JP2012026514A - 電動車両の回生制動時差動制限制御装置 - Google Patents

電動車両の回生制動時差動制限制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ディファレンシャルギヤ装置が介在する、スプリットμ路での回生制動時においてエネルギー回収効率を向上させ得るようにした差動制限制御装置を提供する。
【解決手段】S301、S303で再設定された差動制限トルクと、これに対し、S305で、操舵角θに応じた、大速舵で小さな差動制限トルクのリミット値Tlimθを設定し、これと、S303で再設定したTdiffとの小さい方を差動制限トルクTdiff=min(Tdiff, Tlimθ)として再設定する。S307では、横加速度YGに応じた、大横加速度ほど大きな差動制限トルクのリミット値TlimYGを設定し、これと、Tdiffinitとの小さい方min(Tdiffinit, TlimYG)を、S305で再設定したTdiffと比較し、大きい方を最終的な差動制限トルクTdiff=max{min(Tdiffinit, TlimYG),Tdiff}とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、電動モータのみを動力源とする電気自動車や、エンジンおよび電動モータからのエネルギーを用いて走行するハイブリッド車両のような電動車両がディファレンシャルギヤ装置を介し駆動輪を回生制動されている間において、これら駆動輪間で路面摩擦係数が異なる場合に回生制動が損なわれることのないようにするディファレンシャルギヤ装置の差動制限技術に関するものである。
上記のような電動車両としては従来、例えば特許文献1に記載のような電気自動車が提案されている。
この電動車両は、電動モータからの駆動力(正駆動力)をディファレンシャルギヤ装置のような減速装置により左右駆動輪に分配出力することにより走行可能なものである。
かかる電動車両の場合、駆動力が逆に車輪から電動モータに向かう逆駆動時は、電動モータを発電機として作用させ、これへの発電負荷により車輪を回生制動すると共に、発電電力を電動モータ用のバッテリへ蓄電することによりエネルギー効率を高めるのが普通である。
かかる回生制動時は、車輪から電動モータに向かう逆駆動力が、ディファレンシャルギヤ装置のような減速装置を、正駆動時とは逆方向に辿る。
特開昭53−027913号公報
ところで上記のごとく、回生制動時に車輪からの逆駆動力がディファレンシャルギヤ装置のような減速装置を経て電動モータに向かう電動車両にあっては、
冬期の雪道・凍結路走行時や、雨天時のマンホール通過時や、高速走行中に片輪がハイドロプレーニング現象を発生した時のように、左右輪の路面摩擦係数が異なる場合に(以下、このような走行路を総称してスプリットμ路と言う)、以下の理由から回生制動が損なわれるという問題を生ずる。
つまりスプリットμ路上での回生制動中はディファレンシャルギヤ装置の差動により、路面摩擦係数が低い方の低μ側車輪の回生制動トルクしか車両の回生制動に供されず、路面摩擦係数が高い方の高μ側車輪の回生制動能力を活用できていない。
このため、車両全体としての回生制動が不十分なものとなり、回生制動によるエネルギーの回収が十分でなくて、エネルギー効率の向上に関し改善の余地がある。
また、回生制動により得られる車両の減速度も、低μ側車輪の路面摩擦分しか発生し得ず、不足気味となって所謂減速度抜けという現象を発生する。
なお、高速旋回走行時のように車両に大きな横加速度が作用する大横G旋回中においても、旋回方向内側から旋回方向外側への荷重移動により、旋回方向内側車輪の輪荷重が低下すると当時に、旋回方向外側車輪の輪荷重が増大することから、
旋回方向内側車輪の路面摩擦係数が低下すると当時に、旋回方向外側車輪の摩擦係数が増大することによって、見かけ上、上記スプリットμ路において生ずると同様な現象、つまり回生制動不十分(エネルギー回収不足および減速度不足)の現象が発生する。
本発明は、かかる実情に鑑み、高μ側車輪の回生制動能力を活用することにより上記の現象を緩和し得るようにした電動車両の回生制動時差動制限制御装置を提供することを目的とする。
この目的のため、本発明による電動車両の回生制動時差動制限制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる電動車両を説明するに、これは、
差動制限式ディファレンシャルギヤ装置を介し回転電機からの駆動力を車輪に伝えて走行可能であると共に、駆動力が逆に車輪から回転電機に向かう逆駆動時は該回転電機への発電負荷により上記車輪を回生制動し得るようにしたものである。
本発明は、かかる電動車両において、
上記回生制動時に上記ディファレンシャルギヤ装置を差動制限状態となし、該差動制限の程度を上記回生制動トルクに応じて制御する差動制限制御手段を設けた構成に特徴づけられる。
かかる本発明の構成によれば、回生制動時にディファレンシャルギヤ装置を差動制限状態となし、該差動制限の程度を回生制動トルクに応じて制御するため、
回生制動時は回生制動トルクに応じ、ディファレンシャルギヤ装置を介した車輪間の差動が制限されてこれら車輪間が回生制動トルクに応じた結合状態にされることとなる。
このため、スプリットμ路での走行中や、大横G旋回中において、電動モータによる回生制動トルクが、路面摩擦係数の低い低μ側車輪だけでなく、差動制限分だけ路面摩擦係数の高い高μ側車輪にも伝達されることになり、
高μ側車輪の回生制動能力をも活用しつつ、車両全体の回生制動を十分なものとなすことができる。
従って、スプリットμ路での走行中や、大横G旋回中においても、回生制動によるエネルギーの回収が十分なものとなり、エネルギー効率の向上を実現し得る。
また、回生制動により得られる車両の減速度も、高μ側車輪の回生制動による減速度分が加算されて十分なものとなり、前記した減速度抜けの現象が発生するという問題も回避することができる。
