JP2012024057A - 害虫誘引照明システム - Google Patents

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Abstract

【課題】作物を育成する圃場内に存在する昼行性害虫を、光により誘引して捕獲する害虫誘引照明システムにおいて、昼行性害虫による作物への被害を低減する。
【解決手段】害虫誘引照明システム1は、作物7を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯を動作時間帯として設定する設定部2と、設定された動作時間帯に圃場に対して緑色光が制限された擬似太陽光を照射する擬似太陽光源部3と、誘引部4とを備える。擬似太陽光の照射を受けた作物7はほとんど緑色を呈さないため、擬似太陽光によって活性化された昼行性害虫6により視認されにくく、その結果、昼行性害虫6による被害を受けにくい。活性化された昼行性害虫6は、誘引部4により誘引及び捕獲される。誘引部4は、擬似太陽光を昼行性害虫6に対して誘引活性を示す緑色の誘引光へ変換し、その誘引光に誘引されてきた昼行性害虫6を捕獲する。
【選択図】図1

Description

本発明は、作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯において、光により昼行性害虫を誘引して捕獲する害虫誘引照明システムに関する。
従来から、作物を育成する圃場に誘引光を照射することにより害虫を誘引し、誘引された害虫を捕獲する方法が知られている。この方法は、自然光の影響が少ない夜間に特に有効であるため、通常、自然光が照射されていない時間帯に誘引光を圃場に投射し、結果として夜行性害虫を対象とするものである。
昼行性害虫を対象とした場合、圃場に自然光が照射されていない時間帯には昼行性害虫は活動を休止しているため、上記方法は効率良く昼行性害虫を誘引することができない。そこで、圃場に自然光が照射されていない時間帯に、圃場に対して昼行性害虫の活動を活性化する光(例えば、500〜700nmの波長範囲の光)を照射し、活性化された昼行性害虫を誘引光(例えば、300〜450nmの波長範囲の光)により誘引し、捕獲する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−151868号公報
上記特許文献1に示される方法においては、作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯に、昼行性害虫の活動を活性化する光として、500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)を含む光が使用される。そのため、この光の照射を受けた作物(植物)は緑色を呈し、結果として、容易に昼行性害虫により視認され、昼行性害虫による被害を被りやすい。
上記のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、自然光が照射されていない時間帯に、昼行性害虫による作物の視認を困難とすることで昼行性害虫による作物への被害を低減する、害虫誘引照明システムを提供することを目的とする。
本発明の害虫誘引照明システムは、作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯のうち、任意の時間帯を動作時間帯として設定する設定部と、設定部により設定された動作時間帯に圃場に対して500〜600nmの波長範囲の光が制限された擬似太陽光を照射する擬似太陽光源部と、圃場から視認される位置に害虫を誘引及び捕獲する誘引部とを備え、誘引部は擬似太陽光を害虫に対して誘引活性を示す誘引光へ変換する波長変換部を有することを特徴とする。
この害虫誘引照明システムにおいて、波長変換部は、擬似太陽光を500〜600nmの波長範囲の光を主に含む誘引光へ変換することが好ましい。
本発明の害虫誘引照明システムによれば、擬似太陽光は500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)が制限された光であるので、作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯に、擬似太陽光の照射を受けた作物はほとんど緑色を呈さない。そのため、作物は昼行性害虫により視認されにくくなり、昼行性害虫による被害を受けにくくなる。
