以下、本発明の第1の実施形態に係る電動工具の一例である電子パルスドライバ1の構成について、図1から図4に基づき説明する。
図1に示すように、電子パルスドライバ1は、ハウジング2と、モータ3と、ハンマ部4と、アンビル部5と、インバータ回路6と、制御部7と、回転位置検出素子(ホール素子)8(図4)から主に構成されている。ハウジング2は樹脂製であって電子パルスドライバ1の外郭を成しており、略筒状の胴体部21と、胴体部21から延出されるハンドル部22とから主に構成されている。
胴体部21内には、その長手方向がモータ3の軸方向と一致するようにモータ3が配置されると共に、モータ3の軸方向一端側に向かってハンマ部4、アンビル部5が並んで配置されている。以下の説明においては、アンビル部5側を前側、モータ3側を後側、モータ3の軸方向と平行な方向を前後方向と定義する。また、胴体部21側を上側、ハンドル部22側を下側、胴体部21からハンドル部22が延びる方向を上下方向と定義する。また、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向と定義する。
胴体部21内の前側位置には、ハンマ部4及びアンビル部5が内蔵される金属製のハンマケース23が配置されている。ハンマケース23は、前方に向かうに従って徐々に径が細くなる略漏斗形状を成しており、前端部分には開口23aが形成され、開口23aを画成する内壁にはメタル23Aが設けられている。
開口23a近傍位置であってハンマケース23の下方位置には、後述の先端工具装着部51に装着されたビットを照射するためのライト2Aが配置されている。また、ライト2Aの下方位置には、後述するモード切り替え及び締付トルク設定のためのダイヤル2Bが回転操作可能に配置されている。ライト2A及びダイヤル2Bは、左右方向における胴体部21の略中央位置にそれぞれ配置されている。また、胴体部21には、後述のファン32により胴体部21内に外気を吸入・排出する図示せぬ吸気口及び排気口が形成されている。更に、胴体部21の上部かつ後側には、後述するドリルモード、クラッチモード、パルスモードのうち、いずれのモードが選択されているかを表示する表示部26が配置されている。
ハンドル部22は、胴体部21の前後方向略中央位置から下側に向けて延出され胴体部21と一体に構成されている。ハンドル部22の内部には、スイッチ機構6が内蔵されると共に、その下端位置にモータ3等に電力を供給する電池24が着脱可能に装着されている。ハンドル部22の上部かつ前側位置には、トリガ25が設けられている。
図1に示すように、モータ3は、出力軸部31を有するロータ3Aと、ロータ3Aと対向配置されたステータ3Bとから主に構成されるブラシレスモータであり、出力軸部31の軸方向が前後方向と一致するように胴体部21内に配置されている。出力軸部31は、ロータ3Aの前後に突出しており、その突出した箇所でベアリングにより胴体部21に回転可能に支承されている。出力軸部31の前側に突出している箇所には、出力軸部31と同軸一体回転するファン32が設けられており、更に、当該箇所の最前端位置には、ピニオンギヤ31Aが出力軸部31と同軸一体回転するように設けられている。
ハンマ部4は、ギヤ機構41と、ハンマ42とから主に構成されており、ハンマケース23内のモータ3の前側に内蔵されている。ギヤ機構41は、2段遊星歯車機構であり、図2に示すように、アウターギヤ41A及び41Bと、それぞれ3つの遊星歯車41C及び41Dと、キャリア41E及び41Fと、を備えている。アウターギヤ41A及び41Bは、ハンマケース23内に固定されている。
1段目の遊星歯車機構について説明する。3つの遊星歯車41Cは、太陽ギヤとしてのピニオンギヤ31Aの周囲にピニオンギヤ31Aと噛合するように配置され、かつ、アウターギヤ41A内にアウターギヤ41Aと噛合するように配置されている。また、3つの遊星歯車41Cは、太陽ギヤを有するキャリア41Eに固定されている。このような構成により、ピニオンギヤ31Aの回転に伴い、3つの遊星歯車41Bは、ピニオンギヤ31Aの周りを公転し、その公転により減速された回転がキャリア41Eの太陽ギヤに伝達される。同様にして、2段目の遊星歯車機構でもモータ3の回転は減速され、ハンマ42に伝達される。
ハンマ42は、ギヤ機構41の前側に配置されており、回転軸に対して対極に配置され、前側に向けて突出した第1係合突起42A及び第2係合突起42Bを有している(図3)。
