JP2011500162A - 光ファイバ形状追跡を採用したシステム、装置、および方法 - Google Patents

光ファイバ形状追跡を採用したシステム、装置、および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、光ファイバ形状および位置追跡を採用したシステム、装置、および方法を提供する。該システム、装置、および方法は、形状が時間とともに動的に変化する物体の形状および位置の測定および連続的な追跡を可能にするものである。用途としては、診断用および外科手術用内視鏡の追跡および監視が挙げられる。

Description

本出願は、2007年10月11日出願の米国特許仮出願番号60/979,246に対して優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものである。
発明の技術分野
本発明は、光ファイバ形状および位置追跡を採用したシステム、装置、および方法を提供する。該システム、装置、および方法は、形状が時間とともに動的に変化する物体の形状および位置の測定および連続的な追跡を可能にするものである。用途としては、診断用および外科手術用内視鏡の追跡および監視が挙げられる。
発明の背景技術
世界で400万人がクローン病または潰瘍性大腸炎という形で炎症性腸疾患(IBD)に悩まされている。米国では600,000人以上が、何らかの形でIBDに悩まされており、欠勤などの理由で1年当たり10億ドルという損失が生じている。その上、IBDは結腸癌の危険性増加に関与している。結腸直腸癌は米国とカナダにおける癌死亡の第2の主要原因である(国立癌研究所、2005年; カナダ癌学会、2006年)。2006年には結腸癌の新たな症例が米国だけで148,610件生じると推測され、結腸直腸癌の治療費が1年当たり84億ドル(2004年度ドル貨)に達すると予測されている(NCI、2005年)。2008年には、150,000人近くの米国人が結腸直腸癌と診断され、またそのうち50,000人が結腸癌で死亡するだろうと推測されている(米国癌学会、2007年)。検診を行わない場合と比較して、検診を行った場合の費用対効果の利益は、救命年数一年当たり10,000ドルから25,000ドルに及ぶ(全米医療プラン評価委員会、2004年)。
結腸内視鏡検査は、現在IBDの診断および結腸癌の検診に用いられている検査のうち最も感度の高い試験である。結腸内視鏡検査では、直腸から盲腸まで大腸の全長の内部壁を検査するためにフレキシブル内視鏡が使用される。米国では、結腸癌の治療成功率は早期段階に発見された場合90%であるが、検診順守率はわずか30%である。このような定期的結腸内視鏡検査に対する抵抗は、その処置が非常に不快であるという事実が主な原因である。処置が本質的に不快である理由は、主に内視鏡を試行錯誤法(手探り法)により操作しながら柔軟で弾性のある結腸に通すためである。特に、フレキシブル内視鏡では内視鏡の長さに沿ういかなる所においてもループが形成される場合があり、ループが形成されると患者は多大なる痛みおよび不快感を経験し得る。さらに、ループが原因で医師が結腸内の方向感覚を失うことに結びつく場合があり、それによって病巣の誤検出や間違った局所化をもたらして不必要な患者の痛みおよび苦痛に結びつく場合がある。加えて、「ほとんど盲目状態」で操縦するのは困難であるため、処置を完了する前に放棄せざるをえなくなる場合もある。多くの場合、これらの処置において十分な視覚的誘導手段が不足していると、結腸内視鏡検査手順を完了する上でのボトルネックとなる。したがって、結腸内視鏡に位置と形状情報とを提供できる強健な追跡および誘導装置が必要である。
発明の要約
本発明は、光ファイバ形状および位置追跡を採用したシステム、装置、および方法を提供する。該システム、装置、および方法は、形状が時間とともに動的に変化する物体の形状および位置の測定および連続的な追跡を可能にするものである。用途としては、診断用および外科手術用内視鏡の追跡および監視が挙げられる。
例えば、本発明はいくつかの実施形態において、少なくとも1本(例えば2本以上)の光ファイバを備えた医療機器を備えるシステムを提供する。該光ファイバは、医療機器の形状(例えば屈曲、縦振り(pitch)あるいは横振り(yaw))および位置を報告するように構成された複数のセンサを備える。いくつかの実施形態において、該医療機器はガイドワイヤを備える。いくつかの実施形態において、該医療機器は内視鏡(例えば結腸内視鏡)を備える。いくつかの実施形態において、該センサは、異なる分光特性を有する複数の蛍光体(例えば染料または量子ドット)を備える。いくつかの実施形態では、複数のセンサが規定の位置で光ファイバの長さおよび外周に沿って間隔をおいて配置される。いくつかの実施形態ではその外周上の異なる位置が互いに約120°離れている。いくつかの実施形態において、ファイバのバッファおよび/又はクラッド層の一部分を除去することによって作成されたファイバの一領域にセンサが埋め込まれる。いくつかの実施形態におけるシステムは、データ収集および分析用の構成部分をさらに備える。いくつかの実施形態において、データ収集および分析用の構成部分は、センサからの信号を検出するように構成された検出器と、形状情報を生成するべく信号に関連付けられたデータを処理するためのコンピューター・プロセッサと、形状情報をユーザーに表示するためのユーザ・インターフェースとを備える。いくつかの実施形態において、ユーザ・インターフェースはさらに医療機器の遠位端部に位置する環境の画像を表示する。
さらなる実施形態において、本発明は医療機器の形状を決定する方法を提供する。該方法には、光ファイバ(複数のセンサを備えた光ファイバ)を備えた医療機器(例えば結腸内視鏡)をある環境(例えば結腸)の中に挿入することと、センサから情報を収集することにより該環境において医療機器の形状を検出することとが含まれる。
さらに別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるような医療機器を製造する方法を提供する。該方法には、複数の穴を作成するように光ファイバのバッファおよび/又はクラッド材の一部分を取り除き、且つ複数の穴にセンサを挿入することによって、光ファイバを改造することと、光ファイバが医療機器の形状を検出するべく配置されるように光ファイバを医療機器に関連付けることとが含まれる。
