JP2011515685A - 基質結合ビーズを長期間保存する方法 - Google Patents

基質結合ビーズを長期間保存する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、生物学的反応、好ましくは酵素反応のために調製された基質結合ビーズを長期間保存するための方法に関する。この方法に適するビーズは、無機または有機であり得る。好ましくは、ポリスチレンビーズを、この方法のために用いる。

Description

本発明は、生物学的反応、好ましくは酵素反応のために調製した基質結合ビーズを長期間保存する方法に関する。この方法に適するビーズは、無機または有機であり得る。好ましくは、ポリスチレンビーズを、この方法のために用いる。
発明の背景
改善された活性を有する新規な薬物を開発するために、疾患の発生に関与する特定の標的を見出すことは、重要である。この目的のために、および新規な治療方法を設計するために、多数の標的を平行して、例えば96ウェルプレートにおいて試験するのに適するアッセイが創出されている。種々のシステムが過去に開発されており、今もなお改善されている。極めて高機能のスクリーニングシステムは、小さい、調整されたポリマービーズを用いることに基づいており、それは、生物系における分離を単純化し、生物学的相互作用を局所化し、シグナルを増幅するための生物医学的用途において用いられる。この領域において、研究者は、当該研究者の固有のスクリーニングの問題に適したシステムを選択し得る。
表1:ビーズ特徴の比較(Drug Discovery Today、第5巻、増補1、2000年6月1日、38〜41頁)
すべてのこれらのビーズをベースとする技術は、光学特性に基づいた容易な分離または感度の高い検出を促進するために開発された。濃度を変えた2種のフルオロフォアで内部を染色したビーズのフローサイトメトリー分析に基づいて、Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)システムは、例えば現在、100検体までを単一の試験管またはウェル中でアッセイすることができる(J. Zimmermann, Micro array technology advances for therapeutic target discovery, Gen. Eng. News 19 (1999), p. 1 - 34)。赤色の内部フルオロフォアに対するオレンジ色の比率により、別個の組のミクロスフェアを識別することができる。表面タンパク質、例えばストレプトアビジンは、主要なリガンドの結合を容易とし、一方緑色蛍光標識は、検体の定量を提供する。多数の標的分子を平行して特定するためのこの方法が極めて洗練された手段であるため、それにより、この分析方法が、ほとんどの場合において薬物発見プロセスのための最適な手段となる。
特にLuminex(登録商標)xMAP(登録商標)テクノロジーが、主に用いられる。それは、上記で記載したように2種の異なる蛍光色素により色でコードされるポリスチレンビーズに基づいている。 (WO2006/044413 A2、US 7,141,431 B2、EP 1 208 382 B1、WO 2007/103859 A2、WO 2006/044275 A2)。用いたビーズは、≒6μmの、および特に約5.6μmの平均直径を示す。
これらのビーズのコーディングは、蛍光色素の特別な混合物を含む溶媒中にそれらを加えることによって達成される。ビーズは膨潤し、拡散によって色素を吸収する。余分な色素を除去するために行ういくつかの洗浄段階の後、溶媒を蒸発させ、ビーズは、内側にコードされた蛍光色素を含み、それらの本来の大きさに収縮する。
これらのコードされたビーズを、ビーズ自体を検出するレーザーと、結合した物質または巨大分子の蛍光レポーターシグナルを検出する他のレーザーとを用いた特別なフローサイトメーターにおいて検出することができる。
このことは、635nmのレーザーによって励起した場合に、2種の蛍光分類色素が異なる波長(657nmおよび730nm)にて発光することを意味する。これらの蛍光色素の異なる濃度の組み合わせは、最終的に100種の異なるビーズのタイプとなる。第3の蛍光色素は、レポーターとして適用される。そのようなレポーター色素は、例えばフィコエリトリンであり、それは、第2のレーザー(532nm)によって励起される。レポーター蛍光は、ビーズ表面における陽性反応に対する指標である。
これらの100種の異なるビーズ領域により、1つの試料を有する1つのウェル中で多重の方式で行なわれることのできる、100の平行した実験の可能性が得られる。したがって、このシステムは、タンパク質発現プロファイリング、集中的遺伝子発現プロファイリング、自己免疫疾患、遺伝性疾患、分子性感染症およびHLA試験があるように、多種多様な用途のニーズに適合する。ビーズは、容易に機能化されることができる。機能化は、ヌクレオチドまたはアミノ酸から構築される生体分子を用いて起こり得る。特にビーズを、タンパク質、ペプチドまたは環状ペプチドによって機能化することができる。
