以下、本発明の複数の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
また、第2の実施形態以降において、既に説明された実施形態と共通または類似する構成について、既に説明された実施形態と共通の符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。
符号は、同一または類似する構成のものについて、「第1端子7A〜第6端子7F」などのように、同一の数字に大文字のアルファベットの付加符号を付したものを用いることがある。また、この場合において、単に「端子7」というなど、名称の頭の番号、および上記の付加符号を省略することがあるものとする。
<第1の実施形態>
(SAW装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図である。
SAW装置1は、いわゆるウェハレベルパッケージ(WLP)形のSAW装置により構成されている。SAW装置1は、基板3と、基板3に固定されたカバー5と、カバー5から露出する第1端子7A〜第6端子7Fと、基板3のカバー5とは反対側に設けられた裏面部9とを有している。
SAW装置1は、複数の端子7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、SAW装置1によりフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数の端子7のいずれかを介して出力する。SAW装置1は、例えば、カバー5側の面を不図示の回路基板等の実装面に対向させて当該実装面に載置された状態で樹脂封止されることによって、端子7を実装面上の端子に接続した状態で実装される。
基板3は、圧電基板により構成されている。具体的には、例えば、基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。基板3は、第1主面3aと、その背面側の第2主面3bとを有している。基板3の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、Y方向を長手方向とする矩形である。基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さは0.2mm〜0.5mm、1辺の長さは0.5mm〜2mmである。
カバー5は、第1主面3aを覆うように設けられている。カバー5の平面形状は、例えば、基板3の平面形状と同様であり、本実施形態では、Y方向を長手方向とする矩形である。カバー5は、例えば、第1主面3aと概ね同等の広さを有し、第1主面3aの概ね全面を覆っている。カバー5は、感光性の樹脂により形成されている。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合によって硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
複数の端子7は、カバー5の上面から露出している。複数の端子7の数および配置位置は、SAW装置1の内部の電子回路の構成に応じて適宜に設定される。本実施形態では、6つの端子7がカバー5の外周に沿って配列されている。
裏面部9は、特に図示しないが、例えば、第2主面3bの概ね全面を覆う裏面電極と、裏面電極を覆う絶縁性の保護層とを有している。裏面電極により、温度変化等によって基板3表面にチャージされた電荷が放電される。保護層により、基板3の損傷が抑制される。なお、以下では、裏面部9は、図示や説明が省略されることがある。
図2は、カバー5の一部を破断して示すSAW装置1の斜視図である。
第1主面3aには、SAW素子11が設けられている。SAW素子11は、SAW装置1に入力された信号をフィルタリングするためのものである。SAW素子11は、第1主面3aに形成された一対の櫛歯状電極(IDT電極)15を有している。各櫛歯状電極15は、基板3における弾性表面波の伝搬方向(X方向)に延びるバスバー15aと、バスバー15aから上記伝搬方向に直交する方向(Y方向)に伸びる複数の電極指15bとを有している。1つの櫛歯状電極15同士は、それぞれの電極指15bが互いに噛み合うように設けられている。
なお、図2は模式図であることから、数本の電極指15bを有する一対の櫛歯状電極15を示している。実際には、これよりも多数の電極指を有する複数対の櫛歯状電極が設けられてよい。また、複数のSAW素子11が直列接続や並列接続等の方式で接続され、ラダー型SAWフィルタや2重モードSAW共振器フィルタ等が構成されてよい。SAW素子11は、例えばAl−Cu合金等のAl合金によって形成されている。
カバー5は、第1主面3aの平面視においてSAW素子11を囲む枠部35と、枠部35の開口を塞ぐ蓋部37とを有している。そして、第1主面3a(厳密には後述する保護層25)、枠部35および蓋部37によって囲まれた空間により、SAW素子11の振動を容易化する振動空間10が形成されている。なお、振動空間10は、適宜な数および形状で設けられてよく、図2では、2つの振動空間10が設けられている場合を例示している。
