JP2012025858A - プロピレン系樹脂製発泡シート - Google Patents

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Abstract

【課題】発泡シート製造時の押出し特性に優れ、衝撃強さ、弾性率、断熱性、緩衝性などに優れ、トレー、カップ、ボウル、皿、容器などに二次加工できるプロピレン系樹脂製発泡シートを提供する。
【解決手段】MFRが3〜15g/10min、引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレンブロック共重合体10〜100重量%と、MFRが1〜15g/10min、引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレン重合体を0〜90重量%を含む(混合)樹脂組成物を原料とし、溶融押出成形法で製造され、発泡シートの厚さが0.2〜3.0mm、発泡倍率が1.1〜5.0倍、独立気泡率が50%以上であるプロピレン系樹脂製発泡シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系樹脂製発泡シートに関する。さらに詳しくは、各種の包装容器製造用に好ましく使用され、美麗で独立気泡率が高く、成形性、断熱性、緩衝性などに優れたプロピレン系樹脂製発泡シート、特に二次成形法によってボウル、皿、容器などを製造するのに適したプロピレン系樹脂製発泡シートに関する。
熱可塑性樹脂からなる発泡シートは、一般に、軽量で断熱性や、外部からの応力の緩和性が良好であり、真空成形、圧空成形などの加熱二次成形法により、多くの成形品(製品)を得ることができることから、スチレン系樹脂製発泡シートやエチレン系樹脂製発泡シートなどとともに、緩衝材、食器容器、断熱材、自動車部品などの用途に、幅広く利用されている。
しかしながら、プロピレン系樹脂は、結晶性樹脂であり、溶融時の粘度および抗張力が低いため、発泡時に気泡壁の強度が十分に保持されず、外観が優れ、独立気泡率が高い発泡シートを得ることが困難であった。
プロピレン系樹脂からなる発泡シートを製造する手法としては、従来、原料のプロピレン系樹脂に架橋剤と架橋助剤および熱分解型発泡剤を添加して成形し、加熱することにより架橋と発泡を行わせる方法(特許文献1)、プロピレン系樹脂に架橋剤、架橋助剤および分解型発泡剤を添加して成形し、放射線架橋させた後に加熱発泡させる方法(特許文献2)、また、近年ではシリル基を有するプロピレン系樹脂に熱分解型発泡剤を添加して成形し、水架橋の後に加熱発泡させる方法(特許文献3)などの架橋発泡法が提案されている。
しかしながら、架橋によりプロピレン系樹脂に発泡性を付与する方法は、架橋工程を必要とし、連続的な発泡シートの製造が困難であるばかりでなく、架橋度の制御が困難であるため、外観が美麗で均一な発泡シートの製造が困難である。さらに架橋しているため、溶融時の粘度が高くシート製造時のモーター負荷に耐える高機能を装備した押出機を使用する必要があり、設備投資が嵩む。また、架橋シートは、容器などの製品として使用したあと回収して再使用すると、シート表面にゲルが表れて外観が優れないという欠点がある。
一方、日本特許第3704034号公報(特許文献4)には、自由末端長鎖分岐を有するプロピレン系樹脂と、メルトテンション値が小さいポリプロピレンとの混合物を原料としたプロピレン系樹脂発泡シートが提案されている。しかし、自由末端長鎖分岐を有するプロピレン系樹脂はコストが高い、発泡シートの表面にゲル成分が表れ外観が優れない、発泡シートを製造する際のモーター負荷が大きい、発泡シートから二次成形品を製造する際のサイクルが長い、などの欠点があった。
特公昭45−40420号公報 特公昭42−26953号公報 特開平09−132662号公報 特許第3704034号公報
本発明の目的は、上記従来の諸欠点を排除したプロピレン系樹脂製発泡シートを提供すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、次のとおりである。
1.押出特性に優れたプロピレン系樹脂製発泡シートを提供すること。
2.独立気泡率が高く、外観が優れたプロピレン系樹脂製発泡シートを提供すること。
3.二次成形品を製造する際の成形サイクルが長くならない、プロピレン系樹脂製発泡シートを提供すること。