好ましい態様において、記載したビーズを、抗体または他の結合剤、例えばアンチカリン(anticalins)、アンシリン(ancyrin)リピートタンパク質、システインノット(cystein-knot)タンパク質、ナノ体(nanobody)などがあるように、例えばスキャフォールドタンパク質と組み合わせる。他の好ましい態様において、ビーズを、酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼなどで機能化する。しかし、それらをまた、ヌクレオチド配列で機能化することができる。これらのヌクレオチド配列は、プライマー、DNAもしくはRNA断片、結合分子、例えばアプタマーとして、またはより大きいDNAもしくはRNA構造として存在し得る。前記ビーズの例えば抗体または他の構造での機能化を、NHS化学による、または対応するアフィニティーリガンド、例えばHisタグ−Ni2+−NTA、GSTタグ−グルタチオン、Sタグ−S−タンパク質によって捕獲されるタグによる共有結合により達成することができる。
機能化されたビーズを、分析的検出反応の生物学的反応において適用することができる。これらの用途のために、反応体の活性が信頼可能であり、一定を維持することが重要である。
上記で記載したLuminex(登録商標)xMAP(登録商標)テクノロジーのための典型的な用途は、捕獲抗体がビーズに結合するサンドイッチ免疫測定法である。検体を、タンパク質混合物、例えば細胞可溶化物から捕獲し、フィコエリトリンで標識した検出抗体によって検出することができる。このテクノロジーを用いる意義として、いくつかの慣用のELISAを、1つのウェル中で平行して行うことができる。
同様の実験を行って、タンパク質−タンパク質相互作用、DNA−タンパク質相互作用を検出するか、または酵素的反応を測定することができる。これらのアッセイは、薬学的な研究および開発のプロジェクト、学究的世界およびバイオ企業において、特に興味を引く。例えばWO 2007/009613 A1において、この技術を活用したチロシンキナーゼリン酸化を測定するための方法が開示されている。
プロテインキナーゼは、真核細胞中のほとんどの細胞シグナル経路における重要なレギュレーターである。多くのプロテインキナーゼ阻害剤は、シグナル経路におけるキナーゼの特定の機能を研究するために、および潜在的な治療薬として開発された(Cohen, P. Nat. Rev. Drug discov. (2000), 1, 309-315)。チロシンキナーゼによって誘発されるリン酸化は、細胞周期および細胞内経路において、中心的に関与すると見られる。薬物標的においてチロシンキナーゼを取り扱うことは、極めて有望であると見られる。標的チロシンキナーゼへのいくつかのアプローチが開発された。
チロシンキナーゼ領域阻害剤、チロシンキナーゼレセプター阻害薬(例えばモノクローナル抗体)、リガンドモジュレーター(例えばモノクローナル抗体)、RNA干渉およびアンチセンス技術、遺伝子療法ストラテジー、レセプターチロシンキナーゼの阻害剤または下流のシグナル伝達経路阻害剤は、癌療法のための可能性のあるストラテジーである。レセプターチロシンキナーゼは、マルチドメインタンパク質である。触媒領域(Mg−ATP複合結合部位)は、近年、薬物設計のための最も有望な標的として浮上した。化合物ライブラリーのランダムスクリーニングにより、最初に触媒領域の小分子の化学的阻害剤が特定された。
コンビナトリアルケミストリー、インシリコクローニング、構造に基づく薬物設計および計算化学は、現在、リード化合物の特定およびこれらの阻害剤の最適化における不可欠な手段となった。
大きいサイズのプロテインキナーゼスーパーファミリー(>500の要素)および、ほとんどのキナーゼ阻害剤が高度に保護されたATP結合ポケットにおいて結合するという事実のために、キナーゼ阻害剤が時々1種より多い標的を阻害することは、問題である(Davies, S. P., Reddy, H., Caivano, M & Cohen, P. Biochem. J. (2000) 351, 95 - 105)。
生存細胞中の多様な活性キナーゼのために、多数の試験を行わなければならない。その結果、スクリーニング阻害剤のための感度が高く、正確であり、かつ信頼可能なハイスループットアッセイが、開発された。
