JP2012027231A - 偏光板基材用ポリエステルフィルム - Google Patents

偏光板基材用ポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 離型フィルムが貼り合わされた状態の偏光板について、歪みやムラのような欠陥や異物の有無の検査をクロスニコル法による目視検査によって行う場合に好適なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも1種類以上の遷移金属系触媒を0.5〜5.0重量%含有するシリコーン系離型層をポリエステルフィルムの片面に有する離型フィルムであり、当該離型フィルムのヘーズが7%以下、写像性値が89%以上あることを特徴とする偏光板基材用ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学用途向けの光学検査に有利な偏光板基材用ポリエステルフィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において使用されている。しかし、その用途が多様化するにつれて、ポリエステルフィルムの加工条件や使用条件が多様化し、偏光板用の離型ポリエステルフィルムとして使用する場合、異物検査の際、離型フィルム中の粒子成分が輝点となり、検査精度が低下する等の問題が生じている。
近年、携帯電話やパーソナルコンピューターの急速な普及に伴い、従来型のディスプレイであるCRTに比べ、薄型軽量化、低消費電力、高画質化が可能である液晶ディスプレイ(LCD)の需要が著しく伸びつつあり、LCDの大画面化についてもその技術の成長は著しい。LCDの大画面化の一例として、最近では、30インチ以上の大型TV用途にLCDが使用されている。大画面化されたLCDにおいては、LCD内に組み込まれたバックライトの輝度を高めることや、輝度を向上させるフィルムを液晶ユニット内に組み込むこと等により、大画面で明るいLCDとする場合が多い。
また、このようないわゆる高輝度タイプのLCDでは、ディスプレイ中に存在する小さな輝点が問題となる場合が多く、ディスプレイ中に組み込まれる偏光板、位相差板または位相差偏光板といった構成部材においては、これまでの低輝度タイプのLCDでは問題にならなかったような微小なサイズの異物が問題となってきている。このため、製造工程における異物の混入を防ぐ一方で、万一異物が混入した場合であっても欠陥として確実に認知できるような検査精度の向上も重要となってきている。
従来、ポリエステルフィルム中の粒子はフィルムの滑り性、巻き特性を確保するために通常使用されるものであり、適度な粒径と配合量を満足しなければ、所望の滑り性を確保できなかったり、巻き特性が悪化したりして、その結果、生産性の悪化を招いてしまうものである。しかしながら、通常使用される範囲の粒径、配合量とした場合、先に述べたとおり、偏光板用離型フィルムとして使用された際に、異物検査工程で当該粒子が輝点となり、検査に支障を来すことが問題となっている。
例えば偏光板の欠陥検査としては、クロスニコル法による目視検査が一般的であり、さらに例えば40インチ以上の大型TV用途に使用する偏光板等では、クロスニコル法を利用した自動異物検査器による検査も実施されつつある。このクロスニコル法によれば、2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて消光状態とし、異物や欠陥があればそこが輝点として現れるので、目視による欠陥検査、または、ラインセンサカメラ等による自動欠陥検査ができる。ここで、通常、偏光板には粘着剤層が設けられ、そのための離形フィルムとして離型層を設置したポリエステルフィルムが使用されている。かかる構成の製品を検査する場合、2枚の偏光板の間に離型ポリエステルフィルムが挟み込まれた状態でクロスニコル検査を実施することになる。一般に、離型ポリエステルフィルムをこれに用いた場合には、クロスニコル法の検査において、異物や欠陥が見にくくなり、それらを見逃しやすくなるという不具合が生じる場合がある。
これらに関し、2枚の偏光板の間にポリエステルフィルムを挟み込んだ際、リタデーション値がある範囲内である場合に検査性が向上するといったもの(特許文献1参照)が開示されているが、近年の高度な品質を要求されるレベルにおいてはこれらを使用しても、欠陥を確実に見いだすための検査を実施する場合には、精度が不足する場合がある。
また、偏光板の歪みやムラと言った欠陥を検査する場合には、蛍光灯下での反射目視検査が行われることがある。この場合、離形フィルムを介して、その下に設けられている偏光板の検査を行うため、離形フィルムが極端に白いと、偏光板の欠陥が見にくくなり、それらを見逃しやすくなるという不具合が生じる場合がある。これに関し、フィルムヘーズと写像性値がある範囲内である場合に検査性が向上するといったもの(特許文献2参照)が開示されているが、更に高度な品質を要求されるレベルにおいてはこれらを使用しても、精度が不足する場合がある。
特開2000−338327号公報 特開2009−161574号公報 特願2010−118999号公報 特願2010−119000号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、偏光板のクロスニコル法による検査において、高度な精度を実現できる離型ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも1種類以上の遷移金属系触媒を0.5〜5.0重量%含有するシリコーン系離型層をポリエステルフィルムの片面に有する離型フィルムであり、当該離型フィルムのヘーズが7%以下、写像性値が89%以上あることを特徴とする偏光板基材用ポリエステルフィルムに存する。
本発明によれば、偏光板、位相差板等の光学検査で、離型ポリエステルフィルムの輝点が極力少なく、異物検査精度を高めることができる偏光板用途離型ポリエステルフィルムを提供することができるため、本発明の工業的価値は高い。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。
かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本発明で用いるポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
