以下、本発明の一実施形態を図1〜図22に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着ローラ2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をY軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をX軸方向として説明する。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信、及び公衆回線を介したデータ通信を制御する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転するものとする。
感光体ドラム2030aの表面近傍には、感光体ドラム2030aの回転方向に沿って、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、クリーニングユニット2031aが配置されている。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030bの表面近傍には、感光体ドラム2030bの回転方向に沿って、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、クリーニングユニット2031bが配置されている。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030cの表面近傍には、感光体ドラム2030cの回転方向に沿って、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、クリーニングユニット2031cが配置されている。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030dの表面近傍には、感光体ドラム2030dの回転方向に沿って、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、クリーニングユニット2031dが配置されている。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からのブラック画像情報に基づいて変調された光束を、帯電された感光体ドラム2030aの表面に照射し、シアン画像情報に基づいて変調された光束を、帯電された感光体ドラム2030bの表面に照射する。
また、光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からのマゼンタ画像情報に基づいて変調された光束を、帯電された感光体ドラム2030cの表面に照射し、イエロー画像情報に基づいて変調された光束を、帯電された感光体ドラム2030dの表面に照射する。
これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。なお、光走査装置の構成については後述する。
トナーカートリッジ2034aにはブラックトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033aに供給される。トナーカートリッジ2034bにはシアントナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033bに供給される。トナーカートリッジ2034cにはマゼンタトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033cに供給される。トナーカートリッジ2034dにはイエロートナーが格納されており、該トナーは現像ローラ2033dに供給される。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着ローラ2050に送られる。
定着ローラ2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次スタックされる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、6枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108b、2108c)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング(図示省略)の所定位置に組み付けられている。
また、カップリングレンズ2201a及びカップリングレンズ2201bの光軸に沿った方向を「w1方向」、カップリングレンズ2201c及びカップリングレンズ2201dの光軸に沿った方向を「w2方向」とする。さらに、Z軸方向及びw1方向のいずれにも直交する方向を「m1方向」、Z軸方向及びw2方向のいずれにも直交する方向を「m2方向」とする。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
ここでは、光源2200a及び光源2200bにおける主走査対応方向は、m1方向であり、光源2200c及び光源2200dにおける主走査対応方向は、「m2方向」である。そして、光源2200a及び光源2200bにおける副走査対応方向、光源2200c及び光源2200dにおける副走査対応方向は、いずれもZ軸方向と同じ方向である。
