JP2011517801A - 特注義歯を提供するシステムおよび方法 - Google Patents

Abstract

無歯顎患者に特注義歯を提供するシステムおよび方法を提供する。本システムは、歯科医院モジュールと、歯科医院モジュールと通信媒体を介して電気通信する歯科研究所モジュールとを含む。歯科医院モジュールは、無歯顎患者のデジタル義歯処方データを収集し、歯科研究所モジュールはデジタル義歯処方データに基づいて特注義歯を製造する。本方法は、歯科医師の診療所において無歯顎患者のデジタル義歯処方データを収集し、デジタル義歯処方データを義歯研究所に送信し、デジタル義歯処方データに基づいて特注義歯を製造することを含む。

Description

関連出願の参照

本出願は、全て２００８年２月２２日に提出された米国仮出願第６１／０３０，８１０号、米国仮出願第６１／０３０，７９５号、米国仮出願第６１／０３０，８２６号、米国仮出願第６１／０３０，８３１号、および米国仮出願第６１／０３０，８４２号に基づく利益を主張するものであり、各文献の内容は引用することにより本明細書の一部とされる。さらに、本出願は、全て本出願と同時に提出された国際出願ＰＣＴ／ＵＳ０９／３４６４５号、［代理人整理番号０００５５８３ＷＯＵ］、［代理人整理番号０００５５８４ＷＯＵ］、国際出願ＰＣＴ／ＵＳ０９／３４６７０号、および、［代理人整理番号０００５５８６ＷＯＵ］に関連し、各文献の内容は引用することにより本明細書の一部とされる。

発明の背景

１．技術分野
本開示は、特注義歯を提供するシステムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、無歯顎患者(edentulous patient)の義歯処方データをデジタル方式で自動的に収集し、標準化するシステムと方法に関し、このデジタル処方データを義歯製造における使用のため、義歯製造研究所へ自動的に提供すること、および、義歯製造所での義歯製造に関する。

２．関連技術の説明
義歯は、欠損歯の代替とするため口腔内に装着される。本開示において「義歯」という用語は、上顎用と下顎用の総義歯または部分義歯、人工歯、上顎用と下顎用の可撤式歯列矯正用ブリッジと義歯床、歯列矯正用の器具と固定器具、保護用マウスガード、歯ぎしりおよび／または顎関節（ＴＭＪ）障害防止用ナイトガード等、を意味する。

現在、無歯顎患者が義歯を入手するには基本的に２つの選択肢がある。

一つ目の選択肢は、非特注の義歯、あるいは半特注の義歯を購入することである。このような非特注義歯は、価格の安さと即入手でき（例えば、歯科医への通院も一回のみ）、購入が容易なことから、多くの無歯顎患者に利用されているが、残念なことに、無歯顎患者は、一般的に非特注義歯では装着感の悪さあるいは違和感を感じ、往々にして見た目でも劣る。

もう一つの選択肢として、無歯顎患者は自分の口腔に合わせて特注した義歯を購入することができる。このような特注義歯は、装着感の快適さと見た目に優れていることから多くの無歯顎患者に利用されているが、残念なことに、現在の特注義歯は、高価で、歯科医師への通院が複数回に及び、義歯を入手するまでのリードタイムも長いという欠点がある。

さらに、現在の義歯処方データの収集過程と特注義歯の製造過程は、歯科医師が患者のデータを手作業で入手し、この患者データを義歯用の処方箋に書き換えることを必要とする複数の手順を含む。続いて、この処方箋は義歯研究所に送られ、義歯研究所の技工士が処方箋を読み解き、特注義歯を作成する。データの収集と義歯の製造は労働集約的な過程で、歯科医師と歯科技工士それぞれの側において主観的な測定や解釈を多く含むため、特注義歯の装着感や仕上がりは、これら専門家たちの技術に大きく依拠することが多い。つまり、より高価で製造時間がかかるにもかかわらず、特注義歯の多くが、非特注の義歯を購入した無歯顎患者が被るような装着感の悪さ、不快感、見た目の悪さといった欠点の多くを持つ。

