JP2011513798A - 新しい累進眼鏡レンズの作製 - Google Patents

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Abstract

本発明は、老眼の着用者(100)のために企図される新しい累進眼鏡レンズを作製する方法に関し、新しい累進眼鏡レンズは、眼科的矯正の以前の条件(102)を通して習得された、着用者の姿勢の習慣を考慮に入れる。新しい累進眼鏡レンズに対する設計は、着用者の姿勢の習慣を修正するために、着用者の習性に従って基準レンズを修正することにより達成される。そのために、姿勢パラメータにおける変化が、着用者に対して実行される、前記パラメータの測定を使用して求められる。本発明は、新しい累進眼鏡レンズに対する、着用者による馴化の期間を短縮することを可能にする。

Description

本発明は、新しい累進眼鏡用眼鏡レンズを作製する方法に関する。
知られているように、累進眼鏡用眼鏡レンズは、この眼鏡レンズの着用者が、様々な距離に位置する物体を見ているときに、この眼鏡レンズの着用者の不十分な目の調節力を補う。この目的のために、累進眼鏡レンズは、異なる注視の方向に対して変化する屈折力(optical power)を有する。より詳細には、累進眼鏡レンズは、着用者が見ている方向に対応する眼鏡レンズ上の各点において、着用者がこの方向において所与の距離に位置する物体を鮮明に見るように適合された屈折力を有する。従って、着用者が、この物体への距離に応じて、眼鏡レンズの適切な部分を通して物体を観察する反射行動を習得すれば、着用者は、累進眼鏡レンズを通す最適視力の恩恵を受ける。この反射行動は、着用者の注視の方向が、実質的に、屈折力が物体への距離に適合される点において眼鏡レンズを通過するように、着用者の頭の姿勢、本質的には着用者の頭の鉛直傾斜、を無意識に適合させることから成る。
着用者が同じ累進眼鏡レンズを十分に長い間使用するとき、着用者は、着用者が観察している物体への距離に従って着用者の頭を動かす反射行動を習得し、この眼鏡レンズの屈折力における特有の変化を無意識に統合する。眼鏡レンズの設計とも呼ばれる、眼鏡レンズに平行な屈折力におけるこの変化は、眼鏡レンズの経度線に沿った累進長および屈折力の変化の関数を含む、いくつかのパラメータで特性評価される。この設計は、たとえ、これらの累進眼鏡レンズが同じ眼科処方箋に対応するとしても、異なる累進眼鏡レンズの間で変わりうる。このため、当初の累進眼鏡レンズをすでに装着している着用者が、2つの眼鏡レンズの間で設計が異なるというだけの理由で、新しい累進眼鏡レンズに適応するために、馴化期間を必要とする可能性がある。
実際、各人は、たとえ眼鏡をかけていなくても、観察している物体への距離に従って、頭を無意識に傾けるという反射行動を有する。そのような反射行動は、特に、ある体の姿勢が維持されるときに、より快適でより疲れない体の姿勢から生じる。それゆえ、一定の距離で一定の方向にある物体を見るときに、各人によってそのように取られる頭の傾きは、異なる人の間で変化する。このため、そのような眼鏡レンズを初めて装着した、累進眼鏡レンズの新しい着用者はまた、この眼鏡レンズの設計が、当初の頭を傾ける反射行動と一致しないとき、ある問題に悩む可能性がある。
さらに、本発明者らは、何人かの人々が、見ている物体の位置に従って頭を正確に傾けるのを観察した。言い換えれば、そのような人々は、同じ物体を継続的に同じ条件のもとで見るときに、頭に対する同じ姿勢を継続的に取る。
反対に、他の人々は、同一のままの観察条件に対して変化する頭の姿勢を取る。言い換えれば、これら後者の人々は、同じ物体を同じ条件のもとで、二度の異なる時刻に見るときに、再び、同じ頭の姿勢を取ることはない。
国際公開第2007/068818号パンフレット 国際公開第2007/068819号パンフレット
それゆえ、本発明の目的は、着用者に累進眼鏡用眼鏡レンズを、この眼鏡レンズに対する馴化期間の間に着用者が悩む可能性のある問題を軽減した状態で、供給することにある。
この目的のため、本発明は、遠視の着用者のために企図される新しい累進眼鏡用眼鏡レンズを作製する方法を提案し、この方法は、以下のステップ、
