JP2012008417A - 光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムであって、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95であり、
下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす光学フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。
【選択図】なし
Description
また、液晶表示装置において、視野角の拡大、画像着色の改良、及びコントラストの向上のため、ポリマーフィルムからなる光学補償フィルム(位相差フィルム)を使用することが知られている。光学補償フィルムとして用いられるポリマーフィルムに対しては、VAモード等の液晶表示装置の液晶セルのモードに応じて、フィルムの光学特性(例えば、フィルム面内のレターデーション値Reやフィルム厚さ方向のレターデーション値Rthなどの複屈折性)を制御して所望の光学異方性を持たせることが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の光学フィルムは、セルロースエステルによる正の複屈折とアクリル樹脂による負の複屈折が相殺してフィルムとして発現する複屈折性が低いため、光学補償フィルムとして求められる十分な光学異方性が得られず、VAモード、TNモード、OCBモードのような光学異方性の高い液晶表示装置への光学補償フィルムとして適用することは難しい。
また、特許文献2や3では、レターデーション発現剤を添加して光学異方性を発現させているが、Reに対して十分に大きいRthが得られておらず、更なる改良が求められる。また、レターデーション発現剤のセルロースエステルやアクリル樹脂との相溶性が良くないため、フィルム内におけるレターデーション発現剤の配向のばらつきが生じたり、ReやRth値にもばらつきが生じたりしてしまう。また、フィルムの透明性、特に高温環境下又は高温高湿環境下で経時させた後の透明性が低下しがちである。したがって、十分なRth発現性が得られるとともに、セルロースエステルやアクリル樹脂との相溶性が高いレターデーション発現剤を使用することが求められる。
本発明の別の目的は、上記光学フィルムを用いた偏光板を提供することである。本発明の更に別の目的は、耐久性が高く、表示ムラが改善された液晶表示装置を提供することである。
セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムであって、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95であり、
下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす光学フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。
[2]
前記セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.00〜3.00であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.20〜3.00である上記[1]に記載の光学フィルム。
[3]
前記光学フィルムのフィルム面内において、任意の2点における遅相軸のなす角度が0.3°以下である上記[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]
前記光学フィルムのフィルム面内において、100nm間隔の2点におけるReの差分が1.2nm以内であり、Rthの差分が2.0nm以内である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5]
全ヘイズ値が0.30以下であり、内部ヘイズ値が0.10以下である上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[6]
前記光学フィルムがレターデーション発現剤を含み、該レターデーション発現剤が円盤状化合物である上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[7]
前記式(I)及び(II)で定義されるRe及びRthが、波長590nmにおいて下記式(VII)及び(VIII)を満たす上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(VII) 30≦Re≦200
式(VIII) 70≦Rth≦400
[8]
セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムの製造方法であって、
前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95である高分子膜を製膜する工程と、
前記高分子膜の搬送方向及び該搬送方向と直交する幅方向の少なくとも一方に前記高分子膜を延伸する工程とを含み、
前記高分子膜を延伸する工程における前記搬送方向の延伸倍率に対する前記幅方向の延伸倍率の比が1.15以上であり、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、
前記光学フィルムの下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす、光学フィルムの製造方法。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。
[9]
前記高分子膜の延伸が、乾燥後の未延伸の高分子膜のTgに対して、Tg±30℃の温度範囲で行われる上記[8]に記載の光学フィルムの製造方法。
[10]
前記アクリル樹脂が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を50質量%以上含有し、質量平均分子量が500000以下である上記[8]又[9]に記載の光学フィルムの製造方法。
[11]
前記セルロースエステルがアセチル基及びプロピオニル基を含み、
前記セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.00〜3.00であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.20〜3.00であり、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が250000以下である上記[8]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[12]
前記光学フィルムがレターデーション発現剤を含み、該レターデーション発現剤が円盤状化合物である上記[8]〜[11]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
[13]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
[14]
上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルム又は上記[13]に記載の偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置。
なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」及び「(数値1)乃至(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
「アクリル樹脂」とはメタクリル酸又はアクリル酸の誘導体を重合して得られる樹脂、及びその誘導体を含有する樹脂を意味するものとする。また、特に限定しない場合には、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルを表す。
更に、フィルムの「遅相軸方向」とはフィルム面内で屈折率が最大となる方向で、「真相軸方向」とはフィルム面内で遅相軸と直交する方向を意味するものとする。
本発明の光学フィルムは、セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムであって、前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95であり、下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
(式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。)
上記構成により、機械的強度が高く、耐久性に優れ、光学補償フィルムに適した光学異方性を発現することができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについては、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができるが、本発明で用いられるセルロースエステルは特にその記載のものに限定されるものではない。
例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、また、2種類以上の脂肪酸のアシル基が置換したセルロースエステルも好ましい。これらのセルロースエステルは、更に置換された基を有していてもよい。
前記水酸基に置換するアシル基としては、炭素数2のアセチル基及び炭素数3〜22のアシル基を好ましく用いることができる。アクリル樹脂との相溶性向上の観点から、炭素数2のアセチル基及び炭素数3〜7のアシル基が好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルにおけるアシル基の総置換度(セルロースのβ−グルコース単位において水酸基にアシル基が置換している割合で、2位、3位及び6位の3つの水酸基の全てにアシル基が置換している場合には3となる)は、特に限定されないが、アシル基の総置換度が高い方がアクリル樹脂との相溶性が良好で、湿度依存性が小さくなるため好ましい。このため、アシル基の総置換度は2.00〜3.00が好ましく、2.50〜3.00がより好ましく、2.50〜2.90が更に好ましい。
更に、アクリル樹脂との相溶性の観点から、炭素数3〜7のアシル基についてその置換度は、1.20〜3.00が好ましく、1.50〜3.00がより好ましく、2.00〜3.00が更に好ましく、2.00〜2.90が特に好ましい。
本発明のセルロースエステルにおいて、セルロースの水酸基に置換するアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じた方法や、NMR法を挙げることができる。
前記アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、へプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などが好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましく、プロピオニル基又はブタノイル基が更に好ましく、プロピオニル基が特に好ましい。
合成の容易さ、コスト、置換基分布の制御のし易さなどの観点から、アセチル基とプロピオニル基、アセチル基とブタノイル基、プロピオニル基とブタノイル基、アセチル基とプロピオニル基とブタノイル基が併用されることが好ましく、より好ましくはアセチル基とプロピオニル基、アセチル基とブタノイル基、アセチル基とプロピオニル基とブタノイル基が併用されることであり、更に好ましくはアセチル基とプロピオニル基、アセチル基とプロピオニル基とブタノイル基が併用されることであり、特に好ましくはアセチル基とプロピオニル基が併用されることである。
