JP2011505863A - 修飾インフルエンザウイルス - Google Patents
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Abstract
本発明は、M遺伝子のN末端に近接する少なくとも1つのヌクレオチド、より具体的にはM遺伝子の265〜294位のヌクレオチド位置のいずれか1つに修飾を有するB型インフルエンザウイルスのM遺伝子、および前記修飾M遺伝子を含むB型インフルエンザウイルスを提供する。さらには、ワクチン製造のための前記修飾M遺伝子の使用、および前記修飾インフルエンザウイルスを製造する方法も開示する。
Description
本発明は、M遺伝子のN末端に近接する少なくとも1つのヌクレオチド、より具体的にはM遺伝子の265〜294位のヌクレオチド位置のいずれか1つに修飾を含むB型インフルエンザウイルスのM遺伝子、および前記修飾M遺伝子を含むB型インフルエンザウイルスを対象とする。
ウイルス性疾患により引き起こされる流行病および汎発流行病は、今もなお人命を奪い、世界経済に影響を与えている。インフルエンザは、世界中で何百万もの労働日数の損失や医師への受診、ならびに何十万人もの入院のほか(Couch 1993,Ann.NY.Acad.Sci 685;803)、何万人もの超過死亡数(Collins & Lehmann 1953 Public Health Monographs 213:1;Glezen 1982 Am.J.Public Health 77:712)、何億ユーロの医療費(Williams et al.1988,Ann.Intern.Med.108:616)を生じる原因となっている。A型およびB型のインフルエンザウイルスはいずれも、過去にヒトにおけるこれらの流行の原因となっていたため、A型インフルエンザウイルスだけでなくB型インフルエンザウイルスの表面抗原も、インフルエンザ罹患率の低減に有効なワクチンの重要な成分である。インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科ファミリーに属し、それぞれ合計サイズが13.6〜14.6kbになる分節マイナス鎖RNAゲノムによって特徴づけられる。ウイルスが伝播するには、ゲノムのウイルスRNAがウイルス粒子にパッケージされなければならない。子孫ウイルス粒子が組み立てられ、粒子の組み立て中にタンパク質間での相互作用が生じる過程は、RNAウイルス内でほぼ同じである。ウイルス粒子が形成されることにより、単一の宿主内または種々の宿主生物間における宿主細胞間のRNAゲノムの効果的な伝播が達成される。インフルエンザウイルス粒子は、一本鎖RNAゲノムを含む内部リボヌクレオタンパク質コア(らせん形のヌクレオカプシド)と、内側が基質タンパク質(M1)で覆われた外側のリポタンパク質エンベロープで構成されている。A型インフルエンザウイルスの分節ゲノムは、線状で負極性の一本鎖RNAの分子8個から構成され、11個(一部のA型インフルエンザ株では10個)のポリペチドをコードする。これらのポリペチドには、ヌクレオカプシドを形成するRNA依存性RNAポリメラーゼタンパク質(PB2、PB1およびPA)ならびに核タンパク質(NP);基質膜タンパク質(M1、M2またはBM2);エンベロープを含む脂質から突出する2つの表面糖タンパク質、すなわちヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA);非構造タンパク質(NS1)および核外輸送タンパク質(NEP)が含まれる。また、ほとんどのA型インフルエンザ株は、アポトーシス促進特性を有すると考えられる11番目のタンパク質(PB1−F2)をコードするのに対して、B型インフルエンザウイルスだけが、ウイルスの毒性に寄与する可能性のあるNBタンパク質を発現する(Hatta and Kawaoka,2003,J.Virol.,77,6050−6054)。さらにA型とB型のインフルエンザウイルスの間には、ウイルスのNA遺伝子とM遺伝子のセグメントによりコードされる遺伝子産物の発現方法にわずかな違いがある(Lamb and Horvath,1991,Trends Genet.7:261−266)。B型インフルエンザウイルスはほとんどヒトにのみ封じ込められていることにより、有意な生物学的および疫学的違いが示されているが、B型インフルエンザウイルスをアザラシから分離し、より大規模な別の生物の保有体が存在する可能性もあることを示唆した試験がすでに行われている。A型インフルエンザウイルスは、多くの鳥類や哺乳類の種内にきわめて広範に及ぶ保有体を有している。
ゲノムの転写および複製は核内で行われ、原形質膜からの出芽により組立てが行われる。ウイルスは混合感染中に遺伝子を再集合することができる。インフルエンザウイルスは、HAを介して細胞膜糖タンパク質と糖脂質中のシアリルオリゴ糖に吸着する。ウイルス粒子のエンドサイトーシスの後、HA分子の構造的な変化が、膜融合を促進する細胞のエンドソーム中で生じ、脱殻を誘発する。ヌクレオカプシドは核に移動し、そこでウイルスmRNAが転写される。ウイルスmRNAの転写は、ウイルスのエンドヌクレアーゼが細胞の異種mRNAからキャップ化5’末端を切断した後、これらのmRNAがウイルスのトランスクリプターゼによるウイルスRNA鋳型転写のプライマーとして機能するという独特の機序により行われる。転写物は、その鋳型の末端から15〜22塩基の部位で終結し、ここでオリゴ(U)配列がポリ(A)トラクト添加のシグナルとして機能する。このようにしてA型インフルエンザ複製中に産生される8個のウイルスRNA分子の内の6個は、HA、NA、NPならびにウイルスポリメラーゼタンパク質(PB2、PB1およびPA)になるタンパク質に直接翻訳されるモノシストロニックなメッセージであり、その他2個の転写物は、スプライシングを受けて、それぞれが2個のmRNAを生じ、これらがM1、M2、NS1およびNEPを産生する異なるリーディングフレームで翻訳される。換言すると、8個のウイルスRNAの分節が11個のタンパク質、すなわち9個の構造タンパク質と2個の非構造タンパク質(NS1および最近同定されたPB1−F2)タンパク質をコードしている。B型インフルエンザは、2つのタンパク質(すなわちNBとBM2)に異なるコード方法を用いている。前者は、NA遺伝子の重なり合うリーディングフレームから翻訳され、後者は、M遺伝子から重なり合う終止−開始コドンを介して発現される。
現在のところ、ワクチン接種が、インフルエンザからヒトを保護する最良の方法と考えられている。健常成人が予防注射を受けた場合、現在利用できるワクチンでは、70〜90%の症例で臨床的疾患を予防することができる。このレベルは、65歳を超える健常成人では30〜70%に低下し、さらに老人ホームで暮らす65歳を超える健常成人ではなお一層低下する(Strategic Perspective 2001:The Antiviral Market.Datamonitor.p.59)。さらには、ウイルス抗原が頻繁に変化することも、たとえ毎年ワクチン接種しても防御を保証できるわけではないことから、死亡者の多くなる原因となっている。
ワクチン接種は、市販の化学的に不活化(殺菌)したインフルエンザウイルスワクチンか、または生弱毒化インフルエンザウイルスワクチンで達成される。残念なことに、弱毒化ワクチンでは交叉防御免疫をほとんど誘導することができない。したがってワクチン株は将来の未知の汎発流行株の抗原特性と正確に適合しなければならない。
複製欠損性A型インフルエンザウイルスは、ウイルス排泄の点から見て安全性の問題を克服するはずであり、これらは、NS1タンパク質の欠失したA型インフルエンザ変異株であってもよい。NS1タンパク質が欠如すると、ワクチン接種した哺乳動物の気道でこのウイルスの複製が欠損する。鼻腔内投与すると、このワクチンウイルスは、ウイルス排泄作用を持つことなく、粘膜組織で不稔感染を開始することができる。それと同時に、このウイルスは、局所的サイトカイン応答を刺激し、B細胞およびT細胞介在性防御免疫応答を誘起する。