(1)着用者に対して作成された眼科処方箋に適合する基準眼鏡レンズの特性評価を得るステップであって、この基準眼鏡レンズが、着用者によって取られる独特の観察姿勢に対して変化する値を有する、少なくとも1つの姿勢パラメータの基準値に対応する設計を有する、ステップと、
(2)着用者が、新しい累進眼鏡レンズが作製される前に通常であった眼科的矯正条件のもとにあるときに、観察姿勢における連続的な配置の間、この着用者に対して姿勢パラメータの値を測定するステップと、
(3)ステップ(2)の中で測定された値の平均Pmeanおよび標準偏差SDと、式
Pcorr=Pmean-(Pmean-Pref)×SD/K
に従って測定されたこれらの値に対する修正された平均Pcorrとを計算するステップであって、Prefが姿勢パラメータの基準値を表し、Kがゼロでない定数である、ステップと、
(4)ステップ(3)の中で計算された、修正された平均Pcorrに応じて、新しい累進眼鏡レンズのための設計を求めるステップと、
(5)眼科処方箋、およびステップ(4)の中で求められた設計とに従って、基準眼鏡レンズの特性評価から新しい累進眼鏡レンズを作製するステップと、を含む。
さらに、本発明の他の特徴によれば、姿勢パラメータの基準値Prefおよび定数Kは、それぞれ、母集団サンプルに関して求められた姿勢パラメータの値の平均値および標準偏差である。
本発明の文脈において、姿勢パラメータは、目視観察中の着用者によって取られる姿勢(position or posture)に関するパラメータを意味する。それゆえ、姿勢パラメータは、本来、眼鏡レンズの幾何学的パラメータ、眼鏡レンズを着用者の顔に眼鏡フレームで固定して着用することを特性評価する幾何学的パラメータ、および着用者の生理学的パラメータとは異なる。
従って、本発明によれば、遠視の着用者に供給される新しい眼科用累進眼鏡レンズは、この着用者に対して実施される測定を考慮に入れることにより作製される。それゆえ、新しい眼鏡レンズは、眼科処方箋の特性に加えて、着用者の観察姿勢に従って個人化される。それゆえ、着用者に新しい眼鏡レンズを装着させることで、着用者に姿勢の習慣を速やかに修正することを強要することはない。それゆえ、着用者は、異なる観察姿勢を取る必要性に起因する可能性のある、眼科的矯正における変化の間の問題、不快または疲労に、悩まされることはない。例えば、本発明の方法による眼鏡レンズの作製は、着用者が新しい累進眼鏡レンズを使用して本を読んでいるときに、以前、その着用者のものであった眼科的矯正条件のもとで習得した習慣と比べて、その着用者が胸の傾きまたは手の高さを修正しなければならないことを避けることができる。
より詳細には、本発明は、着用者のために、着用者の姿勢の習慣と一定の基準設計との間で妥協をもたらす個人化設計を得ることにより、新しい累進眼鏡レンズの着用者の快適さを改善する。そのような妥協は、大量生産される基準眼鏡レンズから新しい眼鏡レンズを作製することに対して、特にふさわしい。次いで、姿勢パラメータの測定が、新しい眼鏡用眼鏡レンズが企図される着用者に対して実施された後、個人化が、基準眼鏡レンズの再加工処理の間に追加されうる。
本発明はまた、新しい累進眼鏡レンズに対する着用者の馴化における困難を軽減する。
本発明の特定の有利な特徴によれば、新しい累進眼鏡レンズは、一定の観察条件、例えば本を読む条件、に対して着用者が姿勢を修正するための無意識の習性または融通性に従って個人化される。本発明のこの態様はステップ(3)に起因し、ステップ(3)に従って、着用者によって取られる姿勢の変化が特性評価される。そのような変化は、それらが大幅であるとき、着用者が新しい累進眼鏡レンズを使用する場合に、着用者が姿勢の習慣を容易に修正できることを示す。次いで、この新しい眼鏡レンズは、着用者が同一の観察姿勢を維持することとは異なる基準で最適化されうる。一方で、着用者に対して測定される姿勢パラメータの値に対してわずかな変化であることが、着用者が習慣的な姿勢を変えることにおいて、ある問題またはある程度の不快に、着用者が悩まされる可能性があることを示す。本発明の方法は、そのような、姿勢の習慣を保持している着用者に、恩恵をもたらす。
より詳細には、目視観察中に姿勢を変える着用者の習性が、着用者に対して実施された姿勢パラメータの測定結果の標準偏差によって特性評価される。着用者に対して計算されるこの標準偏差が、母集団サンプルに対して計算された標準偏差と比較される。次いで、着用者に対して測定された姿勢パラメータの値の平均が、着用者および母集団サンプルに対してそれぞれ計算された標準偏差に従って、母集団サンプルから確立された平均値から修正される。修正された平均が、着用者に割り当てられる新しい累進眼鏡レンズの設計を求めるために使用される。
