JP2012010764A - 羽毛の吹き出し防止構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダウンプルーフ加工を不要にして高通気度でありながら羽毛の吹き出しを効果的に防止することができ、しかもキルティングの手間がかからない羽毛の吹き出し防止構造を提供する。
【解決手段】本発明の羽毛の吹き出し防止構造は、表がわ生地1aと裏がわ生地1bの全面にわたって多数の皺2を形成してある。両がわ生地1a、1bの内面には、皺2の頂部を連ねるように、複数本の邪魔糸3が1mm〜15mmの間隔で掛け渡してある。表がわ生地1aと裏がわ生地1bを袋織りや風通織りにより接合することで羽毛4を充填するためのポケット空間を形成してある。
【選択図】図10

Description

本発明は羽毛布団や羽毛衣料における羽毛の吹き出し防止構造に関する。
従来、羽毛布団に用いる羽毛袋体や、羽毛を使ったジャケット、コート、ベストなどの羽毛衣料に用いる羽毛袋体は、一般に薄地で細番手ないし細デニール使いの高密度織物にダウンプルーフ加工を施したもので構成している。これは羽毛のドレープ性をできるだけ活かすと共に袋体の中の羽毛ががわ生地から吹き出しにくくするためである。ダウンプルーフ加工はカレンダー加工の一種であって、羽毛袋体を構成するがわ生地をローラで圧延して熱と圧力を加えることで織られた糸自体を変形させ、これにより糸と糸の間の隙間を小さくして羽毛の吹き出しを抑制するものである。これにより、羽毛の持つ吸湿性、放湿性などの特長を活かしつつ、羽毛の吹き出しを抑制する。樹脂などを使ってがわ生地の隙間を完全に埋めてしまういわゆるコ−ティング加工(目詰め加工ともいう)では、羽毛の吹き出しをほぼ100%止めることができる代わりに、羽毛の吸湿性、放湿性などの特長が犠牲になる。ダウンプルーフ加工の通気度については「羽毛寝具要覧」(日本羽毛寝具製造業協同組合発行、1999年3月15日、p175)に詳細が記載されている。それによると、「羽毛ふとん地流通協会基準」として、JIS L1096のフラジール形法による通気度(cm3/cm2・s)で、例えば、羽毛布団用の生地に関しては、綿織物としての平織、綾織では3.0以下、朱子織では2.5以下、合繊織物としてのフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物では2.0以下とされている。織物の種類によって羽毛の吹き出しやすさが異なるため基準となる通気度も異なっている。
しかし、ダウンプルーフ加工はそれ自体にコストがかかるうえ、ダウンプルーフ加工を施したがわ生地は繰り返し洗濯するうちに通気度が大きくなって羽毛の吹き出しが徐々に増加するという問題がある。そこで、繰り返し洗濯しても通気度が大きくならない羽毛の吹き出し防止構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の織物は、収縮性短繊維と非収縮性短繊維を混紡して紡いだ紡績糸を経糸及び/又は緯糸にして織物とし、収縮性短繊維を収縮処理した後の織物の通気度を4cm3/cm2・sec以下としたものである。収縮性短繊維を収縮処理すると、紡績糸の収縮性短繊維の部分が縮み、非収縮性短繊維の方は収縮性短繊維に引きずられて複雑に蛇行した構造になるため、紡績糸は嵩高な糸になる。このような紡績糸から構成された織物は、糸と糸の間の目が狭くなって通気度が所定の値(4cm3/cm2・sec)以下に低下し、羽毛袋体として使用した場合に羽毛の吹き出しを抑制する効果が得られる。特許文献1に記載の織物はダウンプルーフ加工を施していないので繊維は自然な状態を保っており、この自然な状態は紡績糸自体の特性によるものなので、繰り返し洗濯しても通気度が上昇することはない。
なお、羽毛の吹き出し防止に関する他の先行技術として、がわ生地にプリーツ加工を施すことにより立体的な表面感と、ストレッチ性と、肌との接触面積低減による清涼感を高めた通気度が所定の値(3cm3/cm2・s)以下の高密度織物が提案されている(特許文献2参照)。
