解除部材を駆動する力によってロック部材が操作者の意図によらず開放駆動される不都合を防止できる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック部材は、ボトル本体に揺動自在に枢着され、ロック爪を上端に有すると共に、ロック解除部材を案内する案内部を下部に有し、上記ロック解除部材は、ロック部材の案内部に案内されて上下方向に摺動する摺動部を上部に有すると共に、外方に突出する操作部を下端に有し、上記片開き蓋は、ロック部材のロック爪が係合する係合部を有する。
上記実施形態によれば、片開き蓋のロックを解除する際、ロック解除部材の下端に突出して設けられた操作部が操作され、このロック解除部材がロック部材の案内部に沿って摺動駆動されてロック解除操作位置に達する。このロック解除操作位置のロック解除部材が押圧され、このロック解除部材と共にロック部材が揺動駆動されて、ロック部材のロック爪と片開き蓋の係合部との係合が解除されて、片開き蓋が開放可能となる。
一実施形態の片開きボトルは、上記ロック解除部材は、ロック位置にあるときにボトル本体に係止可能な係止部を下端に有し、ロック解除部材がロック位置にあるとき、ロック解除部材の係止部とボトル本体の被係止部との間の距離が、ロック部材のロック爪と片開き蓋の係合部との間の係合距離よりも小さい。
上記実施形態によれば、ロック解除部材がロック位置にあるとき、ロック解除部材の操作部が押圧されても、ロック解除部材の係止部がボトル本体の被係止部に係止することにより、ロック部材のロック爪と片開き蓋の係合部との係合状態が保たれる。したがって、片開き蓋のロック状態が確実に保持される。
一実施形態の片開きボトルは、上記片開き蓋が閉じ位置にロックされるとき、ロック部材及び片開き蓋の少なくとも一方が弾性変形する。
上記実施形態によれば、開いた片開き蓋が閉じる際、ロック位置にあるロック解除部材の係止部がボトル本体の被係止部に係止した状態の下、ロック部材及び片開き蓋の少なくとも一方が弾性変形するので、ロック部材のロック爪と片開き蓋の係合部とを係合させることができる。
上述のように、本発明の片開きボトルによれば、ロック解除部材がロック位置とロック解除位置との移動方向で見た端部にて外方へ突出するだけの操作部の操作により、ロック解除部材の外方への突出量が、ロック位置におけるよりもロック解除操作位置における方が小さいので、ロック解除部材がロック解除操作位置にある状態で片開きボトルが転倒したり他のものに接触しても、ロック解除部材がロック部材と共に駆動されることを防止できて、操作者の意図によらず片開き蓋が開放する不都合を防止できる。また、ロック解除部材とロック部材との2つの部材でロック機構を構成できるので、片開きボトルの部品点数を少なくできて製造コストの削減を図ることができる。
以下、本発明の片開きボトルを図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の片開きボトルを示す断面図である。この片開きボトルは、ステンレス製の内壁及び外壁の間に真空断熱空間2を有するボトル本体1と、このボトル本体1の口部1aの外壁に形成された雄ねじ3に螺合する雌ねじを有し、シールパッキン9を介してボトル本体1に装着された合成樹脂製の肩部材5と、この肩部材5の背面側に回動軸6を介して回動自在に取り付けられた合成樹脂製の片開き蓋7と、この肩部材5の正面側に設けられ、片開き蓋7を閉じ位置にロック及びロック解除するように形成されたロック機構8とを備えている。
上記ボトル本体1は、片手持ちできる程度にスリム化した胴部1bを有し、この胴部1bの上部は、口部1aに装着された肩部材5の下端に隣接して胴部1bよりもやや小径の首部1cに形成されている。ボトル本体1の胴部1bや首部1cを片手持ちして、片手持ちしている手の指によるロック機構8の操作や、これに伴う片開き蓋7の開き操作や、片開き蓋7の開放の後に後述する飲み口14による直飲み動作を行い易い形状になっている。
肩部材5は、ボトル本体1の口部1aを覆う概略円筒形状を有し、正面側にロック機構8を収容する膨出部が形成されている。この膨出部の最も突出した部分に、後述するロック部材11及びロック解除部材12の周りを取り囲む保護部材51が一体形成されている。肩部材5の天面には、平面視において中心よりも正面側に偏った位置に、筒状の飲み口14が突出して形成されている。
