JP2011511634A - ガン幹細胞に関連する方法および組成物 - Google Patents

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Abstract

乳ガン幹細胞(BCSC)のマイクロRNAマーカーが本明細書中で提供される。これらのマーカーは、正常な対応する細胞と比較して、BCSC中ではディファレンシャルに発現されるポリヌクレオチドである。これらのマーカーの使用としては、治療的介入のための標的としての使用;薬物開発のための標的としての使用、および乳ガンおよびBCSC細胞集団に関する診断方法または予後診断方法のための使用が挙げられる。BCSCは、正常な乳房上皮細胞と、またはガン幹細胞ではないガン細胞と比較して、特定のmiRNAの発現が低い表現型を持つ。

Description

政府の権利
本発明は、NIH National Cancer Instituteによって授与された約定CA104987の下で政府の支援によって行われた。政府は本発明に一定の権利を持つ。
発明の背景
乳ガンは、米国の女性において最も一般的な悪性腫瘍である。現在利用されている治療法は転移の縮小をもたらすことができるが、これらの効果は一時的であり、ステージ4の乳ガンを有している人の大部分はこれが原因で死亡する。従来の治療方法(放射線治療、化学療法、およびホルモン療法を含む)が有効であるが、処置に耐性のあるガン細胞の出現によって制限される。乳ガンを検出し処置するための新規のアプローチが必要である。
多くの他のタイプの固形腫瘍と同様に、死亡率の主な原因は、出現部位から離れた臓器および組織へのガンの拡散である。これは、最初の腫瘍から周辺の乳房組織ならびにリンパ組織および血管へのガン細胞の浸潤の結果である。その後、浸潤したガン細胞は新しい腫瘍を形成し、これは最終的に、肝臓、肺、または脳のような、ガンが拡がった重要な臓器の機能を弱め、そして最終的に患者の死亡を引き起こす。乳ガンによる死亡率の主な原因は、他の臓器へのガンの播種によるので、生存率を上げるためには、腫瘍細胞の拡がりを防ぐか、または離れた位置の腫瘍を全滅させるかのいずれかを行わなければならない。
腫瘍は、突然変異の蓄積によって際限なく増殖する能力を獲得した腫瘍形成性のガン細胞によって開始される異常な臓器として見ることができる。異常な臓器として腫瘍をこのように考えると、正常な幹細胞生物学の原理を、どのように腫瘍が発生し、播種するかをさらに理解するために適用することができる。多くの観察により、正常な幹細胞と腫瘍形成性の細胞との間での類似性が適していることが示唆されている。正常な幹細胞と腫瘍形成性の細胞はいずれも、強い増殖能力と新しい(正常なまたは異常な)組織を生じる能力を有している。腫瘍形成性の細胞は、正常な幹細胞が行うものと同様の器官形成のプロセスにおいて異常な低い調節を受けるガン幹細胞(CSC)と考えることができる。腫瘍組織および正常組織にはいずれも、様々な表現型の特徴を持ち、分化増殖能力が異なる、異種細胞の組み合わせが含まれる。
急性骨髄性白血病においては、一部のガン細胞だけが腫瘍を開始する能力を担っており、自己再生する能力を維持していることが明らかにされている。正常な造血細胞間でのクローン形成能の差を表わしている白血病細胞間でのクローン形成能の差が原因で、クローン形成性の白血病細胞は、白血病幹細胞と記載されている。固形ガンについては、細胞の表現型が不均一であること、および細胞集団のうちのごく一部が腫瘍形成性であり、インビボで自己再生できることも示されている。白血病幹細胞の状況においてまさにそうであるように、これらの観察により、極めて稀にしか、ガン幹細胞は上皮性腫瘍の中に存在しないという仮説が導かれた。
乳ガン細胞の腫瘍形成性の集団および非腫瘍形成性の集団はまた、それらの細胞表面マーカーの発現に基づいて単離することができる。乳ガンの多くの症例では、細胞の極一部しか、新しい腫瘍を形成する能力を持っていなかった。多くの患者に由来する乳ガン腫瘍には、免疫不全マウスにおいて腫瘍を形成することができるガン細胞の亜集団(subpopulation)が含まれているが、他のガン細胞は腫瘍を形成することはできない。わずか100個の腫瘍形成性のガン細胞しか、免疫不全マウスに注入された場合に腫瘍を形成することができず、得られる腫瘍には、患者の原発性腫瘍の中でみられる腫瘍形成性のガン細胞と非腫瘍形成性のガン細胞の、表現型上不均一な集団が含まれていた。
固形腫瘍中に生じるCSCの存在についてのさらなる証拠は、中枢神経系(CNS)悪性腫瘍において明らかにされている。正常な神経幹細胞を培養するために使用される培養技術と同様の培養技術を使用することにより、神経CNS悪性腫瘍に、インビトロでクローン形成性であり、インビボで腫瘍を開始する少数のガン細胞が含まれるが、腫瘍中の残りの細胞はこれらの特性を持っていないことが示されている。重要なことは、幹細胞生物学の原理が乳ガン腫瘍の生物学を理解することに極めて適していることである。
ガン幹細胞の存在は、ガン治療に深刻な影響を与えている。現在、腫瘍中の表現型が多様であるガン細胞の全てが、これらが無限に増殖する能力を持ち、転移する能力を獲得し得ると考えられるとの理由から、処置されている。しかし、長年にわたり、播種性のガン細胞の一部だけが、転移性の疾患をまだ発現していない患者の原発性腫瘍から離れた部位で検出され得ることが理解されてきた。ほとんどのガン細胞は新しい腫瘍を形成する能力を欠いている可能性があり、結果として、稀なガン幹細胞の播種によってしか転移性疾患は導かれ得ない。したがって、治療の目的は、このガン幹細胞の集団を同定し、死滅させることでなければならない。
既存の治療法は、腫瘍細胞のバルク集団に対して広く開発されている。なぜなら、これらの治療法は、腫瘍の塊を収縮させるそれらの能力によって同定されているからである。しかし、ガンの中のほとんどの細胞は増殖能力が限られているので、腫瘍を収縮させる能力は、これらの細胞を死滅させる能力を主に反映する。ガン幹細胞に対するより特異的な治療法によって、より持続する反応と、転移性腫瘍の治癒が得られる可能性がある。
miRNAは、リボソーム機能を阻害すること、5’キャップ構造のキャップを外すこと、ポリAテールを脱アデニル化させること、および標的mRNAの分解によってmRNAの翻訳を調節する、小さい非コード調節RNAである。miRNAは、数百ものmRNAの発現を同時に調節することができ、したがって、細胞増殖、幹細胞の維持および分化を含む様々な細胞機能を制御することができる。もっとも深く研究されてきたmiRNAのうちの1つである、Caenorhabditis elegansのlet−7は、発育のタイミングで失われる突然変異の遺伝的分析によって最初に同定された。続いて、Dicer1が、miRNAのプロセシングと機能に重要な酵素として同定された。Dicer1のヌル変異によっては胚性致死と幹細胞の枯渇が生じる。加えて、Dicerの組織特異的欠失は、胚性幹細胞の自己再生、Bリンパ球系統の細胞の発生、および組織の形態形成に影響を与える。皮膚では、miR−203が発育に重要である。miRNAのプロセシングについての別の重要な酵素であるDGCR8の欠失はまた、胚性幹細胞の分化における自己再生遺伝子のサイレンシングを変化させる。これらの知見は、miRNAが、組織の維持および分化の重要な調節因子であることを示している。最近の研究は、ガンにおいてみられる共通している染色体の増幅および欠失の多くに、miRNAコード配列が含まれていること、そしていくつかのmiRNAが腫瘍遺伝子または腫瘍抑制遺伝子として機能することを示している。例えば、miR−17−92クラスターの脱調節によってB細胞リンパ腫が誘導され得、let−7のダウンレギュレーションは、肺ガン患者の腫瘍の進行と予後不良と関係がある。let−7の発現もまた、乳房細胞株の腫瘍スフェア(tumor sphere)の形成を妨げ、インビボでの異種移植片腫瘍アッセイにおいて腫瘍形成性を阻害する。
本発明は、ガン幹細胞中のマイクロRNA(microRNA)の検出と操作に関する。幹細胞を多く含む集団を予め同定する能力によって、重要な幹細胞機能の分子である調節因子を追求するためにこれらの細胞を調べることができる。
ガン幹細胞は、例えば以下で議論されている:非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6。
Pardalら(2003)Nat Rev Cancer 3,895−902 Reyaら(2001)Nature 414,105−11 Bonnet & Dick(1997)Nat Med 3,730−7 Al−Hajjら(2003)Proc Natl Acad Sci USA 100,3983−8 Dontuら(2004)Breast Cancer Res 6,R605−15 Singhら(2004)Nature 432,396−401
発明の概要
乳ガン幹細胞(BCSC)のマイクロRNAマーカーが本明細書中で提供される。これらのマーカーは、正常な対応する細胞と比較して、そして乳ガンにおいて見られる非腫瘍形成性の細胞と比較して、BCSC中ではディファレンシャルに発現されるポリヌクレオチドである。これらのマーカーの使用としては、治療的介入のための標的として;薬剤開発のための標的として、ならびに、乳ガンおよびBCSC細胞集団に関する診断方法または予後診断方法のための使用が挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態では、乳ガンを処置するための方法が提供される。この方法には、マイクロRNA活性を、例えば、BCSCに対するマイクロRNAの発現ベクターの導入または直接の提供により、提供する工程が含まれる。アップレギュレーションのための目的のマイクロRNAは、BCSCの中でダウンレギュレートされることが本明細書中で示され、これには、以下が含まれるがこれらに限定されない:200c−141クラスター中のマイクロRNA(miR200c、miR141);200b−200a−429クラスター中のマイクロRNA(miR200b、miR200a、miR429);および182−96−183クラスター中のマイクロRNA(miR182、miR96、miR183)。
他の実施形態では、乳ガンの処置方法が提供される。ここでは、マイクロRNAの発現がダウンレギュレートされる。ダウンレギュレートされる目的のマイクロRNAとしては、miR214;miR−127;miR142−3p;miR−199a;miR1−125b;miR−146b;miR199b、およびmiR−222が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のいくつかの実施形態では、ガンの分類または臨床病期の決定のための方法が提供される。ここでは、BCSCの数がより多いことが、より侵襲性の強いガンの表現型の指標となる。病期決定は予後診断と処置に有用である。本発明のいくつかの実施形態では、腫瘍試料が、本明細書中で同定されたmiRNAの発現が低下しているそのような細胞の存在について、組織化学(免疫組織化学、インサイチュハイブリダイゼーションなどを含む)によって分析される。そのような細胞の存在はBCSCの存在を示し、原発性腫瘍中、ならびにリンパ節または遠隔転移中でのBCSCマイクロドメインの定義を可能にする。それらに特有の表現型によるBCSCの同定により、従来の治療方法よりもさらに特異的な標的が提供される。さらに、本発明の1つの実施形態によってはまた、疾患の進行、再発、および薬剤耐性の発生を予測する手段も提供される。
本発明の別の実施形態では、miRNAまたはそれらの標的が、例えば、そのようなmiRNAの発現を増大させるか、またはガン幹細胞中でのそれらのタンパク質標的の発現を低下させる化合物をスクリーニングする方法において、使用され得る。これには、化合物を、miRNAの発現が低い細胞集団での発現と組み合わせる工程、その後、その化合物によって生じた何らかの調節効果を決定する工程が含まれる。これには、特定のタンパク質標的の活性または検出、生存性、毒性、代謝の変化、あるいは細胞機能に対する影響についての細胞の試験が含まれ得る。本明細書中で開示されるmiRNAの機能と関係があるガン幹細胞を標的化する治療薬の投与のための方法もまた提供される。
ヒトの乳ガン幹細胞でのmiRNAの発現のプロフィール。(A)乳ガンmiRNAのスクリーニング。CD44CD24−/lowlineageの腫瘍形成性のガン細胞(TG細胞)および残りのlineageの非腫瘍形成性のガン細胞(NTG細胞)によってディファレンシャルに発現された37種類のmiRNAを同定するために使用したスクリーニングの詳細を、模式的に示す。(B)腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞中での37種類のmiRNAの発現プロフィール。フローサイトメトリーを、11個のヒトの乳ガン試料(BC1〜BC11)からTG細胞とNTG細胞とを単離するために使用した。100個の選別したガン細胞中でのmiRNAの発現量(Ct値)を、多重リアルタイム定量PCRによって分析した。数値は、TG細胞とNTG細胞とから得られたCt値の差(ΔCt)を示す。(C)腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞中でダウンレギュレートされた3種類のmiRNAクラスターの模式図。同じシード配列(seed sequence)(2塩基対〜7塩基対)を共通して持つmiRNAを同じ色で示した。(D)ヒトの乳ガン細胞と比較したTera−2胎生期ガン細胞中でのmiRNAの発現。100個のTera−2細胞中でのmiRNAの発現の強さを、100個のヒトの乳ガンTG細胞およびNTG細胞(BC1〜BC11)中でのmiRNAの発現に対して、多重リアルタイム定量PCRによって比較した。乳ガンTG細胞およびNTG細胞の11種類のセットから得られたCt値を平均した。数値は、NTG細胞と比較した、Tera−2細胞、ヒトの乳ガンTGから得られたCt値の差(ΔCt)を示す。 ヒトの乳ガン幹細胞でのmiRNAの発現のプロフィール。(A)乳ガンmiRNAのスクリーニング。CD44CD24−/lowlineageの腫瘍形成性のガン細胞(TG細胞)および残りのlineageの非腫瘍形成性のガン細胞(NTG細胞)によってディファレンシャルに発現された37種類のmiRNAを同定するために使用したスクリーニングの詳細を、模式的に示す。(B)腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞中での37種類のmiRNAの発現プロフィール。フローサイトメトリーを、11個のヒトの乳ガン試料(BC1〜BC11)からTG細胞とNTG細胞とを単離するために使用した。100個の選別したガン細胞中でのmiRNAの発現量(Ct値)を、多重リアルタイム定量PCRによって分析した。数値は、TG細胞とNTG細胞とから得られたCt値の差(ΔCt)を示す。(C)腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞中でダウンレギュレートされた3種類のmiRNAクラスターの模式図。同じシード配列(seed sequence)(2塩基対〜7塩基対)を共通して持つmiRNAを同じ色で示した。(D)ヒトの乳ガン細胞と比較したTera−2胎生期ガン細胞中でのmiRNAの発現。100個のTera−2細胞中でのmiRNAの発現の強さを、100個のヒトの乳ガンTG細胞およびNTG細胞(BC1〜BC11)中でのmiRNAの発現に対して、多重リアルタイム定量PCRによって比較した。乳ガンTG細胞およびNTG細胞の11種類のセットから得られたCt値を平均した。数値は、NTG細胞と比較した、Tera−2細胞、ヒトの乳ガンTGから得られたCt値の差(ΔCt)を示す。 正常な乳腺幹細胞と悪性の乳腺幹細胞とが共通して持つ、ダウンレギュレートされるmiRNAのプロフィール。(A)それらのCD24およびCD49fの発現によるCD45CD31CD140aTer119マウス乳腺細胞の分配(distribution)。MRUは、乳腺幹細胞を多く含む集団である。MaCFCは、インビボでは乳腺を再生しない前駆細胞である。(B)MaCFCと比較した、MRU中でのmiRNAの発現。腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞の中でダウンレギュレートされたmiRNAの発現を、正常なマウスの乳腺脂肪体からフローサイトメトリーによって単離したMRUおよびMaCFCの中で分析した。100個のMRUおよびMaCFC中でのmiRNAの発現レベルを、リアルタイム定量PCRによって測定した。分析は、別々に単離したMRUおよびMaCFCの集団に由来する試料の2種類のセットを使用することによって、2回繰り返した。数値は、MRUとMaCFCとから得られたCt値の差を示す。 MiR−200cはSOX2を標的とする。(A)SOX2の3’UTR中にあるmiR−200bc/429標的配列の模式図。SOX2の3’UTRの中で、2つのヌクレオチド(miR−200bc/429の6位のヌクレオチドと8位のヌクレオチドに相当する)を突然変異させた。数値は、参照である野生型配列(NM_003106)中のヌクレオチドの位置を示す。(B)SOX2の3’UTRに連結されたルシフェラーゼ遺伝子の活性。SOX2の野生型3’UTR配列または変異した3’UTR配列を持つpGL3ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドを、正規化のためのRenillaルシフェラーゼレポーターとともにHEK293T細胞に一時的にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性を48時間後に測定した。pGL3対照ベクターをトランスフェクトした細胞による結果の平均を100%と設定した。データは、独立したトランスフェクション(n=4)の平均とS.D.である。(C)胎生期ガン細胞によるSOX2タンパク質の発現。示したmiRNAを発現するレンチウイルスに感染させたTera−2胎生期ガン細胞を、感染の6日後にフローサイトメトリーによって収集した。対照のレンチウイルスまたは示したmiRNAを発現するレンチウイルスに感染させた30000個の選別したTera−2細胞に由来する溶解物をそれぞれのレーンにロードし、そしてSOX2の発現をウェスタンブロッティングによって分析した。β−アクチンの発現を対照として使用した。