JP2012031465A - 高周波加熱装置及び高周波加熱方法 - Google Patents

高周波加熱装置及び高周波加熱方法 Download PDF

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Abstract

【課題】内周部に凹凸がある環状又は円筒状の被加熱物の内周部を良好に誘導加熱することができる高周波加熱装置を提供することである。
【解決手段】被加熱物15の内周部15aに加熱導体6を配置して内周部15aを誘導加熱する高周波加熱装置1であって、前記加熱導体6は、内周部15aの半径方向と直交する方向に延びる4以上の直線部7a〜7dと、前記直線部7a〜7d同士を直列に繋ぐ連結部8a〜8dとを有する。被加熱物15の内周部15aと加熱導体6が相対回転移動し、被加熱物15の内周部15aが均一に誘導加熱される。
【選択図】図2

Description

本発明は、環状又は筒状の被加熱物の内周部を誘導加熱する高周波加熱装置及び高周波加熱方法に関するものである。
従来、環状又は筒状の被加熱物の内周部を焼入れする際には、螺旋形状の加熱導体を使用していた。すなわち、被加熱物の内部に螺旋形状の加熱導体を配置し、被加熱物の内周部に加熱導体を対向配置し、さらに加熱導体に高周波電流を通じ、内周部に高周波の誘導電流を生じさせていた。このような誘導加熱装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1の発明では、被加熱物が円筒部材であると記載されている。
特開2007−294165号公報
ところで、円筒部材の内周部に凹凸があると、螺旋形状の加熱導体では、均一な誘導加熱が困難である。すなわち、誘導電流は加熱導体に比較的近い凸部に沿って流れ易く、加熱導体から比較的遠い凹部には流れにくい。例えば、円筒部材がナットであると、内周部には雌ねじが形成されている。この雌ねじを螺旋形状の加熱導体で誘導加熱すると、誘導電流は雌ねじのねじ山の部分に集中し易く、ねじの谷の部分には流れにくい。
また、円筒部材がボールハウジングであると、ボールハウジングの側壁にはボールの通路を形成する螺旋溝が設けられている。このボールハウジングの内周部を螺旋形状の加熱導体で誘導加熱すると、螺旋の溝の底に誘導電流が流れにくく、内周部を一様に誘導加熱するのは困難である。
また、円筒部材の内周部を誘導加熱する際には、円筒部材を加熱導体に対して相対回転させる。これにより、円筒部材の内周部における加熱導体の近接する部位が移動する。その結果、円筒部材の内周部の誘導加熱は均一化される。ところで、円筒部材の円筒側壁に、内部と外部とを連通させる貫通孔(半径方向に延びる孔)が設けられている場合に、螺旋形状の加熱導体で内周部の誘導加熱を実施すると、次のような問題がある。すなわち、螺旋のピッチにもよるが、加熱導体の貫通孔に近接する部位は、加熱導体と円筒部材が相対的に1回転したときに、1ピッチの範囲を往復移動し、ある一箇所で貫通孔に最大に接近する。その結果、貫通孔の開口部分には誘導電流が集中し、過熱状態を招いてしまう。
そこで本発明は、内周部に凹凸がある環状又は円筒状の被加熱物の内周部を良好に誘導加熱することができる高周波加熱装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するための請求項1の発明は、被加熱物の内周部に加熱導体を対向配置して内周部を誘導加熱する高周波加熱装置であって、前記加熱導体は、内周部の半径方向と直交する方向に延びる4以上の直線部と、前記直線部同士を直列に繋ぐ連結部とを有することを特徴とする高周波加熱装置である。
請求項1の発明では、加熱導体が、被加熱物の内周部の半径方向と直交する方向に延びる4以上の直線部を備えているので、被加熱物の内周部には半径方向と直交する方向に誘導電流が流れる。その結果、内周部にねじが形成されていても、誘導電流はねじの山と谷を横切って流れ、被加熱物の内周部が一様の深さで誘導加熱される。また、直線部同士は連結部で直列に繋がれているので、加熱導体を簡素に形成できる。
