JP2012024713A - 防汚性被膜の形成方法及び防汚性部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒径が3nm以上5μmの親水性無機微粒子3を50質量%以上含む不揮発成分を含有するコーティング組成物を基材1に塗布及び乾燥して被膜を形成した後、この被膜の表面に、平均粒径が0.05μm以上2μm以下のフッ素樹脂粒子7を接触させることを特徴とする防汚性被膜6の形成方法。
【選択図】図2a
Description
また、特許文献1の方法では、条件によっては被膜の表面にクラックやボイドなどの欠陥が生じることがある。例えば、膜厚を大きくする場合や顔料及び抗菌剤などの添加物を防汚性被膜に含有させる場合に、被膜の表面に欠陥が生じ易い。そして、この欠陥に起因した凹凸に粉塵が捕捉され易くなる結果、防汚性能が低下してしまうことがある。ここで、本明細書における「防汚性能」とは、汚れが付着し難い性能、及び付着した汚れが除去され易い性能を意味する。
また、本発明は、防汚性能に優れた防汚性部材を提供することを目的とする。
また、本発明は、平均粒径が3nm以上5μmの親水性無機微粒子からなる多孔質膜と、前記多孔質膜の表面の凹部に充填された平均粒径が0.05μm以上2μm以下のフッ素樹脂粒子とを含む防汚性被膜を部材の表面に有することを特徴とする防汚性部材である。
また、本発明によれば、防汚性能に優れた防汚性部材を提供することができる。
本実施の形態の防汚性被膜の形成方法は、所定のコーティング組成物を基材に塗布及び乾燥して被膜を形成した後、この被膜の表面に所定のフッ素樹脂粒子を接触させることを特徴とする。
本実施の形態の防汚性被膜の形成方法に用いられるコーティング組成物は、不揮発成分として親水性無機微粒子を含有する。ここで、本明細書における「不揮発成分」とは、被膜を形成する際に揮発せず、被膜の構成要素となる成分のことを意味する。具体的には、10gのコーティング組成物を100℃で1時間加熱した後に得られる残留物が不揮発成分である。
また、被膜の形成を容易にするために、シリカやアルミナなどの金属酸化物のゾル、ナトリウムシリケートやリチウムシリケートなどの各種シリケート、金属アルキレート、リン酸アルミやρ−アルミナなどの一般的なバインダーをコーティング組成物に添加してもよい。なお、バインダーが親水性無機微粒子を含有するものであれば、そのバインダーを単独で用いることもできる。
顔料としては、特に限定されず、例えば、無機顔料、天然無機顔料、合成無機顔料、セラミック顔料、有機顔料、不溶性色素、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ顔料などが挙げられる。これらの顔料は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
抗菌剤としては、特に限定されず、例えば、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属を、ゼオライト、セラミックス、シリカゲルなどの多孔性無機材料に担持させた無機抗菌剤;アンモニウム塩化合物、有機シリコン系アンモニウム塩などの有機抗菌剤;キトサンなどの天然抗菌剤;酸化チタンなどの光触媒抗菌剤などが挙げられる。これらの抗菌剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
水としては、特に限定されないが、水に含まれるミネラル分の量が多い場合には、親水性無機微粒子の凝集が生じることがある。そのため、脱イオン水を用いることが好ましい。しかし、親水性無機微粒子の凝集が生じない場合には、水道水などの使用も可能である。
ここで、基材上に形成された被膜の断面図を図1a及び1bに示す。図1aは、不揮発成分として親水性無機微粒子のみを含む場合であり、図1bは、不揮発成分として親水性無機微粒子及び添加剤を含む場合である。
図1aにおいて、基材1上に形成された被膜2は、親水性無機微粒子3からなる多孔質膜であり、クラックやボイドなどの欠陥4によって表面に凹凸が形成されている。また、図1bにおいて、基板1上に形成された被膜2は、親水性無機微粒子3からなる多孔質膜中に添加剤5が包含されており、この添加剤5の存在によって欠陥4が生じる結果、表面に凹凸が形成されている。
基材1に形成される被膜2の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、一般に0.2μm以上50μm以下である。
ここで、フッ素樹脂粒子を接触させることによって得られた防汚性被膜の断面図を図2a及び2bに示す。図2aは、図1aの被膜2の表面にフッ素樹脂粒子を接触させた場合であり、図2bは、図1bの被膜2の表面にフッ素樹脂粒子を接触させた場合である。