本発明の一実施例になる回生制動時差動制限制御装置を具えた電動車両の駆動系および制動系を示す概略システム図である。 図1におけるブレーキコントローラが実行する回生制動時差動制限制御のメインルーチンを示すフローチャートである。 図2のメインルーチンにおける差動制限トルクの演算処理に関したサブルーチンを示すフローチャートである。 図3のサブルーチンにおいて用いる、車速に応じた差動制限トルクのリミット値を示す変化特性図である。 図3のサブルーチンにおいて用いる、操舵角に応じた差動制限トルクのリミット値を示す変化特性図である。 図3のサブルーチンにおいて用いる、横加速度に応じた差動制限トルクのリミット値を示す変化特性図である。 図2のメインルーチンにおけるスプリットμ路判定に関したサブルーチンを示すフローチャートである。 図2のメインルーチンにおけるヨーモーメント補正処理に関したサブルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<構成>
図1は、本発明の一実施例になる回生制動時差動制限制御装置を具えた電動車両の駆動系および制動系を示す概略システム図であり、
1L,1Rはそれぞれ左右前輪を示し、また2L,2Rはそれぞれ左右後輪を示す。
図1に示した本実施例の電動車両は、左右前輪1L,1Rを回転電機としての電動モータ3により駆動することで走行可能な電気自動車とするが、電動車両は電気自動車に限られず、ハイブリッド車両でもよい。
ただし電動モータ3と左右前輪1L,1Rとの間には終減速機4およびディファレンシャルギヤ装置5を介在させ、
電動モータ3からの動力が終減速機4およびディファレンシャルギヤ装置5を順次経て、ディファレンシャルギヤ装置5による差動機能のもと、左右前輪1L,1Rへ分配出力されることで電気自動車の走行を可能ならしめるものとする。
一方でディファレンシャルギヤ装置5は差動制限機構5aを具えて、左右前輪1L,1R間の差動(回転差)を制限可能な差動制限式ディファレンシャルギヤ装置とする。
図1では、差動制限機構5aを湿式多板クラッチで構成し、その締結力(締結油圧)を高くするほどディファレンシャルギヤ装置5の差動制限程度が大きくなるものとする。
図1の電気自動車は、左右前輪1L,1Rをステアリングホイール(図示せず)の操舵に応動して転舵することにより操向されるが、この操舵をパワーステアリング装置(図示せず)により助勢して軽快なステアリング操作を可能にすると共に、この助勢力を適宜に変更可能なものとする。
しかして図1の電気自動車は、上記ステアリングホイールおよびパワーステアリング装置による操舵とは切り離して、左右前輪1L,1Rを前輪自動操舵機構1S(舵角制御手段)で舵角調整することにより、また左右後輪2L,2Rを後輪自動操舵機構2S(舵角制御手段)で転舵することによっても、ヨーモーメントを付与され得るものとする。
電動モータ3の駆動制御に際しては、統合コントローラ6が、バッテリ(蓄電器)7の電力をインバータ8により直流−交流変換して、またこの交流電力をインバータ8による制御下で電動モータ3へ供給することで、
電動モータ3のトルクが統合コントローラ6からの目標モータトルクTmotに一致するよう、当該電動モータ3の駆動制御を行うものとする。
ここで統合コントローラ6は、車速Vおよびアクセル開度APOから目標モータトルクTmotを求め、
この目標モータトルクTmotは、トルク値(停車時の0を含む)のほかに、電気自動車の前進・後退制御のための回転方向に係わる情報を内包するものとする。
また統合コントローラ6からの目標モータトルクTmotが、回生制動トルク指令に呼応して電動モータ3に回生制動作用を要求するものである場合、統合コントローラ6はインバータ8を介し、バッテリ7が過充電とならないような発電負荷を電動モータ3に与え、左右前輪1L,1Rに回生制動トルクを付与するものとする。
この時統合コントローラ6は、電動モータ3が回生制動により発電した電力を、インバータ8により交流−直流変換してバッテリ7に充電する。
本実施例の電気自動車は、上記の回生制動のほかに、以下の摩擦制動によっても制動可能とし、上記した電動モータ3による回生制動システムと、以下に概略説明する摩擦制動システムとの双方を併設した、所謂複合ブレーキを搭載する。
摩擦制動システムは、図示せざるブレーキペダルおよびマスターシリンダを具え、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、そのペダル踏力(制動操作力)にマスターシリンダが応動してマスターシリンダ液圧を発生する。
つまりマスターシリンダは、ブレーキペダル踏力をマスターシリンダ液圧に変換し、このマスターシリンダ液圧により、左右前輪1L,1Rおよび左右後輪2L,2Rに個々に設けられているブレーキキャリパなどの摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rを液圧作動させて、対応車輪に摩擦制動トルクを付与する。
ところで摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rは、上記のマスターシリンダ液圧により作動されるほかに、これとは別にブレーキコントローラ11によって自動的に液圧作動され得るものとする。
ブレーキコントローラ11は、かかる摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rの作動制御に加えて、差動制限機構5aの動作、前輪自動操舵機構1Sの操作、および後輪自動操舵機構2Sの操作をも行い、これらにより本発明が狙いとする後述の回生制動時差動制限制御を行う。
このためブレーキコントローラ11は、統合コントローラ6との間で相互交信を行うようにし、またブレーキコントローラ11には、
車速Vを検出する車速センサ12からの信号と、
アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ13からの信号と、
ステアリングホイール操舵角θを検出する操舵角センサ14からの信号と、