本発明は、眼鏡用眼鏡レンズを初めて装着する着用者、および眼鏡用眼鏡レンズをすでに当初から装着している着用者の両者に対して実施されうる。第1の場合、新しい累進眼鏡レンズが、着用者にとって最初の眼鏡用眼鏡レンズであるとき、姿勢パラメータの値は、着用者が眼鏡用眼鏡レンズを装着しないときに、ステップ(2)の中で測定される。
第2の場合、新しい累進眼鏡レンズが本発明により作製される前に、着用者がすでに、当初の眼鏡用眼鏡レンズを装着しているとき、この新しい累進眼鏡レンズは、当初の眼鏡レンズを置き換えることを企図される。姿勢パラメータの値を測定するためにステップ(2)の中で使用される眼科用矯正条件は、従って、着用者による当初の眼鏡レンズの使用に対応する。言い換えれば、姿勢パラメータのこれらの値は、着用者が当初の眼鏡レンズを装着するときに測定される。従って、そのような、当初の眼鏡レンズから新しい累進眼鏡レンズに眼鏡用眼鏡レンズが変わる環境のもとで、本発明は、やはり、着用者が姿勢の習慣を突然修正しなければならなくなることを避ける。
さらに、本発明は、累進眼鏡レンズを初めて装着する着用者に対して、および累進眼鏡レンズをすでに当初から装着していた着用者に対して、同様に実施されうる。言い換えれば、着用者の当初の眼鏡用眼鏡レンズは、それ自体、すでに累進眼鏡レンズであってよく、または累進眼鏡レンズでなくてよい。累進眼鏡レンズでない場合、当初の眼鏡レンズは、単焦点眼鏡レンズでありうる。すべての場合において、本発明の方法は、少なくとも、着用者が観察している物体への距離に従って着用者の頭を上げることまたは下げることに関して、着用者に、当初からの姿勢反射行動の修正を強要することを避ける。
残りの説明を明確にするために、残りの説明は、本発明により作製される新しい累進眼鏡レンズで置き換えられることを企図されている着用者による、当初の眼鏡用眼鏡レンズの以前の使用に言及する。しかし、本発明はまた、当然ながら、初めて眼鏡用眼鏡レンズを装着する着用者の場合を含む。そのような状況は、着用者の以前の眼科的矯正条件が、当初の眼鏡レンズが存在しないことに対応することを考慮して以下に与えられる、本発明の説明により取り扱われる。
最後に、ステップ(1)の中で得られる基準眼鏡レンズの特性評価は、数値的に画定される、実物でない眼鏡レンズの特性評価であってよい。そのような数値的特性評価は、実物でない眼鏡レンズの幾何学的パラメータの供給を含んでよい。これらのパラメータは、具体的には、眼鏡レンズの表面のメッシュ上の点による、曲率の値または矢印の高さの値であってよい。この場合、新しい累進眼鏡レンズを作製するステップであるステップ(5)は、透明材料の未加工ブロックの中に眼鏡レンズの2面を生成するステップから成ることができる。
代替として、ステップ(1)の中で特性評価される基準眼鏡レンズは、半製品眼鏡レンズと関連がある可能性があるが、必須ではない。そのような半製品眼鏡レンズは、1つの最終面、例えばその半製品眼鏡レンズの前面、を有してよい。この場合、新しい累進眼鏡レンズは、半製品眼鏡レンズの他方の面を機械加工することにより、ステップ(5)の中で作製される。有利には、半製品眼鏡レンズの最終面は複雑であってよく、すなわち、半製品眼鏡レンズの最終面は曲率における変化を有してよく、それにより、他方の面の最終機械加工が簡素化される。
本発明の他の特異点および利点は、添付の図面の参照を伴う、以下の非限定的な例示的実施形態の説明から生じるであろう。
本発明による方法のステップのブロック図である。 眼鏡用眼鏡レンズ着用者の様々な姿勢パラメータを示す図である。 本発明による方法の変形のブロック図である。 本発明により作製された3つの累進眼鏡レンズの、屈折力における変化を示すグラフである。
図1のステップ1aに従って、眼科処方箋が、最初に、遠視の着用者に対して作成される。この処方箋は、特に、眼鏡レンズが、眼鏡レンズを通して見る、近見視力および遠見視力のそれぞれに対する2つの方向の間で持たなければならない屈折力における差に相当する、アディション値Aを示す。知られている方法において、屈折力におけるこの差は、着用者が遠くにある物体と近くにある物体とを連続して見るときに、着用者の網膜上に鮮明な像を維持するために、着用者の目の調節の不十分さを緩和するように求められる。