光源2200bと光源2200cは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。そして、光源2200aは光源2200bの−Z側に配置されている。また、光源2200dは光源2200cの−Z側に配置されている。
各光源は、いずれも、一例として図6に示されるように、同一基板上に複数の発光部が形成されている面発光レーザアレイ100を有している。
この面発光レーザアレイ100は、2次元的に配列された40個の発光部(ch1〜ch40)が1つの基板上に形成されている。40個の発光部は、すべての発光部を副走査対応方向に伸びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等間隔dとなるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。また、各発光部の発振波長は、780nm帯である。
カップリングレンズ2201aは、光源2200aから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201bは、光源2200bから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201cは、光源2200cから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
カップリングレンズ2201dは、光源2200dから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
開口板2202aは、開口部を有し、カップリングレンズ2201aを介した光束を整形する。
開口板2202bは、開口部を有し、カップリングレンズ2201bを介した光束を整形する。
開口板2202cは、開口部を有し、カップリングレンズ2201cを介した光束を整形する。
開口板2202dは、開口部を有し、カップリングレンズ2201dを介した光束を整形する。
シリンドリカルレンズ2204aは、開口板2202aの開口部を通過した光束を、光偏向器2104の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204bは、開口板2202bの開口部を通過した光束を、光偏向器2104の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204cは、開口板2202cの開口部を通過した光束を、光偏向器2104の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
シリンドリカルレンズ2204dは、開口板2202dの開口部を通過した光束を、光偏向器2104の反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
光偏向器2104は、2段構造の4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ反射面となる。そして、1段目(下段)の4面鏡ではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)の4面鏡ではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。この光偏向器2104の詳細については後述する。
ここでは、シリンドリカルレンズ2204a及びシリンドリカルレンズ2204bからの光束は光偏向器2104の−X側に偏向され、シリンドリカルレンズ2204c及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束は光偏向器2104の+X側に偏向される。
走査レンズ2105a及び走査レンズ2105bは、光偏向器2104の−X側に配置され、走査レンズ2105c及び走査レンズ2105dは、光偏向器2104の+X側に配置されている。
そして、走査レンズ2105aと走査レンズ2105bはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105aは1段目の4面鏡に対向し、走査レンズ2105bは2段目の4面鏡に対向している。また、走査レンズ2105cと走査レンズ2105dはZ軸方向に積層され、走査レンズ2105cは2段目の4面鏡に対向し、走査レンズ2105dは1段目の4面鏡に対向している。