フィルム中に配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンおよび特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。これら粒子の配合量は、フィルムを構成するポリエステルに対し、通常1重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.6重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面を適度な粗面にすることができず、フィルム製造工程において、表面のキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれることがある。
ポリエステルフィルム中に含有される粒子の平均粒径は、通常0.02〜5μmであり、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜1.8μmの範囲である。粒径が00.2μm未満の場合には、フィルム表面を適度な粗面にすることができないことがあり、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。粒径が5μmを超える場合には、偏光板離型用フィルムとして用いられた場合、輝点となり異物検査に支障を来す恐れがある。
一方、フィルムの透明性を向上させるため、2層以上の積層フィルムとした場合、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか1層であり、もちろん表裏両層に粒子を配合することもできる。かかる積層フィルムとした場合の粒子の配合量は、表層を構成するポリエステルに対し、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.6重量%の範囲である。
また、用いられる粒子の粒度分布はシャープな物が好ましい。具体的には、粒度分布のシャープさを表す指標である粒度分布値が1.0〜2.0のものが好ましい。なお、ここで粒度分布値とは、粒度分布値d25/d75(d25、d75は粒子群の積算堆積を大粒子側から計算し、それぞれ総体積の25%、75%に相当する粒径(μm)を示す)により定義される値である。粒度分布値が2.0を超える場合、粗大粒子が輝点となり、同様に異物検査に支障を来す恐れがある。
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明で用いるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることがさらに好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、主配向軸に対して、フィルム面内方向における直角方向の屈折率(nβ)が1.6400以下であることが好ましく、1.6400を超える場合には、フィルムの配向角の変動が大きくなる傾向にあり、偏光板の安定した検査の障害となることがあり、粒子のボイド形成が顕著になることもあり、その場合、偏光板検査の際に輝点となって見えやすく、検査の障害となる。
本発明のフィルムの総厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で有れば特に限定されるものではないが、通常4〜100μm、好ましくは9〜50μmの範囲である。
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとをエステル交換反応させ、その生成物を重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。
延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良、耐候性および表面硬度の向上等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としてはオフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系が好ましい。
ポリエステルフィルムの表面に塗布層を形成する方法は、特に制限されないが、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布後、フィルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。また、塗布層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。ポリエステルフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。
本発明において用いる塗布液は、通常、安全性や衛生性の観点から水を主たる媒体として調整されていることが好ましい。水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的あるいは造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、主たる媒体である水と混合して使用する場合、水に溶解する範囲で使用することが好ましいが、長時間の放置で分離しないような安定した乳濁液(エマルジョン)であれば、水に溶解しない状態で使用してもよい。有機溶剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
本発明において塗布層上に形成する離型層は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではない。その中でも、硬化型シリコーン樹脂を含有するものによれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
硬化型シリコーン樹脂の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。また、上述のとおり、離型層中にアミノ基を有するシラン化合物を添加することもある。
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。本発明における離型層の塗布量は、通常0.01〜1g/mの範囲である。
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
また、粘着剤層または離型層の塗膜の乾燥および/または硬化(熱硬化、電離放射線硬化等)は、それぞれ個別又は同時に行うことができる。同時に行う場合には、80℃以上の温度で行うことが好ましい。乾燥および硬化の条件としては、80℃以上で10秒以上が好ましい。乾燥温度が80℃未満または硬化時間が10秒未満では塗膜の硬化が不完全であり、塗膜が脱落しやすくなる傾向がある。