車両挙動としてのヨーレートφおよび横加速度YGを検出する挙動センサ15からの信号と、
左右前輪1L,1Rおよび左右後輪2L,2Rの回転数を個々に検出する車輪速センサ16L,16Rおよび17L,17Rからの信号とをそれぞれ入力する。
<回生制動時差動制限制御>
ブレーキコントローラ11は、上記の入力情報をもとに図2のメインルーチンを実行して、以下のごとくに本発明が狙いとする回生制動時差動制限制御を行う。
先ずステップS1において、統合コントローラ6からの前記目標モータトルクTmotを読み込む。
ここで目標モータトルクTmotは、加速時の正駆動トルクであれば正極性を呈し、減速時の逆駆動トルクであれば負極性を呈するものとする。
次のステップS2においては、ステップS1で読み込んだ目標モータトルクTmotがTmot<0であるのか、Tmot≧0であるのかをチェックする。
Tmot<0ではなくて、Tmot≧0であると判別する場合は、目標モータトルクTmotが正極性であり(正駆動時であり)、図2の回生制動時差動制限制御が不要であるため、制御をそのまま終了させて、図2の制御から離れる。
ステップS2でTmot<0であると判別する場合は、目標モータトルクTmotが負極性(逆駆動時のもの)であって回生制動中であることを示しており(目標モータトルクTmot=回生制動トルク)、回生制動時差動制限制御が必要であることから、制御をステップS3以降に進めて以下の回生制動時差動制限制御を遂行する。
従ってステップS3は、本発明における差動制限制御手段に相当する。
ステップS3においては、目標モータトルクTmotに基づいて差動制限機構5aが発生すべき差動制限トルク(クラッチ締結力)tdiffを演算する。
当該ステップS3での演算は、図3に示すごとくにこれを行う。
先ずステップS301において、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)の絶対値から設定値αを差し引いて得られる差値(|Tmot|−α)を差動制限トルクTdiffと定める。
なお、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)および差動制限トルクTdiffは共に、ドライブシャフト端のトルクとする。
また設定値αは、左右回生制動車輪1L,1Rの路面摩擦係数間に一定以上の差がついた場合に、車輪1L,1R間に差回転が発生するようなトルク値に定める。
この設定値αは、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)や車速Vの関数としても良い。
具体的には、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)のβ%相当値を差動制限トルクTdiffとする、
Tdiff=Tmot×β[%]
などであり、このTdiffを差動制限トルク基本値Tdiffinitとしてメモリする。
ステップS302においては車速Vを読み込み、ステップS303においては、この車速Vに応じた差動制限トルクのリミット値TlimVを設定する。
この車速Vによる差動制限トルクのリミット値TlimVは、車速Vの変数や条件式にしてもよいし、図4に例示するごとく車速Vに関するマップとして与えてもよい。
しかし何れにしても、車速Vによる差動制限トルクのリミット値TlimVは、車速V<V1の低車速域、および車速V≧V3の高車速域で小さく、車速VがV2からV3へと上昇するにつれ徐々に低下するものとする。
ステップS303においては更に、上記車速Vによる差動制限トルクのリミット値TlimV と、ステップS301で求めた差動制限トルクTdiffとを比較し、小さい方を差動制限トルクTdiffとして以下のごとくに再設定する。
Tdiff=min(Tdiff, TlimV)
次のステップS304においては操舵角θを読み込み、ステップS305においては、この操舵角θに応じた差動制限トルクのリミット値Tlimθを設定する。
この操舵角θによる差動制限トルクのリミット値Tlimθは、操舵角θの変数や条件式にしてもよいし、図5に例示するごとく操舵角θに関するマップとして与えてもよい。
しかし何れにしても、操舵角θによる差動制限トルクのリミット値Tlimθは、操舵角θ≧θ1の大速舵角域で小さく、操舵角θがθ1から小さくなるにつれ徐々に増大するものとする。
なお本実施例では、車速Vによる差動制限トルクのリミット値TlimVと、操舵角θによる差動制限トルクのリミット値Tlimθとを個別に設定することにしたが、
例えば低車速時にのみ操舵角θによるリミットを入れるなど、2つのパラメータでリミッタを設定してもよい。
ステップS305においては更に、上記操舵角θによる差動制限トルクのリミット値Tlimθと、ステップS303で再設定した差動制限トルクTdiffとを比較し、小さい方を差動制限トルクTdiffとして以下のごとくに再設定する。
Tdiff=min(Tdiff, Tlimθ)
次のステップS306においては車両の横加速度YGを読み込む。
この横加速度YGは、次のステップS307で車両旋回方向内側車輪の荷重が抜ける状況を検出することから、図1における挙動センサ15の検出値を用いるのが好ましいが、挙動センサ15を設けない場合は、車速Vと操舵角θとから推定により求めてもよい。
また、各車輪への輪荷重を測定できる車両においては、当該測定した輪荷重検出値から横加速度YGを求めてもよい。
次のステップS307においては、上記の横加速度YGから旋回方向内側車輪の輪荷重減少度合いを演算し、その度合いが大きいほど差動制限トルクが大きくなるよう、図6に示すごとくに横加速度YG による差動制限トルクのリミット値TlimYGを設定する。
かかるリミット値TlimYGの設定に当たっては、横加速度YGによる荷重移動を考慮し、伝達力が旋回方向内側車輪から抜けないようにする差動制限トルク値を当該リミット値TlimYGと定める。
なおステップS306で各輪の荷重が計測できている場合は、旋回方向内側車輪の輪荷重を直接演算してもよい。