片開き蓋7は、下端が開口した概ねドーム形状を有し、下端が肩部材5の側面の上端に嵌合するように形成されている。片開き蓋7の天井部の内側面には、片開き蓋7が閉じたときに飲み口14の端面に密着するシールパッキン16が設けられている。この片開き蓋7を肩部材5に取り付ける回動軸6まわりには、捻りバネ131が設けられて、片開き蓋7を開き方向に付勢している。また、片開き蓋7が閉じられたときに、飲み口14に密着するシールパッキン16の復元力によって片開き蓋7が開き方向に付勢されるようになっている。これにより、ボトル本体1を片手持ちしながら親指でロック機構8を解除すると片開き蓋7が回動軸6及びシールパッキン16の付勢力によって容易に開き、そのままボトル本体1を傾けて肩部材5の飲み口14から直飲みが可能になっている。
上記ロック機構8は、片開き蓋7の係合溝71に係止して片開き蓋7を閉じ位置にロックするロック部材11と、ロック部材11によるロックを解除するロック解除部材12とを備える。図1はロック解除部材12がロック解除操作位置にある様子を示している。
図2(a)及び(b)は、ロック機構8を抜き出して示した断面図である。図3(a)はロック部材の正面図であり、図3(b)はロック部材の側面図であり、図3(c)はロック部材の背面図であり、図3(d)は図3(b)のA−A線における断面図である。図4(a)はロック解除部材の正面図であり、図4(b)はロック解除部材の側面図であり、図4(c)はロック解除部材の背面図であり、図4(d)は図4(a)のB−B線における断面図である。
ロック機構8のロック部材11は、図3(a)の正面図に示すように、半円状の上部と矩形の下部とが一体に形成されてなる。ロック部材11の上部の裏側面にはロック爪111が形成されており、ロック部材11の下部の厚み方向の中央には、ロック解除部材12を案内する案内部112が形成されている。この案内部112は、表面側の表板部113と裏面側の裏板部114との間に形成され、この表板部113と裏板部114との間には、上部の幅方向中央から下方に延びる被挟部115が設けられている。この被挟部115の両側面には、図3(d)の正断面図に示すように、上側のロック解除ノッチ115aと下側のロックノッチ115bとが設けられている。この案内部112の表面側を画定する表板部113は、厚みが上側に向かって厚くなるように形成されている。これにより、案内部112は、側面視において、表板部113の表面に対して傾斜して形成されている。ロック部材11の表面側の板部113の下端表面には、凹部11bが形成されている。この凹部11bは、ロック解除部材12がロック解除操作位置にあるときに、操作部124と隣り合う位置に形成されている。ロック解除操作位置にあるロック解除部材12の操作部124は、後に詳述するように、ロック部材11の表面から突出する突出量が小さく形成していることから、上記凹部11bを設けることによって指の係り代を大きくして、突出量が小さくても操作部124を容易に操作できるようにしている。ロック部材11の上部の下側部分には、揺動軸が挿入される貫通穴11cが幅方向に延在して形成されている。
ロック機構8のロック解除部材12は、図4(a)の正面図に示すように、正面視において矩形の下部板121を有し、この下部板121の上側には、互いに向き合う側に屈曲した鉤部122aを先端に有する2つの挟棒122と、この挟棒122の両外側に配置されて裏面側に突出する2つのガイド板123が一体に形成されている。また、下部板121の下端には、表面側に突出する操作部124が設けられている。この操作部124の下端には、裏面側に屈曲した係止部124aが形成されている。このロック解除部材12は、図4(b)の側面図及び図4(d)の断面図に示すように、側面視において縦長の並行四辺形に形成されている。
