JP2012012488A - 石油生コークス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油である重質油をコーキングして得られる生コークスを提供し、この生コークスを各種炭素材料の原料炭組成物として用いる。
【選択図】なし
Description
最近では、原料油注入ノズルの改良、触媒再生方式の改良(2段再生法や触媒クーラー等)、触媒の改良とともに、添加剤等の技術開発が進み、低価値な残油から高価値なガソリン、中間留分を製造する残油流動接触分解装置の建設が多くなってきている。
残油流動接触分解(RFCC)装置は、原料油として残油(常圧残油等)を使用し、触媒を使用して分解反応を選択的に行わせ、高オクタン価のFCCガソリンを得る流動床式の流動接触分解する装置である。残油流動接触分解装置のボトム油としては、例えば、常圧残油等の残油をリアクター反応温度(ROT)510〜540℃の範囲で、触媒/油質量比率を6〜8の範囲で変化させて製造したボトム油が挙げられる。その特徴は、重質なノルマルパラフィンと芳香族成分を含有することにある。
なお、芳香族炭素分率(fa)は、Knight法により求めることができる。Knight法では、炭素の分布を13C−NMR法による芳香族炭素のスペクトルとして3つの成分(A1,A2,A3)に分割する。ここで、A1は芳香族環内部炭素数、置換されている芳香族炭素と置換されていない芳香族炭素の半分(13C−NMRの約40〜60ppmのピークに相当)、A2は置換していない残りの半分の芳香族炭素(13C−NMRの約60〜80ppmのピークに相当)A3は脂肪族炭素数(13C−NMRの約130〜190ppmのピークに相当)であり、これらから、faは
fa=(A1+A2)/(A1+A2+A3)
により求められる。13C−NMR法が、ピッチ類の化学構造パラメータの最も基本的な量であるfaを定量的に求められる最良の方法であることは、文献(「ピッチのキャラクタリゼーション II. 化学構造」横野、真田、(炭素、1981(No.105)、p73〜81)に示されている。
この原料油としては、残油流動接触分解装置のボトム油に、脱硫脱瀝油や流動接触分解(FCC)油のボトム油、高度な水添脱硫処理を施した重質油、減圧残油(VR)、石炭液化油、石炭の溶剤抽出油、常圧残渣油、ナフサタールピッチ、コールタールピッチ、エチレンボトム油及びこれらを水素化精製した重質油等からなる一群から選ばれる一以上を組合せてもよい。脱硫脱瀝油は、例えば、減圧蒸留残渣油等の油を、プロパン、ブタン、ペンタン、又はこれらの混合物等を溶剤として使用する溶剤脱瀝装置で処理し、そのアスファルテン分を除去し、得られた脱瀝油(DAO)を、好ましくは硫黄分0.05〜0.40質量%の範囲までに脱硫したものである。流動接触分解装置のボトム油は、原料油として減圧軽油を使用し、触媒を使用して分解反応を選択的に行わせ、高オクタン価のFCCガソリンを得る流動床式の流動接触分解する装置のボトム油である。高度な水添脱硫処理を施した重質油は、例えば、硫黄分1質量%以上の重質油を水素分圧10MPa以上で水素化脱硫処理して得られる硫黄分1.0質量%以下、窒素分0.5質量%以下、芳香族炭素分率(fa)0.1以上の重質油である。減圧残油(VR)は、原油を常圧蒸留装置にかけて、ガス・軽質油・常圧残油を得た後、この常圧残油を、例えば、10〜30Torrの減圧下、加熱炉出口温度320〜360℃の範囲で変化させて得られる減圧蒸留装置のボトム油である。
二種類以上の原料油をブレンドして原料油組成物を調製する場合、使用する原料油の性状に応じて配合比率を適宜調整すればよい。なお、原料油の性状は、原油の種類、原油から原料油が得られるまでの処理条件等によって変化する。
ディレードコーカーの条件として、圧力が0.3〜0.8MPa、温度が420〜570℃の範囲が好ましい。圧力は、ノルマルパラフィン成分より発生するガスの系外への放出速度を、当該圧力で制限することができるように選択する。前述の通り、メソフェーズを構成する炭素六角網平面のサイズは、発生するガスで制御するため、発生ガスの系内への滞留時間は、前記六角網平面の大きさを決定するための重要な制御パラメータとなる。温度は、重質油からメソフェーズを成長できるように選択する。
このディレードコーカープロセスの生コークスは、水分を多量に含むため、乾燥した後、粉砕、分級に供してもよい。
か焼とはロータリーキルン炉を用い、生コークスを加熱して脱水、揮発成分を燃焼させ除き、安定な品質の材料を得るための熱処理であり、好ましくは、1200〜1400℃で炭素化される。
負極用炭素材料の黒鉛粉体の製造方法としては、乾燥機を用い水分を除いた原料炭組成物を次いで、機械式粉砕機で粉砕し、精密空気分級機で分級することにより、平均粒子径30μm以下の炭素微粒子材料を得る。
特に限定されないが、その後、炭素微粒子材料を所定の黒鉛るつぼに投入し、黒鉛化炉に設置して、Arガス気流中、最高到達温度2200〜2800℃で黒鉛化処理し、リチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得る。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極材スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、もしくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
正極に用いる活物質としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料を用いればよく、例示するのであれば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、及び複酸化物(LiCoXNiYMnZO2、X+Y+Z=1)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等及びこれらの混合物を挙げることができる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微多孔性フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製するリチウムイオン二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