図1は、典型的な光ファイバ構造体を示す図である。 図2は、屈曲したファイバにおける蛍光捕捉を説明する図を示す。 図3は、本発明の実施形態の代表的な機器の端面図を示す。 図4は、結腸内視鏡検査中に生じ得るループを示す図である。 図5は、本発明の実施形態の形状追跡装置を使用した代表的な結腸内視鏡検査のセットアップを示す図である。 図6は、結腸内視鏡検査用の代表的なフレキシブル内視鏡検査法を示す図である。 図7は、本発明の代表的な機器から信号を検出するための装置を示す図である。 図8は、蛍光強度 対 屈曲のグラフを示す図である。 図9は、405nmの光で励起された量子ドットの発光スペクトルを示す図である。
定義
本明細書に用いられる「センサ」という用語は、検知可能な信号を生成する何らかの分子あるいは化合物を指す。いくつかの実施形態においてセンサが光を放射する。例えば、いくつかの実施形態ではセンサが蛍光染料または量子ドットである。
本明細書に用いられる「形状」という用語は、例えば光ファイバに関連して用いた場合、光ファイバの物理的構成を指す。形状の例としてはこれらに限定されないが光ファイバの屈曲、光ファイバの縦振り、および光ファイバの横振りなどが挙げられる。
発明の詳細な説明
本発明は、光ファイバ形状および位置追跡を採用したシステム、装置、および方法を提供する。該システム、装置、および方法は、形状が時間とともに動的に変化する物体の形状および位置の測定および連続的な追跡を可能にするものである。用途としては、診断用および外科手術用内視鏡の追跡および監視が挙げられる。該技術は、例えば胃腸管(例えば食道、胃、十二指腸、小腸、結腸、胆管)、呼吸器官(例えば鼻、下気道)、尿路、女性生殖器系(頚部、子宮、ファロピウス管)、常閉体腔(例えば、腹腔あるいは骨盤腔、関節の内部、胸部の器官)、羊膜、および胎児の監視あるいは治療に関与する広範囲な医療処置に使用される内視鏡などの医療機器に適用可能である。処置の例としてはこれらに限定されないが、食道胃十二脂腸内視鏡検査、結腸内視鏡検査、直腸S状結腸内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法、十二指腸内視鏡を使用した胆膵管鏡検査、術中の胆道鏡検査、鼻鏡検査、気管支鏡法、膀胱鏡検査、膣鏡検査、子宮鏡検査、ファロピウス管鏡検査(ファロスコピー)、腹腔鏡検査、関節鏡検査、胸腔鏡検査、縦隔鏡検査、羊水鏡検査、胎児鏡検査および形成手術などが挙げられる。また、形状と位置の追跡が望まれる場合、他の医療機器にも該技術を適用可能である。例として、例えば心血管用途に使用されるガイドワイヤにも該技術を適用し得る。このように使用することにより、特に、位置の確認に要求されるX線に基づく画像診断手順の数を減らすことがき、よって一手順当たりに要求される時間および放射線被曝を減らすことができるので、従事者は、より効率的に医療機器を追跡し且つ画像化して位置および形状を確認できるようになる。内視鏡は医療目的以外にも種々様々な用途に使用できる。その例としてはこれらに限定されないが、提案されている建物物や都市の縮尺模型の視覚化準備(建築用内視鏡)、複合技術システムの内部検査(工業用の内視鏡)、不発弾処理要員による簡易爆発物の検査、狭い空間を通しての監視、機械加工、コンピューター修理、密偵活動、錠前製造業、金庫破り、電子情報の科学捜査、およびその他ありとあらゆる用途が挙げられる。以下の記載では大半に及び結腸内視鏡検査を背景とした医療用内視鏡を用いて説明する。なお、これは発明の実例に過ぎず、本明細書に記載される概念はその他多くのシステム、機器および方法にも適用され得ることを理解されたい。
本発明の実施形態によってもたらされる進歩により、既存の技術では提供できない成果が達成される。現時点においては、形状が時間とともに動的に変化する物体の形状を容易に測定し連続的に追跡する方法は存在しない。カナダ、ニューブランズウィック州メジャランド社(Measurand)などの企業が、分布センサのフレキシブルな配列を用いて光ファイバセンサ技術を開発した(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,563,107号および第6,127,672号を参照)。該センサは、曲線に沿った、あるいは面積または体積を通じての位置と方位のデータ・セットとして形状を測定する。対応するハードウェアおよびソフトウェア製品によって、バーチャルリアリティーや地球科学のような用途において、静止した体勢から移動する事象への形状を測定したり、また制御したりすることが可能になる。但し、この技術は、円筒状であり且つ高度に柔軟な(特にねじれの点で)曲げ半径が小さい機器上で行われる形状測定に適していない。例えば、メジャランド社のシェープテープ(SHAPETAPE)は、結腸内視鏡のような医療機器に適用された場合にうまく機能しない。シェープテープ製品を商用結腸内視鏡に取り付ける場合はその取り付けが困難であり、且つ結腸内視鏡の曲げ半径により、内部のシェープテープ・ファイバが破損する傾向がある。また、シェープテープは平坦な一次元構造であるが故に、シェープテープは機器に沿った異なる区画で個々に縦振りと横振りを正確に測定あるいは監視するようには構成されていない。また、形状感度機器の断面積のはるかに小さなものが要求されるガイドワイヤのような小型装置を追跡するのには適していない。本発明の実施形態はこれらの問題を克服するものである。
結腸内視鏡の検査を背景として、限りはあるが、操縦と追跡を改善するその他の試みも行われた。しかし、本発明のシステム、機器および方法によって提供される利点を達成したものはなかった。例えば、シロッコ(Cirocco)およびルーシン(Rusin)(「蛍光透視法: 困難な結腸内視鏡検査中に役立つ手段」、『外科内視鏡学会雑誌(Surgical Endoscopy)』、10、1080-1084(1996))は、結腸内視鏡検査を誘導する目的並びに内視鏡挿管技法を学習する目的で蛍光透視法を使用することを主張した。但し、ほとんどの病院では、内視鏡検査セットに容易に利用できるような当該装置を院内に持ち合わせていない。さらに、それがX線写真(単なる静止2D画像に過ぎないもの)を撮るために処置手順を中断させる必要があるので、内視鏡検査専門医の中には、蛍光透視法は時間がかかりすぎると思っている者もいる。また、蛍光透視法では患者が不必要に過度の放射線に曝露されることになる。
