JP2012039967A - 耐熱性セロビオヒドロラーゼ及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列において16箇所の変異の種類の内から選択される1又は2以上のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を備える、セロビオヒドロラーゼ活性を有するタンパク質。
【選択図】なし
Description
配列番号2で表されるアミノ酸配列は、P. chrysosporiumのセロビオヒドロラーゼIIの触媒ドメインのアミノ酸配列をコードしている(Appl. Environ.Microbaial. 60(12),4387-4393(1994))。P. chrysosporiumのセロビオヒドロラーゼIIは、配列番号2で表される触媒ドメインのN末端にリンカーを介してセルロース結合ドメインを有している。
本明細書の開示によれば、本タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドは、化学合成法や各種PCR法等により取得することができる。なお、ポリヌクレオチドは、DNA(二重鎖及び一重鎖のいずれであってもよい)、RNA、DNA/RNAハイブリット等、いずれの形態であってもよい。上記した表1に含まれるアミノ酸変異の1種又は2種以上を有する各種改変体のアミノ酸配列をコードするDNAや上記した表2に記載の各改変体のアミノ酸配列をコードするDNAが挙げられる。
本発明のDNA構築物は、本タンパク質をコードするDNAを含んでいる。より具体的には、上記した表1に含まれるアミノ酸変異の1種又は2種以上を有する各種改変体のアミノ酸配列をコードするDNAや上記した表2に記載の各変異の組み合わせや表3に示す改変体のアミノ酸配列をコードするDNAを含んでいる。本発明のDNA構築物は、主として適当な宿主細胞の形質転換を意図した発現ベクターとしての形態を採ることができる。形質転換の手法や宿主細胞における当該ポリヌクレオチドの保持形態(染色体に導入する形態や染色体外に保持する形態等)に応じて、上記コード領域以外の構成要素が適宜決定される。また、DNA構築物の形態は、使用形態に応じて様々な形態を採ることができる。例えば、DNA断片の形態を採ることができるほか、プラスミドやコスミドなどの適当なベクターの形態を採ることもできる。
本発明の形質転換細胞の一態様は、本タンパク質を発現する形質転換細胞であり、上記した本発明のDNA構築物で適当な宿主細胞を形質転換することによって得ることができる。例えば、本タンパク質のみを細胞表層に保持し又は細胞外に分泌する形態で発現する形質転換細胞は、それ自体、本タンパク質として利用できる。また、こうした形質転換細胞を培養して得られる培養物は、本タンパク質の好ましい取得源として利用できる。
本明細書の開示によれば、本タンパク質と、さらに、他のセルラーゼ、たとえば、他のセロビオヒドロラーゼ及びエンドグルカナーゼからなる群から選択される1種又は2種以上を組み合わせの組成物が提供される。本組成物によれば、本タンパク質の優れたセロビオヒドロラーゼ活性により高いセルロース分解活性を呈することができる。本組成物に含まれる本タンパク質以外のセルラーゼとしては、特に限定しないで、公知のセルラーゼから適宜選択される。例えば、Phanerochaete chrysosporium由来でない他起源のエンドグルカナーゼが挙げられる。他起源由来のエンドグルカナーゼとしては、公知の各種エンドグルカナーゼが挙げられ、これらを単独であるいは2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。たとえば、GHF5に属するエンドグルカナーゼが挙げられる。GHF5に分類されるエンドグルカナーゼのなかでも、好ましくは、Trichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼ、Aspergillus oryzae由来のエンドグルカナーゼ及びAspergillus niger由来のエンドグルカナーゼを好ましく用いることができる。より好ましくはTrichoderma reesei由来のエンドグルカナーゼAspergillus niger由来のエンドグルカナーゼである。GHF5に分類されるエンドグルカナーゼは、こうしたエンドグルカナーゼから選択される1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、本セルラーゼ組成物は、β−グルコシダーゼを含んでいてもよい。