蛍光色素で標識したビーズの場合においては、酵素反応のために必要とされる基質を、ビーズ表面にそれ自体で結合することができ、さらにATPおよびそれぞれの酵素(例えばキナーゼ)を加える。リン酸化の場合には、反応を、フィコエリトリンで標識したリン酸化部位特異的抗体によって検出することができる。各々の場合において多数の異なる標的分子をスクリーニングしなければならないため、調製したビーズを、長期間にわたり恒常的な活性を伴って在庫させておかなければならない。これは、ビーズ表面に結合する基質の限られた貯蔵寿命のため、問題である。
前記酵素反応のために必要とされる基質は、一般的にタンパク質に基づいており、低温(<−20℃)にて保存しなければならない。しかし、約4℃における保存にもかかわらず、これらの基質は、数日後に分解され、不活性化される。特に酵素活性は失われる。さらに、供給者は、基質と結合した物質を水の氷点より低い温度にて保存しないように推薦している。一般的に用いられるxMAP(登録商標)テクノロジーのためのビーズ貯蔵の供給者は、これらのビーズを4℃にて保存し、それらを凍結しないように推薦している。しかし、多数の実験および試験を行わなければならない場合、および再現可能な結果が長期間にわたり必要である場合には、基質結合ビーズ貯蔵物を在庫させておくことは問題である。
したがって、生物学的反応、例えば酵素反応のために調製された基質結合ビーズ貯蔵物を長期間保存するための方法についてのニーズが存在する。他の観点は、結合した生体分子、断片または構造の活性、特に結合した酵素の、および調製した基質結合ビーズ貯蔵物の活性を保存の間安定に保持する方法を提供することにある。特に、この方法を、単純な方法において合理的な条件にて行わなければならない。
発明の概要
本発明の主題は、基質結合ビーズを長期間保存するための方法であって、結合反応の後のビーズを、懸濁液の形態で低温に、特に少なくとも約4℃の温度に冷却し、冷却の後にそれらを用いるまで保存する、前記方法に関する。
本発明の主題はまた、基質結合ビーズを長期間保存するための方法であって、少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を基質結合ビーズの懸濁液に加え、該懸濁液を保存する段階を含む、前記方法に関する。
好ましい態様において、本発明の方法は、以下の段階
a)少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を、基質結合ビーズの懸濁液に加える段階
および
b)得られた組成物をショック凍結する(shock freeze)段階
を含む。
以下の長期のショック凍結の後に、保存[段階c)]を低温にて、特に基質結合ビーズ懸濁液を冷却する温度にて行う。
一般的に、保存を、約4℃の温度にて行うことができるが、段階c)における本発明の最も好ましい態様において、保存を、少なくとも4℃の温度にて、好ましくはより低い温度にて行う。
本発明のより好ましい態様において、凍結した懸濁液の保存を、4ないし−196℃までの範囲内の温度にて、最も好ましくは−60ないし−100℃までの範囲内の温度にて行う。
好ましい態様において、段階a)の得られた組成物を、段階b)において液体窒素中でショック凍結する。
この方法の段階a)において、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イソマルトース(isomalt)、ラクチット(lactit)、キシリトール(xylit)、トレイット(threat)、エリスリトール(erythrit)、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラフィノースおよびグルコースの群から選択される少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を、段階b)において凍結させる前に、基質結合ビーズの懸濁液に加える。好ましくは、グリセロールおよび/またはスクロースを、段階a)において加える。本発明のさらに好ましい態様において、グリセロールおよび/またはトレハロースあるいはグリセロールおよび/またはフルクトースあるいはグリセロールおよび/またはマンニトールを、段階a)において加える。
本発明の最も好ましい態様において、本発明の方法は、基質結合ポリスチレンビーズを長期間保存する方法に関する。
必要に応じて、この改善された保存方法を、ある程度まで改変してもよく、段階a)において、少なくとも1種の多価アルコールまたは多価糖を加えてもよいのみならず、さらに緩衝および安定化特性を有する添加物をも加えてもよい。