一方、従来の羽毛袋体は羽毛の特性を十分に発揮させるために通常キルティングを施している。このキルティングは表がわ生地と裏がわ生地とを羽毛を挟んで縫い合わせるもので、これにより羽毛に空気層を含ませて保温性を高め、羽毛の偏りを防止し、ドレープ性を保持することができる。しかし、このキルティングを施すとキルティングの縫い目から羽毛が吹き出しやすくなる。このため、表がわ生地と裏がわ生地とを縫着せずに袋体内に複数の区画室を形成するステッチレス立体キルト構造が提案されている(特許文献3)。
特開2004−225179号公報 特開2007−126777号公報 特開平10−146256号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、
(1)通気度を低下させて羽毛の吹き出しを防止するものであるから、折角の羽毛の吸湿性、放湿性などの特長がかなり犠牲になることは否めない。
(2)低通気度のために袋体に対する羽毛充填時間が長くなり、また羽毛袋体の使用中の蒸れや、羽毛袋体を押圧変形した後の形状回復性を阻害する。
(3)洗濯時に袋体が洗液中に沈みにくい。
以上の課題があった。
また、特許文献2に記載の発明は、プリーツ加工により良好なストレッチ性が得られるものの、通気度をダウンプルーフ加工により3cm3/cm2・s以下にしないと羽毛が吹き出しやすいものであり(特許文献2の[0011]段参照)、特許文献1と同様の課題がある。
また、特許文献3に記載の発明は、袋体内を複数の区画室に区切る隔壁布を熱圧着で表がわ生地と裏がわ生地に接合するための手間がかかるという課題がある。
本発明は、斯かる実情に鑑み、ダウンプルーフ加工を不要にして高い通気度でありながら羽毛の吹き出しを効果的に防止することができ、しかもキルティングの手間がかからない羽毛の吹き出し防止構造を提供しようとするものである。
本発明の羽毛の吹き出し防止構造は、表がわ生地と裏がわ生地の全面にわたって多数の皺を形成すると共に、表がわ生地と裏がわ生地の各内面における前記皺の頂部を連ねるように複数本の邪魔糸を1mm〜15mmの間隔で掛け渡し、かつ、表がわ生地と裏がわ生地の間に羽毛を充填するための複数のポケット空間を形成するように両がわ生地を製織時に接結したものである。
前記「がわ生地」は織物および不織布を含むものである。織物は紡績糸、フィラメント糸、嵩高糸、被覆糸、コアヤーン糸などで構成することができる。前記「皺」は、例えば織物ではがわ生地の経糸方向や緯糸方向に連続的または不連続的に延びるものを含み、さらに凹凸模様や散点状の浮き出し模様が例えばがわ生地の経糸方向や緯糸方向に多数連なって形成されたものも含む。この構成により、羽毛の一部ががわ生地に到達しようとしても、羽毛が邪魔糸に絡まって捕獲されるので、羽毛ががわ生地に到達しなくなるか、或いは邪魔糸による跳ね返し作用によりがわ生地に到達するまでの時間が非常に長くなる。また、羽毛ががわ生地に到達して羽毛の羽軸先端ががわ生地に突き刺さっても、皺の襞が傾斜している場合ではがわ生地に対する羽軸の突き刺さり角度が垂直よりもかなり傾斜した角度となり、邪魔糸による跳ね返し作用と相俟って羽毛の吹き出しが効果的に抑制される。また、羽毛袋体の日常使用に伴うがわ生地自体の屈曲変形により邪魔糸が緩やかに緊張と弛緩を繰り返すから、いったんがわ生地に突き刺さった羽軸も邪魔糸によって次第に内側に引き戻される効果がある。邪魔糸の間隔が1mm未満になるとダウンやスモールフェザーから脱落した細かいファイバーが邪魔糸の隙間から皺の中に入り込んで出て来にくくなり、その後皺の側面から外に吹き出しやすくなる。邪魔糸の間隔が15mmを越えると、羽毛の捕獲作用が低下し、羽毛の吹き出し抑制効果が阻害される。邪魔糸の間隔は1mm〜15mmの間隔であれば等間隔であってもよいし、或いは規則的または不規則的(ランダム)な不等間隔のものであってもよい。
また、がわ生地の皺によって生地の表面積が増大するので生地の実質的な通気度が増大するが、それとは対照的に羽毛袋体の内側から見た見掛け上の生地密度が増大するため羽毛は逆にいっそう吹き出しにくくなる。
また、羽毛布団の場合は皺付けによる生地の山谷の効果により肌との接触面積が小さくなり、前記通気度の増大と相俟って蒸れ感が少なく清涼感に富んだ感触となり、さらに就寝時の寝返りなど体位変化が生じてもごわごわした耳障りながさつき音が生じず、快適な睡眠が期待出来る。