本発明において、加熱導体の直線部を4つとすると、加熱導体の構成を簡素にすることができて好ましい。
請求項2の発明は、加熱導体は複数の中空導体を有しており、特定の直線部及び特定の連結部が1つの中空導体で構成されており、残りの直線部及び連結部が、別の中空導体で構成されており、前記複数の中空導体の側壁同士が通電可能に接続されており、各中空導体には冷却液が供給可能であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱装置である。
請求項2の発明では、加熱導体の、特定の直線部及び特定の連結部が1つの中空導体で構成されており、残りの直線部及び連結部が、別の中空導体で構成されているので、冷却液は中空導体毎に独立して流れる。また、中空導体の側壁同士が通電可能に接続されているので、高周波電流は中空導体から別の中空導体に伝達される。その結果、被加熱物は良好に誘導加熱されると共に、中空導体毎に冷却液が独立して流れて加熱導体が良好に冷却され、加熱導体は寿命が延びる。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の高周波加熱装置で誘導加熱することを特徴とする高周波加熱方法である。
請求項3の発明の高周波加熱方法では、請求項1又は請求項2の高周波加熱装置で誘導加熱するので、誘導電流が被加熱物の内周部を半径方向と直交する方向に流れる。その結果、内周部にねじや螺旋溝が形成されていても、誘導電流はねじの山の部分は螺旋溝の底の部位に偏ることなく一様に流れ、内周部を一様に誘導加熱することができる。また、被加熱物の内部から外部に貫通する半径方向に延びる貫通孔が形成されている場合においても、被加熱物を回転駆動することによって内周部に励起される誘導電流が偏りにくくなり、貫通孔の開口周辺が過熱状態となるのを防止することができる。
上記のいずれの発明においても、被加熱物の内周部の中心を軸芯として被加熱物を回転駆動する駆動手段を設けると、被加熱物と加熱導体の直線部の相対位置が変化する。すなわち、被加熱物の内周部の、直線部が近接する部位が変化する。その結果、被加熱物の内周部の誘導加熱を均一化することができる。また、被加熱物の内部から外部へ半径方向に延びる貫通孔が設けられていても、貫通孔の開口周辺部分に誘導電流が集中するのを防止することができる。すなわち、被加熱物は回転駆動されるので、内周部と加熱導体の直線部とは相対移動する。その際に加熱導体の直線部は、被加熱物の内周部に沿って相対移動する。よって、被加熱物の貫通孔の開口に最大接近した後は、被加熱物が1回転するまでは当該直線部に開口が再接近することがない。すなわち、4つ又は4つ以上の直線部に対して開口は次々に接近及び離間するものの、同一の直線部に近接している時間は、従来の螺旋形状の加熱導体よりも短くなる。その結果、貫通孔の開口付近に加熱導体が存在する時間が従来の加熱導体よりも短いために、誘導電流が貫通孔の開口に集中するのを回避できる。
よって、本発明の高周波加熱装置は、被加熱物の内周部を良好に均一に誘導加熱することができる。
本発明の高周波加熱装置は、加熱導体が、被加熱物の内周部の半径方向と直交する方向に延びる4以上の直線部を備えているので、被加熱物の内周部には半径方向と直交する方向に誘導電流が励起される。その結果、内周部にねじが形成されていても、誘導電流はねじの山と谷を横切って流れ、被加熱物の内周部が一様の深さで誘導加熱される。また、直線部同士は連結部で直列に繋がれているので、加熱導体を簡素に形成できる。
また、本発明の高周波加熱方法を実施すると、被加熱物の内周部にねじや螺旋溝が形成されていても、誘導電流は偏ることなく一様に流れ、内周部を一様の深さに誘導加熱することができる。