枠部35は、概ね一定の厚さの層に振動空間10となる開口が1以上(本実施形態では2つ)形成されることによって構成されている。枠部35の厚さ(振動空間10の高さ)は、例えば、数μm〜30μmである。蓋部37は、枠部35上に積層される、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部37の厚さは、例えば、数μm〜30μmである。
枠部35および蓋部37は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、枠部35と蓋部37との境界線を明示しているが、現実の製品においては、枠部35と蓋部37とが同一材料により形成され、一体的に形成されていてもよい。
端子7は、図2では第6端子7Fにおいてよく表れているように、第1主面3aに立てて設けられており、枠部35および蓋部37を第1主面3aの面する方向へ貫通し、カバー5の上面において露出している。
第1主面3aには、SAW素子11に接続された配線12と、配線12に接続された第1パッド13A〜第6パッド13F(図2では一部のみ示す)とが設けられている。端子7は、パッド13上に設けられることによって、SAW素子11と接続されている。
図3は、図2のIII−III線における断面図である。
SAW装置1は、第1主面3aに設けられた導電層19と、導電層19および第1主面3aに積層された保護層25とを有している。
導電層19は、第1主面3a上における回路素子や配線等の構成に関して基本となる層である。具体的には、導電層19は、SAW素子11、配線12およびパッド13を構成している。導電層19は、例えば、Al−Cu合金等のAl合金により形成されており、その厚さは、例えば、100〜300nmである。
保護層25は、SAW素子11の酸化防止等に寄与するものである。保護層25は、例えば、酸化珪素(SiO2など)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、またはシリコンにより形成されている。保護層25の厚さは、例えば、導電層19の厚さの1/10程度(10〜30nm)である。保護層25は、パッド13の配置位置を除いて、第1主面3a全体に亘って形成されている。なお、カバー5は、保護層25に積層されている。
図4(a)は、枠部35と蓋部37との間付近から第1主面3a側を平面透視して示す、端子7付近の拡大図である。図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における断面図であり、また、図3の領域IVbの拡大図に相当する。図4(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における断面図である。
端子7は、柱状に形成された柱状部7aと、柱状部7aの上端の側面から突出するフランジ7bと、柱状部7aの底面から突出する突部7cとを有している。端子7の、フランジ7bを含む上端面は、不図示の回路基板などに接続されるランド7dを構成している。
柱状部7aは、第1主面3a上(厳密には導電層19および保護層25上)に配置され、カバー5を貫通している。柱状部7aの平面形状(第1主面3aに平行な断面の形状)は、例えば、円形に形成されている。すなわち、柱状部7aは円柱状に形成されている。柱状部7aの直径は、例えば、20μm〜120μmである。
パッド13は、例えば、円形に形成されており、本実施形態では、柱状部7aの平面形状と相似形となっている。また、パッド13の面積は、柱状部7aの平面形状の面積よりも小さい。保護層25は、例えば、パッド13よりも一周り小さいパッド13と相似形の開口が形成されることによって、パッド13を露出させている。そして、柱状部7aの底面は、パッド13の保護層25から露出した部分に当接している。当該当接部分は、例えば、柱状部7aの底面の概ね中央に位置している。なお、保護層25の開口の大きさは適宜に設定されてよい。
フランジ7bは、カバー5の上面に積層されている。フランジ7bは、柱状部7aの全周に亘って形成されるとともに、概ね一定の幅で形成されている。従って、ランド7dの平面形状は、柱状部7aの平面形状に対して、一周り大きい相似形(本実施形態では円形)となっている。ランド7dの直径は、柱状部7aの直径よりも、例えば、5μm〜100μm大きい。
突部7cは、保護層25を貫通するとともに第1主面3aから基板3内に突出し、基板3に埋め込まれている。従って、アンカー効果によって、端子7の基板3からの剥離が抑制される。なお、基板3の第1主面3aには、突部7cが収容される溝3cが形成されている。
突部7cは、第1主面3aに沿って延びるライン状(突条)に形成されている。より具体的には、突部7cは、パッド13を囲む環状に形成されている。ただし、突部7cの環には、配線12を切断しないように、配線12の配置位置に切れ目(切れ間、隙間)が形成されている。突部7cの環は、例えば、概ね柱状部7aと同心状の相似形(円形)に形成され、突部7cは概ねC字状となっている。