本発明の羽毛の吹き出し防止構造では、がわ生地をダウンプルーフ加工する必要性がなく、通気度は3.0〜20.0cm3/cm2・sの範囲に設定することができる。通気度が20.0cm3/cm2・sを越えると十分に羽毛の吹き出しを有効に抑制することができなくなる場合がある。また、通気度が3.0cm3/cm2・s未満の高密度のがわ地になると、羽毛袋体の柔軟性が低下すると共に、羽毛の吹き込み充填や使用時の形状回復性が不十分となる場合がある。
本発明の羽毛の吹き出し防止構造では、表がわ生地と裏がわ生地の間に羽毛を充填するための複数のポケット空間を形成するように両がわ生地を製織時に接結したので、従来のように手間のかかるキルティング作業により羽毛充填用のポケット空間を形成する必要がない。表裏のがわ生地の接結は例えば特開特開2001−200443号公報や2007−77543号公報に記載の袋織りや風通織りにより行うことができる。
本発明の羽毛の吹き出し防止構造では、がわ生地を経糸と緯糸からなる織物、例えば平織、綾織又は朱子織の織物で構成可能であり、この場合、邪魔糸は経糸又は緯糸の一部で構成することができる。経糸又は緯糸は、そのうちの邪魔糸だけを熱収縮する弾性糸又は非弾性糸とし、残りの経糸と緯糸を熱収縮しない弾性糸又は非弾性糸とすることができる。なお、経糸及び緯糸には、単糸、双糸または精紡交撚糸などを使用することができる。
その他、本発明の羽毛の吹き出し防止構造では、がわ生地をウール不織布で構成することができる。ウールは細糸にすることが難しいのでウールでがわ生地を構成するとがわ生地の糸と糸の隙間から羽毛が吹き出しやすい。しかし、本発明は高通気度でありながら羽毛の吹き出しを十分に抑制可能であるため、高い通気度を特性とするウール不織布をがわ生地に使用することが可能となり、これによりウールと羽毛の両者が有する吸湿性や放湿性の特長を累積的に発揮することができる。また、本発明の羽毛の吹き出し防止構造は高通気度が可能であるため、糸と糸の間に多くの隙間があるニットをがわ生地として使用することができる。
本発明の羽毛の吹き出し防止構造によれば、ダウンプルーフ加工をしない高通気度のがわ生地で羽毛の吹き出しを十分に抑制することができるから、羽毛の持つ吸湿性、放湿性などの特長を十分に活かすことで羽毛袋体の所謂蒸れ感を予防することができる。しかも、従来の手間のかかるキルティング作業を要することなく表がわ生地と裏がわ生地を製織する際に両がわ生地を同時に接合して羽毛充填用のポケット空間を形成することができるから、羽毛入り製品を低コストで提供することができると共に、キルティングの縫い目がないのでそこから羽毛が吹き出すという心配もない。また、がわ生地が薄地であっても、がわ生地全面に形成した皺と、この皺の頂部を連ねる邪魔糸とによって羽毛の羽軸やファイバーが生地に刺さりにくくなるため、羽毛の吹き出し防止効果を長期間にわたって維持することができる。さらに高通気度によって羽毛の充填作業の能率が向上する。また、従来の羽毛袋体はダウンプルーフ加工が弱まるため家庭での洗濯がきわめて困難であるというのが常識であったが、本発明は元々ダウンプルーフ加工が不要で袋体は高通気度のままでよいので、羽毛袋体を家庭で丸洗いしてもまったく問題が無く、その際に袋体を洗液中に沈めやすいから洗濯時間が短くて済み、また洗濯後にタンブラー乾燥をしても羽毛の吹き出し防止効果はほとんど影響を受けないという優れた効果が得られる。
本発明に使用するがわ生地の裏面の斜視図。 がわ生地の内面の拡大図。 がわ生地の表面の拡大図。 がわ生地の内面の拡大斜視図。 がわ生地のヒートセット前後の平面図。 羽毛袋体のがわ生地の拡大断面図。 羽毛袋体(ミニ布団)の平面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の断面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の透視的平面図。 図9のX−X線矢視断面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の変形例1の断面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の変形例2の平面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の変形例2の拡大平面図。 