JP2012025669A - アセタールの製造法 - Google Patents

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良太 平岡
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Abstract

【課題】
ビシナルジオールを酸素により酸化的に開裂し、1段階により高効率且つ経済的にアセタールを得る。
【解決手段】
ビシナルジオールを目的のアセタール化の反応物である脂肪族アルコール中で、酸化開裂触媒である担体担持したルテニウム触媒を用いて、供給される酸素により酸化開裂しアルデヒドを生成させ、共存する酸触媒により速やかにアセタール化を行うことで、対応するアセタールを1段階で得る。前記ビシナルジオールには、植物油由来の不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルより作られるビシナルジオールなどを利用できる。また、共存する酸触媒として、ゼオライトや活性炭を使用できる。
【選択図】 なし

Description

本発明はアセタールの製造法、より詳細には、直鎖のビシナルジオールを酸化開裂後、速やかにアセタール化し、対応するアセタールを製造する方法に関する。
一般にビシナルジオールの酸化開裂方法として、過ヨウ素酸や四酢酸鉛を用いる方法が知られている。しかし、ヨウ素又は鉛を含む化合物を多量に用いるため、後処理が煩雑となるだけでなく、資源および環境上の観点から好ましくない。直鎖のビシナルジオールを開裂させる方法は、遷移金属や非金属からなる金属酸化物触媒と過酸化水素を反応させカルボン酸を得る方法(特許文献1参照)も知られているが、アルデヒドからの酸化が進みカルボン酸メチルエステルが生成されるため、アセタールは得られない。
ビシナルジオールを担持触媒(特許文献2参照)を用いて酸化開裂しアルデヒドを得た後、適当な触媒を用いてアセタール化を行うことでアセタールを得ることは可能だが、ろ過、抽出、蒸留工程を経る必要があり、コストの観点から工業的に好ましくない。
特許公報4186554号公報 特許公報4278220号公報
本発明の目的は、ビシナルジオールを酸化的に開裂させた後、生成するアルデヒドを速やかにアセタール化し、対応するアセタールの高効率且つ経済性に優れた生成方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、ビシナルジオールを目的のアセタール化の反応物である脂肪族アルコール中で、酸化開裂触媒を用いて酸化的に開裂しアルデヒドを生成させ、共存する酸触媒により速やかにアセタール化を行うことにより、対応するアセタールが効率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は
(1)
ビシナルジオールを脂肪族アルコール及び酸化開裂触媒の存在下に酸化的開裂反応とアセタール化反応することを特徴とする、前記脂肪族アルコール由来のオキシ脂肪族基を有するアセタールの製造法
(2)
脂肪族アルコールが炭素数1〜4の脂肪族基と1個以上の水酸基を有する化合物である上記(1)記載のアセタールの製造法
(3)
ビシナルジオールが直鎖、分岐もしくは環状のビシナルジオールである上記(1)〜(2)いずれかに記載のアセタールの製造法
(4)
ビシナルジオールが直鎖もしくは分岐の不飽和脂肪酸または直鎖もしくは分岐の不飽和脂肪酸エステル由来のビシナルジオールである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアセタールの製造法
(5)
不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルが植物由来原料より作られる不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルである上記(1)〜(4)のいずれかに記載のアセタールの製造法
(6)
酸触媒の存在下に反応させる上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアセタールの製造法
(7)酸化開裂触媒の活性成分がルテニウム化合物である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアセタールの製造法
(8)
酸触媒が無機酸、有機酸または固体酸からなる群より選ばれる1種以上である上記(7)に記載のアセタールの製造法
に関する。
本発明の方法によれば、ビシナルジオールを酸化的に開裂させた後、生成するアルデヒドを速やかにアセタール化し、対応するアセタールが効率よく生成する。
本発明の製造法は、ビシナルジオールを脂肪族アルコール及び酸化開裂触媒の存在下に酸化的開裂反応とアセタール化反応することを特徴とする。
反応基質として用いるビシナルジオールとは、水酸基が隣り合う炭素に対して結合しているポリオールであり、該水酸基は分子中の末端、炭素鎖内部、炭素環中どの部分に存在しても良く、直鎖であっても分岐であっても良い。このようなビシナルジオールとしては、例えば、下記式(1)
Figure 2012025669
(式中、Ra 、Rb は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又は複素環式基を示す。またRa およびRb は、互いに結合して、隣接する2つの炭素原子と共に環を形成していてもよい)で表される化合物が挙げられる。
前記式(1)中、Ra 、Rb における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基およびこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度のアルキル基;ビニル、アリール、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3 - 2 0 シクロアルキル−C1 - 4 アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7 - 1 8 アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1 - 4 アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
好ましい炭化水素基には、C1 - 1 0 アルキル基、C2 - 1 0 アルケニル基、C2 - 1 0 アルキニル基、C3 - 1 5シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3 - 1 5 シクロアルキル−C1 - 4 アルキル基、C7 - 1 4 アラルキル基等が含まれる。上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、カルボキシルエステル基、置換オキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、複素環式基などを有していてもよい。