突部7cは、後述するように、例えば、基板3の溝3cに金属が充填されることによって形成される。この場合は、溝3cを形成するエッチング精度の観点から、突部7cの幅は、3μm以上が好ましい。また、突部7cの幅は、端子7のサイズの観点から、50μm以下であることが好ましい。溝3cの深さは、アンカー効果を十分に得る観点から、保護層25の厚さまたは導電層19の厚さよりも大きいことが好ましい。例えば、溝3cの深さは、アンカー効果を大きくしつつもエッチング時間を短くする観点からは、0.5〜10μm程度が好ましい。溝3cに金属を充填する容易性向上の観点からは、溝幅/溝深さは1/2以上が好ましい。
端子7は、端子7の表面部分の一部を構成する下地層39と、端子7の大部分を構成する金属部41とを有している。
下地層39は、端子7のうち、カバー5、パッド13、保護層25および基板3に接する部分を構成している。下地層39は、例えば、銅もしくはチタンにより形成されている。下地層39の厚さは、概ね均一である。当該厚さは、適宜に設定されてよいが、例えば、下地層39が銅からなる場合は300nm〜1μm、下地層39がチタンからなる場合は10nm〜100nmである。
金属部41は、端子7のうち、柱状部7aおよび突部7cの内部側部分およびフランジ7bの上方側(カバー5とは反対側)部分を構成している。金属部41は、例えば、銅により形成されている。
(SAW装置の製造方法)
図5(a)〜図6(c)は、SAW装置1の製造方法を説明する、図3(図2のIII−III線)に対応する断面図である。製造工程は、図5(a)から図6(c)まで順に進んでいく。
以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることによって、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図5(a)〜図6(c)では、1つのSAW装置1に対応する部分のみを図示する。また、導電層や絶縁層は、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いる。
まず、図5(a)に示すように、基板3の第1主面3aには、溝3cが形成される。溝3cの形成は、適宜な方法によって行われてよい。例えば、溝3cは、反応性のエッチングガス(CF4など)を用いたエッチング、またはプラズマガス(Arなど)を用いた物理的なエッチングなどのドライエッチングによって形成されてよい。また、溝3cは、エッチング液(HF+HNO3など)を用いたウェットエッチングによって形成されてよい。また、溝3cは、サンドブラストなどのショットブラストによって形成されてもよい。また、溝3cは、レーザー光を照射することによってエッチングするレーザー加工によって形成されてもよい。さらに、溝3cは、溝3cとなる以外の部分において圧電材料を成膜することによって形成されてもよい。
溝3cが形成されると、図5(b)に示すように、導電層19が形成される。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法によって、第1主面3a上に導電層19となる金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によってパターニングが行われる。パターニングによって、SAW素子11、配線12およびパッド13が形成される。すなわち、導電層19が形成される。
導電層19が形成されると、図5(c)に示すように、保護層25が形成される。具体的には、まず、適宜な薄膜形成法によって保護層25となる薄膜が形成される。薄膜形成法は、例えば、スパッタリング法もしくはCVDである。次に、パッド13が露出するように、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去される。これにより、保護層25が形成される。
なお、保護層25となる薄膜は、溝3cにおいても、フォトリソグラフィー法によって除去される。ただし、保護層25となる薄膜は、その厚さが溝3cの深さよりも十分に小さいときには、保護層25となる薄膜が溝3cの底部に残っても、溝3cに金属を充填して突部7cを形成することに支障は生じないから、溝3cにおいて除去されなくてもよい。
保護層25が形成されると、図5(d)に示すように、枠部35が形成される。具体的には、まず、枠部35となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂により形成されたフィルムが貼り付けられることによって、または、保護層25と同様の薄膜形成法によって形成される。枠部35となる薄膜が形成されると、フォトリソグラフィー法等によって、薄膜の一部が除去され、振動空間10を構成する開口および端子7が配置される予定の孔部35hが形成される。また、薄膜は、ダイシングライン上においても、一定の幅で除去される。このようにして枠部35が形成される。
枠部35が形成されると、図6(a)に示すように、蓋部37が形成される。具体的には、まず、蓋部37となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂のフィルムが貼り付けられることによって形成される。そして、薄膜が形成されることによって、枠部35の開口が塞がれて、振動空間10が構成される。薄膜は、フォトリソグラフィー法等によって、孔部35h(図5(d))上の部分が除去され、端子7が配置される予定の孔部5h(孔部35h含む)が形成される。また、薄膜は、ダイシングライン上においても一定の幅で除去される。このようにして、蓋部37が形成される。
