JP2012021610A - 搬送ローラ用転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】低摩擦化および低トルク化した搬送ローラ用転がり軸受を提供する。
【解決手段】内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数個の玉5と、玉5を転動自在に保持する合成樹脂製環状の保持器7とを備え、固体潤滑剤を含有した合成樹脂から成形された保持器7は、保持器厚み方向に同一内径であるストレートポケット12又は内径寸法が変化する異径ポケット13を有し、ストレートポケット12の存在率が50%以上であり、且つ異径ポケット同士13,13が隣合わない配置になっている。
【選択図】図2

Description

本発明は、固体潤滑剤を含有した樹脂製保持器が組み込まれた転がり軸受に係り、特に、低トルク性を要求されるフィルム搬送ローラの支持軸受に好適に用いられる搬送ローラ用転がり軸受に関するものである。
FPD(フラットパネルディスプレイ)や太陽電池等の素材に用いられるフィルムは、異なる材料のフィルムを積層することで発光や発電の機能を発揮することが可能となるが、フィルムの厚さは日々薄くなっており、厚みが数10μm程度のものまで登場している。
従来より、フィルム20は、図6のような互いに平行に配置されてそれぞれ軸心回りに回転する複数本の搬送ローラ21に支持されて搬送されるが、搬送ローラ21の幾つかはフィルム20に駆動力を与える駆動ローラであり、残りの多くは従動ローラである。従動ローラは移動するフィルム20との摩擦力で回転し、フィルム20を円滑に搬送したり、一個前のローラとの相対位置を変化させることでフィルム20の上下方向の角度を変えたりする役目を負っている。従動ローラはフィルム20との摩擦力だけで回転しているため、フィルム20の走行速度とローラ表面の周速度とが同一であることが重要であり、そのため、従動ローラは極めて小さい接線方向の力で回転しなければならない。したがって、フィルム20を搬送する搬送ローラ21の支持軸受22である搬送ローラ用軸受には極めて小さなモーメントで回転起動し、安定して回転しつづける、低トルク性能と耐久性が求められることになる。
ところで、フィルム搬送ローラ用の軸受としては、一般的に転がり軸受が用いられており、一例を図7に示す。これは、外輪4、内輪2と波形保持器23から成る深溝玉軸受であり、波形保持器23はプレス成形部品2個で玉5をはさみ、その後、かしめ工程によって結合不可分としたもので、深溝玉軸受では最も一般的な保持器の形式である。波形保持器23は、玉5の球面に倣うように内周面のポケット24を球面に成形しており、全て玉5を抱くように配置されている。この球面の作用により、かしめ完了後には玉5は脱落することはなく、等間隔に所定のピッチ寸法を保持される。このように、波形保持器23は量産性に優れるだけでなく、剛性が高く、広く用いられている。しかしながら、波形保持器23は一体且つ、ポケット24が球面で玉5を抱く構造のため、玉5が自由にポケット24内を移動することはできない。したがって、軸受が回転起動する際は、玉5が保持器からの摩擦力を受けて回転し始めるため、起動トルクが大きくならざるを得ない。また、回転中の保持器はこのポケット形状により玉5からの強い圧力を受けることになり、その結果、一部の玉5が内外輪軌道1,3に押し付けられたり、開放されたりする挙動が繰り返される。そのため、動摩擦トルク値も大きくなるという問題があった。
この問題の改善の先行技術としては、特許文献1〜2に転がり軸受の潤滑性能や低トルク性能を向上させるための発明が開示されている。特許文献1には、分割樹脂保持器のポケット内面形状を、両端部は内筒面としながら中間部を凹状の球面(転動体案内)とすることにより、保持器曲率が所望値から外れた場合でも保持器が転動体の回転を阻害しないようにして、軸受トルクの上昇を抑えた分割型保持器が記載されている。