より最近の開発では、外部放射線を追跡に使用する傾向からの脱却を示している。シャー(Shah)らは、結腸内視鏡軸体を実時間で画像化するための非放射線透視撮影技法である磁気内視鏡撮像技術(オリンパスUPDスコープガイド)を用いることによって結腸内視鏡検査の性能を改善できることを示した(サーンダーズ(Saunders)ら、「結腸内視鏡検査の支援システムとしての実時間電子撮像装置を使用した第1の臨床結果」、『腸管学術雑誌(Gut)』、36:913-911(1995); シャーら、「磁気内視鏡撮像の結腸内視鏡検査性能への影響:無作為対照比較試験」、『ランセット(The Lancet)』、356(18)、1718-1722 (2000))。その他の研究でも、ループの正確な位置という点を除き性能評価基準の点におけるオリンパス・システムによる利点は示されておらず(ベーアマン(Wehrmann)およびフリューモーゲン(Fruhmorgen)、「新規三次元磁気画像システムの結腸内視鏡検査時使用に関する評価」、『内視鏡学会雑誌(Endoscopy)』、34(11)、905-908(2002))、また内視鏡検査専門医の自己報告による病巣位置発見の容易さも示されていない(チャン(Cheung)ら、「補助磁気内視鏡撮像による結腸内視鏡検査性能の向上:無作為対照比較試験」、『内視鏡学会雑誌(Endoscopy)』、38, 214-217 (2006))。現在オリンパスにより販売されているこのシステムは、低強度電磁場の連続パルスを生成するべく患者に隣接して配置される3個の大きな電磁石ジェネレーター・コイルを用いる。12cmという間隔をおいて配置された12個〜15個の一連のセンサ・コイルが内視鏡に内蔵されている。各センサの位置および方位を提供するべく、ジェネレーター・コイルからの磁気パルスに応答してセンサ・コイルの各々に誘導されるごくわずかな電圧が0.2秒ごとに計算される。該位置および方位情報は、結腸を取り巻く様々な臓器の位置を示す解剖学的位置マーカ並びに三次元効果を作り出すための灰色陰影を伴うコンピューター生成(CG)二次元表示で提示される。臨床結果により、作業完了までの時間が短くなり、また内視鏡のループを真っすぐに直す試みの回数が減少したことが示されている(シャーら、2000)。しかしながら、患者の疼痛耐性および鎮静の要件は改善されなかった(アンバルダー(Ambardar)ら、「結腸内視鏡検査時の磁気内視鏡位置決め器の用役の予備的前向き研究」、『SAGES 2004年次会議議事録』、(74ページ目)コロラド州デンバー市、2004年3月31日〜4月3日; シャーら、「結腸内視鏡検査時の患者の耐性および鎮静要件に対する磁気内視鏡撮像の影響:無作為対照比較試験」、『胃腸管内視鏡学会雑誌(Gastrointestinal Endoscopy)』、55(7), 832-837 (2002))。この方法の技術的な制限としては、手術台の近くに大きな磁気コイルを置く必要があり、外科用器具など他の金属物体が近辺に存在する場合に妨害が生じ得るということである。その上に、北米の病院や診療所では、新規システムの購入(新しい内視鏡、マグネチックレシーバーを備えた新規電波塔、およびモニターなど)や現在使用している結腸内視鏡の処分に関係するコスト、並びにシステムを収容するために必要とされる物理的空間などの理由で、その採用が限られている。
他の研究者らがロボット工学的結腸内視鏡(カローザ(Carrozza)ら、「結腸内視鏡検査用小型ロボット向けSMA作動小型圧力調節器」、『センサとアクチュエーターA(Sensors and Actuators A)』、105, 119-131 (2003);ウー(Ng)ら、「ロボット工学的結腸内視鏡の開発」、『消化器内視鏡学会雑誌(Digestive Endoscopy)』、12、131-135(2000))、および傾斜した透明筒(津村ら、「結腸内視鏡検査の促進における傾斜透明筒の有用性」、『消化器内視鏡学会雑誌(Digestive Endoscopy)』、15, 121-124 (2003))などの機械的な対策手段を用いて、また内視鏡の挙動に対するより優れた制御を得るべく段階的剛性を持つ本体(ブルッカー(Brooker)ら、新規硬度可変型結腸内視鏡による結腸内視鏡検査の簡易化:無作為対照比較試験」、『腸管学術雑誌(Gut)』、46、801-805 (2000))を用いて実験を行った。例えば、ペンタックスとオリンパスによる段階的剛性結腸内視鏡は、結腸に挿入されるにつれて剛性を増すように、あるいは硬度を調整可能に設計されている。後者は、約65%の場合、ループ形成を削減するのに有効であり、患者に与える痛みを削減できることが示されている。(ブルッカーら、2000年)。しかしながら、これらの技法は大部分が依然として経験および試行錯誤(手探り)操作に依存したままであり、視覚的な指導手段の不足により制限されるものである。
他の者は、仮想大腸内視鏡検査を行ったり、あるいは小腸検査のみにワイヤレス摂取可能カプセルを用いたりすることによって結腸内視鏡検査を行う必要性を回避しようと努力した。仮想大腸内視鏡は、結腸を画像化する新しい方法であり、高解像度の二次元軸位像を生成するために薄片ヘリカルコンピューター断層撮影(CT)を用いる。その後、三次元画像がオフラインで構築される。これらの機器は、ビアトロニクス社(Viatronix)によって現在開発されている。仮想大腸内視鏡は非侵入性の処置であるので、癌の病巣やポリープの診断にだけ用いることができる。よって、治療装置として現在の結腸内視鏡に取ってかわるものにはならないと思われる。しかしながら、仮想大腸内視鏡は高速でコスト効率が良く快適な処置であり、集団検診用ツールとして将来的な使用価値が見込まれるものである。内視鏡検査専門医は、仮想大腸内視鏡に関連した問題点が克服されるまでにはその開発に何年もかかるだろうと推測している。かかる問題点としては、診断精度や、腸の清浄ならびに結腸の拡張のためにガスを注入する必要があること、そして画像の解釈に非常に熟練した技術者を養成する必要があること、などが挙げられる。摂取可能カプセルは非侵入性処置を実現できる別の手段である。これらのカプセルは独力で胃と小腸を通り抜ける際にその画像を撮影できる。アンテナ列が患者に取り付けられ、この場合患者の腰のベルトに着用させたワイヤレスレコーダーが、カプセルにより該アンテナ列に送信された信号を記録する。画像センサはフォトビット株式会社(Photobit Corporation)により設計されたものであり、使い捨てのカプセル・カメラはイスラエルを本拠地とするギブン・イメージング株式会社(Given Imaging Ltd.)により販売されている。この機器は小腸障害の診断に用いることができる。提案された対策手段はどれもループ形成の有無にかかわらず操縦過程における方位問題に対応していない。
I. 機器
以下、本発明の代表的な機器を説明する。本発明の範囲から逸脱することなしに以下記載される機器の修正および置換を行えることは、当事者であれば認識できるはずである。
A. 結腸内視鏡
結腸内視鏡は、患者の結腸を検査するために用いられる特殊なフレキシブル内視鏡である(図6を参照)。代表的な結腸内視鏡(1)を図6に示す。結腸内視鏡(1)は、軸体(2)、連節端(articulating end)(3)(端部で〜6 cm)、本体(4)、生検チャンネル(5)、ハンドル(6)、光バンドル(7)およびビデオ接続/光学接眼レンズ(8)といったいくつかの主要部分で構成される。結腸内視鏡の軸体は一般的に140cm〜180cmの長さで柔軟であるため体内で屈曲可能である。但し、軸方向に押した場合は軸体が硬いので、内視鏡を体内で前進させることが可能になる。一般に、内視鏡の遠位端には、二方向連節(縦振りと横振り)可能な内部脊椎状構造がある。ハンドルに備えられた2個のターンホイールにより連節を制御するが、一方のターンホイールでは縦振りを制御し、他方では横振りを制御する。
