JP2012002738A - ゲル固定用基材、電気泳動用反応器具、電気泳動用反応器具の製造方法及び電気泳動用キット - Google Patents

ゲル固定用基材、電気泳動用反応器具、電気泳動用反応器具の製造方法及び電気泳動用キット Download PDF

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Abstract

【課題】高い信頼性で且つ歩留まりよくゲルを形成することができるゲル固定用基材を提供する。
【解決手段】本発明のゲル固定用基材1は、電気泳動用のゲル3を固定するためのゲル固定用基材であって、上記ゲル3を固定する面の少なくとも一部に、当該ゲル3を付着させるための処理が施されたゲル付着領域2を有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゲル固定用基材、電気泳動用反応器具、電気泳動用反応器具の製造方法及び電気泳動用キットに関し、より具体的には、生物学的サンプルの分離を行なうための電気泳動用ゲルを固定するゲル固定用基材、電気泳動用反応器具、電気泳動用反応器具の製造方法及び電気泳動用キットに関するものである。
電気泳動は、荷電粒子又は分子が電界を移動する現象であり、特に、分子生物学及び生化学の分野においてDNA又はタンパク質を分離する手法として重要である。
また、近年では、ポストゲノムとしてプロテオソーム解析が注目を浴びている。このプロテオソーム解析とは、タンパク質の構造及び機能を対象とした大規模な研究を指し、プロテオソームを解析するために、通常、まずタンパク質試料を個々のタンパク質に分離する。このとき、タンパク質を分離する手法の一つとして、二次元電気泳動が広く用いられている。
二次元電気泳動とは、二段階の電気泳動によってタンパク質を二次元的に分離する手法である。例えば、一次元目は等電点電気泳動(IEF;isoelctric focusing)によってタンパク質を分離し、二次元目はドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;sodium dodecyl sulfate−polyacrylamidegel electrophoresis)によって分子量を分離することが行われる。このような二次元電気泳動は分解能が非常に高く、数千種類以上に及ぶタンパク質をスポットに分離することができる。
一次元目のIEFでは、例えば、再現性及び解像度に優れた固定化pH勾配(IPG;immobilized pH gradient)法が用いられる。固定化pH勾配法では、固定化pH勾配ゲル(IPGゲル)が用いられる。
また、二次元目のSDS−PAGEでは、SDS−PAGEゲルとして、例えば、アガロースゲル又はポリアクリルアミドゲルが用いられる。特に、ポリアクリルアミドゲルとしては、多くの場合、アクリルアミド溶液が均一なホモジニアスゲルが用いられるが、広い範囲の分子量を観察したい場合にはアクリルアミド溶液の濃度が高い方から低い方まで勾配しているグラジエンドゲルが用いられる。
これらIPGゲル及びSDS−PAGEゲルは、例えば、プラスチック若しくはガラス上にコーティングするか、又はゲル溶液を型(例えば、スペーサーを介して対向させたガラス基板間等の鋳型)に流し込んでキャスティングするかによって形成され、一次元目の電気泳動及び二次元目の電気泳動に用いられる。
最近では、動植物ゲノム解析等におけるゲル電気泳動法の利用頻度が飛躍的に増大しており、生産性よく且つ均質なゲルプレートを作製する技術が切望されている。このような要求を受け、インクジェット方式を用いた電気泳動用ゲルプレート及びその作製方法が開発されている(特許文献1)。
特開2004−77393号公報(2004年3月11日公開)
しかし、特許文献1のゲルプレートでは、プレートとゲル溶液との濡れ性が悪い。そのため、インクジェットヘッドからプレート上にゲル溶液を吐出したとしても所望の領域にゲルが形成されないことがあり、歩留まりが低下する。
また、特許文献1の方法で濃度勾配を有するゲルを作製する場合、プレートとゲル溶液との濡れ性が悪いため、インクジェットヘッドから吐出された複数の微小な液滴同士の混合が十分に行なわれない。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い信頼性で且つ歩留まりよくゲルを形成することができるゲル固定用基材を提供することにある。
本発明に係るゲル固定用基材は、上記の課題を解決するために、電気泳動用のゲルを固定するためのゲル固定用基材であって、上記ゲルを固定する面の少なくとも一部に、当該ゲルを付着させるための処理が施されたゲル付着領域を有していることを特徴としている。
本発明に係る電気泳動用反応器具は、上記の課題を解決するために、本発明に係るゲル固定用基材に、電気泳動用のゲルが固定されてなることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明のゲル固定用基材には、ゲルを付着させるための処理が施されている。この処理は、固定用基材の所望の領域に所望の形状で施すことが可能であり、固定用基材に吐出されたゲル溶液は、該処理が施されたゲル付着領域に優先的に固定される。
このように、ゲルを高精度に固定用基材にアライメントすることが可能であるため、高い信頼性で且つ歩留まりよくゲルを形成することができる。
特に、後述する本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法によれば、ゲル固定用基材のゲル付着領域に液体を吐出することにより、該ゲル付着領域に液溜まりを形成することができる。この液溜まりにさらにゲル溶液を吐出することにより、液滴で吐出されるゲル溶液同士を十分に混合させることができる。
また、本発明に係るゲル固定用基材では、上記ゲル付着領域が、凹状又は凸状に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、ゲル付着領域はゲル固定用基材の表面に対して凹状又は凸状に形成された構造を有している。これらの構造を形成しておくことにより、ゲルの形成位置を制御することが可能であり、固定用基材に対するゲルのアライメントを向上することができる。