(D)原発性のヒトの乳ガン試料から単離したTGガン細胞およびNTGガン細胞中でのSOX2タンパク質の発現の差。原発性のヒトの乳ガン試料を解離させ、CD44CD24−/lowlineageの腫瘍形成性のガン細胞と、残りの非腫瘍形成性のlineage−のガン細胞を、フローサイトメトリーによって収集した。6000個の選別した細胞に由来する溶解物をそれぞれのレーンにロードし、SOX2の発現をウェスタンブロッティングによって分析した。β−アクチンの発現を対照として使用した。 miR−200cおよびmiR−183による胎生期ガン細胞の増殖の抑制。(A)miRNAを発現する胎生期ガン細胞の画像。示したmiRNAを発現するレンチウイルスに感染させたTera−2細胞を、感染の4日後にフローサイトメトリーによって収集した。Tera−2細胞を19日間培養し、Giemsa Wright染色溶液で染色した。(B)miR−200cおよびmiR−183は、胎生期ガン細胞の分化を促進する。(A)に記載したように感染させ、収集したTera−2細胞を、初期有糸分裂後ニューロンマーカーに対する一次抗体であるTuj1で、続いて、Alexa−488標識二次抗体で染色した。細胞をDAPIで対比染色した。(C)miR−200cおよびmiR−183は、インビトロで胎生期ガン細胞の増殖を阻害した。3000個の、対照を発現するTera−2細胞または示したmiRNAを発現するTera−2細胞を、(A)に記載したように収集し、96ウェルプレートの中で培養した。細胞の総数を、7日目、12日目、および19日目にカウントした。結果は、3つの別々のウェルによる平均とS.D.である。 MMTV−Wnt−1マウス乳ガン細胞のクローン形成能に対するmiR−200cおよびmiR−183の影響。(A)miR−200cおよびmiR−183を発現するMMTV−Wnt−1乳ガン細胞によるコロニー形成の発生率。MMTV−Wnt−1乳ガン細胞を解離させ、lineage陽性(lineage positive)細胞を、フローサイトメトリーを使用して枯渇させた。15000個の乳ガン細胞を、示したmiRNAを発現するレンチウイルスに感染させ、24ウェルプレートの中で、irradiated 3T3栄養補給層上で培養した。6日間のインキュベーションの後、10個を超えるGFP陽性細胞を含むコロニーの数をカウントした。結果は、4つの別々のウェルによる平均とS.D.を示す。(B)サイトケラチン14、19、および8/18に対する抗体で染色したコロニーの免疫蛍光画像。GFP陽性コロニーに印をつけ、サイトケラチンに対する一次抗体で、続いて、Alexa−488およびAlexa−594で標識した二次抗体で染色した。細胞を、DAPIで対比染色した。 インビボでのmiR−200cおよびmiR−183を発現する胎生期ガン細胞の腫瘍増殖。(A)Tera−2胎生期ガン細胞を注射したマウスにおける代表的な腫瘍。Tera−2細胞を示したmiRNAを発現するレンチウイルスに感染させ、GFPを発現する細胞を、フローサイトメトリーを使用して収集した。示したレンチウイルスに感染させた50000個のGFPTera−2細胞を、免疫不全NOD/SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍の増殖を、注射後3ヶ月間モニターした。感染させたTera−2細胞によるmiRNAの発現を、リアルタイムPCR分析によって確認した。(B)miRNAを発現するTera−2細胞の腫瘍発生率。3種類の対照のレンチウイルスに感染させたTera−2細胞のうちの3種類が3カ月後に腫瘍を生じた。miR−200cまたはmiR−183を発現するTera−2細胞は腫瘍を形成しなかった。結果は、3つの別々の腫瘍注射実験のまとめである。 乳腺の成長に対するmiRNAの発現の影響
本発明がさらに記載される以前は、特定の実施形態の変更を行うことができ、これらがなおも添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるので、本発明は、以下に記載される本発明の特定の実施形態に限定されないと理解されるべきである。使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、限定とは意図されないこともまた理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確定されるであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲においては、文脈により明確に否定されない限りは、単数形「a」、「an」、および「the」には複数の指示対象が含まれる。
値の範囲が提供されている場合は、文脈により明確に否定されない限りは、下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限および下限値の間に介在する各値、およびその指定範囲内の任意の他の指定値または介在値が、本発明に含まれると理解される。指定範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として、これらの小さな範囲の上限および下限値は独立してそれらのさらに小さな範囲に含まれ得、そしてこれらはまた同様に本発明に含まれる。指定範囲が限度の一方または両方を含む場合は、それらの含まれる限度の一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
文脈により明確に否定されない限りは、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法、デバイス、および材料と類似するかまたは同等の任意の方法、デバイス、および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法、デバイス、および材料が、本明細書中に記載される。
本明細書中で言及される全ての刊行物は、それらの刊行物中に記載されている本発明の対象の構成要素(その構成要素は、本明細書中に記載される本発明と組み合わせて使用され得る)を記載し、開示する目的のために、引用により本明細書中に組み入れられる。
上記にまとめたように、本発明は、ガンの分類方法、ならびにその方法を実施するために使用される試薬およびキットに関する。これらの方法によってはまた、特定のガンについて適切な処置レベルを決定することもできる。
最初の分類によって、およびその情報に基づいて、治療を最適化するため、望ましくない毒性を最少にしつつ、望ましくない標的細胞への増殖を抑える処置の送達の差を最適化する、適切な治療薬、用量、治療法などを選択するための方法も提供される。この処置は、有効な抗増殖活性を提供しつつ、望ましくない毒性を最少にする処置を選択することによって最適化される。
本発明により、ガン腫(例えば、乳ガン)の予防、処置、検出、または研究における使用が見出される。ガン腫は、上皮性起源の新生細胞を含むガンである。上皮細胞は体の外表面、輪郭(line)、内腔を覆っており、腺組織の内層を形成する。成人では、ガン腫はガンの最も一般的な形態である。ガン腫には、様々な腺ガン(例えば、前立腺ガン、肺ガンなど);副腎皮質ガン;肝細胞ガン;腎細胞ガン、卵巣ガン、上皮内ガン、腺管ガン、乳房のガン腫、基底細胞ガン;扁平上皮細胞ガン;移行細胞ガン;結腸ガン;鼻咽腔ガン;多房性嚢胞性腎細胞ガン;燕麦細胞ガン、大細胞肺ガン;小細胞肺ガンなどが含まれる。ガン腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(通常は、二次的な転移として)、肺、乳房、皮膚などに見ることができる。
ガン幹細胞の特定の表現型の特徴は当該分野で記載されており、これには、CD44、CD133、CD24、CD49f;ESA;CD166;およびlineageパネルのような複数のマーカーが含まれ得る。特定のマーカーの組み合わせと表現型の例は、例えば、以下に記載されている:Al−Hajjら(2003)Prospective identification of tumorigenic breast cancer cells.Proc Natl Acad Sci USA 100,3983−8;Singhら(2004)Identification of human brain tumour initiating cells.Nature 432,396−401;Dalerbaら(2007)Phenotypic characterization of human colorectal cancer stem cells.Proc Natl Acad Sci USA 104,10158−63;O’Brienら(2006)A human colon cancer cell capable of initiating tumour growth in immunodeficient mice.Nature;Princeら(2007)Identification of a subpopulation of cells with cancer stem cell properties in head and neck squamous cell carcinoma.Proc Natl Acad Sci USA(これらはそれぞれが、ガン幹細胞マーカーの表現型についての教示が引用によって具体的に本明細書中に組み入れられる)。本発明のいくつかの実施形態では、そのような表現型は、マイクロRNA種の検出と組み合わせて使用される。
用語「ガン幹細胞」は、本明細書中で定義される場合は、自己再生能力および分化能力の両方を持つ腫瘍形成性のガン細胞の亜集団をいう。これらの腫瘍形成性の細胞は腫瘍の維持を担っており、また、多数の異常に分化する、腫瘍形成性ではない子孫を生じる。これらの細胞は、約10細胞、約5×10細胞、約10細胞からの用量で腫瘍の増殖を開始することができ、CD44陰性腫瘍細胞と比較して、腫瘍を開始する能力に関して少なくとも100倍の増大が得られた。細胞膜でのCD44陽性染色により、原発性腫瘍中のガン幹細胞マイクロドメインを定義することができる。そのようなマイクロドメインの存在は、原発部位および転移部位での細胞ガンの診断に有用である。この場合、そのようなマイクロドメインの数の増加が、より腫瘍形成性が高い腫瘍の指標となる。これらの細胞は、インビボで腫瘍を形成し;腫瘍形成性の子孫を生じるように自己再生し;異常に分化した非腫瘍形成性の子孫を生じ、そして少なくとも1つの幹細胞と関係がある遺伝子をディファレンシャルに発現する。ガン幹細胞の集団は、細胞表面マーカーCD44を発現する細胞を選択することによって富化させることができる。乳ガンの場合には、CD44CD24−/lowlineageの集団の中の細胞は、ガン幹細胞の自己再生および分化についての機能的アッセイにおいてガン幹細胞の特有の特性を持ち、そして、ガンの診断に役立ち得る特有の組織学的なマイクロドメインを形成する。この集団は、他のガン細胞のサブセットと比較すると、例えば、マウスの異種移植片アッセイを使用して示されるように、高い腫瘍形成能力を持つ。lineageパネルには通常、正常な白血球、線維芽細胞、内皮細胞、中皮細胞などのマーカーに特異的な試薬が含まれるであろう。
「マイクロRNA(miRNAs)」は、本明細書中で言及される場合は、遺伝子発現の調節を通じて多くの生物学的プロセスに重要であると考えられている、多くのクラスの非コードRNAである。これらは、約20nt〜約25nt、例えば、約21nt〜約24nt、例えば、22ntまたは23ntの長さの範囲の一本鎖RNA分子である。これらの非コードRNAは、生産のための翻訳物の切断または抑制のために、タンパク質をコードする遺伝子のメッセージを標的化することによって、発育において重要な役割を果たすことができる。ヒトは、miRNAをコードする遺伝子を200個から255個持ち、これはタンパク質をコードする遺伝子のほぼ1%に相当する量である。miRNAは、約20nt〜約25nt、例えば、約21nt〜約24nt、例えば、22ntまたは23ntの長さの範囲の一本鎖RNA分子である。
いくつかの実施形態では、miRNAマーカーは、比較することができる非腫瘍形成性の細胞と比べて、低いレベルでディファレンシャルに発現され、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍、またはそれ以上低下する場合がある。
本発明により、ガンの診断、ガン(特に、ガン腫)の分類および処置において、本明細書中で記載されるマーカーを使用する方法が提供される。これらの方法は、CSCの特性決定に、被検体のガンの診断および重篤度(例えば、腫瘍の悪性度,腫瘍組織量など)の決定を容易にするために、被検体の予後診断の決定を容易にするために、ならびに、治療に対する被検体の反応性を評価するために有用である。本発明の検出方法は、インビトロまたはインビボで、単離された細胞について、または組織全体もしくは体液(例えば、血液、リンパ節生検試料)の中などで、行うことができる。
本明細書中で使用される場合は、用語「ガン幹細胞中でディファレンシャルに発現されるmiRNA」および「ガン幹細胞中でディファレンシャルに発現されるポリヌクレオチド」は、本明細書中では互換的に使用され、一般的には、腫瘍形成性ではない同じ細胞タイプの細胞と比較して、ガン幹細胞中でディファレンシャルに発現されるmiRNAを示すかまたはこれに相当するポリヌクレオチドをいう。例えば、mRNAは、少なくとも約25%、少なくとも約50%〜約75%、少なくとも約90%、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または少なくとも約50倍、あるいはそれ以上異なるレベルで見られる。
目的のmiRNAは、そのポリヌクレオチドがmiRNAに相当するかまたはmiRNAを示す場合に、ポリヌクレオチドによって「同定される」。この場合、「同定される配列(identifying sequence)」は、ポリヌクレオチド配列もしくはその相補物を一意的に同定するかまたは定義する連続するヌクレオチドの配列の最小断片である。
用語「生物学的試料」には、生命体から得られる様々なタイプの試料が含まれ、これらは診断アッセイまたはモニタリングアッセイに使用することができる。この用語には、血液、および生物学的起源の他の液体試料、固体組織試料(例えば、生検標本または組織培養物またはそれらに由来する細胞)、ならびにそれらの子孫が含まれる。この用語には、それらの調達後に、試薬での処理、可溶化、または特定の成分の富化のような、何らかの方法で操作された試料も含まれる。この用語には臨床試料も含まれ、これにはまた、細胞培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的液体、および組織試料が含まれる。
本発明の方法で使用される臨床試料は、様々な供給源(特に、生検試料)から得ることができるが、いくつかの場合には、血液、骨髄、リンパ、脳脊髄液、滑液などのような試料を使用することができる。そのような試料は、遠心分離、水簸(elutriation)、密度勾配分離、アフェレーシス、親和性選択、パンニング、FACS、Hypaqueを用いる遠心分離などによって、分析の前に分離することができる。一旦、試料が得られれば、これを直接使用することができ、凍結させることができ、また、適切な培養培地の中で短期間維持することもできる。様々な培地を、細胞を維持するために使用することができる。試料は、任意の従来の手順(例えば、採血、穿刺、生検など)によって得ることができる。通常は、試料には、少なくとも約10個の細胞、より通常は少なくとも約10個の細胞、好ましくは、10個、10個、またはそれ以上の細胞が含まれるであろう。典型的には、試料はヒト患者に由来するであろうが、動物モデル(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、霊長類など))も使用が見出されている。
適切な溶液を、細胞試料の分散または懸濁に使用することができる。そのような溶液は、一般的には、低濃度(一般的には、5〜25mM)の許容される緩衝液と組み合わせて、ウシ胎児血清または他の自然界に存在している因子が通常は補充されている、平衡化塩溶液(例えば、通常の生理食塩水、PBS、Hank’s平衡化塩溶液など)であろう。従来の緩衝液としては、HEPES、リン酸塩緩衝液、乳酸塩緩衝液などが挙げられる。
細胞染色による分析には、従来法を使用することができる。正確な計数を提供する技術としては蛍光活性化細胞選別機が挙げられ、細胞選別機は、マルチカラーチャンネル、低角および鈍角の光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャネルなどの様々な程度の精巧さを有し得る。死細胞と結合する色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を使用することにより、細胞を死細胞について選択することができる。
親和性試薬としての抗体の使用が、具体的な目的である。通常は、これらの抗体は、分離に使用される標識と結合させられる。標識としては、電磁ビーズ(これは、直接分離することができる)、ビオチン(これは、支持体に結合させられたアビジンまたはストレプトアビジンとともに除去することができる)、蛍光色素(これは、蛍光活性化細胞選別機などとともに使用して、特定の細胞タイプの分離を容易にすることができる)が挙げられる。使用が見出されている蛍光色素としては、フィコビリタンパク質(例えば、フィコエリスリンおよびアロフィコシアニン)、フルオレセイン、ならびにテキサスレッドが挙げられる。多くの場合には、それぞれのマーカーについての別々の選別ができるように、抗体がそれぞれ異なる蛍光色素で標識される。
抗体は、細胞の懸濁液に添加され、利用することができる細胞表面抗原に結合するために十分な時間インキュベートされる。インキュベーションは、通常は、少なくとも約5分間、通常は約30分未満であろう。分離の効率が抗体の欠如よって制限されないように、反応混合物中に十分な抗体濃度を持たせることが所望される。適切な濃度は滴定によって決定される。その中で細胞が分離される培地は、細胞の生存性を維持する任意の培地であろう。好ましい培地は、0.1%〜0.5%のBSAを含むリン酸緩衝化生理食塩水である。様々な培地が市販されており、細胞の性質に応じて使用され得る。これには、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(dMEM)、ハンクスの塩基性塩溶液(Hank’s Basic Salt Solution)(HBSS)、ダルベッコの(Dulbecco‘s)リン酸緩衝化生理食塩水(dPBS)、RPMI、Iscove’s培地、5mMのEDTAを補充したPBSなどが含まれ、多くの場合には、ウシ胎児血清、BSA、HSAなどが補充される。その後、標識された細胞が、先に記載されたように、細胞表面マーカーの発現として定量され得る。