特許文献2には、樹脂保持器の曲げ弾性率を所定範囲に規定して、転動体と保持器ポケットの衝突音発生を緩和し、保持器と転動体の拘束を小さくしてトルク上昇を抑えた樹脂製保持器が記載されている。
特開2000‐065067号公報 特開2004‐084867号公報
しかしながら、特許文献1の発明は、分割型保持器においては効果があると認められるが、一体成形された環状保持器に対して適用することはできない。また、軸受回転軸を水平とした場合において、保持器と軌道輪との摺動摩擦が発生するという問題があるが、特許文献2においては解決を示す記述は無く、転動体案内ポケット間の保持器柱部の変形による動摩擦トルク上昇という問題も未解決である。
ここで、一体成形された樹脂製環状保持器の問題点について、図8により説明する。保持器7は樹脂製であり、全てのポケットを保持器7の厚み方向に異径断面を持つ(内径寸法が変化する)異径ポケット13とすることにより転動体案内になっている。搬送ローラ用軸受の場合、そのほとんどが従動ローラであって大きな荷重は受けないことや、フットプリント(設備の設置面積)を極力小さくする事情等から、外内輪4,2の直径差の比較的小さい薄肉軸受が用いられることが多い。そのため、保持器7の厚み寸法が制限を受けるためにポケットの開口部9における内径側開口部と外径側開口部の両方がパチン代を持った転動体案内の保持器を使用することは難しい。したがって、ポケットの外輪側か内輪側かどちらか一方のみに異径断面を持った異径ポケット13による転動体案内の保持器7が使用されることが多い。また、軌道輪案内の保持器が用いられる場合もあるが、軌道輪と保持器との摺動摩擦が発生することにより、動摩擦トルク値が上昇する。
図8は転動体案内にはなっているが、異径ポケット13の異径部は開口部9の内輪側にだけあるため、局所的に保持器7は径方向内輪側へ移動することが可能となっている。軸受を水平軸対応状態で設置すると、保持器7はその自重でたわんで保持器頂上付近が下がって保持器7の内周面が内輪2の外周面と接触する状態になる。したがって、転動体案内ではあるが、保持器7は内輪2と摺動する領域を持つ。
この時、軸受に荷重がかかると、軸受下半円内の保持器7は自重により全体的に玉5に押し付けられているだけでなく、玉5同士にはさまれて押されるようになり、柱部11が外輪側に凸状に膨れる形状になる。異径ポケット13は玉5で拘束されているため、柱部11の中央部だけが外側に出っ張ることになる。保持器7の形状を保持器径方向の中心線で模式的に示したのが保持器形状15であり、変形状態の形状を保持器変形形状16に示す。保持器7は、軸受上側で内輪と摺動して摺動抵抗となり、軸受下側で花びらのように変形してその変形荷重がトルクロスとなり、両者が軸受の動摩擦トルクを上昇させている。
本発明は、固体潤滑剤含有樹脂によって軌道輪と保持器との摺動抵抗を緩和すると共に、転動体案内ポケットを有する保持器に生じる保持器柱部分の変形を少なくしてトルクロスを軽減することにより、低摩擦化および低トルク化した搬送ローラ用転がり軸受を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、本発明に係る搬送ローラ用転がり軸受は、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数個の玉と、該複数個の玉を転動自在に保持する合成樹脂製環状の保持器とを備え、互いに平行に配置されてそれぞれ軸心回りに回転する複数本のローラによって被搬送物を支持して順次搬送する搬送ローラ用転がり軸受において、固体潤滑剤を含有又は潤滑性を有する合成樹脂から成形された前記保持器は、保持器厚み方向に同一内径であるストレートポケット又は内径寸法が変化する異径ポケットを有し、前記ストレートポケットの存在率が50%以上であり、且つ前記異径ポケット同士が隣合わない配置になっていることを特徴としている。