着用者に供給される、仕上げられた眼科用眼鏡レンズは、2つの主たるステップの中で作製されうる。第1に、異なるアディション値Aに対応する、一連の半製品眼鏡レンズが、利用可能に作成されうる。この目的のために、それぞれの半製品眼鏡レンズは1つの最終面を有し、その最終面は、眼鏡レンズの前面、その後面、または前面と後面との間に位置する中間の界面の最終面であってよい。変化する曲率を有するこの最終面は、他の1面または複数面がそれらの最終形状に従って機械加工された後、仕上げられた眼鏡レンズにアディション値を付与する。次いで、これらの半製品眼鏡レンズのうちの1つが、着用者に対して処方されたアディション値Aに従って、選択される(ステップ1b)。
やはり知られているように、一連の半製品眼鏡レンズは、アディション値Aにより、また基準値と呼ばれる他のパラメータの値により、同時にインデックスを付けられてよい。半製品眼鏡レンズの基準値は、遠見視力方向に対して、この半製品眼鏡レンズの最終の前面の平均曲率を特性評価する。半製品眼鏡レンズの基準値は、着用者に対して、また遠見視力に対して処方された屈折力に従って選択される。それゆえ、半製品眼鏡レンズは、実際には、着用者に対して処方されたアディション値A、および遠見視力に対する眼科的矯正に対応する基準値に同時に従って、選択されうる。
独立に、着用者の姿勢が、例えば着用者が近見視力条件のもとで所与の物体を観察しているときに、特性評価される(ステップ2)。これらの姿勢は、眼鏡がより精細に適合されることが望まれる着用者の、特定の活動に関係する。例えば、着用者の姿勢が、コンピュータユニットのディスプレイスクリーンの観察、または以下に文書と呼ばれる本を読むこと、に関係する。図2は、本発明を実施するために選択されうる、いくつかの姿勢パラメータの定義を示す。この図の中で使用される表記は、以下の通りである、
PFは、頭の鉛直傾斜を示すフランクフルト平面を表す。
PHは、水平基準面である。
Tは、平面PHおよびPFの間の鉛直面内で測定された、頭の傾斜の鉛直角である。
DRは、100で参照される着用者の、注視の方向を表す。
Rは、平面PHおよび方向DRの間の鉛直面内で測定された、注視の下げ角度である。
Yは、平面PFおよび方向DRの間の鉛直面内で測定された、目の上げまたは下げの角度である。
Bは、水平面と文書101の平面との間の鉛直面内で測定された、着用者100が読んでいる文書101の傾斜角である。
Hは、ホロプターと呼ばれ、文書101および方向DRの平面の間の鉛直面内で測定された角度である。
Dvpは、方向DRに沿って、着用者100の目と読んでいる文書101の平面との間で測定された、近見視力における読書の距離である。
着用者100の姿勢を特性評価する、これらの様々なパラメータは、当業者に知られているものと考えられ、これらの様々なパラメータの定義は、本明細書において、詳細には繰り返さない。この目的のため、特許文献1、または特に特許文献2の文書に対して、参照がなされうる。これらのパラメータは、例えば、着用者が自らを読書姿勢に置くときに撮られた写真上に配置される視覚的マーカを、着用者100および文書101に装着することにより、測定されうる。これらのパラメータの値を統計的に特性評価するために、着用者100が読書姿勢に置かれ、一連の測定がなされる。代替として、着用者100は、例えば、2つの連続した配置の間で立ち上がった後、連続した回数、自らを読書姿勢に置くことができ、それぞれの場合に対して、マーカの位置が書き留められる。各配置に対して、上述の姿勢パラメータのうちの少なくとも1つの値が、測定される。これらの測定された値が、Pmesで表示される。任意選択で、着用者100の各配置に対して測定された値Pmesは、以前のパラメータのうちのいくつかと関連があるか、または、以前のパラメータのうちの少なくともいくつかから導き出されうる。例えば、選択された姿勢パラメータは、Gt=T/Rで定義される、鉛直方向の注視の動きに対する着用者100の頭の関与の割合Gtであってよい。読者は、所望される姿勢パラメータを測定するための他の方法が、代替として使用されてよいことを、理解するであろう。この目的のため、そのような方法を説明する、知られている著作物に対して、参照がなされうる。
