JP2012030620A - バンパリインホース及び車両用バンパ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】質量増加を伴うことなく車両衝突時の強度を確保し、且つ、車両衝突時の引張面割れを抑制することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供する。
【解決手段】押出材からなるバンパリインホース16は、車両前側(車両前後方向外側)に配置され7000系アルミニウム合金からなる外側壁部16aと、車両後側(車両前後方向内側)に配置され6000系アルミニウム合金からなる内側壁部16bとが一体形成されてなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車などの車両に搭載されるバンパリインホース及び車両用バンパ装置に関するものである。
従来、こうしたバンパリインホースとして、アルミニウム合金の押出材からなるものが提案されている(例えば特許文献1など)。バンパリインホースの製法として押出加工を採用することで、その断面形状が複雑になっても1回の押出工程で容易に製造することが可能になる。
特開2005−212587号公報
ところで、バンパリインホースは、車両衝突時の強度を確保するために、その素材となるアルミニウム合金として材料強度の高いものを採用する必要がある。しかしながら、一般に材料強度の高いアルミニウム合金は、靱性(延性)が低いという特性がある。例えば車両衝突に伴いバンパリインホースが衝突位置において折れ曲がるような塑性変形をした場合、バンパリインホースの衝突側となる外側壁部の曲げ変形に伴って、反衝突側(ボデー側)となる内側壁部が車両幅方向に引っ張られる。従って、靱性の低いアルミニウム合金を採用すると、車両衝突時に内側壁部が裂ける、いわゆる引張面割れが生じることがある。この場合、車両衝突時の荷重を十分に支えられなくなる可能性がある。
一方、こうした引張面割れを抑制するために、バンパリインホースの素材となるアルミニウム合金として靱性の高いものを採用することも考えられる。この場合、アルミニウム合金材の材料強度が低くなることから、車両衝突時の強度を確保するためにバンパリインホースの断面形状の板厚をその分、厚肉化する必要があり、質量増加を余儀なくされるという別の問題が生じてしまう。
本発明の目的は、質量増加を伴うことなく車両衝突時の強度を確保し、且つ、車両衝突時の引張面割れを抑制することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、車両前後方向外側に配置され、7000系アルミニウム合金からなる外側壁部と、車両前後方向内側に配置され、6000系アルミニウム合金からなる内側壁部とが一体形成されてなることを要旨とする。
7000系アルミニウム合金(Al−Zn−Mg系合金、Al−Zn−Mg−Cu系合金)は、材料強度が高いことが知られている。一方、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系合金)は、靱性(延性)が高く耐食性に優れていることが知られている。同構成によれば、前記内側壁部の素材として靱性の高い6000系アルミニウム合金を採用したことで、車両衝突時の前記内側壁部の引張面割れを抑制することができる。そして、車両衝突時の荷重を好適に支えることができる。一方、前記外側壁部の素材として材料強度の高い7000系アルミニウム合金を採用したことで、前記外側壁部の断面形状の板厚を厚肉化することなく車両衝突時の強度を確保でき、バンパリインホースの質量増加を抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバンパリインホースにおいて、前記結合部材は、前記内側壁部に締結されていることを要旨とする。
アルミニウム合金は、腐食環境下で長時間に亘って応力の負荷された状態が続くと突然割れる、いわゆる応力腐食割れが生じることがある。この応力腐食割れに対する耐性は、6000系アルミニウム合金で優れていることが知られている。同構成によれば、前記内側壁部の素材として耐応力腐食割れに優れた6000系アルミニウム合金を採用したことで、前記結合部材との締結による応力の負荷状態が継続されても、その応力腐食割れを抑制することができる。また、前記内側壁部の素材として靱性の高い6000系アルミニウム合金を採用したことで、車両衝突時に前記内側壁部の前記結合部材との締結部に生じる破壊を抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバンパリインホースと、前記一対の結合部材とを備えた車両用バンパ装置であることを要旨とする。