<原料炭組成物の製造>
実施例1
密度0.9293g/cm3、残留炭素5.5質量%の常圧蒸留残油を残油流動接触分解(RFCC)装置の原料油として用い、反応温度530℃、全圧0.21MPa、触媒/油比6の運転条件で接触分解し、残油流動接触分解装置のボトム油を得た。このボトム油の性状は、密度1.0386g/cm3、TS0.33質量%、fa0.57、ガスクロ蒸留 10%点 366℃であった。
なお、密度は、JIS K2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準拠して測定された。TSは、JIS K 2541「原油及び石油製品の硫黄分試験方法」、ガスクロ蒸留 10%点は、JIS K 2254「原油及び石油製品の蒸留試験方法」に準拠して測定された。
また、南方系の低硫黄分常圧蒸留残渣油を減圧蒸留し、密度0.9304g/cm3、TS0.22質量%、fa0.21の減圧残渣油を得た。減圧残渣油を減圧蒸留し、更に水素化脱硫した、密度0.83g/cm3、残留炭素0.1質量%の原料油を、反応温度530℃、全圧0.21MPa、触媒/油比10で流動接触分解し、流動接触分解装置(FCC)のボトム油を得た。このボトム油の性状は、密度0.9971g/cm3、TS0.03質量%、fa0.51、ガスクロ蒸留 10%点 330℃であった。
次に、前述の残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油と減圧残渣油のボトム油を質量比7:3で混合し、ディレードコーカー装置に導入して、540℃でコーキング処理し、生コークス得た。
生コークスは水分を多く含んでいるので、乾燥機を用い水分を除き原料炭組成物を得た。
次いで、当該原料炭組成物を機械式粉砕機で粉砕し、精密空気分級機で分級することにより、平均粒子径16μmの炭素微粒子材料を得た。
炭素微粒子材料を所定の黒鉛るつぼに投入し、黒鉛化炉に設置して、Arガス気流中、最高到達温度2400℃で黒鉛化処理した。このとき昇温速度は200℃/時間、最高到達温度の保持時間は16時間、降温速度は1000℃までが100℃/時間とし、その後室温まで放冷させ、リチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
前述の残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油と減圧残渣油を質量比1:9で混合し、ディレードコーカー装置に導入して、540℃でコーキング処理し、生コークス得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
前述の残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油と減圧残渣油を質量比4:6で混合し、ディレードコーカー装置に導入して、540℃でコーキング処理し、生コークス得た以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
原料油として減圧留出油を用いた流動接触分解装置(FCC)のボトム油と減圧残渣油を質量比7:3で混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
前述の流動接触分解装置(FCC)のボトム油と減圧残渣油を質量比1:9で混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
前述の流動接触分解装置(FCC)のボトム油と減圧残渣油を質量比4:6で混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池負極用の炭素材料を得た。
(1)負極材料評価用セルの作製方法
負極材料として、下記実施例又は比較例で得られた炭素材料(黒鉛粉末)と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で90:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延した。得られたシート状の電極を直径φ15mmに打ち抜き作用極とした。この作用極及びその他の必要部材を十分に乾燥させ、露点−100℃のアルゴンガスが満たされたグローブボックス内に導入し、負極材料評価用セルを組み立てた。乾燥条件は、作用極が減圧状態の下150℃で12時間以上、その他部材が減圧状態の下70℃で12時間以上である。
図1に負極材料評価用セル1の断面図を示す。評価用セル1は、四弗化エチレン製パッキング4により内部の気密が保持可能な中空金属体2を容器としている。当該中空金属体2にはまず、参照極15と上記工程により得られた作用極7とを離間して配置した。次に、これらの電極上に直径φ24mmのポリプロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)からなるセパレータ9と、厚さ0.7mm、直径φ17mmの円盤状リチウム金属箔からなる対極5とを順に積層した。なおリチウム金属箔と作用極との積層位置関係は、リチウム金属箔を作用極側に投影したときにその外周部が作用極7の外周を包囲するように押さえ治具3によって保持した。さらに、対極5、作用極7および参照極15から各々金属枠2の外部に延びる端子8、10、12を設けた。
次いで、前記中空金属体3に電解液6を注入すると共に、この積層体が、厚さ1mm、直径φ20mmのステンレス(SUS304)製円盤11を介してステンレス製のバネ13で加圧され、帯状のニッケル製リード板(厚さ50μm,幅3mm)にリチウム金属が巻きつけられた参照極15が作用極7近傍で固定されるように前記中空金属体3を封止し、負極材料評価用セル1を作製した。使用した電解液6は、エチレンカーボネートとエチルエチルメチルカーボネートとを体積比で3:7に混合した溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度となるように溶解したものである。
