JP2012022702A - 圧力レギュレータ及び除振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】下流側に流量変動が発生した場合においても、高応答かつ高精度に圧力制御を行うことができる圧力レギュレータを提供する。
【解決手段】圧力レギュレータ41は、サーボ弁11によって、気体供給源10から供給される気体の等温化圧力容器13への流入流量を規制し、等温化圧力容器13内の圧力を一定に保持する。ここで、サーボ弁11を操作する圧力制御手段(コンピュータ46)は、圧力計14で計測した等温化圧力容器13内の圧力をフィードバック制御する圧力制御系をメインループとし、その内側に、流入流量を制御する流入流量制御系を構成すると共に、圧力微分計15で計測した等温化圧力容器13内の圧力微分値に基づいて等温化圧力容器13における流入流量と流出流量との差である流入出流量差を推定するオブザーバを構成し、推定した流入出流量差を流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系を構成する。
【選択図】図4

Description

本発明は、圧力を一定に保つ圧力レギュレータ及びその圧力レギュレータを用いた空気バネ式の除振装置に関する。
気体の圧力制御は、半導体製造過程における不活性ガスの制御、半導体製造用露光装置の土台となる空気バネ式の除振台や各種ガスの分析装置などにおいて必要不可欠である。このような半導体製造に用いられる装置をはじめ、多くの分野において精密な圧力制御が求められている。
圧力を一定に保つ圧力レギュレータは、機械的なフィードバック機構を用いたものが安価に販売されており、例えば、機械的なフィードバック機能のついたパイロット式の精密レギュレータがよく用いられるが、大きな流量を流すとその影響を受けるため、精密な計測や制御には大きな問題があった。それを回避するために、容積の大きな容器をバッファとして設け、使用流量の変動による影響を低減する方法がとられていた。しかし、大きな容積の容器を設置すると、設置のために広いスペースを占有するという問題があった。
そこで、本願発明者等は、特許文献1(段落0016〜段落0021、図1、図2)において、圧力容器に流入する空気量を空気圧サーボ弁によって規制することにより、この圧力容器内の圧力を一定に制御する圧力制御装置において、空気圧サーボ弁の気体出口に流量計を配置して圧力容器に流入する空気の流入流量を計測すると共に、圧力容器に圧力計を配置して、圧力容器内の空気の圧力を計測し、圧力計で計測した圧力をフィードバック制御するメインループと、流量計で計測した流入流量をフィードバック制御するマイナーループとからなるカスケード制御機構を備えた圧力制御装置を提案した。これによって、空気圧サーボ弁を通じて流出する空気の圧力を高速に制御することができるようになった。
また、本願発明者等は、特許文献2(段落0024〜段落0044、図10)において、流量制御型サーボ弁を用いた空気バネを支持脚とする除振装置を提案した。
特開2004−310478号公報 特開2006−144859号公報
特許文献1において提案した圧力制御装置は、圧力容器へ流入する空気の流入流量をフィードバック制御することにより、高速な圧力制御を実現したが、更に、下流側に流量変動が生じた場合にも高速に圧力制御を行うためには、圧力容器から流出する空気の流出流量を検知して制御する必要があった。
このために、例えば、圧力容器の下流側にも流量計を配置して、圧力容器から流出する流出流量を計測する方法が考えられるが、配置した下流側の流量計によって圧力損失が発生するため、精密に圧力制御を行うことは困難であった。
また、特許文献2において提案した除振装置を、更に応答性及び精度を向上するためには、空気バネの圧力制御だけではなく、空気バネに供給する空気の供給源の圧力を高速かつ高精度に制御する必要があった。
本発明は、これらの問題に鑑み、下流側に流量変動が発生した場合においても、高応答かつ高精度に圧力制御を行うことができる圧力レギュレータを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、高速な応答と高精度な位置整定が可能な空気バネ式の除振装置を提供することである。
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1に記載の圧力レギュレータは、圧縮性流体供給源から供給される圧縮性流体の流入流量を規制するサーボ弁と、前記サーボ弁を介して流入する圧縮性流体を等温状態に保持する等温化圧力容器と、前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力微分値を検出する圧力微分値検出手段と、前記サーボ弁を操作して等温化圧力容器内の圧縮性流体を所定の一定圧力に制御する圧力制御手段と、を備え、前記圧力制御手段は、前記圧力検出手段によって検出された圧力をフィードバック制御する圧力制御系と、前記等温化圧力容器へ流入する圧縮性流体の流入流量を制御する流入流量制御系と、前記圧力微分値検出手段によって検出された圧力微分値から、前記等温化圧力容器に流入する圧縮性流体の流入流量と前記等温化圧力容器内から流出する圧縮性流体の流出流量との差である流入出流量差を推定する流出流量推定手段と、を有し、前記圧力制御系の制御ループの内側に構成すると共に、前記流出流量推定手段によって推定された流出流量を前記流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系を構成するようにした。
かかる構成によれば、圧力レギュレータは、等温化圧力容器をバッファとして用いることにより、当該等温化圧力容器への空気等の気体に代表される圧縮性流体の流入過程及び流出過程を等体積かつ等温変化とみなすことができるため、簡便に圧力制御を行うことができる。
この等温化圧力容器内の圧縮性流体を所定の圧力に制御するために、サーボ弁によって、圧縮性流体供給源から供給される圧縮性流体の等温化圧力容器への流入流量を規制する。このとき、圧力レギュレータは、等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力をフィードバック制御する圧力制御系をメインループとする圧力制御手段によって、サーボ弁を操作して流入流量を規制し、等温化圧力容器内の圧縮性流体を所定の圧力に制御する。
ここで、圧力制御手段は、圧力制御系の内側に構成したマイナーループである流入流量制御系によって、等温化圧力容器における圧縮性流体の流入出流量をフィードバック制御するために、流出流量推定手段によって、等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力微分値に基づいて、等温化圧力容器における圧縮性流体の流出流量を推定し、推定した流出流量を流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系によって補償する。
請求項に記載の圧力レギュレータは、請求項1に記載の圧力レギュレータにおいて、前記サーボ弁は、スプール型サーボ弁とした。
かかる構成によれば、圧力レギュレータは、流量制御型サーボ弁であるスプール型サーボ弁を用いて流入流量の制御を行うため、例えば、圧力制御型のノズルフラッパ型サーボ弁を用いた場合に比べ、排気量を少なくすることができる。
請求項に記載の圧力レギュレータは、請求項1又は請求項2に記載の圧力レギュレータにおいて、前記圧力微分値検出手段は、圧力室と、ダイヤフラム式差圧計あるいは流速計と、前記等温化圧力容器と前記圧力室とを連通する円筒型のスリット流路とを備えた圧力微分計とした。
かかる構成によれば、円筒型のスリット流路を用いた圧力微分計としたため、流路断面積を大きくとれ、時定数を小さくすることができる。このため、高速に応答する圧力微分計とすることができる。
請求項に記載の圧力レギュレータは、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧力レギュレータにおいて、前記流出流量推定手段は、前記圧力微分値検出手段によって検出された前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力微分値(dP/dt)に基づいて、下記式(7)によって前記流入出流量差(Gin−Gout)を算出する。
Figure 2012022702
ここで、Rはガス定数[J/(kg・K)]、Vは等温化圧力容器の容積[m]、θは等温化圧力容器内の空気の温度[K]、Pは等温化圧力容器内の圧力[Pa]、tは時間[s]である。