B型インフルエンザウイルスは、ほとんどの場合、Vero細胞で十分な増殖を達成するのに厄介で時間のかかる適応が必要となる。NS1の機能が阻害されたことによるインターフェロン感受性の表現型に加えて、Vero細胞で高い力価に至るまで複製することができるB型インフルエンザNS1変異株は、文献には記載されていない。現在のところ、NS1 ORFを完全に欠失する公開された唯一のB型インフルエンザウイルスは、Vero細胞で効果的に複製しない(それぞれ、0.1moiを用いた力価は1.7〜2.5*102 FFU/mL、0.001moiの力価は検出不能。Dauber et.al;Journal of Virology,Feb.2004,p.1865−1872)。アミノ末端の16個のアミノ酸から構成されるB型インフルエンザNS1欠失変異株もまた、約104 FFU/mLの最大力価を伴う複製で非常に弱毒化する(Hai et.Al.Journal of Virology;Nov2008,p.10580−90)。
B型インフルエンザの抗原化合物を含む安全性の高いワクチン製剤を開発する必要性を受けて、NS1の機能が阻害されたために弱毒化されても、なお細胞培養で高い増殖特性を示すB型インフルエンザ株を開発することが大いに求められている。
B型インフルエンザウイルスの臨床分離株は、通常、Vero細胞で高い増殖を達成するのに厄介で時間のかかる適応を必要とする。A型インフルエンザウイルスの場合は、野生型ウイルスだけでなく、例えば38個のアミノ酸が短縮したNS1タンパク質を発現する変異株、またはNS1 ORFを完全に欠失する変異株が、インターフェロン欠損Vero細胞で高い力価に至るまで複製することができる。この所見は、複製欠損弱毒化A型インフルエンザ生ワクチンを製造するのに使用された。
これまで、この考え方は、非機能性NS1タンパク質を有する変異株が組織培養で高い力価に至るまで増殖するのに不適合であったため、B型インフルエンザウイルスに適用することができなかった。
今や驚くべきことに、本発明者らは、B型インフルエンザウイルスゲノムのM遺伝子のN末端ドメインに近接する選択されたヌクレオチドを修飾することによって、増殖能力を大幅に高めることができることを明らかにした。B型インフルエンザウイルスのM遺伝子は、長さが約1,076bpであり、M1およびBM2のORFを含んでいる。
さらに、本発明はまた、前記修飾M遺伝子を含む組換え型B型インフルエンザウイルスも対象とする。前記B型ウイルスは複製欠損性であるか、または例えばNS1タンパク質中の欠失によりたとえば弱毒化されているのが好ましい。
具体的には、M1タンパク質の82〜90位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは85〜87位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは86位のアミノ酸位置における修飾と、機能性RNA結合ドメインおよびカルボキシ末端ドメインを欠失するNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、場合によりM遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異とを含む組換え型B型インフルエンザ株が本発明の対象となる。
さらには、本発明のウイルスを含有するワクチン製剤、およびインフルエンザの予防的治療方法、ならびに本発明のウイルスを作製する方法も対象となる。
本発明はまた、本発明のインフルエンザウイルスM遺伝子をコードする分離した核酸、および前記核酸の製造も対象とする。
図1 野生型、NS14、NS38、NS57およびNS80のB型インフルエンザNS遺伝子(a)、ならびに野生型およびΔNS1(b)の模式的翻訳プロフィール。
図2 14個、38個、57個、80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質、または野生型NS1を発現する所定ウイルスのNS遺伝子のRT−PCR産物。
図3 Vero細胞(a)およびA549細胞(b)における、14個、38個、57個または80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質または野生型NS1をそれぞれ発現するインフルエンザB/マレーシアウイルスの増殖。
図4 トランスフェクション後6日目における、38個もしくは80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質またはwt NS1を有し、wt M遺伝子またはM1−M86V遺伝子を含むインフルエンザB/マレーシア変異株のウイルス力価(a)、ならびにトランスフェクション後5日目における、ΔNS1遺伝子を含むB/フロリダ変異株、または38個もしくは80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質またはwt NS1を有し、wt M遺伝子またはM1−M86V遺伝子を含むB/フロリダ変異株のウイルス力価(b)。
図5 最初のB/マレーシア/2506/04様スワブM遺伝子と、M1−M86V遺伝子およびgenebankで公開された他の配列とのアミノ酸の比較。
図6 Vero細胞(a)およびA549細胞(b)における、ΔNS1遺伝子または野生型NS1を含むインフルエンザB/フロリダウイルスの増殖。
図7 M86V突然変異(太字で記載、配列番号1)を含むB/ウィーン/33/06のM1タンパク質のアミノ酸配列(a)、およびM86V突然変異(太字で記載、配列番号2)を含むB/チューリンゲン/02/06のM1タンパク質のアミノ酸配列(b)。
図8 構築したB型インフルエンザNS変異株の概要。構築したすべてのB型インフルエンザ変異株の遺伝的構成(a);B/ウィーン/33/06のM遺伝子M1−M86Vのヌクレオチド配列(配列番号3)(b);B/ウィーン/33/06のM遺伝子M1−M86VおよびC950Tのヌクレオチド配列(配列番号4)(c);B/チューリンゲン/02/06のM遺伝子M1−wtのヌクレオチド配列(配列番号5)(d);B/チューリンゲン/02/06のM遺伝子M1−M86Vのヌクレオチド配列(配列番号6)(e);B/ウィーン/33/06のM遺伝子M1−C950Tのヌクレオチド配列(配列番号7)(f);NS14のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号8)(g);NS38のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号9)(h);NS57のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号10)(i);NS64のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号11)(j);NS80のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号12)(k);ΔNS1−BのB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号13)(I);ΔNS1−BのB/チューリンゲン/02/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号14)(m)。
図9 それぞれ38個、80個、104個および145個のアミノ酸長のNS1タンパク質を有するIL2発現B型インフルエンザベクターの模式的翻訳プロフィール(a);構築されたすべてのIL2発現B型インフルエンザベクターの遺伝的構成(b);NS1−38IL2のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号15)(c);NS1−80IL2のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号16)(d);NS1−104IL2のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号17)(e);NS1−145IL2のB/ウィーン/33/06NS遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号18)(f)。