上記のアシル基が置換したセルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートプチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースベンゾエートなどが挙げられ、なかでもセルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましく、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。
フィルムの機械的強度、ハンドリング適性、及びアクリル樹脂との相溶性向上を両立させる観点からは、セルロースエステルの質量平均分子量Mwは75000以上300000以下であることが好ましく、100000以上270000以下であることがより好ましく、150000以上250000以下であることが更に好ましい。
同様の観点から、セルロースエステルの数平均分子量Mnは、18000以上300000以下であることが好ましく、25000以上270000以下であることがより好ましく、38000以上250000以下であることが更に好ましい。
セルロースエステルの質量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
更に、セルロースエステルの分子量分布については、多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがより好ましく、2.3〜3.4であることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムの製造時に使用される際には、セルロースエステルの含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下である。一般に、セルロースエステルは、水を含有しており、例えばセルロースアシレートの含水率は2.5〜5質量%が知られている。本発明で上記のようなセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが好ましく、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
本発明に用いることのできるセルロースアシレートに関しては、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
本発明に用いられるアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸の誘導体を重合して得られる樹脂、及びその誘導体を含有する樹脂であり、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではない。
前記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、(メタ)アクリレートを挙げることができる。例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、N−プロピルアクリレート、N−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、N−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、N−プロピルメタクリレート、N−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、N−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体;2−クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルアクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートの任意の水素原子をハロゲン基、水酸基及び他の有機残基で置換したものでもよい。ここで、他の有機残基は炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸の誘導体と共重合可能な共重合成分としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸類及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸類等の不飽和酸類、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル類、ラクトン環単位、グルタル酸無水物単位、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、マレイミド、N−置換マレイミド等のマレイミド類、グルタルイミド単位が挙げられる。
光学特性の観点から芳香族ビニル化合物が好ましく、特にスチレンが好ましい。
メチルメタクリレートと共重合可能な単量体としては、上記アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体として例示したものに加えて、炭素数が2〜18のアルキル基とメタクリル酸とからなるアルキルメタアクリレート、炭素数が1〜18のアルキル基とアクリル酸とからなるアルキルアクリレートが挙げられ、これらは単独で、又は2種以上の単量体を併用して用いることができる。中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
本発明のアクリル樹脂及び(メタ)アクリル酸の誘導体、他の共重合可能な単量体としては特開2009−122664号、特開2009−139661号、特開2009−139754号、特開2009−294262号、国際公開2009/054376号等の各公報に記載のものも使用することができる。なお、これらは本発明を限定するものではなく、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
2種類以上のアクリル樹脂を用いる場合は、少なくとも1種類は上記の構造を有するものを用いることが好ましい。
フィルムの機械的強度、ハンドリング適性及びセルロースエステルとの相溶性向上の両立の観点からは、アクリル樹脂の質量平均分子量Mwは80000以上1100000以下であることが好ましく、80000以上500000以下であることがより好ましく、100000以上500000以下であることが更に好ましい。
アクリル樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR80、BR85、BR88、BR102(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
セルロースエステルとアクリル樹脂が相溶状態となっているかどうかは、例えば、ガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。例えば、セルロースエステルとアクリル樹脂とのガラス転移温度が異なる場合、両者を混合したときは、各々のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で測定したときに樹脂のガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めることができる。
また、相溶された樹脂の質量平均分子量Mwがそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
また、相溶した樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
また、「セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含有する」とは、各々の樹脂(ポリマー)を混合することで、結果として相溶された状態となることを意味しており、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステルに混合させた後に重合させることにより混合樹脂とされた状態は含まれないものとする。
本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を加えることができる。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものがフィルムのヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
最終的なドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。マット剤の添加量としては、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂等のドープ溶液に使用する樹脂の全量に対して、0.001質量%以上0.4質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.2質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。また、光学フィルムが多層から形成される場合、内層への添加はせず、表層側のみに添加することが好ましく、この場合は、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂等のドープ溶液に使用する樹脂の全量に対して、表層のマット剤の添加量としては0.001質量%以上0.4質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.2質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
上記マット粒子の他に、本発明の光学フィルムには、下記で述べるレターデーション発現剤を添加することができる。更に、その他の種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外線吸収剤、波長分散調整剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号などに記載されている。更にまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、光学フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムに可塑剤を用いてもよい。可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤などが挙げられる。
好ましくはリン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくはポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、更に好ましくはエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤、糖エステル系可塑剤であり、特に好ましくはエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤である。
