JP2012030156A - 鋳鉄管の複層塗膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】下塗り塗膜のジンクリッチ粉体塗料と上塗り塗膜の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションを抑制しつつ、塗膜形成作業を簡単にする。
【解決手段】下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布する前に鋳鉄管を加熱し、加熱された鋳鉄管外面に前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布した後、そのジンクリッチ粉体塗料の上に上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布し、前記ジンクリッチ粉体塗料と前記他の粉体塗料を前記鋳鉄管の余熱で溶融することにより、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜とを含む複層塗膜を前記鋳鉄管外面に形成するようにする。
【選択図】なし

Description

この発明は、ジンクリッチ粉体塗料の下塗り塗膜と他の粉体塗料の上塗り塗膜からなる複層塗膜を鋳鉄管の表面に形成する鋳鉄管の複層塗膜の形成方法に関する。
鋳鉄管は、地中に埋設される水道管として使用する場合、地下水による鋳鉄管外面の腐食を防止するため、鋳鉄管外面に様々な塗料が塗装される。鋳鉄管外面に塗装される塗料としては、例えば、亜鉛金属末と、バインダー成分としてのエポキシ樹脂および硬化剤を配合したジンクリッチ粉体塗料が挙げられる。
ジンクリッチ粉体塗料は、万が一塗膜が損傷し、その損傷部分に水が付着したとしても、損傷部分の周りにある亜鉛が酸化する犠牲陽極作用が働くので、鉄の腐食を長期にわたって防止でき、下塗り塗膜としてよく利用されている。また、ジンクリッチ粉体塗料は、バインダー成分として熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂を用いているので、鋳鉄管外面への付着性も良好である。
下塗り塗膜の上には、目的に応じ、例えば、耐候性や美粧性を向上させるために、エポキシ系粉体塗料、ポリエチレン系粉体塗料、ポリエステル系粉体塗料、エポキシ/ポリエステル系粉体塗料からなる上塗り塗膜を形成することが多い。なお、上塗り塗膜を形成する粉体塗料は、バインダー成分として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよい。
このような下塗り塗膜と上塗り塗膜とからなる複層塗膜を鋳鉄管外面に形成するには、まず、ジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布し、その鋳鉄管を乾燥炉に入れて、ジンクリッチ粉体塗料の一般的な焼付け温度(120〜250℃)で15〜30分間ジンクリッチ粉体塗料を加熱・溶融する(焼付け処理)。これにより、ジンクリッチ粉体塗料の硬化反応が進行して下塗り塗膜が形成される。
次に、鋳鉄管を乾燥炉から取り出し、反応硬化した下塗り塗膜の上に他の粉体塗料を塗布し、鋳鉄管を再び乾燥炉に入れて、他の粉体塗料を120〜220℃の温度で15〜30分間加熱・溶融する(焼付け処理)。これにより、他の粉体塗料の硬化反応が進行して上塗り塗膜が形成される(例えば、特許文献1)。なお、他の粉体塗料のバインダー成分が熱可塑性樹脂である場合は、加熱・溶融後の冷却により硬化する。
特開2001−146567号公報
ところで、上記のように上塗り塗膜の他の粉体塗料を塗布する前に、下塗り塗膜のジンクリッチ粉体塗料を焼付け処理により反応硬化させるのは、焼付け処理するときに、ジンクリッチ粉体塗料が反応硬化していなければ、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションという現象が生じやすく、防錆効果の優れた安定した下塗り塗膜が得られないからである。
しかし、上塗り塗膜の他の粉体塗料を塗布する前に、下塗り塗膜のジンクリッチ粉体塗料を焼付け処理するので、他の粉体塗料の焼付け処理を含めて計2回焼付け処理することになり、塗膜形成作業が煩わしいという問題があった。
また、下塗り塗装工程の焼付け処理において加熱しすぎた場合、塗膜表面がいわゆるオーバーベーク(オーバー焼付け)となり、塗膜が硬くなり、割れやすくなってしまうことがある。このようなオーバーべークの状態で上塗り塗装を行うと、下塗り塗装の塗膜と上塗り塗装の塗膜との密着性が低下する問題もあった。
そこで、この発明の課題は、下塗り塗膜のジンクリッチ粉体塗料と上塗り塗膜の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションを抑制しつつ、塗膜形成作業を簡単にすることである。
上記課題を解決するために、この発明の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法は、下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布する前に鋳鉄管を加熱し、加熱された鋳鉄管外面に前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布した後、そのジンクリッチ粉体塗料の上に上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布し、前記ジンクリッチ粉体塗料と前記他の粉体塗料を前記鋳鉄管の余熱で溶融することにより、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜を含む複層塗膜を前記鋳鉄管外面に形成するようにしたのである。