かかる構成によれば、流出流量差(Gin−Gout)を流入流量制御系の加算接合点にフィードバックするモデル追従制御系を構成することで、下流での流出流量のわずかな変化に対応して圧力制御が行われ、外乱に強い高応答の圧力レギュレータを構成することができる。
請求項に記載の除振装置は、定盤と、前記定盤を支持する空気バネと、前記空気バネに対する空気の流入流量及び流出流量を規制するサーボ弁と、空気供給源から供給される空気を所定の圧力に制御して前記サーボ弁に供給する請求項1乃至請求項の何れか一項に記載の圧力レギュレータと、前記定盤の位置を検出する位置検出手段と、前記定盤の加速度を検出する加速度検出手段と、前記位置検出手段によって検出された位置と前記加速度検出手段によって検出された加速度とに基づいて、前記サーボ弁を操作して前記定盤を所定の位置に制御する空気バネ制御手段と、を備えて構成した。
かかる構成によれば、除振装置は、圧力レギュレータによって所定の圧力に制御された空気をサーボ弁に供給し、空気バネ制御手段によって、位置検出手段で検出した定盤の位置と加速度検出手段で検出した定盤の加速度とに基づいて、サーボ弁を操作して、空気バネに対する流入流量及び流出流量を規制することにより、定盤を所定の位置に制御する。
請求項に記載の除振装置は、請求項に記載の除振装置において、前記サーボ弁は、スプール型サーボ弁とした。
かかる構成によれば、空気バネへの空気の供給と排気とを行うサーボ弁として、流量制御型であるスプール型サーボ弁を用いたため、排気量を少なくすることができる。更に、圧力レギュレータに用いるサーボ弁もスプール型サーボ弁とすることにより、一層排気量を少なくすることができる。
請求項1に記載の発明によれば、下流での流出流量のわずかな変化に対応して圧力制御が行われるため、外乱に強く、応答性の高い圧力レギュレータとすることができる。また、流出流量を圧力微分値に基づいて推定するため、流出流量を直接計測する場合に比較して、高い精度で圧力制御を行うことができる。
請求項に記載の発明によれば、排気量を少なくすることができるため、環境負荷を低減することができる。
請求項に記載の発明によれば、高速に応答する圧力微分計を用いるため、圧力レギュレータの応答性を更に向上することができる。
求項に記載の発明によれば、下流での流出流量のわずかな変化に対応して圧力制御が行われ、外乱に強い高応答の圧力レギュレータを構成することができる。
請求項に記載の発明によれば、圧力レギュレータによって空気バネに供給される空気の供給源の圧力が高応答で高精度に保持されるため、除振装置は、定盤の位置を迅速にかつ高精度に整定することができる。
請求項に記載の発明によれば、除振装置の使用による環境負荷を低減することができる。
第1実施形態の圧力レギュレータの構成を模式的に示す構成図である。 第1実施形態の圧力微分計の構成を模式的に示す断面図である。 第1実施形態の圧力レギュレータの制御系を示すブロック線図である。 第2実施形態の圧力レギュレータの構成を模式的に示す構成図である。 第2実施形態の圧力レギュレータの制御系を示すブロック線図である。 実験1の実験装置の構成を模式的に示す構成図である。 実験1における供給圧力の変化を示すグラフである。 実験1の実験結果を示すグラフである。 実験2の実験装置の構成を模式的に示す構成図である。 実験2における流出流量の計測値と推定値を示すグラフである。 実験2の実験結果を示すグラフである。 実験3の実験結果を示すグラフである。 圧力微分計によって計測した圧力微分値と、圧力計によって計測した圧力 値を離散微分して求めた圧力微分値を示すグラフである。 本発明の圧力レギュレータを用いた空気バネ式の除振装置の構成を模式的 に示す構成図である。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
<圧力レギュレータの構成>
図1は、本発明の第1実施形態の圧力レギュレータの構成を模式的に示す構成図である。
図1に示した圧力レギュレータ1は、サーボ弁11と、流量計12と、等温化圧力容器13と、圧力計14と、圧力微分計15と、コンピュータ16と、A/D(アナログ/デジタル)変換器17と、D/A(デジタル/アナログ)変換器18とを備える。各圧力機器の間は、導管19a、19b、19c、19dで連絡されている。
本発明の第1実施形態の圧力レギュレータ1は、気体供給源10から供給される気体の、等温化圧力容器13への流入流量をサーボ弁11によって規制することにより、等温化圧力容器13の流出口13bから導管19dを介して出力される気体を所定の一定圧力に保持するものである。
なお、本発明の第1実施形態においては、圧縮性流体として、空気を例に説明するが、空気以外の、例えば、窒素、水素、二酸化炭素等の気体を代表とする圧縮性流体に適用することができる。
なお、本発明の第1実施形態の説明において用いる主な記号は、次に示すとおりである。
fc : カットオフ周波数[Hz]
Gin : 流入流量[kg/s]
Gout : 流出流量[kg/s]
Kgi : 積分ゲイン [Pa・s/kg]
Kp : 圧力制御ループの比例ゲイン[kg/(Pa・s)]
Kv : スプール型サーボ弁の電圧−流量ゲイン[kg/(Pa・s)]
L : 円筒型スリット流路の長さ[m]
P : 等温化圧力容器内の圧力[Pa]
Pc : 圧力微分計の容器内の圧力[Pa]
Pj : 圧力微分計の差圧計にかかる差圧[Pa]
Pref : 目標設定圧力[Pa]
Ps : 気体供給源から供給される空気の供給圧力[Pa]
R : ガス定数[J/(kg・K)]
r1 : スリット流路の外径(半径)[m]
r2 : スリット流路の内径(半径)[m]
T : 時定数[s]
V : 等温化圧力容器の容積[m
Vd : 圧力微分計の容器の容積[m
θ : 等温化圧力容器内の空気の温度[K]
μ : 空気の粘度[Pa・s]
ρa : 空気の密度[kg/m
(気体供給源)
気体供給源(圧縮性流体供給源)10は、圧縮性流体である空気を供給する供給源であり、供給する空気を高圧に充填したボンベを用いることができる。また、コンプレッサ等のポンプ類を用いて圧縮空気を供給するようにしてもよい。
(サーボ弁)
サーボ弁11は、気体供給源10から導管19aを介して供給される空気の等温化圧力容器13への流入流量を規制すると共に、等温化圧力容器13から逆流する空気の流出流量(負の流入流量)を規制する流量制御型サーボ弁である。好適には、圧力損失が少ないスプール型サーボ弁を用いることができる。
本発明の第1実施形態のサーボ弁11は、吸気ポート11aと排気ポート11bと制御ポート11cとが設けられたスプール型の3方弁であり、コンピュータ16からD/A変換器18を介して出力される制御信号(制御電圧Ei1)によって、制御ポート11cと、吸気ポート11a又は排気ポート11bとの接続及び開度が操作されることにより、流入流量及びその方向を規制する。
吸気ポート11aは、導管19aを介して気体供給源10に接続され、排気ポート11bは、大気に開放されている。また、制御ポート11cは、導管19bを介して流量計12に接続されている。
なお、例えば、毒性、引火性、臭気等があり、大気中に排気するのが好ましくない気体を用いる場合には、排気ポート11bは、大気に開放せず、適宜導管を接続して排気される気体を回収し、人体等に影響がないように廃棄処理するようにすればよい。
(流量計)
流量計(流入流量取得手段)12は、気体供給源10からサーボ弁11を通って等温化圧力容器13に供給される空気の流入流量を計測するものである。計測された空気の流入流量に関する検出信号は、A/D変換器17を介して、コンピュータ16に送信される。
なお、等温化圧力容器13内の空気がサーボ弁11の排気ポート11bから流出する場合には、負の流入流量として計測される。以降は、等温化圧力容器13への“流入流量”とは、この負の流入流量の場合も含めたものとして説明する。
流量計12としては、層流型流量計、オリフィス流量計、熱式流量計等の流量計などを用いることができるが、特に、層流型流量計は圧力損失が小さいことから好ましい。さらに、流量計として、サーボ弁11を介して等温化圧力容器13に流入する圧縮性流体のサーボ弁11の前後差圧を計測する差圧計を用いてもよい。
また、層流型流量計としては、例えば、本願発明者等が参考文献1において提案した層流型流量計を用いることができる。
(参考文献1)
舩木達也、川嶋健嗣、香川利春、“高速応答を有する気体用層流流量計の特性解析”、計測自動制御学会論文集、Vol.40、No.10、pp.1008-1013 (2004)
(等温化圧力容器)
等温化圧力容器13は、導管19cを通って流入口13aから流入する気体を等温状態に保持するものである。この等温化圧力容器13は、通常、金属で形成される。