蓋部37が形成されると、図6(b)に示すように、下地層39となる金属層と、レジスト層43とが順に形成される。
下地層39となる金属層は、カバー5の上面、孔部5hの内部および溝3cの内部に亘って成膜される。下地層39となる金属層は、例えば、スパッタ法によって形成される。
レジスト層43は、下地層39となる金属層の形成後、例えば、スピンコート等によって感光性樹脂の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィー法によってパターニングされることによって形成される。レジスト層43は、ランド7dが配置される予定の範囲において、下地層39となる金属層が露出するように形成される。
レジスト層43が形成されると、図6(c)に示すように、下地層39となる金属層に電流を流す電気めっき処理によって、下地層39となる金属層の露出部分に金属を析出させ、金属部41を形成する。次に、下地層39となる金属層のレジスト層43に被覆されていた部分およびレジスト層43が除去される。これにより、図3に示すように、下地層39および金属部41からなる端子7が形成される。
以上の実施形態によれば、SAW装置1は、基板3と、基板3の第1主面3aに設けられたSAW素子11と、SAW素子11上に振動空間10を形成しつつSAW素子11を覆うカバー5と、SAW素子11に電気的に接続されており、第1主面3aの面する方向にカバー5を貫通する端子7とを有する。端子7は、第1主面3aから基板3内に突出する突部7cを有している。
従って、突部7cのアンカー効果によって、端子7の基板3からの剥離が抑制される。その結果、例えば、温度変化の大きな環境下においても、熱膨張差による断線が生じにくい信頼性の高い弾性波装置が実現される。
突部7cは、第1主面3aに沿って延びるライン状に形成されている。従って、ラインに沿う広い範囲に亘って剥離が抑制される。さらに、ラインに交差する方向において、端子7と基板3との沿面距離が長くなり、防水性が向上するという効果が奏される。
端子7は、パッド13上に設けられており、突部7cは、パッド13の少なくとも一部(本実施形態ではパッド13の全体)を囲む、切れ目を有する環状に延びている。また、パッド13のうち環状の突部7cの内側部分(本実施形態ではパッド全体)と、配線12のうち環状の突部7cの外側部分とは、パッド13もしくは配線12(本実施形態では配線12)のうち突部7cの切れ目に位置する部分を介して接続されている。
従って、パッド13の突部7cに囲まれた部分は、SAW素子11との導通が確保され、かつ、種々の方向の力に対して剥離が抑制され、また、広い角度範囲で水分の侵入が抑制される。すなわち、導通の確実性、効果的なアンカー効果および効果的な防水効果が得られる。
突部7cは、端子7の第1主面3aに面する面の外周側に配置されている。従って、端子7が傾くような力が加えられるときに、剥離が生じやすい位置においてアンカー効果が発揮されることになり、効果的に剥離が抑制される。また、端子7は、通常、中央側においてパッド13と当接されるから、突部7cは、外周側からの剥離が、端子7とパッド13との当接位置まで広がることを好適に抑制できる。
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態のSAW装置の端子107周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。
第2の実施形態は、端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、第2の実施形態の複数の突部107cは、第1の実施形態の突部7cを複数に分離したものとなっている。すなわち、複数の突部107cは、第1主面3aに沿って延びるライン状に互いに分離して配列され、また、パッド13の少なくとも一部(本実施形態では全体)を囲むように配列されている。
第2の実施形態によれば、端子107は、第1主面3aから基板3内に突出する突部107cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子107の基板3からの剥離が抑制される。
複数の突部107cは、互いに分離して配列されている。従って、第1の実施形態のライン状の突部7cがラインに沿う広い範囲において剥離を抑制できるのと同様に、複数の突部107cは、配列に沿う広い範囲において剥離を抑制できる。さらに、複数の突部107cは、体積に比して基板3に対する接触面積を大きくでき、また、基板3に対する接触方向も多様化できるから、効率的に高いアンカー効果が奏されることが期待される。
複数の突部107cは、パッド13の少なくとも一部(本実施形態では全体)を囲むように配列されている。従って、第1の実施形態と同様に、パッド13の複数の突部107cに囲まれた部分は、種々の方向の力に対して剥離が抑制される。