次いで、着用者100に対して、または着用者100の一連の配置に対して、連続して実施された測定に対する、測定された値Pmesの標準偏差SDについて、式
Figure 2011513798
に従って計算がなされ(図1のステップ3)、ここで、Nはなされた配置の数、iは各測定に対応する配置の数、およびPmeanは測定された値Pmesの平均である。具体的には、下式
Figure 2011513798
に従って、Pmeanを計算することが可能である。
着用者100に対する姿勢の1パラメータまたは複数のパラメータの測定が実施されるとき、着用者は、利用可能な場合は、着用者の当初の眼鏡の眼鏡レンズ102を装着する(図2)。この方法で、計算される値SDおよびPmeanは、眼鏡レンズ102の使用に対する姿勢の適応を考慮に入れる。
言うまでもなく、着用者100が、初めて眼鏡用眼鏡レンズを装着するとき、測定は、着用者100が眼鏡用眼鏡レンズを装着しないときになされる。本発明の原理は、着用者100の以前の習慣に対応して、当初の眼鏡レンズ102をかけた状態で、またはかけない状態で、着用者100を、繰り返し観察条件のもとに置くことにより、姿勢の1パラメータまたは複数のパラメータの測定を行うことにあることが、理解されよう。
次いで、着用者100のために作製されるべき新しい累進眼鏡レンズの設計が、この着用者に対して計算された標準偏差SDから、また平均Pmeanから、求められる(図1のステップ4)。いくつかの代替方法がこの関連で使用されてよく、それらの代替方法のうちの2つが例として下に説明される。
一般に、値Pcorrは、最初に、姿勢パラメータのために計算され、姿勢パラメータは、次いで、新しい累進眼鏡レンズの設計を、計算または選択するために有用である(図3のステップ4a)。この値Pcorrは、新しい眼鏡レンズの個人化を表す。Pcorrは、半製品眼鏡レンズに関連し、より一般的には、ステップ1bの中で選択された基準眼鏡レンズに関連する基準値Prefから、各着用者に対して計算される。Pcorrは、下式
Pcorr=Pmean-(Pmean-Pref)×SD/K (3)
で与えられ、ここでKはゼロでない定数である。従って、値Pcorrは、姿勢パラメータの値がほんのわずかに分散するとき、すなわち、それらの標準偏差SDがほぼゼロであるときに、着用者に対して測定された姿勢パラメータの値の平均Pmeanに等しい。反対に、着用者に対して測定された値が、定数Kに近い標準偏差を有するとき、修正された平均Pcorrは、基準値Prefにほとんど等しくなる。この関連で、式3は、着用者によって取られた姿勢の再現性によって決まる程度において、基準値Prefおよび定数Kに基づいて、着用者に対して計算された平均Pmeanの修正を生み出す。
基準眼鏡レンズが、着用者に対して処方されているアディション値Aに従って選択される半製品眼鏡レンズである、本明細書で説明される本発明の実施形態に対して、Prefの値は、半製品眼鏡レンズの最終面の設計に関連する。
本発明によれば、基準値Prefおよび定数Kが、母集団サンプルから統計的に求められる。それゆえ、着用者に対して連続的に測定された姿勢パラメータの値の統計的分散が、一組の人々にわたって求められた同じパラメータの値の統計的な分散と比べられる。
従って、基準値Prefは、母集団サンプルから求められる姿勢パラメータの平均値に相当する。
同時に、定数Kは、この母集団サンプルの人々に対して求められる姿勢パラメータの値の標準偏差に等しい。
母集団サンプルは、特に、近見視力条件に置かれた一組の遠視でない着用者であってよい。母集団サンプルの中のこれらの着用者は、任意選択で、それぞれの視力に適合された単焦点眼鏡レンズを装着してよい。この場合、ステップ1bの中で選択される基準眼鏡レンズは、累進眼鏡レンズを初めて装着する着用者に対して適合される設計を有する。次いで、本発明者らは、
近見視力における読書の距離Dvp:348mmに対する基準値Pref、
近見視力における目の下げ角度Y:22度に対する基準値Pref、
ホロプターH:77.5度に対する基準値Pref、
鉛直方向の注視の動きにおける頭の関与の割合Gt:0.71に対する基準値Pref、
を考慮に入れた姿勢パラメータに応じた、Prefの値に対する例を与える。