本発明のポリエステルフィルムの塗布層を綺麗かつ頑丈にするため、遷移金属系触媒を用いる。塗布層中の遷移金属系触媒含有量は、0.5〜5.0重量%、好ましくは1.5〜4.0重量%の範囲である。塗布層中の遷移金属系触媒含有量が0.5重量%よりも低い場合、剥離力の不具合や、塗布層での硬化反応が不十分になるため、面状悪化などの不具合を生じる場合があり、一方、塗布層中の遷移金属系触媒の含有量が5.0重量%を超える場合には、コストがかかる、また、反応性が高まり、ゲル異物が発生する等の工程不具合を生じてしまう。
本発明においては、通常のオリゴマー含有量のポリエステルからなる層の少なくとも片側の表面に、オリゴマー含有量の少ないポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、かかる構造を有する場合、本発明で得られる離型フィルム用ポリエステルフィルムにおいて、析出したオリゴマーによる輝点を防止する効果が得られ、特に好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルム内における、実施例に記載した測定法における配向角の変動をMOR_Cの値で、1.8〜2.6であることが好ましく、さらに好ましくは2.0〜2.4である。MOR_Cの値が2.6を超える場合には、性膜性が悪くなったり、偏光板を検査する際に偏光板の位置により透過光強度が変動し、偏光板の安定した検査の障害となったりすることがある。MOR_Cの値が1.8よりも低い場合には、生産性が悪い傾向がある。
本発明において、実施例に記載した測定法におけるフィルムの写像性値は89%以上であることが必要である。フィルムの写像性値が89%を下回る場合、偏光板離型用フィルムとして用いられた場合、透過光による偏光板の欠陥検査の際に像が歪み、目視検査や、自動検査に支障を来す。
また、フィルムのヘーズは7%以下であり、好ましくは3〜5%であり、180℃で5分間熱処理後のフィルムのヘーズは8%以下であることが好ましい。フィルムヘーズが7%を超えると、透過光検査時、視野が白濁して検査に支障を来す。また、偏光板を製造する工程には熱処理工程が必要な場合がある。その際、熱処理された時のフィルムヘーズが8%を超えると、透過光検査時、視野が白濁して検査に支障を来すことがある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)ポリエステルフィルムの透過率測定
JIS − K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−300Aによりポリエステルフィルムの全光線透過率を測定した。次のような基準で判断する。
(4)ポリエステルフィルムの加熱収縮率測定
ポリエステルフィルムを縦長さの方向(以後、MDと略する)と横幅の方向(以後、TDと略する)にそれぞれ、任意の長さL(cm)でサンプリングする。続いて、そのサンプルをオーブンで160℃、5分の加熱を行い、そのサンプルをオーブンから取り出して長さl(cm)を測定する。この操作を3回行い、平均値を加熱収縮率の値として採用する。下記式で加熱収縮率は算出できる。
加熱収縮率(%)={(L−l)/L}×100
(5)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
(6)ポリエステルフィルムのマイクロ波分子配向計によるMOR_C値測定
王子計測機器株式会社製のマイクロ波方式分子配向計を用い、透過マイクロ波強度パターンからMOR_C値を求めた。
(7)写像性値の測定
JIS−K7105に準じ、スガ試験機(株)製写像性測定機 ICM−1により、透過法にてフィルムの写像性値を測定した。なお、値は、光学くし0.125mmのものを読みとる。次のような基準で判断する。
○:89%以上
×:89%よりも小さな値
(8)ポリエステルフィルムのヘーズ(濁度)測定
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより、フィルムのヘーズを測定した。また、熱処理後のヘーズは、無張力状態で180℃雰囲気中5分間、熱処理したフィルムのヘーズを測定した。次のような基準で判断する。
<フィルムヘーズ>
○:7%以下
×:7%よりも大きな値
<加熱時のフィルムヘーズ>
○:8%以下
×:8%よりも大きな値
(9)実用特性
<反射光下での目視検査性>
偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、蛍光灯反射下で偏光板を目視にて観察し、反射光下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、A4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:検査性良好
△:ほぼ問題なく検査できる
×:検査性不良
○および△のものが実使用上問題のないレベルである。
<クロスニコル下での目視検査性>
偏光板検査を考慮に入れて、フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とした。ここで上記偏光板を作成する際、粘着剤と偏光フィルムとの間に50μm以上の大きさを持つ黒色の金属粉(異物)を50個/mとなるように混入させた。このようにして得られた異物を混入させた偏光板離型フィルム上に配向軸が離型フィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下で粘着剤と偏光フィルムとの間に混入させた異物を見いだせるかどうかを下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの幅方向に対し中央部と両端部の計3ヶ所から、それぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:異物認知性良好
△:比較的問題なく異物認知できる。
×:異物認知性不良
○および△のものが実使用上問題のないレベルである。
上記判定基準中、○以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
<離型特性>
粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムが綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する
×:離型フィルムに粘着剤が付着する
(10)総合評価
製膜性、生産性、検査特性等、全てを考慮に入れた評価を行う。次のような基準で判断する。
○:生産しても充分に製品として供給できる