「診断」には、本明細書中で使用される場合は、一般的には、疾患または障害に対する被検体のかかりやすさの決定、被検体が現在疾患または障害に罹患しているかどうかの決定、疾患または障害に罹患している被検体の予後診断(例えば、ガン性の状態、ガンの病期、または治療に対するガンの反応性の同定)、およびセラメトリックス(therametrics)(例えば、治療の効果または有効性に関する情報を提供するために被検者の症状をモニタリングすること)の使用が含まれる。
用語「処置」「処置すること」、「処置する」などは、本明細書中においては、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを一般的にいうために使用される。その効果は、疾患もしくはその症状を完全にまたは部分的に予防することに関して予防的である場合があり、そして/あるいは疾患および/もしくはその疾患に帰因し得る有害な作用の部分的安定化もしくは完全な安定化または部分的治癒もしくは完全な治癒に関して、治療的である場合もある。「処置」には、本明細書中で使用される場合は、哺乳動物(特にヒト)における疾患のすべての処置が含まれ、これには:(a)その疾患または症状になる傾向があり得るがその疾患または症状を有するとはまだ診断されていない被験体において、その疾患または症状が生じるのを防ぐこと;(b)その疾患の症状を阻害すること(すなわち、その発症を阻止すること);あるいは、(c)その疾患の症状を軽減すること(すなわち、その疾患または症状の後退を引き起こすこと)が含まれる。
用語「個体」、「被験体」、「宿主」、および「患者」とは、本明細書中で互換可能に使用され、診断、処置、または治療が望まれる任意の哺乳動物被検体(特にヒト)をいう。
「宿主細胞」は、本明細書中で使用される場合は、組換えベクターまたは他の導入ポリヌクレオチドのレシピエントとして使用することができるかもしくは使用されている、単細胞実態として培養される微生物または真核生物細胞もしくは細胞株をいい、これには、トランスフェクトされたもとの細胞の子孫が含まれる。単細胞の子孫は、自然界で起こる突然変異、偶発的な突然変異、または意図的な突然変異の理由から、もとの親と形態に関して、ゲノムDNA相補物に関して、または全DNA相補物に関して、必ずしも完全に同一である必要がないことが理解される。
「治療標的」は、その活性が(例えば、発現、生物学的活性などの調節によって)調節されると、ガン性の表現型の調節をもたらすことができる遺伝子あるいは遺伝子産物をいう。全体を通じて使用される場合は、「調節」は、示される現象の増大または減少をいうように意味される(例えば、生物学的活性の調節は、生物学的活性の増大または生物学的活性の低下をいう)。
乳腺細胞のガン腫
乳ガンは、米国の女性において最も一般的な悪性腫瘍であり、8人に1人の女性がその生涯のうちに罹患する。乳ガンを発症するリスクは、突然変異したBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子を持っていることによって遺伝的素因があるような特定の場合に高い。「乳ガンのガン腫(breast cancer carcinoma)」は、本明細書中で使用される場合は、管(duct)または小葉(lobule)を内層している細胞から発生する上皮性腫瘍をいう。これらは、腺を起源とすることも多い。ガンは上皮内ガンへと分裂し、侵襲性のガンである。
上皮内ガンは、管または小葉内でのガン細胞の増殖であり、これには間質組織の侵襲は伴わない。しかし、上皮内ガンもまた侵襲性になる場合がある。乳ガンは局所的に浸潤し、最初は局所的なリンパ節、血流、またはそれらの両方を通じて広がる。転移性乳ガンは、体内のほぼ全ての臓器に作用する可能性があり、最も一般的には、肺、肝臓、骨、脳、および皮膚に作用する可能性がある。
乳腺の悪性腫瘍について起こりうる症状としては、線維性変化、しこりの存在、および異常な分泌物が挙げられる。そのような症状が起こった場合には、良性の病変をガンと区別するための試験が必要である。進行ガンが疑われる場合には、通常は最初に生検が行われる。生検は、針生検または切開生検であり得、あるいは、腫瘍が小さい場合には、これは切除生検である。
ほとんどの患者について、初期処置は外科手術であり、多くの場合には放射線治療を伴う。化学療法、ホルモン療法、またはそれらの両方が、腫瘍および患者の特徴に応じて、使用される場合もある。炎症性または進行した乳ガンについては、初期処置は、全身治療であり、炎症性の乳ガンについては、その後に、外科手術と放射線治療が行われる。外科手術は、通常は、進行したガンには有効ではない。
侵襲性のガンを持つ患者については、化学療法またはホルモン療法が、通常は、外科手術後すぐに開始され、数ヶ月間または数年間継続して行われる。これらの治療方法は、ほぼ全ての患者において再発を遅らせるかまたは再発を防ぎ、そして一部の患者においては生存期間を延ばす。併用化学療法のレジュメ(例えば、シクロホスファミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル;ドキソルビシンとシクロホスファミド)が、多くの場合に、単一の薬物よりも有効である。
ガンが転移している場合には、処置によっては平均寿命はわずかに3カ月〜6カ月しか延びないが、比較的毒性の強い治療法(例えば、化学療法)によって、症状を和らげ、そして生活の質を改善することができる。治療法の選択は、腫瘍のホルモン−受容体状態(hormone−receptor status)、疾患がない期間(診断から転移の発現まで)の長さ、転移部位の数、および罹患した臓器、ならびに患者の閉経状態に応じて様々である。症候性の転移性疾患を持つ患者のほとんどは、全身性のホルモン療法または化学療法で処置される。転移性乳ガンの処置のための細胞傷害性の薬物の一部は、カペシタビン、ドキソルビシン(そのリポソーム製剤を含む)、ゲムシタビン、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、およびビノレルビン)である。
マイクロRNAはガン幹細胞をプローブし、標的とする
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用されるマイクロRNA(miRNA)には、非腫瘍形成性の細胞と比較してBCSC中ではディファレンシャルに発現されるものが含まれる。マイクロRNAは、生産のための翻訳物の切断または抑制のために、タンパク質をコードする遺伝子のメッセージを標的化することによって、細胞の不可欠な機能を調節することにおいて重要な役割を果たす。特定の実施形態では、示される目的のmiRNAは、通常は、BCSCの中でダウンレギュレートされる。目的のヒトmiRNAのサブセットのヌクレオチド配列が表1に提供される。目的の他の配列は、図1Bに列挙される。miRNAには以下が含まれる:
Figure 2011511634
Figure 2011511634
miRNAには、開示される核酸と配列が同じではないもの、およびそれらの変異体も含まれる。変異体配列には、ヌクレオチドの置換、付加、または欠失が含まれ得る。
いくつかの実施形態では、その発現および調節が上記に示されたmiRNAのダウンレギュレーションによる影響を受ける標的タンパク質が、本発明の方法で使用されるために提供される。タンパク質のこのグループには、抗アポトーシスタンパク質(例えば、BCL−2ファミリーのメンバー)、転写調節因子、プロトオンコジーン、腫瘍遺伝子、および自己再生のプロセスに関係がある他のタンパク質が含まれる。標的タンパク質のいくつかは、以下にさらに詳細に記載される。
ZFHX1Bは、TGFβシグナル伝達経路に、およびE−カドヘリンの調節を通じて上皮間葉移行(EMT)のプロセスに関与している転写リプレッサーである。ZFHX1BおよびmiR−200bは、成体マウスの脳の中で局所的に同時発現される。miR−200bの過剰発現によっては、内因性のZFHX1Bの抑制が導かれ、miR−200bの阻害によっては、ZFHX1Bの抑制が軽減される。E−カドヘリンプロモーターの活性は、miR−200bとmiR−200cの両方によって調節されることが明らかにされている。
BCL−2ファミリーのメンバーは、プロアポトーシスプロセスまたは抗アポトーシスプロセスのいずれかを促進する。中でも、抗アポトーシスに関与しているものとしては、Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−w、Mcl−1、およびA1が挙げられる。これらが、ミトコンドリア膜の透過性を通じてアポトーシスを調節することは公知である。このタンパク質ファミリーの高レベルの発現は、発ガンおよび正常な幹細胞の自己再生に関係している。
開示されるmiRNAの標的であるタンパク質の別のグループは、ポリコームグループのタンパク質である。このファミリーに属しているタンパク質は、転写因子がDNA中のプロモーター配列に結合できないように、クロマチンを再構築することができる。ポリコームファミリーのタンパク質は、細胞が再生または老化のいずれかを受けると、重要な事象を調節する。1つのそのようなファミリーのメンバーはBMI1であり、そのmRNA標的配列は、種間で高度に保存されている。BMI1は、非腫瘍形成性のガン細胞の中でダウンレギュレートされることが明らかにされている。
miRNAの他の標的としては、造血系細胞の中、ならびに、増殖および分化の調節と関係があると考えられている組織の中で発現される、MYBプロトオンコジーンファミリーのメンバーが挙げられる。
Mycファミリーのタンパク質は、腫瘍形成と幹細胞遺伝子の調節に関係がある(例えば、NMYC)。インシュリン様成長因子結合タンパク質(例えば、IGFBP1)もまた、特定のガンと連鎖していることが明らかにされており、これもまたmiRNAによって調節され得る。
miRNAによって調節され得るタンパク質の別のファミリーは、腫瘍遺伝子のRasファミリーである。Ras腫瘍遺伝子は、シグナル伝達と細胞増殖を調節する。多くのガン腫の症例においては、K−rasタンパク質の蓄積は、根底にあるK−ras遺伝子の突然変異と相関関係がある。
フォークヘッドボックス(Forkhead box)01A(FOX01A)は、細胞の分化および細胞融合の初期段階に関与している1つの不可欠な転写因子である。それはまた、幹細胞の維持に重要な役割を果たす。
miRNAの調節の別の標的は、転写因子のSRY関連HMGボックス(SRY−related HMG−box)(SOX)ファミリーである。このファミリーは、胚発生の調節に、および細胞の運命の決定に関与している。このファミリーのメンバーであるSOX2は、他のタンパク質とのタンパク質複合体の形成の後に、転写活性化因子として働く。これはまた、細胞の修復およびDNAの組み換えにおいても役割を担う。
これらのポリヌクレオチド、ポリペプチド、およびそれらの断片には、本明細書中で議論されるような、ガンの診断と治療などに有用な抗体の免疫原としての、プローブおよびプライマー用の出発材料としての診断用プローブおよびプライマーを含む用途があるが、これらに限定されない。
核酸組成物には断片およびプライマーが含まれ、これらは、少なくとも約15bpの長さ、少なくとも約30bpの長さ、少なくとも約50bpの長さ、少なくとも約100bp、少なくとも約200bpの長さ、少なくとも約300bpの長さ、少なくとも約500bpの長さ、少なくとも約800bpの長さ、少なくとも約1kbの長さ、少なくとも約2.0kbの長さ、少なくとも約3.0kbの長さ、少なくとも約5kbの長さ、少なくとも約10kbの長さ、少なくとも約50kbの長さであり、通常は、約200kb未満の長さである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの断片はポリヌクレオチドのコード配列である。本明細書中で提供される配列の変異体または縮重変異体も含まれる。一般的には、本明細書中で提供されるポリヌクレオチドの変異体は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定された場合に、提供される配列の同じ大きさの断片と比較して、少なくとも約65%を超える、少なくとも約70%を超える、少なくとも約75%を超える、少なくとも約80%を超える、少なくとも約85%を超える、または少なくとも約90%を超える、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上(すなわち、100%)の配列同一性の断片を持つ。配列類似性を持つ核酸は、低いストリンジェンシーの条件(例えば、50℃および10×SSC(0.9Mの生理食塩水/0.09Mのクエン酸ナトリウム)下でのハイブリダイゼーションによって検出することができ、これらは、1×SSC中での55℃で洗浄が行われた場合にも結合したままである。配列同一性は、高いストリンジェンシーの条件(例えば、50℃以上、および0.1×SSC(9mMの生理食塩水/0.9mMのクエン酸ナトリウム)下でのハイブリダイゼーションによって決定することができる。ハイブリダイゼーションの方法と条件は当該分野で周知であり、例えば、米国特許第5,707,829号を参照のこと。提供されるポリヌクレオチド配列と実質的に同一である核酸(例えば、対立遺伝子変異体、その遺伝子の遺伝的に変化したバージョンなど)は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で提供されるポリヌクレオチド配列に結合する。
本明細書中に記載されるmiRNAに特異的なプローブは、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド配列を使用して作製することができる。プローブは、通常は、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列の断片である。プローブは、化学合成することができ、また、制限酵素を使用してより長いポリヌクレオチドから作製することもできる。プローブは、例えば、放射性タグ、ビオチニル化タグ、または蛍光タグで標識することができる。好ましくは、プローブは、本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列のうちの任意の1つの同定された配列に基づいて設計される。
ガン幹細胞の特性決定
ガン腫においては、ガン幹細胞の特性決定により、細胞のこの重要な集団(特に、自己再生する能力)を具体的に標的とする新規の処置の開発が可能となり、それによってさらに有効な治療が得られる。
ヒトのガン腫においては、自己再生能力と分化能力を兼ね備えた腫瘍形成性のガン細胞の亜集団が存在する。これらの腫瘍形成性の細胞は腫瘍の維持を担っており、また、多数の異常に分化する、腫瘍形成性ではない子孫を生じ、したがってガン幹細胞の基準を満たす。全ての腫瘍形成能力は、ガン細胞のCD44+Lineage−の亜集団に含まれる。これらの細胞は、腫瘍を形成するためには約10細胞の用量が必要であり、かつ、はるかに高い細胞用量のCD44−Lineage−の細胞による腫瘍形成を欠く腫瘍懸濁液と比較して、約10細胞、約5×10細胞、約10細胞からの用量で腫瘍の増殖を開始することができた。
乳ガン幹細胞(BCSC)は、特定のマーカーに関するそれらの表現型によって、および/またはそれらの機能的表現型によって同定される。いくつかの実施形態では、BCSCが、細胞を目的のマーカー(例えば、miRNAの存在または存在しないこと)に特異的な試薬と結合させることによって同定および/または単離される。分析される細胞は、最初は生存している細胞であり得、また、固定された細胞もしくは包埋された細胞でもあり得る。1つの実施形態では、リアルタイムPCR分析が、miRNAの発現を分析するために使用される。表1に示されるmiRNAの高いレベルは、細胞が非腫瘍形成性であるかまたは非侵襲性であることの指標であり得、一方、低いレベルはCSCの指標である。
BCSCは、表1に示されるmiRNAのそれらの発現レベルに基づいて同定および/または特性決定することができる。低い発現レベルまたは検出不可能な発現レベルは、ガン幹細胞の存在を示し得る。正常な乳房上皮細胞または非腫瘍形成性のガン細胞を、miRNAまたはタンパク質の発現レベルが比較される場合に、対照として使用することができる。
いくつかの実施形態では、目的のマーカーに特異的な試薬は、抗体またはポリヌクレオチドであり、これは、直接標識される場合があり、また間接的に標識される場合もある。特定の場合には、抗体は、開示される特異的なmiRNAによって調節されるタンパク質標的(例えば、SOX2)に特異的に結合するように方向性を持たせられる。
先に記載されたタンパク質またはポリヌクレオチドプローブは、例えば、試料中に本明細書中に提供されるポリヌクレオチドまたはその変異体のうちの任意の1つが存在することまたは存在しないことを決定するために使用することができる。これらの用途および他の用途が、以下にさらに詳細に記載される。
本明細書中に開示される様々なマーカーでの染色またはハイブリダイゼーションによっても、原発性腫瘍中のガン幹細胞のマイクロドメインの定義が可能である。そのようなマイクロドメインの存在は、原発部位および転移部位の中の扁平上皮細胞ガンの診断に有用である。この場合、そのようなマイクロドメインの数の増加が、より高い腫瘍形成能力を持つ腫瘍の指標となる。
ディファレンシャル細胞分析(differential cell analysis)
患者試料中のBCSCの存在は、ガン腫の病期または悪性度の指標となり得る。ガン細胞のサブタイプ、およびBCSCの位置を知ることは、診断および処置に大きく役立ち得る。加えて、BCSCの検出を、治療に対する反応をモニターするため、および予後診断に役立てるために使用することができる。予後因子は、処置プロトコールおよび強度の決定に役立つ。強く否定的な(strongly negative)予後の特性を持つ患者には、通常はより強い形態の治療が行われる。なぜなら、潜在的利点は処置の高い毒性を正当化すると考えられるからである。