本発明の羽毛の吹き出し防止構造の変形例2の内面拡大図。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。但し、以下の実施の形態は本発明の理解を容易とするための好適例にすぎず、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。図1〜図3は本発明の羽毛の吹き出し防止構造に使用するがわ生地1を示す。がわ生地1の仕様は例えば表1に示す通りである。このがわ生地1は経糸と緯糸を有する朱子織であって、面密度(目付け)を460g/m2にして例えばドビー織機で製織することができる。織り方は朱子織に代えて平織又は綾織などを採用してもよい。また、表がわ生地と裏がわ生地を異なる織物で構成してもよい。例えば表がわ生地を朱子織とし裏がわ生地を平織としてもよいし、その逆でもよい。合繊織物ではフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物なども可能である。経糸は150デニールのエステル糸を124本/吋の織密度とし、緯糸は、綿緯糸と、綿とポリウレタンからなるコアヤーン緯糸を、20:1の比率で170本/吋の織密度としている。つまり、綿緯糸20本毎に1本のコアヤーン緯糸を織り込んである。コアヤーン緯糸同士の間隔は約4mmである。コアヤーン緯糸はポリウレタンの弾力性による伸縮糸であり、ポリウレタンは40デニールである。コアヤーン緯糸は、自然な皺付けのためにランダムに設定した経糸3〜10本置き毎に1本の経糸と交絡するように製織してある。従って、コアヤーン緯糸は間隔が短い所では経糸3本分置いて(浮かせて)1本の経糸と交絡し、間隔が長い所では経糸10本分置いて(浮かせて)1本の経糸と交絡する。ランダム設定の経糸本数(3〜10本)は、その下限本数および上限本数を袋体の表面に表れる皺模様の意匠性等の観点から適宜変更してよいことは勿論である。
がわ生地1はダウンプルーフ未加工品であって、その通気度は9.2cm3/cm2・sである。通気度はこれに限られることはなく、3.0〜20.0cm3/cm2・sの範囲で自由に決めることができる。ここで、前記通気度はJIS L1096のフラジール形法による値である。
通常のダウンプルーフ加工では、羽毛布団用のがわ生地の場合、通気度(cm3/cm2・s)は綿織物としての平織、綾織では3.0以下、朱子織では2.5以下、合繊織物としてのフィラメント織物、スパン織物、綿混紡織物では2.0以下とされる。本発明では必要に応じて3.0〜20.0(cm3/cm2・s)の間で任意に選択することができる。
がわ生地1には図1〜図3に示すように全面にわたって経糸方向に延びる皺2が多数形成され、がわ生地1の裏面においてこの皺2と直交ないし交差するように複数本の邪魔糸3が互いに等間隔に設けられている。この邪魔糸3は前述のコアヤーン緯糸であって、邪魔糸3の相互間隔D(図2、図4参照)は例えば1mm〜15mmの範囲とするのがよい(実施例は約4mm)。がわ生地1の皺2の形成は、図5のようにヒートセット(乾式または蒸気)により行う。すなわち、表1の仕様で製織した織物を熱風または加熱蒸気により熱処理することでコアヤーン緯糸を熱収縮させる。熱収縮の程度は熱処理の温度やコアヤーン緯糸の構成によるが、ここでは熱処理前に幅1.5Wであったのを熱処理後に幅1.0Wとなるように熱収縮させる(寸法変化:−33%、Wは任意の寸法値)。この熱収縮により熱収縮糸でない綿緯糸が織物の幅方向に圧縮される結果、経糸方向に延びる無数の皺2が形成される。この皺2はがわ生地の表面に独特なソフト感ないし意匠性をもたらす。寸法変化は前記−33%に限定されるものではなく、例えば−10%(幅1.5W→1.35W)から−50%(幅1.5W→0.75W)の範囲で所望の寸法変化を選択することができる。緯糸のうちコアヤーン緯糸は、邪魔糸3として図6のように羽毛袋体の内面における皺2の頂部を皺の長手方向と交差する方向に連ねる。皺2の頂部と頂部の間では邪魔糸3が浮いた状態となる。なお、前記寸法変化(−10%〜−50%)の範囲外では羽毛の吹き出し防止効果が低下する傾向がある。すなわち、寸法変化が−10%よりも少ないと皺の襞の傾斜が小さくなって羽毛の羽軸先端ががわ生地に突き刺さりやすくなることから羽毛の吹き出し防止効果が低下すると考えられる。また、寸法変化が−50%よりも大きくなると皺の襞がだぶつき、ダウンやスモールフェザーから脱落した細かいファイバーが邪魔糸の隙間から皺の中に入り込んで出て来にくくなり、その後皺の側面から外に吹き出しやすくなると考えられる。