図2aにおいて、基材1上に形成された防汚性被膜6は、親水性無機微粒子3からなる多孔質膜に生じた欠陥4内にフッ素樹脂粒子7が充填されている。また、図2bにおいて、基材1上に形成された防汚性被膜6は、親水性無機微粒子3からなる多孔質膜に添加剤5が包含されていると共に、この多孔質膜に生じた欠陥4内にフッ素樹脂粒子7が充填されている。これらの防汚性被膜6は、欠陥4がフッ素樹脂粒子7によって充填されているため、表面の凹凸が少ない。また、これらの防汚性被膜6は、親水性無機微粒子3に起因する親水性部分と、フッ素樹脂粒子7に起因する疎水性部分とが表面に露出した構造をなしている。
なお、被膜2の表面に接触させるフッ素樹脂粒子7は、一次粒子に限定されず、被膜2の欠陥4内に充填される際に凝集が壊れるのであれば、一次粒子が凝集した二次凝集粒子であってもよい。
図3a及び3bの防汚性被膜6は、欠陥4内へのフッ素樹脂粒子7の充填状態が、図2a及び2bの防汚性被膜6とは異なり、実際の空気、すなわち、斜め方向の空気の流れに含まれる粉塵が捕捉され難い構造をなしている。そのため、図3a及び3bの防汚性被膜6は、実際の空気の流れに対する防汚性能が向上する。
本実施の形態の防汚性部材は、所定の親水性無機微粒子からなる多孔質膜と、この多孔質膜の表面の凹部に充填された所定のフッ素樹脂粒子とを含む防汚性被膜を部材の表面に有することを特徴とする。この防汚性部材は、上記の防汚性被膜の形成方法を用いて製造することができる。
防汚性被膜が形成される部材としては、防汚性能が要求される部材であれば特に限定されない。かかる部材の例としては、換気扇、空気調和機(加湿器、除湿機を含む)、空気清浄機、冷蔵庫、扇風機などの各種機器に用いられる部材が挙げられる。これらの部材の中でも、風路内に配置される部材が好ましい。
(実施例1)
平均粒径50nmのシリカ微粒子(親水性無機微粒子、日産化学工業株式会社製スノーテックスXL)、及びリチウムシリケート(バインダー、日産化学工業株式会社製リチウムシリケート45)を脱イオン水に配合して混合し、コーティング組成物を作製した。このコーティング組成物において、シリカ微粒子の含有量は5質量%、リチウムシリケートの含有量は2質量%とした。また、不揮発成分(シリカ微粒子及びリチウムシリケート)中のシリカ微粒子の含有量は、71.4質量%であった。
次に、このコーティング組成部にガラス板を浸漬させた後、ガラス板を引き上げ、80℃で10分間乾燥させることによって被膜を形成した。
次に、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)を被膜上に適用し、不織布を用いて25g/cm2の押圧で擦り付けることによって防汚性被膜を形成した。
この実施例では、フッ素樹脂粒子を被膜に吹き付けることによって防汚性被膜を形成した。
まず、実施例1と同様にして被膜を表面に形成したガラス板を、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)150gと共に、プロペラを備えた一辺が約300mmの容器中に配置した。次に、プロペラを回転させてフッ素樹脂粒子を容器内で循環させ、被膜の表面にフッ素樹脂粒子を吹き付けた。この時の循環空気の風速は約20m/秒であった。
平均粒径12nmのヒュームドシリカ(親水性無機微粒子、日本アエロジル株式会社製アエロジル200)、平均粒径6nmのコロイダルシリカ(親水性無機微粒子、日産化学工業株式会社製スノーテックスXS)を脱イオン水に配合して混合し、コーティング組成物を作製した。このコーティング組成物において、ヒュームドシリカの含有量は4質量%、コロイダルシリカの含有量は0.5質量%とした。不揮発成分中のシリカ微粒子の含有量は、約100質量%である。
次に、このコーティング組成部にガラス板を浸漬させた後、ガラス板を引き上げ、100℃で15分間乾燥させることによって被膜を形成した。
次に、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)を入れた容器中に被膜を30g/cm2の押圧で押し付けることによって防汚性被膜を形成した。
この実施例では、フッ素樹脂粒子を被膜に吹き付けることによって防汚性被膜を形成した。
まず、実施例3と同様にして被膜を表面に形成したガラス板を、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)150gと共に、プロペラを備えた一辺が約300mmの容器中に配置した。次に、プロペラを回転させてフッ素樹脂粒子を容器内で循環させ、被膜の表面にフッ素樹脂粒子を吹き付けた。この時の循環空気の風速は約20m/秒であった。