そこで、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、走査レンズ2105a、及び折り返しミラー2106aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030a上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030aでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030aの回転方向が、感光体ドラム2030aでの「副走査方向」である。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、走査レンズ2105b、及び2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)を介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030b上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030bでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030bの回転方向が、感光体ドラム2030bでの「副走査方向」である。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、走査レンズ2105c、及び2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)を介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030c上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030cでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030cの回転方向が、感光体ドラム2030cでの「副走査方向」である。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、走査レンズ2105d、及び折り返しミラー2106dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム2030d上を走査する。このときの光スポットの移動方向が、感光体ドラム2030dでの「主走査方向」であり、感光体ドラム2030dの回転方向が、感光体ドラム2030dでの「副走査方向」である。
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査レンズ2105aと折り返しミラー2106aとからKステーションの走査光学系が構成されている。また、走査レンズ2105bと2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)とからCステーションの走査光学系が構成されている。
そして、走査レンズ2105cと2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)とからMステーションの走査光学系が構成されている。また、走査レンズ2105dと折り返しミラー2106dとからYステーションの走査光学系が構成されている。
ここで、前記光偏向器2104について説明する。この光偏向器2104は、前記2段構造の4面鏡を有する回転部材(回転部材10という)、該回転部材10の回転軸となる軸部材(軸部材15という)、該軸部材15を回転可能に保持する保持系(保持系20という)、回転部材10を回転させるモータ(モータ30という)、モータ30を駆動する駆動系(駆動系40という)、回転部材10に固定されている円板(円板60という)などを備えている。
回転部材10は、一例として図7及び図8に示されるように、2つのポリゴンミラー(12a、12b)、及びフランジ部13を有している。なお、図8は、図7における回転部材10の中心を通る縦断面図である。
回転部材10の−Z側端部は、フランジ部13となっている。そして、フランジ部13の+Z側に、連結部を介して1段目(下段)の4面鏡としてのポリゴンミラー12bが設けられ、該ポリゴンミラー12bの+Z側に、連結部を介して2段目(上段)の4面鏡としてのポリゴンミラー12aが設けられている。すなわち、ポリゴンミラー12aとポリゴンミラー12bは、連結部を介してZ軸方向に積層する形で形成されている。
回転部材10は、アルミニウム合金の切削加工品である。特に、各ポリゴンミラーの反射面は、超精密切削加工によって形成され、透明な膜(例えば、SiOあるいはSiO2等の無機膜)によって保護されている。このように、回転部材10の主要部は金属からなる導電性部材でできている。ここでは、各ポリゴンミラーの外接円の直径は、約20mmである。
回転部材10は、中心に、Z軸方向に延びる貫通孔を有している。
円板60は、ポリゴンミラー12aの+Z側の端面に取り付けられている。この円板60の直径は、一例として図9に示されるように、ポリゴンミラー12a及びポリゴンミラー12bに外接する円の直径より大きい。そこで、円板60の+Z側から回転部材10を見たときには、円板60でポリゴンミラーの全体が隠れることとなる。ここでは、円板60の直径は、22mmである。なお、円板60の直径は、ポリゴンミラーの外接円の直径よりも2〜4mm程度大きいことが好ましい。
また、円板60は、一例として図10に示されるように、鋼板60aと、該鋼板60aの+Z側の面にコーティングされた樹脂層60bと、該鋼板60aの−Z側の面にコーティングされた樹脂層60cとからなる三層構造になっている。各樹脂層は、回転部材10が回転することによって帯電され、塵埃を吸着する。