(a)は本発明の一実施形態に係る害虫誘引照明システムの構成を示す斜視図、(b)は前記システムの擬似太陽光源部等の平面配置図。 作物の葉の分光反射率及び昼行性害虫の分光相対感度を示す図。 (a)は上記システムで使用される擬似太陽光源部の斜視図、(b)は前記擬似太陽光源部より発せられる擬似太陽光の分光特性を示す図。 (a)は上記システムで使用される誘引部の正面図、(b)はその側面図。 上記システムで使用される波長変換部を構成する蛍光体の分光特性を示す図。 上記実施形態の一変形例に係る害虫誘引照明システムの構成を示す斜視図。 (a)は上記変形システムで使用される誘引部の外観斜視図、(b)はその断面図。
本発明の実施形態に係る害虫誘引照明システムについて、図面を参照して説明する。図1(a)に示されるように、害虫誘引照明システム1は、作物7を育成する圃場となるビニルハウス5内に設置され、昼行性害虫6を誘引及び捕獲することにより、作物7を保護するものである。照明システム1は、システムの動作時間帯を設定する設定部2と、設定部2により設定された動作時間帯にビニルハウス5内へ擬似太陽光を照射する擬似太陽光源部3と、擬似太陽光により活性化された昼行性害虫6を誘引及び捕獲する誘引部4とを備える。
図1(b)に示されるように、設定部2は、配電線8によって疑似太陽光源部3と結ばれ、擬似太陽光源部3への電力供給を制御する。擬似太陽光源部3は、例えば、ビニルハウス5の畝9が伸びる方向(奥行き方向)に、ビニルハウス5の天井中央部へ一定間隔を置いて複数設置される。誘引部4は、例えば、平面視で隣り合う擬似太陽光源部3の間にあって、畝9の間の土壌上に設置される。誘引部4は、例えば、擬似太陽光を昼行性害虫6に対して誘引活性を示す誘引光へ変換する蛍光体を有し、その稼働に電力を必要としない。なお、疑似太陽光源部3及び誘引部4の配置及び設置台数は、図1(a)(b)に示される配置及び設置台数に限定されることなく、使用目的に応じて種々の変更が可能である。
設定部2は、作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯のうち、任意の時間帯を動作時間帯として設定するものであり、擬似太陽光源部3の点灯時間を制御する。擬似太陽光源部3の点灯時間は、設定部2にソーラータイムスイッチを活用することにより、あらかじめ記憶した日出・日入時刻に従って、日没後x時間又は日出前y時間等に設定されてもよい。具体的な擬似太陽光源部3の点灯時間は、日没後又は日出前の2〜3時間又は終夜点灯であるが、これらに限定されない。擬似太陽光源部3の点灯時間は、使用者によって所望の時間帯が設定されてもよい。
擬似太陽光源部3は、設定部2により設定された動作時間帯に、圃場に対して擬似太陽光を照射する。擬似太陽光は、昼行性害虫6の生体リズムを制御することにより昼行性害虫6の活動時間をシフトさせ、本来昼行性害虫6が活動を休止している圃場に自然光が照射されていない時間帯に、昼行性害虫6の活動を活性化する。擬似太陽光の分光特性は、擬似太陽光源部3を構成する光源又は光源と光学部材(フィルタ・反射板等)との組み合わせにより決定され、以下の2種類がある。第1の擬似太陽光は、500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)が制限された光である。この擬似太陽光は、緑色光が制限された光であるから、この光の照射を受けた作物7は、圃場に自然光が照射されていない時間帯において、ほとんど緑色を呈さない。その結果、作物7は、コナジラミ等の緑色作物を好む昼行性害虫6によって視認されにくくなり、それらによる被害を受けにくくなる。従って、500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)が制限された第1の擬似太陽光は、コナジラミ等の緑色作物を好む昼行性害虫6による作物7への被害を低減する。一方、第2の擬似太陽光は、400〜500nmの波長範囲の光(青色光)が制限された光である。この擬似太陽光は、第1の擬似太陽光と同様の機構により作用し、結果として、アザミウマ等の青色作物を好む昼行性害虫6による作物7への被害を低減する。本実施形態は、これら2種類の擬似太陽光のうち、第1の擬似太陽光を利用する。
