JP2012038976A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】量子カスケード構造を有する半導体発光素子において、光学遷移ダイポールモーメントを大きくし、利得を大きくする。
【解決手段】量子カスケードレーザ素子は、量子井戸層およびバリア層が交互に積層された多重量子井戸構造を有し、活性領域および注入領域からなる複数の単位構造が積層方向に配置された量子カスケード構造部を備える。活性領域は、3層の量子井戸層16a〜16cを含む。該3層の量子井戸層16a〜16cのうち中央に位置する量子井戸層16bは、他の2層の量子井戸層16a,16cより薄い。
【選択図】図4

Description

本発明は、半導体発光素子に関するものである。
波長が3μmより長い赤外光は、ガス分析等に用いられる分光分析システムや、赤外イメージングシステム、光通信システム等に応用できる。このような長波長の赤外光を半導体素子によって得る為に、従来より様々な工夫がなされている。
その工夫の一つに、量子カスケード構造を有する発光素子がある。この発光素子は、量子井戸構造におけるサブバンド間の電子の遷移によって光を発生させるしくみの発光素子であり、量子井戸構造を有する活性領域が多段にカスケード結合されて成る。このような発光素子によれば、高効率、高出力且つ長波長の発光素子を実現できる(例えば、特許文献1を参照)。
特許第3338228号公報
量子カスケード構造を有する発光素子では、量子井戸構造をそれぞれ含む注入領域(緩和領域とも呼ばれる)と活性領域とからなる単位構造が多数(例えば数十周期)繰り返されている。このような発光素子は、伝導帯において次に述べる3準位レーザ動作を実現する。まず、注入領域から活性領域の上位準位へトンネリングにより電子が注入される。この電子は、活性領域の上位準位から下位準位に遷移する。このとき、遷移エネルギーに相当する波長の光が放出される。下位準位に遷移した電子は、短い緩和時間でもって基底準位に非発光遷移する。これにより、活性領域において反転分布が実現される。基底準位に緩和した電子は、所定の電界によって次段の注入領域の上位準位へ移動する。以降、同様の動作を例えば数十周期にわたって繰り返すことにより、レーザ発振に必要な利得が得られる。
図5は、従来の量子カスケード構造の一例として、3QW(Quantum Well)構造を有する活性領域の伝導帯バンド構造を示す図である。図5において、縦軸は電子のエネルギーを表し、横軸は厚さ方向の位置を表している。また、実線Gaは活性領域の伝導帯を示しており、実線Gb〜Gdは、それぞれ電子の基底準位、下位準位、及び上位準位のエネルギーを基準として上下方向に波動関数の振幅を示している。なお、図5において、印加電界は80kV/cmである。また、注入領域の図示を省略している。
この図に示されるように、活性領域は、3つの量子井戸層101a〜101cと、バリア層102a及び102bとを有している。これらの層は、量子井戸層101a、バリア層102a、量子井戸層101b、バリア層102b、及び量子井戸層101cの順で積層されている。これらの層の構成材料および厚さは以下の通りである。
量子井戸層101a:GaInAs、1.0nm
バリア層102a:AlInAs、2.0nm
量子井戸層101b:GaInAs、5.1nm
バリア層102b:AlInAs、1.9nm
及び量子井戸層101c:GaInAs、3.9nm
また、上位準位と下位準位との間の遷移エネルギー差により定まる発光波長は5μmであり、下位準位と基底準位とのエネルギー差は33meVである。
電子は、注入領域(図の左側)からトンネリング作用によって量子井戸層101aに注入される。実線Gdで示されるように、上位準位の波動関数は、主に量子井戸層101aから量子井戸層101bにかけて広がっている。そして、主に量子井戸層101bの上位準位から下位準位への電子の遷移(図中の矢印A3)によって、光が発生する(図中の矢印A4)。
また、各量子井戸層101a〜101cおよび各バリア層102a及び102bの組成および厚さは、下位準位と基底準位との間のエネルギー差が縦光学(LO:Longitudinal Optical)フォノンエネルギーとほぼ一致するように設計されている。従って、下位準位の電子は、LOフォノン共鳴によって短い緩和時間でもって基底準位に緩和する。これにより、レーザ発振に必要な反転分布が形成される。