アンビル部5は、ハンマ部4の前方に配置されており、先端工具装着部51と、アンビル52とから主に構成されている。先端工具装着部51は、円筒状に構成され、ハンマケース23の開口23a内にメタル23Aを介して回転可能に支持されている。先端工具装着部51には、図示せぬビットが挿入される穿孔51aが前後方向へ穿設されており、前端部分には、図示せぬビットを保持するチャック51Aが設けられている。
アンビル52は、先端工具装着部51の後方であってハンマケース23内に先端工具装着部51と一体に構成されており、先端工具装着部51の回転中心に対して対極に配置され後側に向けて突出した第1被係合突起52A及び第2被係合突起52Bを有している。ハンマ42が回転すると、第1係合突起42Aと第1被係合突起52Aとが衝突すると同時に、第2係合突起42Bと第2係合突起52Bとが衝突し、これにより、ハンマ42の回転力がアンビル52に伝達される。
ここで、回転体の有するエネルギーKは、K=Iω2/2の式で表される。このため、モータ3とハンマ42をギヤ機構41で減速させる場合には、モータ3の回転数をハンマ42の回転数よりも大きくすることができる。このため、回転エネルギーKを大きくするためには、モータ3の回転モーメントImをハンマ42の回転モーメントIhに比べて大きくすることで、コンパクトな電動工具とすることができる。そこで、本実施の形態では、図3に示すように、ファン32の後側外周面の周縁に略環形状の錘32Aを設けてロータ3Aの重量及び直径を増加させ、モータ3側の慣性モーメントImをハンマ42の慣性モーメントIhよりも大きくしている。なお、本実施の形態では、ロータ3Aの直径Dは22mmに、ハンマ42の直径dは45mmに設定されている。更に、ハンマ42の前後方向の長さI(26.6mm)よりもロータ3Aの前後方向の長さL(37.1mm)を長く設定することによっても、モータ3側の慣性モーメントImをハンマ42の慣性モーメントIhよりも大きくしている。具体的には、モータ3側の慣性モーメントImを5.8×10−6kg・m2に、モータ3の回転数を0〜17000rpmに、ハンマ42の慣性モーメントIhを1.1×10−5kg・m2、ハンマ42の回転数を0〜1100rpmに設定している。
また、後述するドリルモードでの作業時に最低必要となる慣性モーメントの比率は、Im:Ih=118:1であり、パルスモードでの作業時に最低必要となる慣性モーメントの比率は、Im:Ih=10:1である。従って、これらの比率を満たす範囲でハンマ42のサイズを小型化することで、電子パルスドライバ1全体を小型化することができる。
図4参照に示すように、インバータ回路6は、3相ブリッジ形式に接続されたFET等の6個のスイッチング素子Q1〜Q6から構成されている。
制御部7は、ハンドル部22内の電池24近傍位置に配置された基板に搭載されており、電池24に接続されると共にライト2A、ダイヤル2B、トリガ25、スイッチング基板63、及び、表示部26に接続されている。また、制御部7は、電流検出回路71と、スイッチ操作検出回路72と、印加電圧設定回路73と、回転方向設定回路74と、回転子位置検出回路75と、回転数検出回路76と、打撃衝撃検出回路77と、演算部78と、制御信号出力回路79と、を備えている。
回転位置検出素子8は、ロータ3Aの永久磁石3Cに対向する位置に設けられており、ロータ3Aの周方向に所定の間隔毎(例えば角度60°毎)に配置されている。
次に、モータ3の駆動制御系の構成を図4に基づき説明する。本実施の形態では、モータ3は、3相のブラシレスDCモータであり、ロータ3Aは複数組(本実施の形態では2組)のN極とS極を含む永久磁石を有し、ステータ3Bはスター結線された3相の固定子巻線U、V、Wである。
インバータ回路6の各スイッチング素子Q1〜Q6のゲートは、制御部7の制御信号出力回路79に接続され、各スイッチング素子Q1〜Q6のドレイン又はソースは、ステータ3Bの固定子巻線U、V、Wに接続されている。6個のスイッチング素子Q1〜Q6は、制御信号出力回路79から入力されるスイッチング素子駆動信号によってスイッチング動作を行い、インバータ回路66に印加される電池24の直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに電力を供給する。詳細には、制御信号出力回路79から正電源側スイッチング素子Q1、Q2、Q3に入力される出力切替信号H1、H2、H3により、通電される固定子巻線U、V、W、すなわち、ロータ3Aの回転方向が制御される。また、制御信号出力回路79から負電源側スイッチング素子Q4、Q5、Q6に入力されるパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6により、固定子巻線U、V、Wへの電力供給量、すなわち、ロータ3Aの回転速度が制御される。