上記ロック解除部材12は、図2(a)及び(b)に示すように、ロック部材11の案内部112内に上部が収容されて、ロック部材11に摺動自在に取り付けられる。詳しくは、ロック部材11の案内部112内にロック解除部材12の上部が挿入され、このロック解除部材12の挟棒122がロック部材11の案内部112内の被挟部115の両側を挟むと共に、ロック解除部材12のガイド板123の内側面がロック部材11の裏板部114の両側面を挟んだ状態に組み付けられる。上記挟棒122は弾性を有し、2つの挟棒122で被挟部115を挟んだ状態で弾性変形をして、互いの鉤部122aの先端から被挟部115の側面に押圧力を与えるようになっている。この押圧力により、鉤部122aを各ノッチ115a,115b内に押し込んで嵌合させるようになっている。ロック解除部材12は、上部がロック部材11の案内部112内をスライド可能になっており、ロック解除部材12が上側のロック解除操作位置にあるときに、挟棒122の鉤部122aが被挟部115のロック解除ノッチ115aに嵌合する。また、ロック解除部材12が下側のロック位置にあるときに、挟棒122の鉤部122aが被挟部115のロックノッチ115bに嵌合する。これにより、ロック解除部材12が、ロック部材11に対して、ロック解除操作位置とロック位置に夫々保持されるようになっている。また、ロック解除部材12は、ロック部材11の表面に対して傾斜した案内部112に沿ってスライドする。これにより、操作部124が保護部材51の表面から突出する突出量は、下端のロック位置における突出量よりも、上端のロック解除操作位置における突出量の方が小さくなる。さらに、操作部124がロック部材11の表面から突出する突出量もまた、下端のロック位置における突出量よりも、上端のロック解除操作位置における突出量の方が小さくなる。
上記ロック解除部材12及びロック部材11で構成されるロック機構8は、肩部材5の膨出部内に収容されている。図5(a)及び(b)は、肩部材5の膨出部に設けられたロック機構8を正面側から見た様子を示す正面図である。肩部材5の膨出部には、正面視において概ね矩形状の収容室52が肩部材5の上端縁に接するように形成されている。収容室52内には、ロック部材11が貫通穴11cを貫通する揺動軸で揺動自在に取り付けられている。収容室52の奥側壁には圧縮バネ53の一端が固定されており、この圧縮バネ53の先端がロック部材11の裏側面に当接して、ロック爪111がボトル本体1側に向う方向にロック部材11を圧縮バネ53で付勢している。収容室52内には、収容室52の下側面に段部を形成してなる被係止部54が設けられている。この被係止部54の上端には、正面側に突出する突起54aが設けられている。この被係止部54に、ロック位置にあるロック解除部材12の係止部124aが当接して、ロック解除部材12及びロック部材11の解除動作を規制するようになっている。上記被係止部54の突起54aには、ロック解除部材12の係止部124aが係止することにより、不理解者による無理な押圧操作を受けてもロック解除操作に至らないようになっている。すなわち、ロック位置にあるロック解除部材12の操作部124は、通常の押圧操作ではロック解除部材12の係止部124aが被係止部54に当接することによってロック解除操作はされないが、幼児等の不理解者によって無理に押圧されたり、意図せず他のものによって無理に押圧されたりすると、上方へのロック解除側の力がかかる場合がある。このような場合においても、ロック解除部材12の係止部124aが被係止部54の突起54aに係止するので、ロック解除部材12が意図せずロック解除操作位置に移動することを防止できる。
肩部材5の収容室52内に取り付けられたロック部材11は、上部が肩部材5の上端から突出している。肩部材5の上端に嵌合する片開き蓋7には、正面視において概ね半円形の蓋側収容室72が片開き蓋7の下端縁に接して形成されており、この蓋側収容室72内に係合溝71が形成されている。片開き蓋7が閉じると、収容室52の上端に蓋側収容室72が連なり、蓋側収容室72内にロック部材11の上部が嵌合すると共に、蓋側収容室72内の係合溝71にロック部材11のロック爪111が係合するようになっている。
以下、ロック機構による片開き蓋7のロック動作とロック解除動作について説明する。図1は、ロック解除部材12がロック解除操作位置にあって片開き蓋7をロックした状態を示す一方、図2は、ロック解除部材12がロック位置にあって片開き蓋7をロックした状態を示している。