そこで、本開示においては、従来技術による特注義歯の過程における上記およびその他の悪影響（高価、歯科医師への複数回に及ぶ通院、長いリードタイム、過程の主観性等）の一つ以上を克服、軽減、および／または緩和し、同時に従来技術による非特注義歯の過程における上記およびその他の利点（低価格、即入手可能、購入が容易等）の一つ以上を与え、従来技術による特注義歯の過程における上記およびその他の利点（快適な装着感、見た目のよさ等）を維持し、改善する、特注義歯の提供システムと方法が必要であることを見いだした。

本開示は、無歯顎患者の口腔データを入手し、記録し、加工・操作する手動の過程の能率化のためのシステムと方法に関する。本システムと方法は、デジタル技術を使用して、歯科医師が一貫してより高品質の診療と、（義歯の形状、装着感、機能に関して）より高品質の義歯を患者に提供することを可能にする。また、本開示のシステムと方法は、データの定量的分析と、診療と適切な治療説明との標準化を可能にし、これによって歯科医院を効率化し、患者の治療に影響を及ぼしうる誤りを減少させる。

本開示の一つの局面は、無歯顎患者のデジタルデータを入手し、記録し、加工および／または操作するシステムと方法に関する。本開示のさらなる局面は、義歯製造用のデータプロトコルを策定するために、無歯顎患者のデジタルデータを利用する方法に関する。本開示のさらなる局面は、義歯の製造で使用するために無歯顎患者のデジタルデータを歯科研究所に転送する方法に関する。

また、本開示は、一つ以上の人工歯が装着された既成の歯列弓型鋳型(pre-fabricated, dental arch-shaped molds )に関する。本開示のさらなる局面は、一つ以上の人工歯が装着された既成の歯列弓型鋳型を使用した義歯製造の方法に関する。この開示された既成の器具および方法を使用することで、人工歯は義歯床に十分適切に配置されるため、歯科研究所の技工士は義歯の製造にかなりの時間を節約することができる。さらに、本開示の装置と方法は歯の配置過程を標準化し、ばらつきを抑える。これによって、患者は品質で妥協することなく義歯の費用を削減することができる。

さらに、本開示は無歯顎患者の一つ以上のデジタル画像を入手し、患者の口腔内の測定に対する、患者の顔面の特徴と測定について様々な画像を提供する装置および方法に関する。

無歯顎患者に特注義歯を提供するシステムを提供する。本システムは、歯科医院のモジュールと、歯科医院モジュール(dental office module)と通信媒体を介して電気通信する歯科研究所モジュール(dental laboratory module)とを含む。歯科医院モジュールは無歯顎患者のデジタル義歯処方データ(digital denture prescription data)を収集し、歯科研究所モジュールはデジタル義歯処方データに基づいて特注義歯を製造する。

無歯顎患者に特注義歯を提供する方法を提供する。本方法は、歯科医師の診療所において無歯顎患者のデジタル義歯処方データを収集し、デジタル義歯処方データを義歯研究所に送信し、デジタル義歯処方データに基づいて特注義歯を製造することを含む。

当然のことながら、上記およびその他の本開示の特徴と利点は、以下の詳細な説明、図面、および添付の特許請求の範囲から当業者に理解されるものである。

本開示による特注義歯システムの例示的実施形態の、第１の概略図である。 図１の特注義歯システムの第２の概略図である。 図１のシステムの歯科医院モジュールにおける、患者診察画面の例示的実施形態である。 図１のシステムの歯科医院モジュールにおける、第１の定量的測定画面と第２の定量的測定画面の例示的実施形態である。 図１のシステムの歯科医院モジュールにおける、第３の定量的測定画面によって得られた画像と測定の例示的実施形態を示す。 図５の画像と測定を取得するための、デジタルデータ収集装置の例示的実施形態を示す。 図３の特注義歯データ収集システムの、歯選択画面の例示的実施形態である。 義歯製造研究所における、図１の特注義歯システムによる義歯製造工程の例示的実施形態である。 図１の特注義歯システムで使用する一つ以上の人工歯を含む、既成の歯列弓型鋳型の例示的実施形態である。 図１の特注義歯システムで使用する図９の既成の歯列弓型鋳型の概略図である。

以下に、図面、特に図１と図２を参照して、本開示による特注義歯システムの例示的実施形態を示す。本特注義歯システムは主に参照番号１０で参照される。システム１０は、歯科医院モジュール１２と、歯科医院モジュールと通信媒体１６を介して電気通信を行う一つ以上の歯科研究所モジュール１４とを含む。