このがわ生地1を使って羽毛の吹き出し試験用に図7のように羽毛袋体5を製作し、この羽毛袋体5に羽毛4を充填する(図6参照)。羽毛4は、ダウンとスモールフェザーを混合したものを使用する。混合比率は例えばダウン90質量%でスモールフェザー10質量%とする。ダウンは、例えばカモ、アヒル、ガチョウなどの水鳥の胸部分に生えている柔らかい羽であってダウンボールとも呼ばれ、フワフワとしたタンポポの種子(わた毛)のような形をしている。ダウンは小さな元羽軸とその先端から延びる2本以上の羽枝からできていて、軽く柔らかく、また多くの空気を含むことができるので保温性、透湿性に優れている。スモールフェザーは例えば水鳥の体を覆う羽であって、少しカーブした羽軸(幹羽軸)をもつ長さが6.5cm以下の柔らかい小羽根である。羽根全体がやわらかいので羽毛布団に使われ、ダウンと混合されて弾力性を発揮する。
(羽毛の吹き出し試験)
1. 表1の仕様で製織したがわ生地を50cm×65cmの長方形で合計12枚用意する。
2. 2枚のがわ生地を邪魔糸が内側になるように重ね合わせ、その周囲3辺(二つの長辺と一つの短辺)をミシンで縫い合わせて袋体とする(図7参照)。そして縫い合わせていない短辺から1.5gの羽毛(ダウン90質量%及びスモールフェザー10質量%からなる羽毛)を袋体内に充填した後にこの辺を縫い合わせてミニ布団(実施例という)を構成する。同様のミニ布団をさらに2枚作製し、合計3枚の実施例を用意する。
3. 2枚のがわ生地を邪魔糸が外側になるように重ね合わせ、前項と同様にして合計3枚の比較例のミニ布団を用意する。
実施例と比較例のミニ布団各3枚を手で50回叩いた後に、日本羽毛製品協同組合が定めるタンブルドライ法により羽毛の吹き出し試験を行った。この試験は財団法人日本繊維製品品質技術センター中部事業所に委託して行った。試験結果は以下の表2と表3に示す通りである。合否の判定基準は日本羽毛製品協同組合による表4の基準に従った。
以上の試験結果から分かるように、実施例と比較例はがわ生地の通気度が同じであるが、羽毛の吹き出し個数が異なる。実施例のミニ布団ではダウン、スモールフェザーとも0個であったが、比較例のミニ布団ではダウンは0個であるがスモールフェザーの吹き出しが2個であった。また吹き出し羽毛の総質量は実施例が1.4mg、比較例が10.6mgであった。羽毛の吹き出し試験に影響する実施例と比較例の相違点は邪魔糸の有無だけである。すなわち、実施例では邪魔糸が袋体の内側にあるが、比較例は邪魔糸がミニ布団の外側にあって内側にはない。このことから、本発明の邪魔糸は羽毛の吹き出し防止に効果があることが分かる。なお、比較例でも羽毛の吹き出しはスモールフェザーが2個だけであるから、吹き出し羽毛個数は合格レベルにある。比較例のミニ布団のがわ生地通気度が9.2cm3/cm2・sであることを考えれば、がわ生地の皺によって邪魔糸なしでも羽毛の吹き出し防止にはかなり効果があることが分かる。
図8は本発明の羽毛の吹き出し防止構造の一例を示す断面図であるが、見やすくするためにヒートセット前の皺がない状態で示してある。図中、1aは表がわ生地、1bは裏がわ生地である。両がわ生地1a、1bは前述した表1に記載した仕様と同じ朱子織のがわ生地である。表裏のがわ生地1a、1bは所々で接結されて図9のように羽毛を充填するための複数の格子状ポケット空間Pを形成している。ポケット空間Pの周縁がキルティングのための仕切となる。表裏のがわ生地1a、1bの接結は、例えば特開2001−200443号公報や特開2007−77543号公報に記載された公知の「袋織り」や「風通織り」によって、がわ生地1a、1bの製織と同時に行うことができる。