まず、開放状態の片開き蓋7が、回動軸6回りに回動されて閉じ動作をして、片開き蓋7の下端が肩部材5の上端に嵌合する。この片開き蓋7の下端が肩部材5の上端に嵌合する直前、片開き蓋7の下端にロック部材11のロック爪111の上端が接触する。このとき、ロック部材11に取り付けられたロック解除部材12がロック位置にある場合、ロック解除部材12の下端の係止部124aが肩部材5の収容室52内の被係止部54に係止して、ロック部材11の揺動が規制される。この状態で片開き蓋7に閉じ側の力が操作者から与えられることにより、互いに接触したロック部材11と片開き蓋7が弾性変形して片開き蓋7の下端がロック部材11のロック爪111の上端を乗り越えて、片開き蓋7の係合溝71内にロック部材11のロック爪111が係合する。これにより、片開き蓋7が閉じた状態にロックされる。したがって、ロック解除部材12をバネで付勢すること等によってロック位置に自動復帰するように構成しても、片開き蓋7を閉じたときにロック機構8が損傷するような問題は起きない。
なお、ロック部材11は片開き蓋7よりも剛性が高く形成されていることが耐久性確保のために好ましい。また、閉じ動作の際に片開き蓋7の変形量がロック部材11の変形量よりも大きくなるように、開き蓋7の係合溝71の周囲から弾性変形しやすい肉厚関係等としておくのが好ましい。
また、片開き蓋7を閉じる際、ロック解除部材12はロック解除操作位置にあることが多く、この場合、片開き蓋7の下端がロック部材11のロック爪111の上端に接触した後、ロック部材11が圧縮バネ53の付勢力に抗して外側に揺動退去して、片開き蓋7が更に回動して閉じ状態になる。
片開き蓋7が閉じたとき、ロック解除部材12をロック位置にすることにより、片開き蓋7の開放が防止される。すなわち、ロック解除部材12の操作部124やロック部材11の凹部11bに操作者が押圧力を与えても、図2(b)に示すように、ロック位置にあるロック解除部材12の係止部124aが肩部材5の収容室52内の被係止部54に係止して、ロック部材11の揺動が規制される。この係止部124aが被係止部54に係止するとき、ロック部材11のロック爪111は片開き蓋7の係合溝71に係合したままである。したがって、操作部124が、誤操作や転倒や他のものに接触することによって押圧されても、片開き蓋7のロック状態が解除することが無い。また、操作部124が強く押圧されること等によってロック解除部材12の係止部124aが上側向きの力を受けても、この係止部124aは被係止部54の上端の突起54aに係止するので、係止部124aが被係止部54から脱落することを防止できる。したがって、片開き蓋7のロック状態を安定して保持できる。
ロック状態の片開き蓋7を開くときは、操作部124が操作者によって上方に押し上げられ、ロック解除部材12の挟棒122の鉤部122aが、ロック部材11の被挟部115のロック解除ノッチ115aに係合する。これにより、図5(b)に示すように、操作部124がロック部材11の下端に近接した状態で保持される。続いて、操作部124が操作によって押圧されて、ロック解除部材12及びロック部材11が圧縮バネ53の付勢力に抗して揺動軸回りに揺動する。これにより、ロック部材11のロック爪111と片開き蓋7の係合溝71との係合が解除され、捻りバネの付勢力によって片開き蓋7が駆動されて開放する。
本実施形態の片開きボトルは、ロック解除部材12をロック位置からロック解除操作位置に移動させる場合、操作者の意図しない片開き蓋7の開放を防止できる。詳しくは、操作部124を操作してロック解除部材12をロック位置からロック解除操作位置に移動させる際、操作部124を上方にスライドさせるので、ロック部材11の揺動軸回りの揺動アーム長が短くなる。従来は、ロック部材の揺動アームが長くなる方向に操作部を操作していたので、スライド操作を行う力によってロック部材が押圧され、片開き蓋が意図せず開放していた。これに対して、本実施形態の片開きボトルは、揺動アーム長が短くなり、かつ、操作部124の突出量が小さくなる方向にロック解除部材12をスライド操作してロック解除を行うので、ロック解除部材12の操作部124に与える力でロック部材11を揺動操作することを防止できる。したがって、単にロック解除部材12によるロック解除のみを行うときに、意図せず片開き蓋7を開放してしまう不都合を防止できる。
