JP2012004291A - 分子線源セル - Google Patents
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Abstract
【課題】分子線源セルを破損させることなく、かつ均一な空間強度分布を維持できるAl用分子線源セルを提供する。
【解決手段】蒸発させる原料を収容するルツボ10と、ルツボ10の側面を囲んで該ルツボ10を加熱する分子線源ヒータ部12と、を備え、ルツボ10は、上端において環状の開口部16が設けられた有底円筒状の容器と、該容器の開口部16の全周に渡って外向きに配置され、分子線源ヒータ部12の外側まで張り出したツバ11と、を有することを特徴とする分子線源セル1。
【選択図】図2
【解決手段】蒸発させる原料を収容するルツボ10と、ルツボ10の側面を囲んで該ルツボ10を加熱する分子線源ヒータ部12と、を備え、ルツボ10は、上端において環状の開口部16が設けられた有底円筒状の容器と、該容器の開口部16の全周に渡って外向きに配置され、分子線源ヒータ部12の外側まで張り出したツバ11と、を有することを特徴とする分子線源セル1。
【選択図】図2
Description
本発明は、分子線結晶成長(MBE:Molecular Beam Epitaxy)装置の分子線源セルに関する。
MBEは、超高真空下で、分子線源セルのルツボに充填された原料を加熱することにより発生する蒸気を分子線として基板に照射し、基板上にナノスケールで正確に制御された厚みと高い面内均一性をもつ薄膜を形成する結晶成長法である。
MBEにおいて用いられる分子線源セルは、これまで、長時間にわたり安定した強度の分子線を発生させ、また、空間的に均一な強度分布の分子線を発生させることができるように、分子線源セルの構造に様々な改良が提案されてきた。
しかし、とくに、III −V 族化合物半導体の重要な元素の一つであるアルミニウム(Al)の分子線を発生させる分子線源セルの場合、解けたAl(以降、Alメルトという)が、PBN(Pyrolytic Boron Nitride )ルツボの内壁を這い上がる性質がある。
図8に示すような従来のルツボ構造では、この這い上がったAlがルツボの開口部からツバを伝って流れ出し、ルツボ加熱用の分子線源ヒータ部を侵食するため、分子線源セルが破損するという問題を抱える。ここでは、分子線源セルを水平から約30度上向きに配置した場合を示しているが、より大きい角度で分子線源セルを配置してもAlの這い上がりは起こり同様の問題を抱える。
これに対し、Alメルトの這い上がりを抑制する手段として、例えば、Al分子線源セルの先端部(ルツボの開口部付近) の温度を低温に保つことが有効であることが分かり、その先端部を低温に保持した分子線源セルがAl用に一般に供されている。
しかしながら、分子線源セルの先端部を低温にすることにより、Alメルトのルツボ開口部からの流出が抑制されるものの、ルツボ開口部付近に低温に起因したAlの塊が発生し、分子線の空間強度分布が損なわれるという新たな問題が発生する(図8参照)。
そこで、本発明では、分子線源セルを破損させることなく、かつ均一な空間強度分布を維持できるAl用分子線源セルを提供する。
発明の一つの態様は、蒸発させる原料を収容するルツボと、前記ルツボの側面を囲んで該ルツボを加熱する分子線源ヒータ部と、を備え、前記ルツボは、上端において環状の開口部が設けられた有底円筒状の容器と、該容器の開口部の全周に渡って外向きに配置され、前記分子線源ヒータ部の外側まで張り出したツバと、を有することを特徴とする分子線源セルに関する。
上記本発明の一態様によれば、ルツボの開口部に設けられたツバの外周部を分子線源ヒータ部の外側に張り出させて該分子線源ヒータ部の先端部分を覆うように構成することによって、溶解した原料の壁面這い上がりによるルツボ開口からの流出に起因した分子線源セルの破損を防止するとともに、開口近傍における原料の固着を抑え、分子線の空間強度分布の均一性を確保することが可能となる。
以下、本発明の実施形態につき、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の分子線源セルを適用する分子線結晶成長(MBE)装置の構成例を示す。MBEは、超高真空下で、分子線源セルのルツボに充填された原料を加熱することにより発生する蒸気を分子線として加熱された単結晶基板に照射し、基板上にナノスケールで正確に制御された厚みと高い面内均一性をもつ薄膜を形成する結晶成長法である。