図2に示されるように、昼行性害虫6は、略400〜略600nmの波長範囲の光に対して高い分光相対感度を示す、すなわち、この波長範囲の光によって顕著に活性化されることが知られている。そのため、圃場に自然光が照射されていない時間帯において、昼行性害虫6の活動を効率良く活性化するためには、擬似太陽光は400〜600nmの波長範囲内にピーク波長を有する光であることが好ましい。ここで、上述のように、本実施形態で利用される擬似太陽光は、500〜600nmの波長範囲の光が制限された光であるから、擬似太陽光は、500〜600nmの波長範囲内にはピーク波長を持ち得ない。従って、擬似太陽光は、500〜600nmの波長範囲の光が制限され、かつ400〜500nmの波長範囲内にピーク波長を有する光であることが好ましい。又は、擬似太陽光は、500〜600nmの波長範囲の光が制限され、かつ400〜500nmの波長範囲の放射エネルギーの総和が他の領域の放射エネルギーの総和よりも大きい光であることが好ましい。
図3(a)に示されるように、擬似太陽光源部3は、例えば、直管型の白色蛍光ランプ31と、ランプ放電を安定化する安定器32と、青色フィルタ33と、これらを収容する透明シリンダ34と、擬似太陽光源部3を吊り下げるための吊下体35とを備える。ここで、青色フィルタ33は、白色蛍光ランプ31から発せられる光のうち、400〜500nmの波長範囲の光(青色光)を優先的に透過させる。擬似太陽光源部3は、例えば、LED又はカラー蛍光ランプ、又は青色フィルタで覆われた白色蛍光又はHIDランプより構成される。図3(b)に示されるように、擬似太陽光は、例えば、500〜600nmの波長範囲の光が制限され、略470nmにピーク波長を持つ光である。擬似太陽光は、例えば、略100ルクスの光量で圃場に対して照射されるが、この光量に限定されない。
誘引部4は、圃場から視認される位置に設置され、擬似太陽光により活動が活性化された昼行性害虫6を誘引及び捕獲する。図4(a)(b)に示されるように、誘引部4は、波長変換部41と、捕獲部42と、これらを収容する誘引部支持体43と、誘引部保持脚44とを備える。波長変換部41及び捕獲部42の両者は、構造的に一体化していてもよく、構造的に分離され近接して設置されてもよい。
波長変換部41は、擬似太陽光を昼行性害虫6に対して誘引活性を示す誘引光へ変換する。ここで、上述のように、作物7を含む圃場内のあらゆる物体は、ほとんど緑色を呈さないため、誘引光が緑色であれば、それは容易に昼行性害虫6によって視認され、効率良く昼行性害虫6を誘引することが可能となる。従って、波長変換部41は、擬似太陽光を500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)を主に含む誘引光、より具体的には、この波長範囲内にピーク波長を有する誘引光、又はこの波長範囲の放射エネルギーの総和が他の領域の放射エネルギーの総和よりも大きい誘引光へ変換することが好ましい。
緑色誘引光の一部は、作物7の葉に照射され、その葉を緑色に呈させ得る。このような緑色を呈する葉は、昼行性害虫6によって視認され、昼行性害虫6による被害を被る虞がある。しかしながら、図2に示されるように、500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)に対する葉の分光反射率は、1枚目の葉、2枚目の葉、中位葉、及び最古葉を通じて10%前後と低いため、葉が示す緑色よりも誘引光が示す緑色の方が遥かに高い輝度を有することとなる。そのため、ほとんどの昼行性害虫6は、作物7の葉ではなく、緑色誘引光に誘引されることとなる。
誘引光は、例えば、蛍光体の励起/発光による波長変換を利用して、擬似太陽光より生成される。500〜600nmの波長範囲の光が制限された擬似太陽光から、500〜600nmの波長範囲の光を主に含む誘引光への波長変換は、例えば、以下の蛍光体を利用することで達成される。図5に示されるように、Ce付活されたY3Al5O12等といった希土類でドープされたアルミネート系蛍光体は、略460nmのピーク波長を有する光で励起され、略570nmのピーク波長を有する光を発する。更には、Eu付活された(Sr,Ba)2SiO4等といった希土類でドープされた珪酸塩系蛍光体A及びBは、それぞれ略480nm以下及び略490nm以下の波長を有する光で効率良く励起され、それぞれ略520nm及び略560nmのピーク波長を有する光を発する。これらの蛍光体は、顔料等の混合により、それらの蛍光発光時以外の反射率を調整されてもよい。これらの蛍光体を塗布した樹脂板等が、波長変換部41の具体的な実施例として利用される。