このように、ロック解除のためにロック解除部材12を片開き蓋7に近づく方向に駆動することは、従来のロック解除における操作と反対向きの操作であって、直感的な解除操作とは反対向きの操作である。したがって、本実施形態の片開きボトルは、ロック解除には、直感に反して、明確な意図をもってロック解除部材12を片開き蓋7側に駆動操作する必要がある。しかも、ロック解除部材12をロック部材11の揺動アーム長が短くなるように駆動する。したがって、意図せずロック部材11を揺動操作して片開き蓋7を意図せず開放させてしまう不都合を防止できるのである。
さらに、本実施形態の片開きボトルは、ロック解除部材12がロック解除操作位置にある場合においても、転倒等による意図しない片開き蓋7の開放を防止できる。すなわち、ロック解除部材12がロック解除操作位置にあるとき、図1に示すように、保護部材51の表面から操作部124が外方に突出する量が、ロック解除部材12がロック位置にあるときよりも小さい。したがって、片開きボトルの転倒や、他のものへの接触により、突出した操作部124が押圧されても、ロック部材11と片開き蓋7との係合が解除されることがない。したがって、片開き蓋7の意図しない開放が防止されて、ボトル本体1内の飲料等が漏出する不都合を防止できる。
また、本実施形態の片開きボトルは、片開き蓋7のロック状態を容易に把握することができる。すなわち、ロック解除部材12の操作部124よりも上側部分であって、ロック部材11内に出没する部分の表面を、ロック部材11と異なる色や、例えば蛍光色のような視認性の高い色に着色する。これにより、着色部分がロック時には外部に現れる一方、ロック解除時には現れないようにできる。これにより、着色部分が現れているか否かによって、片開き蓋7がロック状態であるか否かを容易に認識できる。
また、本実施形態では、ロック解除部材12をロック部材11に対して傾斜方向に案内することによって、操作部124の突出量をロック位置におけるよりもロック解除操作位置における方が小さく形成しているが、他の方法によって操作部124の保護部材51の表面からの突出量を調節してもよい。例えば、保護部材51の表面形状を、操作部124のロック解除操作位置に隣接する部分をロック位置に隣接する部分よりも突出させることにより、操作部124の突出量をロック位置におけるよりもロック解除操作位置における方が小さく形成することも可能である。このようなロック機構として、図7及び図8に示すようなものが考えられる。
図7は、ロック解除部材312の脚部312dを、ロック部材311に形成したスライド窓341にスライド自在に嵌め合わせてロック機構308を構成している。肩部材305側には、脚部312dが係止するストッパ324を設けている。ロック解除部材312は、操作者の指が操作部312aに掛けられて、実線のロック位置から矢印Aの方向にスライドされて破線のロック解除操作位置に操作され、さらに、ロック解除操作位置から矢印Bの方向に押圧されて片開き蓋307のロック解除に至る。ロック解除部材312のロック位置では、脚部312dがストッパ324の端面に係止することによってロック解除操作が阻止される。
このロック機構308は、保護部材351の表面の形状を、ロック位置にあるロック解除部材312の操作部312aの部分よりも、ロック解除操作位置にあるロック解除部材312の操作部312aの部分の方が張り出した形状にしている。これにより、保護部材351の表面から操作部312aが突出する量について、ロック位置における突出量よりも、ロック解除操作位置における突出量が小さくなるようにしている。これにより、ロック解除操作位置にあるロック解除部材312の操作部312aが、片開きボトルの転倒や他のものの接触等によって押圧されて操作者が意図しない片開き蓋307の開放を防止できる。なお、図7において、342はロック解除部材312とロック部材311との間に設けられ、ロック解除操作から開放されたロック解除部材312を初期位置に戻す引っ張りバネであり、311aはロック部材311の係合部であり、307bは片開き蓋307の被係合部であり、321はロック部材311が片開き蓋307と係合する側にロック部材311を付勢する圧縮バネであり、323はロック部材311の揺動軸である。