本発明の高周波加熱装置の系統図である。 本発明の高周波加熱装置の加熱導体を、被加熱物から離間させている状態の斜視図である。 本発明の高周波加熱装置の加熱導体を、被加熱物内に配置した状態の斜視図である。 (a)は、加熱導体の直線部が近接配置されている状態の、被加熱物の内周面の部分断面図であり、(b)は、誘導加熱後の被加熱物の内周部の部分断面図である。 (a)は、内部に加熱導体を配置したナットの断面斜視図であり、(b)は、側壁に貫通孔が設けられている被加熱物の断面斜視図である。 (a)は、本発明の高周波加熱装置によって、円筒側壁に孔が設けられた被加熱物の内周部を誘導加熱する場合において、ある一瞬における被加熱物の内周部を流れる誘導電流の概念図であり、(b)は、(a)よりも微少時間経過したときに被加熱物の内周部を流れる誘導電流の概念図であり、(c)は、従来の螺旋形状の加熱導体によって、円筒側壁に孔が設けられた被加熱物の内周部を誘導加熱する場合において、ある一瞬における被加熱物の内周部を流れる誘導電流の概念図であり、(d)は、(c)よりも微少時間経過したときに被加熱物の内周部を流れる誘導電流の概念図である。 図2に示す加熱導体とは別の形態の加熱導体を示しており、(a)は、加熱導体内の冷却水の流れを示す斜視図であり、(b)は、ある一瞬の誘導電流の流れを示す斜視図であり、(c)は、(a)のA部の拡大図であり、(d)は、(a)のA部の断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の構成を説明する。
図1に示すように、高周波加熱装置1は、高周波電源4,変圧器5,加熱導体6を備えている。また、図示していないが、高周波加熱装置1には加熱導体移動装置と、被加熱物回転駆動装置と、冷却装置と、制御装置を有している。ここで、加熱導体移動装置は、加熱導体を水平方向及び上下方向に移動させる機能を有するものであり、被加熱物回転駆動装置は、被加熱物を回転駆動する機能を有するものである。また、冷却装置は、加熱されて昇温した被加熱物に冷却液を噴射供給する機能を有する。さらに、制御装置は、高周波電源4,加熱導体移動装置,被加熱物回転駆動装置,冷却装置の動作を司る機能を有している。
以下、高周波電源4,変圧器5,加熱導体6の構成を順に説明する。
高周波電源4は、交流電源2と高周波発信器3とを有している。高周波発信器3によって交流電源2から供給される交流の周波数を高周波化する機能を有する。よって、高周波電源4は、高周波電力を提供することができる。
次に、変圧器5は、高周波電源4から出力された高周波電力の電圧を高圧化する機能を有するものである。すなわち、変圧器5の一次側5aが高周波電源5に接続され、二次側5bが後述する加熱導体6に接続される。よって、加熱導体6には、変圧器5で変圧された高周波の高圧電力が提供される。
次に、本発明の特徴的な構成である加熱導体6の構成について説明する。
図1に示すように加熱導体6は、リード部9a,9bと、4つの直線部7a〜7dと、4つの連結部8a〜8dとを備えている。これらは、銅や銅合金等の良導体から成る中空状の1本の線状部材である。すなわち、図1に示すように、リード部9a,9bと、4つの直線部7a〜7dと、4つの連結部8a〜8dは、1本の線状部材で構成されている。中空部分には、図示しない配管から冷却液が供給される。なお、各図においては、加熱導体6の中空構造の描写は省略している。
リード部9a,9bは、変圧器5の二次側5bに接続される部位である。すなわち、リード部9a,9bを介して高周波電流が加熱導体6に流れる。リード部9a,9bと変圧器の二次側5bとの接続部分の描写は省略する。
リード部9aには、位置調整部10を介して直線部7aの一端が接続されている。位置調整部10は、リード部9aの引出位置を調整する部位である。位置調整部10によってリード9a,9bが近接し、リード部9a,9bは変圧器5側へ延伸されている。
図1に示すように、4つの直線部7a〜7dと4つの連結部8a〜8dは、交互に接続されている。さらに連結部8dは、リード部9bと接続されている。すなわち、加熱導体6は、1本の中空の線状部材を折り曲げ又は湾曲させ、リード部9a,9bと、4つの直線部7a〜7dと4つの連結部8a〜8dとを形成している。