また、本発明に係るゲル固定用基材では、上記ゲル付着領域内に、複数の凹凸構造が形成されていることが好ましい。
このように、ゲル固定用基材上のゲル付着領域内に複数の凹凸構造を形成することにより、濡れ性を制御することができる。特に、微小領域に凹凸構造を形成することにより、該領域に効率よくゲルを形成することが可能である。
また、本発明に係るゲル固定用基材では、上記ゲル付着領域の少なくとも一部が親水性を有し、上記面であって且つ当該ゲル付着領域以外の領域の少なくとも一部が疎水性を有することが好ましい。
例えば、プラスチック基板等の疎水性材料表面のゲル付着領域となる領域を酸素プラズマ処理等の親水性処理によって親水性にしたり、ガラス基板等の親水性材料表面のゲル付着領域以外の領域をシランカップリング処理等の疎水化処理によって疎水性にしたりする。
このように、ゲル固定用基材の表面をパターニングして親水性領域と疎水性領域とを有する構成にすることによって、ゲル付着領域におけるゲル固定用基材の接触面とゲルとの濡れ性がよく、所望の形状のゲルを形成することができる。
また、本発明に係るゲル固定用基材では、上記ゲル付着領域の親水性を有する領域が、酸素含有官能基を含む組成であることが好ましい。
上記の構成によれば、よりゲル固定用基材の接触面とゲルとの濡れ性のよいゲル固定用基材を提供することができる。
また、本発明に係る電気泳動用反応器具では、上記ゲルが、ゲル濃度又はpHの勾配を有するように形成されていることが好ましい。
例えば、固定化pH勾配ゲル等のpH勾配を有するゲル、又はグラジエントゲル等のゲル濃度勾配を有するゲルを作製する場合、その組成及び濃度等を十分に管理しなくてはならない。本発明によれば、ゲル付着領域が表面改質処理等なされているため、ゲルを作製する際に基板のゲル付着領域の表面とゲル溶液との濡れ性がよく、ゲルを固定する位置を容易に制御できる。
そのため、任意の場所に、任意の大きさで、任意の組成及び濃度を有するゲルを形成することが可能であり、IPGゲル又はグラジエントゲル等のpH又はゲル濃度の勾配を有するゲルを好適に形成することができる。
本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法は、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法であって、上記ゲル付着領域に液体を吐出する第1の吐出工程と、上記第1の吐出工程の後、上記ゲル付着領域にゲル溶液を吐出する第2の吐出工程とを含んでいることを特徴としている。
例えば、ゲル固定用基材にゲル溶液を吐出したとき、該基材とゲル溶液との濡れ性が悪く、吐出されたゲル溶液の液滴同士が十分に混合されないことがある。そのため、ゲル付着領域に予め液体を吐出して液溜まりを形成しておくことにより、微小液滴間での結合が起こり易い。よって、ゲル溶液を十分に混合させることができる。
また、例えば、液体がゲル形成に関連する試薬を含むゲル溶液であれば、ゲル溶液の吐出を多段階で行なうことになる。この場合、ゲル化時間を制御することが可能であり、例えば、不必要にゲル化反応が進行して配管が詰る等装置の不具合が生じることを防ぐことができる。
また、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法では、上記第2の吐出工程では、インクジェットヘッドを用いて上記ゲル溶液を吐出することが好ましい。
上記の構成によれば、ゲル溶液を微小な液滴で吐出することが可能なインクジェットヘッドを用いることにより、ゲル濃度及び形成領域を制御し易い。
また、例えば、IPGゲル又はグラジエントゲルを作製する場合、インクジェットヘッドを用いてゲル溶液を吐出することにより、高精細なグレースケール(グラジエント)を作製することが可能である。よって、高性能なIPGゲル又はSDS−PAGEグラジエントゲルを提供することができる。
また、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法では、上記第1の吐出工程の前に、酸素プラズマ処理によって上記ゲル付着領域を形成するゲル付着領域形成工程を含んでいることが好ましい。
上記の構成によれば、液体を吐出する前にゲル付着領域の濡れ性を向上させることができるため、吐出した液体が所望の領域に液溜まりを形成することができる。
また、例えば、プラズマ遮蔽マスクを用いて酸素プラズマ処理することにより、所望の場所に酸素含有官能基を多く含む組成の領域を形成することが可能であり、ゲルの位置再現性の向上に大きく寄与する。
また、本発明に係る電気泳動用反応器具の製造方法では、上記第2の吐出工程の後、上記ゲル付着領域に重合開始剤を吐出する第3の吐出工程を含んでいることが好ましい。
上記の構成によれば、ゲルの重合を開始させる重合開始剤の吐出をゲル溶液の吐出後に行なっている。これにより、作製治具又はゲル作製装置内におけるゲル溶液のゲル化を抑制し、例えば配管詰り等、ゲル作製治具又はゲル作製装置内で不要にゲル化されてしまうような問題を防止することができる。
本発明に係る電気泳動用キットは、上記の課題を解決するために、本発明に係るゲル固定用基材を備えることを特徴としている。
本発明のゲル固定用基材は、電気泳動用のゲルを固定するためのゲル固定用基材であって、上記ゲルを固定する面の少なくとも一部に、当該ゲルを付着させるための処理が施されたゲル付着領域を有しているため、高い信頼性で且つ歩留まりよくゲルを形成することができる。
また、本発明の電気泳動用反応器具の製造方法は、上記ゲル付着領域に液体を吐出する第1の吐出工程と、上記第1の吐出工程の後、上記ゲル付着領域にゲル溶液を吐出する第2の吐出工程とを含んでいるため、電気泳動に好適に用いられるゲルを形成することができる。