図10 Vero細胞での5回の継代後における、インフルエンザB/NS1−wt、B/NS1−38およびB/NS1−38IL2ウイルスのRT−PCR産物。
本発明は、B型インフルエンザ株の増殖能力を増大させることができる、B型インフルエンザウイルスのM遺伝子のヌクレオチド配列の変更を提供する。このような変更には、欠失および置換が含まれてもよい。B型インフルエンザのM1タンパク質において少なくとも1回単一アミノ酸を変更することにより、細胞培養、とりわけVero細胞において高い増殖特性がもたらされることを、本発明者らは明らかにすることに成功した。これにより、具体的にはwt NS1タンパク質、またはNS1のORFに完全な欠失が見られる変異株と比べて、長さが短いNS1タンパク質を発現するウイルスをレスキューすることができる。
具体的には、本発明のB型インフルエンザウイルスM遺伝子は、M遺伝子の265〜294位のヌクレオチド位置のいずれか1つの少なくとも1つのヌクレオチド、好ましくは277〜285位のヌクレオチド位置のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチド、より好ましくは280〜282位のヌクレオチド位置のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含む。
具体的には、修飾M遺伝子は、分離したウイルスの対応する配列のATGの代わりに、280〜282位にヌクレオチドGTGを含む。あるいは、修飾M遺伝子はまた、280〜282位にヌクレオチドGTA、GTC、GTTも含んでもよい。当然ながら、当該実施形態は、それぞれのRNAコドン、GUG、GUA、GUC、GUUも対象とする。
本発明の別の実施形態によれば、B型インフルエンザウイルスM遺伝子は、M1タンパク質の82〜90位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは85〜87位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは86位のアミノ酸位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を生じる少なくとも1つのヌクレオチド修飾を含む。置換されるアミノ酸はいずれのアミノ酸であってもよく、非極性で疎水性のアミノ酸が好ましい。具体的には、アミノ酸の変更は、86位のアミノ酸位置においてメチオニンからバリンへの変更を生じる。
当然ながら、M1タンパク質の82〜90位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは85〜87位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは86位のアミノ酸位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を含むM1タンパク質が、本発明の対象となる。置換されるアミノ酸はいずれのアミノ酸であってもよく、非極性で疎水性のアミノ酸が好ましい。具体的には、アミノ酸の変更は、86位のアミノ酸位置においてメチオニンからバリンへの変更を生じる。前記M1タンパク質は、当該技術分野で既知のいずれの方法でも作成することができる。
「アミノ酸置換」という用語は、当該分子の親の(parenteral)アミノ酸配列の特定位置に、修飾されたまたは異なるアミノ酸が存在することを指す。アミノ酸置換は、当該位置を占めることができたであろうその他いずれのアミノ酸に対しても生じる。アミノ酸配列の変更によって生ずるポリペチドは、グリコシル化、アセチル化、リン酸化またはその他いずれかのアミノ酸修飾ならびにアミノ酸置換などの翻訳後修飾の変更を含むことができる。
本発明のインフルエンザウイルスM遺伝子を含む組換え型B型インフルエンザウイルスも、本発明の対象となる。
他の態様において、本発明の修飾M遺伝子を含む複製欠陥インフルエンザウイルスは、さらにNS遺伝子内に修飾も、具体的にはNS1タンパク質の一部の欠失またはNS1タンパク質全体の欠失(ΔNS1)を含むこともできる。このようなウイルスは、NS1タンパク質が短縮または発現欠如しているため、インターフェロン欠損細胞でのみ複製することができるが、共通の宿主および生物中で増殖する能力を失っている。
A型インフルエンザウイルスのNS1タンパク質は、約230個のアミノ酸からなる多機能性タンパク質であり、感染で初期に多量に合成される。前記タンパク質は、細胞の抗ウイルス活性に対抗し、病原性因子である。NS1タンパク質は、そのカルボキシ末端領域の活性により、宿主mRNAのプロセシング機構を阻害することができる。第二に、前記タンパク質は、細胞の翻訳開始因子との直接的な相互作用により、ウイルスmRNAの選択的な翻訳を促進する。第三に、NS1タンパク質は、dsRNAに結合することと、推定上の細胞のキナーゼとの相互作用によって、インターフェロン(IFN)誘導性dsRNA活性化キナーゼ(PKR)、2’5’オリゴアデニレート合成酵素系、およびサイトカイン転写因子の活性化を阻止することができる。第四に、NS1のN末端部分が、RIG−Iに結合し、IRF−3の下流の活性化を阻害して、IFN−βの転写誘導を阻止する。したがって、NS1タンパク質は、INF−αまたはINF−β遺伝子の発現を阻害し、感染細胞におけるアポトーシスの発現を遅延させ、隣接細胞における抗ウイルス状態の形成を阻止する。B型インフルエンザウイルスは、同じRNA標的を結合してin vitroでのPKR活性化を阻害する能力を対応物であるNS1−Aと共有している、NS1−Bと呼ばれる281個のアミノ酸からなる非構造タンパク質を、ウイルスNSセグメントのスプライスされていない転写物から発現する。A型インフルエンザとは対照的に、B型インフルエンザNS1は、プレmRNAのスプライシングを阻害しないが、インターフェロン活性化遺伝子15(ISG15)産物に結合して、細胞標的への結合を阻害する。
NS1タンパク質内に修飾を含むA型インフルエンザウイルスは、当該技術分野で既知である。例えば、WO99/64571には、NS1遺伝子セグメントの完全なノックアウトが記載しており、WO99/64068には、部分的に欠失した各種のNS1遺伝子セグメントが開示されている。これらの刊行物は、参考としてすべてが本明細書で援用されている。NS1タンパク質に修飾を含むごくわずかなB型インフルエンザウイルスのみが現在のところ知られており、NS1の機能が阻害されたためにインターフェロン感受性表現型を有するこれらのウイルスはいずれも、Vero細胞で高い力価に至るまで増殖しない。以下ではNS1タンパク質に修飾を有するこのようなウイルスの構造について記載する。
NS1タンパク質内に修飾を含むA型インフルエンザウイルスは、当該技術分野で既知である。例えば、WO99/64571には、NS1遺伝子セグメントの完全なノックアウトが記載しており、WO99/64068には、部分的に欠失した各種のNS1遺伝子セグメントが開示されている。これらの刊行物は、参考としてすべてが本明細書で援用されている。NS1タンパク質に修飾を含むごくわずかなB型インフルエンザウイルスのみが現在のところ知られており、NS1の機能が阻害されたためにインターフェロン感受性表現型を有するこれらのウイルスはいずれも、Vero細胞で高い力価に至るまで増殖しない。以下ではNS1タンパク質に修飾を有するこのようなウイルスの構造について記載する。
本発明によれば、NS1タンパク質内の修飾は、複製欠損インフルエンザウイルスを生じる少なくとも1つのアミノ酸の欠失、挿入または置換であってもよい。
好ましくは、修飾B型インフルエンザのNS1タンパク質は、NS1アミノ酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の欠失を含む。あるいは、NS1タンパク質の機能を完全に減弱させることもできる。本発明のインフルエンザウイルスのNS1タンパク質は、機能性RNA結合ドメインを欠失することができる。NS1タンパク質のアミノ末端にあるこのドメイン(1〜93位のアミノ酸)の主要機能は、dsRNAを結合してPKRの活性化を阻害することである(Dauber et al,J Virol.2006 Dec;80(23):11667−77)。