BCSCの存在は、本明細書中に記載されるような幹細胞の表現型を持つ細胞を定量することによって決定することができる。細胞表面の表現型を決定することに加えて、特定の遺伝子の発現プロフィール、提供されるmiRNAおよび標的タンパク質の発現によって、または、インビボで(例えば、異種移植片モデルなどにおいて)自己再生して腫瘍を生じる能力のような機能的基準によってなどにより決定することができる「幹細胞」の特徴を持つ試料中の細胞を定量化することが有用であり得る。
使用することができる1つの方法は、本明細書中に開示されるmiRNA種についてのインサイチュハイブリダイゼーションである。短い長さのmiRNAの断片を仮定すると、ロックト核酸(locked nucleic acid)(LNA)を、個々のmiRNA種についての既知のポジティブ対照およびネガティブ対照と組み合わせて、その高い融点で、プローブとして使用することができる。融点は、最良のプローブ標識条件を決定するために、広い範囲にまたがって変えることができる。1個、2個、3個、または4個の不一致を含むミスマッチLNA(mismatched LNA)プローブからなるネガティブ対照もまた使用することができる。本明細書中に開示されるmiRNAの低い検出または検出不可能な検出は、BCSCの指標のうちの1つである。
診断または予後診断のためのmiRNA種の存在を決定するための別のアプローチは、RT−PCRをレーザーキャプチャーマイクロダイセクションと組み合わせることである。多重RT−PCR(逆転写PCR)を、組織試料中のmiRNA種の存在を決定するために使用することができる。
検出はまた、任意の公知の方法によって行うこともできる。これには、適切に標識されたポリヌクレオチドを使用する、インサイチュハイブリダイゼーション、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、および「ノーザン」またはRNAブロッティング、アレイ、マイクロアレイなど、あるいはそのような技術の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドについての様々な標識および標識方法が当該分野で公知であり、本発明のアッセイ方法において使用することができる。
患者の試料から得られたディファレンシャル前駆細胞分析(differential progenitor analysis)と参照のディファレンシャル前駆細胞分析との比較は、適切な演算プロトコール、AIシステム、統計比較などの使用によって行われる。正常な細胞、同様の罹患組織由来の細胞などによる参照の組織分析との比較により、疾患の病期の指標が提供され得る。参照の組織分析のデータベースを蓄積させることができる。本発明の方法により、臨床症状の発症前に腫瘍のより侵襲性の増殖の素因の検出がもたらされ、したがって、早期の治療的介入(すなわち、化学療法の開始、化学療法の用量の増大、化学療法用の薬物の選択の変更など)が可能となる。
特定の実施形態では、乳ガンのガン腫の診断および予後診断には、組織試料の細胞の染色が含まれ得る。特定の場合には、細胞の染色は、腫瘍内のガン細胞サブタイプの輪郭を描くことに役立ち、そして侵襲性のガン細胞の位置を決めることができる。細胞染色による分析には、当該分野で公知の従来法を使用することができる。正確な計数を行う技術としては、共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡、蛍光活性化細胞選別機が挙げられ、細胞選別機は、マルチカラーチャンネル、低角および鈍角の光散乱検出チャンネル、インピーダンスチャネルなどの様々な程度の精巧さを有し得る。死細胞と結合する色素(例えば、ヨウ化プロピジウム)を使用することにより、細胞を死細胞について選択することができる。
抗体試薬は、miRNAによって標的化されるタンパク質に特異的であり得、また、miRNA自体に特異的なポリヌクレオチドプローブもまた使用され得る。正常細胞または非腫瘍形成性の対照との比較においては、miRNA標的の高い発現、またはmiRNAの低い発現が、BCSCの存在を示す。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得、そしてトランスジェニック動物、免疫化された動物、不死化させられたヒトもしくは動物のB細胞、抗体もしくはT細胞受容体をコードするDNAでトランスフェクトされた細胞などによって生産され得る。抗体の調製、および特異的結合メンバーとしての使用についてのそれらの適性の詳細は、当業者に周知である。
分析は、インサイチュハイブリダイゼーション分析、または組織切片に対する抗体の結合に基づいて行われ得る。そのような分析により、腫瘍塊中の組織学的に異なる細胞の同定と、そのような細胞中で発現させられた遺伝子の同定が可能となる。ハイブリダイゼーションのための切片には、1つまたは複数の固形腫瘍の試料が、例えば、組織マイクロアレイ(例えば、West and van de Rijn(2006)Histopathology 48(1):22−31;およびMontgomeryら、(2005)Appl Immunohistochem Mol Morphol.13(1):80−4を参照のこと)を使用することによって含まれ得る。組織マイクロアレイ(TMA)には複数の切片が含まれる。選択されたプローブ(例えば、目的のマーカーに特異的な抗体)が、当該分野で公知の方法を使用して、標識され、組織切片に結合させられる。染色は、他の組織化学的または免疫組織化学的方法と組み合わせることができる。腫瘍の間質成分の中での選択された遺伝子の発現により、柔組織腫瘍との間質細胞の相関に対する類似性にしたがって細胞を特性決定することができる。
スクリーニングアッセイ
本発明の特定の実施形態では、miRNAまたはそれらの標的が、研究および薬物の開発に役立つ可能性がある化合物をスクリーニングする方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、スクリーニングは、ガン幹細胞の中で、提供されたmiRNAの発現を増大させるか、またはそれらのタンパク質標的の発現を低下させる化合物あるいは細胞性因子を発見するために行われる。これには、候補の薬剤を少量のmiRNAを発現する細胞集団またはmiRNAを発現しない細胞集団(例えば、幹細胞またはガン幹細胞集団)と混合すること、その後、候補によって生じた任意の調節作用を決定することが含まれ得る。これにはまた、特定のタンパク質標的の活性もしくは検出、生存性、毒性、代謝の変化、または細胞機能に対する影響についての細胞の試験も含まれ得る。
特に、ヒト細胞に対して活性がある薬剤についてのスクリーニングアッセイが目的である。多種多様なアッセイをこの目的のために使用することができ、これには、miRNAのタンパク質標的に対する結合;細胞増殖、分化および機能的活性の決定;因子の生産などについての免疫アッセイが含まれる。具体的には、アッセイには、miRNAによって調節されることが本明細書中で同定されたタンパク質の発現の分析が含まれ得る。
スクリーニングは、インビトロで培養された細胞、新しく単離された細胞、遺伝子修飾された細胞もしくは動物、精製されたmiRNA、miRNAによって調節される精製されたタンパク質などを使用して行われ得る。1つの実施形態では、スクリーニングが、miRNA標的タンパク質の活性を抑え込むことに関する候補の薬剤の活性を決定するために行われる。そのような薬剤は、精製されたタンパク質を候補の薬剤と接触させることによって試験され得る。あるいは、細胞は、これらのタンパク質のそれぞれの転写および翻訳の調節のために、候補の薬剤と接触させられ得る。そのようなアッセイでは、本明細書中で開示されるmiRNAは、これらのタンパク質の発現を協調的に調節することについて、ポジティブ対照とすることができる。化合物のスクリーニングによって、miRNAによって調節されるタンパク質またはmiRNA自体の活性を調節する薬剤が同定される。特異的miRNAの活性または発現を増大させる候補の化合物はさらに、ガンの生物学について理解され得、ガン治療の開発に重要である。特に、ヒト細胞に対して毒性が低い薬剤のスクリーニングアッセイが目的である。
用語「薬剤(agent)」は、本明細書中で使用される場合は、虚血関連遺伝に相当する虚血関連キナーゼの生理学的機能を変化させるかまたはそれを模倣する能力を持つ任意の分子(例えば、タンパク質または医薬品)を記載する。一般的には、複数のアッセイ混合物を、様々な濃度に対する様々な反応を得るために、様々な薬剤濃度で同時に実行することができる。典型的には、これらの濃度のうちの1つがネガティブ対照、すなわち、ゼロ濃度または検出レベルを下回る濃度とされる。
候補の薬剤には、多数の化学的クラスが含まれるが、典型的にはこれらは、有機分子、好ましくは、50ダルトンより大きく約2500ダルトン未満の分子量を持つ小さい有機化合物である。候補の薬剤には、タンパク質との構造相互作用(特に水素結合)に必要な官能基を含まれ、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基(好ましくは少なくとも2つの化学基)が含まれる。候補の薬剤にはまた、多くの場合、上記官能基の1つ以上で置換された炭素環もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造が含まれる。候補の薬剤はまた、特に、生体分子(ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログ、またはそれらの組み合わせを含む)でもあることが明らかにされている。
候補の薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む、多種多様な供給源から得られる。例えば、多種多様な有機化合物および生体分子の無作為の合成および特異的合成のための多数の手法(無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む)を利用することができる。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーを利用することができ、また、容易に生成することができる。加えて、天然のもしくは合成によって生成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手法によって容易に修飾することができ、組み合わせライブラリーを生成するために使用することができる。公知の薬理学的薬剤については、構造アナログを得るために、特異的または無作為に化学的修飾(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など)を行うことができる。試験用の薬剤は、例えば、ライブラリー(例えば、天然の産物のライブラリーまたは組み合わせライブラリー)から得ることができる。多数の様々なタイプの組み合わせライブラリーと、そのようなライブラリーを調製するための方法は記載されており、これには例えば、PCT国際公開WO93/06121、同WO95/12608、同WO95/35503、同WO94/08051、および同WO95/30642(これらのそれぞれが引用により本明細書中に組み入れられる)が含まれる。
様々な他の試薬がスクリーニングアッセイに含まれ得る。これらには、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進する、および/または非特異的相互作用もしくはバックグラウンドの相互作用を減少させるために使用される、塩、中性のタンパク質(例えば、アルブミン、界面活性剤など)のような試薬が含まれる。アッセイの効率を改善する試薬(例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤など)が使用される場合もある。複数の成分の混合物が、必要な結合を提供する任意の順序で添加される。インキュベーションは、任意の適切な温度で、通常は、4℃〜40℃の間で行われる。インキュベーション時間は最適活性について選択されるが、迅速な高スループットのスクリーニングを容易にするようにもまた最適化され得る。典型的には、0.1時間〜1時間の間で十分であろう。
特定のスクリーニング方法には、miRNAによって標的化されるタンパク質(例えば、ZFHX1B、MYBプロトオンコジーン、およびIGFBP1)の発現を調節する化合物についてのスクリーニングが含まれる。そのような方法には、一般的に、試験化合物が複数のタンパク質を発現する1つ以上の細胞と接触させられる、細胞をベースとするアッセイを行う工程、その後、標的化されたタンパク質の発現レベルの変化を検出する工程が含まれる。いくつかのアッセイは、腫瘍形成性の特性または非腫瘍形成性の特性について富化させられた細胞を用いて行われる。
発現は、多数の様々な方法で検出することができる。細胞中での遺伝子の発現レベルは、細胞中で発現されたmRNAを、その遺伝子の転写物(またはそれに由来する相補性核酸)と特異的にハイブリダイズするプローブでプロービングすることによって決定することができる。プロービングは、細胞を溶解させ、ノーザンブロットを行うことによって、または細胞を溶解させずにインサイチュハイブリダイゼーション技術を使用することによって行うことができる。あるいは、タンパク質は、細胞溶解物がタンパク質に特異的に結合する抗体でブローブされる免疫学的方法を使用して検出することができる。
他の細胞をベースとするアッセイはレポーターアッセイである。これらのアッセイのうちの特定のものは、検出可能な産物をコードするレポーター遺伝子に作動可能であるように連結されたプロモーターを含む異種核酸構築物を用いて行われる。多数の様々なレポーター遺伝子を利用することができる。いくつかのレポーターは固有に検出することができる。そのようなレポーターの一例は、緑色蛍光タンパク質であり、これは、蛍光検出器で検出することができる蛍光を発する。他のレポーターも検出可能な産物を生じる。多くの場合、そのようなレポーターは酵素である。例示的な酵素レポーターとしては、β−グルクロニダーゼ、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;Alton and Vapnek(1979)Nature 282:864−869)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼ(Tohら(1980)Eur.J.Biochem.182:231−238;およびHallら(1983)J.MoI.Appl.Gen.2:101)が挙げられるが、これらに限定されない。
これらのアッセイでは、レポーター構築物を持つ細胞が試験化合物と接触させられる。それに結合することによってプロモーターを活性化させるか、または目的のmiRNAを生産するカスケードを誘発するかのいずれかである試験化合物によって、検出可能なレポーターの発現が生じる。特定の他のレポーターアッセイは、発現を活性化させる転写制御エレメントを含む異種構築物を持つ細胞を用いて行われる。ここでは、さらに、レポーターの発現を活性化させる転写制御エレメントに結合するか、またはレポーターの発現を活性化させる転写制御エレメントに結合する薬剤の形成を誘発する薬剤を、レポーターの発現と関係があるシグナルの生成によって同定することができる。
発現または活性のレベルは、ベースラインの値と比較することができる。上記に示されるように、ベースラインの値は、対照集団(例えば、健常な個体)の代表である対照試料または統計値についての値であり得る。発現レベルはまた、対照として提供されるポリヌクレオチドまたはタンパク質を発現しない細胞についても決定することができる。そのような細胞は、通常は、それ以外は試験細胞と実質的に遺伝的に同じである。
多種多様なタイプの細胞をレポーターアッセイにおいて利用することができる。真核生物細胞を使用することができ、そしてこれらは典型的には、組み換え体である核酸構築物を持つ細胞の作製に利用される任意の細胞であり得る。例示的な真核生物細胞としては、酵母、および様々な高等真核生物細胞(例えば、COS、CHO、およびHeLa細胞株)が挙げられるが、これらに限定されない。
様々な対照を、観察された活性が信頼性のあるものであることを確実にするために行うことができる。これには、レポーター構築物を持たない細胞を用いて、またはレポーター構築物を持つ細胞を試験化合物と接触させないことによって同時に反応を行うことが含まれる。化合物はまた、以下に記載されるようにさらに確認することもできる。
上記スクリーニング方法のうちのいずれかによって最初に同定された化合物および細胞性物質は、明らかな活性を確認するためにさらに試験することができる。そのような方法の基本的な形式には、最初のスクリーニングの際に同定された候補を、ヒトについてのモデルとされる動物に対して投与する工程、その後、特異的miRNAまたは標的タンパク質の発現が変化したかどうかを決定する工程が含まれる。確認実験に利用される動物モデルは、一般的には哺乳動物である。適切な動物の具体的な例としては、霊長類、マウス、およびラットが挙げられるが、これらに限定されない。
動物モデルにおいて活性を変化させるリード候補の能力だけではなく、侵襲性のガンに対する防御を提供する能力も試験するための特定の方法が設計される。そのような方法においては、リード化合物がモデル動物(すなわち、動物、典型的には、ヒト以外の哺乳動物)に投与される。動物は、その遺伝的構造によって、または環境要因によって侵襲性のガン腫を発症する素因があるか、あるいはすでにガン腫を有しているかのいずれかである。侵襲性のガンを縮小させる所望される作用をもたらすことができる化合物またはタンパク質物質が、さらなる実験の候補である。
本明細書中に記載されるスクリーニング方法によって同定された活性のある試験薬剤を、アナログ化合物の合成のためのリード化合物とすることができる。典型的には、リード化合物の電子配置と分子配座に類似する電子配置と分子配座を持つアナログ化合物が合成される。アナログ化合物の同定は、自己無撞着場(SCF)分析、配置間相互作用(CI)分析、および通常の様式の動力学解析のような技術の使用を通じて行うことができる。これらの技術を実行するためのコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、Reinら(1989)Computer−Assisted Modeling of Receptor−Ligand Interactions(Alan Liss,New York)を参照のこと。
ガンの処置