図1の(a)は、本発明の一実施形態に係る電気泳動用反応器具の構成を示す斜視図であり、図1の(b)は、本発明の一実施形態に係る電気泳動用反応器具の構成を示す断面図である。 図1に示す電気泳動用反応器具におけるゲル付着領域の他の構成を示す斜視図である。 図1に示す電気泳動用反応器具におけるゲル付着領域の他の構成を示す斜視図である。 図1に示す電気泳動用反応器具におけるゲル付着領域の他の構成を示す斜視図である。 図1に示す電気泳動用反応器具におけるゲル付着領域の他の構成を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る電気泳動用反応器具を製造する際の流れを示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る電気泳動用反応器具を製造する際の流れを示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る電気泳動用反応器具を製造する際の流れを示す斜視図である。
以下、本発明の一実施形態について、図1〜8を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るゲルプレート10(電気泳動用反応器具)の構成について、図1〜5を参照して説明する。
(ゲルプレート10の構成)
図1の(a)は、本発明の一実施形態に係るゲルプレート10の構成を示す斜視図であり、図1の(b)は、本発明の一実施形態に係るゲルプレート10の構成を示す断面図である。
本実施形態のゲルプレート10は、電気泳動において試料の各成分を分離するための支持体であるゲルを固定したプレートであり、図1に示すように、電気泳動用のゲルを固定するための基板1(ゲル固定用基材)に、電気泳動用のゲル3が固定されてなるものである。
電気泳動とは、タンパク質、DNA又はRNA等の生体高分子を大きさ又は電荷の違いによる電場における移動速度の差を利用して分離する方法である。電気泳動には、生体高分子をゲル等の支持体中で移動させる方法があり、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はアガロースゲル電気泳動等を含む。
本発明の電気泳動用反応器具は、例えば、等電点電気泳動(IEF;isoelctric focusing)によって分離したタンパク質をさらに、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE;sodium dodecyl sulfate−polyacrylamidegel electrophoresis)によって分離する二次元電気泳動に好適に利用することができる。
電気泳動用反応器具の形状は、本実施形態に示すように平板プレートに限定されるものではなく、例えば、所望の形状に成型したチップ等であってもよい。
基板1は、ゲル3を固定する面の少なくとも一部に、当該ゲル3を付着させるための処理が施されたゲル付着領域2を有している。
本実施形態では、ゲル付着領域2は基板1の上面の外周近傍に枠状に設けられており、例えば、表面改質層レベルである数ナノメートルから溝構造レベルである数百マイクロメートルの厚さを有している。基板1にこのようなゲル付着領域2を設けることにより、ゲル3がゲル付着領域2の上部に形成されるように好適に制御することができる。
しかしながら、ゲル付着領域2の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、基板1上面の任意の領域に凹状又は凸状の構造が形成されていてもよいし、基板1の表面の性質を化学的に改質する処理が施されていてもよい。また、これらの構成を組み合わせることができる。
ゲル付着領域2の詳細については後述するが、基板1にゲル付着領域2が形成されていることにより、ゲル3を形成する際にゲル溶液がゲル付着領域2に固定されるため、ゲル3を形成する領域を制御することができる。
また、表面改質処理等を行なった場合、基板1におけるゲル付着領域2の表面とゲル溶液との濡れ性が向上するため、ゲル付着領域2に吐出したゲル溶液同士が好適に混合され、所望の位置及び大きさのゲル3を形成することができる。
さらに、後述するゲルプレート10の製造方法によれば、ゲル付着領域2に液体を吐出することによって液溜まりを形成することができるため、液溜まりに微小な液滴でゲル溶液を吐出してもゲル溶液同士が十分に混合され、品質のよいゲルを形成することができる。
基板1としては、例えば、ガラス、樹脂又はセラミックス等の基板が挙げられる。ガラス基板としては、例えば、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板等が挙げられ、樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET;polyethylene terephthalate)基板、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA;polymethyl methacrylate)基板等が挙げられ、セラミックス基板としては、例えば、アルミナ基板、低温同時焼成セラミック基板等が挙げられる。
ゲル3は、タンパク質等の生体高分子を電気泳動によって分離する支持体であり、例えば、ポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルが挙げられる。本実施形態のゲルプレート10によれば、ゲル付着領域2によってゲル3の形成領域を制御するため、ゲル3を所望の位置に再現性よく形成することができる。
ゲル3の厚さは特に限定されないが、例えば、図1の(b)に示すゲル付着領域2が、基板1の表面に対して数ナノメートルから数百マイクロメートルの厚さを有している場合、数百ミリメートルから数ミリメートル程度であることが望ましい。ゲル付着領域2の厚さに対して形成されるゲル3の厚さがこの範囲であれば、電気泳動実験に最適に用いることができる。
また、ゲルプレート10では、例えば、固定化pH勾配(IPG;immobilized pH gradient)ゲル又はグラジエントゲル等のように、ゲル濃度又はpHの勾配を有するゲル3を形成することが容易である。
IPGゲルは、等電点電気泳動に用いられるゲルであり、pHに対して勾配を有している。また、グラジエントゲルは、SDS−PAGEに用いられるゲルであり、アクリルアミド濃度に対して勾配を有している。
