JP4347712B2 - 粉体塗装方法及び粉体塗装装置 - Google Patents
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Description
これらジンクリッチプライマーやジンクリッチペイントは、有機溶剤を必須成分とするため、環境の問題がある。
このため、近年、ジンクリッチの下塗り層を、粉体塗装によって行うことが検討され、亜鉛金属末と、エポキシ樹脂粉末と、硬化剤を主成分とする無溶剤型のジンクリッチ粉体塗料が開発されている(特許文献1)。
そして、この下塗り塗膜の上には、耐候性あるいは美粧性を向上させるために、上塗り塗膜を、ポリエステル系やアクリル系の粉体塗料の上塗り層を塗布して形成することが多い。
このような上塗り塗膜を形成するために、粉体塗料の上塗り層を塗布する場合、従来、下塗り塗膜を形成するジンクリッチ粉体塗料の下塗り層は、上塗り層を塗布する前に、少なくとも下塗り層が仮硬化する程度まで、予め焼き付け処理を行っている。
このように、上塗り塗膜を形成する粉体塗料を塗布する前に、下塗り層のジンクリッチ粉体塗料を予め加熱硬化させるのは、下塗り層が加熱硬化していなければ、焼き付け処理する際に、下塗り層のジンクリッチ粉体塗料と上塗り層の粉体塗料とが、混じり合うコンタミという現象が生じ易く、防錆効果の優れた安定した下塗り塗膜が得られないと共に、上塗り層にもブツが生じ、綺麗な上塗り塗膜が得られないためである。
ところが、下塗り層の粉体塗料を加熱硬化させる工程を、上塗り層を塗布する前に設けることが必須であるということは、粉体塗装ラインが長くなると共に、設備費も高くなり、また、エネルギーコストも高く、塗装時間も長いという問題がある。
そこで、この発明は、上塗り層の粉体塗料を塗布する前に行う、ジンクリッチ粉体塗料の下塗り層の加熱硬化工程を省略することにより、省設備、省スペース、塗装時間の短縮、省エネルギーを図ることができる、粉体塗装方法及び粉体塗装装置を提供しようとするものである。
そして、この発明の粉体塗装方法は、被塗物に、ジンクリッチ粉体塗料の下塗り層を塗布する塗装機と、粉体塗料の上塗り層を塗布する塗装機と、下塗り層と上塗り層を同時加熱する中赤外線ヒータ又は近赤外線ヒータを備える加熱炉とを順次設置した粉体塗装装置によって実施することができる。
したがって、この発明によれば、上塗り層を塗布する前に、下塗り層のジンクリッチ粉体塗料を予め加熱硬化させる必要がないので、省設備、省スペース、塗装時間の短縮、省エネルギーを図ることができる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂の少なくとも1種、あるいはこれらを組み合わせたものを使用することができる。
バインダー成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する場合、亜鉛金属末との混合比率は、バインダー成分100重量部に対して亜鉛金属末100〜550重量部である。
また、バインダー成分としてのエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂との少なくとも2種である場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および結晶性エポキシ樹脂の混合比率は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して結晶性エポキシ樹脂1〜50重量部であり、これらのエポキシ樹脂を含有するバインダー成分と亜鉛金属末との混合比率は、バインダー100重量部に対して亜鉛金属末100〜800重量部であることが好ましい。
また、バインダー成分として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用する場合、亜鉛金属末の混合比率は、バインダー成分100重量部に対して亜鉛金属末100〜800重量部であることが好ましい。