特にポリエステルオリゴマー系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤、糖エステル系可塑剤は本発明の光学フィルムとの相溶性が高く、ブリードアウト低減、低ヘイズ及び低透湿度の効果が高く、また温湿度変化や経時による可塑剤の分解及びフィルムの変質や変形が生じ難いため、本発明に好んで用いることができる。
本発明においては、可塑剤は1種のみで用いても良いし、2種以上を混合して使用することもできる。
本発明の光学フィルムは、波長590nmで測定したRe、Rth及びNz(下記式(I)〜(III)にて定義される)が、式(IV)〜(VI)を満たす。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
(式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。)
上記式(IV)〜(VII)を満たすフィルムは高い光学異方性が発現するので、VAモード、TNモード、OCBモードのような液晶表示装置の光学補償フィルムとして好適に用いることができ、該液晶表示装置の表示のコントラスト比を向上させたり、視野角や色味を改善したりすることができる。
なお、本発明の光学フィルムでは、上記式(IV)〜(VII)がフィルム面内の少なくとも1点において満足されればよいが、フィルム面内の任意の点で上記式(IV)〜(VII)が満足されることが好ましい。
Reの値としては、30≦Re≦200が好ましく、30≦Re≦100がより好ましく、40≦Re≦80が更に好ましい。
Rthの値としては、70≦Rth≦300が好ましく、70≦Rth≦200がより好ましく、100≦Rth≦150が更に好ましい。
Nzの値としては、2.20≦Nz≦6.00が好ましく、2.30≦Nz≦5.00がより好ましく、2.40≦Nz≦4.00が更にこの好ましい。
Reの値としては、30≦Re≦200が好ましく、30≦Re≦100がより好ましく、40≦Re≦90が更に好ましい。
Rthの値としては、70≦Rth≦400が好ましく、100≦Rth≦300がより好ましく、150≦Rth≦250が更に好ましい。
Nzの値としては、2.50≦Nz≦8.00が好ましく、2.80≦Nz≦7.000がより好ましく、3.00≦Nz≦6.00が更に好ましい。
Reの値としては、20≦Re≦150が好ましく、20≦Re≦100がより好ましく、20≦Re≦70が更に好ましい。
Rthの値としては、40≦Rth≦200が好ましく、40≦Rth≦150がより好ましく、40≦Rth≦100が更に好ましい。
Nzの値としては、2.20≦Nz≦6.00が好ましく、2.30≦Nz≦5.00がより好ましく、2.40≦Nz≦4.00が更にこの好ましい。
Reの値としては、30≦Re≦200が好ましく、30≦Re≦150がより好ましく、30≦Re≦100が更に好ましく、40≦Re≦80が特に好ましい。
Rthの値としては、70≦Rth≦400が好ましく、70≦Rth≦300がより好ましく、100≦Rth≦250が更に好ましく、100≦Rth≦150が特に好ましい。
Nzの値としては、2.00≦Nz≦10.00が好ましく、2.10≦Nz≦7.000がより好ましく、2.30≦Nz≦5.50が更に好ましく、2.50≦Nz≦4.00が特に好ましい。
ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHにより算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
Nzは、Re及びRthに基づいて式(III)により算出する。なお、平均屈折率の仮定値と膜厚に基づいて、KOBRA 21ADHによりnx、ny、nzを算出し、これらのnx、ny、nzの値から式(III)によりNzを算出することもできる。
本発明の光学フィルムの測定では、光学フィルムの平均屈折率を1.48としてレタータデーションの測定を行う。
本発明の光学フィルムでは、フィルム内でのRe及びRthのばらつきが小さい方が、適用する液晶表示装置のコントラスト比、視野角や色味の改善の点で好ましい。具体的には、フィルム面内において、100mm間隔の2点におけるReの差分が1.5nm以内であることが好ましく、1.2nm以内であることがより好ましく、0.8nm以内であることが更に好ましい。また、フィルム面内において、100mm間隔の2点におけるRthの差分が3.0nm以内であることが好ましく、2.0nm以内であることがより好ましく、1.5nm以内であることが更に好ましい。
Re及びRthのバラツキは延伸条件、乾燥条件などにより調節することができるが、特に延伸温度による調整が好ましい。延伸温度は製膜、乾燥後の未延伸の高分子膜のTgを基準としてTg±30℃が好ましく、Tg±25℃がより好ましく、Tg±20℃が更に好ましく、Tg±15℃が特に好ましく、Tg±15℃が最も好ましい。
本発明の光学フィルムでは、フィルムとして均一な光学異方性を発現させる観点から、フィルム内での遅相軸のばらつきが小さいことが好ましい。具体的には、フィルム面内の任意の2点における遅相軸のなす角度が0.5°以下であることが好ましい。ここで、2点の遅相軸のなす角度として鋭角と鈍角がある場合は、鋭角の角度を指すものとする。該2点における遅相軸のなす角度としては、0.3°以下であることがより好ましく、0.2°以下であることが更に好ましく、0.1°以下であることが特に好ましい。
また、言い換えると、光学フィルムの搬送方向を0°とし、搬送方向に直交する方向(幅方向)を90°としたときに、該搬送方向に対する遅相軸の角度の最大値と最小値の差分が0.5°以下であることが好ましく、0.3°以下であることがより好ましく、0.2°以下であることが更に好ましく、0.1°以下であることが特に好ましい。遅相軸のばらつきは、フィルムの延伸方向と延伸率により調整することができる。
遅相軸のばらつきは、搬送方向と搬送方向に垂直な方向への延伸倍率が、大きい方向の延伸倍率が小さい方向の延伸倍率に対して1.15倍以上とすることが好ましく、1.20以上とすることがより好ましく、1.25以上とすることが更に好ましい。
フィルムの遅相軸のばらつきは、フィルム面内の任意の数の測定点の各点において遅相軸方位を測定し、その差分を取ることで求めることができる。フィルムの遅相軸の方向は複屈折位相差測定装置(AD−200型、エトー(株)製)で測定することができる。
フィルムの遅相軸の角度としては、搬送方向を0°としたとき、90°±0.5℃以内が好ましく、90°±0.3°以内がより好ましく、90°±0.2°以内が更に好ましく、90°±0.1°以内が特に好ましく、90°±0.05°以内が最も好ましい。
本発明では、所望の光学異方性を発現させるため、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。
本発明のレターデーション発現剤としては、セルロースエステル及びアクリル樹脂の両方に対して相溶性が良く、セルロースエステルとアクリル樹脂とが相溶状態で含まれるフィルムに対しても相溶性が良い化合物を使用することが好ましい。また、固有複屈折が大きく、延伸時に延伸方向へと沿って分子配向する化合物を使用することが好ましい。
本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、円盤状化合物、及び棒状化合物などが挙げられる。また、液晶性を示す化合物もレターデーション発現剤として用いることができ、前記円盤状化合物又は棒状化合物が液晶性を示す化合物であってもよい。
なかでも、VAモードの液晶表示装置の光学補償の観点からは、フィルム内での配向性がよく、Rthの発現性が大きなレターデーション発現剤が好ましい。この観点からは、円盤状化合物又は液晶性を示す化合物が好ましく、円盤状化合物がより好ましい。
レターデーション発現剤は2種類以上を用いてもよく、円盤状化合物同士、棒状化合物同士、液晶性化合物同士の組み合わせでも、異なる組み合わせでも良く、更にその他の構造のレターデーション発現剤と組み合わせて用いても良い。2種類以上のレターデーション発現剤を用いる場合は、合計量が上記の範囲にあることが好ましい。
前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが好ましい。
ここで、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族ヘテロ環を含む。
芳香族ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。芳香族ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
(置換基群A)
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性へテロ環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、更に置換基(例、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性ヘテロ環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
一般式(1):
X11としては−NR13−が好ましく、R13は水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基としてはメトキシ基が、アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
置換基の位置はメタ位又はパラ位が好ましく、アルキル基はメタ位が、アルコキシ基はパラ位が特に好ましい。
X11が単結合である場合のヘテロ環基は、窒素原子に遊離原子価をもつヘテロ環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましく、5員環であることが最も好ましい。ヘテロ環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、ヘテロ環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつヘテロ環基の例を示す。
R13が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8が更にまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
R13が表す芳香族環基及びヘテロ環基は、R12が表す芳香族環及びヘテロ環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及びヘテロ環基は更に置換基を有していてもよく、置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様の置換基を挙げることができる。
棒状化合物は、直線的な分子構造を有する。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上180度以下であることを意味する。
ここで、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、更に置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、更に好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することが更に好ましい。
アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、更に好ましくは2〜6であり、更に好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン又はエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、更に好ましくは6〜12である。
棒状化合物としては、下記式一般式(3)で表される化合物が更に好ましい。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することが更に好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン又はエチレン)であることが最も好ましい。
L2及びL3は、−O−CO−又は−CO−O−であることが特に好ましい。
一般式(2)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレン又はエチニレンである。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc., 113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem., 40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
液晶性を示す化合物は、100℃〜300℃の温度範囲で液晶相を発現することが好ましい。より好ましくは120℃〜200℃である。液晶相は、ネマチィク相又はスメクティック相が好ましい。
一般式(4):
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー、91巻、165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
本発明の光学フィルムの厚さは、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、20〜160μmがより好ましく、40〜120μmが更に好ましく、40〜100μmが特に好ましく、40〜80μmが最も好ましい。この範囲にあると温湿度変化に伴うパネルの反りが小さくすることができる。
本発明の光学フィルムは、全ヘイズ値が2.00以下であることが好ましい。全ヘイズ値が2.00以下であると、フィルムの透明性が高く、液晶表示装置のコントラスト比や輝度向上に効果がある。全ヘイズ値は、1.00以下がより好ましく、0.50以下であることが更に好ましく、0.30以下が特に好ましく、0.20以下が最も好ましい。全ヘイズ値は低いほど光学的性能が優れるが原料選択や製造管理やロールフィルムのハンドリング性も考慮すると0.01以上であることが好ましい。
本発明の光学フィルムの内部ヘイズ値は、1.00以下であることが好ましい。内部ヘイズ値を1.00以下とすることで、液晶表示装置のコントラスト比を向上させ、優れた表示特性を実現することができる。内部ヘイズ値は、0.50以下がより好ましく、0.20以下が更に好ましく、0.10以下が特に好ましく、0.05以下が最も好ましい。原料選択や製造管理等の観点からは0.01以上であることが好ましい。
本発明の光学フィルムとしては、特に、全ヘイズ値が0.30以下であり、内部ヘイズ値が0.10以下であることが好ましい。
全ヘイズ値及び内部ヘイズ値は、フィルム材料のセルロースエステルやアクリル樹脂の種類や添加量、添加剤の選択(特に、マット剤粒子の粒径、屈折率、添加量)や、更にはフィルム製造条件(延伸時の温度や延伸倍率など)により調整することができる。
なおヘイズの測定は、本発明のフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定することができる。
本発明の光学フィルムの弾性率は、幅方向(TD方向)で1800〜7000MPaであることが好ましい。
本発明において、TD方向の弾性率が上記範囲とすることにより、高湿及び高温高湿環境経時後の黒表示時の表示ムラやフィルム作製時の搬送性、端部スリット性や破断のし難さ等の製造適性の観点で好ましい。TD弾性率が小さすぎると高湿及び高温高湿環境経時後の黒表示時の表示ムラが発生し易くなり、また製造適性に問題が生じ、大きすぎるとフィルム加工性に劣る為、TD方向の弾性率は、1800〜5000MPaがより好ましく、1800〜4000MPaであることが更に好ましく、1800〜3000であることが特に好ましい。
また、本発明の光学フィルムの搬送方向の(MD方向)の弾性率は、1800〜4000MPaが好ましく、1800〜3000MPaであることがより好ましい。
更に、TD方向とMD方向の弾性率の比は、コントラスト、光モレの観点から、1.15以上であることが好ましく、1.15〜2.20がより好ましく、1.25〜2.00であることが更に好ましい。
ここで、フィルムの搬送方向(長手方向)とは、フィルム作製時の搬送方向(MD方向)であり、幅方向とはフィルム作製時の搬送方向に対して垂直な方向(TD方向)である。
フィルムの弾性率は、フィルム材料のセルロースエステルやアクリル樹脂の種類や添加量、添加剤の選択(特に、マット剤粒子の粒径、屈折率、添加量)や、更にはフィルム製造条件(延伸倍率など)により調整することができる。
弾性率は、例えば、東洋ボールドウィン(株)製万能引っ張り試験機“STM T50BP”を用い、23℃、70RH%雰囲気中、引張速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定して求めることができる。
本発明の光学フィルムのガラス転移温度Tgは製造適性と耐熱性の観点より、100℃以上200℃以下が好ましく、更に100℃以上150℃以下が好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で測定したときにフィルムのガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めることができる。
また、ガラス転移温度の測定は、以下の動的粘弾性測定装置を用いて求めることもできる。本発明のフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜250℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とする。
本発明の光学フィルムの含水率(平衡含水率)は、偏光板の保護フィルムとして用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける含水率が、0〜4質量%であることが好ましい。0.1〜2.5質量%であることがより好ましく、0.5〜1.5質量%であることが更に好ましい。平衡含水率が4質量%以下であれば、レターデーションの湿度変化による依存性が大きくなり過ぎず、液晶表示装置の常温、高湿及び高温高湿環境経時後の黒表示時の表示ムラを抑止の点からも好ましい。
含水率の測定法は、フィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”及び“VA−05”{共に三菱化学(株)製}にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出できる。
フィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、60℃、95%RHの条件において測定される。
透湿度は、フィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこで膜厚の異なるサンプルでは、基準を80μmに設けて換算する必要がある。膜厚の換算は、下記数式に従って行うことができる。
数式:80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚(μm)/80(μm)。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁「蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)」に記載の方法を適用することができる。
本発明の光学フィルムの透湿度は、100〜2000g/m2・24hであることが好ましい。150〜1500g/m2・24hであることがより好ましく、150〜1200g/m2・24hであることが更に好ましい。透湿度が4000g/m2・24h以下であれば、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性が小さく、液晶表示装置の常温、高湿及び高温高湿環境経時後の黒表示時の表示ムラを抑止の点からも、好ましい。
本発明の光学フィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率、及び80℃、DRY環境(5%RH以下)の条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率が、いずれも0.5%以下であることが好ましい。
より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.15%以下である。
ている。
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして使用した場合には、偏光子の収縮による応力などにより複屈折(Re、Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、15Br以下であることが好ましく、−3〜12Brであることがより好ましく、0〜11Brであることが更に好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、セルロースエステルとアクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95である高分子膜を製膜する工程と、高分子膜の搬送方向及び該搬送方向と直交する幅方向の少なくとも一方に該高分子膜を延伸する工程とを含み、該高分子膜を延伸する工程における搬送方向の延伸倍率に対する幅方向の延伸倍率の比が1.15以上である。ここで、セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、製造される光学フィルムは、前述の式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて前述の式(IV)〜(VI)を満たす。
前記高分子膜は、セルローエステルとアクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95であり、好ましくはセルロースエステルとアクリル樹脂が相溶状態となっている。
延伸に用いる高分子膜は乾燥フィルムでも湿潤フィルムでも良いが、湿潤フィルムであることがより好ましい。
延伸に用いる高分子膜としては、乾燥後の未延伸の高分子膜のガラス転移温度Tgは100〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。
ここで、乾燥後の高分子膜(乾燥フィルム)とは、膜中の残留溶剤量が3.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である高分子膜を指す。ガラス転移温度は、セルロールエステルとアクリル樹脂の種類や質量比により調整することができる。
溶液流延法の場合、セルロースエステル、アクリル樹脂及び溶媒を含む高分子溶液(ドープ)を支持体上に流延することで前記高分子膜が形成される。