上記課題を解決するために、本発明では、JIS K7210に準拠して測定したMFRが3〜15g/10min、JIS K7161に準拠して測定した引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレンブロック共重合体10〜100重量%と、MFRが1〜15g/10min、引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレン重合体を0〜90重量%を含む(混合)樹脂組成物を原料とし、溶融押出成形法で製造され、発泡シートの厚さが0.2〜3.0mm、発泡倍率が1.1〜5.0倍、独立気泡率が50%以上とされてなることを特徴とするプロピレン系樹脂製発泡シートを提供する。
本発明は、以下詳細に説明するとおりであり、次のような特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートは、架橋していない汎用樹脂を原料とするので、溶融時の粘度も低く、発泡シート製造時の押出機モーターの負荷が低いので、高機能を装備した押出機を使用する必要がない。
2.本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートは、独立気泡率が高いので、外観が優れている。
3.本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートは、二次成形品を製造する際の成形性に優れているので、成形サイクルが長くならない。
本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートを、表面側から裏面側に貫通して切り取った四角形の試料の斜視図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートの原料樹脂は、JIS K7210に準拠して測定したMFR(メルトフローレート)が3〜15g/10min のプロピレンブロック共重合体{以下、単に「成分(A)」と記載することがある}10〜100重量%と、MFRが1〜15g/10min のプロピレン重合体{以下、単に「成分(B)」と記載することがある}を90〜0重量%を含むプロピレン系樹脂組成物より構成される。上記のようなプロピレン系樹脂組成物は、(1) 別々に製造した成分(A)と成分(B)を混合する方法、(2) 同じ重合装置を使用し成分(A)または成分(B)の重合を行い、次いで成分(B)または成分(A)の重合を行う方法、のいずれの方法で製造したものであってもよい。
本発明においてプロピレンブロック共重合体{成分(A)}とは、プロピレン重合体(ホモポリマー){以下、単に(A−1)と記載することがある}とオレフィンランダム共重合体{以下、単に(A−2)と記載することがある}からなるブロック共重合体であって、(A−1)が30〜95重量%、(A−2)が5〜70重量%よりなるものを言う。このような割合とする理由は、(A−1)が30重量%未満であると、最終的に得られる発泡シートの機械強度が低下し、一方、95重量%を越えると、最終的に得られる発泡シートの二次成形性が劣るからである。
プロピレンブロック共重合体{成分(A)}は、JIS K7210に準拠して測定したMFRを3〜15g/10minの範囲とする。このような割合とする理由は、MFRが3g/10min未満では流動特性が悪く発泡シートが製造し難く、15g/10minを超えると、最終的に得られる発泡シートの二次成形の際にドローダウンが大きくなり好ましくない。成分(A)は、また、JIS K7161に準拠して測定した引張弾性率を1500〜2000MPaの範囲とする。このような割合とする理由は、引張弾性率が1500MPa未満であると、最終的に得られる発泡シートの機械強度が低下し、一方、2000PMaを越えると、最終的に得られる発泡シートの二次成形性が劣るからである。
成分(A)のMFRは、プロピレン重合体(A−1)のMFR、オレフィンランダム共重合体(A−2)のMFR、成分(A−1)と成分(A−2)の量比によって決まる。従って、成分(A)のMFRは、これら3つの因子を調整することにより制御することができる。成分(A)の引張弾性率も同様に、これら3つの因子を調整することにより制御することができる。
プロピレン重合体(A−1)は、MFRの値が小さい高分子量のプロピレン重合体と、MFRの値が大きい低分子量のプロピレン重合体との混合物であってもよいプロピレン重合体(A−1)の製造方法としては、低分子量のプロピレン重合体と高分子量のプロピレン重合体とをブレンダーなどで混合する方法、溶融混合する方法、連続して多段重合する方法などが挙げられる。これら方法の中では、連続して多段重合する方法が好適である。