ステップS307においては更に、上記の横加速度YG による差動制限トルクのリミット値TlimYGと、ステップS301で求めてメモリした差動制限トルクである差動制限トルク基本値Tdiffinitとを比較して、小さい方min(Tdiffinit, TlimYG)を選択し、
これと、ステップS305で再設定した差動制限トルクTdiffとの大きい方を最終的な差動制限トルクTdiffとして以下のごとくに最終設定する。
Tdiff=max{min(Tdiffinit, TlimYG),Tdiff}
かかる最終的な差動制限トルクTdiffは、ステップS301で設定された差動制限トルク基本値Tdiffinitを上限として、横加速度YG に応じた差動制限トルクのリミット値TlimYGによるリミッタをかけ、その値が、ステップS302〜ステップS305で制限された差動制限トルクTdiffよりも大きい場合は、当該大きい方の値を優先的に選択したものに相当する。
次のステップS308においては、ステップS307で得られた最終的な差動制限トルクTdiffを、図1における差動制限機構5aの締結力制御に供し、差動制限機構5aの締結力を最終的な差動制限トルクTdiffが得られるように制御する。
なお本実施例では、差動制限機構5aを前記した通り湿式多板クラッチ式のものとしたため、その締結油圧をソレノイドバルブの駆動により上記の最終的な差動制限トルクTdiffが達成されるように制御することになる。
しかし差動制限機構5aは、これに限られるものでなく、油圧式や、左右前輪1L,1Rを個々に締結・増速させるようなトルクベクトリング式の差動制限機構であってもよいのは言うまでもない。
図2のステップS3で図3のサブルーチンを実行することにより上記のごとく差動制限機構5aの最終的な差動制限トルクtdiffを演算した後は、図2のステップS4において、前記したスプリットμ路であるか否かの判定を行う。
ステップS4のスプリットμ路判定処理は図7に明示するごときもので、以下この図7に基づきスプリットμ路判定処理を詳述する。
先ずステップS401において、図1の車輪速センサ16L,16Rおよび17L,17Rでそれぞれ検出した左右輪の回転数を読み込む。
次のステップS402においては、上記左右輪回転数の差回転を演算し、これを基にスプリットμ路であるか否かを判定する。
従ってステップS402は、本発明におけるスプリットμ路判定手段に相当する。
ところで、図3のステップS301において差動制限トルクTdiffを目標モータトルクTmotよりも設定値αだけ小さな値に設定しているため、上記左右輪回転数の差回転が出現した場合は左右輪間で路面摩擦係数μが異なるスプリットμ路であると見なし得る。
そこでステップS402においては、上記左右輪回転数の差回転が一定量を超えた時をもってスプリットμ路であると判定する。
かかるスプリットμ路判定は、図3のステップS307で考慮しているような大横G旋回時における旋回方向内側車輪の荷重抜けに伴う路面摩擦係数の低下判定にも有用である。
なお、図3のステップS302〜ステップS305において、車速Vおよび操舵角θに応じた差動制限トルクに対する制限が行われている場合は、図7のステップS402でスプリットμ路と判定しないようにしてもよい。
図7のステップS403においては、上記ステップS402での判定結果がスプリットμ路であるとの判定結果か否かをチェックする。
スプリットμ路であるとの判定結果である場合は、制御を順次ステップS404およびステップS405に進める。
ステップS404においては、スプリットμ路であることに呼応して、アンチスキッド制御装置(ABS)や車両挙動制御装置(VDC)のための摩擦制動力制御が高応答に行われるようにすべく、各輪の摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rにプリチャージ液圧を供給しておくブレーキ液圧プリチャージ処理を実行する。
従ってステップS404は、本発明における回生制動時ヨーモーメント減殺手段に相当する。
なお上記のプリチャージ液圧は、摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rが摩擦制動を開始する直前の状態にする液圧で、例えば0.1MPa程度の圧力である。
ステップS405においては、同じくスプリットμ路であることに呼応して、図1における前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置を、路面摩擦係数(車輪回転数)が低い方の低μ側車輪方向へオフセットさせる。
かかる前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置オフセット処理によれば、前記した差動制限トルクTdiffの付与に伴って、路面摩擦係数(車輪回転数)が高い方の高μ側車輪周りに発生する車両ヨーモーメントを打ち消す、または少なくとも減殺するヨーモーメントを発生させることができる。
従ってステップS405は、本発明における回生制動時ヨーモーメント減殺手段に相当する。
なお、前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置オフセット処理は、運転者に違和感を感じさせない程度の変化速度で当該オフセットを行うのがよいのは言うまでもない。
ステップS402での判定結果がスプリットμ路でないとの判定結果である場合は、ステップS403が制御を順次ステップS406およびステップS407に進める。
ステップS406においては、スプリットμ路でないことから、アンチスキッド制御装置(ABS)や車両挙動制御装置(VDC)が作動しないことに呼応して、各輪の摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rにプリチャージ液圧を供給するブレーキ液圧プリチャージ処理を解除する。
なお、ブレーキ液圧プリチャージ処理が行われていない場合、その解除が不要であって、ステップS406は、摩擦ブレーキユニット9L,9Rおよび10L,10Rにプリチャージ液圧が供給されない現状を継続する。