本明細書に開示されるタンパク質複合体は、本タンパク質と、本タンパク質をコヘシン−ドックリン結合によりコヘシンタンパク質上に備えている。ある種の細菌が、複数種類のセルラーゼを保持するタンパク質構造体を自己細胞表層に構築することが知られており、当該タンパク質構造体がセルロソームとして知られている。セルロソームは、セルラーゼが、スキャホールディンタンパク質に保持されて構成されており、セルロソームとスキャホールディンタンパク質とは、それぞれが備えるドックリンドメインとコヘシンドメインとの間の結合、すなわち、コヘシン−ドッケリン結合により結合されている。公知のセルロソームにおけるドックリンドメイン及びコヘシンドメインのアミノ酸配列は既にいくつか開示されている。コヘシン−ドックリン結合は、非共有結合性であって、そのアミノ酸配列に依存した水素結合等に基づくと考えられる。したがって、こうした開示に従い、ドックリンドメインを付加した本タンパク質と1又は2以上のコヘシンドメインを備えるスキャホールディンタンパク質(コヘシンタンパク質という。)とにより、人工的なセルロソーム、すなわち、タンパク質複合体を構築することができる。
本明細書に開示されるセルロースの分解産物の生産方法は、セルロースを含む材料と本タンパク質を含む1種又は2種以上のセルラーゼを接触させる工程を備える、方法が提供される。本方法によれば、耐熱性が向上したセロビオヒドロラーゼである本タンパク質を用いることにより、より高温で効率的にセルロースを分解できる。セルロース系の分解のための温度としては、例えば、50℃以上70℃以下であり、より好ましくは50℃以上65℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上60℃以下である。
本明細書の開示によれば、有用物質を生産する方法であって、セルロースを含む材料と本タンパク質を含む1種又は2種以上のセルラーゼとを接触させる工程と、前記接触工程で得られた前記セルロースの分解産物を含む炭素源の存在下、微生物培養する工程を備える、方法が提供される。本生産方法によれば、本タンパク質を用い、向上したセロビオヒドロラーゼ活性がセルロースの分解に寄与するため、効率的にセルロースを分解することができる。本生産方法では、セルロースの分解工程と、微生物の培養工程を独立して実施できる。したがって、セルロースの分解工程は、本セルラーゼ組成物や本タンパク質複合体を、酵素製剤として用いてセルロースを分解し、その後、このセルロース分解産物を培養工程に供給して発酵してもよい。
P. chrysosporium由来のセロビオヒドロラーゼII(PcCBH2)は、触媒ドメインとセルロース結合ドメイン(CBD)がリンカーでつながった構造を持つ。以下の実施例では、触媒ドメイン内のアミノ酸置換による耐熱化を試みた。すなわち、5種類の耐熱カビ(Hypocrea koningii、Acremonium cellulolyticus Y-94、Agaricus bisporus、Talaromyces emersonii、Lentinula edodes L54)由来のセロビオヒドラーゼII及びPcCBH2の触媒ドメインのアミノ酸配列をホモロジー検索した。上記ホモロジー検索後のアミノ酸配列の各部位で、耐熱カビ由来セルラーゼ間での相同性が高く、かつPcCBH2とは異なるアミノ酸である部位を探した。その結果、上記条件を満たす45部位の51アミノ酸置換を耐熱性候補変異として選定した。それぞれの変異候補の部位とそのアミノ酸置換を図1に示す。
耐熱化への初期配列としてPcCBH2変異体5−6(配列番号5、配列番号6)を用いた。変異体5−6は、配列番号4で表されるアミノ酸配列において、そのCBDのみに、アミノ酸置換(S22P置換(塩基配列上の変異:T64C))及び同義置換(塩基配列上の変異:G9A)をそれぞれ各一つ備えており、試験管内合成において野生型PcCBH2よりもタンパク質合成量が高い変異体であることがわかっている。耐熱性に対する上記耐熱化候補変異の寄与を評価するため、変異体5−6に変異候補(アミノ酸置換)を1つまたは2つ含む変異体(以後、耐熱化候補変異体と呼ぶ)を以下の表4に示すように合計43個作成することとした。これらの変異体に相当するアミノ酸配列をそれぞれコードするオリゴマーDNA及びその直近の相補鎖オリゴマーDNAをプライマーとして用いてインバースPCR法でプラスミド鎖を増幅し、5’−末端をリン酸化後、ライゲーションによるプラスミドの環状化、大腸菌への形質転換を経て取得した。各変異体の変異導入は、シーケンスを行い確認した。なお、以下の実施例においては、これら43個の変異位置は、PcCBH2の触媒ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)の最初のアミノ酸(S)を1としたときの変異位置で示す。