ここで、量子井戸層101bにおける下位準位の波動関数の振幅形状が偶関数的である場合、光学遷移の選択則に基づき上位準位の波動関数は奇関数的であることが望ましい。図5に示されるように、従来の活性領域においては、上位準位の波動関数は奇関数的ではあるものの、該波動関数が量子井戸層101aへ拡がっているので、量子井戸層101bにおける上位準位の波動関数の振幅の重なりが比較的小さくなってしまう。その結果、光学遷移のダイポールモーメントが小さくなるので、利得が小さくなり、閾値電流が大きくなるという問題がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、量子カスケード構造を有する半導体発光素子において、光学遷移ダイポールモーメントを大きくし、利得を大きくすることを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明による半導体発光素子は、量子井戸層およびバリア層が交互に積層された多重量子井戸構造を有し、活性領域および注入領域からなる複数の単位構造が積層方向に配置された量子カスケード構造部を備え、活性領域が3層の量子井戸層を含み、該3層の量子井戸層のうち中央に位置する量子井戸層が、他の2層の量子井戸層より薄いことを特徴とする。
この半導体発光素子によれば、3層の量子井戸層のうち中央に位置する量子井戸層が他の2層の量子井戸層より薄いことによって、伝導帯における上位準位の波動関数の形状は、活性領域の厚さ方向における中心面を基準にしてほぼ上下対称な形状(すなわち偶関数的形状)に固定される。従って、活性領域全体における波動関数の振幅が、安定な偶奇性(この場合は偶関数的形状)を有することができる。これにより、光学遷移ダイポールモーメントが印加電界によらず安定する。また、下位準位の波動関数の振幅が奇関数形状となるので、光学遷移ダイポールモーメントを大きくすることができる。以上のことから、本発明に係る半導体発光素子によれば、光学遷移ダイポールモーメントを大きくし、利得を大きくすることができる。
なお、本発明において、波動関数の振幅形状が偶関数的であるとは、活性領域の厚さ方向において、量子井戸層の中心面を基準として波動関数の振幅形状が上下対称に近い形状であることを意味する。また、波動関数の振幅形状が奇関数的であるとは、活性領域の厚さ方向において、量子井戸層の中心面から或る距離Zだけ離れた位置での波動関数の振幅と、距離−Zだけ離れた位置での波動関数の振幅との和が、中心面における波動関数の振幅の値に近いことを意味する。
つまり、量子井戸層の中心面を原点として、波動関数の振幅をΨ(z)とすると、波動関数の振幅形状が偶関数的とは、Ψ(z)=Ψ(−z)であり、奇関数的とは、Ψ(z)=−Ψ(−z)であることを意味する。
また、上述した半導体発光素子においては、3層の量子井戸層が、互いに結合した波動関数を有することを特徴としてもよい。これにより、波動関数の振幅および上位準位、下位準位のエネルギーを調整して、より大きな光学遷移ダイポールモーメントを得ることができる。
また、上述した半導体発光素子においては、他の2層の量子井戸層の厚さが互いに異なってもよい。
また、上述した半導体発光素子においては、中央に位置する量子井戸層の厚さが0.5nm以上1.5nm以下であることが好ましい。
本発明によれば、量子カスケード構造を有する半導体発光素子において、光学遷移ダイポールモーメントを大きくし、利得を大きくすることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る量子カスケードレーザ素子の構造を示す断面図である。 図2は、量子カスケードレーザ素子が備える量子カスケード構造部の構造を示す断面図である。 図3は、一つの単位構造における、伝導帯のバンド構造を示す図である。 図4は、活性領域の伝導帯バンド構造を拡大して示す図である。 図5は、従来の量子カスケード構造の一例として、3QW(Quantum Well)構造を有する活性領域の伝導帯バンド構造を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体発光素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る量子カスケードレーザ素子10の構造を示す断面図である。また、図2は、量子カスケードレーザ素子10が備える量子カスケード構造部12の構造を示す断面図である。図1及び図2は、量子カスケードレーザ素子10のレーザ共振方向に対して垂直な断面を示している。本実施形態の量子カスケードレーザ素子10は、波長が3μmより長い中赤外領域ないし遠赤外領域のレーザ光を出力する素子であり、ガス分析などの分光システム、赤外イメージングシステム、あるいは空間光通信に用いられるものである。