便利なことに、システム１０は、使用が容易で反復可能なデジタル義歯処方データ収集手段を歯科医師に提供し、このデジタル処方データを歯科研究所の技工士に送信する。加えて、システム１０は、このデジタル義歯処方データを使用して、所望の義歯を製造する容易で反復される手段を歯科研究所の技工士に提供する。

歯科医院モジュール１２は、歯科医師にシステム１０のインタフェースを提供する。これによって、歯科医師は無歯顎患者の義歯処方データ１８をデジタル方式で自動的に収集し、標準化することができる。本開示において「歯科医師(dental practitioner(s))」という用語は、歯科医院で無歯顎患者に対応する施術者を意味する。

歯科研究所モジュール１４は、義歯研究所の技工士にシステム１０のインタフェースを提供する。これによって、義歯研究所の技工士はデジタル義歯処方データ１８を取得し、自動および／または半自動の製造過程を使用して、このデジタルデータを所望の義歯に変換することができる。本開示において「義歯研究所の技工士」という用語は、歯科医師により提供される処方データに基づき義歯製造に係わる作業員を意味する。

通信媒体１６は、歯科医院モジュール１２から研究所モジュール１４にデジタル処方データ１８を提供する公知のいかなる方法でもよい。図中の実施形態では、通信媒体１６は有線ネットワーク２０で、モジュール１２と１４とを互いに電気通信でつないでいる。本開示では、有線ネットワーク２０は、例えばインターネット、広域ネットワーク（ＷＡＮ）、ローカルエリアネットワーク（ＬＡＮ）その他のいずれかの有線ネットワークを想定しているが、これに限らない。一方で、本開示では、通信媒体１６として、歯科医院モジュール１２から研究所モジュール１４にデジタル処方データ１８を無線で送信するのに十分な、いずれかの無線ネットワークも想定している。さらに、本開示では、通信媒体が、デジタル処方データ１８を記憶するいずれかの物理的記憶媒体（フロッピーディスク、コンパクトディスク、フラッシュドライブ等）であることも想定しており、この記憶媒体は歯科医院モジュール１２のある場所から、研究所モジュール１４のある場所へ物理的に移動できる。

システム１０によって、よく知られた歯科医師および研究所技工士の一部が利用する現状の過程の複雑さが軽減される。システム１０は、従来技術の標準化された特注義歯と比べて、義歯の品質を維持、または向上させながら、義歯過程を単純化および短縮し、時間を節約し、診療予約の必要回数を減少させる。本開示において「品質」という用語は、義歯の形状、装着感、機能、見た目などの特性を意味する。よって、システム１０は、従来技術の特注義歯システムと比べて同等あるいは改善された仕上がりを、より簡素で短縮され、少ない手順で実現する、特注義歯の提供システムおよび方法を提供する。

歯科医院モジュール１２では、システム１０および／または歯科医院モジュール上に存在し、歯科医師をデジタル処方の過程に導く複数の対話型データ入力画面２２がインタフェースとして歯科医師に提供される。

対話型データ入力画面２２は、複数のデジタル処方データ収集工程を含む。これには、一回以上の患者の診察、口唇径と咬合高径の決定、口腔の電子印象の決定、電子印象からの特注義歯床の作成、基礎床の美的設計の決定、筋圧中立帯の基礎床の決定、顔弓記録の決定、咬合器記録の決定、およびこれらの組み合わせを含むことができる。

ここで、図３から図７を参照し、歯科医院モジュール１２の対話型データ入力画面２２の例示的実施形態を示す。

図３は、患者の診察に用いられる一つ以上の対話型データ入力画面２２で、患者の病歴、顔の特徴、口腔の解剖学的特徴をすべて取得する。ここで、歯科医院モジュール１２は、診察画面２４を提示し、顔の特徴、口腔の解剖学的特徴に関して歯科医師に一連の問診(medical questions)を提供する。診察画面(examination screens)２４の各質問は画像による例示２６を伴い、歯科医師は患者の解剖学的構造に最も近似した画像による例示を選択できる。本開示は、画像による例示２６を選択することで、従来技術の特注義歯過程の診察過程に現存するばらつきを減らし、主観性を最小にすると判断した。