この樹脂層60bの樹脂材料としては、帯電を維持する上で、電気抵抗率が1×1012Ωm以上のものが好適である。このような樹脂材料には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド等がある。
例えば、フッ素樹脂は、電気抵抗率が1×1016Ωm以上と大きい。
そこで、円板60は、上記いずれかの樹脂材料がラミネートされている厚さが0.1〜0.6mm程度のラミネート鋼板をプレス加工することにより製作することができる。ラミネート鋼板は、10〜40μmの均一な膜厚で樹脂層があらかじめ形成されており、円板60の素材として好適である。なお、円板60の別の製作方法として、鋼板60aをプレス加工で作成した後、該鋼板60aの表面に、スプレー塗装、ディップコート等の湿式成膜法により、上記樹脂層を形成しても良い。
なお、樹脂層60bと樹脂層60cは、同一の樹脂材料であっても良いが、互いに異なる樹脂材料であっても良い。例えば、樹脂層60bの樹脂材料をフッ素樹脂とし、樹脂層60cの樹脂材料をポリアミド(ナイロン)としても良い。フッ素樹脂は、他の材質の物体との摩擦で負(マイナス)に帯電しやすいため、正(プラス)に帯電した塵埃を吸着しやすい。一方、ポリアミド(ナイロン)は、他の材質の物体との摩擦で正(プラス)に帯電しやすいため、負(マイナス)に帯電した塵埃を吸着しやすい。この場合は、正に帯電した塵埃及び負に帯電した塵埃の両方を吸着することができる。
また、ポリゴンミラー12aとポリゴンミラー12bは、一例として図11に示されるように、Z軸方向からみたときに、頂点が重ならないように形成されている。具体的には、ポリゴンミラー12aとポリゴンミラー12bは、Z軸方向からみたときに、45°ずれている。なお、図11は、図9において円板を取り外したときの図である。
軸部材15は、一例として図12に示されるように、回転部材10の貫通孔に焼きばめされている。
軸部材15の素材としては、焼入れが可能で表面硬度を高くでき、耐磨耗性が良好なマルテンサイト系のステンレス鋼(例えばSUS420J2)が好適である。
軸部材15の外周には、高速回転での安定性を確保するため、不図示の動圧発生溝が設けられている。
回転部材10は、20krpm程度から60krpmを超える高速回転まで使用される。60krpm超の高速まで回転させるためには、軸受損失を小さくする必要がある。そこで、軸部材15の直径は、2〜3mm程度とされている。
保持系20は、一例として図13に示されるように、軸受ハウジング21、スラスト軸受部材22、軸受部材23、シール部材24を有している。
軸受ハウジング21は、外形がZ軸方向を高さ方向とする略円柱状の部材であり、+Z側の面の中央に−Z方向に延びる穴が形成されている。そして、該穴の底面にスラスト軸受部材22が配置され、該穴の壁面に軸受部材23が配置されている。また、該穴の開口位置近傍に、シール部材24が配置されている。
軸部材15が保持系20に保持されている状態が図14に示されている。
軸受部材23は含油動圧軸受であり、軸受隙間は直径で10μm以下に設定されている。なお、前記動圧発生溝は、軸受部材23の内周面に設けても良いが、軸部材15の外周に設けるほうが加工性の点から好ましい。
軸部材15のスラスト方向の軸受は、いわゆるピボット軸受であり、軸部材15の−Z側端部に形成された凸曲面とスラスト軸受部材22とが接触している。
スラスト軸受部材22には、マルテンサイト系ステンレス鋼、セラミックス、表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理等の硬化処理を施した金属部材及び樹脂材料等が用いられ、良好な潤滑性を有し、磨耗粉の発生を抑えている。
シール部材24は、油の流出を防止している。
モータ30は、一例として図15に示されるように、ロータ磁石31a、ステータコア31b、巻き線コイル31cを有している。
このモータ30は、ステータコア31bの外周部近傍にロータ磁石31aが配置されているアウターロータ型の直流ブラシレスモータである。ロータ磁石31aは、ステータコア31bの外周部とで回転トルクを発生し回転する。
ロータ磁石31aは、樹脂をバインダーに使用したボンド磁石であり、径方向に着磁されている。
ロータ磁石31aは、一例として図16に示されるように、フランジ部13の内面に取り付けられている。この場合は、回転部材10が高速回転しても、ロータ磁石31aが遠心力によって破壊されるのを防止できる。
ステータコア31bは、一例として図17に示されるように、軸受ハウジング21に取り付けられている。
駆動系40は、一例として図18に示されるように、回路基板41、ホール素子42、駆動IC43、コネクタ44を有している。ホール素子42、駆動IC43、コネクタ44は、回路基板41上に実装されている。
そして、回路基板41には、巻き線コイル31cと駆動IC43とを電気的に接続する配線パターン、ホール素子42と駆動IC43とを電気的に接続する配線パターン、コネクタ44とホール素子42及び駆動IC43とを電気的に接続する配線パターンなどが形成されている。
また、回路基板41には、軸受ハウジング21が取り付けられている。
