以下、本発明の第1の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ1の構成について、図1から図18に基づき説明する。なお、本実施の形態では、本発明の電動工具として、回転動力を出力する電子パルスドライバを用いて説明するが、本発明の電動工具は電子パルスドライバに限定されるものではない。
図1に示すように、電子パルスドライバ1は、ハウジング2と、モータ3と、ハンマ部4と、アンビル部5と、回路基板33に搭載されたインバータ回路6(図10参照)と、基板26に搭載された制御部7(図10参照)と、から主に構成されている。ハウジング2は樹脂製であって電子パルスドライバ1の外郭を成しており、略筒状の胴体部21と、胴体部21から下方へと延出されるハンドル部22とから主に構成されている。
胴体部21内には、その長手方向がモータ3の軸方向と一致するようにモータ3が配置されると共に、モータ3の軸方向一端側に向かってハンマ部4、アンビル部5が並んで配置されている。以下の説明においては、アンビル部5側を前側、モータ3側を後側、モータ3の軸方向と平行な方向を前後方向と定義する。また、胴体部21側を上側、ハンドル部22側を下側、胴体部21からハンドル部22が延びる方向を上下方向と定義する。また、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向と定義する。
図1及び図2に示すように、胴体部21の上部には第1孔21aが、胴体部21の後端及び後部には外気を導入するための吸気口21bが、胴体部21の中央部には外気を導入するための排気口21c形成されている。胴体部21内の前側位置には、ハンマ部4及びアンビル部5が内蔵される金属製のハンマケース23が配置されている。ハンマケース23は、前方に向かうに従って徐々に径が細くなる略漏斗形状を成しており、前端部分には開口23aが形成されている。開口23aを画成する内壁にはメタル23Aが設けられている。ハンマケース23の下部には、第2孔23bが形成されている。また、第2孔23bの近傍には、後述するインパクトモードと電子パルスモードとを切替える切替スイッチ23Aが設けられている。
開口23a近傍位置であってハンマケース23の下方位置には、後述の先端工具装着部51に装着されたビットを照射するためのライト2Aが配置されている。ライト2Aは、暗所での作業時に前方を照らして作業箇所を明るくするために設けられており、後述するスイッチ2Bをオンすることにより通常点灯し、オフすることにより消灯する。また、ライト2Aは、本来のライト2Aの有する照明としての機能に加えてモータ3の温度が上昇した際に点滅して作業者に報知する機能も有している。
ハンドル部22は、胴体部21の前後方向略中央位置から下側に向けて延出され胴体部21と一体に構成されている。ハンドル部22の上部には、トリガ25と、モータ3の回転方向を切替える正逆切替レバー2Cとが設けられており、ハンドル部22の下部には、ライト2Aの点灯及び消灯を切替えるスイッチ2Bと、回転させることにより後述する電子パルスモードにおける複数のモードを切替えるためのダイヤル27とが設けられている。また、ハンドル部22の下端部には、モータ3等に電力を供給するために、繰り返し充電可能な蓄電池である電池24が着脱可能に装着されている。ハンドル部22内の下方位置には基板26が配置されており、また、ハンドル部22には、トリガ25の操作を基板26に伝達するスイッチ機構22Aが内蔵されている。
基板26は、図示せぬリブによってハンドル部22に支持されており、基板26上には、制御部7と、ジャイロセンサ26Aと、LED26Bと、支持突起26Cと、ダイヤル位置検出素子26D(図10)が設けられている。また、図3に示すように、基板26上には、ダイヤル支持部28が搭載されており、ダイヤル支持部28上には、ダイヤル27が載置されている。
ここで、図3及び4を用いて、ダイヤル27及びダイヤル支持部28の構成について説明する。
図4に示すように、ダイヤル27は円形状を有しており、ダイヤル27上には複数の貫通孔27aが円周状に形成されている。また、ダイヤル27の外周面には、作業者がダイヤル27を回転させる際に滑ることを防止するための複数の凹凸部27Aが設けられており、ダイヤル27の中心には、図1における下方に突出する略円筒状の係合部27Bが設けられている。係合部27Bの中央には、係合孔27bが形成されており、係合部27Bの周囲には、係合部27Bを取囲むように4つの係合爪27C及び4つの突起27Dが設けられている。また、ダイヤル27上には、図5に示すようなダイヤルシール29が貼られている。
図3に示すように、ダイヤル支持部28は、ボール28Aと、バネ28Bと、複数の案内突起28Cと、を有しており、また、ダイヤル支持部28には、バネ挿入孔28aと、被係合孔28bと、被係合孔28bに対してバネ挿入孔28aと対極に位置するLED受孔28cとが形成されている。
被係合孔28bには、上方からダイヤル27の係合部27B、係合爪27C、及び突起27Dが挿入されると同時に、下方から基板26上の支持突起26Cが挿入されており、これにより、ダイヤル27は、支持突起26Cの周りに回動可能となる。また、ダイヤル支持部28の案内突起28Cは、ダイヤル27の凹凸部27Aの内周に沿うように円周状に配置されており、ダイヤル27の係合爪27C及び突起27Dは、ダイヤル支持部28の被係合孔28bに沿うように円周状に配置されているため、ダイヤル27の円滑な回動を可能にしている。更に、被係合孔28bには図示せぬ段差が設けられており、被係合孔28bに挿入された係合爪27Cが当該段差と係合することにより、ダイヤル27の上下方向の移動が規制されている。
ボール28Aは、バネ挿入孔28aに挿入されたバネ28Bによって上方に付勢されているため、ダイヤル27を回転させることにより、ボール28Aは、その一部が貫通孔27a内に嵌る。各貫通孔27aは、後述する電子パルスモードにおける複数のモードに対応しているので、作業者は、ボール28Aの一部が貫通孔27a内に嵌った感触等により、モードが切り替わったことを認識することができる。一方、LED受孔28cには、基板26上のLED26Bが挿入されているため、ボール28Aの一部が貫通孔27a内に嵌った際に、LED26Bは、ボール28Aの一部が嵌っている貫通孔27aとは係合孔27bに対してダイヤル27上で180度異なった対極に位置する貫通孔27aを通って、ダイヤルシール29を下側から照射することができる。