また、歯科医院モジュール１２は、義歯品質の重要な指標として本開示で変数として定められた要素について、口腔の複数の定量的測定を行う一つ以上のデータ入力画面２２を提供する。この定量的測定には、眼角間(intercanthus)、鼻翼間(interala)、舌の大きさ、下部と上部の隆線の複数点における高さと幅(height and width of lower and upper ridges at several points)、口唇径(lip pull)、咬合の要件(bite requirements)、咬合高径(vertical dimension)、咬合平面(occlusal plane)、およびこれらの組み合わせ等の測定を含むことが可能だがこれに限らない。これらの測定によって、データの定量的分析と診療の標準化とが可能になり、適切な治療説明が実現される。

図４は、口唇径と咬合高径それぞれの定量的測定に関するデータ入力画面２２の例を示す。より具体的には、歯科医院モジュール１２は正中線、口唇径、咬合高径の画面２８を歯科医師に提供する。この画面は、患者の正中線３０の測定と識別の方法を段階的に指示し、これらの指示を使用して測定情報を電子的に入力する場所またはフィールドを提供する。次に、画面２８は、患者の咬合高径３２の測定方法を段階的に指示し、これらの指示を使用して咬合高径の測定を電子的に入力する場所またはフィールドを提供する。さらに、画面２８は、患者の口唇径３４の測定方法を段階的に指示し、これらの指示を使用して口唇径の測定を電子的に入力する場所またはフィールドを提供する。

ある実施形態によれば、歯科医院モジュール１２は、口唇径、正中線、咬合高径の評価を容易にし、このデジタルデータを歯科医院モジュール１２に直接入力する３次元顔面走査装置(three-dimensional face scanning device)３８（図６に示す）と連結することができる。

他の実施形態によれば、歯科医院モジュール１２は、本願と同一の出願人によって共有、譲受され２００７年７月２日に提出された米国出願第１２／３０７，６０８号に示され、説明され、その内容を参照により本開示に組み入れている走査装置などの、走査装置と連結することができる。この走査装置は、光源を用いて患者の義歯テンプレートの形状を表すデータを取得する。

図５と図６は、患者の咬合平面の定量的測定のためのデータ入力画面２２を示す。ここで、歯科医院モジュール１２は、咬合平面画面３６を歯科医師に提供する。咬合平面画面３６は、患者の解剖学的構造に関する一つ以上の画像４０を提供するため、一つ以上のパノラマ式あるいは３次元走査装置３８などの計測装置を使用するよう歯科医師に指示を出す。歯科医院モジュール１２は、画像３６を使用し、患者の歯茎の顎関節（ＴＭＪ）に対する関係を構築する。これによって、顔弓が必要なくなり、咬合平面と、上顎の顎関節に対する関係とが電子的に決定される。次に、歯科医院モジュール１２は、画像３６を使用して咬合平面を決定する。本開示において「３次元走査装置」という用語はパノラマＸ線装置、磁気共鳴画像（ＭＲＩ）装置、骨走査装置等の装置を意味するが、これに限らない。

図６に示すように、歯科医院モジュール１２は、歯科医師がデジタル処方データ１８の収集過程で使用するため、咬合平面画面３６から咬合平面のデータを、顔弓データ等これに限らない他のデータと一緒にプログラム可能な咬合器４２に直接転送できる。ある実施形態によれば、本願と同一の出願人によって共有される国際特許出願［代理人整理番号０００５５８３ＷＯＵ］に記載されるようなプログラム可能な咬合器４２が可能である。

なお、本開示では一例として、一部の定量的特性（口唇径、正中線、咬合高径等）に関しては手動による計測と歯科医院モジュール１２への入力を示し、別の定量的特性（咬合平面等）に関しては自動の計測と歯科医院モジュール１２への入力を示していると認識されるべきである。当然のことながら、これら定量的特性の全てが手動で計測され、入力される場合、これら定量的特性の全てが自動で計測され、入力される場合、あるいはそれらの組み合わせについても、本開示は想定している。