43種の変異体を試験管内で合成した。試験管内合成の鋳型として、(1)で取得したDNAに対してプライマー(5’- ATCTCGATCCCGCGAAATTAATAC-3’(配列番号7)、 5’- TCCGG ATATA GTTCC TCCTT TCAG-3’(配列番号8))を用いて増幅させたPCR産物を、PCR purification kit (Qiagen)で精製したものを用いた。なお、このPCR産物には、T7プロモーター配列、開始コドン、遺伝子配列、終始コドン、ターミネーター配列が含まれている。
合成した変異体を、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)で100倍に希釈、49,50,51,52,53及び54℃の各温度で2時間保温する熱処理後、その残存活性をリン酸膨潤セルロース(PSC)分解(反応条件:40℃、16時間)後の遠心上精の還元糖量をTZアッセイ法(Journal of Biochemical and Biophysical Methods, 11 (1985) 109-115)を用いて評価した。残存活性は熱処理前の活性との比で表した。またセルラーゼの耐熱温度は上記残存活性が50%となるときの温度と定義した。
作製した43個すべての変異体につき、上記の耐熱性評価を行った。結果を図2に示す。図2に示すように、初期配列の変異体5−6の耐熱温度は50.3℃であったのに対し、耐熱性変異候補を含む変異体の耐熱温度は48〜51.5℃の間でばらついていた。また、熱処理前のセロビオヒドロラーゼ活性を評価したところ、図3に示すように、初期変異体5−6と比較して著しく減少している変異体はなかった。すなわち耐熱化候補のアミノ酸に置換しても、セルラーゼ活性への影響は見られないことが示された。
以上の耐熱性評価の結果、13個の耐熱性が向上した変異体が得られた。その耐熱性を向上させた変異を有利変異と呼ぶこととした。今回に実験で得られた有利変異を表6及び図4に示す。図4に示すように、これらの有利変異は、いずれも、52℃環境下で2時間保温後において、氷冷保持条件と比較して1.3〜7倍残存活性を向上させるものであった。
有利変異を一つずつ親配列に加算したDNAを合成し、当該DNAを鋳型として、各変異体を実施例1と同様にして試験管内合成して、既に実施した方法に準じて耐熱性評価を行ったところ、最も耐熱性が高かった有利変異M−18による変異体第1世代とした。なお、以下に、世代毎の変異体における変異の組み合わせを示す。
実施例2で得た変異体T259H(M1−18)に有利変異Q298S/F299L(M1−20)を導入した変異体(W1820)を実施例1と同様にして合成し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を図5に示す。図5に示すように、有利変異を蓄積したW1820の耐熱性はM1−18及びM1−20と比較して向上していた。この変異体を第2世代として選択した。
実施例3で得られた変異体W18+20に有利変異(M1−1,−2,−4,−12)をそれぞれ導入し、その変異体を実施例1と同様にして合成し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を図6に示す。図6に示すように、有利変異T47I/S51Q(M1−4)を導入した変異体(Tri4)の耐熱性が最も向上していた。この変異体を第3世代として選択した。
実施例4で得られた有利変異が3個導入された変異体Tri4に4つの有利変異(M1−1,−11,−12,−14,−15)をそれぞれ導入した変異体を、実施例1と同様にして合成し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を図7に示す。図7に示すように、有利変異M176I(M1−15)を導入した変異体(Quard15)の耐熱性が最も向上していた。この変異体を第4世代として選択した。
実施例5で得られた有利変異が4個導入された変異体Quard15に4つの有利変異(M1−1,−11,−12,−27)をそれぞれ導入し、その変異体を、実施例1と同様にして合成し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を図8に示す。図8に示すように、耐熱評価した。その結果、有利変異A158E(M1−12)を導入した変異体(Quint12)の耐熱性が最も向上していた。この変異体を第5世代として選択した。
実施例6で得られた有利変異が5個導入された変異体Quint12に耐熱性への寄与度が高かった有利変異Q224R/A226S(M1−37)とその他の3つの有利変異(M1−1,−21,−25)をそれぞれ導入した変異体を、実施例1と同様にして合成し、実施例2と同様にして耐熱性を評価した。結果を図9に示す。図9に示すように、Quint12にQ224R/A226S及び有利変異S100T(M1−25)を導入した変異体(Sept25)の耐熱性が最も向上していた。この変異体を第6世代として選択した。