一方、図8は、ロック解除部材412の左右両側の面に突設した角軸412bを、肩部材405側に形成された鉤型のガイド溝422にスライド自在に嵌め合わせてロック機構408を構成している。ガイド溝422の縦方向部分の奥側の面が、角軸412bが係止するストッパ面424である。ロック解除部材412は、操作者の指が操作部412aに掛けられて、実線のロック位置から矢印Aの方向にスライドされて破線のロック解除操作位置に操作され、さらに、ロック解除操作位置から矢印Bの方向に押圧されて片開き蓋407のロック解除に至る。ロック解除部材412のロック位置では、角軸412bがストッパ面424に係止することによってロック解除操作が阻止される。
このロック機構408は、保護部材451の表面の形状を、ロック位置にあるロック解除部材412の操作部412aの部分よりも、ロック解除操作位置にあるロック解除部材412の操作部412aの部分の方が張り出した形状にしている。これにより、保護部材451の表面から操作部412aが突出する量について、ロック位置における突出量よりも、ロック解除操作位置における突出量が小さくなるようにしている。これにより、ロック解除操作位置にあるロック解除部材412の操作部412aが、片開きボトルの転倒や他のものの接触等によって押圧されて操作者が意図しない片開き蓋407の開放を防止できる。なお、図8において、452はロック解除部材412と肩部材405の収容室の底部との間に設けられ、ロック解除操作から開放されたロック解除部材412を初期位置に戻す圧縮バネであり、411aはロック部材の係合部であり、407bは片開き蓋407の被係合部であり、421はロック部材411が片開き蓋407と係合する側にロック部材411を付勢する圧縮バネであり、423はロック部材411の揺動軸である。
ところで、本実施形態の片開きボトルは、ボトル本体1内に低温の飲料が収容されたとき、効果的に保冷を行うと共に、結露水の発生を防止するように構成されている。図6(a)は、肩部材5の内部をボトル本体1側から見た様子を示す底面図であり、図6(b)は、肩部材5に取り付けられる内蓋56を示す3面図である。この内蓋56は、図1及び図6(a)に示すように、肩部材5の天面の内側に、飲み口14よりも背面側の領域に亘って取り付けられている。内蓋56の外縁から僅かに内側の位置に、この内蓋56の外縁に沿う凸条56aが設けられている。肩部材5の天面の内側には、内蓋56の輪郭と相似形の嵌合凹部5aが形成されており、この嵌合凹部5aに内蓋56の凸条56aを嵌合し、この内蓋56の縁を嵌合凹部5aの内側面に超音波溶接で固定している。これにより、肩部材5の天面の嵌合凹部5aと内蓋56との間に、密封された空気層を形成している。
従来の片開きボトルでは、図9に示すように、ボトル本体101の口部101aに樹脂製の飲み口部材102を取り付け、この飲み口部材102の下部の外側を囲むと共に飲み口102aを上面から突出させる樹脂製の肩部材105を、ボトル本体101の上部に取り付けている。この肩部材105の天面に、飲み口102aを覆う片開き蓋107を軸着している。肩部材105は、ボトル本体101の上部に嵌合された樹脂製の環状縁部材108に螺着されているのみであるので、飲み口部材102の表面に結露した水が、肩部材105と環状縁部材108との螺合部を通過して外部に漏出するという不都合が生じていた。
これに対して、本実施形態の片開きボトルは、肩部材5の嵌合凹部5aと内蓋56との間に空気層を形成しているので、ボトル本体1内に低温飲料を収容しても、上記空気層の断熱効果によって肩部材5の表面に結露が生じることを防止できる。また、この空気層は、肩部材5の嵌合凹部5aに嵌合した内蓋56を超音波溶接で固定して形成しているので、安定して密封状態を保持することができる。したがって、長期にわたって安定して結露防止効果を奏することができる。また、空気層内への水等の浸入を防止できるので、侵入した水等を拭き取る手間が不要である。