これらのゲルを作製する場合、pH又はゲル濃度を十分に管理する必要があり、基板1にゲル溶液を吐出する際、微小な液滴で吐出されることが多い。そのため、ゲル付着領域2に対して濡れ性が向上するような所望の処理を施すことによって、基板1上に吐出されたゲル溶液の微小な液滴同士が好適に混合される。
よって、IPGゲル又はグラジエントゲル等のpH勾配又はゲル濃度勾配を有するゲルを好適に形成することができる。
(ゲル付着領域2の構成)
ここで、基板1に形成されたゲル付着領域2の構成について、図2〜5を参照してさらに説明する。図2〜5は、図1に示すゲルプレート10におけるゲル付着領域2の他の構成を示す斜視図である。
上述したように、ゲル付着領域2は、例えば、基板1上面の任意の領域に凹状又は凸状の構造が形成されていてもよいし、基板1の表面の性質を化学的に改質する処理が施されていてもよい。
例えば、図2に示す基板1には、上面中央に所望のパターンの凹構造(くり抜き構造)が設けられている。このくり抜き構造は、例えば、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの深さを有していてもよいが、基板1の厚さに応じて適宜設定すればよい。
くり抜き構造の作製方法としては、基板1の材質に応じて選択すればよい。例えば、ガラス基板であればフォトリソグラフィ、つまり、ゲル付着領域2になる所望の領域以外をフォトレジストマスクによってマスクし、該所望の領域をエッチングしてくり抜き構造を作製することができる。また、例えば、樹脂基板であれば、切削加工又は射出成型によってくり抜き構造を作製することができる。
また、ゲル付着領域2の他の構成として、例えば図3に示す基板1には、図2に示す基板1とは反対に上面中央に所望のパターンの凸構造(出っ張り構造)が設けられている。この出っ張り構造は、例えば、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの深さを有していてもよいが、基板1の厚さに応じて適宜設定すればよい。
出っ張り構造の作製方法としては、上述のくり抜き構造と同様の方法により作製することができる。例えば、基板1がガラス基板である場合、ゲル付着領域2になる所望の領域をフォトレジストマスクによってマスクし、該所望の領域以外をエッチングして出っ張り構造を作製することができる。
ゲル付着領域2に凹構造または凸構造が形成されていれば、表面張力の働きにより、ゲルまたは後述する液溜まりを、ゲル付着領域2に首尾よく形成することができる。
さらに、ゲル付着領域2には、その内部に複数の凹凸構造が形成されていてもよい。凹凸構造を複数形成することにより、ゲル付着領域2の表面積を拡大させ、濡れ性を向上させることができる。該凹凸構造は微細であることが好ましい。例えば、図4に示す基板1においては、ゲル付着領域2の内部に微細な凹凸構造4が形成されている。
例えば、ゲル溶液を微小な液滴で基板1に吐出したとき、ゲル溶液と基板1との濡れ性が悪いと、吐出された液滴同士が十分に混合されず、電気泳動特性の悪いゲルになる。これに対し、図4に示す微細な凹凸構造4が形成された領域では、この構造によって濡れ性を制御することが可能である。
つまり、凹凸構造4が形成された微小領域では濡れ性がよいため、該領域に吐出された液滴同士の結合が起こり易い。よって、効率よく所望の形状のゲル3を形成することができる。
この凹凸構造4は、例えば、数ナノメートルから数十ナノメートルの深さ又は厚さを有していてもよく、一般的に知られているナノインプリント技術を用いることにより好適に作製することができる。
また、図4に示す例では、基板1の平面上に直接凹凸構造4が形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図2又は図3に示す構成のゲル付着領域2の内部に凹凸構造4が形成されていてもよい。
一方、基板1では、ゲル付着領域2の少なくとも一部が親水性を有し、ゲル付着領域2以外の領域の少なくとも一部が疎水性を有することが好ましい。例えば、図5に示す基板1のゲル付着領域2の内部に親水性を有する親水性領域を含み、それ以外の基板1の表面が疎水性を有することが望ましい。これにより、ゲル付着領域2の濡れ性が向上するため、ゲル3を位置再現性よく形成することができる。
ゲル付着領域2に親水性領域を形成する方法としては、基板1の少なくともゲル付着領域2が形成されている面が親水性材料からなるか、疎水性材料からなるかによって異なる処理を行なうことが可能である。
例えば、基板1のゲル形成面が疎水性材料からなる場合、硫酸を用いたニトロ化、硝酸を用いたスルホン化、酸素プラズマ処理を用いた酸素含有官能基の導入等の親水性処理によってゲル付着領域2の内部に親水性領域を形成することができる。
特に、親水性処理としては酸素プラズマ処理を用いることが好ましい。この方法を用いれば、少なくともゲル付着領域2の形成面が疎水性材料からなる基板1に対して、簡便に親水性領域を形成することができる。
また、例えば、基板1のゲル形成面が親水性材料からなる場合、基板1の材質に応じて適切な疎水化処理を行なえばよい。例えば、基板1がガラス基板である場合、親水性領域になる部位をカプトンテープ等でマスキングし、シランカップリング剤を用いて処理することにより当該部位以外の領域を疎水化する。また、例えば、光分解性シランカップリング剤によってガラス基板を疏水化処理した後、親水性領域になる部位を紫外光照射することによって親水性領域を得ることができる。これにより、基板1上に親水性領域と疎水性領域とが形成される。
また、例えば基板1がシリコーン基板である場合、親水性領域となる部位を自然酸化膜によってマスキングし、希フッ酸によってウェットエッチングすることにより当該部位以外の領域を疎水化すればよいし、先に希フッ酸によって洗浄した後、当該部位以外の領域をマスキングしてから酸化処理してもよい。この方法によっても、基板1上に親水性領域と疎水性領域とが形成される。
また、親水性領域は、酸素含有官能基を多く含む組成であることが好ましい。この場合、例えば、酸素含有官能基を有する有機樹脂を基板1として用いるか、市販品の有機樹脂を親水化処理して基板1として用いればよい。親水性領域が酸素含有官能基を多く含む組成であれば、さらに濡れ性がよい。