ある実施形態では、歯科医院モジュール１２によって歯科医師は特定の患者の骨吸収速度を評価することができる。より具体的には、上歯茎と下歯茎の隆線の高さと幅の測定が保存され、次回以降の歯科医師への通院時に相互に比較することができると判断した。このように、システム１０は、上歯茎と下歯茎の隆線のサイズをある期間に渡って比較することで骨吸収速度を評価し、必要に応じて歯科医師が治療的介入を提供できるようにする。

上記一つ以上の診察画面２４（図３他）と一つ以上の定量的測定画面２８、３６（図４〜図６）に加えて、歯科医院モジュール１２は、図７に示されるような一つ以上の患者の定性的データ画面４４も含むことができる。

患者の定性的データ画面４４では、患者が義歯の仕上がりに関して一つ以上の定性的特性を選択することができる。例えば、患者の定性的データ画面４４によって、患者は、歯の大きさ、歯茎の大きさ、歯の配置、歯の色あるいは着色、歯茎の色あるいは着色、その他これに限らない義歯の仕上がりに関する一つ以上の特徴を選択することができる。

ある実施形態によれば、本願と同一の出願人によって共有される国際特許出願ＰＣＴ／ＵＳ０９／３４６４５号でより詳細に開示されるように、患者の定性的データ画面４４は、患者に患者自身の写真や画像４６を提示し、これによって患者自身の顔について定性的特徴（歯の大きさ、歯の配置、歯の色あるいは着色等）を選択できるようにする。つまり、写真４６は患者に実際の視覚画像を提供し、義歯の仕上がりについて様々な特性を選択する手助けとなる。

歯科医院モジュール１２は、患者の定性的データ画面４４を介して、選択した定性的特性を有する義歯の装着前と装着後の患者自身を患者が概観できるようにする。歯科医院モジュール１２は、患者の定性的データ画面４４を介して、患者の希望を反映した咬合高径、正中線、口唇径をシミュレーションし、調整して、写真４６を変形または修正することが望ましい。このように、歯科医院モジュール１２は、患者の定性的データ画面４４を介して、写真４６を変形または修正して、装着前の写真４６−１と装着後の写真４６−２を提供し、データ画面４４で選択された定性的特徴の効果を患者により分かり易く伝える。

これら全ての特徴を選択肢として提示し、視覚化する機能によって、患者に患者個人の希望に沿った適切な選択をさせることが可能になる。選択された定性的特徴とその仕上がりを表す写真４６−２は、デジタル義歯処方データ１８に含まれる。患者は様々な設定における患者自身を概観でき、好みの見た目を選択するので、出来上がった義歯は従来可能だったよりもずっと高い満足感を提供する。つまり、歯科医院モジュール１２によって、患者は異なる定性的特徴を有する義歯の視覚的な「試適」ができ、歯科医師への通院回数が削減される。

本開示は、一例として、図６に関連して上述した走査装置３８が提供する画像４０が、写真４６として歯科医院モジュール１２で使用されることも想定している。

従って、上述のように、歯科医院モジュール１２はデジタル処方データ１８の作成に必要な測定とデータ収集とを効果的に標準化できる。歯科医院モジュール１２によって、歯科医師はデジタル処方データ１８に必要なフィールドすべてを入力することができる。このように、歯科医師への通院の最後には、研究所技工士へ提供するためのデジタル処方データ１８が抜けなく集められ、歯科医師がデジタル処方データ１８の作成にかける時間を短縮するとともに、一貫して高品質の義歯の製造を確実にする。

歯科医院モジュール１２は、デジタル処方データ１８を入手する各工程に歯科医師を導く。また、歯科医院モジュール１２は、それぞれの手順で歯科医師が必要な材料や器具の一覧を提供する。

デジタル処方データ１８は、患者の氏名、患者のデジタル写真、選択した笑顔の選択肢、色、形状、歯の大きさ、選択した歯の配置の設計、などの情報を含むがこれに限らない。さらに、デジタル処方データ１８には、眼角間、鼻翼間、舌の大きさ、上部と下部の隆線の複数点における高さと幅、口唇径、咬合の要件、咬合高径などの、重要な変数の多くについて測定された定量的測定も含まれる。

つまり、歯科医院モジュール１２は、デジタル処方データ１８の収集過程を自動化し、紙ベースの処方箋で引き起こされる誤りをなくすことで、歯科医師の包括的需要に応える。これによって義歯の品質を向上させ、歯科研究所のために複雑さを軽減する。