4つの直線部7a〜7dは、図1で見て上下方向に延びている。また、連結部8a〜8dは湾曲している。連結部8aと8cは、同一円周上に配置されており、連結部8bと8dは別の同一円周上に配置されている。連結部8aと8cが配置される円の直径A1は、連結部8bと8dが配置される円の直径A2と同じである。すなわち、連結部8a〜8dは、平面視で同一円周上に配置される。その結果、4つの直線部7a〜7dも同一円周上に配置され、その間隔は等しい。直線部7b〜7dの長さは同じであるが、直線部7aの長さは若干短い。
次に、高周波加熱装置1によって被加熱物を誘導加熱する手順を説明する。
図2は、図1に示す加熱導体と、被加熱物であるボールハウジング15の斜視図である。加熱導体6の直線部7aは、ボールハウジング15の内周部の軸方向長さよりも長く設定されている。また、加熱導体6の連結部8a〜8dは、ボールハウジング15の内周部の直径よりも小さい仮想円周上(平面視で同一の円周上)に配置されている。よって、加熱導体6(リード部9a,9bを除く)は、ボールハウジング15の内周部15a内に配置可能である。
ボールハウジング15は、内部(内周部15a)にボール(図示せず)の通路を形成する螺旋溝18(図4)が形成されている。また、ボールハウジング15の円筒側壁15bには外部と内周部15aとを連通させる孔17が設けられている。孔17は、内周部15aの螺旋溝に沿って配置されている。そして、図示しないボールが螺旋溝を通って孔17から円筒側壁15bの外部へ出たり、別の孔17から円筒側壁15bの内部に入り、螺旋溝に戻ることができるように構成されている。
制御装置(図示せず)は、ボールハウジング15が軸芯回りに回転可能に配置され、さらに、加熱導体移動装置(図示せず)によって加熱導体6を水平方向及び上下方向に移動させ、図2に示すように配置する。そして、加熱導体6を下降させ、図3に示すように加熱導体6をボールハウジング15内に配置する。その結果、4つの直線部7a〜7dは、等間隔で内周部15aに近接対向配置される。
そして、制御装置は、被加熱物駆動装置によってボールハウジング15を回転駆動させると共に、高周波電源4から高周波電力を出力させる。その結果、ボールハウジング15は回転し、加熱導体6は停止しているので、ボールハウジング15と加熱導体6は相対的に移動する。すなわち、加熱導体6の直線部7a〜7dは、ボールハウジング15の軸芯方向に延びており、内周部15aに近接配置されているが、ボールハウジング15が回転するので、内周部15aに対する近接位置は刻々と変化する。
加熱導体6は通電されており、直線部7a〜7dには高周波電流が供給されている。その結果、ボールハウジング15の内周部15aには誘導電流が励起される。図4(a)は、ボールハウジング15の縦断部分断面図である。図4(a)に示すように、内周部15aには螺旋溝18が形成されている。螺旋溝18は、溝部18aと山部18bとで構成されている。すなわち、山部18bは直線部7a〜7dに比較的に近く、溝部18aは直線部7a〜7dから比較的離れている。
しかし、直線部7a〜7dに高周波電流20が流れると、螺旋溝18に励起される誘導電流21は、山部18bのみならず、溝部18aにも一様に流れる。すなわち、直線部7a〜7dは、螺旋溝18と交差するように、ボールハウジング15の軸芯方向に沿って配置されているので、直線部7a〜7dを流れる高周波電流20は、ボールハウジング15の上下方向に流れる。その結果、内周部15aには、誘導電流21が螺旋溝18の複数の山部18bと溝部18aを順に、越えながら流れる。すなわち、誘導電流21は、周波数に応じて表面から所定の深さの部位を流れるので、山部18bと溝部18aにおいて、表面から寸法dの一様な深さで誘導加熱が施される。よって、螺旋溝18の山部18bと溝部18aには、図4(b)に示すような一様の深さdの焼入れ部22が形成される。