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また、バインダー成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂及び結晶性エポキシ樹脂の少なくとも3種を含有する場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の混合比率は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対してビスフェノールF型エポキシ樹脂1〜9900重量部及び結晶性エポキシ樹脂1〜5000重量部であり、これらのエポキシ樹脂を含有するバインダー成分と亜鉛金属末との混合比率は、バインダー成分100重量部に対して亜鉛金属末100〜1000重量部であることが好ましい。
次に、この発明で使用するジンクリッチ粉体塗料の亜鉛金属末は、平均粒径が30μm程度のものが好ましい。
この発明で上塗り層の粉体塗料としては、エポキシ系粉体塗料、ポリエステル系粉体塗料、あるいはアクリル系粉体塗料を使用することができる。
この発明で使用する中赤外線ヒータの波長は、4〜3μmであり、近赤外線ヒータの波長は、0.78〜1.4μmである。
この発明で、下塗り層のジンクリッチ粉体塗料、上塗り層の粉体塗料を塗布する方法としては、コロナ放電式塗装機又は摩擦帯電式塗装機による静電塗装方法、流動浸漬法、あるいは静電流動浸漬法を使用することができる。
この発明では、中赤外線ヒータ又は近赤外線ヒータにより同時加熱した後に、焼付け硬化を完全に行うために、熱風循環式の焼付け炉による加熱を行うようにしてもよい。
まず、脱脂などの前処理を行った後、塗装不要箇所にマスキングを行い、摩擦帯電式粉体塗装機の塗装ラインのコンベアーに被塗物をハンギングし、被塗物をジンクリッチ粉体塗料の塗装ブースに送り、塗装ブース内で、ジンクリッチ粉体塗料を60〜80μmの厚さで塗布する。
その後、すぐに別の塗装ブースに送り、この塗装ブース内で、ポリエステル系粉体塗料を、50〜70μmの厚さに塗布する。
内層のジンクリッチ粉体塗料と外層のポリエステル粉体塗料との総膜厚は、110〜150μmである。
この内外2層の粉体塗料を重ねて塗布した被塗物を、1.4μmの波長の中赤外線ヒータを備える熱処理炉に送って、加熱処理を行った。
その結果、内層のジンクリッチ粉体塗料と、外層のポリエステル粉体塗料とが混ざり合わず、良好なジンクリッチ粉体塗料の塗膜の表面に、ブツのない綺麗なポリエステル粉体塗料の塗膜を形成することができた。
上記熱処理炉を通過する際の炉内の雰囲気温度と、内部の被塗物の表面温度、外層塗膜の表面温度をそれぞれ測定した結果を示すと表1の通りであり、内層のジンクリッチ粉体塗料と、外層のポリエステル粉体塗料とがほぼ同じ温度で加熱処理が進行しているということが確認できた。なお、コンベアースピードは、1.0m/minであった。
この場合も、コンタミ現象の発生もなく、ブツのない綺麗な表面状態が得られた。
この近赤外線を使用する熱処理炉を通過する際の炉内の雰囲気温度と、被塗物の表面温度、外層塗膜の表面温度をそれぞれ測定した結果を示すと表2の通りであり、近赤外線の場合も、中赤外線と同様に、内層のジンクリッチ粉体塗料と、外層のポリエステル粉体塗料とをほぼ同じ温度で加熱処理が進行しているということが確認できた。なお、コンベアースピードは、1.0m/minであった。
Claims (4)
- 被塗物に、ジンクリッチ粉体塗料の下塗り層を塗布し、この下塗り層の表面に、粉体塗料の上塗り層を塗布した後、下塗り層と上塗り層を、中赤外線ヒータ又は近赤外線ヒータにより同時加熱して、下塗り塗膜と上塗り塗膜を形成することを特徴とする粉体塗装方法。
- 被塗物に、ジンクリッチ粉体塗料の下塗り層を塗布する塗装機と、粉体塗料の上塗り層を塗布する塗装機と、下塗り層と上塗り層を同時加熱する中赤外線ヒータ又は近赤外線ヒータを備える加熱炉とを順次設置した粉体塗装装置。
- 上記加熱炉に続けて、熱風循環焼付け炉を設置した請求項2記載の粉体塗装装置。
- 下塗り層を塗布する塗装機と、上塗り層を塗布する塗装機が、コロナ放電式塗装機又は摩擦帯電式塗装機である請求項2又は3に記載の粉体塗装装置。
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