加算していない有利変異(M1−1,−2,−11,−21,−27)を変異体Sept25にばらつきを持って導入後、スクリーニングにより最も高い耐熱性を有する変異体の取得を試みた。具体的には、QuickChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて変異を導入し、その変異体92個をクローニングした。実施例1と同様にして試験管内合成した変異体を56℃にて2時間の熱処理後、熱処理前に対する残存活性を指標にスクリーニングを行った。結果を図10に示す。図10に示すように、熱処理に対する残存活性がSept25と比較して約5倍向上した変異体が得られた。
上記スクリーニングで、残存活性が高かった上位3個の変異体について、実施例2と同様に耐熱性を評価した。結果を図11に示す。図11に示すように、評価した3変異体は共にSept25と比較して耐熱温度が1℃向上していた。
上記で得られた耐熱化変異体のアミノ酸配列を塩基配列解析行うことで解析した。その結果、残りの有利変異(M1−1,−2,−11,−21,−27)がすべて入っていることが分かった。この得られたクローンを耐熱化実験での最終変異体(Mall4と呼ぶ)こととした。
これまでに得られた各世代の耐熱変異体につき、耐熱試験を行った。結果を図12に示す。図12に示すように、その結果、有利変異を加えるに従い耐熱温度が向上していることが確認できた。初期変異体5−6の耐熱温度が49.9℃であるのに対し、耐熱化変異体Sept25は4.4℃向上した54.3℃、さらに最終変異体Mall4では5.4℃向上した54.3℃であった。
野生型PcCBH2、変異体5−6及び耐熱化変異体Sept25を用いて、50℃環境下での耐久性を評価した。具体的には、各セルラーゼを試験管内合成後、50mM酢酸緩衝液pH5.0で100倍に希釈後、50℃で保温した。0,3,6,9,24,32及び52時間後にサンプリングし、その遠心上精の還元糖量を測定した。結果を図13に示す。図13に示すように、野生型PcCBH2が24時間でほぼ失活しているのに対し、Sept25は50℃環境下52時間後でも90%の活性が保たれていた。
各耐熱化変異体の親配列を用いて、耐熱温度の理論値と実測値を比較した。耐熱温度の理論値は、各有利変異の耐熱性向上への寄与度(有利変異体の耐熱温度と変異体5−6の耐熱温度との差)をそれぞれ算出し、耐熱化変異体が持つ有利変異の寄与度の合計を変異体5−6の耐熱温度(49.9℃)に足すことで算出した。結果を図14に示す。図14に示すように、耐熱温度の理論値と実測値では直線性が見られた。この結果は、今回のPcCBH2耐熱化実験において加算性がほぼ完全に成り立っていたことを示す。
野生型PcCBH2と、上記で得られた耐熱化変異体Sept25,Mall4を酵母発現ベクターpRS436に導入し、S. cerevisiae BJ5465株でセルラーゼを分泌発現させた。精製は、硫酸アンモニウムを含む緩衝液(1M(NH4)3SO4,0.1M Tris pH7.0)で平衡化したアビセルカラムに酵素を吸着させ、上記緩衝液で洗浄後、ミリQ水で溶出した。
酵母発現精製変異体につき、SDS−PAGEにかけて、CBB染色したバンドの色の濃さを蛍光イメージアナライザー(FLA9000、富士フィルム株式会社)で検出、画像解析ソフトであるMulti Gauge(富士フィルム株式会社)で定量解析を行った。
酵母発現精製セルラーゼの比活性を評価した。各セルラーゼの量は定量解析結果に基づき10ngに調整し、0.5%PSC100μlで40℃にて3時間反応させた。遠心上精の還元糖量をTZアッセイ法で評価した。結果を図15に示す。図15に示すように、精製セルラーゼの比活性は野生型と比較して、Sept25は約90%、Mall4はほぼ同じであった。
実施例13で取得した酵母で発現させた変異体の耐熱性評価を行った。各サンプルを同じタンパク質濃度(10ng/50μl)に50mM酢酸緩衝液pH5.0で希釈し、実施例2に準じた方法で耐熱評価を行った。なお、チューブへの非特異的吸着を防ぐために終濃度0.01%となるように界面活性剤TritonX−100を酢酸緩衝液に添加し用いた。なお、同時に、実施例1に示す方法で試験管内合成したWT、Sept25、Mall4の耐熱性も併せて評価した。耐熱性は49,51,53,55,57,59℃で2時間保温後の残存活性で評価した。結果を図16に示す。図16に示すように、酵母発現変異体でもWT、Sept25、Mall4の順に耐熱性が向上し、試験管内合成での結果と同様に導入した耐熱性有利変異が多く持つほど耐熱性が向上していた。また、酵母発現変異体は、試験管内合成の変異体よりもいずれも耐熱温度が向上した。すなわち、酵母発現変異体のMall4の耐熱温度はWTと比較して、5.7℃耐熱温度が向上し、58.1℃であった。試験管内合成酵素と酵母発現酵素との耐熱温度の差は、酵母発現によるタンパク質への糖鎖修飾による耐熱性向上の効果によるものであると考えられた。