製織と同時に接結する織り方であれば、「袋織り」や「風通織り」以外であっても勿論構わない。ポケット空間Pの大きさや形状は製織機の設定により自由に変えることができる。図8では邪魔糸3を使用した接結を例示しているが、邪魔糸3以外の緯糸や経糸も接結に使用することができる。ポケット空間Pは図9のように羽毛を充填する際の羽毛の通路にするため、隣接する他のポケット空間Pと連通口6を通じて相互に連通している。この連通口6の位置や大きさも製織機の設定により自由に変えることができる。図10は図9のポケット空間Pに羽毛4を充填した後の断面図である。このように、本発明はキルティング作業なしで羽毛入りシートを形成することができる。
図11は本発明の羽毛の吹き出し防止構造の変形例1の断面図である。この変形例1は表がわ生地1aと裏がわ生地1bを二色の色分け柄で構成している。黒丸が一方の色の経糸を示し、白丸が他方の色の経糸を示す。各経糸に絡む緯糸は経糸と同じ色に揃えてある。図11では表がわ生地1aと裏がわ生地1bが左右二箇所で接結された状態を示している。各接結箇所では表側の緯糸が裏側にシフトすると共に裏側の緯糸が表側にシフトしている。また、緯糸のシフトに合わせて経糸も同じように反対側にシフトしている。このように表がわ生地1aと裏がわ生地1bを接合することにより、各ポケット空間Pを色分け柄に対応させることができる。従って、図10のようにポケット空間Pに羽毛4を充填した状態では色分け柄に対応してポケット空間Pの膨らみが形成されるから意匠的に好ましい外観が得られる。
図12は前述した接結方法により色分け柄をポケット空間Pに対応させた変形例2の平面図、図13はその拡大平面図、図14はがわ生地を内面側から見た拡大図である(但し羽毛は未充填)。この変形例2では経糸と緯糸の両方に弾性糸による邪魔糸を設けている。これらの図から、がわ生地の表面に多数の皺2が形成され、内面側は皺2を横断するように邪魔糸3が設けられているのが分かる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限られることなく種々の変形が可能である。例えば前記実施の形態では邪魔糸を緯糸の一部で構成したが、経糸の一部で邪魔糸を構成することも可能である。また、緯糸の一部と経糸の一部を邪魔糸としてもよく、この場合はがわ生地に皺が縦横に形成されることになる。
1:がわ生地
2:皺
3:邪魔糸
4:羽毛
5:羽毛袋体
6:連通口

Claims (7)

  1. 表がわ生地と裏がわ生地の全面にわたって多数の皺を形成すると共に、前記表がわ生地と裏がわ生地の各内面における前記皺の頂部を連ねるように複数本の邪魔糸を1mm〜15mmの間隔で掛け渡し、かつ、前記表がわ生地と裏がわ生地の間に羽毛を充填するための複数のポケット空間を形成するように両がわ生地を製織時に接結した羽毛の吹き出し防止構造。
  2. 前記がわ生地がダウンプルーフ未加工品であって通気度が3.0〜20.0cm3/cm2・sの範囲である請求項1に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
  3. 前記がわ生地が経糸と緯糸からなる織物であって、前記邪魔糸が前記経糸又は緯糸の一部で構成される請求項1に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
  4. 前記織物が平織、綾織又は朱子織のいずれかである請求項3に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
  5. 前記織物の経糸又は緯糸の一部の邪魔糸を熱収縮する弾性糸又は非弾性糸とし、残りの経糸と緯糸を熱収縮しない弾性糸又は非弾性糸とした請求項4に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
  6. 前記がわ生地がウール不織布である請求項1に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
  7. 前記がわ生地がニットである請求項1に記載の羽毛の吹き出し防止構造。
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