本発明によれば、機能性カルボキシ末端ドメインという用語は、宿主mRNAのプロセシング機構を阻害することができるNS1タンパク質内の領域を含むことができ、すなわち、その活性によって宿主細胞のIFN応答が抑制される。
B型インフルエンザのNS1は、A型インフルエンザ−のNS1よりも、同様の機能を有するカルボキシ末端エフェクタードメインを欠失すると考えられる。B型インフルエンザウイルスのNS1タンパク質のC末端ドメイン(84〜281位のアミノ酸位置)は、主にIFN−α/β応答の阻害を担っている(Dauber et al,J Virol.2006 Dec;80(23):11667−77)。
本発明によれば、インフルエンザB型NS1タンパク質のカルボキシ末端ドメインは、機能しない状態にさせてもよい。当該技術分野で開示されている通り、このドメインを完全にまたは部分的に欠失することができるだけでなく、アミノ酸を置換または挿入することもでき、また残存ドメインの機能を試験することもできる(Dauber et al,J Virol.2006 Dec;80(23):11667−77)。
本発明のM遺伝子の突然変異により、短縮した(例えば、80個のアミノ酸よりも短い)NS1タンパク質を発現し、したがってインターフェロン感受性表現型を有するB型インフルエンザ変異株の作成が可能となる。このような変異株は、安全性と有効性の高い生弱毒化ワクチン株としてとりわけ使用することができると考えられる。
本発明のM遺伝子内の修飾は、具体的には、前記複製欠陥B型インフルエンザの増殖能力を増大させることができる。例えば、M1−M86V突然変異を含む80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質(NS1−80)を発現するB型インフルエンザウイルスは、5*105〜5*107 TCID50の範囲の力価を達成したのに対して、wt M1タンパク質を有する同様のウイルスは、わずか3*103〜3*105 TCID50までにしか増殖しない。80個のアミノ酸よりも短い、すなわち14個、38個、57個または64個のアミノ酸からなるNS1タンパク質を含むウイルスは、本発明のM遺伝子の修飾を用いてしかレスキューされず、1*104〜3*108 TCID50の範囲の力価にまで増殖した。また、M1−M86V突然変異は、とりわけNS1短縮変異株の増強された増殖能力が株に特異的なものであるというより、むしろ普遍的なものであることを立証するために、遺伝的サブタイプの異なる別のB型インフルエンザウイルス(例えば、江蘇/10/03様)の骨格にも導入することができる。この骨格において、本発明のM1−M86V突然変異は、NS1 ORFを完全に欠失しており、Vero細胞で107〜108 TCID50/mLの範囲の高い力価にまで増殖した、ΔNS1−Bウイルスの作成を可能にした。
本発明の特定の実施形態によれば、組換え型インフルエンザウイルスは、
a) M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b) 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失するNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c) 場合によりM遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異と
を含むことができる。
a) M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b) 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失するNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c) 場合によりM遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異と
を含むことができる。
本発明の別の実施形態として、組換え型複製欠陥B型インフルエンザウイルスはまた、異種配列を発現する、例えばケモカインもしくはサイトカインまたはこれらのフラグメントを発現するための媒介体としても使用することができる。
より具体的には、前記ウイルスは、
a. M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b. 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失したNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c. NS1遺伝子セグメントのスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位の間に挿入された異種配列と、
場合によりM遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異と
を含む、組換え型インフルエンザウイルスであってもよい。
a. M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b. 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失したNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c. NS1遺伝子セグメントのスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位の間に挿入された異種配列と、
場合によりM遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異と
を含む、組換え型インフルエンザウイルスであってもよい。
本発明の好適な実施形態によれば、前記異種配列は、サイトカインもしくはケモカインまたはこれらのフラグメントもしくは誘導体を発現する。サイトカインは、免疫、炎症および造血を媒介し調節する小さな分泌タンパク質である。最も大きなサイトカインのグループは、免疫細胞の増殖と分化を促進するグループである。このグループ内には、白血球により産生されるサイトカインであるインターロイキン、および種々の細胞型により産生されるインターフェロンが含まれる。
インターフェロン(IFN)は、細菌、ウイルス、寄生虫および腫瘍細胞などの因子による攻撃に応答して、哺乳動物、鳥類、爬虫類および魚類を含む脊椎動物の免疫系の細胞によって産生される天然の糖タンパク質のファミリーである。ヒトには3つの主要なインターフェロンのクラスがある。タイプIインターフェロンは、14種類のIFN−アルファサブタイプと、1種類のIFN−ベータ、オメガ、カッパーおよびイプシロンのアイソフォームを含む。タイプIIインターフェロンはIFN−ガンマからなり、最近発見された第3のクラスは、3種類のアイソフォームを有するIFN−ラムダからなる。
Th1細胞は主にIL−2、IFN−γおよびTNF−βを分泌するのに対して、体液性免疫応答に関連するTh2細胞は、IL−4、IL−5およびIL−10などのサイトカインを分泌する。Th2タイプのサイトカインは、細胞内病原体に対する遅延型過敏応答を媒介し、Th1応答を阻害する。
本来は化学遊走物質のサイトカインに由来するケモカインは、実際には50を超えるメンバーを含み、免疫監視と炎症の過程において決定的な役割を果たす低分子量(単量体の形態で6〜12kDa)の小さな誘導性の分泌タンパク質のファミリーを表す。これらは、免疫と炎症における機能に応じて、2つのクラスに区別することができる。炎症性ケモカインは、多くの異なる組織細胞により産生されるほか、細菌毒素ならびにIL−1、TNFおよびインターフェロンなどの炎症性サイトカインに応答して白血球を遊走させることにより産生される。このケモカインの主要な機能は、宿主防御の目的や炎症過程で白血球を補充することである。一方、ホーミングケモカインは、リンパ系組織の所定の領域で構成的に発現する。ホーミングケモカインは、免疫系内のリンパ球および樹状細胞のトラフィックとホーミングを指揮する。BCA−I、SDF−1またはSLCで例示されるこれらのケモカインは、成熟、分化、活性化の状況下におけるリンパ球の再配置と再循環を制御し、第2のリンパ系臓器内でリンパ球が適切にホーミングできるようにする。