野生型PcCBH2、耐熱化変異体Sept25及びMall4を用いて、50℃環境下での耐久性を評価した。具体的には、各タンパク質を同じタンパク質濃度(10ng/50ul)に50mM酢酸緩衝液pH5.0で希釈後、50℃で保温。0,6,24,40,50,72時間後にサンプリングし、その遠心上精の還元糖量を測定した。結果を図17に示す。図17に示すように、野生型PcCBH2が72時間後でほぼ失活しているのに対し、耐熱化変異体(Sept25及びMall4)は、50℃環境下72時間後でも90%以上の活性が保たれていた。
酵母発現変異体のpH依存性を評価した。各タンパク質(野生型PcCBH2、Sept25、Mall4)を0.5mM酢酸緩衝液pH5.0で同じタンパク質濃度(10ng/50μl)に希釈したものを用いた。pH3から9に25mMリン酸クエン酸緩衝液で調整した1%PSCに各タンパク質を同量加え、40℃で16時間分解反応させた後、遠心上精の還元糖量でTZアッセイ法にて評価した。結果を図18に示す。図18に示すように、耐熱化変異体も野生型PcCBH2と同じ挙動を示し、pH4及び5をピークとしてなだらかに相対活性は落ちていた。
酵母発現変異体のエタノール濃度に対する依存性を評価した。各タンパク質(野生型PcCBH2、Sept25、Mall4)を50mM酢酸緩衝液pH5.0でセルラーゼ濃度(10ng/50ul)に希釈後、エタノール濃度を0,2,5,10%に調整した各0.8%PSCに同量加え、40℃で16時間分解反応させ、遠心上精の還元糖量をTZアッセイ法にて評価した。結果を図19に示す。図19に示すように、耐熱化変異体も野生型PcCBH2と同じ挙動を示し、エタノール濃度の増加とともにセルラーゼ活性は減少していた。
酵母発現変異体の温度依存性を評価した。各タンパク質(野生型PcCBH2およびMall4)を50mM酢酸緩衝液pH5.0でセルラーゼ濃度(10ng/50μl)に希釈、50mM酢酸緩衝液pH5.0で100倍希釈後同量の1%PSCと混合し、25℃、30℃,35℃,40℃,45℃,50℃,55℃,60℃,65℃及び70℃で0,1,2,3及び5時間反応させた。分解活性の評価はそれぞれの遠心上精の還元糖量で行った。なお至適温度の評価は、経時変化の傾きが直線性に保たれている、2時間後のデータを用いた。結果を図20に示す。図20に示すように、高温側(55〜70℃)では耐熱化変異体Mall4は野生型PcCBH2よりも相対活性が向上していた。一方低温(25〜50℃)では、Mall4の相対活性は野生型PcCBH2とほぼ同じであった。
野生型PcCBH2は市販酵素セルクラストへの添加により、単体での分解活性以上の効果を上げる、すなわち相乗効果を示すことが知られている。そこで耐熱性PcCBH2変異体Mall4においてもセルクラストへの添加効果を調べた。酵母発現させて精製した野生型PcCBH2及びMall4を、単独及び種々の比率で混合し、アビセルを基質として(最終濃度0.25%)40℃で16時間分解反応を行った後、遠心上精の還元糖量で評価した。結果を図21に示す。図21の上段に野生型PcCBH2の評価結果を示し、同下段にMall4変異体の評価結果を示す。各グラフの上辺にPcCBH2の添加量を示し、下辺にセルクラストの添加量を示す。セルクラスト及びPcCBH2の単独の活性をそれぞれダイヤ及び四角で表し、相加予測値を×で表し、実測された相乗効果を三角で表す。
耐熱性変異体Mall4のCBD部位を削除した変異体を作製した。当該変異体は、pET23bのNdeI/HindIIIに当該変異体をコードするDNAを挿入したプラスミドをテンプレートに、2種類のオリゴマー配列(5’-GGATCTGCGGTCACGACCACCTCCGTT -3’(配列番号9), 5’- CATATGTATATCTCCTTCTTAAAGT-3’(配列番号10)をプライマーとしてインバースPCRを行った。取得したPCR産物につき、アガロースゲル電気泳動、ゲル染色にて目的バンドを取り出し、ゲル中のDNAをキット(Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-up System、Promega)を用いて抽出した。抽出したDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(New England BioLabs)で両5’- 末端をリン酸化後、ライゲーションキット(DNA Ligation kit、Takara)を用いてライゲーション反応をさせた。ライゲーション産物を大腸菌DH5α株に導入し、その形質転換体を培養後、プラスミド抽出精製キット(QIAprep Spin Miniprep Kit、Qiagen)で目的のDNA断片を含むプラスミドを取り出した。CBD部位の欠失は、シーケンスにより確認した。