この等温化圧力容器13の形状は、円筒状、多角柱体、球体、楕円体など種々の形状を採用することができる。例えば、円筒状の形状の場合は、何れか一方の底面側に設けた流入口13aから空気を流入させ、他方の底面に設けた流出口13bから空気を流出させる。このとき、空気の流入方向の奥行き(円筒の高さ)は、断面の最大幅(底面の直径)の2倍以下とすることが好ましい。円筒の高さ(奥行き)がこの範囲にあると空気の流入時における、圧力勾配の発生を抑えることができる。また、多角柱体の形状の場合、断面中の最大幅、楕円体であれば奥行き方向の中心の断面における直径である。
この等温化圧力容器13は、バッファタンクの役割を有するため、等温化圧力容器13の内容積Vは、空気の体積流出流量Qout[NL/min]に対して、5.0×10−6Qout〜7.0×10−5Qout[m]の範囲にあることが好ましいが、圧力レギュレータ1の応答性の仕様に応じて適宜決めることができる。
この等温化圧力容器13の内部には、金属細線の集束体または多孔質金属体からなる表面積の大きな熱伝導性材料が充填されている。この熱伝導性材料を等温化圧力容器13の内部に充填することによって、内部における伝熱面積を増大させることができる。そして、この熱伝導性材料によって、等温化圧力容器13への気体の流入および等温化圧力容器13からの空気の流出に際して、等温化圧力容器13内の空気の温度変化が抑制される。そして、この熱伝導性材料による温度変化の抑制は、等温化圧力容器13も熱伝導性の高いものにすればさらに有効である。
この表面積の大きな熱伝導性材料として、例えば、スチールウール等の金属細線の集束体、銅線等の多孔質金属体、あるいは木綿やプラスチック製の綿状体などを採用することができる。すなわち、金属細線の集束体または木綿やプラスチック製の綿などの繊維状の形態である場合は、その繊維径が10〜50[μm]の範囲にあるものが、伝熱面積を大きくとれることから好ましい。また、この熱伝導性材料は、熱伝導度が0.05[W/mK]以上であることが好ましい。この熱伝導性材料は、等温化圧力容器13に保持される空気の温度変化を3[K]程度に抑制できるように、その材質および等温化圧力容器13への充填量等が調整される。このように、等温化圧力容器13にスチールウール等の熱伝導性材料を充填することで、等温化圧力容器13の伝熱面積を増大させることができる。
また、熱伝導性材料の充填密度は200〜400[kg/m]の範囲にあることが好ましい。充填密度がこの範囲にあると、等温化圧力容器13内の空気の温度変化を十分に抑制することができる。
(圧力計)
圧力計(圧力検出手段)14は、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pを計測し、その計測結果(圧力値)に関する検出信号を、A/D変換器17を介してコンピュータ16に送信するものである。この圧力計14は、空気の圧力値を電気信号として出力できるものであれば、特に制限されない。例えば、半導体式圧力センサ等を用いることができる。そして、圧力計14の測定可能範囲は、大気圧〜気体供給源10から供給される空気の供給圧力Psの範囲をカバーすることが好ましい。
(圧力微分計)
圧力微分計(圧力微分値検出手段)15は、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pの微分値dP/dtを計測し、その計測結果(圧力微分値)に関する検出信号を、A/D変換器17を介してコンピュータ16に送信するものである。
圧力微分計15としては、例えば、本願発明者等によって、参考文献2において提案した圧力微分計を用いることができる。
(参考文献2)
特開2005−98991号公報
本発明の第1実施形態では、前記した参考文献2において提案した平板スリット型流路を用いた圧力微分計よりも、更に高応答の圧力微分計を用いるようにした。
以下、図2を参照して、本発明の第1実施形態における圧力微分計15の構成について説明する。
なお、図2は、本発明の第1実施形態の圧力微分計の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示した圧力微分計15は、等温化圧力容器151と、スリット流路152と、差圧計153とを備えている。
圧力微分計15は、図2において、左右端に半径r1の底面を有する円筒型の外形をしており、左端側の底面に開口部154が形成されている。この開口部154が等温化圧力容器13に接続される。
開口部154の右側には、半径r2の底面を有する円筒型の等温化圧力容器151が設けられ、圧力微分計15の側面と当該等温化圧力容器151の側面とによって円筒型のスリット流路152が構成されている。スリット流路152の左端の開口部152aにおける空気の圧力は、計測対象の等温化圧力容器13内の空気の圧力Pとなる。また、開口部152aから流路長Lを隔てた右端の開口部152bは、等温化圧力容器151の内部と連通しており、開口部152bにおける空気の圧力は、等温化圧力容器151内の空気の圧力Pcとなる。また、圧力微分計15の側面には、スリット流路152の開口部152aと開口部152bとにおける空気の圧力差Pjを計測するための差圧計153が設けられている。
等温化圧力容器(圧力室)151は、図1に示した圧力レギュレータ1の等温化圧力容器13と同様に、内部に銅線等の熱伝導性材料が充填されており、スリット流路152を通って空気が流入又は流出する際に、迅速に熱量を吸収又は供給し、等温化圧力容器151内の空気の温度を一定に保持するものである。等温化圧力容器151の容積は、1.0×10−8〜1.0×10−4[m]の範囲にあることが好ましい。容積が1.0×10−8[m]以上であると、等温化圧力容器151が構成しやすいという利点がある。また、容積が1.0×10−4[m]以下であると、高応答の計測が可能となる。
また、熱伝導性材料は、等温化圧力容器13と同様の材料を同様の体積比で充填して用いることができる。
スリット流路152は、圧力微分計15の側面と等温化圧力容器151の側面とに囲まれた円筒型の流路である。計測時にスリット流路152内を流れる空気は、層流であることが好ましい。これによって、圧力と流量に比例関係が成立し、高精度に圧力微分値を計測することができる。
差圧計153は、ダイヤフラム153aを有するダイヤフラム式の差圧計であり、ダイヤフラム153aの両面にかかる圧力差Pjに応じた信号が出力される。
このほか、例えば、ベローズを用いた差圧計のように、他の方式の差圧計を用いてもよい。
ここで、圧力微分計15の動作原理について説明する。
測定圧力Pが変化すると、空気はスリット流路152を通り等温化圧力容器151へ流れ、等温化圧力容器151内の圧力Pcがわずかに遅れて変化する。このとき発生する差圧Pj(=P−Pc)を測定すると、圧力微分値dP/dtと差圧Pjは式(1)のような一次遅れの関係で表される(参考文献3)。
(参考文献3)
川嶋健嗣、藤田壽憲、香川利春、“容器内圧力変化による圧縮性流体の流量計測法”、計測自動制御学会論文集、Vol.32、No.11、pp.1485-1492 (1996)
Figure 2012022702
ここで、時定数Tは、式(2)で表される。
Figure 2012022702
なお、r1及びr2は、それぞれ円筒型のスリット流路152の外径(半径)及び内径(半径)を表す。
以上より、カットオフ周波数fcは式(3)のようになる。
Figure 2012022702
本発明の第1実施形態の圧力微分計15は、円筒型のスリット流路を用いるため、参考文献2において提案した平板スリット型流路を用いた圧力微分計と比較して、流路断面積を大きくできる。このため、時定数Tを小さくすることができ、高応答の圧力微分計とすることができる。
図1に戻って、圧力レギュレータ1の構成について説明を続ける。
(導管)
導管19a、導管19b、導管19c及び導管19dは、それぞれ、気体供給源10及びサーボ弁11の吸気ポート11a、サーボ弁11の制御ポート11c及び流量計12、流量計12及び等温化圧力容器13の流入口13a、等温化圧力容器13の流出口13b及び、例えば、除振装置等の外部機器を接続する。
なお、導管19a、19b、19c、19dの断面積は、サーボ弁11の有効断面積の4倍以上とすることが好ましい。導管19a、19b、19c、19dの断面積が、この範囲にあると、導管による圧力降下をほとんど無視することができるからである。
(A/D変換器、D/A変換器)
A/D変換器17は、流量計12、圧力計14及び圧力微分計15によって検出されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、コンピュータ16に出力するものである。また、D/A変換器18は、コンピュータ16からの、サーボ弁11の開閉又は開度に関するデジタル信号をアナログ信号に変換し、サーボ弁11に出力するものである。