本発明によってはさらに、ガン細胞の増殖を低下させるための方法が提供される。この方法により、本明細書中に提供されるような特異的マーカーまたは複数のマーカーの組み合わせを持つガン細胞の数の減少、ガン細胞中でディファレンシャルに発現される遺伝子の発現の低下、miRNAの発現レベル変更、またはガン関連ポリペプチドのレベルの低下および/もしくは活性の低下がもたらされる。この方法にはさらに、ガンの増殖を低下させる作用を生じるであろうポリヌクレオチドまたはポリペプチドを導入する工程が含まれる。例えば、表1に示されるmiRNAをコードする遺伝子構築物を、細胞中のmiRNAレベルを増大させるために、ガン幹細胞に導入することができる。
用語miRNAは、通常は、提供される成熟配列に関して、提供される配列の任意のものを意味し得る。当該分野で公知であるように、天然のマイクロRNAと実質的に同じ活性を持つ合成分子、例えば、化学的特性が変化した合成オリゴヌクレオチドが、用語「マイクロRNA」の範囲に含まれる。
本発明の方法の実施においては、限定的ではないが、200c−141クラスター中のマイクロRNA(miR200c、miR141);200b−200a−429クラスター中のマイクロRNA(miR200b、miR200a、miR429);および182−96−183クラスター中のマイクロRNA(miR182、miR96、miR183)に特異的な有効量のmiR薬剤が、標的細胞に導入される。ここでは、標的細胞に薬剤を導入するための任意の従来のプロトコールを使用することができる。標的細胞は、通常は、ガン腫であり、これには乳ガンが含まれ、さらに具体的には、乳ガン幹細胞、例えば、CD44CD24−/lowlineageである細胞の表現型を持つ細胞が含まれる。
本発明の方法は、予防目的または治療目的のために使用される。本明細書中で使用される場合は、用語「処置」は、疾患の予防と既存の症状の処置の両方をいうように使用される。例えば、自己免疫疾患の予防は、明白な疾患の発症の前の薬剤の投与によって行われ得る。進行中の疾患の処置(この場合、処置によって患者の臨床症状が安定させられるかまたは改善される)が具体的な目的である。
当該分野で公知であるように、miRNAは、約20nt〜約25ntの範囲、例えば、約21nt〜約24ntの範囲、例えば、22nt、または23ntの長さの一本鎖RNA分子である。標的miR181aは、導入されるmiR181a薬剤に完全に相補的である場合も、そうではない場合もある。完全に相補的ではない場合は、miRNAとその対応する標的ウイルスゲノムは、少なくとも実質的には相補的であり、結果として、miRNAの長さ(約20nt〜約25ntの範囲)全体に存在する不一致の量は約8ntを超えることはなく、特定の実施形態では、約6ntまたは5ntを超えることはなく、例えば、4nt、3nt、2nt、または1ntであろう。
miRNA薬剤は、標的化された細胞の中で標的化されたmiRNAのレベルを増大させるか、または低下させ得る。薬剤が阻害性物質である場合は、これは、標的化される細胞中に存在するmiRNAの量を減少させることによって標的miRNAの活性を阻害する。この場合、標的細胞は、インビトロで存在する場合も、またインビボで存在する場合もある。「〜の量を減少させる」によっては、標的細胞中の標的miRNAのレベルまたは量が、対照(すなわち、本発明の方法によっては処置されない同じ標的細胞)と比較して、少なくとも約2倍、通常は少なくとも約5倍、例えば、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上減少させられることが意味される。
miRNA薬剤によって、細胞中の標的化されるmiRNAの活性が増大させられる場合には、miRNAの量は、標的化される細胞中で増大させられる。この場合、標的細胞はインビトロで存在する場合も、またインビボで存在する場合もある。「〜の量を増大させる」によっては、標的細胞中の標的miRNAのレベルまたは量が、対照(すなわち、本発明の方法によっては処置されない同じ標的細胞)と比較して、少なくとも約2倍、通常は少なくとも約5倍、例えば、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上増大させられることが意味される。
miRNA阻害剤によっては、標的miRNAの活性を阻害する薬剤が意味される。阻害剤は、多種多様な異なる機構によって標的miRNAの活性を阻害することができる。特定の実施形態では、阻害剤は、標的miRNAに結合し、そうすることにより、その活性を阻害するものである。代表的なmiRNA阻害剤としては、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられるがこれらに限定されない。目的の他の薬剤としては、自然界に存在している目的の低分子化合物または合成の目的の低分子化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これには、多数の化学的クラスが含まれるが、これらは通常は有機分子であり、好ましくは、50ダルトンより大きく約2500ダルトン未満の分子量を持つ小さい有機化合物である。候補の薬剤には、タンパク質との構造相互作用(特に水素結合)に必要な官能基が含まれ、典型的には、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基(好ましくは少なくとも2つの化学基)が含まれる。候補の薬剤にはまた、多くの場合、上記官能基の1つ以上で置換された炭素環構造もしくは複素環構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香族構造が含まれる。候補の薬剤はまた、特に、生体分子(ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログ、またはそれらの組み合わせを含む)でもあることが明らかにされている。そのような分子は、他の方法と一緒に、適切なスクリーニングプロトコールを使用することによって同定することができる。
アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然の核酸からの化学的修飾を有する合成ODN、またはRNAとしてアンチセンス分子を発現する核酸構築物であり得る。アンチセンス配列は、標的化されるmiRNAに相補的であり、その発現を阻害する。1つのアンチセンス分子が投与される場合も、またアンチセンス分子の組み合わせが投与される場合もある、この場合、組み合わせには複数の異なる配列が含まれ得る。
アンチセンス分子は、適切なベクター中にある標的miRNA配列の全てまたは一部の発現によって生成され得、この場合、転写の開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として生成されるような方向で行われる。あるいは、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的には、少なくとも約7ヌクレオチド、通常は少なくとも約12ヌクレオチド、さらに通常は、少なくとも約20ヌクレオチドの長さであり、約25ヌクレオチドを超えず、通常は約23ヌクレオチド〜22ヌクレオチドの長さであろう。この場合、この長さは、交差反応性が存在しないことなどを含む、阻害の効率、特異性によって制御される。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知の方法によって化学的に合成され得る(Wagnerら(1993)前出、およびMilliganら、前出を参照のこと)。好ましいオリゴヌクレオチドは、それらの細胞内安定性および結合親和性を増大させるために、天然のホスホジエステル構造から化学的に修飾される。骨格、糖またはヘテロ環塩基の化学的性質を変化させる多数のそのような修飾は文献に記載されている。
骨格の化学的性質についての有用な変化は、ホスホロチーエート;ホスホロジチオエート(この場合、架橋していない酸素の両方が硫黄で置換されている);ホスホロアミデート;アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェートである。アキラルのホスフェート誘導体としては、3’−O’−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネート、および3’−NH−5’−O−ホスホロアミデートが挙げられる。ペプチド核酸は、ペプチド結合を持つリボースホスホジエステル骨格全体に置き換わる。糖の修飾もまた、安定性および親和性を高めるために使用される。デオキシリボースのα−アノマーが使用され得、この場合、塩基は、天然のβ−アノマーに対して反転させられる。リボース糖の2’−OHを変化させて、2’−O−メチルまたは2’−O−アリル糖を形成ことができる。これにより、親和性を損なうことなく、分解に対する抵抗性が提供される。複素環塩基の修飾では、適正な塩基対合が維持されなければならない。有用な置換の一部としては、デオキシチミジンについてのデオキシウリジン:デオキシシチジンについての5−メチル−2’−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2’−デオキシシチジンが挙げられる。5−プロピニル−2’−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2’−デオキシシチジンは、それぞれ、デオキシチミジンおよびデオキシシチジンについて置換された場合には、親和性および生物学的活性を増大させることが示されている。
目的のアンチセンス分子としては、例えば、引用により本明細書中に具体的に組み入れられる、Krutzfeldtら(前出)に記載されているような、antagomir RNAが挙げられる。特定の「薬物様」の特性を持つように操作された(例えば、安定性のための化学修飾および送達のためのコレステロールの結合)低分子干渉二本鎖RNAs(siRNA)が、インビボでの内因性遺伝子の治療的サイレンシングを行うことが示されている。インビボでmiRNAをサイレンシングさせるための薬理学的アプローチを開発するために、「antagomirs」と呼ばれる、化学修飾された、コレステロールが結合させられた、miRNAに相補的な一本鎖RNAアナログが開発された。antagomir RNAは、標準的な固相オリゴヌクレオチド合成プロトコールを使用して合成することができる。RNAはコレステロールに結合させられ、1つ以上の位置でさらにホスホロチオエート骨格を持つことができる。
特定の実施形態では、RNAi薬剤も目的である。代表的な実施形態では、RNAi薬剤はプレマイクロRNA分子として知られているマイクロRNAの前駆体分子を標的化する。RNAi薬剤によっては、RNA干渉の機構によってマイクロRNAの発現を調節する薬剤が意味される。本発明の1つの実施形態で使用されるRNAi薬剤は、小さいリボ核酸分子(本明細書中では、干渉性リボ核酸とも呼ばれる)、すなわち、オリゴリボヌクレオチドであり、これは、二本鎖構造(例えば、互いにハイブリダイズした2つの異なるオリゴヌクレオチド)で存在するか、または一本鎖構造オリゴヌクレオチド(これは、二本鎖構造を生じるための小さいヘアピンの形態をとる)である。オリゴリボヌクレオチドによっては、約100ntを超えない長さであり、通常は、約75ntを超えない長さのリボ核酸が意味される。特定の実施形態においては、この長さは70nt未満である。RNA薬剤が互いにハイブリダイズした2つの異なるリボ核酸の二本鎖構造(例えば、siRNA)である場合は、二本鎖構造の長さは、典型的には、約15bp〜30bp、通常は約15bp〜29bpの範囲であり、この場合、特定の実施形態では、約20bp〜29bp、例えば、21bp、22bpの長さが具体的な目的である。RNA薬剤がヘアピンの形態で存在する一本鎖リボ核酸の二本鎖構造(すなわち、shRNA)である場合は、ヘアピンのハイブリダイズした部分の長さは、典型的には、siRNAタイプの薬剤について上記で提供されたものと同じであるか、または4ヌクレオチド〜8ヌクレオチド長い。この実施形態のRNAi薬剤の重量は、典型的には、約5000ダルトンから約35000ダルトンの範囲であり、多くの実施形態では、少なくとも約10000ダルトンであり、約27500ダルトン未満、多くの場合は、約25000ダルトン未満である。
細胞中でmiRNAの発現を増大させること、例えば、分化を誘導することが所望される場合は、薬剤はマイクロRNA自体であり得、これには、アンチセンスに関して上記に記載された修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば、コレステロール結合、ホスホロチーエート結合など)の任意のものが含まれる。あるいは,標的化される生命体に関連するプレmiRNA(ヘアピン)配列を含むmiRNAを発現するベクターを利用することができる。
発現ベクターを、細胞に標的遺伝子を導入するために使用することができる。そのようなベクターは、一般的には、核酸配列の挿入を提供するための、プロモーター配列の近くに配置された好都合の制限酵素部位を持つ。転写開始領域、標的遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含む転写カセットが調製され得る。転写カセットは様々なベクター(例えば、プラスミド;レトロウイルス(例えば、レンチウイルス);アデノウイルスなど)に導入することができる。この場合、ベクターは、細胞内で一時的に、または安定に、通常は、少なくとも約1日、より通常は少なくとも数日から数週間維持することができる。
発現カセットでは、一般的に、外因性の転写開始領域、すなわち、通常存在する染色体中のT細胞受容体と関係があるプロモーター以外のプロモーターが使用されるであろう。プロモーターは、宿主細胞、特に、カセットによって標的化される宿主細胞の中で機能的である。プロモーターは、インビトロで組み換え方法によって、または適している宿主細胞による配列の相同統合の結果として導入され得る。プロモーターは、転写可能なmRNA転写物を生じるように、自己抗原のコード配列に対して作動可能であるように連結される。発現ベクターは、好都合に、自己抗原配列の挿入を容易にするプロモーター配列の近くに配置された制限酵素部位を持つであろう。
転写開始領域(構成的である場合も、また誘導性である場合もある)、自己抗原配列をコードする遺伝子、および転写終結領域を含む発現カセットが調製される。この発現カセットは、様々なベクターに導入することができる。目的のプロモーターは、誘導性である場合も、また構成的である場合もあり、通常は構成的であり、ワクチンのレシピエント細胞中で高レベルの転写を提供するであろう。プロモーターは、レシピエント細胞タイプにおいてのみ活性がある場合も、または、多くの様々な細胞のタイプにおいて広く活性である場合もある。哺乳動物細胞用の多くの強いプロモーターが当該分野で公知であり、これには、β−アクチンプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスLTRなどが含まれる。プロモーターは、エンハンサーと会合させられている場合も、また会合させられていない場合もある。エンハンサーは、自然界では特定のプロモーターと会合している場合があり、また、様々なプロモーターと会合している場合もある。
終結領域は、コード領域に対して3’側に提供される。終結領域は、可変領域ドメインと自然界において会合している場合があり、また、様々な供給源に由来する場合もある。多種多様な終結領域を、発現に悪影響を及ぼすことなく使用することができる。様々な操作をインビトロで行うことができ、また、適切な宿主(例えば、E.coli)の中で行うこともできる。それぞれの操作の後、得られる構築物をクローニングし、ベクターを単離し、DNAをスクリーニングし、そして構築物の正確さを確実にするために、配列決定することができる。配列は、制限酵素分析、配列決定などによってスクリーニングすることができる。
上記に示されるように、miRNA薬剤を、任意の好都合なプロトコールを使用して標的細胞(単数または複数)に導入することができる。この場合、プロトコールは、標的細胞がインビトロにあるか、またはインビボにあるかに応じて変わるであろう。多数のオプションを、細胞培養物、組織、臓器、もしくは胚中のような、細胞または細胞の集団にdsRNAを送達するために利用することができる。例えば、RNAを、細胞内に直接導入することができる。例えば、マイクロインジェクションによる投与(例えば、Zernicka−Goetzら(1997)Development 124:1133−1137;およびWiannyら(1998)Chromosoma 107:430−439を参照のこと)のような様々な物理的方法が、通常は利用される。細胞への送達のための他のオプションとしては、細胞膜を透過化させること(permeabilizing)およびdsRNAの存在下でのエレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション、またはリン酸カルシウムのような化学物質を使用するトランスフェクションが挙げられる。多数の確立されている遺伝子治療技術はまた、細胞にdsRNAを導入するためにも利用することができる。ウイルス粒子にウイルス構築物を導入することによって、例えば、細胞への発現構築物の効率的な導入、およびその構築物によってコードされるRNAの転写を行うことができる。
例えば、阻害剤は、標的遺伝子を含む宿主生命体に注射されるように直接供給される。阻害剤は、細胞に直接(すなわち、細胞内に)導入することができ;また、腔もしくは間質腔に、生命体の循環の中に、細胞外に導入することができ、経口などによっても導入することができる。経口での導入ための方法としては、RNAの生命体の食事との直接の混合が挙げられる。核酸の物理的な導入方法としては、細胞への直接の注射、またはRNA溶液の生命体への細胞外注射が挙げられる。薬剤は、細胞1個あたり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入され得る。さらに高い用量(例えば、細胞1個あたり少なくとも5コピー、10コピー、100コピー、500コピー、または1000コピー)の薬剤によって、さらに効率的な阻害が得られる場合がある。より低い用量もまた、特定の用途については有用であり得る。