軸体の内部には、光導波路と、イメージバンドルおよびワーキングチャンネルが含まれる。光導波路は一束の光ファイバであり、外界光源から体内の撮影区域に光を送るために使用される。光導波路は、体内に光源を有するために要求されるサイズや必要熱量に対応する必要なく高電源外界光源を使用することを可能にする。また、イメージバンドルも光導波路同様に光ファイバを使用する。但し、イメージバンドルにおいては、ファイバーバンドルの中を通る画像が同じ方位でファイバを出るようにファイバが整列されていなければならない。結腸内視鏡の機種によっては、イメージバンドルが接眼レンズで終端となるか、あるいは画像処理プロセッサに接続されてディジタル処理後モニターに表示されるかのいずれかになっている。
B. 光ファイバ
光ファイバは、「トラップ」のために全内部反射の特性を使用し、それを通って光が周囲に漏れることなく伝播することを可能にする。ファイバは異なる屈折率を持つ材料を使用して構成される。光が伝送される「芯」あるいは内部媒体は高屈折率を有するが、該芯を取り巻く「クラッド」はそれよりも低い屈折率を有する。通常、芯とクラッド間の屈折率の相違は約1%以下である。屈折率の相違が1%であると仮定した場合、閉じ込み角度(光を芯内に閉じ込め得る最大許容角度)は約8°である。ファイバ内を伝播する光が閉じ込み角度より大きな角度でクラッドに当たる場合、全内部反射が起こらず、該光の一部がファイバから漏れる。これはファイバが屈曲している場合に生じ、光の内部反射角度が閉じ込み角度以上に増加することにつながる。これは、光が芯から漏れることを可能にし、「曲げ損失」として知られているものである。
光ファイバには、内視鏡中の光導波路とイメージバンドル、および機械的歪みゲージおよび化学センサなど多くの用途がある。いずれにしても、光ファイバの背後にある最大の推進力は電気通信産業である。セオドア・メイマン(Theodore Mainan)が1960年に最初のレーザを発明して以来、新規光ファイバおよび、信号をさらに遠くに且つより高い帯域幅で送信する方法が開発されている。
ファイバは、単一モードとマルチモードとの大きく2つに分類される。「モード」とは、光がファイバを通って移動する時に形成される安定したパターンである。単一モードのファイバは、1つのモードの光だけを送信し、高い信号品質を可能にするが、ファイバの芯が比較的小さいので光を入射するのが面倒である。多モードのファイバは芯径が単一モードよりも太く、よって連結がさほど困難ではないが、ファイバが曲げ損失による高次モードの損失の影響を受けやすいので信号品質が弱くなる。
いくつかの実施形態における本発明の追跡用構成部分は光ファイバ機器を採用する。いくつかの実施形態において、該構成部分は単一ファイバの動作に基づく。例えば、任意の長さの単一ファイバはその長さに沿って複数の検出素子と結合される。ファイバのまわりのバッファおよび/又はクラッドの一部分を取り除いてから、取り除かれた部分に検出可能材を溶着することにより、ファイバを通過していく光がその点で(屈曲の程度により)異なって反射するようになる。例えば、狭帯域幅(例えば、レーザあるいはフィルタされた白色光源から生成されたもの)がファイバの近接端部で導入される。ファイバが完全に真っすぐでないと、光の一部が芯から漏れてクラッドを通り、通常バッファに吸収される。屈曲の外側弓状部での漏れ量は、曲げ半径により異なる。漏れを測定可能な正数に変換するべく、ファイバの所定位置には蛍光体あるいは他の発光材料で構成される材料が含まれる。蛍光体はエポキシまたは他の適切な材質の中に含まれ、先に除去されたファイバのバッファおよび/又はクラッドの部分に配置し得る。フィルタ材(例えば光吸収性染料、薄膜、あるいは、立体的にパターン化された構造)は、スペクトルの放射反応を鋭くするべくファイバの除去部分内に含まれ得る。ファイバの中に光を導入するために1つ以上の光源を使用し得る。同様に、蛍光体または使用する信号生成材からの信号を測定するために1つ以上の検出器を使用し得る。
いくつかの実施形態において、センサは全て単一のファイバを用いて実施される。しかしながら、2本以上のファイバを使用しても良い。結腸内視鏡の場合には、例えば、器具の通信路(チャンネル)のうちの1つに単一ファイバを挿入することが可能である。例えば、実時間で内視鏡の位置および形状を追跡するべく、結腸内視鏡の生検チャンネルに挿入することができる、あるいは、結腸内視鏡の本体に埋め込むことができる。位置データは、実時間で内視鏡の三次元グラフィックモデルを駆動するために使用しても良く、その際、結腸内視鏡検査処置中に医師の操縦支援として役立つ。機器が比較的低価格であるため、使い捨て機器も考えられ得る。
よって、いくつかの実施形態において、本発明は、形状および/又は位置追跡を可能にするべく長さに沿って配置された複数のセンサを有するファイバを1本以上備える内視鏡を提供する。該機器は、画像ハードウェアおよびソフトウェアをはじめとする他の医療機器およびシステムと組み合わせることが可能である。いくつかの実施形態では従事者による立体視覚化を目的としてセンサが二次元または三次元データを実時間で提供する。効果的な表示設計と結び付けて形状と位置を追跡することにより、内視鏡あるいは他の機器の視覚化および操縦がはるかに効果的になる。例えば、いくつかの実施形態では、内視鏡の形状および位置の表示が、内視鏡の先端で撮影した画像と共に(例えば同じモニター上で)提示される。その他数ある利点の中でも特に、かかるシステムを実施することにより検出、診断および治療を改善することが可能になる。
本発明のシステム、機器および方法は多数様々な関係者に利点をもたらす。医師にとっての利点としては、結腸内視鏡検査中に方向感覚を失う可能性を削減するべく、かかる形状センサ素子を視覚的誘導システムと連結できるという点、内視鏡の操作に要される精神的・肉体的な作業負荷を低減できるという点、意思決定をよりよく行える、およびより正確な診断を提供できるという点が挙げられる。患者にとっての利点として、これは、処置にかかる時間が短くなり、機動の際に結腸が伸縮されることが少なくなり痛みおよび不快感が減るということを意味する。病院にとっての利点として、麻酔投与の量および回数の削減、および1日当たりに診察を受ける患者数の増加を意味しうる。医療制度に対する利点として、IBDと癌の早期発見による医療費の削減を意味しうる。