本発明においてオレフィンランダム共重合体(A−2)とは、プロピレンとエチレンおよび炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のその他のオレフィン系モノマーとのランダム共重合体を意味する。プロピレンをランダム共重合される他のオレフィン系モノマーとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらの中では、エチレンと1−ブテンが好ましい。
以下、プロピレン重合体(A−1)とオレフィンランダム共重合体(A−2)を含むプロピレンブロック共重合体{成分(A)}の製造方法を説明する。まず、プロピレンを、触媒を使用してプロピレン重合体(A−1)を製造する。ついで、エチレンおよび炭素数が4〜8のα−オレフィンからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとプロピレンとを重合させて(A−2)とすることによって、成分(A)を製造することができる。
成分(A)を製造する際に使用される触媒系として、チタン含有固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物を主体とするもの、または、π電子共役配位子を少なくとも1個有するメタロセン系の遷移金属化合物などを使用して、製造することができる。チタン含有固体触媒成分は、固体のマグネシウム化合物、四ハロゲン化チタン、および、電子供与性化合物を接触させて得られる公知の担持型触媒成分、三酸化チタンを主成分とする公知の触媒成分から選ばれる。
助触媒として作用する有機アルミニウム化合物は、一般式、AlRn3-n、(一般式において、Rは炭素数2〜10の炭化水素基を表し、nは3≧n>1.5の数を表す)で表される。チタン含有固体触媒成分が、固体のマグネシウム化合物を含有する担体担持型触媒成分である場合は、AlR3またはAlR3とAlR2Xとの混合物を使用するのが好ましい。一方、三塩化チタンまたは三酸化チタンを主成分として含む触媒成分である場合は、AlR2Xを使用するのが好ましい。
成分(A)の製造は、従来から知られている液相重合法、気相重合法、バルク重合法、スラリー重合法およびこれらを組合せた方法のいずれかによればよく、中での液相重合法が好適である。液相重合法では、例えば、ブタン、ペン端、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの不活性液体が使用できる。
成分(A)を製造する際の重合反応は、一基の反応槽を用いて回分式で行うことができるし、二基以上の反応槽を直列に繋いで配置し、連続的に行うことができる。重合反応の順序は、目的を達する限り特に制限はないが、最初に成分(A−1)を重合し、次いで成分(A−2)を重合するのが一般的である。触媒は、第一段階で重合前に重合系に添加するのが一般的である。後段における触媒の追加添加を排除するものではないが、別々に製造した成分(A−1)と成分(A−2)とを混合する方法では得られない特性を得るには、第一段階で重合前に重合系に添加するのが好ましい。
成分(A−1)を得るためには、第一段階で、プロピレンを分子量調節剤として作用する水素の存在下に、低分子量プロピレン重合体を製造し、次の工程では高分子量プロピレン重合体を製造する。第二段階で、所定のプロピレンとオレフィン化合物を導入し、水素濃度は0.1モル%以下の実質的に水素の不存在下で重合させる。
プロピレン重合体(ホモポリマー){成分(B)}は、JIS K7210に準拠して測定したMFRを1〜15g/10minの範囲とする。このような割合とする理由は、MFRが1g/10min未満では流動特性が悪く発泡シートが製造し難く、15g/10minを超えると、最終的に得られる発泡シートの二次成形の際にドローダウンが大きくなり好ましくない。成分(B)は、また、JIS K7161に準拠して測定した引張弾性率を1500〜2000MPaの範囲とする。このような割合とする理由は、引張弾性率が1500MPa未満であると、最終的に得られる発泡シートの機械強度が低下し、一方、2000PMaを越えると、発泡シートの二次成形性が劣るからである。
成分(B)は、上記(A−1)と同様に製造することができる。成分(B)のMFRは、プロピレンを分子量調節剤として作用する水素の存在量を調節することによって、上記の範囲に調節することができる。