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態のSAW装置の端子207周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。
第3の実施形態は、端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、第3の実施形態の端子207は、第1の実施形態の突部7cに加えて、突部7cから分離した突部207cを有している。
突部207cは、突部7cの環状の切れ目に配置され、配線12(導電層19)を貫通し、第1主面3aから基板3内に突出している。ただし、突部207cの、配線12の幅方向における大きさは、配線12の幅よりも小さく、突部207cは配線12の幅方向の一部のみを貫通している。換言すれば、突部207cは、配線12の突部7cの切れ目に位置する部分の一部のみを貫通し、配線12の導通を許容している。
なお、突部7cがパッド13の周囲の保護層25を貫通しているのと同様に、突部207cも配線12を覆う保護層25を貫通している。
第3の実施形態のSAW装置の製造方法は、第1の実施形態のSAW装置の製造方法と同様である。ただし、突部207cは、突部7cと異なり、導電層19を貫通していることから、図5(b)に示した導電層19となる金属層のパターニングでは、金属層は、突部207cを収容する基板3の溝203c(図8)上においても除去される。なお、導電層19となる薄膜は、その厚さが溝203cの深さよりも十分に小さい場合には、溝203cの底部に導電層19となる薄膜が残っても、溝203cに金属を充填して突部207cを形成することに支障は生じないから、溝203cにおいて除去されなくてもよい。
以上の第3の実施形態によれば、端子207は、第1の実施形態の突部7cを含むことから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果や防水効果を奏する。また、端子207は、突部7cに加えて突部207cを有することから、第1の実施形態に比較してアンカー効果が向上することが期待される。
なお、第1および第3の実施形態の実際の製品への適用においては、配線12における電気抵抗の低減(第1の実施形態)とアンカー効果の更なる向上(第3の実施形態)との効果を比較考量して、適宜にいずれかの実施形態が選択されてよい。
<第4の実施形態>
図9は、第4の実施形態のSAW装置の端子307周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。
第4の実施形態は、端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、第4の実施形態の突部307cは、第1の実施形態の突部7cと同様にライン状の突部であるが、突部7cよりも短く、パッド13を囲んでいない。そして、突部307cは、剥離が生じやすい位置に設けられている。
なお、剥離が生じやすい位置は、SAW装置の構成、SAW装置が実装される回路基板の構成および回路基板に配置されたSAW装置を封止する樹脂の構成等の種々の条件によって種々考えられる。本実施形態では、カバー5の4隅側において剥離が生じやすい場合を想定している。
第4の実施形態によれば、端子307は、第1主面3aから基板3内に突出する突部307cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子307の基板3からの剥離が抑制される。
<第5の実施形態>
図10は、第5の実施形態のSAW装置の端子407周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。
第5の実施形態は、端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、端子407は、第1の実施形態の突部7cを同心状に2つ有している。
第5の実施形態によれば、端子407は、第1の実施形態の突部7cを含むことから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果や防水効果を奏する。さらに、突部7cが2重に設けられていることから、アンカー効果や防水効果が増大する。
<第6の実施形態>
図11は、第6の実施形態のSAW装置の端子507周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。
第6の実施形態は、端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、複数の突部507cは、比較的小さく形成され、適宜な範囲に分布している。各突部507cの平面形状は、円形、楕円形、または、多角形などの適宜な形状とされてよい。複数の突部507cの分布範囲は、例えば、端子507の底面のうち、導電層19が配置されていない範囲全体であり、パッド13を囲んでいる。複数の突部507cの密度は、例えば、分布範囲に亘って一様である。複数の突部507cは、例えば、ランダムに分布しており、端子507の径方向(507の底面の重心(中心)から外周側への方向)の複数位置および周方向(重心回りの方向)の複数位置に亘って分布している。