代替として、基準値Prefはまた、遠視である着用者のうちの少なくとも数人を伴う一組の着用者にわたって求められてよい。この場合、基準設計は、初めのうちに、着用者に供給される新しい累進眼鏡レンズの最終設計に近づくことができる。
基準値Prefはまた、この値を確立するために使用される母集団サンプルにおける変化に従って、更新されうる。この場合、本発明による方法はまた、考慮される姿勢パラメータの基準値Prefを更新する事前のステップを含むことができる。特に、この更新するステップは、基準値が、同じ姿勢パラメータに対して以前に確立された、以前の母集団サンプルと比較して増加している、新しい母集団サンプルに基づいて実行されうる。
本明細書で報告される新しい累進眼鏡レンズの設計を求める第1の方法が、以下の2つのサブステップ、
修正された値Pcorrからエルゴラマを求めるステップ(図3のステップ4b)と、
最適化の目標としてエルゴラマの少なくとも一部を使用して、新しい累進眼鏡レンズを数値的に最適化するステップ(図3のステップ4c)と、を含む。
エルゴラマの詳細な定義に対して、すでに言及された文書、特許文献2に対する参照がなされうる。エルゴラマは、屈折力値を、作製されるべき新しい累進眼鏡レンズを通るそれぞれの観察方向と関係づけることであることが、本明細書で単に繰り返される。エルゴラマは、最初に、観察距離の値を、眼鏡レンズを通る着用者のそれぞれの注視の方向と関係づけることにより確立される。この関連づけは、着用者100の無意識の姿勢どりを考慮に入れるように選択された姿勢パラメータに対して計算される、個人化された値Pcorrから確立される。次いで、それぞれの注視の方向に対する屈折力値が、着用者100に対して確立された処方箋、およびこの方向に対する観察距離から導き出される。エルゴラマから、累進眼鏡レンズが、当業者に知られている方法で最適化される。新しい累進眼鏡レンズの個人化された設計が、このようにして得られる。
新しい累進眼鏡レンズの設計を求める第2の方法によれば、新しい累進眼鏡レンズの設計は、修正された値Pcorrに従って姿勢パラメータの値によってインデックスを付けられた、一組の設計から選択される。仕上げられた眼鏡レンズを着用者に供給するために必要な時間を短縮するために、これらの設計は、全シリーズのアディション値Aのペアおよび姿勢パラメータPに対して事前に計算されてよく、次いで、適切なデータ記録媒体に格納されてよい。次いで、眼鏡用眼鏡レンズが取り替えられる着用者に対して求められている、アディション値Aおよび修正された平均値Pcorrに対応する設計が、データ媒体から読み出される。
全体として、本発明によれば、新しい累進眼鏡レンズの設計の様々な特徴が、1つの同じアディション値Aに対して、着用者に対して計算された、修正された平均Pcorrを考慮に入れた選択に従って変化する可能性がある。例えば、新しい累進眼鏡レンズの設計は、新しい眼鏡レンズの経度線に沿った累進長および/または屈折力における変化の関数を含むことができ、それらの累進長および/または屈折力における変化の関数は、着用者に対して測定された姿勢パラメータの値から計算された、修正された平均Pcorrに従って、それら自体、不定である。
下のTable 1(表1)は、読書の距離Dvpと、ホロプターHと、鉛直方向の注視の動きに対する頭の関与の割合Gtとの3つの姿勢パラメータに対して、ならびにテーブル上の読書の活動に対して、遠視でない着用者の群から求められた基準値Prefおよび標準偏差Kを含む。
Figure 2011513798
下のTable 2(表2)は、Table 1(表1)の3つの姿勢パラメータのそれぞれに対して、および処方されたアディション値Aが同じで、2.00ジオプトリーに等しい3人の異なる着用者に対して、測定された値Pmeanの平均と、計算された標準偏差SDと、式3に従って計算された値Pcorrとを含む。
Figure 2011513798
3人の着用者に対して示されるSDの値は、着用者3が、より反復的な読書姿勢を取ることを示す。このため、この着用者は、異なる姿勢に対して最適化された設計を有する新しい累進眼鏡レンズに適応するのに、より大きな困難を伴いがちである。