a 、Rb における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環および非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1 - 4 アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
a およびRb が互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に形成してもよい環としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロオクタン、シクロドデカン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜12員)程度の非芳香族性炭素環(シクロアルカン環又はシクロアルケン環);オキソラン、オキサン、アゾリジン、ペルヒドロアジン、チオラン、チアン環などの3〜20員(好ましくは3〜12員、さらに好ましくは3〜8員)程度の非芳香族性複素環(特に、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む非芳香族性複素環)が挙げられる。これらの環は前記置換基を有していてもよく、また他の環(非芳香族性環又は芳香族性環)が縮合していてもよい。
好ましいRa 、Rb には、水素原子、C1 - 1 0アルキル基、C2 - 1 0 アルケニル基、C2 - 1 0 アルキニル基、C3 - 1 5 シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3 - 1 2 シクロアルキル−C1 - 4 アルキル基、C7 - 1 4アラルキル基などが含まれる。また、Ra 、Rb が互いに結合して隣接する2つの炭素原子と共に3〜20員程度の非芳香族性炭素環又は非芳香族性複素環を形成するのも好ましい。
さらに好ましいRa 、Rb には、C1 - 1 0 アルキル基とカルボキシル基を有するC1
- 1 0 アルキル基の組み合わせ、もしくはC1 - 1 0 アルキル基とカルボキシルエステル基を有するC1-10アルキル基の組み合わせである炭化水素基であり、これらを有するビシナルジオールは、不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸エステルをジオール化して得られるビシナルジオールである。
不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸エステルとしては、種々の油を加水分解もしくはエステル交換した不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸エステルが持つ二重結合の数は1つ以上であれば特に制限がなく、直鎖であっても分岐であっても良い。また、直鎖中もしくは分岐中に置換基を有しても良い。
上記、不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、リシノール酸が挙げられる。好ましい不飽和脂肪酸としてはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸が挙げられる。
不飽和脂肪酸エステルとしては、上記の不飽和脂肪酸をエステル交換したものが挙げられる。
上記の不飽和脂肪酸をエステル交換するアルコールとして特に指定はなく、一般に炭素数1〜8程度のアルコールが挙げられ、直鎖中に置換基を有したものでも良い。
上記の不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸エステルの原料となる油としては、植物性、動物性のものが挙げられる。
植物性油としては、種々の植物より搾油される油であれば良く、例えば、ヒマワリ油、菜種油、亜麻仁油、綿実油、キリ油、トール油、ヤシ油、ケシ油、ハズ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ピーナッツ油および大豆油などが挙げられる。
動物性油としては、牛脂、羊脂、魚油、鯨油、タラ肝油、イワシ油、ニシン油、海産動物油などが挙げられる。
式(1)で表されるビシナルジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、2,3−オクタンジオール、3,4−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、3−フェニル−1,2−プロパンジオール、1−(2−ピリジル)−1,2−エタンジオール、1−シクロヘキシル−1,2−エタンジオール、多価アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどのアルジトール類など、又はそれらの誘導体)、不飽和脂肪酸由来のポリオール(例えば9,10−ジヒドロキシパルミチン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、9,10、12,13−テトラヒドロキシステアリン酸など、又はそれらの誘導体)などの鎖状のビシナルジオール;1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロオクタンジオール、シクリトール類(例えば、イノシトールなど、又はそれらの誘導体)、糖類(例えば、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトース、セルロース、デンプン、アミノ糖など、又はそれらの誘導体)などの環状ビシナルジオールが挙げられる。好ましくは鎖状のビシナルジオールが挙げられ、さらに好ましくは不飽和脂肪酸由来のポリオール(9,10−ジヒドロキシパルミチン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、9,10、12,13−テトラヒドロキシステアリン酸など、又はその誘導体)が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては炭素数1〜4のポリオールを含むアルコールで、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ノルマル−ブタノール、イソブタノール、ターシャリー−ブタノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられるが、反応基質として使用したビシナルジオールは、このアセタール化の反応物には含まない。これらの脂肪族アルコールは一種で又は二種以上混合して用いられてもよい。