このように、化学的な表面改質処理によって基板1上に親水性領域と疎水性領域とを形成することにより、親疎水性に係る濡れ性を利用して、ゲル溶液を位置再現性よくパターニングすることができる。
なお、基板1の表面改質処理は、図2〜4に示す構成の基板1に対して行なってもよい。
(ゲルプレート10の製造方法)
次に、本実施形態のゲルプレート10の製造方法について図6を参照して説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るゲルプレート10を製造する際の流れを示す断面図である。
本実施形態では、典型的な電気泳動用ゲルの一つである4%ポリアクリルアミドゲルが形成されたゲルプレート10の製造方法について説明する。
4%ポリアクリルアミドゲルを形成するための試薬としては、例えば、30%アクリルアミド混合溶液(アクリルアミド+N,N’−メチレンビスアクリルアミド)、1Mトリス塩酸緩衝液(Tris−HCl)、過硫酸アンモニウム(APS;ammmoniumpresulfate)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED;N,N,N’,N’−tetramethylethylenediamine)、及び純水を含む。
アクリルアミド混合溶液は、ゲルの主骨格を形成するアクリルアミドと、ゲルの主骨格を架橋するN,N’−メチレンビスアクリルアミドとを混合したゲル溶液であり、トリス塩酸緩衝液はバッファーであり、APSは重合開始剤であり、TEMEDは重合促進剤である。
本実施形態では、これらゲルを形成するための試薬を3段階で吐出する構成について説明するが、ゲルプレート10を製造する方法は、これに限定されない。例えば、溶液を吐出する回数はこれに限定されるものではなく、液体を吐出する第1の吐出工程と、ゲル溶液を吐出する第2の吐出工程との2段階であってもよく、特許文献1に記載のように、1段階で形成してもよい。
まず、図6の(a)に示すように、基板1の上面にゲル付着領域2を形成する。基板1としては、例えば、70ミリメートル×13ミリメートルのポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが可能であり、この基板1に対して表面改質処理を行なってゲル付着領域2を形成する。
本実施形態では、第1の吐出工程の前に、ゲル付着領域2以外の部位をマスキングし、酸素プラズマ処理を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成する(ゲル付着領域形成工程)。このとき、ゲル付着領域2の面積は、例えば50ミリメートル×2.4ミリメートルにすることができる。
この酸素プラズマ処理等の表面改質処理はパターニングが容易で且つ生産性が高いため、より好ましい方法であるが、ゲル付着領域2の構成はこれに限定されるものではなく、上述したくり抜き構造又は出っ張り構造を形成してもよいし、微細な凹凸構造4を形成してもよい。また、これらを組み合わせることが可能である。
次に、基板1のゲル付着領域2に対して、第1の溶液(液体)を吐出する(第1の吐出工程)。このとき、ゲル付着領域2は酸素プラズマによって親水性にされているため、第1の溶液が位置再現性よくゲル付着領域2に留まって液溜まり5(液滴捕捉領域)を形成する(図6の(b))。
第1の溶液としては、例えば、1Mトリス塩酸緩衝液、TEMED、及び純水が挙げられる。これらの量は、ポリアクリルアミドゲルの濃度に応じて適宜設定すればよく、混合比率は特に限定されない。また、第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられる。
第1の吐出工程において吐出される液体は、ゲル付着領域2に液滴捕捉領域5を形成することが可能な液体であればよいが、ゲルの形成に支障を来たすものでないことが好ましく、水性溶媒であることがより好ましく、本実施形態のように第2の溶液のゲル化を促進させる試薬を含む溶液であることがさらに好ましい。
第1の吐出工程における第1の溶液の吐出量は形成するゲルの膜厚に応じて適宜設定すればよく、例えば、厚いゲルを形成したい場合は液溜まりが厚くなるように吐出し、薄いゲルを形成したい場合は液溜まりが薄くなるように吐出することが好ましい。一例として、例えば0.2mm〜0.4mm程度の液溜まりが形成されるように吐出してもよい。
つまり、ゲル溶液を基板1に吐出するとき、反応系が気相中である場合には吐出したゲル溶液の微小液滴が基板1上で十分に混合され難い。そのため、ゲル付着領域2に予め液体を吐出して液溜まりを形成しておくことにより、微小液滴間での結合が起こり易い。よって、ゲル溶液を十分に混合させることができる。このとき、ゲル付着領域2が親水性領域を含むように表面改質処理がなされていれば、より好適にゲル溶液を混合させることができる。
また、液体がゲル形成に関連する試薬を含む溶液であれば、ゲルを形成するための試薬を多段階で吐出することになる。このようなゲルの作製方法では、ゲル化時間を制御することが可能であり、例えば、不必要にゲル化反応が進行して配管が詰る等装置の不具合が生じることを防ぐことができる。
第1の溶液の吐出後、液滴捕捉領域5が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出する(第2の吐出工程)。第2の溶液としては、例えば、30%アクリルアミド混合溶液等のゲル溶液が挙げられる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等が挙げられるが、特に、微小なノズルから微小液滴を飛ばして基板1に付着させるインクジェットヘッドを用いることが好ましい。図6の(c)に示すように、インクジェットヘッド11から第2の溶液の微小液滴6で吐出することができれば、ゲル濃度及び形成領域を制御し易い。
また、例えば、IPGゲル又はグラジエントゲルを作製する場合、インクジェットヘッド11を用いて30%アクリルアミド混合溶液を勾配を付けて吐出することにより、高精細なグレースケール(グラジエント)を作製することができる。よって、高性能なIPGゲル又はSDS−PAGEグラジエントゲルを提供することができる。