ダイヤルシール29は、ダイヤル27の上面に貼られている。図5に示すように、ダイヤルシール29には、電子パルスドライバ1で選択可能なクラッチモード、ドリルモード、テクスモード、ボルトモード、パルスモードが透明な文字で記載されている。各モードの動作は後述する。所望のモードがLED26Bの下に位置するようにダイヤル27を回転させることで、各モードを選択できる。このとき、LED26Bの光はダイヤルシール29上の透明な文字を照らし出すため、作業者は暗所の作業時であっても現在設定されているモード及びダイヤル27の場所を認識することができる。
図1に戻って、再び、電子パルスドライバ1の構成について説明する。図1に示すように、モータ3は、出力軸31を有するロータ3Aと、ロータ3Aと対向配置されたステータ3Bとから主に構成されるブラシレスモータであり、出力軸31の軸方向が前後方向と一致するように胴体部21内に配置されている。図6に示すように、ロータ3Aは複数組(本実施の形態では2組)のN極とS極を含む永久磁石3Cを有し、ステータ3Bはスター結線された3相の固定子巻線U、V、Wである。固定子巻線U、V、Wに流れる電流を制御することで、固定子巻線U、V、WのS極とN極を切替えてロータ3Aを回転させる。図6に示す状態は、永久磁石3Cと固定子巻線U、V、Wとが互いに引き付けあっている。この状態を維持するように固定子巻線U、V、Wを制御することで、ロータ3Aをステータ3Bに対して静止させることができる。出力軸31は、ロータ3Aの前後に突出しており、その突出した箇所でベアリングにより胴体部21に回転可能に支承されている。出力軸31の前側に突出している箇所には、出力軸31と同軸一体回転するファン32が設けられており、当該箇所の最前端位置には、ピニオンギヤ31Aが出力軸31と同軸一体回転するように設けられている。
モータ3の後方には、電気素子を搭載するための回路基板33が配置されている。図7に示すように、回路基板33の中央には、貫通孔33aが形成されており、出力軸31が貫通孔33aを貫通する。回路基板33の前面には、前方に突出するように3つの回転位置検出素子(ホール素子)33Aと、サーミスタ33Bと、が設けられており、回路基板33の後面には、図7の点線で示す位置に、インバータ回路6を構成する6つのスイッチング素子Q1〜Q6が設けられている。回転位置検出素子33Aは、ロータ3Aの位置を検出するためのものであって、ロータ3Aの永久磁石3Cに対向する位置に設けられており、ロータ3Aの周方向に所定の間隔毎(例えば角度60°毎)に配置されている。サーミスタ33Bは、周囲の温度を検出するためのものであって、図7示すように、左右のスイッチング素子から等間隔な位置に配置されており、また、後方から見た際に、ステータ3Bの固定子巻線U、V、Wと重なるように配置されている。回転検出素子33A、スイッチング素子Q1〜Q6、及びモータ3は、温度上昇が最も大きい部材であり温度上昇によって破損し易いため、回転検出素子33A、スイッチング素子Q1〜Q6、及びモータ3の近傍にサーミスタ33Bを配置することで正確に回転検出素子33A、スイッチング素子Q1〜Q6、及びモータ3の温度上昇を検出することができる。
ハンマ部4は、ギヤ機構41と、ハンマ42と、付勢バネ43と、規制バネ44と、第1環状部材45と、第2環状部材46と、ワッシャ47と、軸受け48と、から主に構成されており、ハンマケース23内のモータ3の前側に内蔵されている。ギヤ機構41は、1段遊星歯車機構であり、アウターギヤ41Aと、2つの遊星歯車41Bと、スピンドル41Cとを備えている。アウターギヤ41Aは、胴体部21内に固定されている。
2つの遊星歯車41Bは、太陽ギヤとしてのピニオンギヤ31Aの周囲にピニオンギヤ31Aと噛合するように配置され、かつ、アウターギヤ41A内にアウターギヤ41Aと噛合するように配置されている。また、2つの遊星歯車41Bは、太陽ギヤを有するスピンドル41Cに固定されている。このような構成により、ピニオンギヤ31Aの回転に伴い、2つの遊星歯車41Bは、ピニオンギヤ31Aの周りを公転し、その公転により減速された回転がスピンドル41Cに伝達される。
ハンマ42は、ギヤ機構41の前側に配置されており、スピンドル41Cと一体回転可能かつ前後方向に移動可能に構成されている。ハンマ42は、図8に示すように、回転軸に対して対極に配置され前側に向けて突出した第1係合突起42A及び第2係合突起42Bを有している。ハンマ42の後部には、規制バネ44が挿入されるバネ受部42Cが設けられている。
図1に示すように、付勢バネ43の先端はハンマ42と接続されており、後端はギヤ機構41の前端と接続されているため、ハンマ42は、常に前方に付勢されていることとなる。一方、本実施の形態のハンマ部4は、規制バネ44も備えている。図8に示すように、規制バネ44は、ワッシャ47及び軸受け48を介してバネ受部42Cに挿入され、その先端はハンマ42と当接し、後端は第1環状部材45と当接している。
第1環状部材45は略環状であって、台形状の複数の第1凸部45Aと、突起部45Bとを有している。複数の第1凸部45Aは、後方に突出しており、円周方向に90°毎に4箇所に配置されている。突起部45Bは、下方に突出しており、図1に示すように、第2孔23b内に挿入されている。第2孔23bは、円周方向における長さが突起部25Bと略同一の長さになるように形成され、かつ、前後方向における長さが突起部25Bよりも長くなるように形成されているため、第1環状部材45は、円周方向に移動不能かつ前後方向に移動可能に構成されている。
第2環状部材46は略環状であって、台形状の複数の第2凸部46Aと、操作部46Bとを有する。複数の第2凸部46Aは、前方に突出しており、円周方向に90°毎に4箇所に配置されている。操作部46Bは、上方に突出しており、図1に示すように、第1孔21aを通って外部に露出している。第1孔21aは、円周方向における長さが操作部46Bよりも長くなるように形成され、かつ、前後方向における長さが操作部46Bと略同一の長さになるように形成されているため、作業者は操作部46Bを操作することで第2環状部材46を円周方向に回転させることができる。