反応は液相および気相の何れで行うこともできる。液相反応の場合、反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、上記アセタール化の反応物である脂肪族アルコールが少なくとも1種類存在していれば良く、脂肪族アルコール以外の有機溶媒を併用しても良い。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン(トリフルオロトルエン)、クロロベンゼン、アニソール、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、安息香酸エチルなどの、ベンゼン環がハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換オキシカルボニル基などで置換されていてもよいベンセン誘導体;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロアルカン;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの鎖状または環状エーテル;酢酸などの有機酸などが挙げられる。これらの溶媒は一種で又は二種以上混合して用いることができる。
酸素は分子状の酸素および発生機の酸素の何れであってもよい。分子状酸素としては、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作性および安全性のみならず経済性などの点から、空気を使用するのが好ましい。酸素の使用量は、基質の種類に応じて適宜選択できるが、通常、基質1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)を使用することが好ましいが、反応性の観点からは、基質に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。酸素の導入方法としては、密閉容器内を用いて共存させる方法や、反応基質を含む液に対して酸素を導入する方法などが考えられるが、系中に酸素と反応基質が共存する状態を作ることが出来れば特に指定はなく、いずれの方法も選択できる。
反応温度は、ビシナルジオールの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜200℃、好ましくは10〜150℃、さらに好ましくは30〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、加圧下(例えば、1〜100atm)で行ってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などのいずれの方法で行ってもよい。
酸化開裂触媒としては、活性成分がルテニウム化合物であれば良い。なお、本明細書では、ルテニウム単体もルテニウム化合物に含まれるものとする。前記ルテニウム化合物には、例えば、金属ルテニウム、酸化ルテニウム、硫化ルテニウム、水酸化ルテニウム、フッ化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硫酸ルテニウム、ルテニウム酸又はその塩(例えば、ルテニウム酸アンモニウムなど)、過ルテニウム酸又はその塩(例えば、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムなど)、無機ルテニウム錯体[例えば、ヒドロキシハロゲン化ルテニウム(ヒドロキシ塩化ルテニウムなど)、ヘキサアンミンルテニウムハロゲン化物(ヘキサアンミンルテニウム塩化物など)、ルテニウムニトロシル、ヘキサハロルテニウム酸又はその塩(ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウムなど)]などの無機化合物;シアン化ルテニウム、有機ルテニウム錯体[例えば、ドデカカルボニル酸ルテニウム(0)、ジカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジアセタトジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテノセンなど]などの有機化合物が挙げられる。
ルテニウム化合物の価数は0〜8のいずれであってもよい。好ましいルテニウム化合物の価数は0〜4価であり、特に2価が好ましい。好ましいルテニウム化合物には、金属ルテニウム、過ルテニウム酸又はその塩およびルテニウム錯体が含まれる。これらの中でも、金属ルテニウムおよびルテニウム錯体が好ましい。さらに好ましくは、有機ルテニウム錯体、特に、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類を配位子として有する有機ルテニウム錯体[例えば、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)など]である。ルテニウム化合物は単独で又は2以上を混合して使用することができる。
酸化開裂触媒は担体に担持しても良く、活性成分が担体に担持された触媒であれば特に限定されない。
前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの無機の金属酸化物や活性炭などが挙げられる。なかでも、触媒活性の点で活性炭が好ましい。活性炭としては、種々の原料(例えば、植物系、鉱物系、樹脂系等)から得られる活性炭を使用できる。活性炭はガス賦活炭および薬品賦活炭のいずれであってもよい。担体の比表面積は、例えば10〜3000m2/g程度、好ましくは50〜3000m2/g程度である。
ルテニウム化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%程度である。触媒の調製は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
触媒の使用量は、ルテニウム化合物として、基質であるビシナルジオール1モルに対して、例えば0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.6モル、さらに好ましくは0.02〜0.4モル程度である。