同構成によれば、質量増加を伴うことなく車両衝突時の強度を確保し、且つ、車両衝突時の引張面割れを抑制することができる車両用バンパ装置を提供することができる。
本発明では、質量増加を伴うことなく車両衝突時の強度を確保し、且つ、車両衝突時の引張面割れを抑制することができるバンパリインホース及び車両用バンパ装置を提供することができる。
本発明の一実施形態を示す平面図。 図1のA−A線に沿った断面図。 同実施形態の特性を、アルミニウム合金の材料特性とともに示す一覧図 同実施形態の製造方法を示す斜視図。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両のフロント部分に適用される本実施形態に係る車両用バンパ装置を示す平面図である。同図に示されるように、車両幅方向両側には、例えば金属板からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ11が配設されている。これらサイドメンバ11は、ボデーの一部を構成する。なお、各サイドメンバ11の前端には、該サイドメンバ11の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなる略四角形のブラケット12が溶接にて固着されている。
各ブラケット12の前面には、例えばアルミニウム合金の押出材からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両前後方向に延びる結合部材としてのクラッシュボックス13が取着されている。このクラッシュボックス13は、前後方向の中心線が前記サイドメンバ11の前後方向の中心線と一致するように配置されており、その後端に固着されたブラケット14において、前記ブラケット12にボルト及びナット(図示略)にて締結されている。一対のクラッシュボックス13は、例えば車両衝突時の荷重を軸線方向の塑性変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する。
各クラッシュボックス13の前端には、該クラッシュボックス13の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなるプレート15が固着されるとともに、該プレート15には、アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在するバンパリインホース16の各端部が結合されている。すなわち、バンパリインホース16の各端部は、クラッシュボックス13の車両前側に対向配置されており、これら端部及びプレート15の当接位置で該プレート15にボルトB及びナットN(図2参照)にて締結されている。
このような構成にあって、車両の衝突等により前方から衝撃が加えられると、この衝撃は、バンパリインホース16及び両クラッシュボックス13を介して両サイドメンバ11(ボデー)に伝達される。このとき、バンパリインホース16とともに各クラッシュボックス13が塑性変形することで、ボデー及び乗員へと伝達される衝撃を緩衝する。
図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。同図に示されるように、本実施形態のバンパリインホース16は、断面形状において、略四角形の本体壁部21と、該本体壁部21の内部空間を上下に区画する中リブ22とを一体的に備えて、略「日」の字形状を呈する。
バンパリインホース16は、車両前後方向中央部に対しその前側(車両前後方向外側)に配置された外側壁部16aと、同後側(車両前後方向内側)に配置された内側壁部16bとが一体形成されてなる。外側壁部16aは、その素材として材料強度の高い(例えば材料耐力300MPa以上)7000系アルミニウム合金が採用されている。一方、内側壁部16bは、その素材として靱性が高く(例えばシャルピー衝撃値25J/cm^2以上)、耐応力腐食割れに優れた6000系アルミニウム合金がされている。そして、クラッシュボックス13(プレート15)は、内側壁部16bに締結されている。
従って、材料強度の高い外側壁部16aでは、その断面形状の板厚を厚肉化することなく車両衝突時の強度が確保される。一方、靱性の高い内側壁部16bでは、車両衝突時の引張面割れや、クラッシュボックス13との締結部に生じる破壊が抑制される。また、耐応力腐食割れに優れた内側壁部16bでは、クラッシュボックス13との締結による応力の負荷状態が継続されても、その応力腐食割れが抑制される。