リポソームが利用される場合は、エンドサイトーシスと関係がある細胞表面膜タンパク質に結合する物質が、T細胞に対してリポソームを標的化させ、取り込みを促進させるために、リポソームに付着させられ得る。付着させることができるタンパク質の例としては、T細胞に結合するキャプシドタンパク質またはその断片、循環においてインターナライゼーションを受けるT細胞上の細胞表面タンパク質に特異的に結合する抗体、およびT細胞内での細胞内局在化を標的とするタンパク質が挙げられる。遺伝子のマーキングおよび遺伝子治療のプロトコールは、Andersonら(1992)Science 256:808−813に概説されている。
特定の実施形態では、流体力学的核酸投与プロトコールが使用される。薬剤がリボ核酸である場合は、以下に詳細に記載される流体力学的リボ核酸投与プロトコールが具体的な目的である。薬剤がデオキシリボ核酸である場合は、Changら、J.Virol.(2001)75:3469−3473;Liuら、Gene Ther.(1999)6:1258−1266;Wolffら、Science(1990)247:1465−1468;Zhangら、Hum.Gene Ther.(1999)10:1735−1737:およびZhangら、Gene Ther.(1999)7:1344−1349に記載されている流体力学的デオキシリボ核酸投与プロトコールが目的である。
目的のさらなる核酸送達プロトコールとしては、以下を含む興味深い米国特許に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない:米国特許第5,985,847号および同第5,922,687号(これらの開示は引用により本明細書中に組み入れられる);WO/11092;Acsadiら、New Biol.(1991)3:71−81;Hickmanら、Hum.Gen.Ther.(1994)5:1477−1483;およびWolffら、Science(1990)247:1465−1468など。
薬剤の性質に応じて、活性薬剤(単数または複数)を、標的細胞中でmiRNAの所望される調節を生じることができる任意の好都合な手段を使用して宿主に投与することができる。したがって、薬剤は、治療的投与のための様々な処方物の中に取り込ませることができる。さらに具体的には、本発明の薬剤は、適切な薬学的に許容される担体もしくは希釈剤との混合によって薬学的組成物に処方することができ、そして、固体、半固体、液体、または気体の形態の調製物(例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、およびエアゾール)に処方することもできる。このような薬剤の投与は様々な方法で行うことができ、これには、経口投与、口腔投与、直腸投与、非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、気管内投与などが含まれる。
用語「単位投薬形態」は、本明細書中で使用される場合は、ヒトおよび動物被検体についての単位投与量として適している物理的に独立した単位をいい、個々の単位には、薬学的に許容される希釈剤、担体、もしくは媒体と一緒に、所望される効果を生じるために十分な量に計算された予め決定された量の本発明の化合物が含まれる。本発明の新規の単位投薬形態についての詳細は、使用される特定の化合物、および目的とされる効果、および宿主中でのそれぞれの化合物に付随する薬物力学に応じて様々である。
薬学的に許容される賦形剤(例えば、媒体、アジュバント、担体、または希釈剤)は、一般に容易に利用することができる。さらに、薬学的に許容される補助物質(例えば、pH調節剤、緩衝剤、張度調整剤、安定化剤、湿潤剤など)も一般に容易に利用することができる。
当業者は、服用レベルが、特定の化合物の機能、送達媒体の性質などに伴って変化し得ることを容易に理解するであろう。所定の化合物についての好ましい投与量は、様々な手段によって当業者が容易に決定することができる。上記に記載されたような、有効量のmiRNA薬剤の哺乳動物細胞への導入によって、標的遺伝子(単数または複数)の発現の調節が生じ、それによりガン腫の腫瘍形成活性の変更が生じ、したがって、ガン幹細胞を標的化する方法を用いてガンを処置する手段が提供される。
「ガン細胞の増殖を低下させること」には、ガン細胞の増殖を低下させること、およびガン細胞になる非ガン性の細胞の発生率を低下させることが含まれるが、これらに限定されない。ガン細胞の増殖の低下が得られたかどうかは、以下を含むがこれらに限定されない任意の公知のアッセイを使用して容易に決定することができる:[H]−チミジンの取り込み;一定時間にわたり細胞数をカウントすること;BCSCと関係があるマーカーを検出するおよび/または測定することなど。
本発明により、ガンを処置するための方法が提供される。この方法には、一般的には、ガン細胞の増殖を低下させる物質を、ガン細胞の増殖を低下させ、ガンを処置するために十分な量で、その必要がある個体に投与する工程が含まれる。物質またはその物質の特定の量がガンの処置に有効であるかどうかは、ガンについての様々な公知の診断アッセイのうちの任意のものを使用して評価することができる。公知の診断アッセイとしては、生検、X線造影検査、CATスキャン、および個体の血液中でのガンと関係がある腫瘍マーカーの検出が挙げられるが、これらに限定されない。これらの物質は、全身投与することも、局所投与することもでき、通常は、全身投与される。
物質(例えば、ガン細胞の増殖を低下させる化学療法剤)は、ガン細胞に対して標的化させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明により、ガン細胞に対する薬物の送達方法が提供される。この方法には、薬物−ポリペプチドまたは薬物−ポリヌクレオチドの複合体を被検体に投与する工程が含まれる。ここでは、複合体は、miRNAによって調節されるポリペプチドまたはmiRNA自体に特異的であり、薬物は、ガン細胞の増殖を低下させるものである。その様々なものが当該分野で公知であり、上記で議論されている。標的化は、miRNAまたはmiRNAによって調節されるポリペプチドに特異的な抗体に対して薬物をカップリング(例えば、薬物−抗体複合体を形成させるための、共有もしくは非共有のいずれかである、直接またはリンカー分子を介する連結)させることによって行うことができる。複合体を形成させるための薬物のカップリング方法は当該分野で周知であり、本明細書中で詳細に説明される必要はない。
本明細書中で引用される個々の刊行物は、全ての目的のためのその全体が引用により本明細書中に組み入れられる。
本発明が、記載される特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、および試薬に限定されず、それらを変えることができることが理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的だけのためのものであり、そして添付の特許請求の範囲だけによって限定されるであろう本発明の範囲を限定するようには意図されないこともまた理解されるべきである。
本明細書中で使用される場合は、文脈により明確に否定されない限り、単数形「a」、「and」、および「the」には複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「細胞」との言及には、複数のそのような細胞が含まれ、「培養物」との言及には、1つ以上の培養物と、当業者に公知のその等価物が含まれるなどである。文脈により明確に否定されない限りは、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
(実施例1)
乳ガン幹細胞の遺伝子特性の同定
本発明者らは、BCSCを、それらのCD44およびCD24の発現に基づいて、CD44CD24−/lowLineageであるとして以前に同定した。細胞表面マーカーの発現によってESALineage(CD64、CD31、CD140b、CD45)と定義された正常な乳房上皮細胞を、3つの乳房縮小試料(breast reduction sample)から単離した。マイクロアレイ分析により、本発明者らは、6人の患者(3人は原発性ガン性胸水(primary malignant pleural effusion)および免疫不全マウスの中で固形腫瘍異種移植片として増殖させた3人の乳房の腫瘍)と、3人の乳房縮小術から導かれた正常なヒトの乳房上皮細胞から単離したBCSC間でディファレンシャルに発現される遺伝子を探した。186種類の遺伝子のセットを、全ての試料を通じてt検定によるP値<0.005を有する、2倍の発現レベルの差に基づいて選択した。誤って棄却された真の帰無仮説の割合(False discovery rate)(FDR)は、Benjamini−Hochberg手順を使用して制御した。上記基準によると、FDRは、リストの中の遺伝子については5%未満であった。予想したとおり、この186種類の遺伝子のガン幹細胞遺伝子特性は、遺伝子発現プロファイリングによって正常な乳房上皮細胞から乳ガン幹細胞を区別するには十分であった。本発明者らはまた、異種移植片由来の3つのBCSC試料と1つの正常な乳房上皮試料の中で、14種類の無作為に選択した遺伝子のリアルタイムPCRを行うことによって、これらの186種類の遺伝子のディファレンシャルな発現を確認した。リアルタイムPCRによって個々の腫瘍試料中でみられた遺伝子発現パターンは、マイクロアレイデータにおいて観察されたパターンと大体一致していた。試験した3つの腫瘍においては、本発明者らは、14種類の遺伝子全てについて一致する発現パターンを観察し、そして3番目の腫瘍においては、14種類の遺伝子のうちの9種類の遺伝子の発現パターンがアレイデータと一致していた(引用により具体的に本明細書中に組み入れられる、Liu,M.F.Clarke,M.F.Association of a Gene Signature from Tumorigenic Breast Cancer Cells with Clinical Outcome,The New England Journal of Medicine,356:217−226,2007を参照のこと)。
10人の患者の腫瘍に由来するBCSCおよび非腫瘍形成性のガン細胞を、ABIアレイを使用して500種類を超えるmiRNAの発現についてさらにスクリーニングした。リアルタイムRT−PCRを、これらの結果を確認するために使用した(表2)。
マイクロRNAの発現の結果に基づいて、miRNAが、不可欠なBCSC機能の調節において重要な役割を果たすことが明らかになった。miR−182、miR−182、miR−200a、miR−200b、miR−200cからなるmiRNAのグループは、乳ガン幹細胞の中では一貫してダウンレギュレートされた。これらのmiRNAのうちの5種類全ての発現が、胎生期ガン細胞(EC細胞)中では完全に失われたが、これらは、正常な胚性幹細胞(ES細胞)の中では発現されていた。これらのデータは、乳ガンにおいて幹細胞様の特性を持つ、腫瘍を開始する細胞集団の存在を示している。ここでは、miRNAを、診断標的または治療標的として使用することができる。
次いで、これらのmiRNAの標的を研究した。m200bとm200cとが、同じ標的を共有していると考えられる。m200bについて確認されている1つの標的は、E−カドヘリンの発現を抑制するタンパク質であるZFHX1Bであり、これは、正常な幹細胞生物学でもEMTでも役割を担っている可能性がある。BCL−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質の複数のメンバーもまた、報告されている標的である。BCL−2ファミリータンパク質の未制御の発現は、発ガン、および正常な幹細胞の自己再生と関係がある。
これらのmRNAのうちの4種類(m183、m200a、m200b、およびm200c)は、BMI1を標的化することができる。BMI1は、多くの組織に由来する正常な幹細胞と、少なくとも一部のガン幹細胞の両方の自己再生において役割を担っている。重要なのは、本発明者らが、多くの患者の腫瘍の中で見られる非腫瘍形成性のガン細胞においてBMI1タンパク質がダウンレギュレートされることを見出したことである。BMI1 mRNA中の標的配列は種間で高度に保存されており、このことからこれは、おそらく真の標的である。
これらのmiRNAについての他の興味深い標的は、MYBプロトオンコジーン、NMYC、IGFBP1、KRAS、FOX01A、およびSox2である。MYB遺伝子とNMYC遺伝子は、正常な幹細胞と悪性幹細胞の再生と関係がある。MYBは、最近、乳ガンの腫瘍形成に関係があるとされた。FOX01Aは、幹細胞の維持において役割を担っている。これらの遺伝子のうちのいくつかは、マイクロアレイ上のCSCによって過剰発現される。これらの遺伝子のうちのいくつかは、Affymetrixアレイによって測定したように、BCSCによって2倍〜14倍ディファレンシャルに発現される。
(実施例2)
ホルマリン固定された、パラフィンに包埋された(FFPE)腫瘍検体についての予測および予想ツールとして使用することができるマーカーの開発。BCSC中でディファレンシャルに発現されるとして本明細書中で同定された配列を、ホルマリン固定した、パラフィンに包埋した(FFPE)組織中での腫瘍幹細胞の量と位置を決定するためのマーカー(インサイチュハイブリダイゼーションプローブ)を作製するために使用した。全ての乳ガン生検と切除検体を組織学的試験によって分析した。ここでは、ホルマリン固定後にパラフィン中に包埋した材料の薄片を使用した。そのようなものとして、国中の外科病理学研究所(surgical pathology department)の保存記録には、腫瘍幹細胞の組織学的実験に使用することができる、極めて多数の腫瘍検体と、これらが臨床結果において果たす役割およびアジュバント療法に対する応答のコレクションがある。
臨床結果が明らかになっている、ホルマリン固定したパラフィンに包埋した(FFPE)腫瘍試料を含む組織マイクロアレイ(TMA)を、これらの知見の臨床的有意性を決定するために使用した。正常な間質細胞、乳房CSC、および腫瘍中の他のガン細胞を含む、個々の腫瘍細胞の集団による予測マーカーまたは予想マーカーの発現を決定した。
インサイチュハイブリダイゼーションプローブ(ISH)を、パラフィンに包埋した組織中での遺伝子の発現を評価するために開発した。ISHプローブをおよそ10日で作製した。これらのプローブは、一定の成功率を有していた。ISH技術は、St CroixらおよびIacobuzio−Donahueらによって記載されている。これは、400ヌクレオチドから600ヌクレオチドの範囲の長さの長いRNAプローブを使用し、tyramideに基づくシグナルの増幅、それに続いて行われる色素形成性基質または蛍光基質のいずれかでの現像によって行われる。これらの試薬は、パラフィンに包埋された、ホルマリンで固定された組織上で十分に働く。ISHプローブには、対照としてのセンス鎖またはミス−センスプローブを含むことができる、従来の抗血清またはモノクローナル抗体を上回る利点がある。選択したプローブについて、RT−PCRを、発現プロフィールを確認するために、乳ガンの凍結検体由来のレーザーキャプチャーダイセクションした(laser capture dissected)材料について行った。
TMAを、1つのTMAブロックの中に提示することができる500例までの乳ガンを用いて構築した。乳房のTMAには以下を含めた:1)正常な乳房組織のマイクロアレイ;2)注釈つきの乳ガン組織のマイクロアレイ。これらの症例についての臨床経過観察が得られるであろう。3)複数の乳ガンの間での可変性、および患者特異的要素(個々の腫瘍特異的因子に対して)が個々のガン検体の中に存在する腫瘍幹細胞の数を決定する程度を特異的に試験するために、TMAを、2人の別々の初期乳ガンの患者(breast cancer primaries)から乳ガン材料を用いて作製した。4)乳ガン中の腫瘍幹細胞の数に対する転移プロセスの影響を実験するために、20人の患者に由来する材料が提示される組織のマイクロアレイを作製した。それぞれの患者について、原発性の乳房の腫瘍を、1つ以上のリンパ節転移と、脳、肺、または骨のような離れた部位からの転移とともに示した。5)原発性の侵襲性乳ガン由来の検体を含む乳ガン組織のマイクロアレイ。ここでは、結果のデータを全ての患者から得ることができ、平均15.4年(6.3年〜26.6年の範囲)の臨床経過観察もまた使用することができた。臨床経過観察には、全生存率、疾患特異的生存率、および最初の再発までの時間が含めた。
組織切片中でのmiRNA種の存在の決定。複数のmiRNA種が、腫瘍幹細胞のマーカーとして有用である。miRNA種についてのインサイチュハイブリダイゼーションを行う際には、ロックト核酸(LNA)を使用した。これは、RNAよりもはるかに高い融点を持つ。LNAプローブを使用して、組織マイクロアレイを、それぞれのmiRNA種についての既知のポジティブ対照およびネガティブ対照(RT−PCRによって証明されている)を用いて試験し、そして実験において融点を広範囲で系統的に変化させた。1個、2個、3個、または4個の不一致を含むミスマッチLNAプローブからなるネガティブ対照を使用した。
様々な成分の中のmiRNA種(腫瘍細胞対間質細胞)の存在を決定するための第2のアプローチは、RT−PCRとレーザーキャプチャーマイクロダイセクションとの組み合わせである。わずか25個の細胞を使用するだけで、信頼性を持って約500種類のmiRNA種の量を決定するために十分な材料を、直線的な増幅後に得ることができる。この細胞数は、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって容易に得ることができる。これらの乳ガンTMAのmiRNAマーカーでの分析により、最良のプローブのレトロスペクティブ様式での決定が可能となる。
(実施例3)
CSCを標準的な細胞毒性を有する化学療法に耐性にする標的経路。外因性のmiRNAまたは合成のshRNAを、CSCを処置に対して耐性にする経路を標的化させるために使用した。3つの異なる公開されている方法を、shRNAを送達するために使用した:リポソーム送達(Sorensenら(2003)J Mol Biol 327,761−6を参照のこと)、shRNAのアテロコラーゲンとの結合(Takeshitaら(2005)Proc Natl Acad Sci USA 102,12177−82を参照のこと)、およびshRNAとモノクローナル抗体/プロタミン複合体との結合(Songら(2005)Nat Biotechnol 23,709−17を参照のこと)。第3の方法では、ガン細胞を特異的に標的化することができる抗体を利用した。後者の場合には、CSCに特異的に結合する抗体または全てのガン細胞を標的化する抗体を試験した。フローサイトメトリーを、特定の異種移植片腫瘍中のCSCまたは全てのガン細胞を標的化するであろう抗体を同定するために使用した。