図1に示すように、MBE装置は、排気ポンプ3により作られる超高真空中で、例えば、複数の分子線源セル1(Ga、As、Al等の原料をそれぞれ個別に収容するセル)から分子線9を発生させて、ヒータ6によって加熱して清浄化された結晶基板(GaAs)7上に、各原料の付着係数の違いを利用して化学量論的な組成比を保って、AlAs薄膜8をエピタキシャル成長させるものである。
なお、RHEED(Reflection High Energy Electron Diffraction :反射高速電子回折)は、RHEED電子銃4によって生成させた10〜30keV程度の電子線を試料表面(AlAs薄膜8)に数度程度の浅い入射角度で入射させ、電子の波動性により結晶格子の回折された電子線を対向するRHEEDスクリーン5に投影して結晶性をその場観察するものである。また、蒸発源として、原料の温度Tが1300°C以下であれば、抵抗加熱方式を用いた分子線セルが用いられる。
図2は、本発明の分子線源セルの基本構造を示す。
III −V 族化合物半導体の重要な元素の一つであるアルミニウム(Al)の分子線を発生させる分子線源セルにおいて、解けたAl(Alメルト)は、PBN製ルツボの内壁を這い上がる性質がある。従来の分子線源セルの構造(図8参照)では、這い上がったAlメルトは、ルツボの開口部から該ルツボのツバを伝って流れ出し、ルツボ加熱用の分子線源ヒータ部を侵食し、終いには、分子線源セルが破損に至ってしまう。
また、Alメルトの流出抑制のためルツボ開口部付近を低温にした場合、Al塊が生成してルツボ開口部付近の壁面に付着し、分子線の空間強度分布の均一性が損なわれる。
以上のような従来の分子線源セルの問題を解決するため、本発明では、分子線源ヒータ部へのAlメルトの流れ込みと、ルツボ開口部付近におけるAl塊の付着を防ぐことのできる分子線源セルを提供する。
本発明になる分子線源セル1は、ツバ11が分子線源ヒータ部12の外側に大きく張り出したルツボ10と分子線源ヒータ部12を有する。ルツボ10は、上端に環状の開口部16を有し蒸発源を収容する有底円筒状の容器と、該容器の開口部16の全周に渡って外向きに配置されたツバ11を有する。なお、ツバ11は、分子線源ヒータ部12の外側に大きく張り出している。また、分子線源ヒータ部12は、タンタル線などのヒータ14が内蔵されたルツボ10の側面を囲む円筒状のリフレクタ13と温度を検知する熱電対15を有する。図2の右上部の点線内の図は、ツバ付ルツボの立体図を模式的に示したもので、円錐台の外形をしたツバ11で分子線源ヒータ部12の先端部分が覆われている構造を示している。
さらに、分子線源セル1は、ルツボ10の開口部16の温度がルツボ中央部に比べて下がらないような温度分布を有している。このような温度分布を実現するために、分子線源ヒータ部12は、いわゆる2ゾーン式(ゾーン1、ゾーン2)のヒータ構造とする。各ゾーンには各々制御用の熱電対15が設けられている。先端部のヒータ14の熱電対温度を1030°Cに、後部のヒータ14の熱電対温度も同じく1030°Cに設定することにより、所望の温度分布が得られる。
また、2ゾーン式ヒータ構造の替わりに、先端部を中央部に比べて密に巻いた1ゾーン式ヒータ構造であってもよい。ヒータ14およびリフレクタ13の材料には,タンタル(Ta)を用いた。また、ルツボ10は,パイロリティック・ボロン・ナイトライド(PBN)製とした。
Al分子線9の空間強度分布の均一性を損なわせるAl塊がルツボ10の開口部16付近にできないように、分子線源セル先端部(ルツボ開口部付近)の温度を高温に保っている。このように、開口部16からツバ11に流れ出るAlメルトをツバ11の外周部(例えば、傾斜した部分)で固まらせることによって、Al分子線の空間強度分布の均一性が確保される。
以上、本発明では、流れ出したAlメルトが分子線源ヒータ部12を侵食しないように、ルツボ10のツバ11が分子線源ヒータ部12の外側に大きく張り出したルツボ構造とした。こうした構造によって、ルツボ10の張り出したツバ11は、先端に(外周部に)行くほど分子線源ヒータ部12から離れるため温度が急速に下がり、Alメルトは冷えて固まる。Alが固まった位置は、ルツボ10の開口部16から離れているため、Al分子線の空間強度分布の均一性を損なう問題は解消される。
図3は、本発明の分子線源セルの変形例として、ツバ形状を円板状とした場合を示す。本実施例では、分子線源セル1のルツボ10のツバ11がルツボ10の開口部16から分子線源ヒータ部12の外周より外側に単純に張り出した構造としている。ツバ11の構造としては最も単純な構造であり作製が容易である。