ステップS407においては、同じくスプリットμ路でないことに呼応して、図1における前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置を低μ側車輪方向へオフセットさせる処理を解除する。
かかる前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置オフセット解除処理は、運転者に違和感を感じさせない程度の変化速度で当該オフセットの解除を行うのがよいのは言うまでもない。
なお、中立位置オフセット処理が行われていい場合、その解除が不要であって、ステップS407は、前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sの中立位置を現状のままに保持する。
図2のステップS4で図7のサブルーチンを実行することにより上記のごとくスプリットμ路判定処理を行った後は、図2のステップS5において、差動制限下での回生制動に伴う車両ヨーモーメントを打ち消す、若しくは減殺するよう車両ヨーモーメントを補正する車両ヨーモーメント補正処理を行う。
ステップS5の車両ヨーモーメント補正処理は図8に明示するごときもので、以下この図8に基づき車両ヨーモーメント補正処理を詳述する。
先ずステップS501において、図1におけるセンサ15の検出値である車両の実ヨーレートφを読み込む。
次のステップS502においては、ステアリングホイール操舵角θおよび車速Vから、車両の目標ヨーレートtφを演算する。
ステップS503においては、ステップS501で読み込んだ車両の実ヨーレートφと、ステップS502で求めた目標ヨーレートtφとの差から、差動制限下での回生制動に起因して車両に働く回生制動によるヨーモーメントYMmotを推定する。
従ってステップS503は、本発明におけるヨーモーメント推定手段に相当する。
なお、この回生制動によるヨーモーメントYMmotは、運転者のステアリング操作によるヨーモーメントを阻害しているモーメント成分である。
ステップS504においては、上記の回生制動によるヨーモーメントYMmotを打ち消す方向のヨーモーメントが発生するように車輪間摩擦制動力配分を行って、この摩擦制動によるヨーモーメントYMbrkを演算する。
従ってステップS504は、本発明における回生制動時ヨーモーメント減殺手段に相当する。
このとき、ステップS505および/またはステップS506での前輪自動操舵機構1Sおよび/または後輪自動操舵機構2Sによるヨーモーメント制御を行う場合は、制動過多にならないよう総摩擦制動力に上限を設けても良い。
また、スプリットμ路において回生制動によるヨーモーメントYMmotを打ち消す方向のヨーモーメントが発生するように車輪間摩擦制動力配分を行った場合、低μ側車輪に主体的に制動力をかけることになり、アンチスキッド制御装置(ABS)が介入してヨーモーメントを十分に実現できない状況になることが考えられる。
従って上記摩擦制動によるヨーモーメントYMbrkの演算に際しては、以上のことを考慮し、最終的に車輪間摩擦制動力配分によって実現可能なヨーモーメント値を摩擦制動によるヨーモーメントYMbrkとする。
ステップS505においては、前輪自動操舵機構1Sの作動によって、回生制動によるヨーモーメントYMmotを打ち消す方向のヨーモーメントを発生させ、当該前輪自動操舵によるヨーモーメントYMfstyは、
YMfsty =YMmot −YMbrk
とする。
従ってステップS505は、本発明における回生制動時ヨーモーメント減殺手段に相当する。
特に本実施例のごとく電動モータ3が前輪1L,1Rを駆動する場合は、ステップS506での後輪自動操舵によるヨーモーメントYMrstyよりも優先的に、ステップS505での前輪自動操舵によるヨーモーメントYMfstyを発生させるようにする。
ただし前輪1L,1Rは、運転者がステアリン操作により転舵する主操舵輪であることから、ステップS505での前輪自動操舵によるヨーモーメントYMfsty(前輪舵角)に一定の制限を設けることとする。
ステップS506においては、後輪自動操舵機構2Sの作動によって、回生制動によるヨーモーメントYMmotを打ち消す方向のヨーモーメントを発生させ、当該後輪自動操舵によるヨーモーメントYMrstyは、
YMrsty=YMmot −YMbrk −YMfsty
とする。
従ってステップS506は、本発明における回生制動時ヨーモーメント減殺手段に相当する。
特に、本実施例とは異なって電動モータ3が後輪2L,2Rを駆動するものである場合は、ステップS505での前輪自動操舵によるヨーモーメントYMfsty よりも優先的に、ステップS506での後輪自動操舵によるヨーモーメントYMrstyを発生させるようにする。
ただし過度の後輪操舵は運転者に、車両が挙動不安定になったような不安感を与えることがあり、ステップS506での後輪自動操舵によるヨーモーメントYMrsty(後輪舵角)には一定の制限を設けることとする。
ステップS507においては、ステップS503で推定した回生制動によるヨーモーメントYMmotを、ステップS504での摩擦制動によるヨーモーメントYMbrkと、ステップS505での前輪自動操舵によるヨーモーメントYMfstyと、ステップS506での後輪自動操舵によるヨーモーメントYMrstyとにより、打ち消し可能か否かを判定する。
この判定は、YMmotと、(YMbrk+YMfsty+YMrsty)とを対比し、
YMmot>YMbrk+YMfsty+YMrsty
であれば、打ち消し不能と判定し、
YMmot≦YMbrk+YMfsty+YMrsty
であれば、打ち消し可能と判定する。
ステップS507で回生制動によるヨーモーメントYMmotをYMbrk,YMfsty,YMrstyによっても完全には打ち消すことができないと判定した場合、
ステップS508において、回生制動によるヨーモーメントYMmotをYMbrk,YMfsty,YMrstyによって完全に打ち消すことができる値まで低下させるのに必要な回生制動トルク制限値を演算する。