上に記載した重合方法で製造した成分(A)と成分(B)の原料(混合)樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着材などの安定剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、難燃材、帯電防止剤などの各種樹脂添加剤を配合することができる。
原料(混合)樹脂組成物に上記樹脂添加剤を配合するに方法は、溶融混練法によるのが一般的であるが、混合・溶融順序およびその方法には特に制限されるものではない。溶融混練する際の加熱温度は、原料樹脂の種類により異なるが、通常、150〜300℃の範囲で選ぶと、原料樹脂組成物が十分に溶融し、かつ、熱分解せず、十分に発泡性を得ることができる点で好ましい。原料樹脂組成物を溶融混練する際の装置としては、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。
次に、上記原料(混合)樹脂組成物から本発明に係る発泡シートを製造する方法を説明する。発泡シートは、粒状の成分(A)と成分(B)と造核剤とを混合する工程、混合物を押出機内で可塑化する工程、可塑化した混合物中に発泡剤を導入し、発泡性混合物を調製する工程、発泡性混合物を発泡させて押出機ダイから押出し、連続発泡シートを製造する工程、の各工程を含む方法によって製造する。
造核剤は気泡開始部を作り出し、発泡シートの気泡の大きさに影響する。好ましい造核剤としては、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸と重炭酸ナトリウム混合物、タルクと二酸化チタン混合物などが挙げられる。造核剤は、平均粒径が0.3〜5.0μmであって、原料樹脂組成物に対して、0.01〜1重量%の範囲で選ぶのが好ましい。造核剤は、上記の各種樹脂添加剤と共に混合して、溶融混練して粒状化するか、得られた粒状の成分(A)と成分(B)とドライブレンドするのが好ましい。
発泡剤は、溶融混練機内で溶融状態にされている原料樹脂組成物に圧入し、気体または液体から気体に相変化するものであり、主として発泡シートの密度を制御するために使用される。高い圧力と温度によって、原料(混合)樹脂組成物に溶解した発泡剤は、圧力と温度を下げると溶液から気泡を生じる。発泡剤は、原料(混合)樹脂組成物の粘度を下げる可塑剤として作用し、原料(混合)樹脂組成物を可塑化状態を維持するために必要な温度を低くする。
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などが挙げられる。これら発泡剤は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、発泡シートの目標発泡倍率などにより異なるが、プロピレン系樹脂組成物に対して、1〜20重量%の範囲で選ぶのが好ましい。発泡剤の導入(添加)量が多いほど、気泡内のより高い圧力、および発泡剤の可塑化作用による変形に対して、より低い気泡壁の抵抗性が組合わされた効果のため、フォームの密度が低くなる。発泡剤の好ましい導入量は、2〜15重量%である。
発泡性混合物を調製する工程と、発泡性混合物を発泡させる工程は、押出機内で行うことができる。すなわち、造核剤を配合した原料(混合)樹脂組成物を押出機で溶融し、押出機シリンダーの途中から発泡剤を導入(圧入)する。押出機は、一軸押出機、二軸押出機のいずれであってもよい。押出機ダイは、Tダイでもよく、円形(サーキュラー)ダイでもよい。
上記方法によって製造されるプロピレン系樹脂製発泡シートは、厚さが0.2〜3.0mmの範囲とする。この範囲にする理由は、厚さが0.2mm未満では、二次加工した製品は剛性、断熱性、緩衝性に劣り、3.0mmを超えると二次加工性に劣るからである。厚さの測定は、発泡シートの任意の場所から試料を切り取り、発泡シートの幅方向に沿って10mm間隔に測定点を設け、各測定点の厚さを厚さ測定用ゲージ(例えば、ミツトヨ社製、DIGIMATIC CALIPER 型式:CD−10CX)を使用し、各点の測定値の平均値をこのシート発泡の厚さとした。
上記方法によって製造されるプロピレン系樹脂製発泡シートは、発泡倍率を1.1〜5.0倍の範囲とする。発泡倍率が1.1未満であると、二次加工した製品は剛性、断熱性、緩衝性に劣り、5.0を超えると剛性に劣り、いずれも好ましくない。ボウル、皿、容器などを製造上好ましいのは、発泡倍率が1.5〜4.5倍のものである。なお発泡倍率の測定法は、JIS K7222に準拠して測定した値を意味する。