次いで、無細胞合成法により変異体タンパク質を取得した。すなわち、試験管内合成の鋳型として、作製したプラスミドに対して2本のプライマー(5’- ATCTC GATCC CGCGA AATTA ATAC-3’(配列番号7)、 5’- TCCGGATATAGTTCCTCCTTTCAG-3’(配列番号8)で増幅、PCR purification kit (Qiagen)で精製したPCR産物を使用した。なおこのPCR産物には、T7プロモーター配列、開始コドン、遺伝子配列、終始コドン、ターミネーター配列が含まれている。
pET23bのNdeI/HindIIIにファネロケーテ由来セロビオヒドラーゼ遺伝子(配列番号3)を挿入したプラスミドpET23b_PcCBH2wtをテンプレートに、2種類のオリゴマー配列(5’-GGATCTGCGGTCACGACCACCTCCGTT -3’(配列番号9), 5’- CATATGTATATCTCCTTCTTAAAGT-3’(配列番号10))をプライマーとしてインバースPCRを行った。取得したPCR産物につき、アガロースゲル電気泳動、ゲル染色にて目的バンドを取り出し、ゲル中のDNAをキット(Wizard(R) SV Gel and PCR Clean-up System、Promega)を用いて抽出した。抽出したDNA断片をポリヌクレオチドキナーゼ(New England BioLabs)で両5’- 末端をリン酸化後、ライゲーションキット(DNA Ligation kit、Takara)を用いてライゲーション反応をさせた。ライゲーション産物を大腸菌DH5α株に導入し、その形質転換体を培養後、プラスミド抽出精製キット(QIAprep Spin Miniprep Kit、Qiagen)で目的ノDNA断片を含むプラスミドを取り出した。CBD部位の欠失は、シーケンスにより確認した。
野生型および耐熱化変異体Mall4のCBD部位をトリコデルマ・ハージャナム(Trichoderma harsianum)由来エンドグルカナーゼ(EGII)のCBDに交換した変異体を作製した。これら2種類の変異体を、それぞれThCBD1-PcCD(W)、ThCBD1-Mall4(W)と標記する。
Claims (18)
- セロビオヒドロラーゼ活性を有するタンパク質であって、
配列番号2で表されるアミノ酸配列において以下に示すアミノ酸置換の表から選択される1又は2以上のアミノ酸置換に相当するアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を備える、タンパク質。
- 前記アミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において以下の表の各欄に示すアミノ酸置換に相当するアミノ酸置換の組み合わせを有するアミノ酸配列から選択される、請求項1に記載のタンパク質。
- 請求項1又は2に記載のタンパク質を発現するように遺伝子組換えされた真核細胞の形質転換細胞によって生産された請求項1又は2に記載のタンパク質。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNA。
- 請求項4に記載のDNAを含む発現用DNA構築物。
- 請求項5記載のDNA構築物によって形質転換された細胞。
- 請求項1又は2に記載のタンパク質を表層提示又は細胞外分泌する、請求項6に記載の細胞。
- 真核微生物である、請求項6又は7に記載の細胞。
- 前記真核微生物は、非セルラーゼ生産微生物である、請求項8記載の細胞。
- 酵母である、請求項8又は9に記載の細胞。
- 麹菌である、請求項8又は9に記載の細胞。
- 前記真核微生物は、セルラーゼ生産微生物である、請求項8記載の細胞。
- 前記セルラーゼ生産微生物は、Trichoderma reeseiである、請求項12に記載の細胞。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むセルラーゼ組成物。
- セルロースの分解産物の生産方法であって、
セルロースを含む材料と上記タンパク質を含む1種又は2種以上のセルラーゼとを接触させる工程を含む、生産方法。 - 有用物質の生産方法であって、
セルロースを含む炭素源を、上記タンパク質を含む2種以上のセルラーゼの存在下、微生物を培養する工程を含む、有用物質の生産方法。 - 前記微生物は、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質をその細胞外に分泌又は細胞表層に提示する、請求項に記載の生産方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含む、タンパク質複合体。
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