6人の異なる患者の腫瘍から確立させた異種移植片腫瘍を、shRNAの全身送達が、化学療法(サイトキサン、タキソール、およびアドリアマイシン)または放射線治療を補強するかどうかを決定するために試験した。異種移植片腫瘍を確立させ、これらが0.5cmの大きさに達したら、マウスを、リポソーム、アテロコラーゲンとの結合体、またはモノクローナル抗体/プロタミン複合体のうちの1つによって送達される細胞傷害性薬剤のうちの1つと、実験用shRNAまたは対照shRNAのいずれかとで処置した。腫瘍容積を処置後4ヶ月間臨床経過観察した。個々の実験グループには、少なくとも10匹のマウスを含め、実験は3回繰り返した。加えて、対照shRNAウイルスまたは実験用shRNAウイルスのいずれかで処置した5匹のマウス由来の腫瘍を摘出し、shRNAがインビボで目的のタンパク質をダウンレギュレートさせることを確認するために分析した。
BMI1、MYB、PTEN、STAT、CSCによってディファンシャルに発現されるmiRNAのような経路、および他の経路を標的化するshRNAを、乳ガン幹細胞の生存性と自己再生に対する影響を決定するために送達した。これらの実験は、上記に記載したように行った。例えば、CSC中で過少発現されるmiRNAを、治療効力を決定するために全身送達した。
(実施例4)
マイクロRNAクラスターのダウンレギュレーションは正常な乳腺幹細胞および悪性の乳腺幹細胞と関係がある
ヒトの乳ガンには、正常な成体幹細胞と胚性幹細胞によく似た特性を持つ明らかなガン幹細胞の集団(BCSC)が含まれる。正常な幹細胞と悪性の幹細胞に共通する自己再生および分化についての分子調節因子はこれまでには記載されていない。本発明者らは、37種類のmiRNA(miRNA)が、BCSCと非腫瘍形成性のガン細胞によってディファレンシャルに発現されることを見出した。3つのクラスター(miR−200c−141、miR−200b−200a−429、およびmiR−183−96−182)は、正常な乳腺幹細胞中でも、ヒトの乳ガン幹細胞でも、そして胎生期ガン細胞中でもダウンレギュレートされていた。胚性幹細胞の自己再生と分化の調節因子として知られているSOX2の発現は、miR−200cによって調節されていた。加えて、miR−200cとmiR−183の発現は、インビトロでは、胎生期ガン細胞の増殖を抑制し、インビボでは、それらの腫瘍形成能力を破壊し、そしてインビトロでは、乳ガン細胞のクローン形成能力を阻害した。これらの3種類のmiRNAクラスターのダウンレギュレーションにより、乳ガン幹細胞と正常な幹細胞生物学とをつなぐ分子リンクが提供される。
この実験では、本発明者らは、正常なマウスの乳腺幹細胞、ヒトの乳ガン幹細胞、およびヒトの胎生期ガン細胞の中で特異的にダウンレギュレートされるmiRNAの3つのクラスターを同定した。miR−200cとmiR−183の発現(これらのmiRNAは、ダウンレギュレートされるクラスターのうちの2つに位置する)は、インビトロの胎生期ガン細胞の増殖を抑制し、インビボでのそれらの腫瘍形成性を阻害し、そして幹細胞/前駆細胞の維持を損なうことによって乳ガン細胞のクローン形成能力を強く抑制した。本発明者らの結果は、これらの3種類のmiRNAクラスターのダウンレギュレーションが、正常な幹細胞と悪性の幹細胞のいずれにおいても、幹細胞の自己再生経路を調節することを示している。
結果
ヒトの乳ガン細胞および胎生期ガン細胞のmiRNAプロファイリング。miRNAが正常な胚性幹細胞および組織幹細胞の自己再生と分化に関与している重要な調節因子であるので、本発明者らは、ヒトCD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞(TG細胞)と残りのlineageの非腫瘍形成性の乳ガン細胞(NTG細胞)との間で、miRNA発現プロフィールを比較した。多くの乳ガン患者では、CD44CD24−/lowlineageのガン細胞の小さい集団が、残りのlineageの乳ガン細胞と比較して、免疫不全マウスにおいて腫瘍形成性が高かった。CD44CD24−/lowlineageの細胞は、自己再生および分化のような幹細胞のような特性を有しており、そしてわずか200個の細胞から原発性腫瘍を再生させることができるが、残りのlineageの非腫瘍形成性ガン細胞は、10000個でも再生させることができなかった。
多重リアルタイムPCRを使用して、3つのヒトの乳房の腫瘍から単離したTG細胞とNTG細胞中で460種類のmiRNAの発現を測定した。本発明者らは、37種類のmiRNAが、分析した3つの試料全てにおいて、NTG細胞と比較してTG細胞の中でアップレギュレートされていたかまたはダウンレギュレートされていたことを明らかにした。(図1A)。これらの37種類のディファレンシャルに発現されるmiRNAの発現を、その後、ヒトTG細胞とNTG細胞の全部で11個のセットにおいて測定し、この分析によって、これらの37種類のmiRNAが実際にディファレンシャルに発現されていることを確認した(図1B)。3種類のmiRNAのクラスター(染色体12p13上にあるmiRNA−200c−141クラスター、染色体1p36上にあるmiR−200b−200a−429クラスター、および染色体7q32上にあるmiR−183−96−182クラスター)は、ヒトの乳ガンTG細胞中では一貫してダウンレギュレートされていた(図1C)。例えば、miR−200a、miR−200b、およびmiR−200cの発現は、NTG細胞と比較してTG細胞中では2倍〜218倍低かった。
CD44CD24−/lowlineageの細胞は、正常な乳腺幹細胞または初期前駆細胞の悪性の対応物であると考えられる。同様に、胎生期ガン細胞は、多能性幹細胞が持つ多くの特性を持つ、生殖系列の細胞から生じる悪性細胞である。したがって、これらのmiRNAの発現を、Tera−2胎生期ガン細胞中で試験した。特に、Tera−2細胞は、個々のmiRNAの検出可能なレベルの発現ができないか、またはその発現レベルがちょうど検出レベルであるかのいずれかであった(図1D)。発現レベルを乳ガン細胞と比較すると、Tera−2細胞は、乳ガンNTG細胞が発現していたよりも、これらのmiRNAの全てを少なくとも4倍少なく発現していた。miRNAシード配列は、そのmRNA標的に対してmiRNAを方向づけさせる。注目すべきことに、miR−200c−141クラスターとmiR−200b−200a−429クラスターは、原則として同じシード配列(miR−200c/miR−200b/miR−429 miRNAおよびmiR−200a/miR−141 miRNA)を持つmiRNAの2つのグループによって形成されていた(図1C)。この類似性と観察された発現パターンを前提とすると、乳ガンCD44CD24−/lowlineageの細胞およびTera−2胎生期ガン細胞の中でクラスターを形成した3つのmiRNAの全てのダウンレギュレーションが、ガン細胞の幹細胞機能を維持するためには重要である。
miRNAの発現は正常な乳腺の発育と乳ガン幹細胞の分化をつなぐ。正常な組織幹細胞とのガン細胞の機能的類似性は、正常な幹細胞の自己再生および/または分化の経路の活性化が、悪性腫瘍と関係がある特性の多くの原因となっていることを示唆している。したがって、本発明者らは、初期乳腺幹細胞および前駆細胞と、より分化した乳腺上皮前駆細胞を、乳ガンTG細胞とNTG細胞とによってディファレンシャルに発現されるmiRNAの発現について試験した。マウスの乳腺上皮の細胞の階層化(cellular hierarchy)はいまだに部分的にしか理解されていないが、CD24medCD49fhighCD29highSca−1マウスの乳腺脂肪体細胞には、インビボで完全な乳腺を再生させる能力を持つ乳腺幹細胞が多く含まれている。本発明者らは、乳腺幹細胞を多く含むCD24medCD49fhighCD45CD31CD140aTer119細胞(MRU)と、より分化した乳腺上皮前駆細胞を多く含むCD24highCD49flowCD45CD31CD140aTer119細胞(MaCFC)を収集した(図2A)。本発明者らは、ヒトの乳ガンTG細胞中でダウンレギュレートされる、クラスターを形成する3種類のmiRNAの全てが、MaCFCと比較して、マウスMRU細胞中でもダウンレギュレートされることを明らかにした(図2B)。これは、乳ガンTG細胞およびNTG細胞との間でのこれらの3種類のmiRNAクラスターのディファレンシャルな発現が、乳腺細胞の正常な発生経路の重要な構成要素であることを示している。
miR−200cはSOX2を標的化する。miR−200bc/429についての可能性のある分子標的を、TargetScan 4.2によって予想した。可能性のある標的のうち、本発明者らは、SOX2に焦点を定めた。なぜなら、これは、合理的な標的の指標である非常によく保存されているヌクレオチドを持ち、他のタイプの幹細胞(胚性幹細胞を含む)の自己再生および分化の調節に不可欠であることが公知であるからである。SOX2の3’UTRを調節するmiR−200cの能力を、ルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価した。miR−200cおよびmiR−429を発現せず、そして検出できるほどのmiR−200bのレベルを発現することがほとんどない、HEK293T細胞を使用した。SOX2の3’UTR標的部位をpGL3対照ベクターに、ルシフェラーゼミニ遺伝子の下流にクローニングした。HEK293T細胞を、pGL3ルシフェラーゼベクター、pRL−TK Renillaルシフェラーゼベクター、およびmiR−200c前駆体RNAで同時トランスフェクトした。本発明者らは、ルシフェラーゼ活性がSOX2については60%抑制されたこと(図3B);さらに、miRNA−200bc/429シード領域の突然変異がSOX2の発現を抑制するmiRNAの能力を無効にすることを観察し、このことは、SOX2の標的配列の特異性を明らかに示していた(図3Aおよび3B)。
内因性のSO2Xタンパク質を調節するmiR−200cの能力もまた試験した。これを行うために、本発明者らは、Tera−2細胞に、miR−200cを発現するレンチウイルスを感染させた。感染させた細胞をフローサイトメトリーによって収集した。ウェスタンブロッティングは、SOX2タンパク質の発現が、miR−200cを発現する細胞中では低かったことを示していた(図3C)。対照的に、ネガティブ対照であるmiR−30aとmiR−183は、SOX2タンパク質の発現を調節しなかった。その後、本発明者らは、原発性のヒトの乳ガン試料から収集した腫瘍形成性のCD44CD24−/lowlineageの細胞(TG細胞)およびNTG細胞中でのSOX2の発現を試験した。図3Dに示すように、SOX2タンパク質の発現は、TG細胞と比較して、乳ガンNTG細胞の中では明らかに低かった。
miR−200cおよびmiR−183は、インビトロでガン細胞の増殖を抑制する。miRNAの同じクラスターが、正常な乳腺幹細胞、腫瘍形成性のCD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞、および胎生期ガン細胞の中でダウンレギュレートとされたことの観察は、これらのmiRNAが、自己再生および/または分化のような重要な幹細胞機能の調節因子であることを暗に意味している。実際、miR−200ファミリーのmiRNAが、E−カドヘリンの転写リプレッサーであるZEB1およびZEB2の発現を抑制することによってEMT(上皮間葉移行)を妨げることが最近示された。EMTは、正常な幹細胞とガン細胞の両方に関係がある幹細胞特性である。これらのmiRNAのいくつかの発現が細胞に影響を与えるかどうかを決定するために、本発明者らは、細胞を、miR−200cまたはmiR−183を発現するレンチウイルスに感染させた。miR−200cレンチウイルスまたはmiR−183レンチウイルスのいずれかに感染させた細胞の形態は、これらが分化したことを示唆していた(図4A)。実際、抗ニューロン特異的クラスIIIβチューブリン(Tuj−1)抗体での染色は、miR−200cに感染したTera−2細胞が、初期有糸分裂後ニューロンマーカーであるTuj1抗原を選択的に発現することを示しており、このことは、miRNAが神経分化を誘導したことを示唆していた(図4B)。
本発明者らは、対照のレンチウイルスではなく、miR−200cレンチウイルスまたはmiR−183レンチウイルスのいずれかに感染させたTera−2細胞が、増殖の遅れを示したことを明らかにした(図4C)。miR−200cによる増殖の遅れはmiR−183よりも強く、観察された神経分化の強さを反映していた(図4Bおよび4C)。マウスのMMTV−Wnt−1マウス乳房腫瘍は、内腔および筋上皮細胞と、拡大した乳腺幹細胞プールの両方からなる。本発明者らは、MMTV−Wnt−1マウス乳ガン細胞を、miR−200cを発現するレンチウイルスまたはmiR−183を発現するレンチウイルスに感染させた。miR−183に感染させた細胞またはmiR−200cに感染させた細胞によるコロニー形成はほぼ完全に抑制され、それにより、対照のレンチウイルスに感染させた細胞と比較すると、miR−200cについては96%、およびmiR−183については94%、コロニー数が減少した(図5A)。
正常な乳腺幹細胞/前駆細胞(MRU、乳腺再構築単位(mammary repopulating units))およびMMTV−Wnt−1乳ガン幹細胞は、筋上皮細胞サイトケラチンCK14と上皮細胞サイトケラチンCK8/18の両方を発現する混合型である。成熟上皮細胞は、CK8/18またはCK19のいずれかを発現するが、CK14は発現しない。筋上皮細胞はCK14を発現するが、CK8/18またはCK19は発現しない。対照のウイルスに感染させた乳ガン細胞は大きなコロニーを形成し、CK14およびCK8/18を発現し、CK19を発現する細胞を時折含む(図5B)が、miR−183を発現するウイルスまたはmiR−200cを発現するウイルスに感染させた細胞は、低レベルのCK14を示す細胞の小さい凝集だけを形成した(図5B)。これらの結果は、miR−183に感染させた乳ガン細胞およびmiR−200cに感染させた乳ガン細胞が、前駆細胞の表現型を失い、そしてmiR−183およびmiR−200cの発現によってインビトロでの乳ガン幹細胞の分化が誘導されたことを示していた。
miR−200cおよびmiR−183による胎生期ガン細胞の腫瘍形成性の抑制。インビボでのガン細胞の増殖に対するmiR−200cおよびmiR−183の作用の有意性を決定するために、Tera−2胎生期ガン細胞を、miR−200cを発現するレンチウイルスまたはmiR−183を発現するレンチウイルス、あるいは対照のレンチウイルスに感染させ、そして感染させた細胞をフローサイトメトリーによって収集した。その後、感染させたTera−2細胞を、免疫不全NOD/SCIDマウスに皮下注射した。注目すべきことは、2カ月後に、本発明者らは、対照のレンチウイルスに感染させた50,000個のTera−2細胞が3匹の注射したマウスのうちの3匹において腫瘍を形成し、一方、miR−200cに感染させたTera−2細胞を注射した3匹のマウスのうちの0匹、miR−183に感染させたTera−2細胞を注射した3匹のマウスのうちの0匹が腫瘍を有していたことを観察したことであった(図6)。
本明細書中で報告した結果は、miR−200c−141、miR−200b−200a−429、およびmiR−183−96−182が、正常な乳腺幹細胞中、ヒトの乳ガン幹細胞中、および胎生期ガン細胞中でダウンレギュレートされるたこと、ならびに、SOX2の発現がmiR−200cによって調節されたことを明らかに示していた。SOX2は、HMG−ドメインタンパク質ファミリーの1つのメンバーであり、OCT4と複合体を形成してDNAに結合し、転写を調節し、そして胚性幹細胞および神経幹細胞のようないくつかの系統特異的幹細胞の自己再生および分化のプロセスを指示する。本明細書中で、本発明者らは、miR−200cおよびmiR−183の発現もまた、インビトロでの胎生期ガン細胞の増殖を抑制し、それらの神経分化を誘導し、インビボでのそれらの腫瘍形成能力を失わせ、そしてインビトロでの乳ガン細胞のクローン形成能力を阻害することを観察した。したがって、ディファレンシャルなmiRNAの発現についての本発明者らのデータにより、ガン幹細胞と胚性幹細胞との間での分子リンク、ならびに、多くの患者の腫瘍中のCD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞の亜集団によって提示される腫瘍形成性の増大についての分子的解釈が提供される。
本発明者らの分析により、ダウンレギュレートされた5種類のディファレンシャルに発現されるmiRNAが、同じシード配列を共通して持っており、なおも異なる染色体上の2つのクラスターにマップされることが明らかとなった。miRNAのこれらのファミリーの機能的重複性は、単一変異がそれらの標的の調節を乱さないことを保証することによって、幹細胞の恒常性を維持するため、および腫瘍を防ぐための絶対安全な機構を反映し得る。miRNAによるSOX2の調節は興味深いものである。実際、SOX2はOCT4と同様に、ESCの自己再生と多能性の維持に不可欠であるだけではなく、多能性幹細胞(iPSC)になるように誘導される体細胞の再プログラミングにおける重要な因子でもある。これらの観察を、報告されている乳ガンに対するSOX2のリンクとともに考慮すると、共通する広範囲にわたる調節遺伝子のネットワークが、ガン幹細胞および胚性幹細胞の自己再生と分化の両方の根底にある。
これらの実験で記載したmiRNAプロフィールは、致命的なガンおよび正常な幹細胞の機能の調節におそらく関係しているであろう多くの他の因子を疑いようもなく指摘している。Targetscan4.2のような予測プログラムは、幹細胞にとって機能的に重要である多くの他の遺伝子がおそらく存在することを示唆している。これらは、miRNA−200c−141、miR−200b−200a−429、およびmiR−183−96−182によって調節される。