(コンピュータ)
コンピュータ(圧力制御手段)16は、流量計12によって計測された空気の流入流量Ginに関する検出信号と、圧力計14によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力Pに関する検出信号と、圧力微分計15によって計測された等温化圧力容器13内の圧力の微分値dP/dtに関する検出信号とを、A/D変換器17を介してデジタル信号として受信し、それらの検出信号に基づいて、サーボ弁11を介して等温化圧力容器13に流入する空気の流入流量Gin(サーボ弁11の排気ポート11bから空気を流出する“負の流入流量”の場合も含む)を制御する制御電圧Ei1を、D/A変換器18を介して、サーボ弁11に送信するものである。
このコンピュータ16において、流量計12によって計測された空気の流入流量Ginと、圧力計14によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力Pと、圧力微分計15によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力微分値dP/dtとを適宜用いて、サーボ弁11の開閉又は開度を制御するための演算が行われる。
<圧力の制御方法>
次に、図3を参照(適宜図1参照)して、本発明の第1実施形態の圧力レギュレータ1による圧力の制御について説明する。ここで、図3は、本発明の第1実施形態の圧力レギュレータの制御系を示すブロック線図である。
図3に示すように、本発明の第1実施形態の圧力レギュレータ1の制御系は、目標設定圧力Prefに対して等温化圧力容器13内の空気の圧力PをフィードバックしてPI(比例動作、積分動作)制御する圧力制御系20をメインループとして構成されている。
このメインループの内側に、等温化圧力容器13にサーボ弁11を介して流入する空気の流入流量Ginをフィードバック制御する流入流量制御系23を一つのマイナーループとして構成すると共に、流入流量Ginと等温化圧力容器13内の空気の圧力微分値dP/dtとに基づいて等温化圧力容器13から流出する流出流量Goutを推定するオブザーバ(流入流量推定手段)27を構成し、オブザーバ27で推定した流出流量Gout(上にハット)を流入流量制御系23にフィードバックして補償するモデル追従制御系28を他のマイナーループとして構成している。
圧力制御系20においては、制御量である圧力Pをフィードバックし、加算接合点21において、目標値Prefとの偏差を算出する。ここで、圧力Pは圧力計14によって計測される。
算出された圧力の偏差は制御要素22に伝達され、制御要素22によって、比例ゲインをKpとするPI制御が行われる。これによって、圧力Pの偏差を解消するための等温化圧力容器13への空気の流入流量の目標値が算出され、流入流量制御系23の制御量である流入流量Ginの目標値Grefとなる。なお、圧力制御系20の制御要素22は、PI制御の代わりにPID(比例動作、積分動作、微分動作)制御を行うようにしてもよい。
流入流量制御系23は、メインループである圧力制御系20の内側に構成されるカスケードループであり、流入流量Ginのフィードバック制御を行う。
流入流量制御系23においては、まず、流量計12によって計測された流入流量Ginをフィードバックし、加算接合点231において、制御要素22の出力である流入流量の目標値Grefとの偏差が算出される。また、加算接合点231には、オブザーバ27によって出力される流出流量の推定値Gout(上にハット)が加算され、流出流量の推定値Gout(上にハット)を見込んだ流入流量Ginの偏差が算出される。
加算接合点231で算出された流入流量Ginの偏差は制御要素232に伝達され、制御要素232によって積分ゲインKgiが掛けられて、流入流量Ginの偏差を解消するための流入流量Ginを与えるサーボ弁11の制御電圧Ei1が算出される。この制御電圧Ei1をD/A変換器18を介してサーボ弁11に送信することにより、サーボ弁11は、制御電圧Ei1に対応する開度で弁を開き、等温化圧力容器13に空気を流入させる。
なお、サーボ弁11としてスプール型サーボ弁を用いた場合には、制御電圧Ei1と流入流量Ginとの間には、式(4)のように、Kvを電圧−流量ゲインとするほぼ比例関係がある。
Gin = Kv・Ei1 ・・・(4)
従って、流量計12によって流入流量Ginを計測する代わりに、制御電圧Ei1を用い、式(4)によって流入流量Ginを算出して取得することもできる。
このように、流入流量Ginをフィードバック制御することにより、電圧−流量特性の比例関係から外れる非線形性を補償して、圧力制御系20による圧力制御の精度を向上することができる。
制御電圧Ei1をサーボ弁11に送信することにより、等温化圧力容器13には、流入口13aから制御電圧Ei1に対応する流入流量Ginの空気が流入する一方で、外部機器が接続された導管19dを介して、流出口13bから流出する流出流量Goutが外乱として加算される。図3においては、加算接合点24によって、この外乱を表記している。
そして、圧力制御を高応答かつ高精度に行うためには、圧力制御系20において、この流出流量Goutを補償する必要がある。
流出流量Goutは、等温化圧力容器13の流出口13bの下流側に流量計を接続して計測することにより検出することができる。しかし、流量計を接続するとにより、流量計による圧力損失が新たな外乱となるため、必ずしも、圧力制御の高応答化及び高精度化に貢献しないという問題がある。例えば、圧力損失が少ない層流型流量計を用いた場合でも、層流抵抗管によって数百パスカルの圧力損失が生じてしまうため、下流側に流量計を設置することは好ましくない。
そこで、本発明においては、流量計よりも圧力損失の少ない圧力微分計15によって計測される圧力微分値dP/dtと、流入流量Ginとに基づいて、流出流量Goutを推定するオブザーバ27を設けるようにした。
ここで、流出流量Goutの推定方法について説明する。
まず、サーボ弁11から等温化圧力容器13への流入流量Gin、等温化圧力容器13からの流出流量Goutおよび等温化圧力容器13内の圧力Pとの間の関係について説明する。
気体の状態方程式は、式(5)のようになる。但し、Vは等温化圧力容器13の容積、Wは等温化圧力容器13内の空気の質量を示す。
PV=WRθ ・・・(5)
式(5)を全微分すると、式(6)のようになる。但し、G=dW/dtである。
Figure 2012022702
ここで、等温化圧力容器13内の空気は、等体積変化(dV/dt=0)かつ等温変化(dθ/dt=0)することを考慮すると、等温化圧力容器13に対する流入流量Gin、流出流量Gout及び等温化圧力容器13内の圧力Pの間には、式(7)の関係がある。
Figure 2012022702
従って、流入流量Ginと等温化圧力容器13内の圧力微分値dP/dtとに基づき、式(8)によって、流出流量の推定値Gout(上にハット)を算出することができる。
Figure 2012022702
そこで、オブザーバ27は、流入流量Gin及び流出流量Goutに伴う圧力変化(圧力微分値)dP/dtに、制御要素271によってV/(Rθ)を乗じることで“Gin−Gout”を算出し、加算接合点272において流入流量Ginから減じることによって、流出流量の推定値Gout(上にハット)を算出することができる。
この流出流量の推定値Gout(上にハット)を流入流量制御系23の加算接合点231にフィードバックするモデル追従制御系28を構成することで、下流での流出流量のわずかな変化に対応して圧力制御が行われ、外乱に強い高応答の圧力レギュレータ1を構成することができる。
なお、圧力微分値dP/dtは、圧力計14によって計測される圧力Pを離散微分(数値微分)することによっても得ることができる。しかし、圧力Pの離散微分においては、わずかな圧力変動に対して大きなノイズ成分を含み、良好なフィードバック信号を得ることが困難であるため、圧力微分計15を設けて計測することが好ましい。
以上、説明した圧力レギュレータ1の圧力制御系20の演算は、コンピュータ16によって行われ、コンピュータ16によって算出される制御電圧Ei1を、D/A変換器18を介してサーボ弁11に送信することにより、等温化圧力容器13内の空気を所定の一定圧力に制御することができる。
なお、圧力制御系20の演算は、例えば、PC(Personal Computer)のような汎用コンピュータを用いて行ってもよいし、専用の演算回路を構成して演算するようにしてもよい。
<圧力レギュレータの動作>
次に、図1を参照して、圧力レギュレータ1の動作について説明する。