電流検出回路71は、モータ3に供給される電流値を検出し、演算部78に出力する。スイッチ操作検出回路72は、トリガ25の操作の有無を検出して演算部78に出力する。印加電圧設定回路73は、トリガ25の操作量に応じた信号を演算部78に出力する。
また、電子パルスドライバ1には、モータ3の回転方向を切替えるための図示せぬ正逆切替レバーが設けられており、回転方向設定回路74は、正逆切替レバーの切り替えを検出すると、モータ3の回転方向を切り替えるための信号を演算部78に送信する。
回転子位置検出回路75は、回転位置検出素子8からの信号に基づきロータ3Aの回転位置を検出し、演算部78に出力する。回転数検出回路76は、回転位置検出素子8からの信号に基づきロータ3Aの回転数を検出し、演算部78へ出力する。
また、電子パルスドライバ1には、アンビル52に発生する衝撃の大きさを検出する打撃衝撃検出センサが設けられており、打撃衝撃検出回路77は、打撃衝撃検出センサからの信号を演算部78に出力する。
演算部78は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)と、処理プログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、タイマとを備えている。演算部78は、回転方向設定回路74と回転子位置検出回路75からの信号に基づき、出力切替信号H1、H2、H3を、印加電圧設定回路73からの信号に基づきパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6を生成し、制御信号出力回路79に出力する。
なお、PWM信号を正電源側スイッチング素子Q1〜Q3に出力し、出力切替信号を負電源側スイッチング素子Q4〜Q6に出力してもよい。
次に、図5〜図9を用いて、第1の実施形態による電子パルスドライバ1において使用可能な動作モードについて説明する。本実施の形態による電子パルスドライバは、ドリルモード、クラッチモード、パルスモードの3つの動作モードを備えており、ダイヤル2Bを操作することによりモード切り替えが可能である。
ドリルモードとは、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させるモードであって、主に、木ネジを締結する場合等に用いられる。モータ3に流れる電流は、図5に示すように、締結が進むにつれて増加する。
クラッチモードとは、図6に示すように、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が目標値(目標トルク)まで増加した場合にモータ3の駆動を停止させるモードであって、主に、締結後に外観に現れる留め金具を締結する場合等、正確なトルクで締結することを重要視する場合に用いられる。
パルスモードとは、図9に示すように、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が所定値(所定トルク)まで増加した場合にモータ3の正転及び逆転を交互に切り換えて打撃により留め金具を締結するモードであって、主に、外観に現れない場所で用いられる長尺のネジを締結する場合等に用いられる。これにより、強力な締結力を供給することができると同時に、被加工部材からの反発力を低減することができる。
次に、本実施の形態による電子パルスドライバが締結動作を行う際の制御部7による制御について説明する。なお、ドリルモードに関しては、特別な制御は行われないので説明を省略する。また、以下の説明では、電流に基づく判断には起動電流を考慮しないこととする。起動電流は、例えば約20msの不感時間を設けることによって、考慮しないようにすることができる。
まず、動作モードがクラッチモードに設定されている場合であって留め金具締結時(ハンマ42正転時)の制御について、図6〜図8を用いて説明する。