図1におけるブレーキコントローラ11は、この回生制動トルク制限値を統合コントローラ6に指令し、統合コントローラ6はインバータ8への目標モータトルクTmotをこの回生制動トルク制限値に対応した値に修正して、電動モータ3の発電負荷を低下させる。
これにより、回生制動によるヨーモーメントYMmotをYMbrk,YMfsty,YMrstyによって完全に打ち消すことができるようになる。
ステップS507で回生制動によるヨーモーメントYMmotをYMbrk,YMfsty,YMrstyによって完全に打ち消すことができると判定した場合、
ステップS508をスキップして、図8のループから脱し、制御を図2のステップS6に戻すことにより、回生制動トルク(目標モータトルクTmot)を制限することなく現状のままに保つ。
ステップS6においては、前記したパワーステアリング装置の操舵助勢力を以下のように補正する。
従ってステップS6は、本発明におけるパワーステアリング制御手段に相当する。
操舵助勢力は通常、通常車速感応制御により、低車速ほど助勢力が大きくなり、高車速になるほど助勢力が小さくなるよう制御される。
ステップS6においては、上記のように設定された補正前の助勢力Tinit(V)に対し、次式で示すような係数γおよび回生制動トルクTmot(目標モータトルク)に応じた補正を行って、補正後の最終的な操舵助勢力Tassistを演算し、
Tassist=Tinit(V)+Tmot×γ
このパワーステアリング装置の操舵助勢力を、かかる補正後の最終的な操舵助勢力Tassistとなるよう制御する。
上式から明らかなように操舵助勢力Tassistは、回生制動トルクTmotに応じ係数γで決まる割合で大きくなる。
なお本実施例では、回生制動トルクTmotのみに応じて補正量(Tmot×γ)を設定しているが、車速Vに応じても補正量が変化するように設定してもよい。
<作用効果>
上記した本実施例の回生制動時差動制限制御によれば、以下のような作用効果が奏し得られる。
つまり、ステップS2で回生制動中と判定する間、ステップS3において図3の制御プログラムを実行することにより、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)の絶対値から設定値αを差し引いて得られる差値(|Tmot|−α)を差動制限トルクTdiffと定め(ステップS301)、基本的にはこれを差動制限機構5aの締結力制御に資するため(ステップS308)、
回生制動時にディファレンシャルギヤ装置5を差動制限状態となし、該差動制限の程度を回生制動トルクTmotに応じて制御することとなる。
このため、回生制動時は回生制動トルクTmotに応じ、ディファレンシャルギヤ装置5を介した車輪1L,1R間の差動が制限されてこれら車輪1L,1R間が回生制動トルクTmotに応じた結合状態にされる。
従って、スプリットμ路での走行中や、大横G旋回中において、電動モータ3による回生制動トルクが、路面摩擦係数の低い低μ側車輪だけでなく、差動制限分だけ路面摩擦係数の高い高μ側車輪にも伝達され、
高μ側車輪の回生制動能力をも活用しつつ、車両全体の回生制動を十分なものとなすことができる。
このためスプリットμ路での走行中や、大横G旋回中においても、回生制動によるエネルギーの回収が十分なものとなり、エネルギー効率の向上を実現し得る。
また、回生制動により得られる車両の減速度も、高μ側車輪の回生制動による減速度分が加算されて十分なものとなり、前記した減速度抜けの現象が発生するという問題も回避することができる。
なお、差動制限トルクTdiffに図4のような車速Vに応じたリミット値TlimVを設定することにより、差動制限トルクTdiffがこのリミット値TlimVを超えることのないようにして(ステップS303)、車速V<V1の低車速域および車速V≧V3の高車速域でそれぞれ、差動制限の程度を小さくしたため、以下の作用効果が得られる。
低車速域、特に極低速域では、操舵角θを大きくすることがあり、車輪1L,1Rの大転舵により内外輪速差が大きくなって、タイトコーナーブレーキング現象や、曲がりにくい状況となり易いが、低車速域では差動制限の程度を小さくしたため、大転舵によってもタイトコーナーブレーキング現象や、曲がりにくい状況を生じないようにすることができる。
また高車速域では、路面がスプリットμ路になって左右輪路面摩擦係数が変化した場合、これにより発生したヨーモーメントを修正するための操舵ゲインが高く、運転者が修正操舵を行ったとき車両挙動が不安定になる場合があるが、高車速域では差動制限の程度を小さくしたため、かかる修正操舵時における車両の挙動不安定を回避することができる。
加えて、差動制限トルクTdiffに図5のような操舵角θに応じたリミット値Tlimθを設定することにより、差動制限トルクTdiffがこのリミット値Tlimθを超えることのないようにして(ステップS305)、大操舵ほど差動制限の程度を小さくしたため、以下の作用効果が得られる。
つまり大操舵時は、車輪1L,1Rの大転舵により内外輪速差が大きくなって、タイトコーナーブレーキング現象や、曲がりにくい状況となり易いが、大操舵ほど差動制限の程度を小さくしたため、当該タイトコーナーブレーキング現象や、曲がりにくい状況を生じないようにすることができる。
更に、差動制限トルクTdiffに図6のような横加速度YGに応じたリミット値TlimYGを設定することにより、差動制限トルクTdiffがこのリミット値TlimYGを超えることのないようにして(ステップS307)、横加速度YGが大きいほど差動制限の程度を大きくしたため、以下の作用効果が得られる。
つまり大横G旋回では、荷重移動により旋回方向内側車輪の輪荷重が抜けることで内側車輪の限界トルクが下がり、回生制動トルクを十分に伝達することができなくなるが、横加速度YGが大きいほど差動制限の程度を大きくしたことで、回生制動トルクを旋回方向外側車輪へ十分伝達することが可能となり、内側車輪による回生制動トルク不足を外側車輪側への回生制動トルクにより確実に補うことができる。