第6の実施形態によれば、端子507は、第1主面3aから基板3内に突出する突部507cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子507の基板3からの剥離が抑制される。
また、端子507は、端子507の径方向の複数位置および周方向の複数位置に亘って分布する複数の突部507cを有することから、複数の突部507c全体の基板3に対する接触面積が大きく、高いアンカー効果が期待されるとともに、種々の方向の剥離の抑制が期待される。
<第7の実施形態>
図12(a)は、第7の実施形態のSAW装置の端子607周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。また、図12(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線における断面図(図4(b)に対応する図)である。
第7の実施形態は、パッドの大きさおよび端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
第7の実施形態のパッド613は、端子607の柱状部7aの底面よりも広く形成されている。パッド613の形状は、例えば、柱状部7aの底面の相似形(円形)である。そして、柱状部7aの底面は、平面視において、パッド613内に収まっている。
端子607は、例えば、第2の実施形態と同様に、環状に互いに分離して配列された複数の突部107cを有している。ただし、パッド613は端子607の底面よりも広いことから、複数の突部107cは、パッド613の一部(具体的には中央側部分)のみを囲んでいる。また、第2の実施形態では、配線12の位置(第1の実施形態の環の切れ目の位置)において突部107c間の間隔が大きくなっていたが、第7の実施形態では、複数の突部107cは、互いに均等の間隔で配置されている。
端子607の柱状部7aの底面はパッド613内に収まっていることから、複数の突部107cは、パッド613を貫通して、第1主面3aから基板3内に突出している。なお、パッド613と柱状部7aとを当接させるための保護層25の開口は、複数の突部107cの環よりも小さく、複数の突部107cは、保護層25も貫通している。
第7の実施形態によれば、端子607は、第1主面3aから基板3内に突出する突部107cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子607の基板3からの剥離が抑制される。
また、端子607は、第2の実施形態と同様に、互いに分離して配列された複数の突部107cを有していることから、体積に比して接触面積が大きいことによる効率的なアンカー効果が期待される。
さらに、複数の突部107cは、平面視においてパッド613内に収まっており、パッド613を貫通し、パッド613は、複数の突部107cに囲まれた部分と、配線12に接続されているパッド613の外周側部分とが、複数の突部107cの配列間に位置する複数の部分によって接続されている。
従って、複数の突部107cを環状に配列することによるアンカー効果を効果的に発揮させつつ、複数の突部107cに囲まれた領域と配線12との間の電気抵抗を小さくすることができる。
<第8の実施形態>
図13(a)は、第8の実施形態のSAW装置の端子707周辺の平面透視図(図4(a)に対応する図)である。また、図13(b)は、図13(a)のXIIIb−XIIIb線における断面図(図4(b)に対応する図)である。
第8の実施形態は、パッドの大きさおよび端子の突部の平面形状のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
第8の実施形態では、第7の実施形態と同様に、柱状部7aよりも広いパッド613が設けられている。端子707の突部707cは、柱状部7aの底面の重心(中心)に設けられている。なお、柱状部7aの底面と、パッド613とは、突部707cの周囲において当接している。
第8の実施形態によれば、端子707は、第1主面3aから基板3内に突出する突部707cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子707の基板3からの剥離が抑制される。
また、突部707cは、端子707の第1主面3aに面する面(底面)の中央側に配置されていることから、端子707を基板3から真上に引き抜くような力に対して好適に抵抗力が生じる。
<第9の実施形態>
図14は、第9の実施形態のSAW装置の端子807周辺の断面図(図4(b)に対応する図)である。
端子807の柱状部807aは、端子807がカバー5を貫通する方向の少なくとも一部において、第1主面3aとは反対側よりも第1主面3a側の方が第1主面3aに平行な断面積が大きくなっている。より具体的には、柱状部807aは、枠部35を貫通する部分が第1主面3a側ほど拡径する逆テーパ状に形成されるとともに、蓋部37を貫通する部分が第1主面3a側ほど拡径する逆テーパ状に形成されている。なお、柱状部807aの平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、第1の実施形態と同様に円形である。