デジタル義歯処方データ１８が、歯科医院モジュール１２によって収集されると、システム１０は通信媒体１６を介して研究所モジュール１４にデータを伝達する。

研究所モジュール１４は、歯科医師が取得したデジタル処方データ１８を使用して、歯科研究所の技工士を義歯の製造の各手順に導く。例えば、図１と図２を再度参照すると、研究所モジュール１４は、システム１０および／または歯科医院モジュールに存在し、歯科医師をデジタル処方過程に導く複数の対話型データ画面４８をインタフェースとして歯科医師に提供する。

これによって、研究所モジュール１４は患者記録を最新に保ち、患者記録は、ある時点である患者について、完了した工程と次に行うべき作業を示す。また、研究所モジュール１４は、それぞれの手順で必要な材料と器具の一覧を提供する。

図５と図６に間して上記で簡単に述べたように、歯科医院モジュール１２は、歯科医師がデジタル処方データ１８の収集の際に使用するように、咬合平面データを咬合平面画面３６からプログラム可能な咬合器４２に直接転送できる。これに加えて、あるいは、その代わりに、図８に示すように、システム１０はデータ１８を歯科研究所技工士によって使用されるように、プログラム可能な咬合器５０と通信を行う研究所モジュール１４に転送することができる。

さらに、プログラム可能な咬合器５０は、研究所の技工士がデジタル処方データ１８のウィルソンの湾曲とスピーの湾曲、咬合採得、および美的(aesthetic)設計に従って歯の配置を決定するのに役立つことができる。ある実施形態では、本願と同一出願人によって共有された国際特許出願［代理人整理番号０００５５８３ＷＯＵ］に記載されるような、プログラム可能な咬合器４２と５０が可能である。

図９と図１０を参照すると、研究所モジュール１４はデジタル処方データ１８を使用して、一つ以上の人工歯が装着された既成の歯列弓型鋳型５２を選択できる。

ある実施形態によれば、研究所モジュール１４はデジタル処方データ１８を使用して、複数の鋳型５４から特定の既成の歯列弓型鋳型５２を選択する。ここで選択された歯列弓型鋳型５２はデジタル処方データに記載された見た目その他の特性に最も近似している。ここで、研究所モジュール１４が所望の義歯に最も適合するものを選択できるように、複数の鋳型５４はそれぞれ、様々な標準構成で鋳型に装着された人工歯を含む。

別の実施形態によれば、ロボットアーム５６（図２）の使用を含むがこれに限らない自動化された製造方法を使用して、歯は個別に鋳型５２に配置される。ここで、研究所モジュール１４は、データ１８を使用して、歯列弓の大きさと形状、配置される歯の所望の大きさ、型、色を基に、歯を鋳型に設置する。

歯列弓型鋳型５２が選択され、および／または、ロボットにより形成されると、ポリエチレングリコールを含むがこれに限らない、ワックスあるいは柔軟性のある水溶性の材料からなる一層以上の層５８を用いて鋳型が所望の状態に整えられる。

ある実施形態によれば、上記の既成版およびロボットで組立て版を含む歯列弓型鋳型５２はワックス、光硬化ポリエチルメタクリレート（ＰＭＭＡ）、あるいは、ポリエチレングリコールを含むがこれに限らない柔軟性のある水溶性の材料によって作られる。

歯列弓型鋳型５２が層５８を使用して形成されると、鋳型は熱とワックスによって義歯床６０に接着される。ある実施形態では、ワックスの薄い層を熱いヘラで溶かして義歯床に接着し、このワックス層がまだ溶けているうちに、ワックス歯担体５２を義歯床６０に配置し、義歯床に配置された溶融ワックス層に圧着する。歯列弓型鋳型５２が義歯床６０に配置されると、研究所の技工士は歯の咬み合わせを確認し、咬合器５０を使用して歯の相対位置に必要な調整を行うことができる。また、研究所の技工士は歯が側方と前後の歯の角度を指定するウィルソンの湾曲とスピーの湾曲に沿っていることを検証し、確かめることができる。出来上がったワックス義歯６２は、患者と歯科医師の承認を経て、既知のワックス除去技術を使用した義歯の仕上げ過程に移行する。