これに加えて、本発明の主題は、本明細書中に開示する方法であって、ビーズを、化学物質、例えばヌクレオチドもしくはアミノ酸から構築される小分子または分子に、あるいはタンパク質、ペプチドまたは環状ペプチドに、あるいは酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼまたは他のものに結合させる、前記方法に関する。また本発明の主題は、ビーズを、抗体または他の結合剤、スキャフォールドタンパク質、例えばアンチカリン、アンキリンリピートタンパク質、システインノットタンパク質、ナノ体および他のものに結合させることである。ビーズをまた、ヌクレオチド配列、例えばプライマー、DNAまたはRNA断片、結合分子、例えばアプタマー、より大きいDNAまたはRNA構造に結合させてもよい。
本発明の好ましい態様において、ビーズを、酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼまたは他のものに結合させる。最も好ましくは、ビーズをキナーゼに結合させる。
未処理のxMAP(登録商標)ビーズを、REM画像で可視化する(A)。xMAP(登録商標)ビーズを、30%グリセロールを含む緩衝液で希釈し、液体窒素でショック凍結し、解凍し、REM画像で可視化した(B)。凍結プロセスによる目に見える変化はない。 異なる濃度のグリセロール(20%、30%、50%)(A)またはスクロース(10%、20%、30%)(B)を有する緩衝液を用いた場合の、液体窒素中でショック凍結させた後のFGFR1−キナーゼ結合xMAP(登録商標)ビーズの活性を、示す。 ErbB4キナーゼを、−80℃にて単独で、示した期間にわたり保存し、次にビーズに結合させる(明るい青色)か、または直ちにxMAP(登録商標)ビーズに結合させ、次に示した期間にわたり保存する(紺青色)。ErbB4キナーゼ活性を、1〜517日の保存期間の後に評価し、蛍光強度中央値として示す。 ErbB4キナーゼを、4℃にて単独で結合前に保存する(明るい青色)か、または4℃にて保存する前にxMAP(登録商標)ビーズに直接結合させる(紺青色)。1〜517日の貯蔵期間の後のErbB4キナーゼ活性を、蛍光強度中央値において示す。
発明の詳細な説明
ここで、予想に反して、上記の問題を、酵素的反応またはスクリーニング反応のような生物学的反応のために調製した基質結合ビーズ貯蔵物を凍結することによって解決することができることが見出された。例えば、調製したxMAP(登録商標)ポリスチレンビーズを、特別な手順において凍結させ、解凍 (defreeze)後に活性が維持されたまま試験において用いることができた。実験により、凍結プロセスを極めて迅速に行わなければならないことが示された。より急速に温度が降下するほど、酵素のような結合した生物学的断片、基、分子または構造の活性について、より保護されるように凍結が起こる。
特にショック凍結手順により、活性が維持されたままの貯蔵に安定な材料が得られる。ショック凍結を、約−20から−196℃までの範囲内の温度にて行うことができ、最も好ましくは、それを、−196℃の温度にて液体窒素中で行う。ショック冷凍の後、凍結した基質結合ビーズを、約−20から−196℃までの範囲内の温度にて、好ましくは約−40から−140℃までの範囲内の温度にて、特に−60から−100℃までの範囲内、および最も好ましくは約−70から−90℃までの温度範囲において保存する。
しかしさらに、凍結前に例えば酵素的反応のために調製した基質結合ビーズ貯蔵物を、数種の保存添加物を含む適当な混合物中に懸濁させた場合には、生物学的活性、特に酵素活性を、より安定に保持することができることが見出された。種々の実験によって、ショック凍結を、基質結合ビーズを含む貯蔵緩衝液中に加えられ得る種々の添加物の存在下で行う場合には、これらの基質結合ビーズの特性は、依然としてほぼ不変であることを示すことができた。
好適な安定化添加剤は、例えば2つまたは3つ以上のOH基を有するポリヒドロキシルアルコール(ポリオール)、例えばグリコール、グリセロール、プロピレングリコール、または糖、例えばスクロース、フルクトース、リボース、グルコース、トレハロース、ラフィノース、または多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、イソマルトース、ラクチット、キシリトール、トレイット、エリスリトール、フルクトースまたはグルコース、トレハロース、ラフィノース、キシリトールなどであり、これらはまた、本発明の方法において適用可能である。
しかし、最も好適な安定化ポリオールは、グリセロール、ならびにスクロース、フルクトースおよびリボースの群から選択される糖である。最も好ましい添加剤は、グリセロールおよびスクロースである。すでに述べたように、ポリオールまたは糖を、それ自体で加えることができる。好ましくは、グリセロールおよび/またはスクロースを、それ自体で、または組み合わせて安定化添加剤として用いる。