また、端子807の突部807cは、突部807cが基板3に突出する方向の少なくとも一部において、根元側よりも先端側の方が第1主面3aに平行な断面積が大きくなっている。より具体的には、突部807cは、先端側ほど拡径する逆テーパ状に形成されている。なお、突部807cの平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、第7の実施形態(図12(a))と同様である。
上記のような断面形状の柱状部807aおよび突部807cは、例えば、レーザーを主面に斜めに入射させてカバー5の孔部の側面または基板3の溝の側面を形成することなどによって形成できる。また、柱状部807aの形成に関しては、カバー5としてネガ型のフォトレジストを用い、深い位置(第1主面3a側)ほど光硬化せずに孔部が拡径する性質を利用することもできる。
なお、第9の実施形態では、第7の実施形態と同様のパッド613が設けられている。柱状部807aとパッド613とを当接させる保護層25の開口は、例えば、カバー5の端子807が貫通する孔部の底面と概ね一致する大きさおよび形状に形成されている。
第9の実施形態によれば、端子807は、第1主面3aから基板3内に突出する突部807cを有していることから、第1の実施形態と同様に、アンカー効果によって、端子807の基板3からの剥離が抑制される。
さらに、突部807cは、突出方向の少なくとも一部において、先端側が根元側よりも第1主面3aに平行な断面積が大きくなっていることから、基板3から引き抜かれ難く、アンカー効果の向上が期待される。
<製造方法の変形例>
図15(a)および図15(b)は、SAW装置1の製造方法の変形例を説明する図2のIII−III線における断面図(図3に対応する断面図)である。
この変形例では、図15(a)に示すように、図5(a)に示した溝3cの形成を行わずに、図5(b)および図5(c)に示した導電層19および保護層25の形成を行う。
次に、図15(b)に示すように、エッチングによって、溝3cを形成する。このとき、保護層25の溝3c上の部分も除去される。また、第3の実施形態のように、突部(207c)が導電層19を貫通する態様では、導電層19の溝(203c)上の部分も除去される。
その後は、図5(d)〜図6(c)と同様に、製造工程が行われる。
この変形例によれば、保護層25および導電層19の溝3c上の部分を溝3cのエッチングと同時に除去することから、実施形態の製造方法に比較して、保護層25や導電層19をパターニングするためのレジスト等が溝3c内に流れ込んで残留するおそれが少ない。なお、実施形態の製造方法は、変形例に比較して、溝3cの形成が導電層19の表面状態等に及ぼす影響が少ない。
なお、以上の複数の実施形態および変形例において、SAW装置1は本発明の弾性波装置の一例であり、SAW素子11は本発明の弾性波素子の一例であり、突部207c(第3の実施形態)は貫通突部の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよい。
弾性波装置において、保護層(25)は省略されてもよいし、逆に、他の適宜な層などが形成されてもよい。例えば、配線12と絶縁体を介して立体交差する配線が設けられてもよいし、パッド13と端子7との間に介在し、パッド13と端子7との接着力を強化する接続強化層が設けられてもよいし、枠部と蓋部との間に導電層が設けられてもよい。
上述した複数の実施形態は適宜に組み合わされてよい。
例えば、第2、第5および第6の実施形態の平面形状の突部(図7、図10および図11)と、第3の実施形態の突部207cとが組み合わされてもよい。また、第1の実施形態の突部7cを分離型にすることによって第2の実施形態の突部107c(図7)が構成されているように、第4の実施形態(図9)および第5の実施形態(図10)を分離型としてもよい。
また、例えば、第1〜第6の実施形態(図1〜図11)で示した平面形状の突部は、第7〜第9の実施形態(図12〜図14)のような端子の底面よりも広いパッド613と組み合わされてもよい。逆に、第7および第8の実施形態で示した平面形状の突部は、第1〜第6の実施形態のような端子の底面よりも狭いパッド13と組み合わされてもよい。
また、例えば、第1〜第6の実施形態(図1〜図11)で示した平面形状の突部は、第7〜第9の実施形態(図12〜図14)の突部のように、その一部または全体がパッドもしくは配線を貫通してもよい。逆に、第7および第8の実施形態で示した平面形状の突部は、第1〜第6の実施形態の突部のように、パッドもしくは配線を貫通しないものであってもよい。
保護層が設けられる場合において、端子とパッドとを当接させるための開口は、パッドよりも小さいものに限定されない。例えば、第1〜第6の実施形態(図1〜図11)においても、第9の実施形態(図14)で示したカバーの孔部の底面と同一の大きさおよび形状の開口が保護層に設けられてもよい。