図２を再度参照すると、研究所モジュール１４は一つ以上の自動化された製造装置を含む。例えば、研究所モジュール１４はデンソー、ファナック、三菱その他によって製造されたロボットアーム５６を含むことが可能であるが、これに限らない。研究所モジュール１４は、義歯製造過程を単純化し、自動化するために多数の単位操作に分割することができる。研究所モジュール１４のそれぞれの単位操作はロボットセル化され、単位操作間は、ロボットアーム５６が加工中の義歯を移動させる。

つまり、システム１０は、歯科医師と研究所技工士双方の包括的な需要に応え、検査器具、歯科医師を各手順に導く義歯製造ガイド、関連データすべてを取得するデータベースなどの複数の利益をもたらす。

また、別の実施形態によれば、システム１０は義歯診療の効果を分析するのに必要な財務分析と会計ツールの全てを提供し、請求書の領収と納付を自動化することができる。

また、本開示において、「第１」、「第２」、「第３」、「上」、「下」等の用語は、様々な要素を修飾するために使用されることがある。これらの修飾語は、特別に指定されない限り、被修飾要素の空間的、順次的、階層的な順序を意味しない。

本開示は一つ以上の例示的実施形態を参照して記載されるが、当業者には当然のことながら、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の変更や均等物によって要素が代替されることがあることは理解される。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況や材料を本開示の指導に適用するために多くの変更がなされることがある。したがって、本開示は好適な実施例と想定して開示された特定の実施形態に限定されないことを意図しているが、本開示は添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含む。

Claims (30)