なお、直線部7a,7cと、直線部7b,7dとでは、流れる電流の向きが逆になる。ところが、直線部7a〜7dは、円周上に等間隔に配置されているので、直線部7a(7c)と直線部7b(7d)は相当に離れている。よって、隣接する逆向きに流れる高周波電流20によって、内周部15aに励起される誘導電流21同士が干渉し合うことがない。よって、各直線部7a〜7dを流れる高周波電流20によって励起される誘導電流21によって、内周部15aは誘導電流21によって加熱されるが、逆向きの誘導電流21同士が相殺されることはない。
次に、別の被加熱物を誘導加熱する場合を説明する。図5(a)は、内部に加熱導体を配置したナットの断面斜視図であり、図5(b)は、側壁に貫通孔が設けられている被加熱物の断面斜視図である。
図5(a)に示すナット25(被加熱物)の内周部である雌ねじ25aに加熱導体6を対向配置する。その結果、ナット25の雌ねじ25aに対して、各直線部7a〜7dは交差するように配置される。そして、図示しない駆動機構によってナット25を回転駆動し、誘導加熱を実施する。その結果、図4(b)に示す状況と同様に、誘導電流は雌ねじ25aの複数のねじ山と谷底を順に通過して流れる。よって、ねじ山と谷底とを良好に誘導加熱することができる。一方、従来のように、螺旋形状の加熱導体を使用して誘導加熱すると、誘導電流は雌ねじ25aのねじ山に集中し易いため、ねじ山が過熱状態となり、谷底の加熱が不十分となり易い。ところが、本発明を実施すると、ねじ山と谷底とを良好に焼入れすることができる。
図5(b)に示すブッシュ26は、内周部26aから外部へ半径方向に延びる孔27(潤滑油を通過させる孔)が設けられている。この孔27が開口した内周部26aに加熱導体6を対向配置し、ブッシュ26を回転させながら加熱導体6に高周波電流を通電する。その際、孔27の周辺のある一瞬における誘導電流は、図6(a)に示すように流れる。
図6(a)は、本発明の高周波加熱装置によって、円筒側壁に孔が設けられた被加熱物の内周部を誘導加熱する場合において、ある一瞬における被加熱物の内周部を流れる誘導電流の概念図である。図6(a)において二点鎖線で示す直線部7aを流れる高周波電流によって、ブッシュ26(被加熱物)の内周部26aには、矢印群で描写される誘導電流28aが励起される。すなわち、誘導電流28aの一部は孔27に向かって流れ、開口27a(孔27の縁)に沿って迂回して流れる。また、誘導電流28aのうち、孔27のすぐ横を通過するものは、そのまま直進する。よって、開口27aの周辺では、開口27a以外の部位と比較して誘導電流が密状態となる。
ところが、ブッシュ26は回転しているので、図6(a)に示す状態から微少時間が経過すると、孔27の近傍にあった加熱導体6の直線部7aは孔27から離れ、孔27の近傍には誘導電流が励起されなくなる。すなわち、図6(b)に示すように、ブッシュ26が矢印35で示す方向に回転すると、孔27が直線部7aから離れると共に、直線部7bに接近する。
この図6(b)に示す状態(すなわち、図6(a)に示す状態のときから微小時間が経過したときの状態)では、加熱導体6の直線部7aによって励起される誘導電流28aと、直線部7bによって励起される誘導電流28bは、内周部26aのうちの孔27から離れた部位を流れる。よって、このときには孔27付近には誘導電流が流れないので、孔27付近は誘導加熱されず、図6(a)に示す状態のときに過熱状態となった孔27の開口27a(縁部分)の熱が開口27aの周囲に放散される。その結果、孔27の内周部26aのうち開口27aのみが過熱状態となるのを防止でき、内周部26aを一様に誘導加熱することができる。
比較例として、従来の螺旋形状の加熱導体によって、円筒側壁に孔が設けられた被加熱物の内周部を誘導加熱する場合を図6(c)及び図6(d)に示す。
螺旋コイルは、1本の導体が複数巻きされた構成を有している。そして、通常、螺旋の間隔は、本発明の加熱装置の直線部7a〜7dの間隔よりも狭い。すなわち、図6(c)に示す螺旋コイルのn巻目導体部23aと(n+1)巻目導体部23bの間隔は、図6(a)に示す直線部7a,7bの間隔よりも狭い。その結果、内周部26aにおける螺旋コイルのn巻目導体部23a〜(n+3)巻目導体部23dの部位と対向する部分には、各々誘導電流33a〜33dが励起される。そして、誘導電流33aと33b(33bと33c,33cと33d)の間隔は、図6(b)に示す誘導電流28aと28bの間隔よりもかなり狭い。