まず、圧力レギュレータ1が起動され、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pが所定の目標値Prefに整定された状態にあるとする。このとき、サーボ弁11は、等温化圧力容器13の流出口13bから流出する流出流量Goutと、流入口13aから流入する流入流量Ginとがバランスする開度に調整されている。
ここで、気体供給源10の圧力Ps又は等温化圧力容器13から流出する流出流量Goutに変動が生じ、等温化圧力容器13内の圧力Pが目標値Prefから変化すると、圧力レギュレータ1は空気の圧力の変動を補償するために、コンピュータ16によって、流量計12で計測された流入流量Gin、圧力計14で計測された圧力P及び圧力微分計15で計測された圧力微分値dP/dtをA/D変換器17を介して受信し、受信したこれらの計測データに基づいて、サーボ弁11に対する制御電圧Ei1を算出し、算出した制御電圧Ei1をD/A変換器18を介してサーボ弁11に送信する。
サーボ弁11は、コンピュータ16によって算出された制御電圧Ei1に応じた開度に弁を調節し、その開度に応じた流入流量Ginで等温化圧力容器13に空気を流入する。これによって、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pが目標値Prefに整定されるように制御される。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の圧力レギュレータの構成を模式的に示す構成図である。なお、図4において、図1に示す圧力レギュレータ1と同一の機器、部位には、同一の符号を付している。
図4に示した圧力レギュレータ41は、サーボ弁11と等温化圧力容器13の間の導管19bに流量計12が設けられていないこと、コンピュータ46における演算が異なること以外は、第1実施形態の圧力レギュレータ1と同一の構成を有するものである。したがって、以下、サーボ弁11、等温化圧力容器13、圧力計14、圧力微分計15、A/D(アナログ/デジタル)変換器17、D/A(デジタル/アナログ)変換器18、および導管19a、19b、19dについての説明は省略する。
本発明の第2実施形態の圧力レギュレータ41は、気体供給源10から供給される気体の、等温化圧力容器13への流入流量をサーボ弁11によって規制することにより、等温化圧力容器13の流出口13bから導管19dを介して出力される気体を所定の一定圧力に保持するものである。
また、本発明の第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、圧縮性流体として、空気を例に説明するが、空気以外の、例えば、窒素、水素、二酸化炭素等の気体を代表とする圧縮性流体に適用することができる。
なお、本発明の第2実施形態の説明において用いる主な記号(fc、Gin、Gout、Kgi、Kp、Kv、L、P、Pc、Pj、Pref、Ps、R、r1、r2、T、V、Vd、θ、μ、ρa)は、前記と同様である。
(コンピュータ)
本発明の第2実施形態において、コンピュータ(圧力制御手段)46は、圧力計14によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力Pに関する検出信号と、圧力微分計15によって計測された等温化圧力容器13内の圧力の微分値dP/dtに関する検出信号とを、A/D変換器17を介してデジタル信号として受信し、それらの検出信号に基づいて、サーボ弁11を介して等温化圧力容器13に流入する空気の流入流量Gin(サーボ弁11の排気ポート11bから空気を流出する“負の流入流量”の場合も含む)を制御する制御電圧Ei2を、D/A変換器18を介して、サーボ弁11に送信するものである。
本発明の第2実施形態におけるコンピュータ46において、圧力計14によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力Pと、圧力微分計15によって計測された等温化圧力容器13内の空気の圧力微分値dP/dtとを適宜用いて、サーボ弁11の開閉又は開度を制御するための演算が行われる。
<圧力の制御方法>
次に、図5を参照(適宜図4参照)して、本発明の第2実施形態の圧力レギュレータ41による圧力の制御について説明する。ここで、図5は、本発明の第2実施形態の圧力レギュレータの制御系を示すブロック線図である。
図5に示すように、本発明の第2実施形態の圧力レギュレータ41の制御系は、目標設定圧力Prefに対して等温化圧力容器13内の空気の圧力PをフィードバックしてPI(比例動作、積分動作)制御する圧力制御系50をメインループとして構成されている。
このメインループの内側に、等温化圧力容器13内の空気の圧力微分値dP/dtに基づいて等温化圧力容器13から流出する流出流量Gout(上にハット)を推定するオブザーバ(流出流量推定手段)57を構成し、オブザーバ57で推定した流出流量Gout(上にハット)を流入流量制御系53にフィードバックして補償するモデル追従制御系58をマイナーループとして構成している。
圧力制御系50においては、制御量である圧力Pをフィードバックし、加算接合点51において、目標値Prefとの偏差を算出する。ここで、圧力Pは圧力計14によって計測される。
算出された圧力の偏差は制御要素52に伝達され、制御要素52によって、比例ゲインをKpとするPI制御が行われる。これによって、圧力Pの偏差を解消するための等温化圧力容器13の空気の流入流量の目標値が算出され、流出流量制御系53の制御量である流入流量Ginの目標値Grefとなる。なお、圧力制御系50の制御要素52は、PI制御の代わりにPID(比例動作、積分動作、微分動作)制御を行うようにしてもよい。
流入流量制御系53は、メインループである圧力制御系20の内側に構成されるカスケードループであり、流入流量Ginのフィードバック制御を行う。
流入流量制御系53においては、加算接合点531において、制御要素52の出力である流入流量の目標値Grefとの偏差が算出される。また、加算接合点531には、オブザーバ57によって出力される流出流量の推定値Gout(上にハット)が加算され、流出流量の推定値Gout(上にハット)を見込んだ流入流量Ginの偏差が算出される。
加算接合点531で算出された流入流量Ginの偏差は制御要素532に伝達され、制御要素532によって積分ゲインKgiが掛けられて、流入流量Ginの偏差を解消するための流入流量Ginを与えるサーボ弁11の制御電圧Ei2が算出される。この制御電圧Ei2をD/A変換器18を介してサーボ弁11に送信することにより、サーボ弁11は、制御電圧Ei2に対応する開度で弁を開き、等温化圧力容器13に空気を流入させる。
なお、サーボ弁11としてスプール型サーボ弁を用いた場合には、制御電圧Ei2と流入流量Ginとの間には、式(4)のように、Kvを電圧−流量ゲインとするほぼ比例関係がある。
Gin = Kv・Ei2 ・・・(4)
従って、制御電圧Ei2を用い、式(4)によって流入流量Ginを算出して取得することができる。
このように、流入流量Ginをフィードバック制御することにより、電圧−流量特性の比例関係から外れる非線形性を補償して、圧力制御系50による圧力制御の精度を向上することができる。
制御電圧Ei2をサーボ弁11に送信することにより、等温化圧力容器13には、流入口13aから制御電圧Ei2に対応する流入流量Ginの空気が流入する一方で、外部機器が接続された導管19dを介して、流出口13bから流出する流出流量Goutが外乱として加算される。
そして、圧力制御を高応答かつ高精度に行うためには、圧力制御系50において、この流出流量Goutを補償する必要がある。
本発明の第2実施形態においては、流量計よりも圧力損失の少ない圧力微分計15によって計測される圧力微分値dP/dtに基づいて、流出流量Goutを推定するオブザーバ57を設けるようにした。
ここで、本発明の第2実施形態における流出流量Goutの推定方法について説明する。
まず、等温化圧力容器13の流入流量Gin、等温化圧力容器13からの流出流量Goutおよび等温化圧力容器13内の圧力Pとの間の関係について説明する。
まず、気体の状態方程式は、前記のとおり、式(5)のようになる。但し、Vは等温化圧力容器13の容積、Wは等温化圧力容器13内の空気の質量を示す。
PV=WRθ ・・・(5)
そして、式(5)を全微分すると、前記式(6)のようになる。
ここで、等温化圧力容器13内の空気は、等体積変化(dV/dt=0)かつ等温変化(dθ/dt=0)することを考慮すると、等温化圧力容器13に対する流入流量Gin、流出流量Gout及び等温化圧力容器13内の圧力Pの間には、前記式(7)の関係がある。
そこで、オブザーバ(流入出流量差推定手段)57は、流入流量Gin及び流出流量Goutに伴う圧力変化(圧力微分値)dP/dtに、制御要素571によってV/(Rθ)を乗じることで“Gin−Gout”を算出することができる。