負極材料評価用セルを25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。先ず作用極の面積を基準とし、電流密度が0.1mA/cm2となるような電流値で対極及び作用極の間を通電(放電)し、参照極に対する作用極の電位が0.01Vになるまで作用極にリチウムをドープした。10分間の休止の後、同じ電流値で参照極に対する作用極の電位が1.2Vになるまで通電(充電)し、作用極に吸蔵されたリチウムを脱ドープした。得られたリチウムドープ容量(mAh/g)とリチウム脱ドープ容量(mAh/g)を確認し、これらの値から初期充放電サイクルの充放電効率(%)を以下の式から算出した。
充放電効率={(リチウム脱ドープ容量)/(リチウムドープ容量)}×100
実施例及び比較例に記載された黒鉛粉末のリチウム脱ドープ容量、及び充放電効率は、表1に示された通りである。
(1)電池の作製方法
図2に作製した電池20の断面図を示す。正極21は、正極材料である平均粒子径6μmのニッケル酸リチウム(戸田工業社製LiNi0.8Co0.15Al0.05)と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#1320)、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)を質量比で89:6:5に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ30μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅30mm、長さ50mmとなるように切断されたシート電極である。このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に正極合剤が掻き取られ、その露出したアルミニウム箔が塗布部の集電体22(アルミニウム箔)と一体化して繋がっており、正極リード板としての役割を担っている。
負極23は、負極材料である下記実施例又は比較例で得られた黒鉛粉末と結着剤のポリフッ化ビニリデン(クレハ社製KF#9310)と、アセチレンブラック(デンカ社製のデンカブラック)とを質量比で90:2:8に混合し、N−メチル−2−ピロリジノンを加えて混練した後、ペースト状にして、厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥及び圧延操作を行い、塗布部のサイズが、幅32mm、長さ52mmとなるように切断されたシート電極である。このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に負極合剤が掻き取られ、その露出した銅箔が塗布部の集電体24(銅箔)と一体化して繋がっており、負極リード板としての役割を担っている。
電池20の作製は、正極21、負極23、セパレータ25、外装27及びその他部品を十分に乾燥させ、露点−100℃のアルゴンガスが満たされたグローブボックス内に導入して組み立てた。乾燥条件は、正極21及び負極23が減圧状態の下150℃で12時間以上、セパレータ25及びその他部材が減圧状態の下70℃で12時間以上である。
このようにして乾燥された正極21及び負極23を、正極の塗布部と負極の塗布部とが、ポリポロピレン製のマイクロポーラスフィルム(セルガード社製#2400)を介して対向させる状態で積層し、ポリイミドテープで固定した。なお、正極及び負極の積層位置関係は、負極の塗布部に投影される正極塗布部の周縁部が、負極塗布部の周縁部の内側で囲まれるように対向させた。得られた単層電極体を、アルミラミネートフィルムで包埋させ、電解液を注入し、前述の正・負極リード板がはみ出した状態で、ラミネートフィルムを熱融着することにより、密閉型の単層ラミネート電池を作製した。使用した電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートが体積比で3:7に混合された溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が1mol/Lの濃度となるように溶解されたものである。
得られた電池を25℃の恒温室内に設置し、以下に示す充放電試験を行った。先ず1.5mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電した。10分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを10回繰り返した。この充放電サイクルは、電池の異常を検地するためのものであるため、充放電サイクル試験のサイクル数には含まなかった。本実施例で作製された電池は、全て異常がないことを確認した。
次の充放電サイクルを第1サイクル(初期サイクル)とする。75mAの電流で、電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電し、1分間休止の後、同じ電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流で放電する充放電サイクルを設定し、このサイクルを1000回繰り返した。充放電サイクルの容量維持率として、初期放電容量に対する1000サイクル目の放電容量の割合(%)を算出した。実施例及び比較例で作製した黒鉛粉末を負極用炭素材料として使用した電池の充放電サイクルの容量維持率を表1中に示す。
2 中空金属体
3 押さえ治具
4 パッキン
5,21 対極(正極)
6 電解液
7,23 作用極(負極)
8,10,12 端子
9,25 セパレータ
11 対極押さえ板
13 ばね
15 参照極
20 電池
22 正極集電体
24 負極集電体
27 外装
Claims (3)
- 重質油の残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油をコーキングして得られる生コークス。
- 重質油の残油流動接触分解装置(RFCC)のボトム油をディレード・コーキングする工程を少なくとも含む生コークスの製造方法。
- リチウムイオン二次電池用負極炭素材料の原料炭組成物として用いる請求項1に記載の生コークス。
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