酸触媒としては、無機酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などが挙げられる。有機酸の例としてはギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸などが挙げられる。固体酸の例としては、ゼオライト(たとえば、ベータゼオライト、MCM-22、MCM-36、モルデナイト、X-ゼオライト、並びにH-Y-ゼオライトおよびUSY-ゼオライトを包含するY-ゼオライト)、シリカ-アルミナ、硫酸化酸化物(たとえば、ジルコニウム、チタン、スズなどを硫酸処理した酸化物)、混合酸化物(たとえばジルコニウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、リンなど)、塩素化アルミニウム酸化物、塩素化粘土、陽イオン交換樹脂(たとえば、アンバーライト、ダウエックス)、酸点を持つよう調製された炭素(たとえば、活性炭、グラファイト、ナノダイヤモンドなど)が挙げられる。これらの固体酸触媒は、高温乾燥、真空乾燥、酸処理、気相処理など種々の前処理を行っても良い。また、これらの酸触媒は、酸化開裂触媒と別個に反応系中に添加しても良いし、酸化開裂触媒を担持させる担体として用いても良い。触媒の再利用の点からは固体酸が好ましい。触媒活性の点から、より好ましくはゼオライト(ベータゼオライト、MCM-22、MCM-36、モルデナイト、X-ゼオライト、並びにH-Y-ゼオライトおよびUSY-ゼオライトを包含するY-ゼオライト)が挙げられる。
本発明の方法では、反応により、温和な条件であっても、ビシナルジオールにおいてヒドロキシル基が結合している2つの炭素原子間が酸化的に開裂し、対応するアセタールアルデヒドが生成する。例えば、前記式(1)で表されるビシナルジオールを反応に付すと、下記式(2)および/又は式(3)
a CH(ORc)(ORd) (1)
b CH(ORc)(ORd) (2)
(式中、Ra 、Rb は前記に同じで、Rc、Rdはアセタール化に使用した脂肪族アルコールにおいて、アセタールを形成するヒドロキシル基以外の部分)で表されるアセタールが生成する。なお、式(1)で表される化合物において、Ra およびRb が、互いに結合して、隣接する2つの炭素原子と共に環を形成している場合には、反応により、前記2つの炭素原子間の結合が酸化的に開裂し、末端に2つのアルコキシ基を有する対応するジアセタールが生成する。また、式(2)、(3)で表される化合物において、RcおよびRdが互いに結合して、環状のアセタールを形成する場合もある。
反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により、容易に分離精製できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
4重量%Ru(PPh33 Cl2 [ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)]/活性炭 0.2ミリモル(ルテニウム化合物として)、9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチル5ミリモルおよびメタノール30mlからなる混合液中へ、空気を600ml/minの流速で導入し、60℃で14時間攪拌した。反応後、ジエチルエーテルを用いて抽出、洗浄し、ろ過により触媒を除去して、エバポレーターによりジエチルエーテルを除去した。得られた凝縮液を希釈し、内部標準法を使って、ガスクロマトグラフィー(検出器:水素炎イオン化型検出器)より収率を求めたところ、1,1−ジメトキシノナンが収率76%、ノナナールが収率13%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は100%だった。
実施例2
メタノール30mlに代えて、トリフルオロメチルベンゼンを90ml用いた以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、ノナナールが収率91%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は99%だった。
実施例3
メタノール30mlにトリフルオロメチルベンゼン60mlを加えて実施例1と同様の操作を行ったところ、1,1−ジメトキシノナンが収率28%、ノナナールが収率29%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は75%だった。
実施例4
実施例3にベータゼオライト0.5gを加えて同様の操作を行ったところ、1,1−ジメトキシノナンが収率67%、ノナナールが収率2%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は99%だった。
実施例5
メタノールを90ml用い、さらにベータゼオライト0.5gを加えて実施例1と同様の操作を行ったところ、1,1−ジメトキシノナンが収率91%、ノナナールが収率2%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は99%だった。
実施例6
メタノール30ml、ヘキサン60ml用い、さらにベータゼオライト0.5gを加えて実施例1と同様の操作を行ったところ、1,1−ジメトキシノナンが収率99%、ノナナールが収率1%で得られた。その際の9,10−ジヒドロキシステアリン酸メチルの転化率は100%だった。
本発明で得られるアセタールは、一般的なビシナルジオールの開裂反応で得られるカルボン酸やその後のエステル交換反応で得られるカルボン酸エステルに比べて融点が低く、低温環境で使用される航空機用燃料へ添加可能であると期待される。特に植物由来のビシナルジオールを用いることで、カーボンニュートラルな航空機燃料添加剤を提供することを特徴とする。本発明により上記の燃料製造における反応ステップを削減できることから、工業化において有用であるといえる。

Claims (8)

  1. 原料ビシナルジオールを脂肪族アルコール及び酸化開裂触媒の存在下に酸化的開裂反応とアセタール化反応することを特徴とする、前記脂肪族アルコール由来のオキシ脂肪族基を有するアセタールの製造法。
  2. 脂肪族アルコールが炭素数1〜4の脂肪族基と1個以上の水酸基を有する化合物である請求項1記載のアセタールの製造法。
  3. ビシナルジオールが直鎖、分岐もしくは環状のビシナルジオールである請求項1〜2いずれかに記載のアセタールの製造法。
  4. ビシナルジオールが直鎖もしくは分岐の不飽和脂肪酸または直鎖もしくは分岐の不飽和脂肪酸エステル由来のビシナルジオールである請求項1〜3のいずれかに記載のアセタールの製造法。
  5. 不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルが植物由来原料より作られる不飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸エステルである請求項1〜4のいずれかに記載のアセタールの製造法。
  6. 該反応が酸化開裂触媒および酸触媒を用いて行われる請求項1〜5のいずれかに記載のアセタールの製造法。
  7. 酸化開裂触媒の活性成分がルテニウム化合物である請求項1〜6のいずれかに記載のアセタールの製造法。
  8. 酸触媒が無機酸、有機酸または固体酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のアセタールの製造法。
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