よって、図6(c)に示す状態のときには、孔27の開口27aは(n+1)巻目導体部23bと近接しているが、微小時間が経過して被加熱物(ブッシュ26)が矢印36で示す方向に回転すると、図6(d)に示すように、孔27の開口27aは、(n+1)巻目導体部23bに隣接する(n+2)巻目導体部23cに近接する。そのため、開口27aの周囲には、ほとんど常に誘導電流が流れる。その結果、開口27aは常に加熱される。よって、開口27aの熱が周囲に放散されるタイミング(誘導過熱されないとき)がほとんどなく、開口27a(縁部分)は、内周部26aの他の部位よりも過熱状態になり易い。
しかし、本発明の高周波加熱装置1の加熱導体6では、円周上に4つの直線部7a〜7dを配置する構成を有するので、従来のような開口7aの過熱状態が緩和され、ブッシュ26の内周部26aを全領域に渡って良好に焼入れすることができる。
次に、図7を参照しながら本発明の別の実施の形態を説明する。図7は、図2に示す加熱導体とは別の形態の加熱導体を示しており、(a)は、加熱導体内の冷却水の流れを示す斜視図であり、(b)は、ある一瞬の誘導電流の流れを示す斜視図であり、(c)は、(a)のA部の拡大図であり、(d)は、(a)のA部の断面図である。
図7に示すように、加熱導体31は、中空の良導体からなる第1導体11aと第2導体11bとで構成されている。
第1導体11aは、直線部13a,13bと連結部14a,14bとを有している。すなわち、図7に示すようにこれらは直列(符号で示すと、13a,14a,13b,14bの順)に連続している。そして、連結部14bには冷却液排出部19aが連続している。すなわち、図7(c)に示すように連結部14bと冷却液排出部19aは、1本の中空導体を折り曲げて形成される。図7では、冷却液排出部19aを途中までしか描写していないが、冷却液排出部19aの先には電気回路は形成されていない。すなわち、冷却液排出部19aの図示しない端部は終端である。
さらに第1導体11aの直線部13aには、接続部12を介してリード部9aが接続されている。リード部9aは、高周波電源4(図1)側に接続されている。ここで接続部12は、加熱導体31の内部から外部に向かう方向に延びている。これにより、リード部9aと9bとが互いに干渉するのが防止される。
また、第2導体11bは、直線部13c,13dと連結部14c,14dとを有している。すなわち、図7に示すようにこれらは直列(符号で示すと、14c,13d,14d,13cの順)に連続している。そして、直線部13cには冷却液排出部19bが連続している。すなわち、図7(c)に示すように、直線部13cと冷却液排出部19bは、1本の中空導体が直線状に連続した形態を呈している。当該中空導体の、連結部14bが接続される接続部30を境界として、直線部13cと冷却液排出部19bとが構成されている。
さらに第2導体11bの連結部14cには、リード部9bが接続されている。リード部9bは、高周波電源4(図1)側に接続されている。
そして、第1導体11aと第2導体11bとは、接続部30で通電可能に接続されている。すなわち、図7(d)に示すように、接続部30では第1導体11aの冷却液排出部19aと、第2導体11bの冷却液排出部19bとがろう付けにより接続されている。冷却液排出部19bの図示しない端部も、冷却液排出部19aと同様に終端である。
次に、加熱導体31の冷却液の流れと高周波電流の流れについて説明する。