図6は、クラッチモードでボルト等の留め金具(以下、ボルト)を締結する際の制御について説明する図であり、図7は、クラッチモードでのハンマ42とアンビル52との位置関係による制御の違いを説明する図であり、図8は、ハンマ42正転時及び逆転時の制御の違いを説明する図である。なお、図7ではハンマ42とアンビル52との相対回転角を180度であるタイプのものを例示して説明する。
クラッチモードは、ハンマ42とアンビル52とを一体的に回転させた状態でモータ3に流れる電流が目標値(目標トルク)まで増加した場合にモータ3の駆動を停止させるモードであるところ、ハンマ42とアンビル52とが互いに離れている状態でトリガ25が引かれるとアンビル52に打撃が加えられてしまい、その打撃のみで目標値を超えるトルクが留め金具に供給されてしまうことがある。特に、一旦締結したネジ等を改めて締結する増し締めを行う際には、そのような問題が顕著となる。
従って、ボルト締結時のクラッチモードでは、アンビル52を回転させることなくハンマ42をアンビル52に接触させるためにプレスタート制御を行う。具体的には、プレスタート用正転電圧(例えば、1.5V)をモータ3に印加する。本実施の形態のプレスタートとは、締結前にハンマ42をアンビル52に予め接触させておくための制御であり、具体的には、ハンマ42がアンビル52と接触した場合にアンビル52を回転させない範囲の電圧をモータ3に印加してハンマ42をアンビル52に接触させる。
ここで、従来のプレスタートは、ハンマ42がアンビル52との距離に関わらず、一定期間プレスタートを行っていたため、実際の締結動作に移行するまでに余分な時間がかかっていた。そこで、本実施の形態では、ハンマ42とアンビル52の距離に応じてプレスタートの期間を変更する。具体的には、モータ3の回転数が閾値n(例えば、200rpm)より小さくなった場合にハンマ42とアンビル52とが接触(負荷を検知)したと判断し、プレスタートを終了し、次の制御、例えば、ソフトスタートへと移行する。これにより、図7(2)及び(3)に示すようなハンマ42とアンビル52との距離の場合には、図7(1)に示すようハンマ42とアンビル52との距離が大きい場合よりも短い時間でプレスタートを終了し、次の制御へと移行することができる。なお、本実施形態では、モータ3の負荷の上昇(ハンマ42とアンビル52との接触)を回転数の低下によって検知したが、電流値の上昇によってモータ3の負荷の上昇を検知してもよい。
プレスタートが終了すると、ソフトスタートへ移行し、ソフトスタートが終了すると、通常の制御に移行し、モータ3に流れる電流が目標値(トルク設定ダイヤルによって設定された目標トルク)まで増加した場合にモータ3への電力供給を停止させる。ソフトスタートとは、モータ3の起動時に過大な起動電流が発生することを防止するためにPWMデューティを目標値まで一定の増加率で徐々に増加させる制御である。なお、本実施形態では、プレスタート後に、ソフトスタートを介して通常の制御へ移行したが、プレスタート後にそのまま通常の制御へ移行してもよい。
次に、クラッチモードにおいてボルトを緩める時(ハンマ42逆転時)の制御について図8を用いて説明する。なお、図8におけるハンマ42及びアンビル52の形状は、ハンマ42とアンビル52とが円周方向1箇所のみで接触するタイプを例示して説明する。
上述したように、ボルト締結時(ハンマ42が時計回り方向に回転)には、プレスタートでハンマ42とアンビル52とを接触させた後にソフトスタートに移行する(図8(1))。一方、本実施の形態では、ボルトを緩める時(ハンマ42が反時計回り方向に回転)には、プレスタートを行わない(図8(2))。締結されているボルトは、錆等の原因により、締結する際と同じ力を加えたとしても緩めることができない場合がある。また、ねじ締めの際のねじと被削材の間の動摩擦係数と、ねじを緩める際のねじと被削材の間の静止摩擦係数とでは、動摩擦係数<静止摩擦係数となるため、緩めることができない場合がある。しかしながら、本実施の形態では、ソフトスタート制御中にハンマ42を加速させてアンビル52と衝突させるため、電子パルスドライバ1のトルクの設定値がボルト締付時とボルト緩め時とにおいて同一であったとしても、ボルトを緩めることが可能となる。なお、図8では、ソフトスタートから開始しているが、通常の制御から開始することもできる。
次に、動作モードがパルスモードに設定されている場合について、図9を用いて説明する。