C. 蛍光体
蛍光体は、光により励起されると光を放射する特有な化合物である。上位のエネルギー準位に励起された蛍光体の電子が減衰する場合、エネルギー変化は放射性であり、光子が放出される。これは蛍光(性)として知られており、この特有な特性が故に生体撮像に頻繁に使用されている。蛍光体は主に内因性蛍光体と外因性蛍光体の2種類に分けられる。内因性蛍光体は本来体内に存在し、スペクトロスコピー(分光法)に非常に有用な自己蛍光を放射する。外因性蛍光体は体内に存在しない分子である。これら蛍光染料(外因性蛍光体)は励起されると、ストークスシフトにより励起光波長よりも長い波長の独特な光線を放射する。この蛍光の長波長へのずれ(シフト)は、電子減衰中に非放射の形式で失われるエネルギーにより引き起こされる。また、これら外因性蛍光体は、スペクトロスコピーおよび他の用途にも非常に重要であり、特に、本来蛍光を発しないものに対して蛍光染料として使用することができる。
特定の用途向けに染料を選ぶ際に選択できる有機染料(外因性)が多くある。但し、有機染料は特定の波長でのみ励起できるものであるため、特定の光源で機能する染料を選択することが好ましい。励起および発光波長の選択は単一の試料に2つ以上の染料を使用する場合に考慮される。2つの染料の励起波長については、両方の染料を同じ光源で使用できるように同じまたは非常に類似したものであることが好ましい。また、2つの染料の発光波長についても、2つの独特な染料を識別できるように十分に離れているものが好ましい。
本発明は、位置と形状を追跡するために使用されるセンサの性質により限定されない。機器において屈曲に関連した光の検出を可能にするセンサであれば如何なるものも使用し得る。いくつかの実施形態ではセンサが蛍光体である。蛍光染料の例としてはこれらに限定されないが、7-アミノ-アクチノマイシンD、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、オーラミンO、オーラミン-ローダミン系統、ベンゾアントロン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、CFDA-SE、カルセイン、カルボキシフルオレセイン、1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、2-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、クマリン、シアニン、DAPI、暗色消光物質、ディオック 6(Dioc6)、ダイライトフルオル(DyLight Fluor)、臭化エチジウム、フルオレセイン、フーラ-2(Fura-2)、フーラ-2-アセトキシメチルエステル、緑色蛍光タンパク質、ハイライトフルオル(Hilyte Fluor)およびヘキスト染剤、インディアンイエロー、ルシフェリン、ペリレン、フィコビリン、フィコエリトリン、フィコエリトロビリン、ローダミン、リボグリーン(RiboGreen)、ルブレン、ルテニウム(II)トリス(バソフェナントロリンジスルホネート)、SYBRグリーン、スチルベン、TSQ、テキサスレッド、ウンベリフェロンおよび黄色蛍光タンパク質などが挙げられる。
いくつかの実施形態では光を生成するべく発光抑制(クエンチング)の解除が使用される。例えば、いくつかの実施形態では染料と消光剤が互いに隣接して配置され、屈曲またはその他の形状変化の位置が変わり消光を無くして(または削減して)検出可能な信号を増加させる。
いくつかの実施形態では、センサが量子ドットである。量子ドットは、直径約2nm〜10nmのナノ構造半導体蛍光団である。従来の有機染料と異なり、量子ドットの蛍光はそれらの化学構造に依存しない。同じ化合物からなる量子ドットは、大きさの変動により異なる波長で蛍光を放射することができる。この量子閉じ込め作用は、量子ドットの寸法がボーア半径よりも小さい時に起こる。これが生じると、バンドギャップまたはエネルギー準位間の間隔は、量子ドットの大きさに比例する。粒径が小さくなるにつれてエネルギー準位間の間隔が広がり、より多くのエネルギーを必要とするようになり(より低い波長の光を生成し)、電子が次の準位に励起される原因となる。また、より小さい量子ドットは励起するのにより多くのエネルギーを必要とするのでより多くのエネルギーを放射し、結果として大きな量子ドットよりも短い波長の放射をもたらす。
粒径に応じて異なる波長を放射する量子ドットの特性は、従来の有機染料に優る多くの利点をもたらす。かかる利点の1つとしては、電子にバンドギャップを交差させるのに十分なエネルギーを有する如何なる波長光線で量子ドットを励起できることが挙げられる。(最大の励起エネルギーを必要とする)最も小さい量子ドットに対して光源が選択されている限りは、それよりも大きな粒径を持つその他のすべての量子ドットも同様に励起することができる(図9を参照)。これにより、単一のコヒーレント源を使用して励起できる有機染料を見つけるといった骨の折れる過程を排除できる。
また、量子ドットは、有機染料ほど光退色効果の影響を受け易くはないという点で有機染料と異なる。ローダミン6Gと比較した場合、量子ドットは100倍近く安定している(チャン(Chan)ら、『サイエンス(Science)』281、2016-2018(1998))。このため、量子ドットは、有機染料では現在実施できない更に長期的な条件において実施できる。量子ドットの別の利点として、有機染料の広く非対称的な放射帯域幅と比較して細く対称的な放射帯域幅を有することが挙げられる(ベイリー(Bailey)ら、フィジカE:低次元システムおよびナノ構造体(Physica E: Low-Dimensional Systems and Nanostructures)25、1-12(2004))。このため、発光スペクトルの重複を最小限に保ちながら同じ試料に多くの染料を使用することが可能になる。これは、多軸形状追跡装置において単一のファイバ上の改造済みバッファ位置を利用するシステムに役立つ。
ファイバの区画の二種類(つまり、縦振りと横振り)の屈曲自由度は、当該区画のまわりに同様に処理された位置を120°の間隔で配置して差分信号の強度を計算することにより感知することが可能である。即ち、例えば、感知区域2対が90°の間隔で配置される場合にファイバが一方向に曲がると、屈曲曲線の外半径に沿った部分から光が漏れる。また、反対方向に屈曲すると反対側の点が外側曲線に沿う状態になる。これに直角に屈曲すると他の2箇所が活性化されることになる。全ての信号を一緒にとることにより、その区画について如何なる方向に屈曲した信号も提供する。位置の配置を120°の間隔にする必要はない。所望の情報を提供するべく収集された信号を測定し解析できれば如何なる間隔の組み合わせを用いても良い。