インクジェットヘッド11の吐出方法としては、主に連続吐出型(コンティニュアスインクジェット)とオンデマンド型(ドロップオンデマンドインクジェット)とに分類される。さらに、コンティニュアスインクジェットとしては、例えば、チャージした微小液滴を電界でコントロールする荷電制御方式が挙げられ、ドロップオンデマンドインクジェットとしては、例えば、サーマル(バブル)方式、静電アクチュエータ方式又はピエゾ方式等が挙げられる。
本実施形態のように、インクジェットヘッド11から第2の溶液の微小液滴6を吐出するとき、ゲル付着領域2に液滴捕捉領域5(プール)が形成されていることにより、液滴捕捉領域5に吐出された微小液滴6同士の混合を大きく促進させることができる。よって、液滴捕捉領域5がない場合に生じる電気泳動特性の劣化を防ぐことができる。
続いて、液滴捕捉領域5と第2の溶液とを含む混合液体7に対して、第3の溶液を吐出する(図6の(d))(第3の吐出工程)。第3の溶液としては、例えばAPSを含み、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよい。
これにより、例えば、50ミリメートル×2.4ミリメートルの面積を有するゲル付着領域2に対して、総量80マイクロリットルの第1〜第3の溶液を吐出する場合、0.5〜1.0ミリメートルのポリアクリルアミドゲル8が形成されたゲルプレート10が得られる。
なお、ゲルプレート10の作製を反応器内において行なう場合、ゲルプレート10の作製中は該反応器の内部を例えばアルゴン等の不活性ガス又は窒素雰囲気にして、ゲル化反応の阻害因子になる酸素を反応器内から排出することが望ましい。
従来の典型的なゲル化反応では、ガラス基板等によって形成されるゲル作製治具にゲルがキャスティングされているため大気に触れ難いが、本実施形態のゲルプレート10はゲル溶液を基板1に直接描画するため、ゲル溶液の大部分の表面が大気中に暴露され、酸素の影響を受け易い。よって、反応器内を不活性ガス又は窒素雰囲気にすることが望ましい。
しかし、ゲルプレート10を簡便に作製する場合、反応器等は用いずに大気中でゲル化反応を行なう場合がある。この場合、APSの吐出量を、例えば基板1のゲル付着領域2に吐出される第1〜第3の溶液の全量に対して、5%〜20%程度にすることが好ましい。
APSが5%以上であれば、ゲル溶液を十分にゲル化し得る。また、APSが20%以下であれば、APS同士が影響し合ってゲル化速度が速くなることに起因する、ゲル化開始に必要なラジカルが減少して制御不十分になることを抑制することができる。
ところで、第3の溶液であるAPSは、本実施形態のように最終段階に吐出することが好ましい。これにより、作製治具又はゲル作製装置内におけるゲル溶液のゲル化を抑制し、例えば配管詰り等、ゲル作製治具又はゲル作製装置内で不要にゲル化されてしまうような問題を防止することができる。
このように、本実施形態のゲルプレート10の製造方法によれば、基板1上の任意の位置に形成されたゲル付着領域2に対して各ゲル溶液を吐出することにより、任意の大きさ、組成及び濃度を有し、位置再現性高くゲル3を直接的に形成することができる。
よって、従来ではガラス基板等のキャスティング治具を用いてゲルプレートを形成していたためにゲルを形成する場所が制限されていたが、本実施形態の製造方法によれば、例えば基板1の端面等、任意の場所にゲルを形成することができる。
(等電点電気泳動チップ20の作製)
次に、本発明に係る電気泳動用反応器具として等電点電気泳動チップ20を適用した場合の製造方法について図7を参照して説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る等電点電気泳動チップ20を製造する際の流れを示す断面図である。なお、図7に示すIEFチップ20に形成されたIPGゲルは、例えば特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)に開示されている第1媒体(1Dゲル)、すなわち固定化pH勾配ゲルに好適に適用可能である。
本実施形態では、二次元電気泳動の一次元目、すなわち等電点電気泳動に用いられる固定化pH勾配ゲル(IPGゲル)が形成された等電点電気泳動チップ20(IEFチップ)の製造方法について説明する。
一般的に知られる等電点電気泳動に用いられるIEFチップは、ゲルボンドフィルム上にIPGゲルをキャスティングし、所望の形状に切断することにより得られる。
例えば、このようなIPGゲルにおいて本実施形態の製造方法を適用する場合、ゲルボンドフィルムの素材であるPETに対してゲル付着領域2を形成する部位以外をマスキングし、グロー放電又はアーク放電等によって酸素プラズマ処理を行なうことにより、ゲル付着領域2を形成することができる。
このように、IPGゲルが固定されたIEFチップの作製に本実施形態の製造方法を用いれば、従来、作製が困難であった形状に対しても十分にゲルを形成することができる。
IPGゲルを形成するための試薬としては、例えば、イモビライン混合溶液、等電点電気泳動試薬、TEMED、APS、及び純水が挙げられる。
イモビライン混合溶液は、例えばpHが異なる2種類のイモビラインを混合した溶液であり、正電荷又は負電荷を有するアクリルアミド誘導体によって、様々な解離定数(pK)を有するイモビラインを混合することにより、所望のpHを有するイモビライン混合溶液が得られる。また、等電点電気泳動試薬(アンフォライン)は両性電解質混合物である。
まず、図7の(a)に示すように、支持基体12の上端面にゲル付着領域2を形成する。支持基体12としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のプラスチック基板又はガラス基板を用いることができる。
また、本実施形態においても、支持基体12のゲル付着領域2を親水性にし、ゲル付着領域2以外の領域を疎水性にすることが好ましい。例えば、支持基体12がPMMAである場合、ゲル付着領域2以外の領域をマスキングし、酸素プラズマ処理又はスルホン化処理を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成することができる。