本発明によれば、生物活性を有するサイトカインもしくはケモカインまたはこれらの誘導体もしくはフラグメントは、NS1タンパク質を発現するORFとは異なるオープンリーディングフレームを使用して、安定的かつ効果的に発現することができることが明らかにされている。あるいは、タンパク質の効率的な分泌をさらに支援し、in vivoできわめて効率的な免疫応答の誘導を示す、天然のシグナルペプチド以外の別のリーダー配列を、サイトカインまたはケモカインに融合することもできる。驚くべきことに、成熟したサイトカイン/ケモカインに対応するアミノ酸配列を、シグナルペプチドとして機能するアミノ酸配列を介してNS1タンパク質の一部に融合した場合にも、ケモカインおよびサイトカインを効率的に発現することができる。例えば、これはマウスIgカッパーシグナルペプチドの一部であってもよい。
本発明によれば、異種配列は、好ましくは、インターロイキン2(IL−2)またはそのフラグメントもしくは誘導体をコードする。IL−2は、分泌シグナル配列を含み、抗原で活性化されたT細胞のクローン増殖に必要となる免疫調節性のT細胞由来分子である。CD4陽性Tリンパ球によるIL−2の分泌は、Tヘルパー細胞およびTキラー細胞の増殖の誘導、ならびに他のサイトカインを産生させるT細胞への刺激などの多様な生物学的効果を有する。さらにまたIL−2は、B細胞、NK細胞およびマクロファージも活性化することができる。IL−2が非リンパ性細胞を感染させた組換え型ウイルスから発現された場合は、このIL−2の分泌により、ウイルス感染の病原性を著しく減少させ、免疫応答を変更することができると考えられる。また、IL−2は免疫アジュバントとして機能することも知られている。
本発明によれば、依然として生物活性を有する、すなわち免疫調節活性を示す、サイトカインおよびケモカインのいずれのフラグメントまたは誘導体も含まれる。
あるいは、サイトカイン/ケモカインはまた、IL−15、GM−CSF、CCL3もしくはCCL20またはこれらの誘導体もしくはフラグメントからなる群から選択することもできる。
あるいは、これは、結核菌(例えば、ESAT−6)に由来するいずれのエピトープまたは免疫調節領域であってもよい。
あるいは、異種配列はまた、抗原タンパク質または抗原ペプチドに融合されたサイトカインもしくはケモカインまたはこれらのフラグメントもしくは誘導体であるキメラタンパク質を含むこともできる。融合は直接的なものであっても、あるいは長さが少なくとも4個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸であるペプチドリンカー配列を介したものであってもよい。例えば、本発明のリンカー配列は、GGGSまたはGGGGSである。
IL−2キメラタンパク質の例は、当該技術分野で既知である。例示すると、これは、IL−2−PE40(PEはシュードモナスエキソトキシンAである)、DAB389−IL−2(DABはジフテリアトキシンである)、またはIL−2 Bax(Baxはヒト由来のアポトーシス促進タンパク質である)であると考えられる(Aqeilan R.et al.,Biochem.J.,2003,129−140)。
本発明によれば、複製欠損インフルエンザベクターに導入される異種配列のヌクレオチド配列は、その天然配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性を示す。これには、コドンの使用を考慮したヌクレオチド配列のいずれの最適化も含まれる。
あるいは、異種配列は、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープ、例えばインフルエンザヘマグルチニン(HATB)由来のB細胞エピトープ、例えばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)由来のAループエピトープもしくはその一部、または150〜159位のアミノ酸配列に対応するHAの免疫優性エピトープの1つを示すペプチドを含むこともできる(Caton et al.,1982,Cell,417−427)。
このエピトープはまた、WO06/119527に記載のメラノーマ関連内在性レトロウイルス(MERV)に由来してもよい。
特定の実施形態によれば、NS1遺伝子セグメントは、機能性の天然スプライスドナー部位およびアクセプタースプライス部位を含むことができる。すなわち、スプライスドナーおよびアクセプター部位は天然の部位として確保されており、すなわち、ヌクレオチドは人工的な技法によって修飾されていない。
環境適応または天然の株発生に基づくインフルエンザウイルスの修飾により天然に生じるスプライス部位におけるヌクレオチド修飾はいずれも、天然の修飾であり、合成的または人工的修飾という用語に該当しない。
あるいは、スプライスドナーの周囲および/またはアクセプター部位の上流の配列を変更することもできる。好ましくは、変更または修飾は、NSイントロンの5’境界の3ヌクレオチド5’側および/または8ヌクレオチド3’側、ならびにNSイントロンの3’境界の100ヌクレオチド5’側および/または2ヌクレオチド3’側内で実施することが可能である。これは、好ましくは、スプライシング活性を変更するために合成配列を導入することによって行われる。
例えば、異種配列の挿入によりNSイントロンのサイズが拡大する場合は、スプライス効率を向上させることで組換え型NSセグメントの遺伝的安定性を向上させるために、スプライスドナーおよび/またはアクセプター部位の周囲の配列を変更するのが好ましいと考えられる。
例えば、これは、ヒトU1 snRNAの5’末端に対する相同性が向上するように、スプライスドナー部位の周囲の配列、および/または分岐点を含むスプライスアクセプター部位の上流の配列のいずれかを変更し(Plotch et al.1986,Proc Natl Acad Sci U S A.83:5444−8;Nemeroff et al.1992,Mol Cell Biol.12:962−70)、NSセグメントのスプライシングを増強する配列でピリミジン領域を置換することにより、修飾することができる。
スプライシングを最適化するために、スプライスアクセプター部位の5’に導入された好適な配列は、ラリアットコンセンサス配列およびピリミジン領域を含む。ウイルスベクターの安定性および異種配列の発現率を考えると、NS遺伝子中の特定の位置、例えばスライスアクセプター部位のすぐ上流に、ラリアットコンセンサス配列およびピリミジン領域を含む合成/修飾配列を導入するのが重要である可能性がある。
さらには、NSセグメントのスプライシング率を変更するために、ラリアットコンセンサス配列とピリミジンドメインの間の距離を変更することが必要な場合もある(Plotch S. and Krug R.,1986,Proc.Natl.Acad.Sci.,83,5444−5448;Nemeroff M.et al.,1992,Mol.Cell.Biol.,962−970)。
例えば、組換え型B型インフルエンザ株は、配列番号1もしくは2に示すようなアミノ酸配列、または配列番号3〜18のいずれか1つに示すようなヌクレオチド配列、または少なくとも98%の配列同一性、好ましくは少なくとも99%の配列同一性、好ましくは少なくとも99,5%の配列同一性を有する前記配列の誘導体を含むことができる。
本発明によれば、「組換え型」という用語は、例えば逆遺伝学技術のような組換え技術を使用して作成されたすべてのインフルエンザ株を包含する。したがって、本発明のインフルエンザ株は、M遺伝子内に修飾を含むが、親株と比べて、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列中にそれ以上の修飾を含まなくてもよい。
また医薬的に許容される担体と混合された、免疫原性を誘導する有効量のウイルスを含むワクチン組成物も包含される。また組成物中にアジュバントが含まれてもよい。
本発明によれば、「免疫原性」という用語は、ウイルスが、体液性または細胞性免疫応答、好ましくはこれらの両方を誘発することができることを意味する。免疫原性の本質は抗原性でもある。免疫原性を誘導する有効量のウイルスは、動物、好ましくはヒトに投与した場合に、体液性もしくは細胞性免疫応答またはこれらの両方を誘発する。