図1に示されるように、量子カスケードレーザ素子10は、量子カスケード構造部12に加えて、基板22、下部クラッド層24、上部クラッド層26、コンタクト層28、アノード電極30及びカソード電極32を備える。
基板22は主面22aを有する。本実施形態の基板22は第1導電型のIII−V族化合物半導体からなり、一実施例では基板22はn型InPからなる。基板22のキャリア濃度は例えば2×1017cm−3〜7×1017cm−3である。
下部クラッド層24は、基板22上に設けられている。下部クラッド層24のバンドギャップは後述する量子カスケード構造部12のバンドギャップより大きい。下部クラッド層24は第1導電型のIII−V族化合物半導体からなり、一実施例では下部クラッド層24はn型InPからなる。下部クラッド層24のキャリア濃度は例えば2×1017cm−3〜7×1017cm−3であり、下部クラッド層24の厚さは例えば1μm〜2μmである。下部クラッド層24上には、量子カスケード構造部12が設けられる。
上部クラッド層26は、量子カスケード構造部12上に設けられている。上部クラッド層26のバンドギャップは後述する量子カスケード構造部12のバンドギャップより大きい。上部クラッド層26は第1導電型のIII−V族化合物半導体からなり、一実施例では上部クラッド層26はn型InPからなる。上部クラッド層26のキャリア濃度は例えば2×1017cm−3〜7×1017cm−3であり、上部クラッド層26の厚さは例えば1μm〜2μmである。
コンタクト層28は、上部クラッド層26上に設けられている。コンタクト層28は高濃度の第1導電型III−V族化合物半導体からなり、一実施例ではコンタクト層28はn型InGaAsからなる。
アノード電極30は、コンタクト層28上に設けられ、コンタクト層28とオーミック接触を成している。カソード電極32は、基板22の裏面22b上に設けられ、基板22とオーミック接触を成している。アノード電極30及びカソード電極32は、量子カスケード構造部12に電界を印加すると共に電流を供給するための電極である。アノード電極30は、例えばTi/Pt/Auを含んで構成される。カソード電極32は、例えばAuGeを含んで構成される。
ここで、量子カスケード構造部12の内部構成について詳細に説明する。図2に示されるように、量子カスケード構造部12は、複数の単位構造14を有する。複数の単位構造14は、積層方向に並んで配置されており、隣り合う単位構造14同士が互いに接している。各単位構造14は、量子井戸層およびバリア層が交互に積層された多重量子井戸構造を有する。また、各単位構造14は、一つの活性領域16と、一つの注入領域18とから成る。活性領域16及び注入領域18は層状に構成され、上記積層方向において互いに積層されている。単位構造14の数は、例えば数十であり、好適には20〜40であり、一実施例では30である。
図3は、一つの単位構造14における、伝導帯のバンド構造を示す図である。図3において、縦軸はエネルギー値(eV)を示し、横軸は厚さ方向位置(nm)を示している。上述したように、一つの単位構造14は、一つの活性領域16と、一つの注入領域18とから成る。なお、図3において、注入領域18のバンド構造は省略されている。
活性領域16は、3層の量子井戸層16a、16b及び16cを含む。また、活性領域16は、2層のバリア層16d及び16eを含む。これらの層は、量子井戸層16a、バリア層16d、量子井戸層16b、バリア層16e、及び量子井戸層16cの順で積層されている。
量子井戸層16a〜16cのバンドギャップは、バリア層16d及び16eのバンドギャップより小さい。また、3層の量子井戸層16a〜16cのうち中央に位置する量子井戸層16bは、他の2層の量子井戸層16a及び16bより薄い。好適には、量子井戸層16bの厚さは0.5nm以上1.5nm以下である。一実施例では、これらの層16a〜16eの構成材料および厚さは以下の通りである。
量子井戸層16a:GaInAs、4.2nm
バリア層16d:AlInAs、1.2nm
量子井戸層16b:GaInAs、0.9nm
バリア層16e:AlInAs、1.2nm
及び量子井戸層16c:GaInAs、3.4nm
なお、このように、中央に位置する量子井戸層16bを除く他の2層の量子井戸層16a,16cの厚さは互いに異なっていてもよい。