また、本発明に係る搬送ローラ用転がり軸受は、前記合成樹脂の曲げ弾性率が3000MPa以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る搬送ローラ用転がり軸受は、前記合成樹脂が圧縮成形材料であることを特徴とする。
また、本発明に係る搬送ローラ用転がり軸受は、軸受の外径をDとし、軸受の内径をdとし、軸受の幅をtとしたとき、下記式を満たすことを特徴とする。
(D−d)/2/t≦1.07
本発明は、保持器と軌道輪及び転動体との摺動摩擦を減少させるため、曲げ弾性率が3000MPa以下(ASTM規格 D‐790)であり、且つ動摩擦係数が小さい固体潤滑剤含有樹脂材料で保持器を製作するというものである。
保持器と軌道輪及び転動体との摺動摩擦を減少させるには、保持器樹脂材料に固体潤滑剤が含有されている必要があるが、基本的に材料の動摩擦係数がある一定値以下でないと効果が小さい。さらに、固体潤滑剤が相手材に転移するためには、保持器が一定面積、一定時間、相手材と摺動する必要があり、そのためには樹脂材料に柔軟性が要求される。
本発明によれば、保持器は、固体潤滑剤を含有した合成樹脂から成形され、ストレートポケットを適切に配置することで転動体案内ポケットを有する保持器に生じる保持器柱部分の変形を少なくしてトルクロスを軽減することにより、低摩擦化および低トルク化を図ることができるという効果が有る。
本発明の第1実施形態である転がり軸受の構造を示す部分断面図である。 第1実施形態に係わる保持器の正面図、側面図である。 試験装置の構造を示す外観図である。 動摩擦係数の時間による変化を示すグラフである。 本発明の第2実施形態である転がり軸受の構造を示す部分断面図である。 搬送ローラを使用したフィルム搬送装置の説明図である。 一般的な深溝玉軸受の説明図である。 従来の樹脂製保持器軸受の断面図および保持器の正面図、側面図である。
図1は本発明の第1実施形態である転がり軸受の構造を示す部分断面図、図2は図1における保持器の正面図、側面図である。本実施形態の転がり軸受10は、内周面に外輪軌道3を有する外輪4と、外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、外輪軌道3と内輪軌道1との間に設けられた複数個の玉5と、玉5を転動自在に保持する合成樹脂製環状の冠型もみ抜き保持器7を備えている。外輪4の両端部内周面には、それぞれ円輪状のシールド板6、6の外周縁を係止し、シールド板6の内径と内輪2の対向する外周面には隙間が設けられている。固体潤滑剤を含有する樹脂材料で成形された保持器7は、円周方向に等配位置で玉5を転動可能に保持するポケット8が設けてあり、片側端面に開口部9を有している。開口部9はパチン代が設定してあり、開口部9を通過してポケット8に収納された玉5は保持器7から脱落しないようになっている。
このような転がり軸受10を組立てる場合、所定個数の玉5を内輪軌道1と外輪軌道3の間の位置に等配し、軸受端面側から保持器7を装填し、玉5を全てポケット8に収納する。さらに、軸受の初期潤滑の為に玉5或いは軌道にグリース又はオイルを薄膜塗布(図示せず)した後、シールド板6を装填して封止する。
転がり軸受10はアンギュラ形式の軸受とすることもできる。この場合は、上記と同じ組み立て方法でもよいし、或いは、切れ目のない円形状ポケットを持つ保持器に転動体を入れた状態で内輪と一体的に保持し、熱して拡径させた外輪のカウンタボア(外輪口元テーパ部)側から装填して組立ててもよい。
内外輪2、4及び玉5の材料としてはSUJ2やSUS440Cなどがあり、シールド板6の材料としてはSPCCやSUS304など、或いはそれらを芯金にしたゴム成形品でもよい。