前記ワクチン組成物は、治療を必要とするヒト患者に免疫原性を誘導する有効量の組成物を投与することを含む、インフルエンザ疾患の予防的治療に使用することもできる。
ワクチン組成物は、本発明の完全なB型インフルエンザウイルスを含むことができるが、ウイルスセグメントの一部が別のB型インフルエンザ株に由来する、とりわけM1タンパク質が本発明の組換え型B型インフルエンザウイルスに由来するリアソータント株も含むことができる。さらに、本発明のM1−M86V突然変異をその他いずれかのB型インフルエンザ株に導入することもできると考えられる。
前記組成物は、インフルエンザウイルスの感染を予防、管理、無力化、治療および/または改善する方法でまたは薬剤として使用することもできる。当然ながら、インフルエンザウイルス感染治療薬の製造における本発明のインフルエンザウイルスM分子の使用も含まれる。前記免疫原性組成物は、本発明の生または不活化いずれかのB型インフルエンザウイルスを含むこともできる。ウイルスは、当業者に周知の方法で不活化することができる。一般的な方法では、不活化にホルマリンおよび熱が使用される。
免疫原性が増強されるため、生の免疫原性製剤が好ましいと考えられる。このような生の組換え型免疫原性製剤の製造は、細胞培養または孵化卵(例えば、有胚鶏卵)でウイルスを増殖させた後に精製を行うことを含む従来の方法を使用して達成することができる。
「医薬的に許容される」という用語は、連邦もしくは州政府の規制機関により承認されているか、米国で上市されていることを意味する。
「担体」という用語は、医薬組成物(例えば、免疫原性もしくはワクチン製剤)と併用投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒介体を指す。また、食塩水、デキストロース水溶液およびグリセロール水溶液も、液体担体として、具体的には注射液として使用することができる。適切な賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。適切な医薬担体の例については、E.W.Martin著の"Remington’s Pharmaceutical Sciences"に記載されている。前記製剤は投与様式に応じて選択する必要がある。また特定の製剤は、ウイルスが生ウイルスか不活化ウイルスかによって異なる場合もある。
アジュバントという用語は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。
本発明の免疫原性製剤の予防的および/または治療的効果は、免疫応答(例えば、体液性免疫応答)を達成または誘導することに部分的に基づいている。一態様において、免疫原性製剤は、被験者またはその動物モデル(例えば、マウス、フェレット、ラットもしくはイヌのモデル)のいずれかにおいてB型インフルエンザウイルスの抗原に対する抗体の検出可能な血清力価を誘導する。抗体の血清力価は、当業者に既知の技法、例えばELISAまたはヘマグルチニン阻害試験などのイムノアッセイを使用して測定することができる。
また、本発明によれば、本発明のインフルエンザウイルスM分子を発現する組換え型発現系を使用することを含むウイルス作成方法もまた対象とする。本発明によれば、前記発現系は、例えばHoffmann et al.((Hoffmann et al.2000,Proc Natl Acad Sci U S A.97:6108−13)に記載のような、いずれの有用なプラスミドであっても、EP07450177に記載の線状発現構築物であってもよい。
リアソータントの開発および/または修飾インフルエンザウイルス株の発現には、Vero細胞の逆遺伝学系を使用することができる。この技術はすでに当該技術分野で周知である(Pleschka S.et al.,1996,J.Virol.,70(6),4188−4192,Neumann and Kawaoka,1999,Adv.Virus Res.,53,265−300,Hoffmann et al.2000,Proc Natl Acad Sci U S A.97:6108−13)。
培養培地を用いたウイルスの培養に使用される細胞は、合成培地中でのin vitro増殖が可能で、ウイルスの増殖に使用できるいずれの細胞であってもよい。本発明の適用範囲内において、「細胞」という用語は、個々の細胞、組織、臓器、昆虫細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞、ハイブリドーマ細胞、初代細胞、継代細胞系、および/またはウイルスを発現する組換え型細胞などの遺伝子操作細胞の培養を意味する。例えば、これらは、BSC−1細胞、LLC−MK細胞、CV−1細胞、CHO細胞、COS細胞、マウス細胞、ヒト細胞、HeLa細胞、293細胞、VERO細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MDOK細胞、CRFK細胞、RAF細胞、TCMK細胞、LLC−PK細胞、PK15細胞、WI−38細胞、MRC−5細胞、T−FLY細胞、BHK細胞、SP2/0の細胞、NS0、PerC6(ヒト網膜細胞)、ニワトリ胚細胞または派生株、孵化卵細胞、有胚鶏卵または有胚鶏卵の派生株であってもよい。好ましくは、細胞系はVERO細胞系である。
ウイルスの作成に使用される培養培地は、ウイルス培養に適用可能な、先行技術から既知であるいずれの培地であってもよい。好ましくは、前記培地は合成培地である。例えば、これは、改良イーグル培地(MEM)」、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改良イーグル培地(D−MEM)、D−MEM−F12培地、ウィリアムE培地、RPMI培地ならびにこれらの類似物および派生物であってもよい。また、これらは、VP−SFM、OptiPro(商標)SFM、AIM V(登録商標)培地、HyQ SFM4MegaVir(商標)、EX−CELL(商標)Vero SFM、EPISERF、ProVero、いずれかの293またはCHO培地ならびにこれらの類似物および派生物のような、専用の細胞培養培地およびウイルス増殖培地であってもよい。これらの培地は、例えば動物血清および動物分画またはこれらの類似物、アミノ酸、成長因子、ホルモン、緩衝液、微量成分、トリプシン、ピルビン酸ナトリウム、ビタミン、L−グルタミンならびに生物緩衝液のような、細胞およびウイルス培養に適用可能な、先行技術から既知であるいずれの添加物を補充してもよい。好ましい培地は、L−グルタミンとトリプシンを補充したOptiPRO(商標)SFMである。
本発明のM遺伝子の修飾を使用すると、修飾されていないM遺伝子と改良されたM遺伝子のウイルス力価(TCID50)を比較した場合に、B型インフルエンザNS1短縮変異株の増殖率を、NS1−38ウイルスで示されたように、少なくとも約100〜1000倍増加させることができる。それぞれ14個、57個または80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質を発現するB型インフルエンザウイルスの場合は、このようなウイルスを作成するために、M遺伝子内の突然変異が絶対的に必要となる。これらのウイルスは、約106〜108 TCID50の力価まで増殖することができる。
本発明のさらなる実施形態は、本発明のインフルエンザウイルスM遺伝子および/または修飾M遺伝子を含む組換え型B型インフルエンザウイルスをコードする分離した核酸である。
さらに、前記核酸を製造する方法であって、本発明のM分子をコードするベクターにヌクレオチド配列を導入することを含む方法。DNAベクターを使用する場合、前記ベクターは、マイナスセンスのインフルエンザRNAの転写系である。例えば、前記ベクターは、Hoffmann et al.,2000,Proc Nati Acad Sci U S A.97:6108−13において使用するベクターであってもよい。
上述の説明は、以下の実施例を参照することによってより詳細に理解されるであろう。但し、このような実施例は、単に本発明の1つ以上の実施形態を実施する方法の典型例を示したものにすぎず、本発明の適用範囲を限定するものとして解釈してはならない。