操作部46Bが操作されていない状態では、第1凸部45Aと第2凸部46Aとは回転軸方向(前後方向)から見て互いに円周方向にずれた位置にあるため、図9に示すように、規制バネ44は、最も伸びた状態、すなわち、ハンマ42が付勢バネ43の付勢力に抗して後方に移動する余地を残していることとなる。この場合には、図9に示すように、第1環状部材45の突起部45Bと切替スイッチ23Aとは接触していない。一方、操作部46Bが操作されると、第2環状部材46が回転して第1凸部45Aが第2凸部46A上に乗り上がることにより、第1環状部材45が規制バネ44の付勢力に抗して前方に移動するので、規制バネ44は、最も縮んだ状態、すなわち、ハンマ42が前後方向に移動不能な状態となる。この場合には、規制バネ44の収縮により、図1に示すように、突起部45Bと切替スイッチ23Aとが当接することとなる。
図1に戻って、再び、電子パルスドライバ1の構成について説明する。アンビル部5は、ハンマ部4の前方に配置されており、先端工具装着部51と、アンビル52とから主に構成されている。先端工具装着部51は、円筒状に構成され、ハンマケース23の開口23a内にメタル23Aを介して回転可能に支持されている。先端工具装着部51には、図示せぬビットが挿入される穿孔51aが前後方向へ穿設されている。
アンビル52は、先端工具装着部51の後方であってハンマケース23内に先端工具装着部51と一体に構成されており、先端工具装着部51の回転中心に対して対極に配置され後側に向けて突出した第1被係合突起52A及び第2被係合突起52Bを有している。ハンマ42が回転すると、第1係合突起42Aと第1被係合突起52Aとが衝突すると同時に、第2係合突起42Bと第2被係合突起52Bとが衝突し、ハンマ42とアンビル52とが供回りする。これによってハンマ42の回転力がアンビル52に伝達される。詳細なハンマ42とアンビル52の動作は後述する。
インバータ回路6は、3相ブリッジ形式に接続されたFET等の6個のスイッチング素子Q1〜Q6から構成されている(図10参照)。
制御部7は、電池24に接続されると共にライト2A、スイッチ2B、正逆切替レバー2C、切替スイッチ23A、トリガ25、ジャイロセンサ26A、LED26B、ダイヤル位置検出素子26D、ダイヤル27、及びサーミスタ33Bに接続されている。また、制御部7は、電流検出回路71と、スイッチ操作検出回路72と、印加電圧設定回路73と、回転方向設定回路74と、回転子位置検出回路75と、回転数検出回路76と、打撃衝撃検出回路77と、演算部78と、制御信号出力回路79と、を備えている(図10参照)。
次に、モータ3の駆動制御系の構成を図10に基づき説明する。本実施の形態では、モータ3は、3相のブラシレスDCモータである。インバータ回路6の各スイッチング素子Q1〜Q6のゲートは、制御部7の制御信号出力回路79に接続され、各スイッチング素子Q1〜Q6のドレイン又はソースは、ステータ3Bの固定子巻線U、V、Wに接続されている。6個のスイッチング素子Q1〜Q6は、制御信号出力回路79から入力されるスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、インバータ回路6に印加される電池24の直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに電力を供給する。詳細には、制御信号出力回路79から正電源側スイッチング素子Q1、Q2、Q3に入力される出力切替信号H1、H2、H3により、通電される固定子巻線U、V、W、すなわち、ロータ3Aの回転方向が制御される。また、制御信号出力回路79から負電源側スイッチング素子Q4、Q5、Q6に入力されるパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6により、固定子巻線U、V、Wへの電力供給量、すなわち、ロータ3Aの回転速度が制御される。
電流検出回路71は、モータ3に供給される電流値を検出し、演算部78に出力する。スイッチ操作検出回路72は、トリガ25の操作の有無を検出して演算部78に出力する。印加電圧設定回路73は、トリガ25の操作量に応じた信号を演算部78に出力する。
回転方向設定回路74は、正逆切替レバー2Cの切り替えを検出すると、モータ3の回転方向を切り替えるための信号を演算部78に送信する。
回転子位置検出回路75は、回転位置検出素子33Aからの信号に基づきロータ3Aの回転位置を検出し、演算部78に出力する。回転数検出回路76は、回転位置検出素子33Aからの信号に基づきロータ3Aの回転数を検出し、演算部78へ出力する。
また、電子パルスドライバ1には、アンビル52に発生する衝撃の大きさを検出する打撃衝撃検出センサ80が設けられており、打撃衝撃検出回路77は、打撃衝撃検出センサ80からの信号を演算部78に出力する。
演算部78は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)と、処理プログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、タイマとを備えている。演算部78は、回転方向設定回路74と回転子位置検出回路75からの信号に基づき、出力切替信号H1、H2、H3を、印加電圧設定回路73からの信号に基づきパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6を生成し、制御信号出力回路79に出力する。なお、PWM信号を正電源側スイッチング素子Q1〜Q3に出力し、出力切替信号を負電源側スイッチング素子Q4〜Q6に出力してもよい。
また、演算部78には、スイッチ2Bからのオン・オフ信号及びサーミスタ33Bからの温度信号が入力され、これらに基づいて、ライト2Aの点灯、点滅、消灯を制御することにより、ハウジング2内の温度上昇を作業者に報知する。
また、演算部78は、突起部45Bが切替スイッチ23Aと当接して信号が入力されることにより、作業モードを後述の電子パルスモードに切替える。また、演算部78は、トリガ25が引かれて信号が入力されることにより、所定時間LED26Bを点灯させる。