固体潤滑剤含有樹脂製の保持器7はストレートポケット12と異径ポケット13(転動体案内ポケット)を有しており、異径ポケット13は内径側の径寸法が小さくなっていて、転動体に対して保持器7が外輪側に移動するのを規制するようになっている。ストレートポケット12と異径ポケット13は交互に配置されていて、異径ポケット13を連続して配置することはない。
従来例図8の説明と同様に、保持器7の径方向中心線が水平軸の軸受内でどのような形状になっているかを示したのが図2(b)である。自重で中心線頂上部はたわんで、保持器7の内周面が内輪2の外周面と接触している状態は従来例と同一である。ただし、本実施例の保持器樹脂材料は固体潤滑剤を含有しているため、軸受が回転して接触部で保持器7と内輪2とが摺動しても、固体潤滑剤の作用で摺動抵抗は従来例に対して軽減される。
加えて、ストレートポケット12と異径ポケット13とが交互に配置されているため、軸受が荷重を受けて回転する際、玉5同士が保持器柱部11をはさんで円周方向に押し合うが、玉5で拘束されている異径ポケット13が1個おきであるため、ストレートポケット12の位置で力が緩和されるため、従来例のように保持器7が波打って花びらのように変形することはない。そのため、保持器7の変形荷重が小さく、トルクロスが少なくなる。
つまり、固体潤滑剤で軸受上半円の摺動抵抗を軽減し、ストレートポケットと異径ポケットを交互に配置することで軸受下半円の花びら形状変形を少なくしてトルクロスを軽減するという、2つのトルク軽減効果で低トルク化を図っている。
異径ポケット13が隣り合っていると、両異径ポケット間の柱部11は従来例の花びら形状の変形が生じてその影響がさらに両隣の柱部分に及ぶことになる。そのため、異径ポケット13が連続することは芳しくない。ポケットの50%以上はストレートポケット12であって、異径ポケット13が隣り合わないことが必要である。ただし、ストレートポケット12の存在率が高すぎると、軸受下半円で保持器全体を内輪から持ち上げる作用が乏しくなり、保持器と内輪との摺動領域が増加してしまい、摺動抵抗が大きくなってしまう。異径ポケットは保持器7と内輪2との摺動領域を小さくするために導入しているので、ストレートポケットと異径ポケットの比率を大きく違えることはできない。そのため、ストレートポケットの存在率は、50%〜65%程度が望ましい。
固体潤滑剤としては、PTFEやMoS2、グラファイト等が良く、それらが含有されているベース樹脂はPPSやPP、PEEK等で良い。また、ベース樹脂をPTFEとし、PTFEを炭素繊維やガラス繊維で補強した材料でも良い。
次に、本実施形態の転がり軸受について、動摩擦トルク試験を行なった結果について説明する。
図3は動摩擦トルク試験装置の構造を示す外観図である。2個の試験軸受31、31は、軸受内輪を水平軸であるシャフト30に装填し、軸受外輪は軸受ホルダー32に嵌合させた状態で同軸に配列されおり、軸受内輪には予圧バネ33により予圧荷重(アキシアル荷重)を付加している。試験軸受31には摩擦が有るため、シャフト30の回転運動により軸受内輪を回転させると軸受外輪が連れ回りを生じる。配列した2個の試験軸受31の外輪の中間点から接線方向に糸34を伸ばして、その端をフォースゲージ35に接続しており、軸受が定速連続回転の状態において、フォースゲージ35により連れ回りの接線力(接線方向荷重)を測定する。この接線力値を軸受のトルク値に代用して試験軸受31の比較を行う。試験軸受31は同一仕様軸受(内径60mm)を2個ペアにして行い、測定値を1/2にして1軸受分としている。
動摩擦トルク試験は内輪の回転速度70min−1で行なった(大気圧、常温)。図4に接線力の測定例を示すが、接線力値は振れ幅を持つため、中央値と振れ幅量の2つを軸受動摩擦トルクの代表値とした。