図4は、Table 2(表2)の3人の着用者に対して本発明により作製されている、3つの新しい累進眼鏡レンズの屈折力における、それぞれの変化を示すグラフである。屈折力におけるこれらの変化は、眼鏡レンズの主たる経度線をたどることにより、すなわち、鉛直面内で変化する、これらの眼鏡レンズを通る注視の方向に対して、同定される。Y軸は、注視の水平方向に対する注視の方向の角度に従って、注視の方向を表す。本発明者らは、一般に、眼鏡用眼鏡レンズが、この水平の注視の方向が調整用十字において眼鏡レンズを通過するように、眼鏡フレームの中に組み入れられることを述べる。この調整用十字はまた、遠見視力に対する基準として取られる方向に対応する。このため、遠見視力に対する基準方向が、図においてVLと表される。従って、Y軸は、度で表される、目の上げ角度Yを示す。X軸は、水平の注視の方向に対する、屈折力における変化を示す。着用者3に対して、注視の方向が、VPで表される、近見視力に対する基準方向より低いとき、屈折力が、アディション値を超えて増加し続けることに、特に留意されたい。眼鏡レンズのこの適合は、特に、頭の傾斜の高い再現性(Gtに対して低いSDの値)で頭をほんのわずかに下げる(Gtに対して低いPmeanの値)、着用者3の習慣に対応する。
次いで、新しい累進眼鏡レンズが、当業者に知られている方法で計算され、選択されている、個人化された設計から作製される。本明細書で説明される、本発明の特定の実施形態において、半製品眼鏡レンズは、半製品眼鏡レンズの大量生産の間に最終形として生成される面と反対の面上に、機械加工される。
言うまでもなく、今しがた詳細に説明した本発明の方法は、本発明の利点のうちの少なくともいくつかを維持しながら、いくつかの態様において改変されうる。特に、着用者に対して測定される値Pmesにおける変化が、これらの値のうちの任意の2つの間で計算された絶対的な差の最大、または測定されたPmesの値のうちの任意の1つと、対応する平均値Pmeanとの間の差の最大を選択することにより、特性評価されうる。
100 着用者
101 文書
102 当初の眼鏡用眼鏡レンズ
A アディション値
P 姿勢パラメータ
Pmes 測定された姿勢パラメータ
Pmean Pmesの平均
Pref 姿勢パラメータの基準値
SD 標準偏差
K ゼロでない定数
PF フランクフルト平面
PH 水平基準面
T 頭の傾斜の鉛直角
DR 注視の方向
R 注視の下げの角度
Y 目の上げまたは下げの角度
B 文書101の傾斜角
H ホロプター
Dvp 近見視力における読書の距離
Gt 鉛直方向の注視の動きに対する着用者の頭の関与の割合
VL 遠見視力に対する基準方向
VP 近見視力に対する基準方向

Claims (13)

  1. 遠視の着用者(100)のために企図される新しい累進眼鏡用眼鏡レンズを作製する方法において、
    (1)前記着用者(100)に対して作成された眼科処方箋に適合する基準眼鏡レンズの特性評価を得るステップであって、前記基準眼鏡レンズが少なくとも1つの姿勢パラメータの基準値(Pref)に対応する設計を有し、前記姿勢パラメータが前記着用者によって取られる独特の観察姿勢に対して変化する値を有する、ステップと、
    (2)前記着用者(100)が、前記新しい累進眼鏡レンズが作製される前に通常であった眼科的矯正条件のもとにあるときに、観察姿勢における連続的な配置の間、前記着用者に対して前記姿勢パラメータの値(Pmes)を測定するステップと、
    (3)ステップ(2)の中で測定された前記値(Pmes)の平均Pmeanおよび標準偏差SDと、式
    Pcorr=Pmean-(Pmean-Pref)×SD/K
    に従って測定された前記値に対する修正された平均Pcorrとを計算するステップであって、Prefが前記姿勢パラメータの前記基準値を表し、Kがゼロでない定数である、ステップと、
    (4)ステップ(3)の中で計算された、前記修正された平均Pcorrに応じて、前記新しい累進眼鏡レンズのための設計を求めるステップと、
    (5)前記眼科処方箋およびステップ(4)の中で求められた前記設計に従って、前記基準眼鏡レンズの前記特性評価から前記新しい累進眼鏡レンズを作製するステップとを含み、
    前記姿勢パラメータの前記基準値Prefおよび前記定数Kが、それぞれ、母集団サンプルに関して求められた前記姿勢パラメータの値の平均値および標準偏差である、方法。