注入領域18は、量子井戸層とバリア層とが交互に積層された多重量子井戸構造によって好適に構成される。注入領域18の量子井戸層は例えばGaInAsから成り、注入領域18のバリア層は例えばAlInAsから成る。なお、活性領域16及び注入領域18における量子井戸層(Gax1In1−x1As)、バリア層(Alx2In1−x2As)の組成比x1及びx2は、InPとの格子整合系ではx1=0.468、x2=0.476が好適値であり、歪み補償系ではx1=0.3〜0.6、x2=0.2〜0.7が好適値である。
図4は、活性領域16の伝導帯バンド構造を拡大して示す図である。図4において、縦軸はエネルギー準位を表し、横軸は厚さ方向の位置を表している。また、実線G1は活性領域の伝導帯と禁止帯との境界を示しており、実線G2〜G4は、それぞれ電子の基底準位、下位準位、及び上位準位の波動関数の振幅を示している。なお、図4において、印加電界は80kV/cmである。また、上位準位(G4)と下位準位(G3)との間の遷移エネルギー差により定まる発光波長は5μmであり、下位準位(G3)と基底準位(G2)とのエネルギー差ΔEは33meVである。
電子は、注入領域18(図の左側)からトンネリング作用によって量子井戸層16aに注入される。そして、主に量子井戸層16bの上位準位から下位準位への電子の遷移(図中の矢印A1)によって、光が発生する(図中の矢印A2)。
本実施形態においては、実線G3及びG4に示されるように、3層の量子井戸層16a〜16cが、互いに結合した波動関数(上位準位の波動関数および下位準位の波動関数)を有する。そして、上位準位(G4)の波動関数の形状が、活性領域16の厚さ方向における中心面(図中の一点鎖線B)を基準にしてほぼ上下対称(図では左右対称)な形状、すなわち偶関数的形状に固定されている。これは、3層の量子井戸層16a〜16cのうち中央に位置する量子井戸層16bが他の2層の量子井戸層16a,16cより薄いことに起因する。従って、活性領域16全体における波動関数の振幅が、安定な偶奇性(本実施形態では偶関数的形状)を有することができる。これにより、光学遷移ダイポールモーメントが印加電界によらず安定する。また、下位準位(G3)の波動関数の振幅が奇関数形状となるので、光学遷移ダイポールモーメントを大きくすることができる。以上のことから、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10によれば、光学遷移ダイポールモーメントを大きくし、利得を大きくすることができる。
ここで、本実施形態における上記作用効果について更に詳述する。本実施形態では、3層の量子井戸層16a〜16cのうち中央に位置する量子井戸層16bが他の2層の量子井戸層16a,16cより薄い。この点に関し、図5に示された従来の量子カスケード構造では、最初に電子が注入される量子井戸層101aが最も薄くなっている。このような構成では、上位準位の波動関数は奇関数的ではあるものの、該波動関数が量子井戸層101aへ拡がっているので、量子井戸層101bにおける上位準位の波動関数の振幅が比較的小さくなってしまう。その結果、上位準位の波動関数と下位準位の波動関数との重なりが小さくなり、発光効率が抑えられてしまう。
そこで、本発明者は、上位準位の波動関数と下位準位の波動関数との重なりが大きくなるように、上位準位の波動関数を偶関数的形状とすることを考えた。しかし、そうすると上位準位と基底準位との間の散乱時間(すなわち非発光遷移時間)が短くなり、利得が逆に低下することも予想される。
ここで、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10の散乱時間(=1/遷移確率)と、図5に示された従来の量子カスケードレーザ素子の散乱時間との比較について説明する。上位準位(レーザ励起準位)と下位準位との間の散乱時間をτ32、上位準位(レーザ励起準位)と基底準位との間の散乱時間をτ31とすると、上位準位(レーザ励起準位)の散乱時間τは、次の数式(1)によって表される。
Figure 2012038976
また、下位準位と基底準位との間の散乱時間をτ21、上位準位(レーザ励起準位)と下位準位との間の光学遷移ダイポールモーメントをzとすると、QCLレーザ利得gは、次の数式(2)によって表される。
Figure 2012038976
そして、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10における各数値は以下のようになる。
τ31=2.44ps
τ32=3.05ps
τ21=0.37ps
z=1.80nm