試験結果を表1に示す。試験軸受の保持器材料としては3種類であり、無充填PTFE、炭素繊維強化PTFE及びPTFE充填PP(ポリプロピレン)である。本発明の軸受の保持器は、異径ポケットとストレートポケットを交互配置した構成とした。一方、比較する従来軸受としては、保持器のポケットが全て異径ポケットである軸受を用意した。試験軸受は、同材質且つ内外径・幅が同一寸法の樹脂製保持器で、保持器以外の構成は同一である内径60mmの同一名番であり、本発明軸受と従来軸受との違いは、ポケット形状のみである。
表1において、回転試験後30分後の接線力の中央値と振れ幅量、同12時間後の中央値を記載している。
いずれの本発明軸受も従来軸受より動摩擦トルク値が小さい。保持器材料が無充填PTFEにおいては、従来軸受では回転不能であった。これは、純PTFEは摩擦係数は小さいが曲げ弾性率が他の試験軸受の材料に比べて格段に小さいため、花びら形状変形の程度が大きく回転不能になったと考えられる。本発明の軸受(ポケット形状構成)では、回転が可能になるばかりか、従来軸受の他の2軸受より動摩擦トルク値が小さくなっている。本発明のポケット形状構成が低トルク化に有用であることが分かる。
表2に動摩擦係数の小さい固体潤滑剤含有樹脂材料を示すが、いずれも市販の材料である。搬送ローラ用軸受は水平軸で使用され、さらに保持器厚みが薄くならざるを得ない場合が多いので、軸受上半円領域では、保持器と軌道輪(内輪)との摺動が生じる。そのため、保持器樹脂材料に固体潤滑剤が含有されていることが必要である。固体潤滑剤はPTFEやMoS2等が用いられるが、これらの固体潤滑剤を含有すると樹脂材料の曲げ弾性率が小さくなる傾向にある。それは固体潤滑剤が曲げ弾性率を下げる原因になっているからであり、表で示すように動摩擦係数が0.23以下の樹脂材料は全て曲げ弾性率が小さく、3000MPa以下になっている。
これらの動摩擦係数が小さい樹脂材料を保持器に用いることは、保持器と内輪との摺動抵抗をより小さくするのに効果があるが、曲げ弾性率が小さいために保持器が変形しやすくなる。そのため、全てのポケットが異径ポケットの場合、前述したように保持器柱部分が大きく変形してしまうことになり、動摩擦係数の小さい材料により摺動抵抗を軽減したにも関わらず、花びら形状に波打つ変形を招いてしまい、摺動抵抗軽減の効果を打ち消してしまう。
本発明を上記固体潤滑剤含有樹脂材料に対して施すことで、摺動抵抗は小さく且つ花びら形状変形の少ない保持器を得ることが可能であり、極めて低トルクな軸受を構築できる。
曲げ弾性率が3000MPa以下の材料であっても、本発明の構成を講じれば、花びら変形を抑えることが可能であり、トルクロスの小さい低トルク軸受を得ることができる。
表2に示した動摩擦係数の小さい固体潤滑剤含有樹脂材料は、PTFE充填PEEKを除けばいずれも圧縮成形材料である。これは、固体潤滑剤の充填量が多いほど動摩擦係数は小さくなるが、材料の流動性が悪くなり、射出成形できないためである。言い換えれば、摺動抵抗を軽減可能な動摩擦係数の小さい材料を使用するには、一部の例外を除いて圧縮成形材料を使用する必要があるということである。
圧縮成形材料を保持器形状にするには、切削加工で行うことになる。そのため、保持器ポケット内径側口元と外径側口元の両方にパチン代を設けて、転動体が保持器から脱落しないポケット形状(転動体を抱く形状)を加工することは困難である。つまり、内径側か外径側かどちらかの口元が転動体直径寸法以上の大きさのストレート断面形状に開口していることになる。したがって、動摩擦係数の小さい固体潤滑剤含有樹脂材料を選定した場合、圧縮成形材料になる可能性が高く、さらにその動摩擦係数の小さい特性を活かすためには本発明の構成、すなわちストレートポケットと異径ポケットを混在させて、異径ポケットが隣り合わせにならない構成にすれば、摺動抵抗が小さく且つ花びら形状変形の少ない保持器を容易に加工することができ、その結果、低トルク軸受を提供することが可能となる。