ところで上記した差動制限下での回生制動中は、高μ側車輪に偏って回生制動力を付与することとなり、結果として高μ側車輪周りのヨーモーメントが車両に発生し、車両が挙動不安定になる。
しかし本実施例では、図2のステップS5において図5の制御プログラムを実行することにより、差動制限下での回生制動によって車両に付与される回生制動時ヨーモーメントYMmotを推定し(ステップS503)、この回生制動時ヨーモーメントYMmotに逆らう方向の逆向きヨーモーメントYMbrk(摩擦制動による逆向きヨーモーメント),YMfsty(前輪自動操舵による逆向きヨーモーメント),YMrsty(後輪自動操舵による逆向きヨーモーメント)を車両に付与して回生制動時ヨーモーメントYMmotを減殺するようにしたため(ステップS504、ステップS505、ステップS506)、上記した車両の挙動不安定を緩和、若しくは防止することができる。
しかも、摩擦制動による逆向きヨーモーメントYMbrkを車両に付与するに際し、図2のステップS4において図7の制御プログラムを実行することにより、スプリットμ路判定時に(ステップS403)、ブレーキ液圧プリチャージ処理(ステップS404)により車輪の摩擦制動が開始される直前状態にしておくようにしたため、以下の作用効果が得られる。
つまり、スプリットμ路のように路面摩擦力が不安定な状況では、アンチスキッド制御装置(ABS)や挙動制御装置(VDC)などを作動させる必要が起き得るが、ディファレンシャルギヤ装置5を差動制限していると、低μ側車輪のスリップ傾向を判別しにくく、突然不安定な車両挙動が発生する状況が考えられる。
しかし本実施例のように、スプリットμ路判定時に前もってブレーキ液圧プリチャージ処理により車輪の摩擦制動が開始される直前状態にしておけば、突然不安定な車両挙動が発生した場合においても、遅滞なくこれに対処した摩擦制動力制御を介入させることができる。
また、前輪自動操舵による逆向きヨーモーメントYMfstyや、後輪自動操舵による逆向きヨーモーメントYMrstyを車両に付与する際も、図2のステップS4において図7の制御プログラムを実行することにより、スプリットμ路判定時に(ステップS403)、自動操舵機構1S,2Sの中立位置を低μ側車輪の方向へオフセットさせておくようにしたため、以下の作用効果が得られる。
つまり、スプリットμ路のように路面摩擦力が不安定な状況では、ディファレンシャルギヤ装置5を差動制限していると、低μ側車輪のスリップ傾向を判別しにくく、突然高μ側車輪周りに車両が回転するような不安定な挙動が発生する状況が考えられる。
しかし本実施例のように、スプリットμ路判定時に前もって自動操舵機構1S,2Sの中立位置を低μ側車輪の方向へオフセットさせておけば、突然高μ側車輪周りに車両が回転するような不安定な挙動が発生しても、遅滞なくこれに対処した自動操舵により、上記の挙動不安定を解消することができる。
更に本実施例では、上記のスプリットμ路判定に際し、目標モータトルクTmot(回生制動トルク)の絶対値から設定値αを差し引いて得られる差値(|Tmot|−α)を差動制限トルクTdiffと定め(ステップS301)、これら車輪1L,1R間に差回転が所定値を超えた時をもってスプリットμ路であると判定するため、以下の作用効果が得られる。
つまり、スプリットμ路のように路面摩擦力が不安定な状況では、ディファレンシャルギヤ装置5を差動制限していると、左右一方側車輪のスリップ傾向を判別し難いが、本実施例のスプリットμ路判定によれば、かかる状況下でも確実にスプリットμ路の判定を行うことができて、上記の作用効果を更に確実なものにすることができる。
しかも上記の設定値αを、左右回生制動車輪1L,1Rの路面摩擦係数間に一定以上の差がついた時、車輪1L,1R間に差回転が発生するようなトルク値としたため、スプリットμ路の判定が確実になるという上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
また本実施例では、図2のステップS6において、車速Vに応じた通常の助勢力Tinit(V)に対し、係数γおよび回生制動トルクTmot(目標モータトルク)に応じた補正を行って、回生制動トルクTmotに応じ係数γで決まる割合で大きくなる最終的な操舵助勢力Tassistとなるようパワーステアリング装置の操舵助勢力を制御するため、以下の作用効果が得られる。
つまり、本実施例のように回生制動トルクTmotに応じ差動制限トルクTdiffを決定するすると、回生制動トルクTmotが大きくなったときに、差動制限が大きくなることによって操舵力が重くなったり、路面摩擦係数が変化するなどの外乱により操舵を乱されることがあるが、
本実施例のごとく回生制動トルクTmotに応じパワーステアリング装置の操舵助勢力を大きくなるよう制御すれば、かかる問題を回避することができる。
<その他の実施例>
図示の実施例では、ディファレンシャルギヤ装置5の差動制限機構5aを前記した通り湿式多板クラッチ式として、その締結油圧(差動制限トルクTdiff)をソレノイドバルブにより制御するようになすことで、差動制限トルクTdiffを電気的に制御し得るようにしたが、
ディファレンシャルギヤ装置5を、機械式トルセンデフなど、入力軸のトルクに応じて機械的に差動を制限する型式のディファレンシャルギヤ装置で構成し、前記した諸々の作用効果が奏し得られるようにしてもよい。
具体的には、減速側にワンウェイ型の機械式リミテッドスリップデフを設定し、入力トルクに対して差動制限トルクが若干小さくなるようにカム角や多板クラッチの材質・枚数などを決定するのがよい。
また上記した機械式リミテッドスリップデフに代え、左右輪回転速度差に応動して差動制限がかかるビスカス式リミテッドスリップデフを用いても、回生制動トルクが作用して左右輪回転速度差が発生したとき、この左右輪回転速度差を一定量以下に収め得るようビスカス式リミテッドスリップデフを設定することで、同様の作用効果を得ることができる。