さらに、演算部78には、ジャイロセンサ26Aからの信号も入力されており、ジャイロセンサ26Aの速度を検出することによってモータ3の回転方向を制御する。詳細な動作は後述する。
さらに、演算部78には、ダイヤル27の円周方向の位置を検出するダイヤル位置検出素子26Dからの信号が入力される。演算部78は、ダイヤル位置検出素子26Dからの信号によって各モードの切替を行う。
次に、本実施の形態による電子パルスドライバ1において使用可能な動作モード及び制御部7の制御について説明する。本実施の形態による電子パルスドライバ1は、インパクトモード、電子パルスモードの2つのモードを備えており、操作部46Bを操作して切替スイッチ23Aと突起部45Bとを接触、非接触させることによりモード切替が可能である。
インパクトモードとは、モータ3を正転方向のみに回転させることにより、ハンマ42にアンビル52を打撃させるモードであり、具体的には、所定トルクまではハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させて、所定トルク以上になるとハンマ42はアンビル52を打撃するといった構成を付勢バネ43に蓄えられた弾性エネルギーにより実現するモードである。インパクトモード時には、操作部46Bは図9に示す状態にあり、切替スイッチ23Aと突起部45Bとは非接触且つ、ハンマ42は後方に移動可能である。インパクトモードでは、電子パルスモードと比較して大きなトルクで留め金具を締結することができるが、締結作業時の音が大きくなる。これは、ハンマ42がアンビル52と衝突する際、ハンマ42は付勢バネ43によって前方に押されながらアンビル52と衝突するため、アンビル52は回転方向の衝撃だけでなく前後方向(軸方向)にも衝撃を受けることとなり、この軸方向の衝撃が、加工部材を介して反響するためである。インパクトモードは主に屋外での作業時や大きなトルクが必要となる場合に使用される。
インパクトモードでは、モータ3が回転すると、その回転はギヤ機構41を介してハンマ42に伝達される。これによってアンビル52もハンマ42と供回りする。締結作業が進んでアンビル52のトルクが所定値以上になると、ハンマ42はハンマ42が付勢バネ43の付勢力に抗して後退する。このとき、ハンマ42は回転せず、スピンドル41Cのみが回転し、この回転エネルギーは付勢バネ43に弾性エネルギーとして蓄えられる。そして、第1係合突起42Aが第1被係合突起52Aを乗り越えるとともに、第2係合突起42Aが第2被係合突起52Bを乗り越えた瞬間に、付勢バネ43に蓄えられた弾性エネルギーが解放されて、第1係合突起42Aが第2被係合突起52Bと衝突すると同時に、第2係合突起42Aが第1被係合突起52Aと衝突する。このような構成により、モータ3の回転力をアンビル52に打撃力として伝達している。なお、ユーザは、突起部45Bの位置によってインパクトモードに設定されていることを認識することができる。また、本実施の形態では、インパクトモードに設定されている場合には、LED26Bを点灯させないので、そのことによってもインパクトモードに設定されていることを認識することができる。
電子パルスモードとは、モータ3の回転速度及び回転方向(正転・逆転)を制御することにより、留め金具に応じた締結を行うモードである。電子パルスモード時には、操作部46Bは図1に示す状態にあり、切替スイッチ23Aと突起部45Bとが接触している。この時、ハンマ42は前後方向に移動不能であるため、ハンマ42は常にスピンドル41Cと一体回転する。電子パルスモードでは、インパクトモードと比較して留め金具を締結するトルクは小さくなるが、締結作業時の音も小さくなる。これは、ハンマ42は前後方向に移動不能であるため、ハンマ42がアンビル52と衝突する際、アンビル52は回転方向の衝撃のみを受け、軸方向の衝撃が加工部材を介して反響することがないからである。従って、電子パルスモードは主に屋内での作業時に使用される。このように、本実施の形態の電子パルスドライバ1では、操作部26Bを操作することにより上記インパクトモードと電子パルスモードとを容易に切り替えることができるので、作業場所や必要トルクに応じたモードで作業を行うことが可能となる。
次に、電子パルスモードの有する5つのモードを図11〜15に基づいて説明する。電子パルスモードは、更に、ドリルモード、クラッチモード、テクスモード、ボルトモード、パルスモードの5つの動作モードを備えており、ダイヤル27を操作することでモードの切り替えが可能である。以下の説明では、電流に基づく判断には起動電流を考慮しないこととする。また、正転の電流を与えた際の電流値の急激な上昇も考慮しないこととする。例えば、図11〜15において示されるような正転電流を与えた際の電流値の急激な上昇は、ネジ又はボルト締付に寄与しないためである。この電流値の急激な上昇は、例えば約20msの不感時間を設けることによって、考慮しないようにすることができる。
ドリルモードとは、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させるモードであって、主に、木ネジを締結する場合等に用いられる。モータ3に流れる電流は、図11に示すように、締結が進むにつれて増加する。
クラッチモードとは、図12に示すように、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が目標値(目標トルク)まで増加した場合にモータ3の駆動を停止させるモードであって、主に、締結後に外観に現れる留め金具を締結する場合等、正確なトルクで締結することを重要視する場合に用いられる。図5に示すクラッチモードの数字によって、目標値(目標トルク)を変えることができる。
クラッチモードでは、トリガ25が引かれると(図12のt1)プレスタートを開始する。プレスタートでは、ハンマ42とアンビル52とを互いに接触させるために、制御部7は所定時間(図12のt2)プレスタート用電圧(例えば1.5V)をモータ3に印加する。トリガ25がひかれた時点ではハンマ42とアンビル52は離れている可能性があり、その状態でモータ3に電流が流れると、ハンマ42によってアンビル52に打撃が加えられることとなる。この打撃によって、ハンマ42とアンビル52とが衝突して目標値(目標トルク)に到達してしまう可能性がある。本実施の形態では、プレスタートを行ってハンマ42とアンビル52との衝突を防止することにより、モータ3に流れる電流が瞬時に目標値(目標トルク)までで到達することを防止できる。
