JP2012016289A - リグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リグノセルロース系バイオマスをアルカリ蒸解処理し、アルカリ蒸解処理物を酵素糖化反応により処理して糖を製造する方法であって、前記アルカリ蒸解処理は、リグノセルロース系バイオマスに対する活性アルカリ添加率を7〜13%とし、アルカリ蒸解処理物の収率を55〜80質量%の範囲に制御した蒸解処理であることを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
【選択図】 図3
Description
より詳しくは、本発明は、リグノセルロース系バイオマスを厳密に制御された条件下でアルカリ蒸解し、得られるアルカリ蒸解処理物から糖化反応により糖を高収率で製造する方法に関するものである。
さらに、この方法は、酸前処理に硫酸等の強酸を使用することから、前処理や処理液からの酸の回収に耐酸性処理槽が必要となるし、処理液中の酸を中和する場合に発生する石膏などの廃棄物の処理が課題となる、というような技術的、経済的な問題がある。
(3)前記アルカリ蒸解処理は、アルカリ蒸解処理終了時の蒸解黒液のpHが7.0〜13.5の範囲となる蒸解処理であることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(4)前記酵素糖化反応処理に先立って、前記アルカリ蒸解処理物をリファイナーにより処理することを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(5)前記アルカリ蒸解処理物のリファイナーによる処理は、ディスク型リファイナーによる摩砕処理であることを特徴とする(4)項記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(7)リグノセルロース系バイオマスがユーカリグロブラスであることを特徴とする(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(8)前記酵素糖化反応は、アルカリ蒸解処理したリグノセルロース系バイオマス中のセルロース分1gに対して100ユニット以下、好ましくは5〜75ユニットのセルラーゼ活性を含むように糖化酵素量を調整した糖化反応であることを特徴とする(1)項〜(7)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(9)前記酵素糖化反応を、pH4.0〜7.0、温度20〜60℃、好ましくは30〜55℃の範囲で行なうことを特徴とする(1)項〜(8)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
(10)前記糖化酵素反応を、エタノール発酵と同時に行なうことを特徴とする(1)項〜(9)項のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
該リグノセルロース系バイオマスは、アルカリ蒸解処理を効率的に行うために、予め適当な大きさに粉砕して用いることが好ましい。
また、樹皮、枝条、果房、果実殻なども使用することができる。また、これらを使った合板、繊維板、集成材のような加工材や、建築物に使用後、解体された部材も使用することができる。さらに、紙などリグノセルロース系バイオマスの加工物や古紙も使用することができる。
ソーダ法は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ薬品を使用し、リグノセルロース系バイオマスからリグニンを除去する方法であり、添加剤として、キノン系蒸解助剤、酸素、過酸化水素、ポリサルファイドの使用が可能である。
「活性アルカリ」とは、蒸解液中のアルカリ度を示す尺度であり、クラフト法であればNa2Oとして表したNaOH+Na2Sを意味する。
本発明において、蒸解処理液の「活性アルカリ添加率」とは、下式で示すように、リグノセルロース系バイオマス(リグノセルロース材料)の絶乾質量に対する活性アルカリ質量の比率を百分率(%)で表したものを意味する。
〔活性アルカリ(Na2Oとして)質量/リグノセルロース材料の絶乾質量〕×100(%)
アルカリ蒸解処理時のリグノセルロース系バイオマスのアルカリ蒸解処理液中の濃度は5〜50質量%の範囲で適宜設定される。
アルカリ蒸解処理温度は100〜200℃の範囲で設定されるが、140℃以上であることが好ましい。
アルカリ蒸解処理時の加熱時間は60〜500分の範囲とされるが、チップの形状・寸法及び含有するリグニンの性質、量等に応じて適宜設定することができる。
回収される廃液中には、リグニンが混入しているのでリカバリーボイラで燃焼させ、熱を回収するとともにソーダ灰を回収して再利用することもできる。ここで得られる熱を製造工程における熱源として利用することにより低コスト化を図ることができる。
また基質濃度は、1〜50%が望ましい。なお、酵素糖化反応は単独で行なってもよいし、エタノール醗酵など他の反応と同時に行なってもよい。エタノール醗酵を同時に行う場合は、温度30〜55℃の範囲で行うことが好ましい。