実施例1
複製欠損生弱毒化ワクチンとして使用することを目的とした、短縮NS1タンパク質を発現するB型インフルエンザウイルス。
複製欠損生弱毒化ワクチンとして使用することを目的とした、短縮NS1タンパク質を発現するB型インフルエンザウイルス。
B/ビクトリア/2/87系統群の典型例としてVero適応B型インフルエンザ株(B/マレーシア/2506/04としてサブタイプしたB/ウィーン/33/06)を構築するための逆遺伝学系を作成した(Hoffmann et al 2000,PNAS 97(11):6108−13)。HAおよびNAは、インフルエンザB/チューリンゲン/02/06(B/江蘇/10/03様)からクローニングした。M1タンパク質にコーディング突然変異を導入する(86位のアミノ酸位置においてメチオニンをバリンに変更する)ことで、14個、38個、57個および80個のアミノ酸からなる短縮型のNS1タンパク質を発現するインフルエンザ変異株を得ることができ、それぞれB/マレーシアNS1−14、NS1−38、NS1−57またはNS1−80と名づけた。NS1の翻訳は、2つの連続したインフレームの終止コドンにより終結させ、終止コドンの下流からNEPのスプライシングシグナルまでの非翻訳部分を欠失させた(図1a)。NS遺伝子の長さが異なるため、異なる長さのNS1タンパク質を含むウイルスは、そのサイズをもとに、RT−PCRによって識別することができる(図2)。作成したすべての変異株は、インターフェロン欠損Vero細胞で高い力価に至るまで複製したが(図3a)、インターフェロンコンピテントA549細胞では弱毒化した(図3b)。
本発明のM遺伝子内の修飾は、具体的には、前記複製欠損B型インフルエンザウイルスの増殖能力を増大させることができる。例えば、M1−M86V突然変異を含む80個のアミノ酸からなるNS1タンパク質(NS1−80)を発現するB型インフルエンザウイルスは、トランスフェクション後6日目に分析すると、約5.62*104の力価に至るまで増殖したのに対して、M1に修飾を含まない類似のウイルスの力価は約1.33*104 TCID50であった(図4a)。38個のアミノ酸からなるNS1タンパク質(NS1−38)を発現するB型インフルエンザウイルスは、適応するM1突然変異なしでは全くレスキューすることができなかったが、M1−M86V突然変異を導入した場合には、約3.16*102 TCID50の平均力価に至るまで増殖する(図4a)。この効果は、トランスフェクション後2回目の継代でさらに一層顕著になり、力価により反映された(第1表)。同じレスキュー効率は、それぞれ14個または57個のアミノ酸からなるNS1タンパク質を発現するB型インフルエンザウイルスでも認められ、このウイルスは、M1−M86V突然変異の存在下においてのみレスキューされた(データ未掲載)。さらに、Vero細胞での適応継代により、すべてのNS1変異株の効果的なワクチン製造に必要となる、6.5〜8.5log TCID50の範囲の高い力価がもたらされた(図3a)。本発明の突然変異は、wt NS1ウイルスの増殖に対して全くまたはごくわずかしか影響を及ぼさないと考えられる。非修飾M遺伝子を含むwt NS1 B型インフルエンザウイルスは、トランスフェクション後6日目(図4a)、およびトランスフェクション後2回目の継代で(第1表)、M1−M86V突然変異を含む類似のウイルスよりもわずかに高い力価に至るまで増殖した。これは、トランスフェクション後1回目の継代の増殖によって示されたように、異なる継代間の増殖の変動によって説明することができる(どちらもwt NS遺伝子を含むwt M遺伝子では1.78*107 TCID50であったのに対して、同じくwt NS遺伝子を含むM1−M86Vでは2.82*107 TCID50)。
wtまたはM1−M86VのいずれかのM遺伝子と組み合わせたwt、NS80またはNS38 NS1タンパク質を有するB型インフルエンザウイルスの、感染後4日目、トランスフェクション後2回目の継代で分析したウイルス力価(TCID50)。
したがって、この新規の突然変異によってのみ、非機能性NS1を有する短い(すなわち、最初のN末端の80個のアミノ酸よりも少ない数を含む)NS1タンパク質を発現し、したがってインターフェロン感受性表現型を有するB型インフルエンザ変異株の作成が可能となる。したがって、このような変異株は、ワクチン株として使用することができると考えられる。この突然変異はこれまで一度も報告されたことがなく、NIBSC配列データベースにも存在しなかった。図5は、M遺伝子の最初のB/マレーシア/2506/04様スワブの配列と、M1−M86V遺伝子およびgenebankで公開された他の配列との比較を示す。
実施例2
本発明のM1タンパク質(M86V)の突然変異により、種々のB型インフルエンザ系統群において、短縮NS1タンパク質を有するB型インフルエンザウイルスをVero細胞で作成することが可能となる。
本発明のM1タンパク質(M86V)の突然変異により、種々のB型インフルエンザ系統群において、短縮NS1タンパク質を有するB型インフルエンザウイルスをVero細胞で作成することが可能となる。
他のB型インフルエンザ株におけるM1−M86V突然変異の影響を試験するため、B/山形/16/88系統群の典型例として、インフルエンザB/チューリンゲン/02/06(B/江蘇/10/03様)を作成するための逆遺伝学系を作成し、M1タンパク質内の既述の突然変異(M86V)を導入した。北半球での2008/2009シーズンにおけるインフルエンザワクチン株に関するWHOの推奨に従うため、B/フロリダ/04/06様ウイルスのHAおよびNAを使用した。38個および80個のアミノ酸からなる短縮型のNS1タンパク質を発現するB型インフルエンザ変異株、またはモノシストロニックRNAとしてNS2/NEPを発現し、NS1のORFに完全な欠失が見られる変異株(ΔNS1−B)(図1b)を得て、それぞれB/フロリダNS1−38、NS1−80またはΔNSI−Bと名づけた。B/ビクトリア/2/87系統群の典型例であるB/マレーシアの変異株の場合と同じく、M1−M86V突然変異は、山形系統群の典型例であるB/フロリダのNS1−80およびNS1−wtウイルスのレスキュー効果に対して、ごくわずかな影響しか及ぼさなかった(図4b)。このことは、wt M遺伝子を含む変異株に比べてトランスフェクション後5日目にわずかしか力価が増加しなかったことにより示された(図4b)。M1−M86V突然変異を含むNS1−38変異株のウイルス力価は、wt M1類似体よりも約4log高かった。M1−M86V突然変異により、本発明者らは、トランスフェクション後5日目にほぼ4logの力価に達するΔNS1−Bウイルスをレスキューすることができた(図4b)。
ΔNS1−Bウイルスの複製欠損表現型を示すため、本発明者らは、対応するwtウイルスと比較した、IFN欠損Vero細胞(図6a)およびIFNコンピテントA549細胞(図6b)でのウイルスの増殖能力を調べた。いずれのウイルスが、Vero細胞での増殖動態はほぼ同じであり、107〜108 TCID50/mLの範囲の力価に達した。IFNコンピテントA549細胞では、ΔNS1−Bウイルスの複製が完全に抑制され、2×102 TCID50/mLの検出限界を超える増殖は示されなかったが、NS1−wtウイルスは、3.15×108 TCID50/mLの高い力価に至るまで複製した。変異株ウイルスのNS180およびNS1−38は、中間の複製能力を示した(データ未掲載)。
これらのデータは、適応性M1突然変異が1つのウイルス株で増殖最適化効果を有するばかりでなく、他のB型インフルエンザ系統群においても有効であると思われることを示している。さらにデータは、この突然変異が、NS1 ORFを完全に欠失し、Vero細胞で高い力価に至るまで増殖するΔNS1−Bウイルスをレスキューするのに不可欠であることを示している。したがって、これは、弱毒化機構が主要なインターフェロンアンタゴニストであるNS1の除去に基づいている複製欠損B型インフルエンザウイルスを作成するための普遍的な発想である。
実施例3