留め金具が、加工部材に着座すると電流値が急激に上昇する(図12のt3)。この電流値が閾値Aを越えると、制御部7は留め金具へのトルク供給を停止させる。しかしながら、ボルトを締結する場合、急激に電流が増加しているので、単に正転電圧の印加を停止しただけでは慣性力によってボルトにトルクを与えてしまう虞がある。従って、ボルトへのトルクの供給を停止させるために、ブレーキ用逆転電圧をモータ3に印加する。
続いて、モータ3に擬似クラッチ用正転電圧及び逆転電圧を交互に印加する(図12のt4)。本実施形態では、擬似クラッチ用正転電圧及び逆転電圧印加時間は1000ms(1秒)に設定されている。擬似クラッチは、所定の電流値に達することによって所望のトルクとなったことを作業者に知らせる機能を有する。実際には、モータ3からの出力がなくなるわけではないが、擬似的にモータ3からの出力がなくなったことを報知する。
擬似クラッチ用逆転電圧が印加されるとハンマ42はアンビル52から離れ、擬似クラッチ用正転電圧が印加されるとハンマ42はアンビル52を打撃することになるが、擬似クラッチ用正転電圧及び逆転電圧は、留め金具に締結力を与えない程度の電圧(例えば、2V)に設定されているため、打撃音として擬似クラッチが発生するだけである。この擬似クラッチの発生により、作業者は締結の終了を認識することが可能となる。t4の期間擬似クラッチが動作した後、モータ3は自動的に停止する(図12のt5)。
テクスモードとは、図13Aに示すように、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が所定値(所定トルク)まで増加した場合にモータ3の正転及び逆転を交互に切り換えて打撃によりドリルネジを締結するモードであって、主に、留め金具を鉄板に締結する場合に用いられる。ドリルネジとは、ネジの先端に鉄板に孔を開けるドリルの刃が設けられているネジのことであり、ネジ頭53Aと、座面53Bと、ネジ部53Cと、ネジ先53Dと、ドリル53Eとから構成される(図13B)。
テクスモードでは、正確なトルクで締結することを重要視していないので、プレスタートは省略される。まず、図13Bの(a)に示すような鉄板Sとドリルネジ53のドリル53Eとが接触した状態では、ドリル53Eで鉄板Sに下穴を開ける必要があるため、モータ3を回転数a(例えば、17000rpm)で高速回転させる(図13Aの(a))。そして、ドリルネジ53の先端が鉄板に食込み、ネジ先53Dが鉄板Sにさしかかると(図13Bの(b))、ネジ部53Cと鉄板Sとの摩擦が抵抗となって電流値が上昇する。電流値が閾値C(例えば、11A)を超えると(図13Aのt2)、第1パルスモードに移行し、正転と逆転とを繰り返す(図13Aの(b))。ここで、本実施の形態では、第1パルスモード時には、回転数aよりも低い回転数b(例えば、6000rpm)でモータ3を正転させる。そして、座面53Bが鉄板Sに着座すると(図13Bの(c))、電流値は急激に上昇する。ここで、本実施の形態では、電流の増加率が所定値を超えると第2パルスモードに移行する(図13Aのt3)。第2パルスモード時には、回転数bよりも低いに回転数c(例えば、3000rpm)でモータ3を正転させる。これにより、ビットがドリルネジ53に与えるトルクが過大になることによるドリルネジ53の破損やドリルネジ53の頭をなめることを防止することができる。
ボルトモードとは、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が所定値(所定トルク)まで増加した場合にモータ3の正転及び逆転を交互に切り換えて打撃により留め金具を締結するモードであって、主にボルト締結時に用いられる。
ボルトモードでは、正確なトルクで締結することを重要視していないので、クラッチモードにおけるプレスタートに相当する動作は省略される。ボルトモードでは、トリガ25が引かれた後(図14のt1)モータ3の電流値が閾値Dを越えると、モータ3に所定の間隔でボルトモード用電圧を印加する(図14のt2)。ボルトモード用電圧の印加によってアンビル52を正転、逆転させることでボルトの締結を行う。ボルトモード用電圧は、反動を軽減するためにネジなめ防止用電圧と比較すると正転時間が短くなっている。トリガ25をオフすることにより、モータ3が停止する。
パルスモードとは、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が所定値(所定トルク)まで増加した場合にモータ3の正転及び逆転を交互に切り換えて打撃により留め金具を締結するモードであって、主に、外観に現れない場所で用いられる長尺のネジを締結する場合等に用いられる。これにより、強力な締結力を供給することができると同時に、被加工部材からの反発力を低減することができる。
しかしながら、締結終盤には留め金具の抵抗が大きくなるためモータ3はより大きなトルクを出力することとなり、これに伴い、打撃時に電子パルスドライバ1に発生する反動も大きくなる。そして、反動が大きくなると、ハンドル部22は、モータ3の出力軸31を中心軸としてモータ3の回転方向とは逆方向に回転してしまい、作業性の悪化を招いてしまう。そこで、本実施の形態では、ハンドル部22に内蔵したジャイロセンサ26Aにより、ハンドル部22の出力軸31を中心軸とした円周方向の移動速度、すなわち、電子パルスドライバ1に発生した反動の大きさを検出し、ジャイロセンサ26Aによる検出速度が後述の閾値a以上になると、反動を抑えるためにモータ3を逆方向に回転させる。
本実施の形態によるパルスモードでの動作を、図15〜16に基づいて説明する。パルスモードにおいても、プレスタートに相当する動作は省略される。