上記方法によって製造されるプロピレン系樹脂製発泡シートは、独立気泡率が50%以上とする。独立気泡率が50%未満では、二次加工によって得られる成形品の剛性や、断熱性が劣る。得られたプロピレン系樹脂製発泡シートから、30mm×40mmの大きさの試験片を発泡シートの幅方向でほぼ均等になるよう切断刃で打ち抜き、各発泡シートにつき3個作成した。これらの試験片につき、電子天秤(津製作所社製、型式:AUW220)および、厚さ測定用ゲージ(ミツトヨ社製、DIGIMATIC CALIPER 型式:CD−10CX)を使用し、試験片の重量および体積を求めた。3個の試験片を重ね合わせて積層体とし、空気比較式比重計( 東京サイエンス社製、型式:1000型)を使用し、ASTM D−2856に準拠した1−2−1気圧法によって積層体の体積を測定し、次式、すなわち、独立気泡率[ % ]=(Vx−Vw )÷ (Va−Vw)×100 、によって算出した。なお、この式において、Vxは空気比較式比重計による積層体の体積[cm] 、Vwは3枚の試験片の総重量[g]÷ 比重[g/cm ]、Vaは3枚の試験片の総体積(見かけ体積)[cm]をそれぞれ意味する。
上記方法によって製造されるプロピレン系樹脂製発泡シートは、図1に模式図として示したように、厚さが1mmの発泡シートを表面側から切断刃で打ち抜いた、大きさ120mm×150mm×1mmの四角形状試料の切断面に表れる独立気泡の個数が、5〜30個の範囲が好ましい。厚さが1mmの発泡シートに存在する気泡の数が5個未満であると、柔軟生は低く好ましくない。
図1において、1は発泡シートから切り取った四角形のブロック、2は発泡シートの押出し方向であり、3は押出し方向と直角の方向(幅方向)であり、4は発泡シートの厚さ方向であり、5は独立気泡であり、6は気泡の数を測定した個所である。独立気泡の測定は、幅方向に30mm間隔で3個所、厚さ方向に沿って、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JSM−5200によって35倍に拡大して気泡の数を観察し、3個所の数を平均し、小数点以下を四捨五入して気泡の数とした。
本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートは、原料のプロピレン系樹脂の物性、および発泡シートの特性を規定することにより、二次加工(成形)法、すなわちプラグ成形法や真空成形法、圧空成形法などの熱成形法によって最終製品を得る際の加工性に優れ、厚さ斑のない成形品を得ることができる。
熱成形法の例としては、プラグ成形法、マッチド・モールド成形法、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグ・アンド・リッジ成形法、リッジ成形法などが挙げられる。
本発明に係るプロピレン系樹脂製発泡シートは、表面性や剛性、加熱成形性などを改良する目的で、発泡シートの片面または両面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層することもできる。積層用熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル類、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート類などが挙げられる。発泡シートに非発泡層を積層する方法としては、特に限定されるものではなく、(1) 発泡シートを製造した後に、別途作成した非発泡フィルムを、加熱法または接着剤を用いる方法によって積層する方法、(2) 発泡シート表面に直接Tダイから非発泡フィルムを押出して積層する方法、などが挙げられる。特に好ましいのは、非発泡樹脂をポリプロピレン系樹脂とし、上記(2)の方法で積層する方法である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の記載例に限定されるものではない。なお、以下の記載例において、原料樹脂の各種物性の評価、および、プロピレン系樹脂製発泡シートの各種特性は、以下に記載の方法で行った。
(a)MFR:JIS K7210に準拠して測定した。
(b)引張弾性率:JIS K7161に準拠して測定した。