とりわけ高齢者における免疫原性が増強された有望な生弱毒化インフルエンザワクチンとして、バイシストロニックな発現方法を用いてNS遺伝子からヒトインターロイキン2を発現するB型インフルエンザウイルスベクター。
とりわけ高齢者における免疫原性が増強された有望な生弱毒化インフルエンザワクチンとして、バイシストロニックな発現方法を用いてNS遺伝子からヒトインターロイキン2を発現するB型インフルエンザウイルスベクター。
ヒトIL2のコード配列が続いた、重なり合う終止−開始コドンカセット(TAATG)を、B型インフルエンザウイルスのNS1タンパク質の38位、80位、104位または145位のアミノ酸位置の後にそれぞれ挿入された。さらに、最適化されたスプライス部位である20塩基のピリミジン領域セグメント(最適化スプライス)が続いた、ラリアットコンセンサス配列を含む29個のヌクレオチドの合成配列が、IL2の終止コドンとNS2のスプライスアクセプター部位の間の部分を置換する(EP7450176.8)(図9a)。
本発明のM1タンパク質内の突然変異(M86V)を導入することによって、本発明者らは、インフルエンザB/チューリンゲン/02/06(B/江蘇/10/03様)の骨格中のB型インフルエンザウイルスB/NS1−38IL2をレスキューすることに成功した。本発明のM1タンパク質内の修飾がなければ、このウイルスはレスキューされなかった。「空のベクター」であるB/NS1−38と比べて、B/NS1−38IL2の増殖はわずかに低かったが、6log10 TCID50/mLを超える力価が達成された(第2表)。この株をVero細胞でさらに5回継代して、遺伝的安定性を調べた。欠失変異株を示す可能性があるより小さなPCRバンドが出現することなく、NS遺伝子の予想したサイズのRT−PCRバンドが存在することによって示されるように、欠失変異株の出現は認められなかった(図10)。
B/NS1−38IL2に感染したVero細胞は、2.5μg/mLを超える高レベルのIL2を分泌したのに対して、非感染細胞(偽感染)、B/NS1−38またはB/NS1−wtに感染した細胞では、検出可能なレベルのIL2は分泌されなかった。(第2表)。このようなベクターは、すでにA型インフルエンザで示されているように、とりわけ高齢者において免疫原性が増強された生インフルエンザワクチンとして使用することができると考えられる(Ferko,Kittel et al 2006)。
本発明者らは、3つすべての実施例で作成したウイルスの免疫原性を調べた。これらのデータから、本発明者らは、それぞれのA型インフルエンザウイルスの同等の免疫原性データから示されているように、本発明のM1−M86V突然変異が構築したウイルスの免疫原性に対して悪影響を及ぼすことはないと結論づける。
Claims (22)
- M遺伝子の265〜294位のヌクレオチド位置のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチド、好ましくは277〜285位のヌクレオチド位置のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチド、より好ましくは280〜282位のヌクレオチド位置のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含む、B型インフルエンザウイルスM遺伝子。
- 280〜282位にヌクレオチドGTG、GTA、GTC、GTT、GUG、GUA、GUC、GUUを含む、請求項1に記載のB型インフルエンザウイルスM遺伝子。
- M1タンパク質の82〜90位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは85〜87位のアミノ酸位置のいずれか1つ、好ましくは86位のアミノ酸位置において少なくとも1つのアミノ酸置換を生じる少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含む、B型インフルエンザウイルスM遺伝子。
- 前記置換されたアミノ酸が非極性で疎水性のアミノ酸である、請求項1から3のいずれか1項に記載のB型インフルエンザウイルスM遺伝子。
- 前記アミノ酸がバリンである、請求項1から4のいずれか1項に記載のB型インフルエンザウイルスM遺伝子。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルスM遺伝子を含む、組換え型B型インフルエンザウイルス。
- 前記ウイルスがリアソータントウイルスである、請求項6に記載の組換え型ウイルス。
- 前記ウイルスが弱毒化されているかまたは複製欠損であり、好ましくは前記ウイルスが完全な複製欠損である、請求項6または7に記載の組換え型インフルエンザウイルス。
- 前記ウイルスが前記NS遺伝子内に修飾を含む、請求項6から8のいずれか1項に記載の組換え型インフルエンザウイルス。
- 前記ウイルスが、機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失したNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントを含む、請求項6から9のいずれか1項に記載の組換え型インフルエンザウイルス。
- a. 前記M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b. 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失したNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c. 場合により前記M遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異と
を含む、組換え型インフルエンザウイルス。 - a. 前記M1タンパク質の86位のアミノ酸位置における修飾と、
b. 機能性RNA結合ドメインおよび機能性カルボキシ末端ドメインを欠失したNS1タンパク質をコードする修飾NS1セグメントと、
c. 前記NS1遺伝子セグメントのスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位の間に挿入された異種配列と、
d. 場合により前記M遺伝子の950位のヌクレオチド位置におけるサイレント突然変異とを含む、組換え型インフルエンザウイルス。 - 配列番号3〜18のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を含む、組換え型B型インフルエンザウイルス。
- 配列番号1または2に示すアミノ酸配列、または少なくとも98%の配列同一性を有する前記配列の誘導体を含む、組換え型B型インフルエンザウイルス。
- 医薬的に許容される担体と混合された、請求項6から14のいずれか1項に記載の免疫原性を誘導する有効量のウイルスを含む、ワクチン組成物。
- 治療を必要とするヒト患者に、請求項15に記載の免疫原性を誘導する有効量の組成物を投与することを含む、インフルエンザの予防的治療法。
- 請求項6から14のいずれか1項に記載のウイルスを作成する方法であって、逆遺伝学系において、請求項1から5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルスM分子を発現する組換え型ベクターを導入することを含む、方法。
- 複製欠損B型インフルエンザウイルスの増殖率を増加させる方法であって、前記B型インフルエンザウイルスが、請求項1から5のいずれか1項に記載のM遺伝子を含む、方法。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルスM遺伝子をコードする分離した核酸。
- 請求項19に記載の核酸を製造する方法であって、請求項1から5のいずれか1項に記載のM分子をコードする核酸にヌクレオチド配列を導入することを含む、方法。
- インフルエンザウイルス感染の治療または予防において薬剤として使用する、請求項1から5のいずれかに記載のインフルエンザウイルスM分子。
- インフルエンザウイルス感染治療薬の製造における、請求項1から5のいずれかに記載のインフルエンザウイルスM分子の使用。
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