図16のフローチャートでは、制御部7は、まず、トリガ25が引かれたか否かを判断し(S1)、トリガ25が引かれると(図15のt1、S1:YES)、モータ3の正転を開始させる(S2)。続いて、ジャイロセンサ26Aの速度が閾値a(本実施の形態では、8m/s)を超えたか否かを判断し(S3)、閾値aを超えた場合には(図15のt2、S3:YES)、モータ3を所定時間休止させた後(S4)、モータ3の逆転を開始させる(図15のt3、S5)。続いて、ジャイロセンサ26Aの速度が閾値b(本実施の形態では、3m/s)未満まで低下したか否かを判断し(S6)、閾値b未満まで低下していた場合には(図15のt4、S6:YES)、モータ3を所定時間休止させた後(S7)、S1に戻ってモータ3の正転を再開させる(図15のt5以降)。
このような構成によれば、ジャイロセンサ26Aの速度が閾値aを超えた場合にモータ3を逆転させるので、電子パルスドライバ1に発生する反動を抑制することができる。また、モータ3の電流値が所定値を超えた場合に正転から逆転への切り替えを行う制御も考えられるが、そのような制御では、所定値が小さい場合には、締付力が弱くなり、所定値が大きい場合には、大きな反動が生じることとなる。しかしながら、本実施の形態では、ジャイロセンサ26Aの出力が閾値aを超えた場合に反動の許容範囲を超えたものと判断してモータ3を逆転させているため、反動の許容範囲において最大の締付力を得ることができる。
次に、電子パルスモードにおけるすべての動作モードに共通するトリガ25の引き代によるモータ3の制御について図17〜18に基づいて説明する。
通常、トリガ25は、引かれた量が大きくなるほどインバータ回路6へ出力するPWM信号のデューティも大きくなるように構成されている。しかしながら、加工部材の表層に薄いシートが貼られている場合には、留め金具が加工部材に着座した瞬間に薄いシートが破れる虞がある。これを防止するために、作業者は着座の直前に電動ドライバを手動ドライバに持ち替えて手動で留め金具を締め込んでいたが、これにより作業効率の低下を招いていた。そこで、本実施の形態の電子パルスドライバ1では、トリガ25の引き代が所定区間にある場合に、インバータ回路6へ一定のデューティのPWM信号を出力することにより、電子パルスドライバ1を用いて手動で留め金具を締結することを可能にしている。
図17Aは、電子パルスドライバ1のトリガ25の引き代とモータ3の制御との関連性を説明する図であり、図17Bは、電子パルスドライバ1のトリガ25の引き代とPWMデューティとの関連性を説明する図である。トリガ25の引き代には、第1区間と、第2区間と、第3区間とが設けられており、第1区間及び第2区間は、第3区間の途中に存在する。第3区間は従来通りの制御を行う区間であり、第3区間からトリガ25を所定量引くことによって第1区間となり、第1区間から更に僅かにトリガ25を引くと第2区間となる。なお、図17Bには第2区間は図示していない。
トリガ25の引き代が第1区間にある場合には、モータ3のトルクは一定となる。この状態で、作業者がモータ3のトルクと略同一のトルクで電子パルスドライバ1を出力軸31を中心軸として回転させると、留め金具を締め込むトルクとモータ3のトルクが互いに釣り合っているため、モータ3は回転せず、手動により留め金具を締め込むことができる(図17Aの(a))。しかしながら、ある程度留め金具を締め込むと、手動で回転させることが困難な位置まで電子パルスドライバ1は移動する(図17Aの(b))。ここで、本実施の形態では、第1区間から僅かにトリガ25が引かれた第2の区間では、モータ3を低速で逆回転させる。操作者は、手動で電子パルスドライバ1を回転させて図17Aの(b)の状態になった時に更に僅かにトリガ25を引くと、トリガ25の引き代は第2区間に入り、モータ3は低速で逆回転する。このとき、モータ3の速度と略同一の速度で作業者が電子パルスドライバ1を出力軸31を中心軸として逆回転させることで、留め金具が回転させることなく、図17Aの(c)の状態まで電子パルスドライバ1の位置を戻すことができる(図17Aの(e))。なお、本実施の形態では、第2区間でトリガ25の引き代を保持可能とするための保持機構を備えているため、トリガ25の引き代を第2区間に保持することが容易となる。そして、トリガ25の引き代を第1区間に戻すことで、再びモータ3のトルクは一定となり、手動で留め金具を締め込むことが可能となる(図17Aの(c))。このように、本実施の形態による電子パルスドライバ1では、トリガ25の引き代を調整することで、電子パルスドライバ1をラチェットレンチのように使用することが可能となる。また、第1区間の設定トルク(デューティー比)は、図示せぬダイヤルによって変更することができる。これにより、加工部材の硬さに応じたトルクで締結作業を行うことが可能となる。
図18は、トリガ25の引き代に応じたモータ3の制御を示すフローチャートである。図18のフローチャートは、電池24が装着されるとスタートする。まず、制御部7は、トリガ25がオンされたか否かを判断する(S21)。トリガ25がオンされている場合には(S21:YES)、トリガ25の引き代が第1区間内か否かを判断する(S22)。トリガ25の引き代が第1区間内でない場合には(S22:NO)、トリガ25の引き代の応じたデューティ比でモータ3を駆動し(S26)、S22に戻る。トリガ25の引き代が第1区間内の場合には(S22:YES)、予め設定された設定デューティ比でモータ3を駆動し(S23)、その後、トリガ25の引き代が第2区間か否かを判断する(S24)。トリガ25の引き代が第2区間でない場合には(S24:NO)、再びS22に戻る。トリガ25の引き代が第2区間である場合には(S24:YES)、モータ3は低速で逆回転し(S25)、S24に戻る。
このような構成により、表層に薄いシートが貼られている加工部材に留め金具が加工部材を締結する場合であっても、着座時にドライバなどの手動工具に持ち替える必要がなく、トリガ25の操作のみで手動で留め金具を締結することができるので、作業効率を向上させることが可能となる。なお、本実施の形態では、第2区間でモータ3を逆転させることにより電子パルスドライバ1をラチェットレンチのように使用可能にしたが、そのような構成でなくても、操作者がトリガ25を微調整することによっても同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ201について、図19に基づいて説明する。第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第1の実施形態では、手動で留め金具を締結する際はトリガ25の引き代を調整していたが、第2の実施形態では、トリガ25をオフした後に所定時間モータ3を電気的にロックすることで手動での締付け動作を可能にしている。