次に、図5は、本発明の第2実施形態である転がり軸受の構造を示す部分断面図である。本実施形態の転がり軸受10は、前記第1実施形態の転がり軸受とほぼ同様であるが、軸受寸法を限定している点が異なる。搬送ローラ用転がり軸受10は、軸受の外径をDとし、軸受の内径をdとし、軸受の幅をtとしたとき、(D−d)/2/t≦1.07を満たす構造としている。フィルム搬送ローラ用の軸受は、低トルク性能を要求されるが、大きな荷重容量を要求されることは少ない。一方、設備のフットプリント性は要求されるため、荷重容量は大きくないが厚み寸法が小さい薄肉軸受と呼ばれる軸受が使用されることが多い。これらは軸受の直径系列で08系、09系に分類されるものである。これらは玉5の直径に対して軸受の断面積が小さいため、内蔵される保持器7も寸法上の制約を受けることになる。
図5からわかるように、保持器7に許されるスペースは非常に小さく、シールド板6と干渉しないようにするため、保持器7はシールド板6の嵌合部とは反対側である内輪側に寄せて設置する必要ある。そのため、保持器は薄くならざるを得ないので、自重で容易に変形して軌道輪と摺動し、加えて軸受下半円では花びら形状変形を生じやすくなる。したがって、薄肉軸受において本発明の保持器は有用であり、すなわち、薄肉軸受が使用されることが多いフィルム搬送ローラ用の軸受には、本発明の樹脂保持器が好適と言える。
08,09系の軸受(内径100mm以下)において、軸受の断面高さ寸法(D−d)/2と幅寸法tとの比をとると、その値は最大値で1.07であり、本条件を満足する軸受は全て薄肉軸受である。
本発明の搬送ローラ用転がり軸受は、フィルム搬送ローラの支持軸に好適に適用できる。
1 内輪軌道
2 内輪
3 外輪軌道
4 外輪
5 玉
6 シールド板
7 保持器
8 ポケット
9 開口部
10 転がり軸受
11 柱部
12 ストレートポケット
13 異径ポケット
15 保持器形状
16 保持器変形形状
20 フィルム
21 搬送ローラ
22 支持軸受
23 波形保持器
24 ポケット
30 シャフト
31 試験軸受
32 外輪ホルダー
33 予圧バネ
34 糸
35 フォースゲージ

Claims (4)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数個の玉と、該複数個の玉を転動自在に保持する合成樹脂製環状の保持器とを備え、互いに平行に配置されてそれぞれ軸心回りに回転する複数本のローラによって被搬送物を支持して順次搬送する搬送ローラ用転がり軸受において、
    固体潤滑剤を含有又は潤滑性を有する合成樹脂から成形された前記保持器は、保持器厚み方向に同一内径であるストレートポケット又は内径寸法が変化する異径ポケットを有し、
    前記ストレートポケットの存在率が50%以上であり、且つ前記異径ポケット同士が隣合わない配置になっていることを特徴とする搬送ローラ用転がり軸受。
  2. 前記合成樹脂の曲げ弾性率が3000MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の搬送ローラ用転がり軸受。
  3. 前記合成樹脂が圧縮成形材料であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の搬送ローラ用転がり軸受。
  4. 軸受の外径をDとし、軸受の内径をdとし、軸受の幅をtとしたとき、下記式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3に記載の搬送ローラ用転がり軸受。
    (D−d)/2/t≦1.07
JP2010160804A 2010-07-15 2010-07-15 搬送ローラ用転がり軸受 Pending JP2012021610A (ja)

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