凍結前にこれらの群の1種から選択された少なくとも1種の化合物を、基質結合ビーズ懸濁液に加える場合には、改善された活性が見出される。これらのポリオールをまた、それ自体で、または2種もしくは3種以上のポリオールもしくは糖の組み合わせで加えてもよい。特に、適量のグリセロールまたはスクロースを加える場合には、活性は長時間にわたり維持される。
一般的に、糖アルコールを、必要に応じて他の緩衝添加剤と組み合わせて、基質結合xMAP(登録商標)ビーズを含む懸濁液に、適用する。
貯蔵に安定な基質結合ビーズを調製するために、ビーズを、例えばWO 2007/009613 A1に記載されているように反応溶液から分離し、その開示を、参照によって本明細書中に包含する。基質結合ビーズを、好ましくは塩、例えばNaCl、KClなどと、および6〜8のpH範囲において特にpH7.0〜7.4において有効である緩衝液系とを含む水溶液中に再懸濁させる。基質結合ビーズを調製するための好適な基礎原料として、例えばxMAP(登録商標)ビーズを用いることができる。
しかしまた、反応に必要な基質がビーズの表面に結合し得るという条件、およびビーズが調べられる分子と反応した後に正確に同定され得るという条件のもと、他の出所のビーズを、この用途のために用いてもよい。当業者は、表1にみられるように本用途に用いることのできる種々の粒状ポリマーを知っている。しかし、本用途にはLuminex(登録商標)xMAP(登録商標)ビーズが、最も好ましく、これらのビーズは、極めて良好に特徴づけられ、調整されている。
それらを、各々のミクロスフェア粒子およびアッセイ中に捕獲される任意のレポーター色素を同定する小型の分析システムの一部であるフローサイトメーターと共に用いることができる。各々のビーズセットに対して多くの読み取りを行い、さらに結果を検査することができる。
すでに述べたように、緩衝系を、ビーズ懸濁液を調製するために用いるのが好ましい。好適な緩衝液は、トリスをベースとする緩衝液またはリン酸緩衝液である。酵素反応に好ましい系は、トリスをベースとする、またはMOPSをベースとする緩衝系である。酵素反応の間に調整されるpHは、用いる酵素に依存する。懸濁液が少なくとも1種の溶媒を水以外に含む場合には、時々、それは、反応のために有利である。色素が流失しないようにビーズコーディング蛍光色素が不溶である溶媒から、加える溶媒を選択しなければならないことは自明である。
一般に、調製された基質結合ビーズ懸濁液は、水を含む溶媒を、10から90重量%までの範囲内の量で含んでいてもよい。これらの懸濁液が水以外の溶媒を含む場合には、その量は、好ましくは、溶媒の合計量に関して約30〜60重量%の範囲内、特に好ましくは約40〜50重量%の範囲内であり得る。しかし、水のみを溶媒として含む懸濁液が、特に好ましく、ここで水含量は、懸濁液全体に関して50重量%未満であるが、10重量%より多い。
この新規な保存方法の好ましい手順を、実施例によって、特にビーズを、10〜50%グリセロールまたは10〜40%スクロース中で、特に30〜50%の範囲内のグリセロールまたは10〜20%スクロース中で、および最も好ましくは30%グリセロールまたは10%スクロース中で凍結させることによって示すことができる。
基質結合ビーズを、以下のようにして製造することができる:
基質を、ポリスチレンビーズ上に、それらの表面にあるカルボキシ基を用いた典型的なNHS−エステルカップリング手順で、ビーズ上にも共有結合することができる。代わりの方法としては、Hisでタグを付与した組換えタンパク質−基質を、Ni−NTA表面を有するポリスチレンビーズに結合させる。他の選択肢としては、特異的な、またはタグに特異的な抗体のポリスチレンビーズへの共有結合である。タンパク質基質を、この特異的な抗体と、間接的な方法でポリスチレンビーズに結合することができる(タグに特異的な抗体についての例:抗His−タグ抗体、抗グルタチオン転移酵素抗体、抗マルトース結合タンパク質および他のもの)。
上記で記載したように、機能化は、ヌクレオチドまたはアミノ酸から構築される生体分子を用いて起こり得る。特に、ビーズを、タンパク質、ペプチドまたは環状ペプチドによって機能化することができる。これに加えて、ビーズを、スクリーニング実験に有用な薬物として、潜在的活性を有する小分子のような化学物質に結合させてもよい。
好ましい態様において、記載したビーズを、抗体または他の結合剤、例えばアンチカリン、アンシリンリピートタンパク質、システインノットタンパク質、ナノ体などがあるように、例えばスキャフォールドタンパク質と組み合わせる。他の好ましい態様において、ビーズを、酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼなどで機能化する。しかし、それらをまた、ヌクレオチド配列で機能化することができる。これらのヌクレオチド配列は、プライマー、DNAもしくはRNA断片、結合分子、例えばアプタマーとして、またはより大きいDNAもしくはRNA構造として存在し得る。前記ビーズの例えば抗体または他の構造での機能化を、NHS化学による、または対応するアフィニティーリガンド、例えばHisタグ−Ni2+−NTA、GSTタグ−グルタチオン、Sタグ−S−タンパク質によって捕獲されるタグによる共有結合により達成することができる。