ロータ磁石31aは、Z軸方向は磁路を開放している。ホール素子42は、該開放磁路内に配置されている。
駆動IC43は、ホール素子42の出力信号を回転部材10の位置信号として参照し、巻線コイル31cの励磁切り替えを行う。これにより、回転部材10の回転が継続される。
コネクタ44には不図示のハーネスが接続され、走査制御装置からの電力供給、モータの起動・停止、回転数等の制御信号の入出力が行われる。
回転部材10は、一例として図19及び図20に示されるように、フランジ部13の内部に保持系20及びモータ30が収容されるようになっている。
ところで、回転部材10を25,000rpm以上の高速で回転させる場合、振動を小さくするために適切なバランスを高精度に維持しなければならない。回転部材10には、バランスを修正するための修正部が2ヶ所(第1の修正部、第2の修正部)に設けられている。第1の修正部は、回転部材10の+Z側の面に形成されている第1凹部であり、第2の修正部は、フランジ13に形成されている第2凹部である。第1凹部及び第2凹部の少なくとも一方に接着剤を塗布することによりバランスの修正が行われる。なお、第1凹部への接着剤の塗布は、円板60を取り外した状態で行われる。
この場合の修正量は10mg・mm以下であることが必要である。例えば、半径10mmの箇所での修正量は1mg以下に保たれている。なお、このような微少な修正を行う際に、接着剤等の付着物では管理しにくい場合、あるいは接着剤の量が少なくて接着力が弱く40,000rpm以上の高速回転時に剥離、飛散してしまう場合には、回転部材10の一部を削除する方法(例えば、ドリルによる切削、レーザ加工など)を用いても良い。
本実施形態では、回転部材10の材料を削減し環境負荷を低減する他に、各ポリゴンミラーの回転による風損の影響を抑え、騒音及び回転エネルギを低下させることを目的に、各ポリゴンミラーを小型化している。その結果、モータ30よりもポリゴンミラーが小さくなっている。
回路基板41は、例えば、金属ベースの片面プリント基板が用いられる。軸受ハウジング21が固定される穴は、金型による打ち抜き加工等により形成される。
ところで、光学ハウジングは、一例として図21に示されるように、コア筐体2300a、サブ筐体2300b、及びカバー2300cなどから構成されている。コア筐体2300a及びサブ筐体2300bは、+Z側が開放されている容器部材である。
コア筐体2300aには、光偏向器2104が収容されている。なお、コア筐体2300aの一部は、光が通過できるように透明部材でできている。サブ筐体2300bには、各光源、各偏光器前光学系、各走査光学系、及びコア筐体2300aが収容されている。サブ筐体2300bには、各感光体ドラムに向かう光束の出射窓が設けられている。カバー2300cは、サブ筐体2300bの+Z側に載置され、サブ筐体2300bの開放部を覆っている。
カバー2300cにおける光偏向器2104に対向する部分には、開口部が形成されている。そして、この開口部と光偏向器2104との間に、開口部を介して流入する外気の流れを整流する整流部材65が設けられている。
この整流部材65は、+Z側の端面がカバー2300cに固定され、−Z側の端面が光偏向器2104の円板60に近接して配置されている円筒状部材である。整流部材65には、外気の流路として、+Z側から−Z側に向かって略円錐状に拡がる貫通孔を有している。該貫通孔の+Z側端部には、フィルタ66が取り付けられている。整流部材65における円板60と対向する面は、略リング状の平面である。図22に示されるように、整流部材65の外径D3は、円板60の直径よりも大きい。
ここでは、フィルタ66は、シート状の静電フィルタと活性炭フィルタとを有している。
回転部材10が回転すると、各ポリゴンミラーの反射面で空気が押し出され、負圧が円板60の+Z側、整流部材65の貫通孔の順に伝達される。これにより、各ポリゴンミラーの反射面で押し出された空気を補うように、カバー2300cの開口部から外気が流れ込む。このとき、外気はフィルタ66及び円板60近傍を通ることで、塵、ガス状の汚染物質が除去され、各ポリゴンミラーの周辺には清浄化された空気が供給される。
サブ筐体2300bには、特別に排気口は設けられていないが、完全にシールされているものではないため、サブ筐体2300bの内側の圧力が高まると、サブ筐体2300bとカバー2300cの合わせ目のすきまから空気が外部に流出する。このとき、各ポリゴンミラーの回転に伴うモータ部及び軸受部の発熱、各ポリゴンミラー自身の空気との摩擦熱により加熱された空気が外部に押し出され、相対的に温度が低い外気が各ポリゴンミラー周辺に導入される。
その結果、発熱源である光偏向器2104の冷却効果が高まるとともに、光学ハウジング内に配置された走査レンズなどの光学部品への熱の伝達量が小さくなり、光学ハウジング内における温度のばらつき及び光学部品間の温度差が小さくなる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置2010では、光偏向器2104によって本発明の光偏向器が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光偏向器2104によると、回転部材10、軸部材15、保持系20、モータ30、駆動系40、及び円板60などを備えている。