このようにすると、鋳鉄管の表面に近いジンクリッチ粉体塗料が他の粉体塗料よりも先に鋳鉄管の余熱により硬化反応が進行するので、他の粉体塗料が鋳鉄管の余熱により溶融するときに、ジンクリッチ粉体塗料が半硬化状態、もしくは硬化反応の完了した硬化状態となっている。このため、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションが起きにくい。また、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料を鋳鉄管の余熱で溶融することにより、下塗り塗膜と上塗り塗膜を形成するようにしたので、従来のようにジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とで計2回焼付け処理する場合と比べて、塗膜形成作業が簡単である。
さらに、予熱の活用により、従来のような乾燥炉による焼き付け処理を行なわなくても、下塗り塗膜と上塗り塗膜との複層塗膜が鋳鉄管の表面に形成されるので、オーバーべーク(オーバー焼付け)に伴う問題もより生じにくくなる。
なお、この鋳鉄管の複層塗膜の形成方法は、鋳鉄管の外面だけでなく、鋳鉄管の継手部内面にも適用できる。すなわち、下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管の継手部内面に塗布する前に鋳鉄管を加熱し、加熱された鋳鉄管の継手部内面に前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布した後、そのジンクリッチ粉体塗料の上に上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布し、前記ジンクリッチ粉体塗料と前記他の粉体塗料を前記鋳鉄管の余熱で溶融することにより、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜を含む複層塗膜を前記鋳鉄管の継手部内面に形成するようにした構成を採用することができる。
これらの各構成において、前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布する前の前記鋳鉄管の温度を、230〜250℃とすると好ましい。鋳鉄管の温度が250℃よりも高いと、下塗り塗膜の硬化完了後も高温の余熱が伝えられるので、下塗り塗膜に対するオーバーベークが生じる可能性が高まるからである。また、鋳鉄管の温度が230℃よりも低いと、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料の硬化反応が十分に進行しなくなるからである。
前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜との複層塗膜は、200〜400μmの膜厚となるように形成すると好ましい。複層塗膜の膜厚が400μmよりも厚いと、鋳鉄管の余熱が他の粉体塗料の表面まで十分に伝わらず、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料の硬化反応が十分に進行しなくなるからである。また、複層塗膜の膜厚が200μmよりも小さいと、防食性が十分に担保されなくなるからである。
この発明の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法によれば、鋳鉄管の表面に近いジンクリッチ粉体塗料が他の粉体塗料よりも先に鋳鉄管の余熱により硬化反応が進行するので、他の粉体塗料が鋳鉄管の余熱により溶融するときに、ジンクリッチ粉体塗料が半硬化状態、もしくは硬化反応の完了した硬化状態となっている。このため、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションが起きにくい。また、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料を鋳鉄管の余熱で溶融することにより、下塗り塗膜と上塗り塗膜を形成するようにしたので、従来のようにジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とで計2回焼付け処理する場合と比べて、塗膜形成作業が簡単である。さらに、予熱の活用により、従来のような乾燥炉による焼付け処理を行なわなくても、下塗り塗膜と上塗り塗膜との複層塗膜が鋳鉄管の表面に形成されるので、オーバーべーク(オーバー焼付け)に伴う問題もより生じにくくなる。
次に、この発明の実施形態の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法について説明する。この発明で下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料は、亜鉛金属末と、バインダー成分としてのエポキシ樹脂および硬化剤を配合したものであり、市販のものであればいずれのものを用いてもよい。
上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料としては、バインダー成分として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のいずれを用いてもよく、例えば、エポキシ系粉体塗料、ポリエチレン系粉体塗料、ポリエステル系粉体塗料、エポキシ/ポリエステル系粉体塗料が挙げられ、市販のものであればいずれのものを用いてもよい。
この実施形態の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法では、鋳鉄管外面を塗装の対象としている。まず、鋳鉄管表面に付着しているさびや油脂類などを除去するため、鋳鉄管の下地処理を行なう。下地処理では、まず、脱脂処理による油脂類の除去を行ない、次いで、洗浄および乾燥の後、ディスクサンダーなどの工具を用いて研磨紙によりさびの除去を行なう。さびの除去は、サンドブラスト、ショットブラスト、グリッドブラストなどのブラスト処理により除去してもよい。
次に、ジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布する前に、鋳鉄管の温度が230〜250℃になるように加熱する。加熱手段としては、鋳鉄管を230〜250℃に加熱できるものであればいずれでもよく、例えば、従来の焼付け処理に用いた乾燥炉を用いることができる。乾燥炉としては、例えば、被乾燥体に直接赤外線を照射吸収させ、輻射熱によって乾燥させる赤外線乾燥炉や、熱伝導や対流熱を利用する熱風乾燥炉を挙げることができる。熱風乾燥炉としては、電気を熱源とした電熱炉や、加熱空気または燃焼ガスを乾燥炉内に送るガス炉などがある。