上述のように、機能化されたビーズを、分析的検出反応の生物学的反応において適用することができる。
実験により、すべてのこれらの機能化されたビーズを凍結プロセスにおいて上記のように処理することができ、それらの活性をほぼ一定に保持しながら、前記ポリオール含有懸濁液中に長期間にわたり保存することができることが示された。
本明細書により、わかりやすく、当業者が本発明を適用するのが可能になる。明確さのいかなる欠如の場合においても、引用した刊行物および特許文献を用いるべきであることは言うまでもない。したがって、これらの文献を、本明細書の開示内容の一部と見なす。
より良好な理解のために、および本発明を説明するために、本発明の保護の範囲内にある例を、以下に示す。これらの例はまた、可能な変法を説明するのを補助する。しかし、記載した本発明の原則が一般的に妥当であるために、当該例は、本出願の保護の範囲をこれらのみに縮小するには適切でない。
示された百分率範囲により、より高い値が生じた場合においても、示す例において、およびまた明細書の残りにおいて、組成物中に存在する構成成分の量が、常に、全体としての組成物を基準として100重量%まで加えられるに過ぎず、これを超過し得ないことは、当業者には言うまでもない。
例および明細書において、ならびに特許請求の範囲において示す温度を、常に℃で示す。
基質結合ビーズを製造するための例:
タグに特異的な抗体、例えば抗Hisタグ抗体を、製造者のプロトコルに従って、カルボキシル化されたポリスチレンビーズの表面に、50μg/mlの濃度において、共有結合させる。組換えHisタグ付与キナーゼを、抗Hisポリスチレンビーズに加える(約2000個のビーズに対し20ngのキナーゼを、加える)。1時間インキュベートした後、追加のキナーゼを、洗い流すことができ、基質結合ビーズを、それぞれの凍結させる緩衝液中に再懸濁させることができる。
1.グリセロールを添加剤とした、凍結していない、および凍結/解凍したxMAP(登録商標)ビーズのREM画像。これらの画像は、ビーズ形状が凍結/解凍プロセスによって影響されないことを示す;
ならびに
2.凍結していない基質結合ビーズと、およびグリセロールまたはスクロースを添加剤とした凍結/解凍した基質結合ビーズとのキナーゼ反応からのxMAP(登録商標)データ。凍結した、および凍結していない基質結合ビーズとの反応の結果の比較により、検出可能なキナーゼ活性シグナルには有意差がないことが示される。
3.−80℃にてもしくは4℃にて特定の期間にわたり保存し、次にビーズに結合させたErbB4キナーゼ、または直ちにビーズに結合させ、次に−80℃にてもしくは4℃にて特定の期間にわたり保存したErbB4キナーゼのいずれかとのErbB4キナーゼ反応からのxMAP(登録商標)データ。単独で、またはビーズと結合させて保存したErbB4キナーゼとの反応の結果の比較により、ビーズへの結合により酵素が安定化し、ビーズ−キナーゼ複合体を4℃にて保存した場合においてさえも全体的により高いキナーゼ活性を長期間にわたり得ることができることが示される。

I.REMでのxMAP(登録商標)ビーズ形状制御
xMAP(登録商標)ビーズを、30重量%のグリセロールを含む緩衝液で希釈する。次に、希釈したビーズを、液体窒素でショック凍結する。凍結したxMAP(登録商標)ビーズを、37℃にて急速に解凍し、ボルテックスし、30秒間超音波処理し、REM(ラスター電子顕微鏡法)で視覚化する。
凍結/解凍プロセスの後、未処理のxMAP(登録商標)ビーズと比較して、ビーズ形状についての目に見える顕著な影響はない(図1を参照)。
図1:未処理のxMAP(登録商標)ビーズを、REM画像で可視化する(A)。xMAP(登録商標)ビーズを、30%グリセロールを含む緩衝液で希釈し、液体窒素でショック凍結し、解凍し、REM画像で可視化した(B)。凍結プロセスによる目に見える変化はない。
II.キナーゼ結合xMAP(登録商標)ビーズの凍結−キナーゼ活性測定
xMAP(登録商標)ビーズを、製造者によって記載されているように組換えタンパク質と結合させ、凍結緩衝液(PBS中1%のBSA、0.03%のBrij35、30%〜50%グリセロール)中に再懸濁させる。