この流入出流量“Gin−Gout”を流入流量制御系53の加算接合点531にフィードバックするモデル追従制御系58を構成することで、下流での流出流量のわずかな変化に対応して圧力制御が行われ、外乱に強い高応答の圧力レギュレータ41を構成することができる。
なお、圧力微分値dP/dtは、圧力計14によって計測される圧力Pを離散微分(数値微分)することによっても得ることができる。しかし、圧力Pの離散微分においては、わずかな圧力変動に対して大きなノイズ成分を含み、良好なフィードバック信号を得ることが困難であるため、圧力微分計15を設けて計測することが好ましい。
以上、説明した圧力レギュレータ41の圧力制御系50の演算は、コンピュータ46によって行われ、コンピュータ46によって算出される制御電圧Ei2を、D/A変換器18を介してサーボ弁11に送信することにより、等温化圧力容器13内の空気を所定の一定圧力に制御することができる。
なお、圧力制御系50の演算は、例えば、PC(Personal Computer)のような汎用コンピュータを用いて行ってもよいし、専用の演算回路を構成して演算するようにしてもよい。
<圧力レギュレータの動作>
次に、図4を参照して、圧力レギュレータ41の動作について説明する。
まず、圧力レギュレータ41が起動され、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pが所定の目標値Prefに整定された状態にあるとする。このとき、サーボ弁11は、等温化圧力容器13の流出口13bから流出する流出流量Goutと、流入口13aから流入する流入流量Ginとがバランスする開度に調整されている。
ここで、気体供給源10の圧力Ps又は等温化圧力容器13から流出する流出流量Goutに変動が生じ、等温化圧力容器13内の圧力Pが目標値Prefから変化すると、圧力レギュレータ41は空気の圧力の変動を補償するために、コンピュータ46によって、圧力計14で計測された圧力P及び圧力微分計15で計測された圧力微分値dP/dtをA/D変換器17を介して受信し、受信したこれらの計測データに基づいて、サーボ弁11に対する制御電圧Ei2を算出し、算出した制御電圧Ei2をD/A変換器18を介してサーボ弁11に送信する。
サーボ弁11は、コンピュータ16によって算出された制御電圧Ei2に応じた開度に弁を調節し、その開度に応じた流入流量Ginで等温化圧力容器13に空気を流入する。これによって、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pが目標値Prefに整定されるように制御される。
<実験例>
次に、本発明による圧力レギュレータ1を用いて、圧力レギュレータ1の上流側の圧力変動と下流側の流出流量の変動に対する応答を評価した実験結果について説明する。
(圧力レギュレータの構成)
図1に示した圧力レギュレータを構成した。各部の詳細仕様を以下に示す。
(サーボ弁11):
スプール型サーボ弁は5ポートのFESTO社製MYPE−5−M5−SAを用いた。使用しない2つのポートは塞ぎ、吸気、排気及び制御の3つのポートを用いた。
(等温化圧力容器13):
東京メータ株式会社製の、容積が1.0×10−3[m]の容器に線径50[μm]の銅線が容積率にして5%封入されたものを用いた。なお、銅線の表面はコーティングが施されている。
(流量計12):
層流型流量計は外径0.5[mm]、内径0.3[mm]、長さ50[mm]の細管を約320本挿入して層流エレメントを構成したものを用いた(詳細は参考文献1を参照のこと)。
(圧力計14):
圧力計は豊田工機社製の半導体式のPD−64S500Kを用いた。
(圧力微分計15):
図2に示した円筒型スリット流路を設けた圧力微分計を用いた。スリット流路の外径r1=1.0×10−2[m]、内径r2=0.99×10−2[m]、流路長L=2.5×10−2[m]、等温化圧力容器の容量Vd=8.06×10−6[m]である。カットオフ周波数fcの理論値は、式(3)より、圧力P=300[kPa]において、67[Hz]である。差圧計は、Allsensors社製の測定範囲±1インチH2O(249[Pa])のものを用いた。また、正弦波状の脈動流を発生させた事前実験により、この圧力微分計は、30[Hz]程度まで十分応答することが確かめられている。
(制御パラメータの設定):
制御パラメータは以下のように設定した。
図3に示したブロック線図において、流入流量Ginの制御は圧力制御よりも十分に速いと仮定すると、圧力制御の伝達関数は式(9)のようになる。
Figure 2012022702
上流側又は下流側の圧力変動等の外乱発生時の圧力回復の整定時間(目標値の95%に達する時間)は0.3[s]以内を目標とし、Tp=0.1[s]となるように、圧力制御系20の比例ゲインとして、Kp=1.19×10−7[kg/(Pa・s)]を設定した。
次に、流入流量制御系23において、圧力制御系20の制御要素22からの入力をGref、サーボ弁11の制御電圧Ei1に対する流量ゲインをKv、流入流量制御系23の積分ゲインをKgiとすると、流入流量制御の伝達関数は、式(10)のようになる。
Figure 2012022702
Kvは厳密には非線形であるが、本実験で用いたスプール型のサーボ弁11は、サーボ弁11の上流側の供給圧力Ps=500[kPa(abs)]、下流側の圧力P=300[kPa(abs)]とする実験条件下においては、事前に計測した静特性に基づき、Kv=2.155×10−4[kg/(s・V)]と線形近似した。流入流量制御系23のループは圧力制御系20のループのマイナーループであるから、制御周期は圧力制御系20に比べて十分速いことが必要である。よってTgi=0.0075[s](Tp:TG=15:1)となるよう、Kgi=6.19×10[s・V/kg]と設定した。後記する実験2においても、Pref=300[kPa(abs)]とした。
比較のため、本発明の圧力レギュレータ1の代わりに、市販の精密レギュレータ(パイロット式圧力レギュレータ)及び電空レギュレータに置き換えて実験を行った。
(精密レギュレータ):
SMC社製のIR2010−02Gを用いた。
(電空レギュレータ):
SMC社製のITV2050−212BL5を用いた。
(実験1:上流側の圧力の変動実験)
実験1においては、圧力レギュレータ1の上流側に圧力変動を起こし、圧力レギュレータ1によって圧力が整定される様子を計測した。
実験装置は、図6に示すように、図1に示した圧力レギュレータ1に対して、気体供給源10とサーボ弁11とを接続する導管19aに、分岐管30と圧力計32とを設けた。分岐管30からの排気流量Gout_upは可変絞りで調整できるようにし、分岐管30の下流側に層流型の流量計31を設けた。分岐管30によって、サーボ弁11に供給される空気の一部を排気することにより、供給圧力Psを変動させた。
排気流量Gout_up及びサーボ弁11に供給される空気の圧力Psは、それぞれ流量計31及び圧力計32によって計測した。
なお、図6においては、圧力レギュレータ1の制御手段であるコンピュータ16、A/D変換器17及びD/A変換器18(図1参照)の記載は省略した。また、本実験装置の圧力計32及び流量計31による計測データは、A/D変換器17を介してコンピュータ16に送信され、コンピュータ16において、流量計12、圧力計14及び圧力微分計15による計測データと共にデータ処理を行った。
(実験操作)
図6に示した実験装置において、圧力Pが十分に整定した後、t≧30[s]でサーボ弁11の上流にある分岐管30のハンドバルブを開放し、Gout_up=6.47×10−3[kg]の空気を放出した。その際の供給圧力Psの変化を図7に示す。また、比較対象として、前記した市販の精密レギュレータおよび電空レギュレータを用いて同様の実験を行った。
(実験結果)
図8は、実験1の実験結果を示すグラフである。図8において、“A”は、本発明による圧力レギュレータ1を用いた場合、“B”は、精密レギュレータを用いた場合、“C”は、電空レギュレータを用いた場合の圧力変化を示す。
図8に示したように、本発明による圧力レギュレータ1を用いた場合は、圧力Pは目標値である300[kPa]に偏差なく整定し、供給圧力Psの変動の影響はほとんど受けていない。それに対し、精密レギュレータ及び電空レギュレータを用いた場合は、圧力の目標値に対して定常オフセットが見られる。精密レギュレータを用いた場合は、供給圧力Psの低下によって、下流側の圧力Pも低下している。一方、電空レギュレータを用いた場合は、供給圧力Psの変動の影響は見られないが、t≧39[s]において、圧力Pが上昇している。これは、t=39[s]において供給圧力Psが電空レギュレータの閾値を下回り、レギュレータのスイッチが作動したことが原因であると考えられる。