図19は、トリガ25のオフの時の制御を示すフローチャートである。図19に示すフローチャートは電池24が装着されるとスタートする。まず、制御部7は、トリガ25がオンされたか否かを判断する(S201)。トリガ25がオンされている場合には(S201:YES)、設定されているモードに応じてモータ3を作動させ(S202)、その後、トリガ25がオフされたか否かを判断する(S203)。トリガ25をオフするとは、クラッチモード時におけるモータ3の自動停止(図12のt5)も含む。トリガ25がオフされた場合には(S203:YES)、モータ3をロックする。具体的には、図6に示すように、永久磁石3CのN極に対向する位置にS極が、永久磁石3CのS極に対向する位置にN極が来るように固定子巻線U、V、Wに流れる電流を制御する。このときのデューティ比は100%である。これにより、モータ3が電気的にロックされる。その後、トリガ25オフ(S203:YES)から所定時間が経過したか否かを判断する(S205)。所定時間が経過していない場合は(S205:NO)、S204に戻る。所定時間が経過すると(S205:YES)、モータ3のロックは解除される。
このような構成により、作業者はトリガ25をオフするだけで、手動で留め金具を締結することが可能になる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ301について、図20から21に基づいて説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第2の実施形態ではトリガ25をオフした後に所定時間モータ3を電気的にロックしていたが、第3の実施形態ではトリガ25をオフした後にモータ3の回転を検出して回転を妨げるような制御を行う。
図20は、トリガ25のオフ時のモータ3の回転を説明する図である。図20(a)は、トリガ25をオンした後にトリガ25をオフにした状態で、モータ3は停止している。この状態で、図20(b)のように、電子パルスドライバ301を正転方向に回転させたとしても、モータ3が停止しているため、ロータ3Aはほぼ回転しない。しかしながら、ハンドル部22から見れば、ロータ3Aが逆転方向に回転しているものと考えられるため、本実施の形態では、この回転を検出し、回転を妨げる方向、すなわち、正転方向にロータ3Aを回転させるような電流をモータ3に供給する。さらに、図20(c)に示すように、ハンドル部22を回転させている間はモータ3のオン・オフを繰り返して両トルクの釣り合いが取れている状態を維持する。これにより、固定子巻線U、V、Wに電流を流すことによってロータ3Aが回転するトルクと、留め金具からの反力とが釣り合い、ロータ3Aはハンドル部22に対して回転していない状態となるので、作業者はハンドル部22を回転させることによって、手動で留め金具の締結を行うことができる。
図21は、トリガ25のオフの時の制御を示すフローチャートである。図21のフローチャートは、電池24が装着されるとスタートする。まず、制御部7は、トリガ25がオンされたか否かを判断する(S201)。トリガ25がオンされている場合には(S201:YES)、設定されているモードに応じてモータ3を作動させ(S202)、その後、トリガ25がオフされたか否かを判断する(S203)。トリガ25がオフされた場合には(S203:YES)、回転位置検出素子33Aからの信号によってモータ3が回転したか否かを判断する(S301)。モータ3が回転した場合(S301:YES)、モータ3に回転を妨げるような電流を供給する(S302)。具体的には、図20(b)、(c)に示すように、永久磁石3CのN極に対向する位置にS極が、永久磁石3CのS極に対向する位置にN極が来るように固定子巻線U、V、Wに流れる電流を制御する。その後、トリガ25オフ(S203:YES)から所定時間が経過したか否かを判断する(S303)。所定時間が経過していない場合は(S303:NO)、S301に戻る。所定時間が経過すると(S303:YES)、モータ3を停止させる(S302)。
次に、本発明の第4の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ401について、図22に基づいて説明する。第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第1の実施形態では、モータ3からの回転はギヤ機構41を介してスピンドル41C及びハンマ42に伝達されていたが、第4の実施形態では、ギヤ機構及びスピンドルを介することなく、モータ403からの出力はハンマ442に伝達される。
第1の実施形態の構成では、ギヤ機構41がハウジング2と接続されているため、モータ3がギヤ機構41を回転させることによって生じる反作用の力が、電子パルスドライバ1(ハウジング2)に生じていた。より詳細には、ギヤ機構41を介してスピンドル41Cを一方向に回転させたとき、ギヤ機構41により一方向と逆方向の回転力(反作用の力)が電子パルスドライバ1に生じ、この回転力がモータ3の出力軸31の軸芯を回転中心としてハンドル部22を逆方向に回転させていた(反動)。特に、ハンマ42とスピンドル41Cとが常に一体的に回転する電子パルスモード時は、上記の反動がより顕著となる。しかし、第4の実施形態では、ギヤ機構を備えていないため、上記の反作用の力は、永久磁石3Cからハウジング2へステータ3Bを介してソフトに伝達される。従って、電子パルスドライバ401は反動の少ない作業性の優れた電動工具となる。さらに、反動がなくなり軽快に締結作業を行うことができるため、パルスの打撃数を減らすことができ、消費電力を抑えることができる。