次に、支持基体12のゲル付着領域2に対して、第1の溶液を吐出する。第1の溶液としては、例えば、等電点電気泳動試薬、TEMED、及び純水を含む。これらの混合比率は特に限定されない。これにより、ゲル付着領域2に液滴捕捉領域13が形成される。
第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いることができる。
第1の溶液の吐出後、液滴捕捉領域13が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出し、グラジエントを形成する。第2の溶液としては、例えば、イモビライン混合溶液等を用いることができる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いることができるが、特に、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。例えば、図7の(b)に示すように、液滴捕捉領域13が形成されたゲル付着領域2に、2種類のイモビライン混合溶液の濃度勾配ができるように、インクジェットヘッド11を支持基体12の長手方向(図7の(b)中、「A」で示す矢印の方向)にスキャンさせる。
例えば、一方のイモビライン混合溶液をpH3に調整し、他方のイモビライン混合溶液をpH10に調整したイモビライン混合溶液をインクジェットヘッド11から微小液滴で吐出する。なお、イモビライン混合溶液の調整方法については、一般的な方法を用いればよいため説明を省略する。
なお、液滴捕捉領域13に対してインクジェットヘッド11からイモビライン混合溶液を吐出して形成したイモビライン含有ゲル溶液14(図7の(c))は、次工程まではゲル化反応が起こらず、溶液状態のままであり得る。
続いて、イモビライン含有ゲル溶液14に対して、第3の溶液を吐出する。第3の溶液としては、例えばAPSを含み、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよいが、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。
例えば、ピペッター等を用いてAPSを吐出した場合、APSを吐出していない領域のゲル化がAPSを滴下した領域に対して抑制されるため、IPGゲルの均一性が劣化する。よって、インクジェットヘッドを用いたAPSの吐出は、ゲル付着領域2の平面に加え、イモビライン含有ゲル溶液14の深さ方向に対しても均一にすることができる。
これにより、例えば、pH3〜10であり、IPGゲルのサイズが50nm(等電点グラジエント方向)×2.4mm×0.5mである支持基体12と、支持基体12に対して位置精度よく固定化して形成されたIPGゲルとからなるIEFチップ20を得ることができる。
なお、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気以外でIPGゲルを作製する場合、例えば、APSの体積比(APSの吐出体積/全吐出体積)は、5〜20%であることが好ましい。しかし、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気、すなわち脱酸素雰囲気においてIPGゲルを作製する場合は、APSの体積比は1%以下であってもよい。
(SDS−PAGEチップ30の作製)
次に、本発明に係る電気泳動用反応器具としてSDS−PAGEチップ30を適用した場合の製造方法について図8を参照して説明する。図8は、本発明の一実施形態に係るSDS−PAGEチップ30を製造する際の流れを示す断面図である。
本実施形態では、二次元電気泳動の二次元目、すなわちSDS−PAGE電気泳動に用いられるグラジエントゲルが形成されたSDS−PAGEチップ30の製造方法について説明する。
一般的に知られるSDS−PAGEに用いられるSDS−PAGEチップ30は、PMMA等のプラスチック樹脂からなる器具等にポリアクリルアミドゲルをキャスティングしている。
しかし、本実施形態のSDS−PAGEチップ30の製造方法を用いれば、IEFチップ20と同様にキャスティング構造を設ける必要がなく、プラスチック平板又はガラス平板等の構造であってもよい。なお、SDS−PAGEチップ30に形成されたグラジエントゲルは、例えば、特開2007−64848号公報(2007年3月15日公開)に開示されている第2媒体(2Dゲル)及び第2分離部(サンプル器具)、グラジエントゲルに好適である。
グラジエントゲルを形成するための試薬としては、例えば、上述したポリアクリルアミドゲルと同様の溶液を用いることができる。
まず、図8の(a)に示すように、グラジエントゲルを設ける支持基体15の所望の領域に、ゲル付着領域2を形成する。支持基体15としては、例えば、PMMA等のプラスチック基板又はガラス基板を用いることができる。
また、本実施形態においても、支持基体15のゲル付着領域2を親水性にし、ゲル付着領域2以外の領域を疎水性にすることが好ましい。例えば、支持基体15のゲル付着領域2以外の領域をマスキングし、酸素プラズマ処理、スルホン化処理又はニトロ化処理等を行なうことにより親水性領域を有するゲル付着領域2を形成することができる。
次に、支持基体15のゲル付着領域2に対して、第1の溶液を吐出する。第1の溶液としては、例えば、1Mトリス塩酸緩衝液、TEMED、及び純水が挙げられる。これらの混合比率は特に限定されない。これにより、図8の(b)に示すように、ゲル付着領域2に液滴捕捉領域16が形成される。
第1の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いることができる。
第1の溶液の吐出後、液滴捕捉領域16が形成されたゲル付着領域2に対して第2の溶液を吐出し、グラジエントを形成する。第2の溶液としては、例えば、アクリルアミド混合溶液(アクリルアミド+N,N’−メチレンビスアクリルアミド)が挙げられる。アクリルアミド混合溶液の濃度は、例えば、30〜50%(アクリルアミド:N,N’−メチレンビスアクリルアミド=37.5:1)の比較的高濃度にすることができる。