本発明者らのスクリーニングにおいて同定した他のmiRNAもまた、おそらく、腫瘍形成性に重要である。例えば、本発明者らのデータ分析はまた、miR−155が、他のガン細胞と比較して、乳ガン幹細胞において高度に発現されることを示していた。特に、miR−155は、B細胞リンパ腫において腫瘍形成性BIC遺伝子の遺伝子座の産物として最初に同定され、そして高い発現レベルは、肺腺ガン患者の予後不良と関係がある。異常な増殖と骨髄異形成は、miR155の発現が血流の中で維持される場合に見られる。したがって、miR−155の発現の増大もまた、それらの非腫瘍形成性の対応物と比較してこれらの細胞の増殖を有意に増大させ得る乳ガン幹細胞の特徴である。
EMTは、多くの組織および臓器の中での細胞の移動を調節し、正常な乳腺幹細胞の機能および悪性の乳腺幹細胞の機能と関係がある、広範囲にわたる発生プログラムである。最近の実験では、SNAI2を含むEMT経路の成分の発現は、CD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞の中で最も高いことが示された。ここでは、本発明者らは、miR−200ファミリーのmiRNAがヒトの乳房の腫瘍形成性のCD44CD24−/lowlineageの細胞の中で強く抑制されたことを示した。miRNAのmiR−200ファミリーは、EMT誘導因子として作用するZEB1およびZEB2の翻訳を抑制する。ZEB1およびZEB2の3’UTR中にある複数の部位が、miR−200ファミリーのmiRNAによって標的化され、これには、E−カドヘリンの発現をアップレギュレートさせ、そしてEMTを阻害するZEB1およびZEB2の抑制が伴う。まとめると、これらの知見は、正常な乳腺幹細胞と悪性の乳腺幹細胞の両方においてEMTプロセスを制御することによって、幹細胞機能の重要な調節因子としてのmiR−200ファミリーのmiRNAを示している。
要約すると、本発明の知見により、正常な乳腺幹細胞/前駆細胞、CD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞、および胎生期ガン細胞の間での強い分子リンクが提供される。miR−200a、miR−200b、miR−200c、およびmiR−141が、ヒトの乳ガン細胞のサブセットおよび正常な乳腺幹細胞のいずれにおいても有意にダウンレギュレートされるという事実、ならびに、miR−200cが自己再生遺伝子を調節するという事実は、正常な幹細胞とCD44CD24−/lowlineageの乳ガン細胞が、自己再生およびEMTのような幹細胞機能を調節する共通する分子機構を持つことを示唆している。
実験手順
細胞培養。ヒトの胚腎臓(HEK)293T細胞を、10%のFBS、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および250ng/mLのアンホテリリンB(Invitrogen)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持し、5%のCO、37℃でインキュベートした。ヒト胎生期ガン腫細胞株Tera2(HTB−106)はATCCから購入し、15%のウシ胎児血清を補充した、100単位/mlのペニシリンG、100μg/mlのストレプトマイシン、および250ng/mlのアンホテリシンBを含む改変McCoy’s培地(Invitrogen)中で増殖させ、5%のCO、37℃でインキュベートした。
単細胞懸濁液の調製およびフローサイトメトリー。原発性乳ガンの検体は、スタンフォード大学のResearch Ethics BoardsおよびカリフォルニアにあるCity of Hope Cancer Centerによって承認されているように、同意が得られた患者から得た。腫瘍検体を機械によって解離させ、200U/mlのLiberase Blendzyme 2(Roche)とともにインキュベートした。細胞の染色とフローサイトメトリーを、先に記載したように行った。マウスの正常な乳房の検体を機械によって解離させ、200U/mlのLiberase Blendzyme 4(Roche)とともにインキュベートした。細胞の染色とフローサイトメトリーを先に記載したように行った。
胎生期ガン細胞のNOD/SCIDマウスへの移植。NOD/SCIDマウス(Jackson laboratory)を、1%〜3%のイソフルランを使用して麻酔した。胎生期ガン細胞をMatrigel(BD Biosciences)中に懸濁し、NOD/SCIDマウスに皮下注射した。全ての実験を、スタンフォード大学のAdministrative Panel on Laboratory Animal Careの承認の下で行った。
多重リアルタイムPCRアッセイ。CD44CD24−/lowlineageの腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞と残りの系統の非腫瘍形成性のヒトの乳ガン細胞の11のセットを、先に記載したように、BD FACSAria選別機を使用して単離した。miRNAプロファイリングを、多重リアルタイムPCRによって行った。RNAの調製のために、100個の腫瘍形成性のCD44CD24−/lowlineageのヒトの乳ガン細胞と他の非腫瘍形成性のlineageのガン細胞を、Trizol(Invitrogen)に二重選別し、RNAを製造業者のプロトコールにしたがって抽出した。グリコーゲン(Invitrogen)を沈殿のための担体として使用した。RT、プレ−PCR、および多重リアルタイムPCRを、先に記載したように行った。簡単に説明すると、多重逆転写反応を、466セットの第2鎖合成プライマーを用いて行った。その後、多重プレ−PCR反応を、466セットの正方向プライマーとユニバーサル逆方向プライマーを用いて行った。多重プレ−PCR産物を8倍に希釈し、384ウェル反応プレートにアリコートし、そして個々のmiRNAの量を個別に測定した。個々のプライマーおよびプローブには、miRNA中の相当に小さい配列の相違でも増幅され、検出されるように、それぞれの反応の特異性を高めるために、個々のmiRNAに特異的に割り当てたzipコード配列を含めた。このアプローチは、成熟miRNAの検出に特異的であり、RT−PCRおよびマイクロアレイ上でのmiRNA測定値が一致しているので、信頼できる。結果を、小さい核RNAの発現(C/Dボックス96AおよびC/Dボックス84)の量によって正規化した。2つの集団の間でのmiRNAの発現の差は以下のように計算した;ΔCt=正規化したCt(腫瘍形成性の細胞)−正規化したCt(非腫瘍形成性の細胞)。
プラスミドベクターと突然変異誘発。pGEM−T−Easyベクター(Promega)のマルチクローニング部位をPCRによって増幅させ、pGL3対照ベクター(Promega)のXbaI部位(pGL3−MC)に挿入した。SOX2 3’UTRの553bpの断片(NM_003106.2の1620位〜2172位に相当する)を、鋳型としてHEK293T細胞のcDNAを使用してPCRによって増幅し、pGEM−T−Easyベクターにクローニングした。SOX2 3’UTR産物を、pGL3−MCベクターのルシフェラーゼ遺伝子の3’側にクローニングした。全ての生成物を配列決定した。SOX2の3’UTR中にある推定されるmiR−200c標的配列の突然変異を、QuikChange Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を使用して作製した。
ルシフェラーゼレポーター分析。HEK293T細胞を、トランスフェクションの前日に、48ウェルプレート中に1×10細胞/ウェルで播種した。トランスフェクションは全て、製造業者の説明書にしたがってLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて行った。細胞を、ヒトSOX2の3’UTRを含む320ngのpGL3ルシフェラーゼ発現構築物、40ngのpRL−TK Renillaルシフェラーゼベクター(Promega)、および50nMのhsa−miR−200c前駆体(Ambion)でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ活性を、Dual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を使用して測定し、Renillaルシフェラーゼ活性に対して正規化した。実験は全て、3回の別々の実験からプールしたデータを用いて2連で行った。
レンチウイルスの生産。ステムループ構造と、上流と下流の隣接する200塩基対〜300塩基対のゲノム配列を含むmiR−200cおよびmiR−183の配列を、鋳型としてHEK293T細胞またはMCF7細胞のcDNAを使用してPCRによってクローニングした。生成物を、pLentiLox 3.7ベクターのHpaI部位およびXhoI部位にクローニングした。対照ベクターを作製するために、U6プロモーター配列をXbaIとHpaIでの消化によって取り出し、クレノウ酵素とともにインキュベートし、連結させた。レンチウイルスは記載されているとおりに生産させた(Tiscorniaら(2006)Nat Protoc 1,241−245)。
ウェスタンブロッティング。Tera−2細胞を、miRNAを発現するレンチウイルスに感染させ、感染させた細胞をフローサイトメトリーによって収集した。ヒトの乳ガン細胞を、上記に記載したように、フローサイトメトリーによって収集した。収集した細胞をSDS試料緩衝液(50mMのTris−HCl(pH6.8)、2%のSDS、10%のグリセロール、5mMのEDTA、0.02%のブロモフェノールブルー、3%のβ−メルカプトエタノール)中に溶解させた。試料をSDS−8%のポリアクリルアミドゲル電気泳動上で分離させ、ポリビニリデンジフロライドフィルター(Amersham)上に移した。0.05%のTween 20/PBS中の5%の脱脂粉乳でのブロッキングの後、フィルターを、1:2000(原発性の乳ガン試料については1:1000)に希釈した抗SOX2ポリクローナル抗体(Millipore)または1:2000に希釈した抗β−アクチン抗体(Santa Cruz Biotech)とともにインキュベートした。その後、1:10000に希釈したペルオキシダーゼ結合ロバ抗ウサギまたはヒツジ抗マウスIgG抗体(Amersham)を添加し、ウェスタンブロッティングルミノール試薬(Western Blotting Luminol Reagent)(Santa Cruz Biotech)を使用して現像した。
乳ガン細胞のコロニー形成アッセイ。マウスMMTV−Wnt1腫瘍を、200U/mlのLiberase Blendzyme 2(Roche)を使用して消化し、記載されているとおりに解離させた(Choら、2008 Stem Cells 26,364−371)。細胞を抗CD31抗体、抗CD45抗体、および抗CD140a抗体で染色し、lineage陽性細胞をフローサイトメトリーによって枯渇させた。15000個の細胞を20 MOIのmiRNAを発現するレンチウイルスに、2時間の脊椎感染(spin infection)によって感染させ、続いて、5%のBSA、2%の熱不活化FBS、1:50のB27、20ng/mLのEGF、20ng/mLのbFGF、10μg/mLのインシュリン、および10μg/mLのヘパリンを補充したDMEM/F12中で、37℃で2時間インキュベーションした。感染させた細胞を同じ培地で2回洗浄し、その後、培地を、5%のEBSを含むEpicult培地(Stemcell technologies)に置き換えた。感染させた細胞を、24ウェルプレート中の30000個のirradiated 3T3支持細胞上にプレートした。播種の24時間後に、培地を再び血清を含まないEpicult培地に置き換え、細胞を、5%のCOで37℃で6日間インキュベートした。
免疫蛍光。Tera−2細胞を、miRNAを発現するレンチウイルスに感染させ、感染させた細胞をフローサイトメトリーによって収集した。1×10個の細胞を24ウェルプレートの中で増殖させ、PBS(20mMのリン酸カリウム(pH7.4)、150mMのNaCl)で2回洗浄した。細胞を、メタノール/アセトン(1:1)で固定し、0.1%のTween 20/PBSで2回洗浄し、そして1%のTriton X/PBS中で30分間インキュベートした。細胞をPBS中の4%のヤギ血清でブロックし、そして一次抗体(抗Tuj1モノクローナル抗体(Covance)については1:750希釈)とともにインキュベートし、再び0.1%のTween 20/PBSで3回洗浄し、その後、1:300に希釈したAlexa Fluor 488結合抗マウスIgG抗体(Invitrogen)で染色した。乳ガン細胞を、BrDU Flow Kits(BD Pharmingen)を含む固定溶液を使用することによって染色した。細胞をPBS中の4%のヤギ血清でブロックし、そして一次抗体(ウサギ抗サイトケラチン14抗体(Covance)、ラット抗サイトケラチン19抗体、およびラット抗サイトケラチン8/18抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank,DSHB)については1:200希釈)とともにインキュベートし、再び、0.1%のTween 20/PBS中で3回洗浄し、その後、1:200に希釈したAlexa Fluor 488結合抗ラットIgG抗体および1:200に希釈したAlexa Fluor 594結合抗ウサギIgG抗体(Invitrogen)で染色した。染色した細胞を、蛍光顕微鏡(Leica DMI 6000B)を使用して観察した。
(実施例5)
miR−200は正常な乳腺の成長を抑制する
図7に示すように、miR−200は正常な乳腺幹細胞を抑制する。50000個の正常なマウスの乳腺細胞を、miR−200cを発現するレンチウイルスまたは対照のレンチウイルスに感染させ、離乳時期のマウスの取り出された乳腺脂肪体に注射した。GFPを発現する乳腺ツリー(mammary tree)の成長を、注射の6週間後に分析した。図7は、2/5の分岐の形成によって示される、対照のレンチウイルスに感染させた乳腺細胞によって形成されたGFPを発現する乳腺ツリーを示す。対照的に、GFPが発現されていた(miR−200cの発現を示している)場合には、0/5の分岐が形成された。
miR−200cおよびmiR−183がヒトの乳ガンの増殖を抑制することもまた明らかとなった。10000個の腫瘍形成性のガン(TG)細胞を、ヒトの乳房の異種移植片腫瘍から単離し、miRNAを発現するレンチウイルスまたは対照のレンチウイルスに感染させ、そしてNOD/SCIDマウスの乳腺脂肪体に注射した。腫瘍発生率を注射の16週間後に分析した。対照の動物においては、5匹の動物のうちの4匹に腫瘍が存在し、一方、miR−200cを発現する細胞においては、5匹の動物のうちの1匹に腫瘍が存在し、そしてmiR−183を発現する細胞においては、2匹の動物のうちの0匹に腫瘍が存在した。

Claims (16)

  1. ガン幹細胞を同定するための方法であって:
    試料を、
    Figure 2011511634

    から選択される少なくとも1つのmiRNAに特異的な試薬と接触させる工程
    を含み、
    ここでは、ガン幹細胞は、非腫瘍形成性の細胞と比較して、変化したレベルの該少なくとも1つのmiRNAを発現する、方法。
  2. miRNAの発現の定量が、インサイチュハイブリダイゼーションによって行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 定量が、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって行われる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ヒトがガンの処置を受けている、請求項4に記載の方法。
  6. 試料を、前記miRNAによって調節されるタンパク質に特異的な試薬と接触させる工程をさらに含み、
    ここでは、ガン幹細胞は、非腫瘍形成性の細胞と比較して、変化したレベルの該タンパク質を発現する、請求項1に記載の方法。
  7. CSCに対する有効性について候補の化学療法剤をスクリーニングする方法であって:
    該化学療法剤を該CSCと接触させる工程、および
    Figure 2011511634

    から選択される少なくとも1つのmiRNAの細胞内レベルを変化させることにおける該化学療法剤の有効性を決定する工程
    を含む、方法。
  8. ガン幹細胞中で腫瘍形成性を変化させる方法であって:
    該細胞中で発現される、
    Figure 2011511634

    から選択されるマイクロRNAの活性を変化させる工程
    を含む、方法。
  9. 前記マイクロRNAが、miR−200c、miR−141、miR−200b、miR−200a、miR−429、miR−182、miR−96、およびmiR−183から選択され、該方法が、活性をアップレギュレートさせる工程を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記薬剤が、miR−200c、miR−141、miR−200b、miR−200a、miR−429、miR−182、miR−96、およびmiR−183から選択され、前記細胞中で活性なプロモーターに対して作動可能であるように連結されたmiRNA遺伝子配列を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 前記変化させる工程がインビトロで行われる、請求項10に記載の方法。
  12. 前記変化させる工程がインビボで行われる、請求項10に記載の方法。
  13. 前記ガン幹細胞が乳ガン幹細胞である、請求項10に記載の方法。
  14. 前記乳ガン幹細胞がCD44CD24−/lowlineageである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記変化させる工程が、前記細胞中での前記miRNAのレベルを低下させる薬剤を該細胞に投与することを含む、請求項8に記載の方法。
  16. 前記薬剤がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項15に記載の方法。
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