MBE装置において、分子線源セル1を備え付ける部位は通常冷却パネル(図示していない)で仕切られており、熱的に絶縁されている。当該冷却パネルと分子線源セル1との空間が充分な場合は、本実施例のように横に張り出した形状が適用できる。分子線源セルの温度分布等に関しては、図2の実施例と同じである。
図4は、本発明の分子線源セルの変形例として、ツバ形状を円錐状とした場合を示す。図4に示すように、ルツボ10の開口部16が分子線源セル1の先端部から中央部に入り込んだ位置にあり、分子線源セル1のルツボ10のツバ11が、ルツボ10の開口部16から円錐状に広がり、さらに湾曲して分子線源ヒータ部12の外側に張り出し分子線源ヒータ部12に覆いかぶさるような構造となっている。
ここで、流れ出したAlが基板上に照射される分子線の空間強度分布の均一性を損なう位置で固まるのを避けるため、ルツボ10のツバ11の円錐状の開き角度は、基板との位置関係で決定されることが好ましい。少なくとも、開き角度が0度から60度程度の場合は、ツバ11にAl塊が発生すると、Al分子線の空間強度分布に悪影響が生じやすいことが実験的に判明している。本実施例では、円錐状の開き角度は約120度とした(但し、その上限は180度)。
また、ルツボ10の開口部16を分子線源セル1の先端部から中央部に入り込んだ位置に配置することによって、開口部16はより一層ルツボ中央部と同じ温度に保つことが可能となり、Al塊が開口部付近に溜まりにくくさせる効果が出てくる。
関連して、図3のツバ形状を円板状としたときの開き角度は180度である。
図5は、本発明の実施の形態になる金属多重リングによるAlメルトの流出位置の検出機構を示す。
図5(a)に示すように、ルツボ10のツバ11がルツボ10の開口部16から横方向に張り出して分子線源ヒータ部12を覆う構造の分子線源セル1において、ツバ11の外周部に2重の金属リング17を配置し、Alメルトの流出位置を電気的に検知するものである。そして、2重の金属リング17は、各々引き出し線によりフィードスルー電極端子に繋がれ、MBE装置の外部からの絶縁抵抗のモニターが可能としている。
図5(b)に示すように、ツバ周辺部に向けて這い出したAlメルトが2つの金属リング17に触れると短絡状態になり、その位置までAlメルトが這い出したことを電気的に検知することができる。より広範囲にAlメルトが這い出し位置を把握するには、多重のリングを設ければよい。なお、本実施例では、金属リング及び引き出し線の材料としてはTaを適用した。
図6は、本発明の分子線源セルにおけるルツボの固定機構を示す。ルツボ10の固定機構は、ツバ11の先端部にルツボ10を固定させるためのルツボ固定用のリング21、分子線源ヒータ部12に複数個所設けられたワイヤー掛け用のフック20、およびリング21とフック20に引っ掛けてルツボを固定させるルツボ固定用のワイヤー19を有する。上記固定機構によって、ルツボ10が安定して分子線源セル1に固定されることとなる。
図7は、本発明の分子線源セルによるAlAs層の膜厚分布を示す。グラフの横軸は、基板中心からの距離(mm)を示し、縦軸は、基板中心の膜厚で規格化されたAlAs層の膜厚分布を示している。
図中、(B)は、従来の先端部を低温にしたAl用分子線源セルを用いた場合、(A)は、本発明のAl用分子線源セルを用いた場合のそれぞれの測定結果を示している。一定時間使用した後に基板に成長したAlAs薄膜の膜厚は、(B)では、図8に示したように、ルツボの開口部付近にAl塊が発生することによる不均一な空間強度分布を反映して、3インチ基板の中央部に比べて周辺部で20%程度厚くなっている。これに対して、図2に示すように、一定時間使用した後もルツボの開口部付近にAl塊が留まらないことによる均一な空間強度分布を反映して、3インチ基板面内全体で1%程度と良好な結果が得られた。
本発明は、半導体薄膜の製造装置、とくに、III −V 族化合物半導体の分子線結晶成長装置の分子線源セルに関する。
1 分子線源セル
2 シャッタ
3 排気ポンプ
4 RHEED電子銃
5 RHEEDスクリーン
6 (基板用)ヒータ
7 GaAs基板
8 AlAs薄膜
9 分子線
10 ルツボ
11 ツバ
12 分子線源ヒータ部
13 リフレクタ
14 ヒータ
15 熱電対
16 開口部
17 金属リング
18 リード線
19 (ルツボ固定用)ワイヤー
20 (ワイヤー掛け用)フック
21 (ルツボ固定用)リング
2 シャッタ
3 排気ポンプ
4 RHEED電子銃
5 RHEEDスクリーン
6 (基板用)ヒータ
7 GaAs基板
8 AlAs薄膜
9 分子線
10 ルツボ
11 ツバ
12 分子線源ヒータ部
13 リフレクタ
14 ヒータ
15 熱電対
16 開口部
17 金属リング
18 リード線
19 (ルツボ固定用)ワイヤー