なお上記では何れも、左右輪間の差動制限を例に挙げて説明したが、電動式四輪駆動車両において前後輪車軸間の差動制限を制御する場合も、前記したと同様な考え方を適用することで同様な作用効果を達成することができる。
つまり、前または後の片輪が低μ路などで空転傾向となった場合に、逆側の軸で回生制動力を伝達することができ、回生エネルギーの回収効率を高め得ると共に、十分な減速度を確保することが可能となる。
1L,1R 左右前輪(左右駆動輪)
1S 前輪自動操舵機構
2L,2R 左右後輪
2S 後輪自動操舵機構
3 電動モータ(回転電機)
4 終減速機
5 ディファレンシャルギヤ装置
5a 差動制限機構
6 統合コントローラ
7 バッテリ(蓄電器)
8 インバータ
9L,9R,10L,10R 摩擦ブレーキユニット
11 ブレーキコントローラ
12 車速センサ
13 アクセル開度センサ
14 操舵角センサ
15 車両挙動センサ
16L,16R,17L,17R 車輪速センサ

Claims (12)

  1. 差動制限式ディファレンシャルギヤ装置を介し回転電機からの駆動力を車輪に伝えて走行可能であると共に、駆動力が逆に車輪から回転電機に向かう逆駆動時は該回転電機への発電負荷により前記車輪を回生制動し得るようにした電動車両において、
    前記回生制動時に前記ディファレンシャルギヤ装置を差動制限状態となし、該差動制限の程度を前記回生制動トルクに応じて制御する差動制限制御手段を設けたことを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  2. 請求項1に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限下での回生制動によって車両に付与される回生制動時ヨーモーメントを推定するヨーモーメント推定手段と、
    該手段で推定した回生制動時ヨーモーメントに逆らう方向の逆向きヨーモーメントを車両に付与して前記回生制動時ヨーモーメントを減殺する回生制動時ヨーモーメント減殺手段とを具備してなることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  3. 前記電動車両が、少なくとも左右輪間で摩擦制動トルクを個別に制御可能なものである、請求項2に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記回生制動時ヨーモーメント減殺手段が、前記左右輪間の摩擦制動トルク差により前記逆向きヨーモーメントを車両に付与するものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  4. 請求項3に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    車輪間で路面摩擦係数が異なるのを判定するスプリットμ路判定手段を設け、
    該手段により車輪間で路面摩擦係数が異なると判定されたとき、前記回生制動時ヨーモーメント減殺手段は、該当車輪の摩擦制動が開始される直前状態にするものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  5. 前記電動車両が、少なくとも一対の左右輪を舵角制御可能な舵角制御手段を有したものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記回生制動時ヨーモーメント減殺手段が、前記左右輪の舵角制御により前記逆向きヨーモーメントを車両に付与するものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  6. 請求項5に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    車輪間で路面摩擦係数が異なるのを判定するスプリットμ路判定手段を設け、
    該手段により車輪間で路面摩擦係数が異なると判定されたとき、前記回生制動時ヨーモーメント減殺手段は、前記舵角制御手段の非転舵中立位置を前記路面摩擦係数の小さい方の車輪側へオフセットさせるものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限の程度を決定する差動制限トルクは、前記回生制動トルクよりも設定値だけ小さなトルク値とし、
    前記スプリットμ路判定手段は、車輪間の差回転が所定値を超えた時をもって、車輪間で路面摩擦係数が異なると判定するものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  8. 前記電動車両が、操舵力を助勢するパワーステアリング装置を具えたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記パワーステアリング装置による助勢力を前記回生制動トルクに応じて大きくするパワーステアリング制御手段を設けたことを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限制御手段は、低車速域で前記差動制限の程度を小さくするものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限制御手段は、高車速域で前記差動制限の程度を小さくするものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限制御手段は、大操舵ほど前記差動制限の程度を小さくするものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載された電動車両の回生制動時差動制限制御装置において、
    前記差動制限制御手段は、車両横加速度が大きいほど前記差動制限の程度を大きくするものであることを特徴とする電動車両の回生制動時差動制限制御装置。
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