図3は、アルミニウム合金の材料特性とともに、本実施形態の特性をまとめた一覧図である。同図において、○印は良好を表し、×印は不良を表し、△印はこれらの中間を表すものである。同図に示すように、7000系アルミニウム合金では、衝突時の強度確保が良好であるものの、割れ抑制がそこそこで、締結部における応力腐食割れの抑制が不良である。また、6000系アルミニウム合金では、衝突時の強度確保が不良であるものの、割れ抑制及び締結部における応力腐食割れの抑制が良好である。一方、本実施形態のバンパリインホース16では、外側壁部16aにより衝突時の強度確保が良好となり、且つ、内側壁部16bにより衝突時の割れ抑制及び締結部における応力腐食割れの抑制が良好となる。
次に、バンパリインホース16の製造方法の概要について説明する。図4に示されるように、本実施形態では、押出加工に係るアルミニウム合金として、通常の略円柱状のビレット(鋳塊)を2分した略半円柱状の対の素材Wa,Wbが利用される。一方の素材Waは7000系アルミニウム合金からなり、他方の素材Wbは6000系アルミニウム合金からなる。
これら素材Wa,Wbを、全体として略円柱状になるように密着させて、押出機のダイスDに押し付けそのダイス穴から押し出す。これにより、ダイス穴の形状に合わせて、バンパリインホース16と同等の断面形状(略「日」の字形状)を有する押出材Wが製造される。この押出材Wは、素材Waに対応する側が7000系アルミニウム合金製であるとともに、素材Wbに対応する側が6000系アルミニウム合金製であって、押出成形に伴う溶着によって一体化されている。
その後、バンパリインホース16の車両幅方向の長さに合わせて押出材Wを切断加工することで、外側壁部16a及び内側壁部16bの一体形成されたバンパリインホース16が完成する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、内側壁部16bの素材として靱性の高い6000系アルミニウム合金を採用したことで、車両衝突時の内側壁部16bの引張面割れを抑制することができる。そして、車両衝突時の荷重を好適に支えることができる。一方、外側壁部16aの素材として材料強度の高い7000系アルミニウム合金を採用したことで、外側壁部16aの断面形状の板厚を厚肉化することなく車両衝突時の強度を確保でき、バンパリインホース16の質量増加を抑制することができる。また、外側壁部16aが小型化される分、車両の意匠に対する汎用性を向上することができる。
(2)本実施形態では、内側壁部16bの素材として耐応力腐食割れに優れた6000系アルミニウム合金を採用したことで、クラッシュボックス13との締結による応力の負荷状態が継続されても、その応力腐食割れを抑制することができる。また、内側壁部16bの素材として靱性の高い6000系アルミニウム合金を採用したことで、車両衝突時に内側壁部16bのクラッシュボックス13との締結部に生じる破壊を抑制することができる。
(3)本実施形態では、異材同士である7000系アルミニウム合金の素材Wa及び6000系アルミニウム合金の素材Wbの併用による1回の押出工程で外側壁部16a及び内側壁部16bの一体形成されたバンパリインホース16を製造することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、バンパリインホース16の断面形状は、略「ロ」の字や略「目」の字形状であってもよい。
・前記実施形態において、クラッシュボックス13を割愛して、バンパリインホース16をサイドメンバ11に直結してもよい。
・本発明は、車両のリヤ部分に適用してもよい。
B…ボルト、N…ナット、13…クラッシュボックス(結合部材)、16…バンパリインホース、16a…外側壁部、16b…内側壁部。

Claims (3)

  1. アルミニウム合金の押出材からなり、車両幅方向に延在するとともに両端部において車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合されるバンパリインホースにおいて、
    車両前後方向外側に配置され、7000系アルミニウム合金からなる外側壁部と、
    車両前後方向内側に配置され、6000系アルミニウム合金からなる内側壁部とが一体形成されてなることを特徴とするバンパリインホース。
  2. 請求項1に記載のバンパリインホースにおいて、
    前記結合部材は、前記内側壁部に締結されていることを特徴とするバンパリインホース。
  3. 請求項1又は2に記載のバンパリインホースと、
    前記一対の結合部材とを備えたことを特徴とする車両用バンパ装置。
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