△:生産性が良い、かつ、光学検査での不具合の頻度が少ない
×:生産性が悪い。光学検査での不具合が多発する。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(a)を得た。
<ポリエステル(b)の製造>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径1.0μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が0.6重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(b)を得た。得られたポリエステル(b)は極限粘度0.63であった。
<ポリエステル(c)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.45に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(c)を得た。このポリエステルの固有粘度は0.45であった。
<ポリエステル(d)の製造>
このポリエステルチップを固相重縮合法にて固有粘度を上げた。予備結晶化槽にて170℃の窒素雰囲気化にて0.5時間処理した後、不活性ガスを流す塔式乾燥機を用い、200℃の温度下にて水分率が0.005%になるまで乾燥した。その後固相重合槽へ送り、240℃にて3時間、固相重合を行い固有粘度0.70のポリエステル(d)を得た。
<ポリエステル(e)の製造>
ポリエステル(d)を製造する際、固相重合槽にて5時間固相重合を行い、固有粘度0.80のポリエステル(e)を得た。
<ポリエステル(f)の製造>
ポリエステル(b)の製造方法において、添加粒子を、平均粒子径1.0μmの合成炭酸カルシウム粒子に、ポリエステルに対する含有量を、2.0重量%にした以外は、ポリエステル(b)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(f)を得た。得られたポリエステル(f)は極限粘度0.63であった。
実施例1:
〈ポリエステルフィルムの製造〉
表層の原料としてポリエステル(e)83wt%と、ポリエステル(b)17wt%を混合し、中間層の原料として、ポリエステル(a)を、2台のベント付き押出機に各々供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で5.1倍の横延伸を施した後、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4000mmのマスターロールを得た。このマスターロールの端から1400mmの位置よりスリットを行い、コアに1000m巻き取りし、ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは38μm(層構成:表層4μm/中間層30μm/表層4μm)であった。
得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成−Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件でロール状の剥離力が20mN/cm、写像性値が90.6%、熱処理後のヘーズ4.3%の離型フィルムを得た。
<離型剤組成−A>
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 20部
触媒(PL−50T:信越化学製) 0.3部(1.5wt%)
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)
得られたポリエステルフィルムは、下記方法で偏向板を作成し、光学特性の検査性と剥離特性の評価を行った。得られた離型フィルムは反射による検査性良好、異物認知性良好であり、かつ、偏光板綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られなかった。
<離型フィルム付き偏光板の製造>
偏光板に下記に示すアクリル粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を30秒で通過させた後、離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤を介して離型フィルムと偏光フィルムが密着された離型フィルム付き偏光板を作成した。フィルムの貼り合せ方向は、離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように行った。
・アクリル粘着剤塗布液
アクリル粘着剤(オリバインBPS429−4:東洋インキ製) 100部
硬化剤(BPS8515:東洋インキ製) 3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 50部
実施例2〜4:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の粒子含有ポリエステル種、粒子含有ポリエステルの配合量を変更する、塗布層中離型剤組成の遷移金属系触媒含有量を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表1に示す。
Figure 2012027231
比較例1〜5:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の粒子含有ポリエステル種、粒子含有ポリエステルの配合量を変更する、塗布層中離型剤組成の遷移金属系触媒含有量を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
Figure 2012027231
※1)コストが高いため、生産性に問題がある。
本発明のフィルムは、偏光板基材用途の光学検査法において、高度な精度を実現できる、離型ポリエテルフィルムとして好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. 少なくとも1種類以上の遷移金属系触媒を0.5〜5.0重量%含有するシリコーン系離型層をポリエステルフィルムの片面に有する離型フィルムであり、当該離型フィルムのヘーズが7%以下、写像性値が89%以上あることを特徴とする偏光板基材用ポリエステルフィルム。
  2. 180℃で5分間熱処理後のヘーズが8%以下であることを特徴とする請求項1記載の偏光板基材用ポリエステルフィルム。
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