(c)押出特性:50mmφ、L/D=30の単軸押出機によって、40rpmで押出した際の、押出機モーターの負荷と、スクリュー先端樹脂の温度により評価した。押出機モーターの負荷が低い場合を○、押出機モーターの負荷が高い場合を×、○ と× の中間のものを△、とそれぞれ表示した。
(d)発泡倍率(倍):JIS K7222に準拠して測定した。
(e)独立気泡率(%):得られたプロピレン系樹脂製発泡シートから、30mm×40mmの大きさの試験片を発泡シートの幅方向でほぼ均等になるよう切断刃で打ち抜き、各発泡シートにつき3個作成した。これらの試験片につき、電子天秤(津製作所社製、型式:AUW220)および、厚さ測定用ゲージ(ミツトヨ社製、DIGIMATIC CALIPER 型式:CD−10CX)を使用し、試験片の重量および体積を求めた。3個の試験片を重ね合わせて積層体とし、空気比較式比重計( 東京サイエンス社製、型式:1000型)を使用し、ASTM D−2856に準拠した1−2−1気圧法によって積層体の体積を測定し、次式、すなわち、独立気泡率[ % ]=(Vx−Vw )÷ (Va−Vw)×100 、によって算出した。なお、この式において、Vxは空気比較式比重計による積層体の体積[cm] 、Vwは3枚の試験片の総重量[g]÷ 比重[g/cm ]、Vaは3枚の試験片の総体積(見かけ体積)[cm]をそれぞれ意味する。
(f)気泡の数(個):図1の示した模式図に示した120mm×150mm×1mm(厚さ)のブロックにつき、幅方向に30mm間隔で3個所、厚さ方向に沿って、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、型式:JSM−5200)によって35倍に拡大して気泡の数を観察し、3個所の数を平均し、小数点以下を四捨五入して気泡の数(個)とした。
(g) シートの外観:プロピレン系樹脂製発泡シートを目視観察し、押出方向に平行のしわ(コルゲートの線)やケバが認められないものを○、押出方向に平行のしわ(コルゲートの線)やケバが認められるものを×、○ と× の中間のものを△、とそれぞれ表示した。
(h)シート製造時の総合評価:発泡シート製造時の上記(c)から(g)の評価項目の総てが良好なものを○ 、二項目以上劣るものを× 、一項目のみ劣るものを△ 、とそれぞれ表示した。
(i)ドローダウン性:プロピレン系樹脂製発泡シートを、バッチ式差圧成形機(関西自動成形機社製、型式:PK450V)を使用し、50cm×40cmの寸法のクランプによって固定し、厚さが1.0mmの発泡シートの上下からヒーターによって300℃に加熱し、可視光線レーザー変位センサー(キーエンス社製、型式:BL−300)によって、ドローダウン性を評価した。発泡シート中央部の垂れ下がり量が20mm未満のものを○、垂れ下がり量が20mm以上のものを×、○ と× の中間のものを△、とそれぞれ表示した。
(j)容器成形性:厚さが1.0mmの発泡シートを、300℃に加熱した熱板式ヒーターによって1ショット分の大きさ(50cm×45cm)を加熱し、20cm×25cm×3cmの弁当箱型容器を、1個取り試験金型で差圧成形法によって成形した。得られた成形品につき、偏肉の有無、型決まり状況などの外観を目視観察し、全体として良好なものを○、劣るものを×、○ と× の中間のものを△、とそれぞれ表示した。
(k)容器成形性の総合評価:容器成形時の上記(i)と(j)の評価項目の双方が良好なものを○、一方が劣るものを△、双方が劣るものを×、それぞれ表示した。
[実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例22]
<使用した原料樹脂の性質>
(1)成分(A):MFRと引張弾性率が、次の値を有するプロピレンブロック共重合体である。
(2)成分(B):MFRと引張弾性率が、次の値を有するプロピレン重合体(ホモポリマー)である。
(3)HMS:自由末端長鎖分岐を有するプロピレン系樹脂(Basell社製、銘柄名:PF814)である。
<発泡シートの製造>
上記成分(A)と成分(B)を、表−1に示した割合で秤量し、リボンブレンダーで均一に混合して混合物を得た。この混合物100重量部に対し、造核剤としての重曹−クエン酸(永和化成社製、ポリスレンEE405F)0.5重量部を、リボンブレンダーで均一に混合して配合物を得た。この配合物を、50mmφ、L/D=30の単軸押出機のホッパーに供給し、発泡剤としての炭酸ガスを、可塑化混合物100重量部に対して2重量%圧入・混合し、Tダイ(500mm幅)より大気圧下に押出し、ロールで引き取り発泡シートを得た。