前記ドープ中、セルロールエステルとアクリル樹脂との質量比は、70:30〜5:95であり、好ましくは70:30〜15:85であり、より好ましくは70:30〜30:70であり、更に好ましくは49:51〜30:70である。
ドープを形成するのに有用な溶媒は、セルロースエステル、アクリル樹脂、及びその他の添加剤を同時に溶解するものであれば、制限なく用いることができる。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
その他の溶媒としては、例えば特開2007−140497号公報に記載の溶媒を用いることができる。
ドープは、0℃以上の温度(常温又は高温)で処理することからなる一般的な方法で調製することができる。本発明のドープの調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にジクロロメタン)とアルコール(特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノール)を用いることが好ましい。
セルロースエステル及びアクリル樹脂の合計量は、得られる高分子溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースエステル及びアクリル樹脂と有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースエステル及びアクリル樹脂と有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、更に好ましくは80〜110℃である。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
次に、上記で得られたドープを用いて本発明の光学フィルムを製造する方法を説明する。
図1はフィルム製造ライン20を示す概略図である。ただし、本発明は、図1に示すようなフィルム製造ラインに限定されるものではない。フィルム製造ライン20には、ストックタンク21、濾過装置30、流延ダイ31、回転ローラ32,33に掛け渡された流延バンド34及びテンタ式乾燥機35などが備えられている。更に耳切装置40、乾燥室41、冷却室42及び巻取室43などが配されている。
なお、回転ローラ32,33を直接支持体として用いることも可能である。
ドープ22は、攪拌機61の回転により常に均一化されている。ドープ22には、この攪拌の際にもレターデーション発現剤、可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤を混合させることもできる。
流延ダイ31から流延バンド34にかけては流延ビードが形成され、流延バンド34上には流延膜69が形成される。流延時のドープ22の温度は、−10℃〜57℃であることが好ましい。
流延ダイ31からドープ22は流延ビードを形成して、流延バンド34上に流延される。
流延膜69は流延バンド34の移動に伴い移動する。
その後に多数のローラが設けられている渡り部80を搬送させて、テンタ式乾燥機35に湿潤フィルム74を送り込む。渡り部80では、送風機81から所望の温度の乾燥風を送風することで湿潤フィルム74の乾燥を進行させる。このとき乾燥風の温度が、20℃〜250℃であることが好ましい。
搬送方向への延伸は、渡り部80で下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることにより湿潤フィルム74に搬送方向にドローテンションを付与させて行うことができる。
テンタ式乾燥機35に送られている湿潤フィルム74は、その両端部がクリップで把持されて搬送されながら乾燥される。幅方向への延伸は、この際、テンタ式乾燥機35を用いて行うことができる。
なお、テンタ式乾燥機35の内部を温度ゾーンに区画分割して、その区画毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。
このように、渡り部80及び/又はテンタ式乾燥機35で湿潤フィルム74を搬送方向と幅方向との少なくとも1方向を延伸することができる。
ここで、渡り部80及び/又はテンタ式乾燥機35において、湿潤フィルム74を未延伸のまま乾燥し、フィルム中の残留溶剤量が3.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である乾燥フィルムとした後に、延伸を行っても良い。
なお、乾燥フィルムを延伸する場合、未延伸のまま乾燥フィルムを作製して一度巻き取った後、更に延伸を行っても良い。
延伸に用いる高分子膜は乾燥フィルムでも湿潤フィルムでも良いが、湿潤フィルムであることがより好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、搬送方向の延伸倍率に対する幅方向の延伸倍率の比が1.15以上とする。搬送方向の延伸倍率に対する幅方向の延伸倍率の比を1.15以上とすることで、フィルムの遅相軸のばらつきを小さくし、均一な光学異方性が発現するフィルムを得ることができる。搬送方向の延伸倍率に対する幅方向の延伸倍率の比は、好ましくは1.20以上であり、より好ましくは1.30以上である。搬送方向の延伸倍率に対する幅方向の延伸倍率の比の上限は、特に限定されないが、2.00以下が好ましい。
本発明の流延条件は、未延伸でフィルムを作製した場合に、フィルムの厚みが10〜400μmとなるような条件で行うことが好ましく、20〜320μmがより好ましく、40〜240μmが更に好ましく、40μm〜200μmが特に好ましく、40μmから100μmとなるような条件とすることが最も好ましい。
この範囲にあると、延伸後のフィルムの膜厚を小さくでき、湿度変化時、高温時及び高温高湿環境経時後のレターデーション変化が小さくなり、更に使用する樹脂が少なく安価なフィルムが製造できるので好ましい。
また、上記では、本発明の光学フィルムの製造方法の一例をドープをバンド上に流延させた例で説明したが、ドープをドラム上に流延させてもよい。
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が挙げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることが好ましい。より好ましくは50°以下であり、45°以下であることが更に好ましい。
アルカリ鹸化処理の1つの例としては、光学フィルムを1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥する方法等が挙げられるが、本発明ではこの条件、方法に限定されない。
アルカリ鹸化液としては特に限定されないが、水酸化ナトリウムの他に、例えば他に水酸化カリウムなどを用いることもできる。
アルカリ鹸化液の濃度は特に限定されないが、フィルムの面状と鹸化性能の観点から、0.1規程〜10規程が好ましく、1.0〜8.0規程がより好ましく、1.0規程〜5.0規程が特に好ましい。
光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、光学フィルムと他の層(例えば、偏光子、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置の光学補償フィルムとして好ましく用いることができる。液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、及び該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の本発明の光学フィルムを光学補償フィルムとして配置した構成であることが更に好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VA及びHANモードの液晶表示装置が好ましく、TN、OCB、IPS及びVAモードの液晶表示装置がより好ましく、VAモードの液晶表示装置が更に好ましい。
その際に、本発明の光学フィルムには各種の機能層を付与してもよい。機能層としては、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学異方性層、配向層、液晶層などである。これらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルムは、偏光板用保護フィルムとして用いることもできる。この場合、液晶表示装置の光学補償フィルムと偏光板用保護フィルムとを兼ねることができる。偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られた光学フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。また前記のような表面処理を行ってもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶セルを含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板用保護フィルムは、2枚の偏光板のいずれの保護フィルムとして用いることができるが、各偏光板の2枚の保護フィルムのうち、偏光子に対して液晶セル側に配置される保護フィルムとして用いられることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差フィルム、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。
液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光板、及び必要に応じて該液晶セルと該偏光板との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、更にガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いること
ができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明の光学フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償フィルムや光学補償フィルムの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。これらの態様において本発明の光学フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムは、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の位相差フィルムの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる位相差フィルムについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号及び特開平9−26572号の各公報の他、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
施例に限定されない。
下記表1に記載のアシル基の種類、置換度及び質量平均分子量Mwの異なるセルロースエステルを使用した。
これらのセルロースエステルは、以下のように合成した。
セルロースに触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加して40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の量を調整することでアセチル基及びプロピオニル基の置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。更にこのセルロースエステルの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