鋳鉄管を230〜250℃に加熱した後、鋳鉄管を乾燥炉から取り出して塗装ブースに移送し、鋳鉄管の温度が低くならないうちにジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布する。このとき、ジンクリッチ粉体塗料は、鋳鉄管の余熱により溶融して硬化反応が進行する。ジンクリッチ粉体塗料を塗布する手段としては、例えば、粉体塗料供給装置によって空気搬送されたジンクリッチ粉体塗料を静電吹付けガンから噴射させることにより、鋳鉄管外面に付着させることができる(静電粉体吹付け法)。
具体的には、鋳鉄管の両端の内面を適宜の把持手段で掴み、鋳鉄管を管軸周りに回転させながら、粉体塗料を噴射するガンを管軸方向に沿って移動させ、鋳鉄管の外面にジンクリッチ粉体塗料を噴射していく手法を採用することができる。
また、ジンクリッチ粉体塗料の塗布手段は、流動化したジンクリッチ粉体塗料槽の中に鋳鉄管を浸せきすることにより、鋳鉄管外面に付着させたり(流動浸せき法)、底部に高電圧極を配置したジンクリッチ粉体塗料の浮動層を作り、その上に形成されるジンクリッチ粉体塗料の流動層にアースした鋳鉄管を近づけることで静電力により鋳鉄管外面に付着させたりしてもよい(静電流動浸せき法)。
次に、ジンクリッチ粉体塗料の塗装に続けて、上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料をジンクリッチ粉体塗料の上に塗布する。上塗り塗膜を塗布する手段としては、例えば、下塗り塗装の場合と同様に、静電粉体吹付け法を用いることができる。また、ほかにも、流動浸せき法、静電流動浸せき法などを用いることができる。
これにより、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料が鋳鉄管の余熱で溶融することにより、従来のような乾燥炉による焼き付け処理を行なわなくても、下塗り塗膜と上塗り塗膜との複層塗膜が鋳鉄管外面に形成される。複層塗膜の膜厚は、200〜400μmとし、好ましくは、下塗り塗膜の膜厚と上塗り塗膜の膜厚がそれぞれ150〜200μmとなるようにするとよい。
この発明の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法は、下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布したときに、鋳鉄管の余熱によりジンクリッチ粉体塗料が溶融して硬化反応が進行するので、上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布するときに、ジンクリッチ粉体塗料が硬化反応の進行した半硬化状態もしくは硬化反応の完了した硬化状態となっている。このため、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とが混じり合うコンタミネーションが起きにくく、防錆効果の優れた安定した下塗り塗膜を得ることができる。また、ジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料を鋳鉄管の余熱で溶融することにより、下塗り塗膜と上塗り塗膜を形成するようにしたので、従来のようにジンクリッチ粉体塗料と他の粉体塗料とで計2回焼付け処理する場合と比べて、塗膜形成作業が簡単である。
上記実施形態では、下塗り塗膜と上塗り塗膜とからなる複層塗膜を形成したが、下塗り塗膜と中塗り塗膜と上塗り塗膜とからなる複層塗膜を形成してもよい。この場合、中塗り塗膜としては、例えば、エポキシ系粉体塗料、ポリエチレン系粉体塗料、ポリエステル系粉体塗料、エポキシ/ポリエステル系粉体塗料で形成することができる。また、複層塗膜の膜厚は200〜400μmとする。
また、上記実施形態では、鋳鉄管の外面を塗装の対象としたが、鋳鉄管の継手部内面、すなわち、受口内面に対しても上記の各構成を適用できる。

Claims (4)

  1. 下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管外面に塗布する前に鋳鉄管を加熱し、加熱された鋳鉄管外面に前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布した後、そのジンクリッチ粉体塗料の上に上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布し、前記ジンクリッチ粉体塗料と前記他の粉体塗料を前記鋳鉄管の余熱で溶融することにより、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜を含む複層塗膜を前記鋳鉄管外面に形成するようにした鋳鉄管の複層塗膜の形成方法。
  2. 下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料を鋳鉄管の継手部内面に塗布する前に鋳鉄管を加熱し、加熱された鋳鉄管の継手部内面に前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布した後、そのジンクリッチ粉体塗料の上に上塗り塗膜を形成する他の粉体塗料を塗布し、前記ジンクリッチ粉体塗料と前記他の粉体塗料を前記鋳鉄管の余熱で溶融することにより、前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜を含む複層塗膜を前記鋳鉄管の継手部内面に形成するようにした鋳鉄管の複層塗膜の形成方法。
  3. 前記ジンクリッチ粉体塗料を塗布する前の前記鋳鉄管の温度を230〜250℃とした請求項1又は2に記載の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法。
  4. 前記下塗り塗膜と前記上塗り塗膜との複層塗膜の膜厚を200〜400μmとした請求項3に記載の鋳鉄管の複層塗膜の形成方法。
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