図9は、パルスモードでボルトを締結する際の制御を説明する図である。動作モードがパルスモードに設定されている場合には、トリガ25が操作されると、制御部7は、まず、モータ3を回転数A(例えば、17000rpm)で連続回転させ、モータ3のトルクが所定値に到達するとパルスモードに移行し、モータ3を交互に正転及び逆転させる。パルスモードは打撃により締結力を与えるモードであるため、連続回転からパルスモードに移行した際に、ビットがボルト外れやすくなる(カムアウト)。そこで、本実施の形態では、パルスモード時には、回転数Aよりも低い回転数B(例えば、10000rpm)でモータ3を正転させる。これにより、ビットへかかるトルクが低下するので、パルスモードに移行した際のカムアウトを防止することが可能となる。なお、本実施の形態のパルスモードでは、正転と逆転とを交互に行ったが、断続的に正転されていればよく、例えば、正転と停止を交互に行ってもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について、図10及び図11に基づいて説明する。
図10は、パルスモードでドリルネジ53を鉄板Sに締結する際の制御について説明する図であり、図11は、パルスモードでドリルネジ53を鉄板Sに締結する際のドリルネジ53の状態を示す図である。ドリルネジとは、ネジの先端に鉄板に孔を開けるドリルの刃が設けられているネジのことであり、ネジ頭53Aと、座面53Bと、ネジ部53Cと、ネジ先53Dと、ドリル53Eとから構成される(図11)。
本実施の形態によるパルスモードでは、回転数を変更するためにPWM制御を行う。まず、トリガ25が操作されると(図10のt1)、制御部7は、モータ3を回転数aで駆動させる。パルスモードでは、正確なトルクで締結することを重要視していないので、クラッチモードにおけるプレスタートに相当するステップは省略される。また、簡略化のため図10においてソフトスタートの図示を省略する。
図11(a)に示すような鉄板Sとドリルネジ53のドリル53Eとが接触した状態では、ドリル53Eで鉄板Sに下穴を開ける必要があるため、図10に示すように、モータ3を回転数a(例えば、17000rpm)で高速回転させる。ドリルネジ53の先端が鉄板に食込み、ネジ先53Dが鉄板Sにさしかかると、ネジ部53Cと鉄板Sとの摩擦が抵抗となって電流値が上昇する(図10、図11の(b))。電流値が閾値C(例えば、11A)を超えると第1パルスモードに移行し、正転と逆転とを繰り返す(図10のt2)。ここで、本実施の形態では、第1パルスモード時には、回転数aよりも低い回転数b(例えば、6000rpm)でモータ3を正転させる。そして、座面53Bが鉄板Sに着座すると電流値は急激に上昇する。ここで、本実施の形態では、電流の増加率が所定値を超えると第2パルスモードに移行する(図10のt3)。第2パルスモード時には、回転数bよりも低いに回転数c(例えば、3000rpm)でモータ3を正転させる。これにより、ビットがドリルネジ53に与えるトルクが過大になることによるドリルネジ53の破損やドリルネジ53の頭をなめることを防止することができる。
なお、本発明の電子パルスドライバは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
例えば、第1の実施形態におけるクラッチモードでのボルトを緩める時(逆転時)の制御は、他の方法によっても実現することができる。図12は、変形例のクラッチモードの制御を説明する図である。図12の(1)にモータ3を正転させたときの制御を示し、図12(2)にモータ3を逆転させたときの制御を示す。
図12(2)に示すように、変形例の電子パルスドライバ1では、逆転時には正転時よりもPWMデューティの大きな電力をモータ3に供給する。これにより、ハンマ42が、逆転時には正転時よりも強くアンビル52と衝突するため、ボルトを緩めることが容易となる。但し、逆転時のPWMデューティは、過電流が生じない範囲に設定される。
また、PWMデューティを大きくする代わりに、キャパシタを備え、逆転時にはキャパシタに蓄えた電力も供給することにより、大きな電力をモータ3に供給してもよいし、単純にモータ3の回転数を上げてもよい。また、逆転時にハンマ42がアンビル52と接触するまでに回転する角度を、正転時にハンマ42がアンビル52と接触するまでに回転する角度よりも大きくなるように制御してもよい。具体的には、例えば、逆転時には、モータ3を微少時間正転させた後に逆転させることで、ハンマ42とアンビル52との角度(加速距離)を大きくすることができ、ハンマ42とアンビル52とを強く衝突させることができる。