波長変換部41から発せられた誘引光により誘引されてきた昼行性害虫6は、捕獲部42により捕獲される。捕獲部42としては、透明粘着シート、電撃格子、水平に置かれた波長変換部41の上に水を張った水盤、又は波長変換部41前面に気流を流して吸引する吸引装置等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記実施形態によれば、圃場に自然光が照射されていない時間帯に、圃場内に存在する昼行性害虫6の活動を活性化するために、500〜600nmの波長範囲の光(緑色光)が制限された擬似太陽光が照射される。この擬似太陽光の照射を受けた作物7は、ほとんど緑色を呈さないため、活性化された昼行性害虫6により視認されにくい状態となり、その結果、昼行性害虫6による被害を受けにくくなる。活性化された昼行性害虫6は、誘引光を発する誘引部4に誘引され、そこで捕獲される。このとき、誘引光を圃場における最も主要な緑色光とすることにより、効率良く昼行性害虫6を誘引することが可能となる。誘引光は、擬似太陽光を波長変換することにより得られる。ここで、この波長変換に蛍光体の励起/発光による波長変換を利用すれば、電力を必要とすることなく、擬似太陽光を誘引光へ変換することが可能となる。従って、波長変換への蛍光体の利用は、誘引光源電灯を不要とし、照明システムの低コスト化、簡略化、及びそのメンテナンスの容易化を可能とする。
図6は、上記実施形態の一変形例に係る害虫誘引照明システム1の構成を示す。本変形例では、誘引部4はビニルハウス5内の土壌付近に設置されるのではなく、ビニルハウス5の天井部分から吊り下げられる。ここで、図7(a)(b)に示されるように、誘引部4は波長変換部41上に捕獲部42がクリップ45により誘引部支持体46へ固定された構造を有し、誘引部吊下体47を介してビニルハウス5へと連結される。捕獲部42は、例えば、透明粘着シートより構成される。
この変形例は、背の高い作物及び/又は枝葉の多い作物を栽培する際に有効である。図1(a)に示される実施形態の場合、背の高い作物及び/又は枝葉の多い作物は、擬似太陽光源部3から誘引部4への擬似太陽光照射を遮り、その結果、誘引部4における誘引光の生成を低下させる虞がある。一方、この変形例では、誘引部4は擬似太陽光源部3と非常に近接しているため、作物7の形状に依存せず、効率良く誘引光を生成することが可能となる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、擬似太陽光源部3及び誘引部4の設置場所は、圃場内に限定されることなく、圃場の周辺部であってもよい。圃場は、ビニルハウス5に限定されることなく、屋外の田畑であってもよい。更に、上記の実施形態では、擬似太陽光から誘引光への波長変換に蛍光体が利用されるが、蛍光体に限定されることなく、あらゆる波長変換物質及び/又は波長変換方法が利用され得る。なお、第2の擬似太陽光を利用した害虫誘引照明システムの場合、400〜500nmの波長範囲の光(青色)が制限され、かつ500〜600nmの波長範囲内にピーク波長を有する擬似太陽光を、400〜500nmの波長範囲の光を主に含む誘引光へ変換する必要がある。この波長変換は、より低いエネルギーを有する緑色光を、より高いエネルギーを有する青色光へ変換するものであるから、蛍光体を利用した波長変換では不可能であり、蛍光体以外の波長変換物質及び/又は波長変換方法を利用する必要がある。
1 害虫誘引照明システム
2 設定部
3 擬似太陽光源部
4 誘引部
5 ビニルハウス(圃場)
6 昼行性害虫(害虫)
7 作物

Claims (2)

  1. 作物を育成する圃場に自然光が照射されていない時間帯のうち、任意の時間帯を動作時間帯として設定する設定部と、
    前記設定部により設定された動作時間帯に、前記圃場に対して500〜600nmの波長範囲の光が制限された擬似太陽光を照射する擬似太陽光源部と、
    前記圃場から視認される位置に害虫を誘引及び捕獲する誘引部と、を備え、
    前記誘引部は、前記擬似太陽光を害虫に対して誘引活性を示す誘引光へ変換する波長変換部を有することを特徴とする害虫誘引照明システム。
  2. 前記波長変換部は、擬似太陽光を500〜600nmの波長範囲の光を主に含む誘引光へ変換することを特徴とする請求項1に記載の害虫誘引照明システム。
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