(実験2:下流側の流出流量の変動実験)
実験2においては、圧力レギュレータ1の下流側に使用流量(流出流量)の変動を起こし、圧力レギュレータ1によって圧力が整定される様子を計測した。
実験装置は、図9に示すように、図1に示した圧力レギュレータ1に対して、圧力レギュレータ1の出力側の導管19dの下流端にスプール型サーボ弁33を接続し、更にサーボ弁33の下流側に層流型の流量計34を接続した。サーボ弁33に制御電圧E2を与え、サーボ弁33の開度を調節することにより流出流量Goutを変動させた。流出流量Goutは、流量計34によって計測した。
なお、図9においては、圧力レギュレータ1の制御手段であるコンピュータ16、A/D変換器17及びD/A変換器18(図1参照)の記載は省略した。また、本実験装置の流量計34による計測データは、A/D変換器17を介してコンピュータ16に送信され、コンピュータ16において、流量計12、圧力計14及び圧力微分計15による計測データと共にデータ処理を行った。また、コンピュータ16によってD/A変換器18を介してサーボ弁33に対する制御電圧E2を送信し、サーボ弁33を駆動した。
(実験操作)
図9に示した実験装置において、圧力レギュレータ1の下流側に設置したサーボ弁33への制御電圧E2を、
t<20[s]のときに、E2 = 6.5[V]
t≧20[s]のときに、E2 = 8.0[V]
とステップ的に変化させ、圧力レギュレータ1の下流側に外乱を発生させた。
図10は、実験2における流出流量の計測値と推定値を示すグラフである。図10において、“A”は、流量計34によって計測した流出流量Goutを示し、“B”は、式(8)により推定された流出流量の推定値Gout(上にハット)を示す。また、実験2においても、比較対象として、前記した市販の精密レギュレータ及び電空レギュレータを用いて同様の実験を行った。
(実験結果)
図11は、実験2の実験結果を示すグラフである。図11において、“A”は、本発明による圧力レギュレータ1を用いた場合、“B”は、精密レギュレータを用いた場合、“C”は、電空レギュレータを用いた場合の圧力変化を示す。
実験2の結果においても、本発明による圧力レギュレータ1を用いた場合は、圧力の目標値である300[kPa]にオフセット無く整定し、下流側の外乱の影響は0.3[s]程度と迅速に補償されており、市販のレギュレータに対する優位性を示している。
(実験3:圧力計の計測値を離散微分して用いた制御実験)
実験3においては、図9に示した実験装置を用い、式(8)による流出流量の推定値Gout(上にハット)を算出するために、圧力微分計15によって計測される圧力微分値dP/dtの代わりに、圧力計14によって計測される圧力Pを離散微分して求めて圧力微分値を用いた。なお、圧力Pを離散微分するデジタルフィルタは、圧力微分計15と同様に不完全微分器とし、カットオフ周波数fcは67[Hz]とした。
他の実験条件は、実験2と同じである。
(実験結果)
図12は、実験3の実験結果を示すグラフである。図12において、“A”は、圧力微分計によって計測した圧力微分値を用いた場合を示し、“B”は、圧力計によって計測した圧力値の離散微分を用いた場合を示す。
図12に示したように、圧力微分計による計測値を用いた場合と比較し、離散微分を用いた場合には定常変動が大きくなっていることがわかる。これは、圧力計14の測定値を離散微分したことによるノイズ成分の増幅が原因であると考えられる。
図13は、圧力微分計によって計測した圧力微分値と、圧力計によって計測した圧力値を離散微分して求めた圧力微分値を示すグラフである。図11において、“A”は、圧力微分計によって計測した圧力微分値を示し、“B”は、圧力計によって計測した圧力値を離散微分して求めた圧力微分値を示す。
図13に示したように、圧力計14による計測値を離散微分した圧力微分値よりも、圧力微分計15を用いて計測した圧力微分値の方が、変動が小さくなっており、ノイズ成分が少ないことが分る。従って、高精度に圧力制御を行うためには、圧力微分計15を用いることが有効であることが分る。
<除振装置の構成>
次に、図14を参照して、本発明による圧力レギュレータ1の適用例として、圧力レギュレータ1を用いた空気バネ式の除振装置100について説明する。ここで、図14は、本発明の圧力レギュレータを用いた空気バネ式の除振装置の構成を模式的に示す構成図である。
図14に示したように、除振装置100は、除振台110と、空気バネ制御部120とから構成されている。
除振装置100は、空気バネ111に対する空気の供給及び排気を、サーボ弁115によって規制することにより、振動などによって変位する定盤112の位置を設定変位に整定するように制御するものである。また、サーボ弁115に供給される空気は、空気供給源10Aから圧力レギュレータ1を介して高精度に一定の圧力に保たれて供給されるように構成されている。
本発明の実施形態では、空気バネ制御部120によって、定盤112の位置及び加速度をフィードバック制御し、サーボ弁115に対する制御電圧E3を算出し、サーボ弁115を操作するように構成されている。
(除振台)
除振台110は、空気供給源10Aと、圧力レギュレータ1と、サーボ弁115と、空気バネ111と、定盤112と、位置検出器113と、加速度検出器114とから構成されている。
空気供給源10Aは、空気バネ111に空気を供給するための供給源であり、コンプレッサ等のポンプ類を用いて圧縮空気を供給するものである。また、供給する空気を高圧に充填したボンベを用いることもできる。空気供給源10Aから供給される空気は、圧力レギュレータ1に流入され、所定の圧力に調整される。
圧力レギュレータ1は、空気供給源10Aから供給される空気を、所定の圧力に調整して、サーボ弁115を介して、空気バネ111に供給するものであり、図1に示した本発明による圧力レギュレータである。
サーボ弁115は、空気バネ111に対して空気の供給及び排気を規制するものである。図14に示した本実施形態のサーボ弁115は、吸気ポート115aと排気ポート115bと制御ポート115cとを有するスプール型サーボ弁であり、図1に示した圧力レギュレータ1のサーボ弁11と同様のサーボ弁を用いることができる。
サーボ弁115は、空気バネ111に対して空気の供給及び排気を規制できるものであれば、例えば、ノズルフラッパ型サーボ弁を用いることもできるが、特に、排気流量が少ない流量制御型のサーボ弁であるスプール型サーボ弁を用いることが環境負荷を低減するためにも好ましい。
サーボ弁115の制御ポート115cは、空気バネ111に接続され、吸気ポート115aは圧力レギュレータ1に接続され、排気ポート115bは大気に開放されており、空気バネ制御部120からD/A変換器(不図示)を介して送信される制御電圧E3に基づいて、制御ポート115cと、吸気ポート115a又は排気ポート115bとの接続の切り替え、及び弁の開度が調節される。これによって、空気バネ111に対する空気の供給及び排気を規制することができる。
空気バネ111は、バッファタンク部111aとゴムベローズ部111bとから構成され、内部の空気の圧力に応じてゴムベローズ部111bが伸縮するアクチュエータであって、定盤112を支持する支持脚である。
空気バネ111は、サーボ弁115の制御ポート115cと接続され、サーボ弁115の弁の接続方向及び開度に応じて、空気バネ111に対する空気の供給及び排気が行われる。
定盤112は、振動が除去された状態で使用する、例えば、露光装置等の機器を載置する載置台である。定盤112は、空気バネ111によって支持されると共に、位置検出器113及び加速度検出器114によって、定盤112の位置(変位)及び加速度が検出される。
位置検出器113は、定盤112の位置(変位)を検出し、検出した信号をA/D変換器(不図示)を介して空気バネ制御部120に出力する。位置検出器113としては、渦電流式変位センサ、静電容量センサ、光電変換素子を応用した位置検出センサ等を用いることができる。
加速度検出器114は、定盤112の加速度を検出し、検出した信号をA/D変換器(不図示)を介して空気バネ制御部120に出力する。加速度検出器114としては、圧電型加速度センサ、静電容量型加速度センサ等を用いることができる。
(空気バネ制御部)
空気バネ制御部(空気バネ制御手段)120は、フィルタ121と、フィルタ122と、比較器123と、PI補償器124と、減算器125とを備えて構成されており、除振台110の位置検出器113及び加速度検出器114によって計測される定盤112の位置及び加速度をA/D変換器(不図示)を介して受信し、受信した位置及び加速度をフィードバック制御して、サーボ弁115に対する制御電圧E3を算出し、D/A変換器(不図示)を介してサーボ弁115に送信する。これによって、定盤112の位置を目標値である設定変位に整定すると共に、加速度の変化を最小限に抑制するように、サーボ弁115を制御する。