各区画においては、曲変形によりどの位置から光が漏れているのかを同定するために、外周のまわりで使用されるセンサ部の数(例えば、最低3個)および使用される蛍光体波長の数に対応して、光の異なる波長を組み合わせることができる。異なる屈曲信号を同定するためにファイバの出口にて分光計を使用し得る。光の各波長について分光計の出力に屈曲度を関連付けるべく分光計信号を較正しうる。
各単一ファイバの長さに沿って複数の感知「塊」を置き、全ファイバの形状に関する近似値を求めることができるようにしても良い。異なる染料を多重方式で使用して、ファイバのどの区画に対して常に信号が送信されているかを知ることが可能になるようにしても良い。ファイバ全体の全体的な形状を計算するために、全感知塊からの信号の統合を可能にするために適切なソフトウェアが使用される。
D. 例示的な設計
以下、実例を用いて本発明の実施形態を説明する。本発明は、本明細書に記載される実施形態の特定な詳細に限定されない。図1は典型的な光ファイバ構造体を示す。
光ファイバはそれらの物理構造に基づいて屈曲を測定する。典型的な光ファイバは、異なる光学および構造特性を有する材質三層から成る。図1は光ファイバの構造を示す。一般的に、「芯」(9)は、高屈折指数を有する光学的に密な媒体(ncore)から成り、「クラッド」(10)と呼ばれるそれよりも光学的密度の低い材質の層で覆われている(nclad<ncore)。最外層である「バッファ」(11)は、ファイバの機械的強度を維持する役割を果たす。ファイバの長さに沿って伝播する光は、芯とクラッドの界面に臨界角(θcrit)が存在するので「全内部反射」により芯の中に包含される。
臨界角未満の角度で芯/クラッド界面に投射する光は界面を通り抜けることができる。臨界角は次の関係により定義される:
nclad = ncore sinθcrit
本発明の内視鏡による光ファイバ形状追跡装置(EFOST:Endoscopic Fiber Optic Shape Tracker)の実施形態は、長さに沿う様々な位置でバッファおよび/又はクラッドに埋め込まれた蛍光体マーカを有する単一の光ファイバから構成し得る。ここで「蛍光体」とは、1つの波長の光により励起されるとより長い異なる波長域で光を放射する化学物質(有機染料)または物理的実体(量子ドットまたはナノ結晶)を指す。これらの蛍光放射技法は、光ファイバの長さに沿った屈曲の半径および方向を検出するために使用される。ファイバが曲がるにつれて、低数値モードが高次モードに再分配される間、励起光の一部(高数値モード)はクラッドを通じて失われてその位置で蛍光体を励起する。強度に基づいて屈曲度を計算するべく、蛍光放射波帯がファイバの一方端で捕捉されるようになっている。図2に示す如く、蛍光体がファイバ構造に適用されている地点で、放射の強度はファイバにおける屈曲の量に比例する。
単一ファイバを使用して同じ本体において複数の屈曲を感知するために、ファイバ中の様々な屈曲からの反射光を分別可能にするべきである。故に、ファイバに沿った各点は、色分けされた発光スペクトルにより独自に定義される。蛍光体は、それぞれそのストークスシフトまたは励起と放射の最大の波長間の違い、並びに放射光のスペクトルの形状により特徴付けられる。その後、同じファイバを介した蛍光発光の送光をスペクトル的に分解および定量化できる。蛍光体が本体の生体分子に露出されていないので、それらの蛍光量子収率は一定であり、よって放射強度は励起強度(被制御(controlled))および屈曲の半径のみに依存する。
この技法は、ファイバのどの側面が屈曲の外側にあるかを判断するべく、(図3に示す如く)ファイバの外周のまわりに例えば120°の間隔で配置された、異なる発光スペクトルを有する蛍光体を3つ設けることにより、如何なる屈曲の三次元測定も可能にするように拡張することができる。これは、ファイバを下って送られる異なる蛍光体放射間の関係を測定することにより達成できる。加えて、3つの特有な蛍光体の環状構造(リング)をファイバの長さに沿って既知の間隔で配置することにより、異なる区画の位置を測定することができ、よって、三次元でファイバに沿った既知の間隔での対応する屈曲の方向を判定することができる。単一ファイバに含まれる区画の数は、達成可能である個別の蛍光体放射の数に依存する。
いくつかの実施形態では、内視鏡の長さの大半を追跡するべく、ファイバには、全体の長さが少なくとも100cm、最大6cm間隔のセンサ領域が備えられている。該機器は、小型であるため内視鏡の生検チャンネルに容易に挿入、または内視鏡の軸体の中に機械的に内蔵することができるので精度が向上する。また、この場合、一方の端部が固定位置(手術台の上など)に固定された状態でファイバが生検チャンネル内に収容されるのでねじれの問題をなくすことができる。また、この固定点は、レンダリングの目的でファイバの位置と屈曲を計算するための基準点としても機能することになる。単一チャンネルの内視鏡における生検チャンネルを介して使用する場合、ファイバは生検針を導入する際に取り除き、そして生検針を取り除く時に再度挿入することが可能である。またその代わりとして、2本の生検チャンネルを有する内視鏡の場合には、一本のチャンネルをファイバ専門に使い、処置中にセンサを取り除く必要をなくすことができる。
改造ファイバはあらゆる所望の技法を使用して構成し得る。まずは出発点として感知部分を追加するように改造した標準の光ファイバを使用しても良い。かかる改造の例としては、ファイバの保護バッファおよび/又はクラッドの選択された領域の除去、および当該領域への蛍光体の適用、などが挙げられる。好ましい設計基準としては、1)最小曲げ半径を著しく損なうことなくバッファおよび/又はクラッドを取り除くこと、2)空間分解能を制限することなく屈曲に対する良好な感度を提供するようにバッファおよび/又はクラッド孔の間隔をおくこと、3)蛍光体混合物の調製と適用、および4)最小曲げ半径を回復するべく最終構造を強化することが含まれる。光ファイバからバッファおよび/又はクラッドを取り除く方法の例としてはこれらに限定されないが、フッ化水素酸による剥離、化学エッチング、レーザおよび機械的な超微細加工などが挙げられる。例えば、マイクロ旋盤を使用すれば、クラッドに影響を与えることなく、光ファイバのバッファから200ミクロンの円盤形状を切り抜くことができる。
様々な方法を使用してファイバのクラッドに設けられる蛍光体混合物を作りうる。いくつかの実施形態では蛍光体溶液(メタノール中)がエポキシ樹脂に埋設される。エポキシは、手作業で光ファイバ上に溶着される。