図22に示すように、ハウジング2内には、インナーカバー429が設けられている。モータ403には、ロータ403Aと、ステータ403Bと、前後方向に延びる出力軸431とから主に構成されるブラシレスモータである。出力軸431の先端には棒状部材434が同軸回転可能に設けられている。棒状部材434は、インナーカバー429に回転可能に支承されている。棒状部材434の先端にはハンマ442が固定されており、棒状部材434はハンマ442と一体回転するように構成されている。ハンマ442は、第1係合突起442A及び第2係合突起442Bを有している。ハンマ442の第1係合突起442A及び第2係合突起442Bは、それぞれアンビル52の第1被係合突起52A及び第2被係合突起52Bと共に回転することによってアンビル52に回転力を付与し、互いに衝突することによってアンビル52に打撃力を付与している。
ここで、本実施の形態では、ギヤ機構(減速機)を備えていないため、モータ403は、最初から回転速度の遅いものを用いている。しかしながら、このような構成において、第1の実施の形態のように出力軸431上にファンを設けたとしても、回転速度が遅いため、十分な冷却効果は得られない。また、本実施の形態では、ギヤ機構(減速機)を備えていないため、モータ403は、最初から出力トルクの大きなものを用いている。そのため、本実施の形態のモータ403は、第1の実施形態のモータ3と比較すると大きなサイズを有していることとなり、第1の実施の形態よりも大きな冷却力を必要とすることとなる。
そこで、本実施の形態では、ハンドル部22の下部にファン432を設け、モータ403の回転とは無関係に回転させる。詳細には、ファン432は、制御部7に接続されており、制御部7は、トリガ25が引かれるとファン432が回転し、トリガ25がオフになるとファン432が停止するような制御を行う。また、本実施の形態では、ハンドル部22の下部には吸気口434が、胴体部21の上部には排気口435が形成されており、図22の矢印のように空気が移動する。このような構成により、モータ403の回転速度が遅く、かつ、モータ403のサイズが大きな場合であっても、十分な冷却効果を発揮させることが可能となる。更に、ファン432をハンドル部22内に配置することにより、電子パルスドライバ401の胴体部21の前後方向の長さを短くすることもできる。
また、ハンドル部22の外枠には、ファンスイッチ402Dが設けられており、ファンスイッチ402Dを押すことでトリガ25を引くことなくファン432を回転させることができる。これにより、例えば、モータ403の温度上昇がライト2Aによって報知された際、ファンスイッチ402Dを押すことでトリガ25を引くことなくモータ403、基板26、及び回路基板33を強制的に冷却することができる。
次に、本発明の第5の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ501について、図23に基づいて説明する。第1の実施形態及び第4の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
本実施の形態では、ファン532が、胴体部21内のモータ403の後方に設けられている。ファン532は、制御部7と接続されており、制御部7は、トリガ25が引かれるとファン532が回転し、トリガ25がオフになるとファン532が停止するように制御する。また、図1及び図2と同様に、胴体部21の後端及び後部には外気を導入するための吸気口21bが、胴体部21の中央部には外気を導入するための排気口21c形成されている。このように、ファン532をモータ403の後方に配置することにより、冷却風が直接モータ403に当たるため冷却効率を向上させることが可能となる。
次に、本発明の第6の実施形態に係る電動工具及び動力工具の一例である電子パルスドライバ601について、図24から26に基づいて説明する。第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
本実施の形態では、図24から26に示すように、ハンドル部22に、ダイヤル27の代わりにダイヤル627が設けられている。ダイヤル627の円盤部627Bは透明な部材で構成されており、これにより、LED26Bの光は円盤部627Bを透過してダイヤルシール29を下側から照射することができる。また、円盤部627の下面には複数の凸部627Eが下方に突出するように設けられている。複数の凸部627Eは、貫通孔627aを中心に円周状に等間隔に配置されており、図26に示すように、ダイヤル支持部28のボール28Aが凸部627E同士の間に位置した場合に、電子パルスモードにおける各モードに設定されることとなる。
なお、本発明の電動工具及び動力工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
上述の実施形態では、基板26上にジャイロセンサ26Aを設けてハンドル部22に生じる反動を検出したが、基板26上に位置センサを設けて、ハンドル部22が移動した距離によってハンドル部22に生じる反動を検出しても良い。同様に、ジャイロセンサ26Aの代わりに加速度センサを設けてもよい。
上述の実施形態では、LED26Bは単色LEDを使用したが、フルカラーLEDを設けても良い。その際、ダイヤル27によって設定されたモードによって色を変化させてもよい。また、ダイヤル27にカラーセロハンを張ることによって、各モードの色を変化させてもよい。また、胴体部21に新たに報知ライトを設けて、設定されたモードによって報知ライトの色を変化させても良い。これにより、作業者はより手元に近い位置で設定モードを確認することができる。
第3の実施形態では、モータ3の回転を検出して回転を妨げるような制御を行ったが、ロータ3Aが図20(b)に示す方向に回転した場合のみ上記制御を行って、ロータ3Aが図20(b)に示す方向とは逆方向に回転した場合は図17(b)に示すように留め金具を回転させないようにロータ3Aを制御してもよい。これによって、第1の実施形態のように電子パルスドライバをラチェットレンチのように使用することができる。
第4、5の実施形態では、トリガ25のオフにより自動的にファン432、532が停止したが、トリガ25をオフした時にサーミスタ33Bの検出温度が所定値以上である場合には、温度が所定値以下になるまで自動的にファン432、532を駆動させてもよい。