下記に記載のアクリル樹脂を使用した。これらのアクリル樹脂は市販品や公知の合成方法により入手可能である。
AC−1(メチルメタクリレート(MMA)とメタクリレート(MA)との共重合体、MMA:MA=97:3(質量%)、質量平均分子量550000)
AC−2(メチルメタクリレート(MMA)とメタクリレート(MA)との共重合体、MMA:MA=97:3(質量%)、質量平均分子量1100000)
AC−3(メチルメタクリレート(MMA)とメタクリレート(MA)との共重合体、MMA:MA=40:60(質量%)、質量平均分子量100000)
AC−4(メチルメタクリレート(MMA)とメタクリレート(MA)との共重合体、MMA:MA=60:40(質量%)、質量平均分子量100000)
AC−5(デルペット80N(商品名)、旭化成ケミカルズ(株)製、質量平均分子量100000)
AC−6(ダイヤナールBR83(商品名)、三菱レイヨン(株)製、質量平均分子量40000)
AC−7(ダイナヤールBR85(商品名)、三菱レイヨン(株)製、質量平均分子量280000)
AC−8(ダイヤナールBR88(商品名)、三菱レイヨン(株)製、質量平均分子量480000)
上記市販のアクリル樹脂(AC−5〜AC−8)における分子中のMMA単位の割合は、いずれも90質量%以上99質量%以下であった。
下記に記載のレターデーション発現剤を使用した。これらのレターデーション発現剤は公知の合成方法により入手可能である。
テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの重縮合体で、重縮合体の両末端が安息香酸により封止されたもの。質量平均分子量は800。
WO2009/081607の[0292]〜[0296]に記載の方法で3層構造アクリル微粒子を合成し、使用した。
[光学フィルム101の作製]
(ドープ調製)
下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶
解し、ドープを調製した。
(ドープ組成)
セルロースエステル、アクリル樹脂 合計100質量部
(セルロースエステルとアクリル樹脂の比率(質量比)は表2記載)
レターデーション発現剤R−1 7.0質量部
ジクロロメタン 141.2質量部
エタノール 19.3質量部
また、上記と同様の方法で流延を行い、支持体から剥離した高分子膜の両端をクリップを有したテンターで固定して、幅方向(TD方向)に延伸し、搬送ながら乾燥ゾーンで130℃で乾燥し、耳部をスリットして幅1500mmのフィルム101を得た。テンターで延伸を始めたときの高分子膜中の残留溶剤量は10質量%であった。ここで、搬送方向(MD方向)については、ステンレスバンドと支持体の回転速度とテンターの運動速度から算出すると、搬送により若干延伸された。延伸時の温度及び延伸倍率等の諸条件を下記表2に示す。
フィルム102〜154の各フィルムのドープは、フィルム101のドープにおいて、セルロースエステルとアクリル樹脂の種類と比率、レターデーション発現剤の種類と添加量、固形分濃度を下記表2の記載のものに変更した。フィルム153のドープについては、更に、アクリル微粒子を5質量部加えた。各ドープにおいて、ジクロロメタンとエタノールについては両者の比率がフィルム101のドープと同じ比率と同じとなり、かつ固形分濃度が表2に記載のものになるように量を調製して、フィルム102〜154のドープを作製した。
作製した各ドープを用いて、フィルム1と同様にしてフィルム102〜154を作製した。延伸時の温度及び延伸倍率等の諸条件を下記表2に示す
(ドープ調製)
下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶
解し、ドープを調製した。
(ドープ組成)
セルロースエステル、アクリル樹脂 合計100質量部
(セルロースエステルとアクリル樹脂の比率(質量比)は表2記載)
ジクロロメタン 300質量部
エタノール 40質量部
(ドープ組成)
セルロースエステル、アクリル樹脂 合計100質量部
(セルロースエステルとアクリル樹脂の比率(質量比)は表2記載)
レターデーション発現剤R−4 10.0質量部
アクリル微粒子 5質量部
ジクロロメタン 300質量部
エタノール 40質量部
また、上記と同様の方法で流延を行い、支持体から剥離した高分子膜の両端をクリップを有したテンターで固定して、幅方向(TD方向)に延伸し、搬送ながら乾燥ゾーンで130℃で乾燥し、耳部をスリットして幅1500mmのフィルム155、156を得た。テンターで延伸を始めたときの高分子膜の残留溶剤量は10質量%であった。ここで、搬送方向(MD方向)については、ステンレスバンドと支持体の回転速度とテンターの運動速度の差により、積極的に延伸を行った。延伸時の温度及び延伸倍率等の諸条件を下記表2及び7に示す。
(ドープ調製)
下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶
解し、ドープを調製した。
(ドープ組成)
セルロースエステルCA−15 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 4.9質量部
レターデーション発現剤R−1 4.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
ジクロロメタン 429.7質量部
メタノール 64.2質量部
(ドープ組成)
セルロースエステルCA−15 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 4.9質量部
レターデーション発現剤R−1 7.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
ジクロロメタン 440.8質量部
メタノール 65.9質量部
各光学フィルムと同処方(ただし、延伸前までの処方)にて未延伸フィルムを作製し、該未延伸フィルムについて、そのガラス転移温度Tgを粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))を用いて測定した。測定値は下記表2に示す。フィルム101〜156の未延伸フィルムにおいては、測定されるガラス転移温度が1つであり、セルロースエステルとアクリル樹脂とが相溶状態にあることが確認された。同様に、該未延伸フィルムの延伸により得られるフィルム101〜156においてもセルロースエステルとアクリル樹脂とが相溶状態にあることが確認された。
フィルムの製造適正の指標として、フィルム作成時(高分子膜の製膜、延伸、乾燥時)の破断頻度を以下の基準で評価した。
○:フィルム作製時に破断はほとんど生じない。
△:フィルム作製時に破断がまれに生じることがある。
×:フィルム作製時に破断が頻繁に生じ、フィルム作製が困難であった。
作製したフィルムを、150mm(MD方向)×10mm(TD方向)に切り出し、25℃60%RHで2時間以上調湿し、フィルムを中心部で、フィルムの両面に対して、それぞれ1回ずつ折り曲げた時の破断頻度を機械強度の基準として評価した。
ここで、破断とはフィルムが2つに分離することを表す。
○:フィルム折り曲げ後に破断はほとんど生じない。
△:フィルム折り曲げ後に破断はまれに生じることがある。
×:フィルム折り曲げ後に破断が頻繁に生じる。
作製したフィルムを、25℃60%RHで2時間以上調湿し、複屈折測定装置(KOBRA 21ADH、王子計測器(株)製)を用いて、25℃60%RHでの波長590nmにおけるRe値及びRth値を測定し、Nz値はNz=Rth/Re+1/2の式に基づいて計算により求めた。測定は得られたフィルムについて、幅方向中心部の1点にて行ったが、任意の点で測定を行っても良い。
フィルムの幅方向10点、長手方向(搬送方向)7点を測定点として、それぞれの測定点における遅相軸を複屈折位相差測定装置(AD−200型、エトー(株)製)で測定した。ここで、各測定点について、搬送方向を0°とし、搬送方向に直交する方向(幅方向)の90°を基準として、搬送方向に対する遅相軸の角度を測定し、7点の測定点のなかで遅相軸の角度の最大値と最小値との差分を求め、以下の基準で評価した。
A:差分が0.20°以下
B:差分が0.20°より大きく、0.30°以下
C:差分が0.30°より大きく、0.50°以下
D:差分が0.5°より大きい
フィルムの幅方向100mm間隔で10点、長手方向(搬送方向)100mm間隔で7点を測定点として、それぞれの測定点におけるRe及びRthを複屈折測定装置(KOBRA 21ADH、王子計測器(株)製)にて測定した。100mm間隔で隣接する測定点間のRe及びRthの差分を求め、最も大きな差分を以下の基準で評価した。
−Reばらつき−
A:差分が0.8nm以下
B:差分が0.8nmより大きく、1.2nm以下
C:差分が1.2nmより大きく、1.5nm以下
D:差分が1.5nmより大きい
−Rthばらつき−
A:差分が1.5nm以下
B:差分が1.5nmより大きく、2.0nm以下
C:差分が2.0nmより大きく、3.0nm以下
D:差分が3.0nmより大きい
ヘイズの測定は、各フィルムから40mm×80mmの試料を切り出し、以下の測定により全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)を測定した。
1)フィルムの全ヘイズ(H)は、JIS K−7136に従って、ヘイズメーターNDH2000(日本電色工業(株))を用いて測定した。
2)フィルムの表面及び裏面に流動パラフィンを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATAUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間に流動パラフィンのみを挟んで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
フィルムを80℃DRY(5%RH以下)環境下で24時間経時前後での幅方向(TD方向)の寸法変化{(経時前の寸法)−(経時後の寸法)/(経時前の寸法)×100(%)}の絶対値を測定し、以下の基準で評価した。
A:寸法変化が0.15%以下
B:寸法変化が0.15%より大きく、0.30%以下
C:寸法変化が0.30%より大きく、0.50%以下
D:寸法変化が0.50%より大きい
1)フィルムの鹸化
作製したフィルム157、158及び市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
2)偏光子の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて厚み20μmの偏光子を作製した。
3)貼り合わせ
この偏光子の片面にアクリル接着剤を用いて、作製したフィルム101にコロナ処理を施したのち、貼合した。もう片側にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化した市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、フィルム101を用いた偏光板を作製した。フィルム102〜156を用いた偏光板も同様に作製した。
また、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に鹸化したフィルム157を、もう片側に鹸化した市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、フィルム157を用いた偏光板を作製した。フィルム158を用いた偏光板も同様に作製した。