空気バネ制御部120は、圧力レギュレータ1の制御系と同様に、コンピュータを用いて実現することができる。また、圧力レギュレータ1のコンピュータ16(図1参照)を空気バネ制御部120として兼用するようにしてもよい。
フィルタ121は、位置検出器113によって検出された定盤112の位置信号を、適切な増幅度と時定数とによってフィルタ処理を行い、比較器123に出力する。
フィルタ122は、加速度検出器114によって検出された定盤112の加速度信号を、適切な増幅度と時定数とによってフィルタ処理を行い、減算器125に出力する。
比較器123は、定盤112の位置の目標値である設定変位と、フィルタ121によってフィルタ処理された定盤112の位置信号(変位信号)とを比較し、位置信号の設定変位からの偏差を算出してPI補償器124に出力する。
PI補償器124は、PI制御の制御量である定盤112の位置の偏差に基づき、この偏差を解消するためのサーボ弁115に対する制御電圧を算出して、減算器125に出力する。
減算器125は、PI補償器124で算出された制御電圧から、加速度信号をフィルタ122でフィルタ処理した信号を減算し、制御電圧E3を算出する。これによって、加速度が負帰還され、ダンピングが付与された制御系ループとなるため、制御機構の安定を図ることができる。算出された制御電圧E3は、D/A変換器(不図示)を介してサーボ弁115に送信され、サーボ弁115の開度が調節される。
本実施形態においては、PI制御系のフィードバックループを構成したが、PID制御系のフィードバックループを構成するようにしてもよい。また、定盤112の位置と加速度とをフィードバック制御するようにしたが、フィードバック制御する制御量はこれらに限定されるものではなく、例えば、更に空気バネ111内の空気圧又は空気圧の微分値を計測してフィードバック制御系を構成するようにしてもよい。
なお、除振装置の制御については、本願発明者らが特許文献2において提案した除振装置に詳しく説明している。
<除振装置の動作>
次に、除振装置100の動作について、図14を参照(適宜図1参照)して説明する。
まず、除振装置を起動後に、十分に時間が経過して、定盤112が設定変位に整定された状態であるとする。このとき、サーボ弁115は閉じられた状態であり、空気バネ111に対する空気の流入及び流出は行われない。
ここで、除振台110の設置面からの振動又は定盤112上に設置された機器の動作などにより、定盤112の位置に変動が発生すると、A/D変換器(不図示)を介して受信した位置検出器113及び加速度検出器114によって検出された位置信号及び加速度信号に基づき、空気バネ制御部120によって定盤112の位置を設定変位に整定するための制御電圧E3を算出し、D/A変換器(不図示)を介してサーボ弁115に出力する。
サーボ弁115は、空気バネ制御部120によって算出された制御電圧E3に応じた開度で弁を開き、空気バネ111に対して、吸気ポート115aからの空気の供給又は排気ポート115bへの空気の排気を行う。これによって、空気バネ111内の空気圧が調整され、空気バネ111が支持する定盤112の位置が設定変位に整定するように制御される。
一方、空気供給源10Aから圧力レギュレータ1を介して空気バネ111に空気が供給された場合には、圧力レギュレータ1内の空気の圧力に変動が生じることになる。このため、圧力レギュレータ1は、空気の圧力の変動を補償するために、流量計12、圧力計14及び圧力微分計15によってそれぞれ計測される流入流量Gin、圧力P及び圧力微分値dP/dtに基づいて、コンピュータ16によって、サーボ弁11に対する制御電圧Ei1を算出し、サーボ弁11に送信する。
サーボ弁11は、送信された制御電圧Ei1に応じた開度で弁を開き、等温化圧力容器13に対して、空気を流入させる。これによって、等温化圧力容器13内の空気の圧力Pが目標値Prefに整定されるように制御される。
以上、説明したように、本実施形態の除振装置100は、空気バネ111に供給される空気の圧力を、圧力レギュレータ1によって所定の圧力を保持するように制御する。このため、除振装置100は、安定した圧力の空気の供給を受けて空気バネ111を制御して、定盤112の振動等による変位のズレを迅速かつ高精度に整定することができる。
1 圧力レギュレータ
10 気体供給源(圧縮性流体供給源)
10A 空気供給源
11 サーボ弁
12 流量計(流入流量取得手段)
13 等温化圧力容器
14 圧力計(圧力検出手段)
15 圧力微分計(圧力微分値検出手段)
16 コンピュータ(圧力制御手段、空気バネ制御手段)
20 圧力制御系
23 流入流量制御系
27 オブザーバ(流出流量推定手段)
28 モデル追従制御系
46 コンピュータ(圧力制御手段)
100 除振装置
110 除振台
111 空気バネ
112 定盤
113 位置検出器(位置検出手段)
114 加速度検出器(加速度検出手段)
115 サーボ弁
120 空気バネ制御部(空気バネ制御手段)
151 等温化圧力容器(圧力室)
152 スリット流路
153 差圧計

Claims (6)

  1. 圧縮性流体供給源から供給される圧縮性流体の流入流量を規制するサーボ弁と、
    前記サーボ弁を介して流入する圧縮性流体を等温状態に保持する等温化圧力容器と、
    前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力を検出する圧力検出手段と、
    前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力微分値を検出する圧力微分値検出手段と、
    前記サーボ弁を操作して前記等温化圧力容器内の圧縮性流体を所定の一定圧力に制御する圧力制御手段と、を備え、
    前記圧力制御手段は、
    前記圧力検出手段によって検出された圧力をフィードバック制御する圧力制御系と、
    前記等温化圧力容器へ流入する圧縮性流体の流入流量を制御する流入流量制御系と、
    前記圧力微分値検出手段によって検出された圧力微分値から、前記等温化圧力容器に流入する圧縮性流体の流入流量と前記等温化圧力容器から流出する圧縮性流体の流出流量との差である流入出流量差を推定する流出流量推定手段と、を有し、
    前記圧力制御系の制御ループの内側に構成すると共に、前記流出流量推定手段によって推定された流出流量を前記流入流量制御系にフィードバックするモデル追従制御系を構成することを特徴とする圧力レギュレータ。
  2. 前記サーボ弁は、スプール型サーボ弁であることを特徴とする請求項1に記載の圧力レギュレータ。
  3. 前記圧力微分値検出手段は、圧力室と、ダイヤフラム式差圧計あるいは流速計と、前記等温化圧力容器と前記圧力室とを連通する円筒型のスリット流路とを備えた圧力微分計であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力レギュレータ。
  4. 前記流出流量推定手段は、前記圧力微分値検出手段によって検出された前記等温化圧力容器内の圧縮性流体の圧力微分値(dP/dt)に基づいて、下記式(7)によって前記流入出流量差(Gin−Gout)を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧力レギュレータ。
    Figure 2012022702
    ここで、Rはガス定数[J/(kg・K)]、Vは等温化圧力容器の容積[m]、θは等温化圧力容器内の空気の温度[K]、Pは等温化圧力容器内の圧力[Pa]、tは時間[s]である。
  5. 定盤と、
    前記定盤を支持する空気バネと、
    前記空気バネに対する空気の流入流量及び流出流量を規制するサーボ弁と、
    空気供給源から供給される空気の圧力を一定に保持して前記サーボ弁に供給する請求項1乃至請求項の何れか一項に記載の圧力レギュレータと、
    前記定盤の位置を検出する位置検出手段と、
    前記定盤の加速度を検出する加速度検出手段と、
    前記位置検出手段によって検出された位置と前記加速度検出手段によって検出された加速度とに基づいて、前記サーボ弁を操作して前記定盤を所定の位置に制御する空気バネ制御手段と、
    を備えたことを特徴とする除振装置。
  6. 前記サーボ弁は、スプール型サーボ弁であることを特徴とする請求項に記載の除振装置。
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