キナーゼ結合xMAP(登録商標)ビーズを、液体窒素中でショック凍結させ、37℃にて急速に解凍する。キナーゼ反応を、アッセイ緩衝液(20mMのMOPS、25mMのβ−グリセロリン酸、5mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのバナジウム酸ナトリウム、pH2、0.1%のBSAおよび0,03%のBrij35を追加した)中の250μMのATPおよび40mMのMgClを用いて、37℃にて30分間撹拌して開始する。次に、キナーゼ反応を、150mMのEDTAで停止する。検出緩衝液(PBS中1%のBSA、0,03%のBrij35)での3つの洗浄段階の後、リン酸化されたチロシン残基を、ビオチン化された抗ホスホチロシン抗体(室温にて1時間撹拌)およびフィコエリトリン抱合型ストレプトアビジン(室温にて45分間撹拌)で検出する。ミクロスフェアを、Luminex100機器において製造者によって記載されているように分析する。
図2:異なる濃度のグリセロール(20%、30%、50%)(A)またはスクロース(10%、20%、30%)(B)を有する緩衝液を用いた場合の、液体窒素中でショック凍結させた後のFGFR1−キナーゼ結合xMAP(登録商標)ビーズの活性を、示す。
同等のキナーゼ活性シグナルを、xMAP(登録商標)ビーズ上に結合した凍結キナーゼおよびビーズ上に結合した凍結/解凍キナーゼについて得ることができる。グリセロールおよびスクロースは、共に凍結緩衝液に適する添加剤である(図2)。
III.キナーゼがxMAP(登録商標)ビーズに結合する場合のキナーゼ安定性の増大
a)キナーゼを−80℃にて保存した
組換えErbB4キナーゼを、液体窒素中でショック凍結し、500日より長期にわたり−80℃にて保存した。試料を37℃にて解凍した後、キナーゼを、S−タグ抗体が結合したxMAP(登録商標)ビーズに結合させた。平行して、等しい量の同一の調製物からのErbB4キナーゼを、S−タグ抗体が結合したxMAP(登録商標)ビーズに結合させた後に液体窒素中でショック凍結した。アリコートを、−80℃にて500日より長期にわたり保存し、37℃にて個別に解凍した。キナーゼ反応を、アッセイ緩衝液(20mMのMOPS、25mMのβ−グリセロリン酸、5mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのバナジウム酸ナトリウム、0.1%のBSAおよび0,03%のBrij35を追加した)中の25μMのATPおよび40mMのMgClを用いて、37℃にて30分間撹拌して開始した。次に、反応を、150mMのEDTAで停止した。検出緩衝液(PBS中1%のBSA、0,03%のBrij35)での3つの洗浄段階の後、リン酸化されたチロシン残基を、ビオチン化された抗ホスホチロシン抗体(室温にて1時間撹拌)およびフィコエリトリン抱合型ストレプトアビジン(室温にて45分間撹拌)で検出した。ミクロスフェアを、Luminex200機器において製造者によって記載されているように分析した。
これらの保存実験の結果を、図3に示す。
図3:ErbB4キナーゼを、−80℃にて単独で、示した期間にわたり保存し、次にビーズに結合させる(明るい青色)か、または直ちにxMAP(登録商標)ビーズに結合させ、次に示した期間にわたり保存する(紺青色)。ErbB4キナーゼ活性を、1〜517日の保存期間の後に評価し、蛍光強度中央値として示す。
キナーゼ活性は、ErbB4キナーゼをxMAPビーズにすでに結合させて保存した場合に、−80℃にて保存した結合していないキナーゼと比較して顕著に改善される(図3)。したがって、ビーズ−キナーゼ複合体は、対象のタンパク質を安定化させ、したがって全体的により高いキナーゼ活性を、長期間にわたって得ることができる−示す例において、キナーゼ活性は、約2〜3倍改善され、ビーズに結合したキナーゼは、少なくとも517日の期間にわたって安定である。
b)キナーゼを4℃にて保存した
同等の実験を、予めビーズに結合させた、および4℃の保存温度にて517日までにわたりインキュベートした後にビーズに結合させたErbB4キナーゼを用いて行う。
これらの実験の結果を、図4に示す。
図4:ErbB4キナーゼを、4℃にて単独で結合前に保存する(明るい青色)か、または4℃にて保存する前にxMAP(登録商標)ビーズに直接結合させる(紺青色)。1〜517日の貯蔵期間の後のErbB4キナーゼ活性を、蛍光強度中央値において示す。
4℃におけるキナーゼ活性もまた、ErbB4キナーゼをビーズ−キナーゼ複合体状で保存する場合に改善される(図4)。4℃にて単独で結合前に保存したキナーゼは、すでに8日後に低下した活性を示す。しかし、ビーズに結合したキナーゼは、105日後にのみ低下した活性を示し始める。

Claims (17)

  1. 基質結合ビーズを長期間保存する方法であって、以下の段階
    a)少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を基質結合ビーズの懸濁液に加える段階