一方、図5に示された従来の量子カスケードレーザ素子における各数値は以下のようになる。
τ31=2.83ps
τ32=2.33ps
τ21=0.26ps
z=1.53nm
上の数式(1)、(2)にこれらの値を適用すると、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10の利得gと、図5に示された従来の量子カスケードレーザ素子の利得gとの利得比g/gは1.45となり、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10は従来のものより格段に利得が増していることがわかる。これは、3層の量子井戸層16a〜16cのうち中央に位置する量子井戸層16bが他の2層の量子井戸層16a,16cより薄いことによる、非発光遷移時間τ31が短くなるというデメリットに対し、光学遷移ダイポールモーメントzが大きくなるというメリットの方がより大きいことが主因であると考えられる。このように、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10においては、非発光遷移時間が短くなるという影響と比して上位準位の波動関数と下位準位の波動関数との重なりが大きくなったことによる効果が勝るので、利得を効果的に大きくすることが可能となる。
また、本実施形態の量子カスケードレーザ素子10によれば、図4に示されたように、発光に関わる光学遷移が、従来の量子カスケードレーザ素子と比較して活性領域のより広い領域にわたって広がるので、大きな光閉じ込め係数を得ることができる。
また、各量子井戸層16a〜16cおよび各バリア層16d及び16eの組成および厚さは、下位準位(G3)と基底準位(G2)との間のエネルギー差ΔEがLOフォノンエネルギーとほぼ一致するように設定されるとよい。これにより、下位準位(G3)の電子が、LOフォノン共鳴によって短い緩和時間でもって基底準位(G2)に緩和するので、レーザ発振に必要な反転分布を好適に形成できる。
また、本実施形態のように、3層の量子井戸層16a〜16cは、互いに結合した波動関数を有することが好ましい。これにより、波動関数の振幅および上位準位、下位準位のエネルギーを調整して、より大きな光学遷移ダイポールモーメントを得ることができる。
本発明による半導体発光素子は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では半導体発光素子としてレーザ素子を例示したが、本発明は、量子カスケード構造を有する様々な半導体発光素子(例えばLED(Light-emitting Diode)やSLD(Super luminescentDiode)など)に適用可能である。また、上述した実施形態では、InP基板上にGaInAs量子井戸層およびAlInAsバリア層を有する量子カスケード構造を設けた構造を例示したが、GaAs量子井戸層およびAlGaAsバリア層を有する量子カスケード構造や、GaInAs量子井戸層およびAlAsSbバリア層を有する量子カスケード構造であってもよい。
10…量子カスケードレーザ素子、12…量子カスケード構造部、14…単位構造、16…活性領域、16a〜16c…量子井戸層、16d,16e…バリア層、18…注入領域、22…基板、22a…主面、22b…裏面、24…下部クラッド層、26…上部クラッド層、28…コンタクト層、30…アノード電極、32…カソード電極。

Claims (4)

  1. 量子井戸層およびバリア層が交互に積層された多重量子井戸構造を有し、活性領域および注入領域からなる複数の単位構造が積層方向に配置された量子カスケード構造部を備え、
    前記活性領域が3層の前記量子井戸層を含み、該3層の量子井戸層のうち中央に位置する前記量子井戸層が、他の2層の前記量子井戸層より薄いことを特徴とする、半導体発光素子。
  2. 前記3層の量子井戸層が、互いに結合した波動関数を有することを特徴とする、請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記他の2層の量子井戸層の厚さが互いに異なることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体発光素子。
  4. 前記中央に位置する量子井戸層の厚さが0.5nm以上1.5nm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
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