風乾したユーカリグロブラスチップ(絶乾300g)に、水酸化ナトリウム23.2g(Na2O換算18.0g)、硫化ナトリウム7.5g(Na2O換算6.0g)を含む水溶液を加えて、チップに含まれる水分と合わせた水分量が1200mlとなるように蒸解処理液を調製した。蒸解処理液を20℃から160℃まで昇温した後、H−ファクターが400となるまで160℃に処理液の温度を保持して蒸解処理を行った。
蒸解処理が終了した処理チップから蒸解廃液を分離した後、蒸解処理したユーカリグロブラスチップに対して、12インチ常圧SDRにおけるクリアランスを0.5mmと0.1mmに設定して計2回リファイナー処理を行った。リファイナー処理後、得られるユーカリグロブラスパルプを十分に水洗し、水分が約70質量%となるまで遠心脱水した。
このときの蒸解収率、蒸解廃液のpH、蒸解廃液中の残アルカリ量を測定した。
蒸解により得られるユーカリグロブラスパルプの水分を含む質量と固形分濃度を測定し、乾燥質量を算出した。この乾燥質量を、使用したユーカリグロブラスのチップ質量で除することで蒸解収率を算出した。
<残アルカリ量>
蒸解廃液10mlに純水80mlと1M塩化バリウム10mlを加えた後に、0.5M塩酸にてpH10.5付近の最初の変曲点まで滴定し、その滴定量から蒸解廃液中に残存する水酸化ナトリウム量を算出し、これを残アルカリ量とした。
<対パルプ糖収率及び対チップ糖収率>
前記酵素糖化反応後、ろ過を行い、ろ液の糖濃度をフェノール・硫酸法により測定して得られた糖量から、酵素糖化時の加水分解により付与された水の重さを計算により除去して、酵素糖化されたユーカリグロブラスパルプ量を算出し、反応に用いたパルプ量に対する割合を対パルプ糖収率とした。
また、蒸解収率と対パルプ糖収率の積を対チップ糖収率とした。結果を表1に示す。
実施例1の蒸解処理において、水酸化ナトリウムの添加量を34.8g(Na2O換算27.0g)、硫化ナトリウムの添加量を11.3g(Na2O換算9.0g)とした以外は、実施例1と同様の方法により糖を製造した。結果を表1に示す。
実施例1アルカリ蒸解処理において、水酸化ナトリウムの添加量を46.5g(Na2O換算36.0g)、硫化ナトリウムの添加量を15.1g(Na2O換算12.0g)とした以外は、実施例1と同様の方法で糖を製造した。結果を表1に示す。
実施例1において、水酸化ナトリウム17.4g(Na2O換算13.5g)、硫化ナトリウム5.7g(Na2O換算4.5g)とした以外は、実施例1と同様の方法で糖を製造した。結果を表1に示す。
実施例1において、水酸化ナトリウム8.7g(Na2O換算6.8g)、硫化ナトリウム2.8g(Na2O換算2.3g)とした以外は、実施例1と同様の方法で糖を製造した。結果を表1に示す。
これに対して、比較例1では対パルプ糖収率は96.6質量%と高かったが、蒸解収率が50.7質量%と低かったため、対チップ糖収率は49.0質量%であった。比較例2では、蒸解収率は82.4質量%と高かったが、対パルプ糖収率は60.1質量%と低かったため対チップ糖収率は49.5質量%であった。比較例3では、蒸解収率は90.0質量%と高かったが、対パルプ糖収率は37.1質量%と低かったため対チップ糖収率は33.4質量%であった。
Claims (8)
- リグノセルロース系バイオマスをアルカリ蒸解処理し、アルカリ蒸解処理物を酵素糖化反応により処理して糖を製造する方法であって、前記アルカリ蒸解処理は、リグノセルロース系バイオマスに対する活性アルカリ添加率を7〜13%とし、アルカリ蒸解処理物の収率を55〜80質量%の範囲に制御した蒸解処理であることを特徴とする、リグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記アルカリ蒸解処理は、アルカリ蒸解処理終了時の蒸解黒液中のアルカリ含有量が2.5g/l以下となる蒸解処理であることを特徴とする請求項1記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記アルカリ蒸解処理は、アルカリ蒸解処理終了時の蒸解黒液のpHが7.0〜13.5の範囲となる蒸解処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記酵素糖化反応処理に先立って、前記アルカリ蒸解処理物をリファイナーにより処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- リグノセルロース系バイオマスが広葉樹材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記酵素糖化反応は、アルカリ蒸解処理したリグノセルロース系バイオマス中のセルロース分1gに対して100ユニット以下のセルラーゼ活性を含むように糖化酵素量を調整した糖化反応であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記酵素糖化反応を、pH4.0〜7.0、温度20〜60℃の範囲で行なうことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
- 前記糖化酵素反応を、エタノール発酵と同時に行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のリグノセルロース系バイオマスから糖を製造する方法。
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