<混合樹脂成分と発泡シートの評価試験>
上記した方法によって、混合樹脂成分についての物性評価試験を行い、評価結果を表−2に示した。また、上記方法で得られた発泡シートについて、上記した方法によって評価試験を行い、評価結果を表−2に示した。
上記表−1〜表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)原料の二種類の樹脂のMFRおよび引張弾性率が、請求項1で規定する要件を満たすものを組合せたものは、押出特性、発泡倍率、独立気泡率、気泡の数なども、シートの外観など請求項1で規定する要件を満たし、発泡シート製造時の押出特性に優れている(実施例1〜実施例4参照)。
(2)請求項1で規定する要件を満たす場合は、成分(A)単独でも押出特性、発泡倍率、独立気泡率、気泡の数なども、シートの外観など請求項1で規定する要件を満たし、発泡シート製造時の押出特性に優れているが(実施例4参照)、
請求項1で規定する要件の一方を満たさないもの単独では、シートの外観が優れず、発泡シート製造時の押出特性も劣る(比較例19〜比較例21参照)。
(2)成分(A)が請求項1で規定する要件を満たしても、これと組合せる成分(B)が請求項1で規定する要件を満たさないときは、押出特性、発泡倍率、独立気泡率、気泡の数などのいずれかにおいて請求項1で規定する特性を達成できず、発泡シート製造時の押出特性が劣る(比較例1〜比較例18参照)。
(4)さらに、発泡シート製造用として市販されている自由末端長鎖分岐を有するプロピレン系樹脂もまた発泡シート製造時の押出特性、およびシートの外観が劣る(比較例22)。
[実施例5〜実施例8、比較例23〜比較例25]
上記実施例1〜実施例4および比較例16〜比較例18で得られた発泡シートにつき、バッチ式差圧成形機(関西自動成形機社製、型式:PK450V)を使用した。厚さ1.0mmの発泡シートを、寸法が50cm×40cmのクランプによって固定し、発泡シートの上下から300℃に設定したヒーターによって15秒間加熱し、20cm×25cm×3cm(深さ)の弁当型容器を、一個取りの試験金型で差圧成形法(雄型側から減圧する方法)によって成形した。成形品を成形する過程でドローダウン性、容器成形性、容器成形性の総合評価を行い、結果を表−3に記載した。
上記表−3より、次のことが明らかになる。
1.発泡シートが発泡倍率、独立気泡率、気泡の数などにおいて請求項1の要件を満たしているものは、二次成形によって容器を成形する際にも成形性に優れている(実施例5〜実施例8参照)。
2.これに対して、発泡シートが発泡倍率、独立気泡率、気泡の数などのいずれか請求項1の要件を満たしていないものは、二次成形によって容器を成形する際の成形性が劣る(比較例16〜比較例18参照)。
プロピレン系樹脂製発泡シートは、緩衝材、食器容器、断熱材、自動車部品などの用途、特に二次成形法によってトレー、カップ、ボウル、皿、容器などの製造用に幅広く利用される。
1:発泡シートから切り取った四角形のブロック
2:発泡シートの押出し方向
3:押出し方向と直角の方向
4:発泡シートの厚さ方向
5:独立気泡
6:気泡の数を測定した個所

Claims (4)

  1. JIS K7210に準拠して測定したMFRが3〜15g/10min、JIS K7161に準拠して測定した引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレンブロック共重合体10〜100重量%と、MFRが1〜15g/10min、引張弾性率が1500〜2000MPaのプロピレン重合体を0〜90重量%を含む(混合)樹脂組成物を原料とし、溶融押出成形法で製造され、発泡シートの厚さが0.2〜3.0mm、発泡倍率が1.1〜5.0倍、独立気泡率が50%以上とされてなることを特徴とするプロピレン系樹脂製発泡シート。
  2. 発泡シートを表面側から裏面側に貫通して切り取った四角形の試料の切断面に表れる独立気泡個数が、厚さ1mm当たり5〜30個の範囲にある、請求項1に記載のプロピレン系樹脂製発泡シート。
  3. 発泡シートの片面又は両面に熱可塑性樹脂製の非発泡フィルムを積層した請求項1または請求項2に記載のプロピレン系樹脂製発泡シート。
  4. 上記記載の発泡シートを加熱成形してなることを特徴とする成形品。


















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