図7(a)に示すように、第1導体11aには、細い矢印で示すように冷却液W1が流れる。すなわち、図示しない配管を介して、リード部9a側から供給された冷却液W1は、直線部13a,連結部14a,直線部13b,連結部14bを経て冷却液排出部19aから外部へ排出される。一方、第2導体11bには、太い矢印で示すように冷却液W2が流れる。すなわち、図示しない配管を介して、リード部9b側から供給された冷却液W2は、連結部14c,直線部13d,連結部14d,直線部13cを経て冷却液排出部19bから外部へ排出される。よって、冷却液W1及びW2が、第1導体11aと第2導体11bの間を流れることはない。その結果、第1導体11a側を流れる冷却液W1と、第2導体11b側を流れる冷却液W2は、図1に示す形態の加熱導体6よりも流れる経路が短い。冷却液W1,W2は、第1導体11aと第2導体11bの間をまたがって流れないので、図1の加熱導体6の半分程度の通路長さを流れて外部へ排出される。よって、加熱導体31は、良好に冷却される。
また、高周波電流は、図1の加熱導体6と同様に流れる。すなわち、図7(b)に示すように、ある一瞬の高周波電流I(直流とみなす)は、リード部9aから接続部12,直線部13a,連結部14a,直線部13b,連結部14b,直線部13c,連結部14d,直線部13d,連結部14cを経てリード部9bに至る。ここで、高周波電流Iが連結部14bから直線部13cに流れるのは、冷却液排出部19a,19bの図示しない端部が終端であるためである。その結果、高周波電流Iは、冷却液排出部19a,19b側へは流れない。
図7に示す形態の加熱導体31を採用すると、被加熱物の内周部は4つの直線部13a〜13dを流れる高周波電流によって良好に誘導加熱される。また、加熱導体31には第1導体11a側と第2導体11b側とで2系統の冷却液循環経路が形成されており、加熱導体31の冷却効果は高い。
図7に示す加熱導体31は、2つの中空導体(第1導体11a,第2導体11b)で構成したが、加熱導体は3以上の中空導体で構成することも可能である。
本発明は、被加熱物の外形が円形状でなくても、被加熱物の内周部を良好に誘導加熱することができる。例えば、組立クランクシャフトのパーツには、複雑な外形形状を有するものがあるが、このようなパーツの内周部も、本発明の高周波加熱装置1によって良好に誘導加熱することができる。
また、加熱導体の直線部の数は4以上であれば、本発明の作用効果を奏することができるが、被加熱物の内周部の直径に対して、適当な数の直線部を備えることにより、被加熱物を回転させなくても被加熱物の内周部を良好に誘導加熱することができる。
また、直線部の長さは、内周部の軸方向長さよりも長くなるように設定するのが好ましい。さらに、本実施例では、連結部8a〜8dを湾曲させる例を示したが、円弧に対する弦のような直線形状に形成してもよい。
1 高周波加熱装置
6 加熱導体
7a〜7d 直線部
8a〜8d 連結部
11a 第1導体
11b 第2導体
13a〜13d 直線部
14a〜14d 連結部
15 ボールハウジング(被加熱物)
15a ボールハウジングの内周部
20 直線部を流れる高周波電流
21 螺旋溝が形成された内周部に励起される誘導電流
22 焼入れ部
31 加熱導体

Claims (3)

  1. 被加熱物の内周部に加熱導体を配置して内周部を誘導加熱する高周波加熱装置であって、前記加熱導体は、内周部の半径方向と直交する方向に延びる4以上の直線部と、前記直線部同士を直列に繋ぐ連結部とを有することを特徴とする高周波加熱装置。
  2. 加熱導体は複数の中空導体を有しており、
    特定の直線部及び特定の連結部が1つの中空導体で構成されており、
    残りの直線部及び連結部が、別の中空導体で構成されており、前記複数の中空導体の側壁同士が通電可能に接続されており、
    各中空導体には冷却液が供給可能であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱装置。
  3. 内周部に凹凸がある被加熱物の内周部を、請求項1又は請求項2の高周波加熱装置で誘導加熱することを特徴とする高周波加熱方法。
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