回転部材10が回転すると、ポリゴンミラー周辺の塵埃は、攪拌される空気や回転部材10等との摩擦により帯電する。このとき、円板60の樹脂層も空気や塵埃との摩擦により帯電する。
また、回転部材10が回転すると、ポリゴンミラーの角部の風を切る面で空気が外側に押し出され、その裏側に圧力低下部が形成され、カバー2300cの開口部から圧力低下部に向かって外気の流れが発生する(図30参照)。ここでは、ポリゴンミラーの外接円の直径より大きい直径の円板60が、カバー2300cの開口部とポリゴンミラーとの間に配置されているため、カバー2300cの開口部から流入した外気は、円板60の表面でその流れが屈曲され、樹脂材料がコーティングされている円板60の表面に沿って圧力低下部に向かう。このとき、外気に含まれる塵埃及び円板60の表面の樹脂層は互いに逆の極性で帯電されており、外気に含まれる塵埃は、円板60の表面の樹脂層に吸着される。その結果、各ポリゴンミラー周辺の空気が清浄化され、各ポリゴンミラーの反射面の汚れ、及び部分的な反射率低下を防止し、長寿命化を図ることができる。
そこで、フィルタ66として圧力損失の小さいフィルタを使用したときに、該フィルタで補足されなかった塵埃は、円板60で補足することができる。
従って、温度上昇を抑制するとともに、反射面への異物の付着を防止することができる。
そして、本実施形態に係る光走査装置2010によると、光偏向器2104を有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
また、本実施形態に係るカラープリンタ2000によると、光走査装置2010を備えているため、光偏向器2104を中心とする温度上昇が抑制され、光学ハウジング内の温度のばらつきが低減され、各感光体ドラム表面での光スポットの位置ずれ、色ずれを低減することができる。また、清浄化された空気流によるエアーカーテンが形成されることによって、光偏向器2104における反射面の曇り、汚染を防止できる。また、フィルタで取りきれなかった汚染物質があったとしても、回転部材10に取り付けられた円板60に吸着されるため、反射面が汚れたり曇ることはない。そこで、反射面の反射率の低下及びばらつきがなく、高品質の画像を形成することができる。
すなわち、走査位置ずれを低減するために冷却効率を優先し、外気中の塵埃がフィルタにより十分に除去できない場合でも、反射面の曇り、汚れを防止することができる。
なお、上記実施形態において、一例として図23に示されるように、円板60における樹脂層が、回転したときに正に帯電しやすい樹脂1の部分と、回転したときに負に帯電しやすい樹脂2の部分とを含んでいても良い。
また、上記実施形態において、前記円板60に代えて、一例として図24及び図25に示されるような板状部材61を用いても良い。
この板状部材61は、Z軸方向からみたとき、ポリゴンミラー12aよりも若干大きく、各辺がポリゴンミラー12aの4つの辺に対して同様に傾斜している正方形と、ポリゴンミラー12aの4つの角を中心とする小さな円とを重ねたような形状をしている。すなわち、板状部材61は、ポリゴンミラーの外形に相似し、その角部に張り出し部を有する略多角形状の板状部材であり、回転軸方向からみたとき、その各辺が、ポリゴンミラーの対応する辺に対して傾斜している。
そして、板状部材61の+Z側から回転部材10を見たときには、板状部材61でポリゴンミラー12aの全体が隠れる。
また、板状部材61は、Z軸方向からみたとき、ポリゴンミラー近傍の圧力低下部を覆う部分の大きさが大きく、風を切る角部に向かってポリゴンミラーとの大きさの差が小さくなっている。この場合は、圧力低下部近傍での面積が大きいため、前記円板60よりも吸着集塵効果を大きくすることができる。また、前記円板60に対する全体の面積の増加量を少なくすることができる。
なお、この場合に、板状部材61は、必ずしもポリゴンミラーの外形に略相似でなくても良い。
また、上記実施形態において、前記円板60に代えて、一例として図26に示されるように、外周に+Z側に延びる壁部を有するトレイ部材62を用いても良い。このトレイ部材62では、一例として図27に示されるように、トレイ底面の外周部近傍に樹脂がコーティングされていない非コーティング領域が設けられている。この非コーティング領域は、回転部材10のバランス修正部として利用される。なお、バランス修正部にフッ素樹脂等がコーティングされていると、バランス修正のために付加されるバランス修正剤の接着強度が著しく低下する。ここでは、非コーティング領域の幅は約2mmとしている。この場合は、前記第1凹部はなくても良い。
また、上記実施形態では、各ポリゴンミラーが反射面を4面有している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図28に示されるように、各ポリゴンミラーが反射面を6面有していても良い。
また、上記実施形態では、ポリゴンミラーが2段構成の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ポリゴンミラーが1段構成であっても良い。