  2. 前記新しい累進眼鏡用眼鏡レンズが、前記着用者によって使用された当初の眼鏡の眼鏡レンズ(102)を置き換えることを企図され、また、ステップ(2)の中で実施され、前記新しい累進眼鏡レンズが作製される前は通常であった前記眼科的矯正条件が、前記当初の眼鏡レンズ(102)の使用に対応する、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(4)の中で求められた前記新しい累進眼鏡レンズの前記設計が、前記新しい累進眼鏡レンズの経度線に沿った累進長および/または屈折力の変化の関数を含み、前記累進長および/または屈折力の変化の前記関数が、ステップ(3)の中で計算された、前記修正された平均Pcorrに従って、それら自体、不定である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記新しい累進眼鏡レンズの前記設計が、以下の2つのサブステップ、すなわち
    (4-1)ステップ(3)の中で計算された、前記修正された平均Pcorrの前記値からエルゴラマを求めるステップであって、前記エルゴラマが、屈折力値を、前記新しい累進眼鏡レンズを通るそれぞれの観察方向と関係づける、ステップと、
    (4-2)最適化の目標として前記エルゴラマの少なくとも一部を使用して、前記新しい累進眼鏡レンズを数値的に最適化するステップと、を実施することにより、ステップ(4)の中で求められる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ステップ(4)が、ステップ(3)の中で計算された、前記修正された平均Pcorrの前記値に従って、前記姿勢パラメータの値(P)でインデックスを付けられた一組の設計から、前記新しい累進眼鏡レンズの前記設計を選択することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記姿勢パラメータが、近見視力における読書の距離(Dvp)、近見視力における目の上げまたは下げの角度(Y)、近見視力におけるホロプター(H)、または鉛直方向の注視の動きに対する頭の関与の割合、から選択されるか、あるいは、これらのパラメータのうちの少なくとも数個から導き出される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記姿勢パラメータの前記基準値(Pref)を求めるために使用される前記母集団サンプルが、近見視力条件に置かれた、一組の遠視でない着用者である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 基準値が前記姿勢パラメータに対して以前に確立された、以前の母集団サンプルに対して増加された、新しい母集団サンプルに基づいて、前記姿勢パラメータの前記基準値(Pref)を更新する事前ステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記姿勢パラメータが近見視力の読書の距離(Dvp)であり、前記姿勢パラメータの前記基準値(Pref)が348mmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記姿勢パラメータが近見視力における前記目の下げ角度(Y)であり、前記姿勢パラメータの前記基準値(Pref)が22度である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記姿勢パラメータが近見視力のホロプター(H)であり、前記姿勢パラメータの基準値(Pref)が77.5度である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記姿勢パラメータが鉛直方向の注視の動きに対する前記頭の関与の割合であり、前記姿勢パラメータの前記基準値(Pref)が0.71である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記基準眼鏡レンズが、最終面を有する半製品眼鏡レンズであり、前記新しい累進眼鏡レンズが、前記半製品眼鏡レンズの他の面を機械加工することにより、ステップ(5)の中で作製される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
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