ここで、偏光子の透過軸とフィルム101〜158の遅相軸とが平行になるように配置した。偏光子の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成してVAモード液晶セルを作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
上記のVAモード液晶セルの上側偏光板(視認側)と、下側偏光板(バックライト側)に、上記のように作製した偏光板を、フィルム101〜158が偏光子に対して液晶セル側となるように設置した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板と下側偏光板とは、上側偏光板の透過軸と下側偏光板の透過軸が直交するようにクロスニコル配置とした。
上記のVAモード液晶セルを使用した液晶表示装置の上側偏光板には、市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)で偏光子の両面を挟み込んだ構成の偏光板を用い、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアシレートフィルムの遅相軸とは直交するように配置した。下側偏光板(バックライト側)には、上記のようにフィルム101〜158を用いて作製した偏光板を、フィルム101〜158が液晶セル側となるように設置した。上側偏光板及び下側偏光板は粘着剤を介して液晶セルに貼りつけた。上側偏光板の透過軸が上下方向に、そして下側偏光板の透過軸が左右方向になるように、クロスニコル配置とした。
TNモード液晶セルを使用した液晶表示装置(AL2216W、日本エイサー(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記のようにフィルム101〜158を用いて作製した偏光板を上側偏光板及び下及び下側偏光板(バックライト側)として貼り付けた。ここで、フィルム101〜158が液晶セル側となるように粘着剤を介して貼り付けた。このとき、上側偏光板の透過軸と、下側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。この様にして、TNモード液晶表示装置を作製した。
各モードでの評価は、同一モード内における相対評価で行った。
上記で作製した液晶表示装置について、以下のようにして視野角特性を評価した。
作製した液晶表示装置で黒表示を行い、斜めから目視にて観察し、色・明るさの好ましさを、下記基準により5段階で評価した。
◎:斜め方向の色、明るさが十分小さい。
○:斜め方向の色、明るさとも気にならない。
○△:斜め方向の色がやや気になるが、明るさは気にならない。
△:斜め方向の色、明るさはやや気になる。
×:斜め方向の色・明るさが目立つ。
液晶表示装置を25℃60%RHで24時間調湿した後、25℃10%RHの環境下で点灯をさせ、2時間後の黒表示時の色ムラの程度を目視で観測し、以下の基準により4段階で評価した。
◎:色ムラは観測されなかった。
○:表示面の半分以下の面積で弱い色ムラが観測された。
△:表示面の半分以上の面積で弱い色ムラ又は半分以下の面積で強い色ムラが観測された。
×:表示面の半分以上の面積で強い色ムラが観測された。
液晶表示装置を60℃90%RHで48時間経過させた後、25℃60%RHの環境下で24時間調湿した後で点灯をさせ、黒表示時の色ムラの程度を目視で観測し、以下の基準により4段階で評価した。
◎:色ムラは観測されなかった。
○:表示面の半分以下の面積で弱い色ムラが観測された。
△:表示面の半分以上の面積で弱い色ムラ又は半分以下の面積で強い色ムラが観測された。
×:表示面の半分以上の面積で強い色ムラが観測された。
フィルム101〜107、157、158を比較すると、セルロースエステル/アクリル樹脂比率が本発明の範囲であるフィルム103〜106は、本発明の範囲外であるフィルム101を使用した液晶表示装置よりも視野角特性が優れており、フィルム107、157、158を使用した液晶表示装置よりも湿度変化時の黒表示ムラが優れている。
アクリル樹脂比率が本発明の範囲より大きいフィルム101は、光学発現性が不足しており、更に製造時の破断が生じやすく、機械強度が弱く、熱変形が生じやすい等の問題を有しており、光学フィルムには適さない。これはアクリル樹脂の特徴が強く現れていることが原因である。
アクリル樹脂比率が本発明の範囲より小さいフィルム107、157、158は、湿度変化時の黒表示ムラ、高湿環高湿境経時後の黒表示ムラの程度が悪く、光学フィルムには適さない。これはセルロースエステル比率が増加し、フィルムの含水率が大きくなり、環境変化時の水の複屈折による影響が大きくなること、水によりTgが低下して高温高湿耐久時のフィルム変質が生じやすくなること、またフィルムの透湿度が増加してフィルムを透過する水が増加することで、偏光子の劣化や偏光子の変形で偏光子とフィルム間で応力が発生し、光学特性変化が生じることが原因と推定される。
また、フィルム102はセルロースエステル樹脂/アクリル樹脂比率は本発明の範囲内であるが、光学発現性が不足しており、光学フィルムには適さない。
フィルム102、155、156は、セルロースエステル樹脂/アクリル樹脂比率は本発明の範囲内であるが、光学発現性が不十分である。これらのフィルムと比較して、本発明の光学フィルムは視野角特性に優れる。
セルロースエステルの置換基及び置換度違いのフィルム113、133〜136、143〜146を比較する。
プロピオニル置換度が小さいCA−9を用いたフィルム134と全置換度が小さいCA−10を用いたフィルム136は、他のフィルムと比較して全ヘイズ、内部ヘイズが大きい。全ヘイズ、内部ヘイズについては、全置換度が高く、また炭素数3〜7のアシル基の置換度も大きいセルロースエステル樹脂のほうが、アクリル樹脂の相溶性が高く、本発明の範囲の中でも優れた特性を有することが分かる。
更にセルロースアセテートプロピオネートで、プロピオニル置換度が2.10のCA−8を使用したフィルム133とプロピオニル置換度が2.56のCA−1を使用したフィルム113を比較すると、フィルム113の全ヘイズ、内部ヘイズが小さいことより、プロピオニル置換度が大きく、アセチル置換度が小さいセルロースエステル樹脂がより適することが分かる。
また分子量が320000であるCA−7を使用したフィルム137はヘイズが最も大きく、次に分子量が270000であるCA−6を使用したフィルム138が大きい。分子量が250000より大きい領域で分子量が増加すると、ヘイズが増加することが分かる。
アクリル樹脂違いのフィルム113、146〜152を比較すると、分子量が本発明の範囲外であるAC―6を使用したフィルム146のみが製造時の破断頻度が大きく、機械強度が不足していることが分かる。
これは、MMA比率が大きいほどセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性が高いことによる。
レターデーション発現剤違いのフィルム113、154、156を比較すると、レターデーション発現剤として円盤状化合物を用いたフィルム113と、液晶性化合物を使用したフィルム154は、フィルム156と比較して大きなNz値を有し、視野角特性に優れる。
円盤状化合物及び液晶性化合物は固有複屈折が大きく、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂共に相溶性が良好で、更に延伸時に配向しやすいことが理由と推測される。
円盤状化合物を使用したフィルム113と、液晶性化合物を使用したフィルム154は、軸ばらつき、Re、Rthばらつきの観点で円盤状化合物を使用したフィルム113が優れる。更に、円盤状化合物を使用したフィルム113は、液晶性化合物を使用したフィルム154と比較して高温高湿環境経時後の黒表示ムラに優れる。
円盤状化合物は、液晶性化合物と比較して、延伸時の温度や応力のムラや高温高湿時経時間での環境変化により、配向が影響を受け難いことが原因と推定している。
延伸温度違いのフィルム113、119を比較すると、延伸温度が未延伸フィルムのTg±30℃の範囲内に入っているフィルム113が、Tg+35℃のフィルム119よりもRe、Rthバラツキが小さい。
延伸温度がTg+30℃よりも大きいと、フィルムが軟化して延伸されやすくなり、フィルム内の応力分布の影響が大きくなると推測される。反対にTg−30℃より小さいと、分子の運動性が低い状態で延伸することになり、延伸時に破断が生じやすくなる。
Re、Rthばらつきが小さなフィルムは、視野角特性に優れる。
TD/MD延伸比率が小さなフィルム110、114、126、127、132、155は他のフィルムと比較して軸ばらつきが大きく、この中でもTD/MD延伸比率が最も小さな155は軸ばらつきがより大きい。
TD/MD延伸倍率を大きくすることで、一方向に分子が配向しやすくなり、軸ばらつきを小さくすることが出来る。
軸ばらつきが小さなフィルムは、視野角特性に優れる。
また、表4〜表6より、液晶モードにより好ましい光学特性が異なることが示されているが、本発明のフィルムは、本発明のフィルムを有する偏光板を液晶セルの上下に1枚ずつ使用してVAモードを補償することが最も好ましい。
[光学フィルム201の作製]
(ドープ調製)
下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶
解し、ドープを調製した。
(ドープ組成)
セルロースエステル、アクリル樹脂(アクリル樹脂比率は表7記載)合計100質量部
レターデーション発現剤R−1 7.0質量部
ジクロロメタン 141.2質量部
エタノール 19.3質量部
また、上記と同様の方法で流延を行い、支持体から剥離した高分子膜の両端をクリップを有したテンターで固定して、搬送方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に延伸し、搬送ながら乾燥ゾーンで130℃乾燥し、耳部をスリットして幅1500mmのフィルム201を得た。テンターで延伸を始めたときの高分子膜の残留溶剤量は10質量%であった。MD延伸はステンレスバンドと支持体の回転速度とテンターの運動速度差で行い、延伸倍率もここから算出した。延伸時の温度及び延伸倍率等の諸条件を下記表7に示す。
フィルム202〜250の各フィルムのドープは、フィルム201のドープにおいて、セルロースエステルとアクリル樹脂の種類と比率、レターデーション発現剤の種類と添加量、固形分濃度が下記表7の記載のものに変更した。フィルム249のドープについては、更に、アクリル微粒子を5質量部加えた。各ドープにおいて、ジクロロメタンとエタノールについては両者の比率がフィルム201のドープと同じ比率となり、かつ固形分濃度が表7に記載のものになるように量を調製して、フィルム202〜250のドープを作製した。
作製した各ドープを用いて、フィルム201と同様にしてフィルム202〜250を作製した。
作製したフィルム201〜250について、実施例1と同様に各種物性測定と評価を行った。測定及び結果は下記表8に示す。
なお、ガラス転移温度の測定によりフィルム201〜250とその未延伸フィルムにおいては、セルロースエステルとアクリル樹脂とが相溶状態にあることが確認された。