    および
    b)低温における保存
    を含む、前記方法。
  2. 以下の段階
    a)少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を基質結合ビーズの懸濁液に加える段階、
    b)得られた組成物をショック凍結する段階、
    および
    c)低温における保存
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 基質結合ポリスチレンビーズを長期間保存するための、請求項1または2に記載の方法。
  4. 段階b)において、得られた組成物を液体窒素中でショック凍結する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 保存を、約4℃の温度にて、好ましくはより低い温度にて行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 保存を、−20から−196℃までの範囲内の温度にて、好ましくは−60から−100℃までの範囲内の温度にて行う、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 段階a)において、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、イソマルトース、ラクチット、キシリトール、トレイット、エリスリトール、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラフィノースおよびグルコースの群から選択された少なくとも1種の多価アルコールまたは糖を加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 段階a)において、グリセロールおよび/またはスクロースを加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  9. 段階a)において、グリセロールおよび/またはトレハロースを加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  10. 段階a)において、グリセロールおよび/またはフルクトースを加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  11. 段階a)において、グリセロールおよび/またはマンニトールを加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  12. 段階a)において、少なくとも1種の多価アルコールまたは多価糖を、緩衝および安定化特性を有する他の添加剤と組み合わせて懸濁液に加える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  13. ビーズを、化学物質、例えばヌクレオチドもしくはアミノ酸から構築される小分子もしくは分子に、またはタンパク質、ペプチドもしくは環状ペプチドに、または酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼもしくは他のものに結合させる、基質結合ビーズを長期間保存するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. ビーズを、抗体または他の結合剤、スキャフォールドタンパク質、例えばアンチカリン、アンキリンリピートタンパク質、システインノットタンパク質、ナノ体および他のものに結合させる、基質結合ビーズを長期間保存するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  15. ビーズを、ヌクレオチド配列、例えばプライマー、DNAまたはRNA断片、結合分子、例えばアプタマー、より大きいDNAまたはRNA構造に結合させる、基質結合ビーズを長期間保存するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  16. ビーズを、酵素、例えばホスファターゼ、キナーゼ、リパーゼまたは他のものに結合させる、基質結合ビーズを長期間保存するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  17. ビーズをキナーゼに結合させる、基質結合ビーズを長期間保存するための請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
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