この実施例では、フッ素樹脂粒子と共にガラスビーズを被膜に吹き付けることによって防汚性被膜を形成した。
まず、実施例3と同様にして被膜を表面に形成したガラス板を、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)150g及び平均粒径が0.8μmのガラスビーズ50gの混合物と共に、プロペラを備えた一辺が約300mmの容器中に配置した。次に、プロペラを回転させてフッ素樹脂粒子及びガラスビーズを容器内で循環させ、被膜の表面にフッ素樹脂粒子及びガラスビーズを吹き付けた。この時の循環空気の風速は約20m/秒であった。
シリカ微粒子を配合していないコーティング組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして防汚性被膜を形成した。
(比較例2)
フッ素樹脂粒子を被膜に吹き付けなかったこと以外は、実施例1と同様にして防汚性被膜を形成した。
(比較例3)
フッ素樹脂粒子を被膜に押し付けなかったこと以外は、実施例3と同様にして防汚性被膜を形成した。
(防汚性評価)
一般に、機械加工工場内の空気調和機の気流噴出し部分では、セルロース系短繊維の埃、油脂が含まれる粒子状微粒子の付着によって黒く着色する。そこで、この気流噴出し部分に、防汚性被膜を形成したガラス基板を2ヶ月間配置し、これらの汚れがどの程度抑制されるかを評価した。汚れの評価は、防汚性被膜を形成したガラス基板の吸光度を測定し、設置前のガラス基板の吸光度からどの程度変化したかを調べた。吸光度は、紫外可視分光光度計UV−3100PC(島津製作所)を用い、波長450nmで測定した。
(水洗後の防汚性評価)
防汚性被膜を形成したガラス基板を、シャワー状の水道水によって30秒間洗浄した後、上記と同様にして防汚性評価を行った。
上記の各評価の結果を表1に示す。
この実施例では、換気扇用のシロッコファンに防汚性被膜を形成した。シロッコファンとしては、直径150mmの鋼板製のものを用いた。
まず、実施例1で用いたコーティング組成物にシロッコファンを浸漬させた後、シロッコファンを引き上げ、80℃で10分間乾燥させることによって被膜を形成した。次に、被膜を形成したシロッコファンを換気扇に組み込んだ後、一次粒子の平均粒径が0.2μmのフッ素樹脂粒子(旭硝子株式会社製フルオンF173J)及び平均粒径が0.8μmのガラスビーズの混合物(質量割合1:1)25gを、ファンを回転させることによってシロッコファンの表面に形成された被膜に吹き付けた。この時の循環空気の風速は約15m/秒であった。
フッ素樹脂粒子を被膜に吹き付けなかったこと以外は、実施例6と同様にして防汚性被膜を形成した。
(比較例5)
防汚性被膜を形成しないシロッコファンを組み込んだ換気扇を準備した。
まず、家庭内で回収した綿埃60gを飛散させ、約20分かけて換気扇に吸い込ませた。次に、シロッコファンの重量を測定し、付着試験前のシロッコファンの重量からどの程度変化したかを調べることによって、綿埃の付着量を評価した。
この評価の結果、実施例6のシロッコファンでは綿埃の付着量が0.22gであったのに対し、比較例4及び5のシロッコファンでは綿埃の付着量がそれぞれ0.85g及び0.98gと多かった。
Claims (6)
- 平均粒径が3nm以上5μmの親水性無機微粒子50質量%以上を含む不揮発成分を含有するコーティング組成物を基材に塗布及び乾燥して被膜を形成した後、この被膜の表面に、平均粒径が0.05μm以上2μm以下のフッ素樹脂粒子を接触させることを特徴とする防汚性被膜の形成方法。
- 前記フッ素樹脂粒子を前記被膜の表面に擦り付けることを特徴とする請求項1に記載の防汚性被膜の形成方法。
- 前記フッ素樹脂粒子を前記被膜の表面に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の防汚性被膜の形成方法。
- 前記フッ素樹脂粒子と平均粒径が0.2mm以上5mm以下の粒状物質との混合物を前記被膜の表面に接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防汚性被膜の形成方法。
- 平均粒径が3nm以上5μmの親水性無機微粒子からなる多孔質膜と、前記多孔質膜の表面の凹部に充填された平均粒径が0.05μm以上2μm以下のフッ素樹脂粒子とを含む防汚性被膜を部材の表面に有することを特徴とする防汚性部材。
- 前記部材は、換気扇、空気調和機、空気清浄機、冷蔵庫又は扇風機に用いられる部材であることを特徴とする請求項5に記載の防汚性部材。
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