1. 無歯顎患者に特注義歯を提供するシステムであって、
   歯科医院モジュールと、
   該歯科医院モジュールと通信媒体を介して電気通信を行う歯科研究所モジュールと
   を含んでなり、
   前記歯科医院モジュールは前記無歯顎患者のデジタル義歯処方データを収集するように構成され、前記歯科研究所モジュールは前記デジタル義歯処方データに基づいて前記特注義歯を製造するように構成されてなる、システム。
2. 前記通信媒体が、有線ネットワーク、無線ネットワーク、移動可能な物理的記憶媒体、およびその組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項１に記載のシステム。
3. 前記歯科医院モジュールが、歯科医師に前記デジタル義歯処方データを収集するための指示を提供する複数の対話型データ入力画面を含んでなる、請求項１に記載のシステム。
4. 前記歯科医院モジュールが、前記無歯顎患者の特徴に関する一連の問診を前記歯科医師に提供する診察画面を含んでなる、請求項３に記載のシステム。
5. 前記一連の問診の各質問が複数の画像による例示を伴い、前記歯科医師が前記複数の画像による例示から前記無歯顎患者の特徴に最も近似した画像による例示を選択しうる、請求項４に記載のシステム。
6. 前記歯科医院モジュールが、前記無歯顎患者の特徴について複数の定量的測定を行うための一つ以上のデータ入力画面を含んでなる、請求項１に記載のシステム。
7. 前記複数の定量的測定が、眼角間、鼻翼間、舌の大きさ、下部と上部の隆線の複数点における高さと幅、口唇径、咬合の要件、咬合高径、咬合平面、およびこれらの組み合わせの測定からなる群から選択されるものである、請求項６に記載のシステム。
8. 前記歯科医院モジュールと電気通信する３次元顔面走査装置をさらに含んでなり、前記３次元顔面走査装置が前記複数の定量的測定の少なくとも一部を決定するように構成されてなる、請求項６に記載のシステム。
9. 前記３次元顔面走査装置からの画像を使用して前記無歯顎患者の咬合平面を構築させる咬合平面画面をさらに含んでなる、請求項８に記載のシステム。
10. 前記歯科医院モジュールと電気通信を行うプログラム可能な咬合器をさらに含んでなり、前記プログラム可能な咬合器が、前記歯科医院モジュールによって前記デジタル処方データに基づいて所望の位置に設置される、請求項９に記載のシステム。
11. 前記複数の定量的測定の少なくとも一部が手動で測定されかつ前記一つ以上のデータ入力画面に入力される、請求項６に記載のシステム。
12. 前記複数の定量的測定の少なくとも一部が、測定装置によって自動的に測定されかつ前記一つ以上のデータ入力画面に入力される、請求項６に記載のシステム。
13. 前記歯科医院モジュールが、第１回目の通院時に取得された前記無歯顎患者の上歯茎と下歯茎の隆線の高さと幅を、第２回目の通院時に取得された同一の無歯顎患者の上歯茎と下歯茎の隆線の高さと幅と比較することによって骨吸収速度を評価するように構成されてなる、請求項１に記載のシステム。
14. 前記歯科医院モジュールが一つ以上の患者の定性的データ画面を含んでなる、請求項１に記載のシステム。
15. 前記一つ以上の患者の定性的データ画面が、前記特注義歯の一つ以上の美的特徴を前記無歯顎患者が選択できるように構成されてなる、請求項１４に記載のシステム。
16. 前記一つ以上の美的特徴が、歯の大きさ、歯茎の大きさ、歯の配置、歯の色または着色、歯茎の色または着色、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特徴を含んでなる、請求項１５に記載のシステム。
17. 前記一つ以上の患者の定性的データ画面が、前記無歯顎患者の写真を含んでなり、前記一つ以上の美的特徴が前記無歯顎患者自身の顔に対して選択される、請求項１５に記載のシステム。
18. 前記歯科研究所モジュールと電気通信するプログラム可能な咬合器をさらに含んでなり、前記プログラム可能な咬合器が、前記歯科研究所モジュールによって、前記デジタル処方データに基づいて所望の位置に設置される、請求項１に記載のシステム。
19. 前記歯科研究所モジュールが、前記デジタル義歯処方データを用いて、複数の鋳型から、歯を装着した特定の既成の歯列弓型鋳型を選択するように構成されてなる、請求項１に記載のシステム。
20. 前記歯科研究所モジュールが、前記デジタル義歯処方データに基づいて、歯列弓型鋳型に歯を配置するように構成されてなる、請求項１に記載のシステム。
21. 無歯顎患者に特注義歯を提供する方法であって、
    歯科医師の診療室で無歯顎患者のデジタル義歯処方データを収集し、
    前記デジタル義歯処方データを義歯研究所に送信し、
    前記デジタル義歯処方データに基づいて特注義歯を製造することを含んでなる、方法。
22. 前記デジタル義歯処方データの収集が、複数の対話型データ入力画面を歯科医師に提供することを含んでなり、前記複数の対話型データ入力画面が、前記デジタル義歯処方データの収集指示を含んでなる、請求項２１に記載の方法。
23. 前記デジタル義歯処方データの収集が、
    前記無歯顎患者の特徴に関する複数の問診を歯科医師に提供し、
    前記複数の問診のそれぞれについて複数の画像による例示を提供し、
    前記複数の画像による例示から前記無歯顎患者の前記特徴に最も近似した画像による例示を選択するように前記歯科医師に要求すること
    を含んでなる、請求項２１に記載の方法。
24. 前記デジタル義歯処方データの収集が、前記無歯顎患者の特徴に関する複数の定量的測定を行うことを含んでなる、請求項２１に記載の方法。
25. 前記複数の定量的測定が、眼角間、鼻翼間、舌の大きさ、下部と上部の隆線の複数点における高さと幅、口唇径、咬合の要件、咬合高径、咬合平面、およびこれらの組み合わせの測定からなる群から選択される、請求項２４に記載の方法。
26. 前記複数の定量的測定が、前記無歯顎患者の３次元顔面走査を行うことを含んでなる、請求項２４に記載の方法。
27. 前記３次元顔面走査に基づいて、咬合平面画面を決定することをさらに含んでなる、請求項２６に記載の方法。
28. 前記デジタル義歯処方データの収集が、第１回目の通院時に取得された前記無歯顎患者の上歯茎と下歯茎の隆線の高さと幅を、第２回目の通院時に取得された同一の無歯顎患者の上歯茎と下歯茎の隆線の高さと幅と比較することによって、骨吸収速度を評価することをさらに含んでなる、請求項２１に記載の方法。
29. 前記デジタル義歯処方データの収集が、前記無歯顎患者に前記特注義歯の一つ以上の美的特徴を選択させることをさらに含んでなる、請求項２１に記載の方法。
30. 前記無歯顎患者自身の顔に関して、前記一つ以上の美的特徴に基づいた前記無歯顎患者の画像を表示することをさらに含んでなる、請求項２９に記載の方法。

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