実施例1と同様にして、フィルム201〜250を用いた偏光板を作製し、フィルムフィルム201〜250を有する偏光板を有する偏光板を液晶セルの上下に1枚ずつ使用したVAモードパネルへの実装、本フィルム201〜250を有する偏光板を液晶セルの下側に1枚使用したVAモードパネルへの実装、フィルム201〜250を有する偏光板のTNモードパネルへの実装を行った。これらのモードへの実装には実施例1で作製した155〜158を用いた偏光板も使用した。
以上のようにして作製した液晶表示装置の視野角特性、湿度変化時の黒表示ムラ、高温高湿環境経時後の黒表示ムラを評価した。評価結果を下記表9〜表11に示す。表9はフィルム201〜250、155〜158を有する偏光板を液晶セルの上下に1枚ずつ使用したVAモードパネルへの実装結果、表10はフィルム201〜250、155〜158を有する偏光板を液晶セルの下側に1枚使用したVAモードパネルへの実装結果、表11はフィルム201〜250、155〜158を有する偏光板のTNモードパネルへの実装結果を表す。
各モードでの評価は、同一モード内における相対評価で行った。
フィルム201〜207、157、158を比較すると、セルロースエステル/アクリル樹脂比率が本発明の範囲であるフィルム202〜206は、本発明の範囲外であるフィルム201を使用した液晶表示装置よりも視野角特性が優れており、フィルム207、157、158を使用した液晶表示装置よりも湿度変化時の黒表示ムラが優れている。
アクリル樹脂比率が本発明の範囲より大きいフィルム201は、光学発現性が不足しており、更に製造時の破断が生じやすく、機械強度が弱く、熱変形が生じやすい等の問題を有しており、光学フィルムには適さない。これはアクリル樹脂の特徴が強く現れていることが原因である。
アクリル樹脂比率が本発明の範囲より小さいフィルム207、157、158は、湿度変化時の黒表示ムラ、高湿環高湿境経時後の黒表示ムラの程度が悪く、光学フィルムには適さない。これはセルロースエステル比率が増加し、フィルムの含水率が大きくなり、環境変化時の水の複屈折による影響が大きくなること、水によりTgが低下して高温高湿耐久時のフィルム変質が生じやすくなること、またフィルムの透湿度が増加してフィルムを透過する水が増加することで、偏光子の劣化や偏光子の変形で偏光子とフィルム間で応力が発生し、光学特性変化が生じることが原因と推定される。
フィルム217、155、156は、セルロースエステル樹脂/アクリル樹脂比率は本発明の範囲内であるが、光学発現性が不十分である。これらのフィルムと比較して、本発明の光学フィルムは視野角特性に優れる。
セルロースエステルの置換基及び置換度違いのフィルム214、229〜232、239〜241を比較する。
プロピオニル置換度が小さいCA−9を用いたフィルム230と全置換度が小さいCA−10を用いたフィルム232は、他のフィルムと比較して全ヘイズ、内部ヘイズが大きい。全ヘイズ、内部ヘイズについては、全置換度が高く、また炭素数3〜7のアシル基の置換度も大きいセルロースエステル樹脂のほうが、アクリル樹脂の相溶性が高く、本発明の範囲の中でも優れた特性を有することが分かる。
更にセルロースアセテートプロピオネートで、プロピオニル置換度が2.10のCA−8を使用したフィルム229とプロピオニル置換度が2.56のCA−1を使用したフィルム214を比較すると、フィルム214の全ヘイズ、内部ヘイズが小さいことより、プロピオニル置換度が大きく、アセチル置換度が小さいセルロースエステル樹脂がより適することが分かる。
また分子量が320000であるCA−7を使用したフィルム233はヘイズが最も大きく、次に分子量が270000であるCA−6を使用したフィルム234が大きい。分子量が250000より大きい領域で分子量が増加すると、ヘイズが増加することが分かる。
アクリル樹脂違いのフィルム214、242〜248を比較すると、分子量が本発明の範囲外であるAC―6を使用したフィルム242のみが製造時の破断頻度が大きく、機械強度が不足していることが分かる。
これは、MMA比率が大きいほどセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性が高いことによる。
円盤状化合物及び液晶性化合物は固有複屈折が大きく、セルロースエステル樹脂、アクリル樹脂共に相溶性が良好で、更に延伸時に配向しやすいことが理由と推測される。
円盤状化合物を使用したフィルム214と、液晶性化合物を使用したフィルム250は、軸ばらつき、Re、Rthばらつきの観点で円盤状化合物を使用したフィルム214が優れる。更に、円盤状化合物を使用したフィルム214は、液晶性化合物を使用したフィルム250と比較して高温高湿環境経時後の黒表示ムラに優れる。
円盤状化合物は、液晶性化合物と比較して、延伸時の温度や応力のムラや高温高湿時経時間での環境変化により、配向が影響を受け難いことが原因と推定している。
延伸温度違いのフィルム214、221を比較すると、延伸温度が未延伸フィルムのTg±30℃の範囲内に入っているフィルム214が、Tg+35℃のフィルム221よりもRe、Rthバラツキが小さい。
延伸温度がTg+30℃よりも大きいと、フィルムが軟化して延伸されやすくなり、フィルム内の応力分布の影響が大きくなると推測される。反対にTg−30℃より小さいと、分子の運動性が低い状態で延伸することになり、延伸時に破断が生じやすくなる。
Re、Rthばらつきが小さなフィルムは、視野角特性に優れる。
また、表4〜表6より、液晶モードにより好ましい光学特性が異なることが示されているが、本発明のフィルムは、本発明のフィルムを有する偏光板を液晶セルの上下に1枚ずつ使用してVAモードを補償することが最も好ましい。
実施例1に記載の積極的にMD方向に延伸を行わないフィルム作製方法と、MD方向とTD方向に延伸を行うフィルム作製方法では、Nz値が大きくなりやすいMD方向とTD方向に延伸を行うフィルム作製方法がより好ましい。
Claims (14)
- セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムであって、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95であり、
下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす光学フィルム。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。 - 前記セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.00〜3.00であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.20〜3.00である請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムのフィルム面内において、任意の2点における遅相軸のなす角度が0.3°以下である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムのフィルム面内において、100nm間隔の2点におけるReの差分が1.2nm以内であり、Rthの差分が2.0nm以内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 全ヘイズ値が0.30以下であり、内部ヘイズ値が0.10以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記光学フィルムがレターデーション発現剤を含み、該レターデーション発現剤が円盤状化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記式(I)及び(II)で定義されるRe及びRthが、波長590nmにおいて下記式(VII)及び(VIII)を満たす請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
式(VII) 30≦Re≦200
式(VIII) 70≦Rth≦400 - セルロースエステルとアクリル樹脂とを相溶状態で含む光学フィルムの製造方法であって、
前記セルロースエステルと前記アクリル樹脂との質量比が70:30〜5:95である高分子膜を製膜する工程と、
前記高分子膜の搬送方向及び該搬送方向と直交する幅方向の少なくとも一方に前記高分子膜を延伸する工程とを含み、
前記高分子膜を延伸する工程における前記搬送方向の延伸倍率に対する前記幅方向の延伸倍率の比が1.15以上であり、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が75000以上であり、前記アクリル樹脂の質量平均分子量が80000以上であり、
前記光学フィルムの下記式(I)〜(III)で定義されるRe、Rth及びNzが、波長590nmにおいて下記式(IV)〜(VI)を満たす、光学フィルムの製造方法。
式(I) Re=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(III) Nz=(nx−nz)/(nx−ny)=Rth/Re+1/2
式(IV) 20≦Re≦400
式(V) 40≦Rth≦400
式(VI) Nz≧2.00
式中、nxは前記光学フィルムのフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは前記フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzは前記光学フィルムの厚み方向の屈折率であり、dは前記光学フィルムの厚さ(nm)である。 - 前記高分子膜の延伸が、乾燥後の未延伸の高分子膜のTgに対してTg±30℃の温度範囲で行われる請求項8に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記アクリル樹脂が、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を50質量%以上含有し、質量平均分子量が500000以下である請求項8又9に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記セルロースエステルがアセチル基及びプロピオニル基を含み、
前記セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.00〜3.00であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.20〜3.00であり、
前記セルロースエステルの質量平均分子量が250000以下である請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。 - 前記光学フィルムがレターデーション発現剤を含み、該レターデーション発現剤が円盤状化合物である請求項8〜11のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも1枚含む偏光板。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム又は請求項13に記載の偏光板を少なくとも1枚含む液晶表示装置。
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JP (1) | JP2012008417A (ja) |
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- 2010-06-25 JP JP2010145611A patent/JP2012008417A/ja not_active Abandoned
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