20 (ワイヤー掛け用)フック
21 (ルツボ固定用)リング
Claims (5)
- 蒸発させる原料を収容するルツボと、
前記ルツボの側面を囲んで該ルツボを加熱する分子線源ヒータ部と、を備え、
前記ルツボは、
上端において環状の開口部が設けられた有底円筒状の容器と、
該容器の開口部の全周に渡って外向きに配置され、前記分子線源ヒータ部の外側まで張り出したツバと、を有することを特徴とする分子線源セル。 - 前記ルツボのツバは、前記分子線源ヒータ部の内側において、円錐形状あるいは円板形状であることを特徴とする請求項1に記載の分子線源セル。
- 前記ルツボのツバは、前記分子線源ヒータ部の内側において円錐形状とし、かつ該円錐形状の開き角度を60度より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の分子線源セル。
- 前記分子線源ヒータ部の先端部分に覆いかぶせる前記ツバは、その外周部に2重あるいは多重の金属リングを備え、前記金属リングによって溶解した原料が前記ルツボの内面から這い上がってきたことを検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の分子線源セル。
- 前記ルツボのツバに取り付けられたルツボ固定用のリングと前記分子線源ヒータ部の複数個所に取り付けられたワイヤー掛け用のフックを備え、前記リングと前記フックにワイヤーを引っ掛けてルツボを固定させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分子線源セル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010137101A JP2012004291A (ja) | 2010-06-16 | 2010-06-16 | 分子線源セル |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010137101A JP2012004291A (ja) | 2010-06-16 | 2010-06-16 | 分子線源セル |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family
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JP2010137101A Withdrawn JP2012004291A (ja) | 2010-06-16 | 2010-06-16 | 分子線源セル |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012004291A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101499056B1 (ko) * | 2014-11-17 | 2015-03-06 | (주)알파플러스 | 내부 오염 방지형 진공 증발원 |
KR101499054B1 (ko) * | 2013-07-23 | 2015-03-06 | (주)알파플러스 | 내부 오염 방지형 진공 증발원 |
KR101800738B1 (ko) * | 2016-04-22 | 2017-11-24 | (주)알파플러스 | 진공 증발원 |
WO2019093534A1 (ko) * | 2017-11-08 | 2019-05-16 | (주)알파플러스 | 진공 증발원 |
-
2010
- 2010-06-16 JP JP2010137101A patent/JP2012004291A/ja not_active Withdrawn
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KR101499054B1 (ko) * | 2013-07-23 | 2015-03-06 | (주)알파플러스 | 내부 오염 방지형 진공 증발원 |
KR101499056B1 (ko) * | 2014-11-17 | 2015-03-06 | (주)알파플러스 | 내부 오염 방지형 진공 증발원 |
KR101800738B1 (ko) * | 2016-04-22 | 2017-11-24 | (주)알파플러스 | 진공 증발원 |
WO2019093534A1 (ko) * | 2017-11-08 | 2019-05-16 | (주)알파플러스 | 진공 증발원 |
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