突部の平面形状は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、放射状に延びるライン状の突部が設けられてもよいし、螺旋状に延びるライン状の突部が設けられてもよいし、1または2位置に円形(ライン状でない)突部が設けられてもよい。
パッドの少なくとも一部を囲む、ライン状の突部または配列された突部の環は、円形に限定されず、後述する図16の突部907cのように、適宜な形状とされてよい。なお、本願では、環の語は、円形に限定されず、所定の領域を囲む形状であればよいものとする。また、所定の領域を囲んでいるとは、所定の領域を全周に亘って囲んでいる必要はないものとする。例えば、ライン状の突部がパッドの外周側を延びている場合において、ラインの両端を結んで閉領域を仮定したときに、パッドの半分以上の面積がその閉領域に含まれるのであれば、パッドを囲んでいるということができる。また、例えば、ライン状の突部が形成されている場合に、そのラインの両端における接線方向に端部を延長させたときにラインによって閉じた領域が形成されるのであれば、ライン状の突部はその閉領域内の所定領域を囲んでいると捉えることができる。この判定方法によれば、例えば、弧は、中心角が180度を超えると、環状であるということができ、矩形では、1つの角部のみまたは1辺の一部のみが欠落しているときに環状であるということができる。
環状に延びる突部の切れ目は、配線を通過させるように設けられるものに限定されない。例えば、第1の実施形態の突部7cと、第7の実施形態の広いパッド613とを組み合わせたとき、パッド613の突部7cに囲まれた部分と、パッド613の外周側の部分とは、パッド613の突部7cの切れ目に位置する部分によって導通される。また、この場合には、切れ目は、配線12側とは異なる方向に位置していてもよい。また、切れ目が配線を通過させる場合、配線の全体を通過させなくてもよい。例えば、第1の実施形態の突部7cの一端もしくは両端は、配線12の縁部に食い込んでいてもよい。
第6の実施形態(図11)のように径方向の複数位置および周方向の複数位置に複数の突部が分布する場合において、複数の突部は、ランダムに配置されずに、所定の規則性を持って配列されてもよい。また、複数の突部の密度は分布範囲に亘って一様でなくてもよい。また、複数の突部は、配線および/またはパッドと重なる位置においても配置されてよい。この場合であっても、第7の実施形態(図12)と同様に、端子と弾性波素子との導通は確保される。なお、この場合には、パッドの面積は、第7の実施形態と同様に、端子の底面の面積以上であることが好ましい。
突部の位置は、実施形態で示したように、端子の外周側でもよいし、端子の中央側でもよい。なお、突部が外周側に配置されていることは、例えば、判定対象の突部の半分以上の面積が、端子の底面の重心(中央)と端子の底面の外周縁との中間に位置する線(例えば端子が円形である場合には端子の半径の半分の半径の円)の外側に位置していれば、外周側に配置されていると判定することができる。
突部の断面形状は、第1の実施形態のように主面に平行な断面積が一定のものおよび第9の実施形態(図14)のように、先端側ほど主面に平行な断面積が大きいものに限定されない。例えば、先端側ほど主面に平行な断面積が小さくてもよい。
突部は、主面に直交する方向に突出するものに限定されない。すなわち、突部は、主面に対して斜めに突出していてもよい。このような突部は、例えば、レーザーを基板の主面に斜めに入射させるなど、エッチング方向に対して基板を斜めにして基板の溝を形成することによって実現できる。
突部は、端子の底面から突出するものに限定されない。例えば、突部は、端子のフランジから突出し、カバーを貫通して、基板の主面から基板内へ突出するものであってもよい。
端子の柱状部の平面形状は、円形に限定されない。例えば、図16に示す端子907の柱状部907aのように、枠部35の内壁面や外壁面に対して平行もしくは平行に近い面を有する形状であってもよい。同様に、フランジ(図16では不図示)の平面形状およびパッド13の形状(図16では柱状部907aとは異なる形状である円形を例示)も適宜に設定されてよい。図16では、ライン状の突部907cが柱状部907aの外周に沿って多角形状の環状に形成されている。ただし、突部907cは、円形等の柱状部907aとは異なる形状であってもよい。
また、端子は、下地層39と金属部41とからなるものに限られず、例えば、下地層39を設けずに金属部41のみからなるものでもよい。
実施形態では、端子とパッドとは材料が異なり、また、端子の底面の大きさとパッドの底面の大きさとは異なった。ただし、端子とパッドとは、同一材料により形成されるとともに、端子の底面の大きさとパッドの底面の大きさとは同一であってもよい。換言すれば、パッドとして端子と区別される部分は本願発明の必須要件ではない。
基板の溝(3c等)は、突部となる金属を配置する前の適宜な時期に形成することができ、導電層形成前または保護層形成後に限定されない。例えば、導電層形成後かつ保護層形成前であってもよいし、枠部形成後であってもよいし、蓋部形成後であってもよい。ただし、エッチングの容易性からカバー(枠部)の形成前であることが好ましい。