センサ構造の形状を決定するには、ファイバを通して送られた光学信号を分析および解釈する必要がある。いくつかの蛍光体(NILB640、RHOD590、OXAZ750、AD680BP、AD680HO、AD740PP、AD745HO、AD745HT、LDS821、LD700、LDS750、CRES670、OXAZ720、AD640MT)について、赤色光で励起された時に最も高い強度で光を放射するものを同定する試験が行われた。最大効率および可変ストークスシフトを有する蛍光体をセンサ設計に選び、信号が容易に同定され分離されるようにする。放射強度または信号利得(αB)は、蛍光体がファイバ構造に適用された点におけるファイバの屈曲の特性である。励起光損失(αl)と蛍光再捕捉(αc)を考慮すると、次のようになる。
αB .= αl .* αc (式中、αl = I exp(-R/Rc
Rは屈曲半径であり、Rcは芯径や開口数などのファイバ・パラメータに依存する定数である。Iは励起強度およびクラッドの表面被覆率に関係する。時間反転作用は、Cが蛍光再捕捉の立体角を示す同じ原理方程式に従って光ファイバの芯による蛍光再捕捉をモデルにする(屈曲半径の蛍光信号利得に対する影響についての完全な考察については、ボーシャ(Boechat)らによる「大容量コアマルチモード光ファイバ光線搬送システムの曲げ損失」、『応用光学(Appl Optics)』、30(3): 321-327 (1991)を参照されたい)。
αc = C exp(-R/Rc
いくつかの実施形態において、ファイバは、所与のファイバ径に対して多くのモードに対応し、よってセンサのダイナミックレンジおよび角度分解能を最大限にするために、高開口数を有するガラス/ガラスまたはシリカ/シリカ・ベースのものである。クラッドは、芯の中を移動する励起光のエバネッセント波によりクラッドを超えて蛍光体が励起されることを防ぐのに十分な厚さを持っているべきである。いくつかの実施形態では、芯径が250μmおよびクラッド厚さが少なくとも25μmであり、およびポリイミド・バッファまたはアクリレート・バッファのいずれかを採用したファイバが使用される。ファイバセンサ全体を薄くできるので薄いポリイミド・バッファ(10μm)が好ましい。
いくつかの実施形態では1.5メートルの内視鏡を追跡するために75種の蛍光体が使用される。3種固有の蛍光体が6cm間隔で内視鏡の外周のまわりに環状構造を形成する。これにより局所的な屈曲の決定に関する最大情報および冗長性が提供される。間隔は6cm前後(例えば3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cm、10cm、11cm、12cm、13cm、14cm、15cm間隔、またはその組み合わせ、或いはその間の間隔)でありうる。いくつかの実施形態において、内視鏡の近接端部ではセンサがまばらに備えられている一方、それよりも多くのセンサを備える結腸内視鏡の先端と遠位端部の近くではより多くの情報が得られる。時間遅延グラフィック・レンダリングを使用することにより、内視鏡のセンサがより密に配置されている側の先端により提供された実時間のグラフィックを拡大するように内視鏡の軸体からの履歴データを表示することも可能である。例えば、ファイバのある1メートル区間において、内視鏡の遠位端近くで5つの蛍光体環状構造を6cmの間隔で配置すると共に、残りの5つの環状構造を12cm間隔で配置できる。実時間で内視鏡の完全な画像を生成するために、機械的スイッチングおよび光電子スイッチングをグラフィック・レンダリングと共に使用しうる。
いくつかの実施形態において、データ分析には、機器の横振りおよび縦振りの決定が含まれる。この方法を用いて、各区画の縦振りおよび横振りがスペクトル領域内に符号化される。同時に捕捉された波長は全てスペクトル的に分解され、縦振りと横振りに応じて一式の複雑な発光スペクトルがもたらされる。その後、部分最小二乗法(PLS:Partial Least Square)または主成分回帰法(PCR:Principal Component Regression)のような分析または数値法により、これらの放射スペクトルがそれらの成分蛍光体に分解される。
実験例
以下の実施例は、本発明における特定の好ましい実施形態および態様を実証しさらに詳しく説明するために提示されるものであり、それの範囲を限定するものとして解釈するべきでない。
実施例1
フレキシブル内視鏡による診断法を改善する高度形状追跡
この実施例では、ファイバに基づく形状追跡装置の開発を説明する。光ファイバおよび蛍光体を利用して、単一の光ファイバに一体化する形状追跡センサを開発した。小型の単一光ファイバであるため、生検チャンネルを通じて挿入することによってなど、現在の内視鏡と容易に統合することが可能である。この斬新なアップグレードにより、臨床医に対して非常に貴重な補助器具を提供でき、方向感覚の損失やループ形成を削減し、最終的には結腸内視鏡検査の処置をより短時間で、患者にとってより快適且つより安全に行えるようになる。
A. 方法
結腸内視鏡検査時の操縦問題を解決するために、実時間表示を伴う形状追跡装置を作成した。該形状追跡技術には、現在の内視鏡の形状について関連性のある全ての形状情報を供給するべく改造された単一の光ファイバを利用している。光ファイバは、離散的な位置でバッファ中に蛍光体を埋設することにより改造した。その後、ファイバが屈曲した際に曲げ損失により損なわれた光が蛍光体を励起するようにレーザ光線をファイバを通じて導いた。蛍光体は、より長い波長の光を芯の中に放射し戻した。ファイバの端部で蛍光を測定することにより、蛍光強度をファイバ屈曲の変化と関連付けた。
ファイバの改造
バッファの円形部除去
30W CO2切削レーザを使用してファイバのバッファに150□mの孔を開けた。レーザ光放射ビーム径が150□mの孔より大きいので、これを行うために150□mのピンホールをマスクとして使用した。ファイバの下準備の第一段階として、ファイバを保持するために小溝を備えたベース板にファイバを固定した。また、ファイバの上に取り付けたピンホールを保持するために円孔をベース板に開けた。これは、150□mのピンホールが確実に光ファイバ中心に来るようにするためのものである。次に、ピンホールの上に切削レーザを通した。この際、ピンホールを通過できた光線の部分だけが貫通して150□mの孔を開けるようにした。バッファとクラッドの融点が異なるため、クラッドは無傷のままバッファにだけ孔を開けた。
蛍光体の埋設
蛍光染料と紫外線(UV)硬化エポキシ樹脂の混合物をバッファの150□m孔に充填させた。有機染料には、エキシトン社(Exciton Inc.)により販売されるLD 700過塩素酸塩およびオキサジン750過塩素酸塩を使用した。メタノール中の染料の0.01M溶液を異なる割合でUV接着剤と混合した。UV接着剤:染料溶液=1:1、1:2および1:3部の割合で混合物を調製してバッファに挿入した。UVライトガンを使用して接着剤を硬化させ、バッファの孔を密閉した。