第2の溶液の吐出手段としては、例えば、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いることができるが、特に、インクジェットヘッド11を用いることが好ましい。例えば、インクジェットヘッド11を用いて図8の(b)中、「B」で示す矢印の方向に沿ってスキャンさせることにより、好適にグラジエントを形成することができる。
なお、液滴捕捉領域16に対してインクジェットヘッド11から第2の溶液を吐出して形成したアクリルアミド混合物含有ゲル溶液17(図8の(c))は、次工程まではゲル化反応が起こらず、溶液状態のままであり得る。
続いて、アクリルアミド混合物含有ゲル溶液17に対して、第3の溶液を吐出する。第3の溶液としては、例えばAPSが挙げられ、ピペッター、ディスペンサー又はインクジェットヘッド等を用いて吐出すればよいが、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。
IEFチップ20と同様に、APSの吐出は、ゲル付着領域2の平面に加え、アクリルアミド混合物含有ゲル溶液17の深さ方向に対しても均一にすることが望ましいため、インクジェットヘッドを用いることが好ましい。このように、グラジエントを有するアクリルアミド混合物含有ゲル溶液17に対して所望の量のAPSを吐出することにより、支持基体15の所望の領域に作製されたゲル付着領域2の上にグラジエントゲルを形成することができる。
例えば、低濃度側が4%及び高濃度側15%であり、グラジエントゲルのサイズが50nm(濃度グラジエント方向)×2.4mm×0.5mである支持基体15と、支持基体15に対して位置精度よく固定化して形成されたグラジエントゲルとからなるSDS−PAGEチップ30が得られる。
なお、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気以外でグラジエントゲルを作製する場合、例えば、APSの体積比(APSの吐出体積/全吐出体積)は、5%以上であることが好ましい。しかし、窒素又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気、すなわち脱酸素雰囲気においてIPGゲルを作製する場合は、これに限定されるものではない。
(被分離物質)
上述した各電気泳動用反応器具を用いて電気泳動される被分離物質としては、電気泳動及び転写によって分離又は分析する対象の物質であればよく、例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物又は組織断片等の生物材料から採取した調製物を好適に用いることができる。特に、ポリペプチド又はポリヌクレオチドがより好適である。
(電気泳動用キット)
さらに、本発明は、本発明に係るゲル固定用基材を含む、電気泳動用キットを包含する。
上記キットは、本発明に係るゲル固定用基材の他に、例えば、ゲル形成に関する試薬、電気泳動のための緩衝液、電気泳動のための器具等を備えていてもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
本発明は、タンパク質、DNA又はRNA等の生体高分子を分離させるポリアクリルアミドゲル電気泳動又はアガロースゲル電気泳動に用いることが可能であり、特に、等電点電気泳動及びSDS−PAGE電気泳動を含む二次元電気泳動に好適に利用可能である。
1 基板(ゲル固定用基材)
2 ゲル付着領域
3 ゲル
10 ゲルプレート(電気泳動用反応器具)
20 IEFチップ(電気泳動用反応器具)
30 SDS−PAGEチップ (電気泳動用反応器具)

Claims (12)

  1. 電気泳動用のゲルを固定するためのゲル固定用基材であって、
    上記ゲルを固定する面の少なくとも一部に、当該ゲルを付着させるための処理が施されたゲル付着領域を有していることを特徴とするゲル固定用基材。
  2. 上記ゲル付着領域が、凹状又は凸状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゲル固定用基材。
  3. 上記ゲル付着領域内に、複数の凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のゲル固定用基材。
  4. 上記ゲル付着領域の少なくとも一部が親水性を有し、上記面であって且つ当該ゲル付着領域以外の領域の少なくとも一部が疎水性を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゲル固定用基材。
  5. 上記ゲル付着領域の親水性を有する領域が、酸素含有官能基を含む組成であることを特徴とする請求項4に記載のゲル固定用基材。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のゲル固定用基材に、電気泳動用のゲルが固定されてなることを特徴とする電気泳動用反応器具。
  7. 上記ゲルが、ゲル濃度又はpHの勾配を有するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気泳動用反応器具。
  8. 請求項6又は7に記載の電気泳動用反応器具の製造方法であって、
    上記ゲル付着領域に液体を吐出する第1の吐出工程と、
    上記第1の吐出工程の後、上記ゲル付着領域にゲル溶液を吐出する第2の吐出工程とを含んでいることを特徴とする電気泳動用反応器具の製造方法。
  9. 上記第2の吐出工程では、インクジェットヘッドを用いて上記ゲル溶液を吐出することを特徴とする請求項8に記載の電気泳動用反応器具の製造方法。
  10. 上記第1の吐出工程の前に、酸素プラズマ処理によって上記ゲル付着領域を形成するゲル付着領域形成工程を含んでいることを特徴とする請求項8又は9に記載の電気泳動用反応器具の製造方法。
  11. 上記第2の吐出工程の後、上記ゲル付着領域に重合開始剤を吐出する第3の吐出工程を含んでいることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の電気泳動用反応器具の製造方法。
  12. 請求項1から5のいずれかに記載のゲル固定用基材を備えていることを特徴とする電気泳動用キット。


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