試験準備
改造済みのファイバを標準SMA接続に接続した。この際、同じ接続子を使用して異なるファイバ試料を試験できるようにユニバーサル・ベアファイバ端子(BFTU)を使用して接続した。ファイバがBFTUと機能するように、バッファを1インチ剥がしてBFTUに挿入できるようにした。BFTUに挿入後、研磨して、試験を行うための最大の光遷移を保証するべく、5□m、3□mおよび1□mの紙やすりを八の字に動かしながらファイバの端部を湿式研磨した。
実験装置
ファイバを試験するために使用された実験装置としては、ヘリウム・ネオン(HeNe; 632.8nm)レーザ、コリメータ二個、帯域通過フィルタ、ロングパスフィルタ、既知の半径を有する段付きシリンダ、および分光計からなるものを使用した。該632.8nmを直接取り巻く波長を有する光だけが確実にファイバに入るようにするために、HeNeレーザ光線を632.8nmの帯域通過フィルタに通した。帯域通過フィルタの後に、コリメータを使用してレーザ光線の焦点を合わせ、レーザ光線を光ファイバに導いた。ファイバの他方の端では、レーザ光線が再整正され(再度平行になり)、ロングパスフィルタを通過してレーザ波長をゼロにした。これによって、蛍光を発する波長が通過できるようになり、分光計を使用して測定できるようになった(図7を参照)。
試験手順
既知の曲げ半径を有する積み重ねられた一連のシリンダを使用して改造済みファイバの試験を行った。ファイバを装置に接続した(図7を参照)後に、段付きシリンダの最小環状構造の周りに、改造されたバッファの部分が屈曲部分を中心にして最も外側の半径に位置するように該ファイバを配置した。その後、蛍光強度が分光計の最大測定限界を利用するように分光計の積分時間設定を調製し、蛍光強度の測定値(カウント)を当該の屈曲半径について記録した。その次に、ファイバを次に大きな半径に移動して、新たに読み込まれた蛍光強度測定値を記録した。異なる大きさの屈曲半径についてもこの手順を続け、蛍光の強度をファイバの屈曲へと相互に関連付けるべく結果をグラフ上にプロットした。
B. 結果
過程が調製物の変化ならびに実験装置の位置合わせの設定の変化に非常に影響を受け易かったことが試験結果により示された。UV接着剤中1:1の割合で0.01M染料/メタノール溶液中にLD700有機染料を用いることにより、屈曲関係に対する優れた蛍光強度を得ることができた(図8を参照)。また、半径が58mmから11mmに減少してファイバの屈曲が達成された時点で蛍光強度が40%増加した。
実験では、材料における制限がいくつか同定された。例えば有機染料では、同じ試料を使った試験1から試験6にわたり強度の垂直下方偏移として図8に示される光退色が認められた。また、量子ドットは有機染料よりも有益である多くの特性を有するので、代わりに量子ドットを調査した。図9は、(最大の励起エネルギーを必要とする)最も小さい量子ドットに対して光源が選択されている限りは、それよりも大きな粒径を持つその他のすべての量子ドットも同様に励起することができることを示す。
上記明細書に記載されるすべての出版物および特許は参照により、あたかも本明細書に明示的に記載されるものとして本明細書に組み込まれるものである。本発明の範囲と精神から逸脱することなく上記される本発明の方法とシステムに様々な修正および変形を加え得ることは、当業者にとっては明白なはずである。特定の好ましい実施形態に関連して本発明を説明したが、請求される如き発明はかかる特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、関連分野に属する当事者にとって明白である本発明を実施するための上記様式の様々な修正は、以下特許請求の範囲に含まれるものとする。

Claims (20)

  1. 医療機器の形状と位置とを報告するように構成された複数のセンサを備えた光ファイバを備える医療機器を備えたシステム。
  2. 医療機器がガイドワイヤを備える、請求項1記載のシステム。
  3. 医療機器が内視鏡を備える、請求項1記載のシステム。
  4. 内視鏡が結腸内視鏡である、請求項3記載のシステム。
  5. 前記医療機器が2つ以上の光ファイバを備える、請求項1記載のシステム。
  6. 前記医療機器が単一光ファイバを含む、請求項1記載のシステム。
  7. 前記センサが、異なる分光特性を有する複数の蛍光体を備える、請求項1記載のシステム。
  8. 前記センサが、異なる分光特性を有する複数の量子ドットを備える、請求項1記載のシステム。
  9. 前記複数のセンサが、規定の位置で光ファイバの長さおよび外周に沿って間隔をおいて配置される、請求項1記載のシステム。
  10. 前記外周上の異なる位置が互いに約120°離れている、請求項9記載のシステム。
  11. 前記センサが、ファイバのバッファおよび/又はクラッド層の一部を除去することにより作成されたファイバの領域に埋設されている、請求項1記載のシステム。
  12. 前記形状には前記医療機器における屈曲が含まれる、請求項1記載のシステム。
  13. 前記形状には前記医療機器の領域の縦振り(pitch)および横振り(yaw)が含まれる、請求項12記載のシステム。
  14. データ収集および分析用の構成部分をさらに含む、請求項1記載のシステム。
  15. 前記データ収集および分析用の構成部分が、前記センサからの信号を検出するように構成された検出器と、形状情報を生成するべく該信号に関連付けられたデータを処理するためのコンピューター・プロセッサと、ユーザーに対して該形状情報を表示するためのユーザ・インターフェースとを備える、請求項14記載のシステム。
  16. 前記ユーザ・インターフェースが、医療機器の遠位端部に位置する環境の画像をさらに表示する、請求項14記載のシステム。
  17. 医療機器の形状を決定するための方法であって、a)複数のセンサを備える光ファイバを備える医療機器をある環境の中に挿入する工程と、b)該センサから情報を収集することにより該環境において該医療機器の形状を検出する工程とを含む方法。
  18. 前記環境が結腸である、請求項17記載の方法。
  19. 前記医療機器が結腸内視鏡である、請求項17記載の方法。
  20. 請求項1記載の医療機器を製造する方法であって、a)複数の穴を作成するように前記光ファイバのバッファおよび/又はクラッド材の一部を取り除き、且つ該複数の穴にセンサを挿入することによって、光ファイバを改造する工程と、b)該光ファイバが医療機器の形状を検出するべく配置されるように該ファイバをその医療機器に関連付ける工程とを含む方法。
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